JP3385661B2 - 内視鏡の汚損防止機構 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、使い捨て可能な汚損防
止用のスリーブで挿入部を覆うようにした内視鏡の汚損
防止機構に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】内視鏡は、患者の体腔内に挿入される関
係から、その使用の都度洗浄しなければならない。そし
て、この内視鏡のうち、最も汚損が激しいのは、直接体
腔内に挿入される挿入部であり、このために挿入部は、
二次感染の問題等が生じないようにするために、隈なく
徹底的に洗浄しなければならない。しかしながら、この
挿入部の洗浄作業は長い時間と多大な労力とを必要と
し、１症例に使用した後、直ちに再使用することは不可
能である。このために、挿入部に可撓性を有する鞘部材
を嵌合させて設け、体腔内に挿入して使用した後には、
鞘部材を交換することによって、挿入部が汚損しないよ
うに保護するように構成したものも従来から知られてい
る。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】ところで、前述したよ
うに構成した場合には、使用の都度鞘部材を除去して新
たな鞘部材を装着しなければならない。鞘部材の除去は
単純に挿入部から引き抜けば良いが、これに対して新た
な鞘部材を装着するのはかなり困難であり、この交換作
業はかなり面倒である。特に、鞘部材は柔軟性のあるも
のでなければならず、しかも挿入部は用途等により数ｍ
の長さを有すること等から、鞘部材の装着を行うのは著
しく困難になる。しかも、鞘部材と挿入部との間に空気
が介在していると、挿入時にこの空気が入り込んでいる
部位が膨出して、狭窄部を通過する際等において、患者
に対する苦痛が大きくなり、また鞘部材が破損する等と
いった問題点もある。

【０００４】本発明は、以上の点に鑑みてなされたもの
であって、挿入部に容易かつ迅速に交換できるようにし
た使い捨てタイプの汚損防止機能を持たせることを目的
としてなされたものである。

【０００５】

【課題を解決するための手段】前述した目的を達成する
ために、本発明は、体腔内に挿入される挿入部の基端側
の部分に、可撓膜からなるスリーブを所定の長さ分だけ
ストックするストック部を設け、このストック部から引
き出したスリーブによって前記挿入部を覆う構成とした
ことをその特徴とするものである。

【０００６】

【作用】ストック部からスリーブを、挿入部の先端まで
引き出して、この先端部を適宜の手段により固定する。
この状態で、挿入部を体腔内に挿入して診断・検査等を
行って、体腔外に取り出した時には、スリーブは汚損さ
れているが、このスリーブに覆われた挿入部自体は清浄
なまま保持されている。そこで、スリーブのうちの使用
済みの部分を引き出すようにする。そして、使用済みの
スリーブを完全に引き出した時に、所定の位置で切断し
て、先端を挿入部の先端部分に固定することによって、
未使用の清浄なスリーブが挿入部に被装されたことにな
る。

【０００７】以上のように、スリーブを引き出して、使
用済みの部分を切断した上で挿入部の先端部分に固定す
るという操作を行えば、内視鏡はそのまま再使用可能な
状態となるので、操作性が著しく改善される。

【０００８】

【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細
に説明する。まず、図１に内視鏡の全体構成を示す。同
図から明らかなように、内視鏡は挿入部１と、本体操作
部２及びライトガイドコネクタ３とから大略構成される
ものであって、ライトガイドコネクタ３は光源装置（図
示せず）に着脱可能に接続されるようになっており、術
者は本体操作部２を把持して操作を行い、挿入部１が体
腔内に挿入される。

【０００９】図２に挿入部１及びこの挿入部１と本体操
作部２との連設部の構成を示す。挿入部１における本体
操作部２への連設部分には、挿入部１の基端部の折れ止
め機能を発揮する保護部材１０が設けられている。この
保護部材１０はリング状の連結金具１１と、この連結金
具１１に固着して設けたカバーゴム１２とからなり、連
結金具１１は本体操作部２のケーシングに螺挿されてお
り、これによって保護部材１０は着脱可能となってい
る。そして、この保護部材１０を装着すると、そのカバ
ーゴム１２の先端は挿入部１の基端部近傍に当接する状
態となり、このカバーゴム１２の弾性によって、挿入部
１から本体操作部２への移行部において硬さが急激に変
化するのを防止している。

