JP2007204770A - 耐食性、耐疵つき性、耐変色性及び耐水性に優れた表面処理鋼板並びにその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】皮膜中に六価クロムを含まず、しかも優れた耐食性、耐疵つき性、耐変色性及び耐水性が得られる表面処理鋼板を提供する。
【解決手段】亜鉛系めっき鋼板の表面に、特定の化学構造を有する樹脂化合物と、第4アンモニウム塩基を有するカチオン性ウレタン樹脂と、亜鉛化合物と、ジルコニウム化合物と、リン酸又は/及びリン酸塩と、フッ酸、酢酸、硝酸、硫酸及びこれらの塩の中から選ばれる少なくとも1種の酸化合物とを特定の配合割合で含有する表面処理剤で形成された表面処理皮膜を有し、その上層に、特定の樹脂組成物と特定の防錆添加成分と固形潤滑剤を含有する有機皮膜を有する。
【選択図】なし
【解決手段】亜鉛系めっき鋼板の表面に、特定の化学構造を有する樹脂化合物と、第4アンモニウム塩基を有するカチオン性ウレタン樹脂と、亜鉛化合物と、ジルコニウム化合物と、リン酸又は/及びリン酸塩と、フッ酸、酢酸、硝酸、硫酸及びこれらの塩の中から選ばれる少なくとも1種の酸化合物とを特定の配合割合で含有する表面処理剤で形成された表面処理皮膜を有し、その上層に、特定の樹脂組成物と特定の防錆添加成分と固形潤滑剤を含有する有機皮膜を有する。
【選択図】なし
Description
本発明は、自動車、家電、建材用途に最適な表面処理鋼板であって、皮膜中にクロムを全く含まない環境適応型表面処理鋼板及びその製造方法に関するものである。
家電製品用鋼板、建材用鋼板、自動車用鋼板には、従来から主に亜鉛系めっき鋼板表面に、耐食性(耐白錆性、耐赤錆性)を向上させる目的でクロム酸、重クロム酸又はその塩類を主要成分とした処理液によるクロメート処理が施された鋼板が幅広く用いられている。このクロメート処理は、耐食性が非常に優れ且つ比較的簡単に行うことができる経済的な処理方法である。
しかしながら、クロメート処理による皮膜は公害規制物質である六価クロムを含有していることから、近年、六価クロムを用いない表面処理鋼板が要望されている。このような背景から、亜鉛系めっき鋼板の白錆の発生を防止するために六価クロムを一切使用しない、クロムフリー処理技術が数多く提案されている。
しかしながら、クロメート処理による皮膜は公害規制物質である六価クロムを含有していることから、近年、六価クロムを用いない表面処理鋼板が要望されている。このような背景から、亜鉛系めっき鋼板の白錆の発生を防止するために六価クロムを一切使用しない、クロムフリー処理技術が数多く提案されている。
上述した各分野で表面処理鋼板を使用する場合、成型加工時に使用する潤滑油や付着したごみを除去するためにアルカリ性の洗浄剤を用いることが多いが、最近では、作業工程の簡略化のために加工時の塗油と加工後のアルカリ脱脂を省略可能な鋼板として、潤滑性や耐磨耗性の良好な有機樹脂皮膜を有する鋼板や、ワックスを有機樹脂皮膜中に添加した鋼板についての要望が増加している。このような鋼板に関して、例えば、特許文献1〜6などが提案されている。
しかしながら、これらの従来技術には以下に述べるような問題点がある。
特許文献1〜3については、防錆を目的とした金属化合物や、腐食因子となる酸素、水、塩類の浸透を遅延させ得るような緻密な皮膜を形成できる樹脂を選定しており、耐食性、耐水性にはそれなりの効果が見られる。しかし、高温高湿下で長期使用された場合に、防錆金属化合物の発色、樹脂の変質による黄変、或いは亜鉛系めっき鋼板の黒変が発生するという問題がある。また、上塗り塗装時や溶接時、或いは使用環境下において高温加熱された場合、防錆金属化合物の発色、樹脂の酸化劣化・分解が原因となって表面処理めっき鋼板が黄変し、酷いときには褐変してしまうこともある。
