JP3383596B2 - 耐食性に優れた有機被覆鋼板 - Google Patents

耐食性に優れた有機被覆鋼板

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JP3383596B2 JP30943498A JP30943498A JP3383596B2 JP 3383596 B2 JP3383596 B2 JP 3383596B2 JP 30943498 A JP30943498 A JP 30943498A JP 30943498 A JP30943498 A JP 30943498A JP 3383596 B2 JP3383596 B2 JP 3383596B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車、家電、建
材用途等に最適な有機被覆鋼板に関し、製品を取扱う作
業者やユーザーへの影響、製造時の排水処理対策、さら
には使用環境下における製品からの有害物質の揮発・溶
出などの環境問題に適応するために、製造時および製品
中に環境・人体に有害なクロム、鉛、カドミウム、水銀
等の重金属を全く含まない環境適応型表面処理鋼板に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】家電製品用鋼板、建材用鋼板、自動車用
鋼板には、従来から亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウ
ム系めっき鋼板の表面に、耐食性(耐白錆性、耐赤錆
性)を向上させる目的で、クロム酸、重クロム酸または
その塩類を主要成分とした処理液によるクロメート処理
が施された鋼板が幅広く用いられている。このクロメー
ト処理は耐食性に優れ、且つ比較的簡単に行うことがで
きる経済的な処理方法である。
【0003】しかし、クロメート処理は公害規制物質で
ある6価クロムを使用するものであるため、処理工程に
おいてクロム酸塩が人体に悪影響を与えること、排水処
理後のクロムスラッジの廃棄処理が困難であること、ま
たクロメート処理後の製品から6価クロムが溶出するお
それがあること等、種々の問題を有している。このた
め、クロム酸類の使用管理基準が厳しくなるにしたが
い、クロメート処理工場の管理、排水処理、クロメート
処理物による二次汚染等が問題とされ、これに対応して
各工場では排水関係をクローズド化し、クロムイオンが
外部に排出されるのを極力防止する対策を講じている。
また、ユーザーにおいてクロメート処理鋼板に付着した
防錆油やプレス油を脱脂する工程で、アルカリ系の脱脂
液を用いる際には、脱脂液中へのクロムの溶出がかなり
多くなるため、脱脂液の脱クロム処理が必要となる。
【0004】このようなことから、亜鉛系めっき鋼板の
白錆の発生を防止するために、クロメート処理によらな
い無公害な処理技術が数多く提案されている。このうち
有機系化合物や有機樹脂を利用した方法もいくつか提案
されており、例えば、以下のような方法を挙げることが
できる。
【0005】(1)タンニン酸を用いる方法(例えば、
特開昭51−71233号) (2)エポキシ樹脂とアミノ樹脂とタンニン酸を混合し
た熱硬化性塗料を用いる方法(例えば、特開昭63−9
0581号) (3)水系樹脂と多価フェノールカルボン酸の混合組成
物を用いる方法(例えば、特開平8−325760号)
等のようなのタンニン酸のキレート力を利用する方法
【0006】(4)ヒドラジン誘導体水溶液をブリキま
たは亜鉛鉄板の表面に塗布する表面処理方法(例えば、
特公昭53−27694号、特公昭56−10386
号) (5)アシルザルコシンとベンゾトリアソールとの混合
物にアミンを付加させて得られたアミン付加塩を含む防
錆剤を用いる方法(例えば、特開昭58−130284
号) (6)ベンゾチアゾール化合物などの複素環化合物とタ
ンニン酸を混合した処理剤を用いる方法(例えば、特開
昭57−198267号)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
の従来技術には以下に述べるような問題点がある。ま
ず、上記(1)〜(4)の方法はいずれも耐食性等の面
で問題がある。すなわち、上記(1)の方法では耐食性
が不十分であり、また処理後の均一な外観が得られな
い。また、上記(2)の方法は、特に亜鉛系またはアル
ミニウム系めっき表面に直接、薄膜状(0.1〜5μ
m)の防錆皮膜を形成することを狙いとしたものではな
く、このため亜鉛系またはアルミニウム系めっき表面に
薄膜状に適用したとしても十分な防食効果は得られな
い。また、上記(3)の方法についても同様に耐食性が
不十分である。
【0008】さらに上記(4)の方法は亜鉛系またはア
ルミニウム系めっき鋼板について適用したものではな
く、また、仮に亜鉛系またはアルミニウム系めっき鋼板
に適用したとしても、得られる皮膜はネットワーク構造
を有していないため十分なバリヤー性がなく、このため
耐食性が不十分である。また、特公昭53−23772
号、特公昭56−10386号には皮膜の均一性向上を
狙いとしてヒドラジン誘導体水溶液に水溶性高分子化合
物(ポリビニルアルコール類、マレイン酸エステル共重
合体、アクリル酸エステル共重合体等)を混合すること
が開示されているが、ヒドラジン誘導体水溶液と水溶性
高分子化合物との単なる混合物では十分な耐食性は得ら
れない。
【0009】さらに、上記(5)、(6)の方法も亜鉛
系またはアルミニウム系めっき鋼板表面に短時間で防錆
皮膜を形成することを狙いとしたものではなく、また、
仮に処理剤をめっき鋼板表面に塗布したとしても、酸素
や水などの腐食因子へのバリヤー性がないため優れた耐
食性は得られない。また、(6)の方法については、添
加剤として樹脂(エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタ
ン樹脂、ニトロセルロース樹脂、塩化ビニル樹脂等)と
の混合についても述べられているが、ベンゾチアゾール
化合物などの複素環化合物と樹脂との単なる混合物では
十分な耐食性は得られない。
【0010】また、上記(1)〜(6)の方法はいずれ