【００１０】保護部材１０における連結金具１１は挿入
部１に対して非接触状態となるように組み込まれる。従
って、この連結金具１１の内面と挿入部１の基端部との
間には所定の円環状の空間が形成されている。この空間
内には軟性の樹脂フィルムを筒状に形成してなる可撓膜
のスリーブ２０をストックするカセット状のスリーブカ
ートリッジ２１が設けられるようになっている。

【００１１】スリーブカートリッジ２１は、図３に示し
たように、中空の筒状部材からなり、その内径は挿入部
１の外径より僅かに大きくなっており、外径は連結金具
１１の内径より小さくなっている。そして、このスリー
ブカートリッジ２１内には挿入部１の長さ寸法の十数倍
乃至数十倍程度の長さのスリーブ２０が収納されてお
り、スリーブカートリッジ２１の端部にはスリット状の
引き出し口２１ａが形成されている。ここで、スリーブ
２０は、図３に示したように、挿入部１の全長より僅か
に長い部分毎にミシン目等のように脆弱部２０ａが形成
されており、またこの脆弱部２０ａの手前側には断面が
略円形となった厚肉部２０ｂが設けられている。そし
て、スリーブ２０の先端部分はスリーブカートリッジ２
１の引き出し口２１ａから所定の長さ突出した状態に保
持されて、その先端部は厚肉で有底の筒部２２となって
おり、この筒部２２には引っ張り用のつまみ２２ａが形
成されている。

【００１２】挿入部１の先端部にはスリーブ２０の先端
部を固定する手段としての先端キャップ２３が着脱可能
に螺挿されるようになっている。この先端キャップ２３
は、図４に示したように、前面が透明ガラス２３ａから
なり、周胴部２３ｂの内面にはねじ溝が形成されてい
る。また、この周胴部２３ｂのねじ溝形成部の先には、
カバー部２３ｃが連設されている。そして、挿入部１の
先端部分における先端キャップ２３のカバー部２３ｃが
位置する部位は段差部２４が形成されており、スリーブ
２０が挿入部１に完全に被装された時に、その先端部分
における厚肉部２０ｂがこの段差部２４に入り込むよう
になっている。

【００１３】本実施例は以上のように構成されるもので
あって、次にその作用について説明する。この内視鏡の
挿入部１を体腔内に挿入するに当っては、その表面が汚
損しないように使い捨てのスリーブ２０で覆うことがで
きるようになっている。而して、挿入部１の基端部にお
ける本体操作部２への連設部分には保護部材１０が設け
られているが、この保護部材１０を、その連結金具１１
の本体操作部２のケーシングへの螺合状態を解除して、
挿入部１の先端側に引き出すようにして取り外す。ま
た、先端キャップ２３も挿入部１の先端部から脱着させ
ておく。

【００１４】この状態で、まずスリーブカートリッジ２
１の筒部２２を挿入部１の先端に嵌合させる。然る後
に、図５に示したように、この筒部２２に保護部材１０
を嵌合させて、この保護部材１０にスリーブカートリッ
ジ２１を係合させる。この状態で、保護部材１０を本体
操作部２側に変位させると、スリーブカートリッジ２１
からスリーブ２０が引き出されながら、スリーブカート
リッジ２１も本体操作部２側に移動する。そして、保護
部材１０を本体操作部２のケーシングに螺合すると、こ
の保護部材１０と共にスリーブカートリッジ２１が所定
の位置に固定される。これと同時に、挿入部１の外面は
完全にスリーブ２０により覆われる。