特許文献1〜3については、防錆を目的とした金属化合物や、腐食因子となる酸素、水、塩類の浸透を遅延させ得るような緻密な皮膜を形成できる樹脂を選定しており、耐食性、耐水性にはそれなりの効果が見られる。しかし、高温高湿下で長期使用された場合に、防錆金属化合物の発色、樹脂の変質による黄変、或いは亜鉛系めっき鋼板の黒変が発生するという問題がある。また、上塗り塗装時や溶接時、或いは使用環境下において高温加熱された場合、防錆金属化合物の発色、樹脂の酸化劣化・分解が原因となって表面処理めっき鋼板が黄変し、酷いときには褐変してしまうこともある。
特許文献4〜5の方法は、二層皮膜の上層に特定の自己補修性発現物質を添加することにより耐食性への寄与効果が見られるが、自己補修性発現物質の粒子が皮膜表面から突出していると粒子が研磨剤のような働きをするため、ワックスの性状を制御しなければ耐疵つき性が不十分となる。
特許文献6は、ポリオレフィンワックスに加えさらに耐磨耗性に優れるウレタン系樹脂を用いることで耐疵付き性への効果は大きいが、ウレタン系樹脂とシリカとポリオレフィンワックスによる防錆効果はほとんどみられず、耐食性が十分とはいえない。また、下層皮膜によって耐食性を得る手法であるが、クロメート皮膜同等の耐食性を得るために必要なリン酸成分が多くなり、皮膜中に残存するリン酸成分が湿潤環境下で吸水することで皮膜が白化してしまうため、耐水性が劣る。
特許文献6は、ポリオレフィンワックスに加えさらに耐磨耗性に優れるウレタン系樹脂を用いることで耐疵付き性への効果は大きいが、ウレタン系樹脂とシリカとポリオレフィンワックスによる防錆効果はほとんどみられず、耐食性が十分とはいえない。また、下層皮膜によって耐食性を得る手法であるが、クロメート皮膜同等の耐食性を得るために必要なリン酸成分が多くなり、皮膜中に残存するリン酸成分が湿潤環境下で吸水することで皮膜が白化してしまうため、耐水性が劣る。
したがって本発明の目的は、このような従来技術の課題を解決し、皮膜中に六価クロムなどの公害規制物質を含有することなく優れた耐食性が得られ、しかも耐疵つき性、耐変色性及び耐水性にも優れた表面処理鋼板を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明者らが鋭意検討を行った結果、亜鉛系めっき鋼板の表面に、第1層皮膜として、特定の化学構造を有する樹脂化合物と、特定のカチオン性官能基を有するウレタン樹脂と、亜鉛化合物と、ジルコニウム化合物と、リン酸又はリン酸塩と、特定の酸化合物を所定の割合で含有する表面処理剤によって表面処理皮膜を形成し、その上層に第2層皮膜として、特定のキレート形成樹脂に六価クロムに代わる特定の自己補修発現物質と固形潤滑剤を適量配合した有機皮膜を形成することにより、クロメート皮膜と同等以上の優れた耐食性及び耐水性を有し、且つ耐疵つき性、耐変色性にも優れた表面処理鋼板が得られることを見出した。
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