も、プレス加工などで表面に塗布した油を除去するため
に、スプレー等によるpH9〜11程度のアルカリ脱脂
を行うような実用条件においては、アルカリ脱脂によっ
て皮膜が剥離または損傷し、耐食性を保持できないとい
う問題がある。したがって、これらの方法は、防錆皮膜
を形成する方法としては実用に適したものではない。し
たがって本発明の目的は、このような従来技術の課題を
解決し、皮膜中に6価クロム等の重金属を含むことなく
優れた耐食性が得られる有機被覆鋼板を提供することに
ある。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に本発明者らが鋭意検討を行った結果、亜鉛系めっき鋼
板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、特定のキ
レート形成樹脂皮膜を形成することにより、環境や人体
に悪影響を及ぼすおそれのあるクロメート処理を行うこ
となく、無公害で且つ耐食性に優れた有機被覆鋼板が得
られることを見い出した。本発明はこのような知見に基
づきなされたもので、その特徴とする構成は以下の通り
である。
【0012】[1] 亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム
系めっき鋼板の表面に、皮膜形成有機樹脂(A)と一部
または全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導
体(C)からなる活性水素含有化合物(B)との反応生
成物を含む膜厚が0.1〜5μmの有機皮膜を有するこ
とを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板。 [2] 上記[1]の有機被覆鋼板において、皮膜形成有機樹
脂(A)がエポキシ基含有樹脂(D)であることを特徴
とする耐食性に優れた有機被覆鋼板。 [3] 上記[1]または[2]の有機被覆鋼板において、活性水
素を有するヒドラジン誘導体(C)が、活性水素を有す
るピラゾール化合物および/または活性水素を有するト
リアゾール化合物であることを特徴とする耐食性に優れ
た有機被覆鋼板。
【0013】[4] 上記[1]〜[3]のいずれかの有機被覆鋼
板において、活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)
が活性水素含有化合物(B)中に10〜100モル%含
まれることを特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板。 [5] 上記[2]〜[4]のいずれかの有機被覆鋼板において、
エポキシ基含有樹脂(D)が下記式(1)で示されるエ
ポキシ樹脂であることを特徴とする耐食性に優れた有機
被覆鋼板。
【化2】
【0014】本発明の有機被覆鋼板の特徴は、皮膜形成
有機樹脂(A)と一部または全部の化合物が活性水素を
有するヒドラジン誘導体(C)からなる活性水素含有化
合物(B)とを反応させることにより、皮膜形成用樹脂
(A)にキレート形成基としてヒドラジン誘導体(C)
を付与し、この反応生成物であるキレート形成樹脂を防
錆皮膜として亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系め
っき鋼板の表面に形成した点にある。
【0015】このような特定の反応生成物による有機皮
膜の防食機構は必ずしも明らかでないが、低分子量のキ
レート化剤ではなく、皮膜形成有機樹脂にヒドラジン誘
導体を付与することによって、(1)緻密な有機高分子皮
膜によって酸素や塩素イオンなどの腐食因子を遮断する
効果が得られること、(2)ヒドラジン誘導体がめっき皮
膜の表面に吸着し若しくはめっき皮膜表面と反応するこ
とにより、めっき皮膜表面に安定的且つ強固に密着した
緻密な不動態化層を形成できること、(3)ヒドラジン誘
導体が皮膜形成時に溶出した亜鉛イオンをトラップして
電気的に中性な不溶性キレート化合物層(錯体構造の緻
密なバリヤー層)を形成するため、めっき皮膜と有機樹
脂層の界面でのイオン伝導層の形成が抑制されて腐食の
進行が抑制されること、(4)さらに、腐食環境中におい
ても腐食によって生成した亜鉛イオンを皮膜中のフリー
のヒドラジン誘導体がトラップし、安定な金属錯体構造
を形成することによって腐食の進行が抑制されること、
などの作用効果により腐食の進行が効果的に抑制され、
優れた耐食性が得られるものと考えられる。
【0016】また、皮膜形成有機樹脂(A)として、特
にエポキシ基含有樹脂を用いた場合には、エポキシ基含
有樹脂と架橋剤との反応により緻密なバリヤー皮膜が形
成され、このバリヤー皮膜は酸素などの腐食因子の透過
抑制能に優れ、また、分子中の水酸基により素地との優
れた結合力が得られるため、特に優れた耐食性が得られ
る。さらに、活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)
として、特に活性水素を有するピラゾール化合物および
/または活性水素を有するトリアゾール化合物を用いる
ことにより、より優れた耐食性が得られる。
【0017】従来技術のように皮膜形成有機樹脂(A)
に単にヒドラジン誘導体(C)を混合しただけでは腐食
抑制の向上効果はほとんど認められない。その理由は、
皮膜形成有機樹脂の分子中に組み込まれていないヒドラ
ジン誘導体は、金属表面には吸着するものの、その吸着
生成物は低分子量のために緻密なバリヤー層にはならな
いためであると考えられる。これに対して、本発明のよ
うに皮膜形成有機樹脂(A)の分子中にヒドラジン誘導
体を組み込むことによって、格段に優れた腐食抑制効果
が得られる。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明の詳細とその限定理
由を説明する。本発明の有機被覆鋼板のベースとなる亜
鉛系めっき鋼板としては、亜鉛めっき鋼板、Zn−Ni
合金めっき鋼板、Zn−Fe合金めっき鋼板(電気めっ
き鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板)、Zn−Cr