【００１５】ここで、保護部材１０を構成するカバーゴ
ム１２は、挿入部１の基端部分の折れ止め機能を発揮す
るものであり、その先端部分１２ａは挿入部１の外面に
接触している。このために、カバーゴム１２が挿入部１
に沿って本体操作部２側に移動する際には、スリーブ２
０がしごかれるようになり、かつ所定の張力が作用した
状態になって、このスリーブ２０は挿入部１に密着し
て、その間に空気が介在することがなくなる。そして、
スリーブ２０に形成した厚肉部２０ｂを段差部２４に入
り込ませて、つまみ２２ａを引っ張るようにして筒部２
２を分離して、先端キャップ２３を挿入部１の先端に螺
着する。この先端キャップ２３の装着によって、段差部
２４内に入り込んだスリーブ２０の厚肉部２０ｂは先端
キャップ２３のカバー部２３ｃで覆われることになり、
しかも先端キャップ２３を追い込むことによって、厚肉
部２０ｂは段差部２４内に封じ込められるようになっ
て、シール部材としての機能を発揮するようになる。

【００１６】これによって、挿入部１の全体はスリーブ
２０により完全に覆われるようになる。しかも、スリー
ブ２０はカバーゴム１２によりしごかれて、それと挿入
部１の外面との間に空気が介在しないようになるから、
外面部分に凹凸が生じるようなことがなくなり、体腔内
への挿入操作の円滑性及び患者の苦痛軽減が図られるこ
とになる。このように、スリーブ２０はその長手方向に
張力が作用することになるから、このスリーブ２０はこ
の方向に強度を持たせたものを使用するのが好ましい。

【００１７】挿入部１を患者の体腔内に挿入して、診
断，検査等を行った後、この挿入部１を患者の体から取
り出した後には、先端キャップ２３及びスリーブ２０は
体液等で汚損されているが、挿入部１自体は体腔等と接
触することはないので、清浄な状態に保たれている。そ
こで、先端キャップ２３を挿入部１の先端部分から脱着
して、スリーブ２０の先端部分を引き出すようにする。
これによって、スリーブカートリッジ２１の引き出し口
２１ａからスリーブ２０が引き出される。そして、この
スリーブ２０において、次の厚肉部２０ｂが挿入部１の
先端における段差部２４の位置にまで引き出されると、
この厚肉部２０ｂを段差部２４内に押し込むと共に、新
たに引き出された未使用のスリーブ２０の部位を手で押
える等して、既に使用された部位に強力な引っ張り力を
作用させる。これによって、厚肉部２０ｂの前方位置に
形成されている脆弱部２０ａの部位で切断される。そし
て、新たに先端キャップ２３を挿入部１の先端部分に螺
合させる。勿論、このスリーブ２０の引き出し時には、
カバーゴム１２を通過するので、このカバーゴム１２に
よって、スリーブ２０は挿入部１の外面に密着するよう
にしごかれながら、繰り出される。また、カバーゴム１
２は弾性部材から構成されているので、厚肉部２０ｂ
も、多少抵抗はあるものの、このカバーゴム１２の挿入
部１への接触部を通過することは可能である。

【００１８】以上のような極めて簡単な操作によって、
挿入部１を洗浄することなく、その再使用が可能とな
る。しかも、この挿入部１はその全体が完全に清浄な状
態に保たれ、使用の都度洗浄を行って汚れを洗い落とす
よりもかえって清潔になり、衛生上の点からは極めて好
ましい。而して、使用済みのスリーブ２０は使い捨てと
するが、先端キャップ２３については、洗浄することに
より再使用しても良く、またこの先端キャップ２３も使
い捨てにすることが、衛生上の見地からさらに好ましい
ものとなる。そして、スリーブカートリッジ２１内にお
けるスリーブ２０のストック分を使い切るまで、前述の
操作を繰り返し行うことによって、内視鏡を洗浄するこ
となく何度も使用できる。また、スリーブカートリッジ
２１を使い切った時には、保護部材１０を脱着して新た
なスリーブカートリッジ２１と交換すれば良い。