[1] 亜鉛系めっき鋼板の表面に、第1層皮膜として、下記一般式(I)で表される樹脂化合物(A)と、第4アンモニウム塩基を有するカチオン性ウレタン樹脂(B)と、亜鉛化合物(C)と、ジルコニウム化合物(D)と、リン酸又は/及びリン酸塩(E)と、フッ酸、酢酸、硝酸、硫酸及びこれらの塩の中から選ばれる少なくとも1種の酸化合物(F)とを含有し、且つ樹脂化合物(A)とカチオン性ウレタン樹脂(B)の固形分換算での配合比[A:B]が7:3〜4:6であり、樹脂化合物(A)とカチオン性ウレタン樹脂(B)の固形分の合計量に対して、亜鉛化合物(C)を2〜20質量%、ジルコニウム化合物(D)を2〜20質量%、リン酸又は/及びリン酸塩(E)を5〜30質量%、酸化合物(F)を0.1〜5質量%含有する表面処理剤を塗布し、乾燥することにより形成された皮膜厚が0.01〜3μmの表面処理皮膜を有し、
式中、ベンゼン環に結合しているY1及びY2は、それぞれ互いに独立に水素、又は下記一般式(II)、又は(III)により表されるZ基であり、1ベンゼン環当たりのZ基の置換数の平均値は0.2〜1.0である。nは2〜50の整数を表す。
式(II)及び(III)中、R1、R2、R3、R4及びR5は、それぞれ互いに独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基を表し、A−は水酸イオン又は酸イオンを表す。
その上部に第2層皮膜として、皮膜形成有機樹脂(J)と一部又は全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(L)からなる活性水素含有化合物(K)との反応生成物(X)と、下記(a)〜(e)の中から選ばれる1種以上の防錆添加成分(Y)と、固形潤滑剤(Z)とを含み、前記反応生成物(X)の固形分100質量部に対して防錆添加成分(Y)の合計の含有量が1〜100質量部、固形潤滑剤(Z)の含有量が0.1〜15質量部である、皮膜厚が0.01〜5μmの有機皮膜を有することを特徴とする耐食性、耐疵つき性、耐変色性及び耐水性に優れた表面処理鋼板。
(a)リン酸塩
(b)Caイオン交換シリカ
(c)モリブデン酸塩
(d)酸化ケイ素
(e)トリアゾール類、チオール類、チアジアゾール類、チアゾール類、チウラム類の中から選ばれる1種以上の有機化合物
[2] 上記[1]の表面処理鋼板おいて、有機皮膜に含まれる固形潤滑剤(Z)の平均粒径Dと有機皮膜の皮膜厚tの比D/tが1.5〜15であることを特徴とする耐食性、耐疵つき性、耐変色性及び耐水性に優れた表面処理鋼板。
[1] 亜鉛系めっき鋼板の表面に、第1層皮膜として、下記一般式(I)で表される樹脂化合物(A)と、第4アンモニウム塩基を有するカチオン性ウレタン樹脂(B)と、亜鉛化合物(C)と、ジルコニウム化合物(D)と、リン酸又は/及びリン酸塩(E)と、フッ酸、酢酸、硝酸、硫酸及びこれらの塩の中から選ばれる少なくとも1種の酸化合物(F)とを含有し、且つ樹脂化合物(A)とカチオン性ウレタン樹脂(B)の固形分換算での配合比[A:B]が7:3〜4:6であり、樹脂化合物(A)とカチオン性ウレタン樹脂(B)の固形分の合計量に対して、亜鉛化合物(C)を2〜20質量%、ジルコニウム化合物(D)を2〜20質量%、リン酸又は/及びリン酸塩(E)を5〜30質量%、酸化合物(F)を0.1〜5質量%含有する表面処理剤を塗布し、乾燥することにより形成された皮膜厚が0.01〜3μmの表面処理皮膜を有し、
その上部に第2層皮膜として、皮膜形成有機樹脂(J)と一部又は全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(L)からなる活性水素含有化合物(K)との反応生成物(X)と、下記(a)〜(e)の中から選ばれる1種以上の防錆添加成分(Y)と、固形潤滑剤(Z)とを含み、前記反応生成物(X)の固形分100質量部に対して防錆添加成分(Y)の合計の含有量が1〜100質量部、固形潤滑剤(Z)の含有量が0.1〜15質量部である、皮膜厚が0.01〜5μmの有機皮膜を有することを特徴とする耐食性、耐疵つき性、耐変色性及び耐水性に優れた表面処理鋼板。