合金めっき鋼板、Zn−Mn合金めっき鋼板、Zn−C
o合金めっき鋼板、Zn−Co−Cr合金めっき鋼板、
Zn−Cr−Ni合金めっき鋼板、Zn−Cr−Fe合
金めっき鋼板、Zn−Al合金めっき鋼板(例えば、Z
n−5%Al合金めっき鋼板、Zn−55%Al合金め
っき鋼板)、Zn−Mg合金めっき鋼板、Zn−Al−
Mgめっき鋼板、さらにはこれらのめっき鋼板のめっき
皮膜中に金属酸化物、ポリマーなどを分散した亜鉛系複
合めっき鋼板(例えば、Zn−SiO2分散めっき鋼
板)等を用いることができる。
【0019】また、上記のようなめっきのうち、同種ま
たは異種のものを2層以上めっきした複層めっき鋼板を
用いることもできる。また、本発明の有機被覆鋼板のベ
ースとなるアルミニウム系めっき鋼板としては、アルミ
ニウムめっき鋼板、Al−Si合金めっき鋼板等を用い
ることができる。また、めっき鋼板としては、鋼板面に
予めNi等の薄目付めっきを施し、その上に上記のよう
な各種めっきを施したものであってもよい。めっき方法
としては、電解法(水溶液中での電解または非水溶媒中
での電解)、溶融法および気相法のうち、実施可能ない
ずれの方法を採用することもできる。
【0020】次に、上記亜鉛系めっき鋼板またはアルミ
ニウム系めっき鋼板の表面に形成される特定の有機皮膜
について説明する。本発明において、亜鉛系めっき鋼板
またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に形成される有
機皮膜は、皮膜形成有機樹脂(A)と一部または全部の
化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)から
なる活性水素含有化合物(B)との反応生成物を含む膜
厚が0.1〜5μmの有機皮膜である。
【0021】皮膜形成有機樹脂(A)の種類としては、
一部または全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン
誘導体(C)からなる活性水素含有化合物(B)と反応
して、皮膜形成有機樹脂に活性水素含有化合物(B)が
付加、縮合などの反応により結合でき、且つ皮膜を適切
に形成できる樹脂であれば特別な制約はない。この皮膜
形成有機樹脂(A)としては、例えば、エポキシ樹脂、
変性エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹
脂、アルキド樹脂、アクリル系共重合体樹脂、ポリブタ
ジエン樹脂、フェノール樹脂、およびこれらの樹脂の付
加物または縮合物などを挙げることができ、これらのう
ちの1種を単独で、または2種以上を混合して使用する
ことができる。
【0022】また、皮膜形成有機樹脂(A)としては、
反応性、反応の容易さ、防食性などの点から、樹脂中に
エポキシ基を含有するもの(エポキシ基含有樹脂)が特
に好ましい。このエポキシ基含有樹脂(D)としては、
一部または全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン
誘導体(C)からなる活性水素含有化合物(B)と反応
して、皮膜形成有機樹脂に活性水素含有化合物(B)が
付加、縮合などの反応により結合でき、且つ皮膜を適切
に形成できる樹脂であれば特別な制約はなく、例えば、
エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、エポキシ基含有モノ
マーと共重合したアクリル系共重合体樹脂、エポキシ基
を有するポリブタジエン樹脂、エポキシ基を有するポリ
ウレタン樹脂、およびこれらの樹脂の付加物もしくは縮
合物などが挙げられ、これらのエポキシ基含有樹脂の1
種を単独で、または2種以上混合して用いることができ
る。さらに、これらのエポキシ基含有樹脂の中でも、酸
素などの腐食因子に対して優れた遮断性を有する熱硬化
性のエポキシ樹脂や変性エポキシ樹脂が特に好適であ
る。
【0023】上記エポキシ樹脂としては、ビスフェノー
ルA、ビスフェノールF、ノボラック型フェノールなど
のポリフェノール類とエピクロルヒドリンなどのエピハ
ロヒドリンとを反応させてグリシジル基を導入してなる
か、若しくはこのグリシジル基導入反応生成物にさらに
ポリフェノール類を反応させて分子量を増大させてなる
芳香族エポキシ樹脂、さらには脂肪族エポキシ樹脂、脂
環族エポキシ樹脂などが挙げられ、これらの1種を単独
で、または2種以上を混合して使用することができる。
これらのエポキシ樹脂は、特に低温での皮膜形成性を必
要とする場合には数平均分子量が1500以上であるこ
とが好適である。
【0024】上記変性エポキシ樹脂としては、上記エポ
キシ樹脂中のエポキシ基または水酸基に各種変性剤を反
応させた樹脂を挙げることができ、例えば、乾性油脂肪
酸を反応させたエポキシエステル樹脂、アクリル酸また
はメタクリル酸などを含有する重合性不飽和モノマー成
分で変性したエポキシアクリレート樹脂、イソシアネー
ト化合物を反応させたウレタン変性エポキシ樹脂などを
例示できる。
【0025】上記エポキシ基含有モノマーと共重合した
アクリル系共重合体樹脂としては、エポキシ基を有する
不飽和モノマーとアクリル酸エステルまたはメタクリル
酸エステルを必須とする重合性不飽和モノマー成分と
を、溶液重合法、エマルション重合法または懸濁重合法
等によって合成した樹脂を挙げることができる。
【0026】上記重合性不飽和モノマー成分としては、
例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)
アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−,
iso−若しくはtert−ブチル(メタ)アクリレー
ト、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシ
ル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレー
ト、ラウリル(メタ)アクリレートなどのアクリル酸ま
たはメタクリル酸のC1〜24アルキルエステル;アク