【００１９】ところで、内視鏡においては、鉗子その他
の処置具を用いて治療等も行うことができるようになっ
ている。図６に示したように、処置具３０は、挿入部３
１に設けた処置具挿通チャンネル３２を介して、この挿
入部３１の先端に設けた処置具導出口３２ａから外部に
導出させるようにするが、このためには先端キャップ２
３により挿入部３１の先端面が完全に覆われていると、
処置具３０を導出させることができなくなってしまう。
従って、このような処置具３０を用いるタイプの内視鏡
にあっては、先端キャップ２３に代えて、例えば図示の
ような先端リング３３を用いる。この先端リング３３
は、スリーブ２０の先端部分を固定する手段として、そ
の周胴部３３ｂの内面にはねじ部が形成され、またこの
周胴部３３ｂにカバー部３３ｃが連設されている点は、
先端キャップ２３と同様であるが、先端部分は開口して
いる。そして、挿入部３１における先端面はともかく、
この先端部分の外周面におけるねじを形成した部位が汚
損されないように保護するために、先端リング３３の周
胴部３３ｂの先端側の内面にはシールリング３４を嵌着
するように構成する。

【００２０】以上のように構成すれば、前述した第１の
実施例と同様に、スリーブ２０を引き出すことによっ
て、長尺の挿入部３１の大半の部分は使用の都度洗浄し
なくとも、その先端面と、処置具挿通チャンネル３２と
を除いて、体液等で汚損されるおそれはない。従って、
処置具挿通チャンネル３２には、その処置具導入口３２
ａから洗浄消毒液を流通させることにより洗浄して、こ
の洗浄消毒液を先端面にまで及ばせて、布等で拭き取る
ようにすれば、再使用が可能な状態となる。

【００２１】

【発明の効果】以上説明したように、本発明は、スリー
ブを所定の長さ分だけストックするストック部を挿入部
の基端側の部位に設け、このストック部からスリーブを
引き出して挿入部を覆う構成としたので、内視鏡の使用
の都度、スリーブを引き出して、挿入部を覆うようにす
ることによって、極めて簡単な操作で、長尺の部材から
なる挿入部のほぼ全長を汚損防止用のスリーブで覆うこ
とができるようになり、このスリーブに覆われた部位は
洗浄を行う必要がなくなり、しかも洗浄を行うよりも衛
生上好ましいものとなる等の効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

【図１】内視鏡の全体構成図である。

【図２】本発明の第１の実施例を示す汚損防止機構を装
着した挿入部及びこの挿入部と本体操作部との連設部の
構成説明図である。

【図３】スリーブカートリッジの構成説明図である。

【図４】先端キャップの外観図である。

【図５】スリーブカートリッジの内視鏡への装着時の状
態を示す説明図である。

【図６】本発明の第２の実施例を示す汚損防止機構を装
着した挿入部の先端部分の構成説明図である。

【符号の説明】

１，３１ 挿入部 １０ 保護部材 １１ 連結金具 １２ カバーゴム ２０ スリーブ ２０ａ 脆弱部 ２０ｂ 厚肉部 ２１ スリーブカートリッジ ２３ 先端キャップ ２４ 段差部 ３３ 先端リング

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平３−205049（ＪＰ，Ａ) 実開 平５−51301（ＪＰ，Ｕ) 実開 平５−228114（ＪＰ，Ｕ) 実開 平１−140902（ＪＰ，Ｕ) 実開 平７−9303（ＪＰ，Ｕ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) A61B 1/00 - 1/32

Claims (4)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 体腔内に挿入される挿入部の基端側の部
   分に、可撓膜からなるスリーブを所定の長さ分だけスト
   ックするストック部を設け、このストック部から引き出
   したスリーブによって前記挿入部を覆う構成としたこと
   を特徴とする内視鏡の汚損防止機構。
2. 【請求項２】 前記ストック部は挿入部の基端部を覆う
   カバーゴムを有する折れ止め用の保護部材の内部に設
   け、カバーゴムと挿入部の外面との間からスリーブを引
   き出せる構成としたことを特徴とする請求項１記載の内
   視鏡の汚損防止機構。
3. 【請求項３】 前記スリーブを挿入部の長さ以上の部位
   毎に容易に切断できるようにするための脆弱部を形成す
   る構成としたことを特徴とする請求項１記載の内視鏡の
   汚損防止機構。
4. 【請求項４】前記スリーブの先端を固定する手段を設け
   て、これらスリーブとその固定手段とによって、少なく
   とも前記挿入部の外周面全体を覆う構成としたことを特
   徴とする請求項１記載の内視鏡の汚損防止機構。