(a)リン酸塩
(b)Caイオン交換シリカ
(c)モリブデン酸塩
(d)酸化ケイ素
(e)トリアゾール類、チオール類、チアジアゾール類、チアゾール類、チウラム類の中から選ばれる1種以上の有機化合物
[2] 上記[1]の表面処理鋼板おいて、有機皮膜に含まれる固形潤滑剤(Z)の平均粒径Dと有機皮膜の皮膜厚tの比D/tが1.5〜15であることを特徴とする耐食性、耐疵つき性、耐変色性及び耐水性に優れた表面処理鋼板。
[3] 亜鉛系めっき鋼板の表面に、下記一般式(I)で表される樹脂化合物(A)と、第4アンモニウム塩基を有するカチオン性ウレタン樹脂(B)と、亜鉛化合物(C)と、ジルコニウム化合物(D)と、リン酸又は/及びリン酸塩(E)と、フッ酸、酢酸、硝酸、硫酸及びこれらの塩の中から選ばれる少なくとも1種の酸化合物(F)とを含有し、且つ樹脂化合物(A)とカチオン性ウレタン樹脂(B)の固形分換算での配合比[A:B]が7:3〜4:6であり、樹脂化合物(A)とカチオン性ウレタン樹脂(B)の固形分の合計量に対して、亜鉛化合物(C)を2〜20質量%、ジルコニウム化合物(D)を2〜20質量%、リン酸又は/及びリン酸塩(E)を5〜30質量%、酸化合物(F)を0.1〜5質量%含有する表面処理剤を塗布し、到達板温が30〜300℃となる温度で乾燥することにより、皮膜厚が0.01〜3μmの表面処理皮膜を形成し、
式中、ベンゼン環に結合しているY1及びY2は、それぞれ互いに独立に水素、又は下記一般式(II)、又は(III)により表されるZ基であり、1ベンゼン環当たりのZ基の置換数の平均値は0.2〜1.0である。nは2〜50の整数を表す。
式(II)及び(III)中、R1、R2、R3、R4及びR5は、それぞれ互いに独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基を表し、A−は水酸イオン又は酸イオンを表す。
その上部に、皮膜形成有機樹脂(J)と一部又は全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(L)からなる活性水素含有化合物(K)との反応生成物(X)と、下記(a)〜(e)の中から選ばれる1種以上の防錆添加成分(Y)と、固形潤滑剤(Z)とを含み、前記反応生成物(X)の固形分100質量部に対して防錆添加成分(Y)の合計の含有量が1〜100質量部、固形潤滑剤(Z)の含有量が0.1〜15質量部である塗料組成物を塗布し、到達板温が50〜300℃となる温度で乾燥することにより、皮膜厚が0.01〜5μmの有機皮膜を形成することを特徴とする耐食性、耐疵つき性、耐変色性及び耐水性に優れた表面処理鋼板の製造方法。
(a)リン酸塩
(b)Caイオン交換シリカ
(c)モリブデン酸塩
(d)酸化ケイ素
(e)トリアゾール類、チオール類、チアジアゾール類、チアゾール類、チウラム類の中から選ばれる1種以上の有機化合物
[4] 上記[3]の製造方法おいて、有機皮膜に含まれる固形潤滑剤(Z)の平均粒径Dと有機皮膜の皮膜厚tの比D/tを1.5〜15とし、且つ、前記固形潤滑剤(Z)の軟化点を皮膜乾燥温度以上とすることを特徴とする耐食性、耐疵つき性、耐変色性及び耐水性に優れた表面処理鋼板の製造方法。