リル酸、メタクリル酸、スチレン、ビニルトルエン、ア
クリルアミド、アクリロニトリル、N−メチロール(メ
タ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリル
アミドのC1〜4アルキルエーテル化物;N,N−ジエ
チルアミノエチルメタクリレートなどを挙げることがで
きる。
【0027】また、エポキシ基を有する不飽和モノマー
としては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアク
リレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メ
タ)アクリレート等、エポキシ基と重合性不飽和基を持
つものであれば特別な制約はない。また、このエポキシ
基含有モノマーと共重合したアクリル系共重合体樹脂
は、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂
などによって変性させた樹脂とすることもできる。
【0028】前記エポキシ樹脂として特に好ましいの
は、ビスフェノールAとエピハロヒドリンとの反応生成
物である下記(1)式に示される化学構造を有する樹脂
であり、このエポキシ樹脂は特に耐食性に優れているた
め好ましい。
【化3】 このようなビスフェノールA型エポキシ樹脂の製造法は
当業界において広く知られている。また、上記化学構造
式において、qは0〜50、好ましくは1〜40、特に
好ましくは2〜20である。なお、皮膜形成有機樹脂
(A)は、有機溶剤溶解型、有機溶剤分散型、水溶解
型、水分散型のいずれであってもよい。
【0029】本発明では皮膜形成有機樹脂(A)の分子
中にヒドラジン誘導体を付与することを狙いとしてお
り、このため活性水素含有化合物(B)の少なくとも一
部(好ましくは全部)は、活性水素を有するヒドラジン
誘導体(C)であることが必要である。
【0030】皮膜形成有機樹脂(A)がエポキシ基含有
樹脂である場合、そのエポキシ基と反応する活性水素含
有化合物(B)として例えば以下に示すようなものを例
示でき、これらの1種または2種以上を使用できるが、
この場合も活性水素含有化合物(B)の少なくとも一部
(好ましくは全部)は、活性水素を有するヒドラジン誘
導体であることが必要である。 ・活性水素を有するヒドラジン誘導体 ・活性水素を有する第1級または第2級のアミン化合物 ・アンモニア、カルボン酸などの有機酸 ・塩化水素などのハロゲン化水素 ・アルコール類、チオール類 ・活性水素を有しないヒドラジン誘導体または第3級ア
ミンと酸との混合物である4級塩化剤
【0031】前記活性水素を有するヒドラジン誘導体
(C)としては、例えば、以下のものを挙げることがで
きる。 カルボヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、サリ
チル酸ヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン
酸ジヒドラジド、ドデカン酸ジヒドラジド、イソフタル
酸ジヒドラジド、チオカルボヒドラジド、4,4′−オ
キシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、ベンゾフェノ
ンヒドラゾン、アミノポリアクリルアミド等のヒドラジ
ド化合物; ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3−メ
チル−5−ピラゾロン、3−アミノ−5−メチルピラゾ
ール等のピラゾール化合物;
【0032】 1,2,4−トリアゾール、3−アミ
ノ−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−1,2,
4−トリアゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリ
アゾール、5−アミノ−3−メルカプト−1,2,4−
トリアゾール、2,3−ジヒドロ−3−オキソ−1,
2,4−トリアゾール、1H−ベンゾトリアゾール、1
−ヒドロキシベンゾトリアゾール(1水和物)、6−メ
チル−8−ヒドロキシトリアゾロピリダジン、6−フェ
ニル−8−ヒドロキシトリアゾロピリダジン、5−ヒド
ロキシ−7−メチル−1,3,8−トリアザインドリジ
ン等のトリアゾール化合物;
【0033】 5−フェニル−1,2,3,4−テト
ラゾール、5−メルカプト−1−フェニル−1,2,
3,4−テトラゾール等のテトラゾール化合物; 5−アミノ−2−メルカプト−1,3,4−チアジ
アゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジ
アゾール等のチアジアゾール化合物; マレイン酸ヒドラジド、6−メチル−3−ピリダゾ
ン、4,5−ジクロロ−3−ピリダゾン、4,5−ジブ
ロモ−3−ピリダゾン、6−メチル−4,5−ジヒドロ
−3−ピリダゾン等のピリダジン化合物
【0034】また、これらのなかでも、5員環または6
員環の環状構造を有し、環状構造中に窒素原子を有する
ピラゾール化合物、トリアゾール化合物が特に好適であ
る。これらのヒドラジン誘導体は1種を単独で、または
2種以上を混合して使用することができる。
【0035】活性水素含有化合物(B)の一部として使
用できる上記活性水素を有するアミン化合物の代表例と
しては、例えば、以下のものを挙げることができる。 ジエチレントリアミン、ヒドロキシエチルアミノエ
チルアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノ
プロピルアミンなどの1個の2級アミノ基と1個以上の
1級アミノ基を含有するアミン化合物の1級アミノ基
を、ケトン、アルデヒド若しくはカルボン酸と例えば1
00〜230℃程度の温度で加熱反応させてアルジミ
ン、ケチミン、オキサゾリン若しくはイミダゾリンに変
性した化合物;
【0036】 ジエチルアミン、ジエタノールアミ
ン、ジ−n−または−iso−プロパノールアミン、N
−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミ
ンなどの第2級モノアミン; モノエタノールアミンのようなモノアルカノールア
ミンとジアルキル(メタ)アクリルアミドとをミカエル
付加反応により付加させて得られた第2級アミン含有化
合物; モノエタノールアミン、ネオペンタノールアミン、
2−アミノプロパノール、3−アミノプロパノール、2
−ヒドロキシ−2′(アミノプロポキシ)エチルエーテ
ル等のアルカノールアミンの1級アミノ基をケチミンに
変性した化合物;
【0037】活性水素含有化合物(B)の一部として使
用できる上記4級塩化剤は、活性水素を有しないヒドラ
ジン誘導体または第3級アミンはそれ自体ではエポキシ
基と反応性を有しないので、これらをエポキシ基と反応
可能とするために酸との混合物としたものである。4級
塩化剤は、必要に応じて水の存在下でエポキシ基と反応
し、エポキシ基含有樹脂と4級塩を形成する。
【0038】4級塩化剤を得るために使用される酸は、
酢酸、乳酸などの有機酸、塩酸などの無機酸のいずれで
もよい。また、4級塩化剤を得るために使用される活性
水素を有しないヒドラジン誘導体としては、例えば3,
6−ジクロロピリダジンなどを、また、第3級アミンと
しては、例えば、ジメチルエタノールアミン、トリエチ
ルアミン、トリメチルアミン、トリイソプロピルアミ
ン、メチルジエタノールアミンなどを挙げることができ
る。
【0039】皮膜形成有機樹脂(A)と一部または全部
の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)か
らなる活性水素含有化合物(B)との反応生成物は、皮
膜形成有機樹脂(A)と活性水素含有化合物(B)とを
10〜300℃、好ましくは50〜150℃で約1〜8
時間程度反応させて得られる。
【0040】この反応は有機溶剤を加えて行ってもよ
く、使用する有機溶剤の種類は特に限定されない。例え
ば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチル
ケトン、ジブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン
類;エタノール、ブタノール、2−エチルヘキシルアル
コール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、エ
チレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレン
グリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモ
ノヘキシルエーテル、プロピレングリコール、プロピレ
ングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコー
ル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチ
レングリコールモノブチルエーテル等の水酸基を含有す
るアルコール類やエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチ
ル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート
等のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水
素等を例示でき、これらの1種または2種以上を使用す
ることができる。また、これらのなかでエポキシ樹脂と
の溶解性、塗膜形成性等の面からは、ケトン系またはエ
ーテル系の溶剤が特に好ましい。
【0041】皮膜形成有機樹脂(A)と一部または全部
の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)か
らなる活性水素含有化合物(B)との配合比率は、固形
分の割合で皮膜形成有機樹脂(A)100重量部に対し
て、活性水素含有化合物(B)を0.5〜20重量部、
特に好ましくは1.0〜10重量部とするのが望まし
い。
【0042】また、皮膜形成有機樹脂(A)がエポキシ
基含有樹脂(D)である場合には、エポキシ基含有樹脂
(D)と活性水素含有化合物(B)との配合比率は、活
性水素含有化合物(B)の活性水素基の数とエポキシ基
含有樹脂(D)のエポキシ基の数との比率[活性水素基
数/エポキシ基数]が0.01〜10、より好ましくは
0.1〜8、さらに好ましくは0.2〜4とすることが
耐食性などの点から適当である。
【0043】また、活性水素含有化合物(B)中におけ
る活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)の割合は1
0〜100モル%、より好ましくは30〜100モル
%、さら好ましくは40〜100モル%とすることが適
当である。活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)の
割合が10モル%未満では有機皮膜に十分な防錆機能を
付与することができず、得られる防錆効果は皮膜形成有
機樹脂とヒドラジン誘導体を単に混合して使用した場合
と大差なくなる。
【0044】本発明では緻密なバリヤー皮膜を形成する
ために、樹脂組成物中に硬化剤を配合し、有機皮膜を加
熱硬化させることが望ましい。樹脂組成物皮膜を形成す
る場合の硬化方法としては、(1)イソシアネートと基体
樹脂中の水酸基とのウレタン化反応を利用する硬化方
法、(2)メラミン、尿素およびベンゾグアナミンの中か
ら選ばれた1種以上にホルムアルデヒドを反応させてな
るメチロール化合物の一部若しくは全部に炭素数1〜5
の1価アルコールを反応させてなるアルキルエーテル化
アミノ樹脂と基体樹脂中の水酸基との間のエーテル化反
応を利用する硬化方法、が適当であるが、このうちイソ
シアネートと基体樹脂中の水酸基とのウレタン化反応を
主反応とすることが特に好適である。
【0045】上記(1)の硬化方法で用いるポリイソシア
ネート化合物は、1分子中に少なくとも2個のイソシア
ネート基を有する脂肪族、脂環族(複素環を含む)また
は芳香族イソシアネート化合物、若しくはそれらの化合
物を多価アルコールで部分反応させた化合物である。こ
のようなポリイソシアネート化合物としては、例えば以
下のものが例示できる。 m−またはp−フェニレンジイソシアネート、2,
4−または2,6−トリレンジイソシアネート、o−ま
たはp−キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレン
ジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、イソ
ホロンジイソシアネート
【0046】 上記の化合物単独またはそれらの混
合物と多価アルコール(エチレングリコール、プロピレ
ングリコールなどの2価アルコール類;グリセリン、ト
リメチロールプロパンなどの3価アルコール;ペンタエ
リスリトールなどの4価アルコール;ソルビトール、ジ
ペンタエリスリトールなどの6価アルコールなど)との
反応生成物であって、1分子中に少なくとも2個のイソ
シアネートが残存する化合物これらのポリイソシアネー
ト化合物は、1種を単独で、または2種以上を混合して
使用できる。
【0047】また、ポリイソシアネート化合物の保護剤
(ブロック剤)としては、例えば、 メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノー
ル、オクチルアルコールなどの脂肪族モノアルコール類 エチレングリコールおよび/またはジエチレングリ
コールのモノエーテル類、例えば、メチル、エチル、プ
ロピル(n−,iso)、ブチル(n−,iso,se
c)などのモノエーテル フェノール、クレゾールなどの芳香族アルコール アセトオキシム、メチルエチルケトンオキシムなど
のオキシム などが使用でき、これらの1種または2種以上と前記ポ
リイソシアネート化合物とを反応させることにより、少
なくとも常温下で安定に保護されたポリイソシアネート
化合物を得ることができる。
【0048】このようなポリイソシアネート化合物
(E)は、硬化剤として皮膜形成有機樹脂(A)に対
し、(A)/(E)=95/5〜55/45(不揮発分
の重量比)、好ましくは(A)/(E)=90/10〜
65/35の割合で配合するのが適当である。ポリイソ
シアネート化合物には吸水性があり、これを(A)/
(E)=55/45を超えて配合すると有機皮膜の密着
性を劣化させてしまう。さらに、有機皮膜上に上塗り塗
装を行った場合、未反応のポリイソシアネート化合物が
塗膜中に移動し、塗膜の硬化阻害や密着性不良を起こし
てしまう。このような観点から、ポリイソシアネート化
合物(E)の配合量は(A)/(E)=55/45以下
とすることが好ましい。
【0049】なお、皮膜形成有機樹脂(A)は以上のよ
うな架橋剤(硬化剤)の添加により十分に架橋するが、
さらに低温架橋性を増大させるため、公知の硬化促進触
媒を使用することが望ましい。この硬化促進触媒として
は、例えば、N−エチルモルホリン、ジブチル錫ジラウ
レート、ナフテン酸コバルト、塩化第1スズ、ナフテン
酸亜鉛、硝酸ビスマスなどが使用できる。また、例えば
皮膜形成有機樹脂(A)にエポキシ基含有樹脂を使用す
る場合、付着性など若干の物性向上を狙いとして、エポ
キシ基含有樹脂とともに公知のアクリル、アルキッド、
ポリエステル等の樹脂を混合して用いることもできる。
【0050】本発明の有機被覆鋼板が有する有機皮膜
は、通常、皮膜形成有機樹脂(A)と一部または全部の
化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)から
なる活性水素含有化合物(B)との反応生成物(樹脂組
成物)を主成分とし、さらに必要に応じて上記硬化剤の
ほか、添加剤として潤滑性付与剤(例えば、ポリエチレ
ンワックス、フッ素樹脂化合物)、防錆添加剤(例え
ば、シリカ)、有機着色顔料(例えば、縮合多環系有機
顔料、フタロシアニン系有機顔料等)、着色染料(例え
ば、有機溶剤可溶性アゾ系染料、水溶性アゾ系金属染料
等)、無機顔料(例えば、酸化チタン)、キレート剤
(例えば、チオール等)、導電性顔料(例えば、亜鉛、
アルミニウム、ニッケルなどの金属粉末、リン化鉄、ア
ンチモンドープ型酸化錫等)、カップリング剤(例え
ば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤
等)、メラミン・シアヌル酸付加物等を添加することが
できる。
【0051】また、上記主成分および添加成分を含む皮
膜形成用の塗料組成物は、通常、溶媒(有機溶剤および
/または水)を含有し、さらに必要に応じて中和剤等が
添加される。上記有機溶剤としては、上記皮膜形成有機
樹脂(A)と活性水素含有化合物(B)との反応生成物
を溶解または分散でき、塗料組成物として調整できるも
のであれば特別な制約なく、例えば、先に例示した種々
の有機溶剤を使用することができる。上記中和剤は、皮
膜形成有機樹脂(A)を中和して水性化するために必要
に応じて配合されるものであり、皮膜形成有機樹脂
(A)がカチオン性樹脂である場合には酢酸、乳酸、蟻
酸などの酸を中和剤として使用することができる。
【0052】以上述べたような有機皮膜は、亜鉛系めっ
き鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、クロ
メート処理皮膜を介することなく形成される。有機皮膜
の乾燥膜厚は0.1〜5μmとする。有機皮膜膜厚が
0.1μm未満では耐食性が不十分であり、一方、溶接
性が要求される一般の用途では膜厚が5μmを超えると
溶接性が低下する。また、より好ましい膜厚は0.5〜
3μmである。
【0053】本発明の有機被覆鋼板は、上述した皮膜形
成有機樹脂(A)と一部または全部の化合物が活性水素
を有するヒドラジン誘導体(C)からなる活性水素含有
化合物(B)との反応生成物を含む(好ましくは主成分
とする)塗料組成物を、亜鉛系めっき鋼板またはアルミ
ニウム系めっき鋼板の表面に塗布し、乾燥させることに
より製造される。めっき鋼板の表面は、上記塗料組成物
を塗布する前に必要に応じてアルカリ脱脂処理し、さら
に密着性、耐食性を向上させるために表面調整処理等の
前処理を施すことができる。
【0054】上記塗料組成物を亜鉛系めっき鋼板または
アルミニウム系めっき鋼板の表面に塗布する方法として
は、塗布法、浸漬法、スプレー法等の任意の方法を採用
できる。塗布法としては、ロールコーター(3ロール方
式、2ロール方式等)、スクイズコーター、ダイコータ
ー等のいずれの方法を用いてもよい。また、スクイズコ
ーター等による塗布処理、浸漬処理またはスプレー処理
の後に、エアナイフ法やロール絞り法により塗布量の調
整、外観の均一化、膜厚の均一化を行うことも可能であ
る。
【0055】塗料組成物の塗布後、通常は水洗すること
なく、加熱乾燥を行う。但し、本発明の有機皮膜は下地
であるめっき鋼板の表面と化学吸着もしくは反応により
結合しているので、塗料組成物の塗布後に水洗工程を実
施しても構わない。加熱乾燥処理には、ドライヤー、熱
風炉、高周波誘導加熱炉、赤外線炉等を用いることがで
きる。加熱処理は、到達板温で50〜300℃、好まし
くは80℃〜250℃の範囲で行うことが望ましい。加
熱温度が50℃未満では皮膜中の水分が多量に残り、耐
食性が不十分となる。また、加熱温度が300℃を超え
ると非経済的であるばかりでなく、皮膜に欠陥が生じて
耐食性が低下するおそれがある。
【0056】本発明は、以上述べたような有機皮膜を両
面または片面に有する鋼板を含むものである。したがっ
て、本発明鋼板の形態としては、例えば、以下のような
ものがある。 (1) 片面:めっき皮膜−有機皮膜、片面:めっき皮膜 (2) 片面:めっき皮膜−有機皮膜、片面:公知のリン酸
塩処理皮膜等 (3) 両面:めっき皮膜−有機皮膜
【0057】
【実施例】以下に皮膜形成用の樹脂組成物の合成例を示
す。 [合成例1]EP828(油化シェルエポキシ社製,エ
ポキシ当量187)1870部とビスフェノールA91
2部、テトラエチルアンモニウムブロマイド2部、メチ
ルイソブチルケトン300部を四つ口フラスコに仕込
み、140℃まで昇温して4時間反応させ、エポキシ当
量1391、固形分90%のエポキシ樹脂を得た。この
ものに、エチレングリコールモノブチルエーテル150
0部を加えてから100℃に冷却し、3,5−ジメチル
ピラゾール(分子量96)を96部とジブチルアミン
(分子量129)を129部加えて、エポキシ基が消失
するまで6時間反応させた後、冷却しながらメチルイソ
ブチルケトン205部を加えて、固形分60%のピラゾ
ール変性エポキシ樹脂を得た。これを樹脂組成物(1)
とする。この樹脂組成物(1)は、皮膜形成有機樹脂
(A)と、活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)を
50mol%含む活性水素含有化合物との反応生成物で
ある。
【0058】[合成例2]EP1007(油化シェルエ
ポキシ社製,エポキシ当量2000)4000部とエチ
レングリコールモノブチルエーテル2239部を四つ口
フラスコに仕込み、120℃まで昇温して1時間で完全
にエポキシ樹脂を溶解した。このものを100℃に冷却
し、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール(分子量8
4)を168部加えて、エポキシ基が消失するまで6時
間反応させた後、冷却しながらメチルイソブチルケトン
540部を加えて、固形分60%のトリアゾール変成エ
ポキシ樹脂を得た。これを樹脂組成物(2)とする。こ
の樹脂組成物(2)は、皮膜形成有機樹脂(A)と、活
性水素を有するヒドラジン誘導体(C)を100mol
%含む活性水素含有化合物との反応生成物である。
【0059】[合成例3]イソホロンジイソシアネート
(イソシアネート当量111)222部とメチルイソブ
チルケトン34部を四つ口フラスコに仕込み、30〜4
0℃に保ってメチルエチルケトキシム(分子量87)8
7部を3時間かけて滴下後、40℃に2時間保ち、イソ
シアネート当量309、固形分90%の部分ブロックイ
ソシアネートを得た。次いで、EP828(油化シェル
エポキシ社製、エポキシ当量187)1496部とビス
フェノールA684部、テトラエチルアンモニウムブロ
マイド1部、メチルイソブチルケトン241部を四つ口
フラスコに仕込み、140℃まで昇温して4時間反応さ
せ、エポキシ当量1090、固形分90%のエポキシ樹
脂を得た。このものに、メチルイソブチルケトン100
0部を加えてから100℃に冷却し、3−メルカプト−
1,2,4−トリアゾール(分子量101)を202部
加えて、エポキシ基が消失するまで6時間反応させた
後、上記固形分90%の部分ブロックイソシアネートを
230部加え100℃で3時間反応させ、イソシアネー
ト基が消失したことを確認した。さらに、エチレングリ
コールモノブチルエーテル461部を加えて、固形分6
0%のトリアゾール変成エポキシ樹脂を得た。これを樹
脂組成物(3)とする。この樹脂組成物(3)は、皮膜
形成有機樹脂(A)と、活性水素を有するヒドラジン誘
導体(C)を100mol%含む活性水素含有化合物と
の反応生成物である。
【0060】[合成例4]EP828(油化シェルエポ
キシ社製、エポキシ当量187)1870部とビスフェ
ノールA912部、テトラエチルアンモニウムブロマイ
ド2部、メチルイソブチルケトン300部を四つ口フラ
スコに仕込み、140℃まで昇温して4時間反応させ、
エポキシ当量1391、固形分90%のエポキシ樹脂を
得た。このものに、エチレングリコールモノブチルエー
テル1500部を加えてから100℃に冷却し、ジブチ
ルアミン(分子量129)を258部加えて、エポキシ
基が消失するまで6時間反応させた後、冷却しながらメ
チルイソブチルケトン225部を加えて、固形分60%
のエポキシアミン付加物を得た。これを樹脂組成物
(4)とする。この樹脂組成物(4)は、皮膜形成有機
樹脂(A)と、活性水素を有するヒドラジン誘導体
(C)を含まない活性水素含有化合物との反応生成物で
ある。
【0061】上記ようにして合成された樹脂組成物
(1)〜(4)に硬化剤を配合し、表1に示す塗料組成
物を作成した。家電、建材、自動車部品用の有機被覆鋼
板を得るため、板厚:0.8mm、表面粗さRa:1.
0μmの冷延鋼板に各種亜鉛系めっきまたはアルミニウ
ム系めっきを施した表2に示すめっき鋼板を処理原板と
して用い、このめっき鋼板の表面をアルカリ脱脂処理及
び水洗乾燥した後、表1に示す塗料組成物をロールコー
ターにより塗布し、各種温度で加熱乾燥して有機被覆鋼
板を作製した。有機皮膜の膜厚は、塗料組成物の固形分
(加熱残分)または塗布条件(ロールの圧下力、回転速
度等)により調整した。
【0062】得られた有機被覆鋼板について、品質性能
(皮膜外観、耐白錆性、塗料密着性)の評価を行った。
その結果を有機皮膜の皮膜構成等とともに表3〜表5に
示す。有機被覆鋼板の品質性能の評価は以下のようにし
て行った。
【0063】(1) 皮膜外観 各サンプルについて、皮膜外観の均一性(ムラの有り無
し)を目視で評価した。評価基準は、以下の通りであ
る。 ○:ムラが全くない均一な外観 △:ムラが若干目立つ外観 ×:ムラが目立つ外観
【0064】(2) 耐白錆性 各サンプルについて、塩水噴霧試験(JIS−Z−23
71)を実施し、所定時間後の白錆発生面積率で評価し
た。評価基準は、以下の通りである。 ◎ :白錆発生なし ○+:白錆発生面積率5%未満 ○ :白錆発生面積率5%以上、10%未満 ○−:白錆発生面積率10%以上、25%未満 △ :白錆発生面積率25%以上、50%未満 × :白錆発生面積率50%以上
【0065】(3) 塗料密着性 各サンプルについて、メラミン系の焼付塗料(膜厚30
μm)を塗装した後、沸水中に2時間浸漬し、直ちに碁
盤目(1mm間隔で10×10の碁盤目)のカットを入
れて、粘着テープによる貼着・剥離を行い、塗膜の剥離
面積率で評価した。評価基準は以下の通りである。 ◎:剥離なし ○:剥離面積率5%未満 △:剥離面積率5%以上、20%未満 ×:剥離面積率20%以上
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
【0069】
【表4】
【0070】
【表5】
【0071】
【発明の効果】以上述べたように本発明の有機被覆鋼板
は、製造時の処理液や製品の皮膜成分中に6価クロムを
全く含まず、しかも建材、家電、自動車等の用途の有機
被覆鋼板として高度の耐食性を有し、また、皮膜外観、
塗料密着性等にも優れている。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 古田 彰彦 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 鷺山 勝 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 春田 泰彦 神奈川県平塚市東八幡4丁目17番1号 関西ペイント株式会社内 (72)発明者 松木 弘泰 神奈川県平塚市東八幡4丁目17番1号 関西ペイント株式会社内 (72)発明者 冨田 賢一 神奈川県平塚市東八幡4丁目17番1号 関西ペイント株式会社内 (56)参考文献 特開 平7−328536(JP,A) 特開 平8−53632(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23F 11/00 C09D 163/02 C23F 11/14

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系
    めっき鋼板の表面に、皮膜形成有機樹脂(A)と一部ま
    たは全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体
    (C)からなる活性水素含有化合物(B)との反応生成
    物を含む膜厚が0.1〜5μmの有機皮膜を有すること
    を特徴とする耐食性に優れた有機被覆鋼板。
  2. 【請求項2】 皮膜形成有機樹脂(A)がエポキシ基含
    有樹脂(D)であることを特徴とする請求項1に記載の
    耐食性に優れた有機被覆鋼板。
  3. 【請求項3】 活性水素を有するヒドラジン誘導体
    (C)が、活性水素を有するピラゾール化合物および/
    または活性水素を有するトリアゾール化合物であること
    を特徴とする請求項1または2に記載の耐食性に優れた
    有機被覆鋼板。
  4. 【請求項4】 活性水素を有するヒドラジン誘導体
    (C)が活性水素含有化合物(B)中に10〜100モ
    ル%含まれることを特徴とする請求項1、2または3に
    記載の耐食性に優れた有機被覆鋼板。
  5. 【請求項5】 エポキシ基含有樹脂(D)が下記式
    (1)で示されるエポキシ樹脂であることを特徴とする
    請求項2、3または4に記載の耐食性に優れた有機被覆
    鋼板。 【化1】
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