その上部に、皮膜形成有機樹脂(J)と一部又は全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(L)からなる活性水素含有化合物(K)との反応生成物(X)と、下記(a)〜(e)の中から選ばれる1種以上の防錆添加成分(Y)と、固形潤滑剤(Z)とを含み、前記反応生成物(X)の固形分100質量部に対して防錆添加成分(Y)の合計の含有量が1〜100質量部、固形潤滑剤(Z)の含有量が0.1〜15質量部である塗料組成物を塗布し、到達板温が50〜300℃となる温度で乾燥することにより、皮膜厚が0.01〜5μmの有機皮膜を形成することを特徴とする耐食性、耐疵つき性、耐変色性及び耐水性に優れた表面処理鋼板の製造方法。
(a)リン酸塩
(b)Caイオン交換シリカ
(c)モリブデン酸塩
(d)酸化ケイ素
(e)トリアゾール類、チオール類、チアジアゾール類、チアゾール類、チウラム類の中から選ばれる1種以上の有機化合物
[4] 上記[3]の製造方法おいて、有機皮膜に含まれる固形潤滑剤(Z)の平均粒径Dと有機皮膜の皮膜厚tの比D/tを1.5〜15とし、且つ、前記固形潤滑剤(Z)の軟化点を皮膜乾燥温度以上とすることを特徴とする耐食性、耐疵つき性、耐変色性及び耐水性に優れた表面処理鋼板の製造方法。
本発明の表面処理鋼板は、皮膜中に六価クロムを含まないにも拘わらず非常に優れた耐食性を示し、しかも耐疵つき性、耐変色性及び耐水性にも優れている。
本発明の表面処理鋼板のベースとなる亜鉛系めっき鋼板としては、例えば、亜鉛めっき鋼板、Zn−Ni合金めっき鋼板、Zn−Fe合金めっき鋼板(電気めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板)、Zn−Cr合金めっき鋼板、Zn−Mn合金めっき鋼板、Zn−Co合金めっき鋼板、Zn−Co−Cr合金めっき鋼板、Zn−Cr−Ni合金めっき鋼板、Zn−Cr−Fe合金めっき鋼板、Zn−Al−Mg合金めっき鋼板(例えば、Zn−6%Al−3%Mg合金めっき鋼板、Zn−11%Al−3%Mg合金めっき鋼板)、Zn−Al合金めっき鋼板(例えば、Zn−5%Al合金めっき鋼板、Zn−55%Al合金めっき鋼板)などを用いることができる。また、これらのめっき鋼板のめっき皮膜中に少量の添加元素または不純物元素としてニッケル、コバルト、マンガン、鉄、モリブデン、タングステン、チタン、クロム、アルミニウム、マグネシウム、鉛、アンチモン、錫、銅などの1種以上を含有しためっき鋼板を用いることもできる。さらに、以上のようなめっき鋼板のめっき皮膜中に、シリカなどの金属酸化物、ポリマーなどの1種以上を分散しためっき鋼板(例えば、Zn−SiO2分散めっき鋼板)などを用いることもできる。
また、上記のようなめっきのうち、同種又は異種のものを2層以上めっきした複層めっき鋼板を用いることができる。
また、めっき鋼板としては鋼板面にあらかじめNiなどの薄目付けのめっきを施し、その上に上記のような各種めっきを施したものであってもよい。
めっき方法としては、電解法(水溶液中での電解、非水溶媒中での電解)、溶融法、気相法のうち、実施可能ないずれの方法も採用することができる。
また、上記のようなめっきのうち、同種又は異種のものを2層以上めっきした複層めっき鋼板を用いることができる。
また、めっき鋼板としては鋼板面にあらかじめNiなどの薄目付けのめっきを施し、その上に上記のような各種めっきを施したものであってもよい。
めっき方法としては、電解法(水溶液中での電解、非水溶媒中での電解)、溶融法、気相法のうち、実施可能ないずれの方法も採用することができる。
また、めっき皮膜表面に表面処理皮膜を形成した際に皮膜欠陥やムラが生じないようにするため、必要に応じて、予めめっき皮膜表面にアルカリ脱脂、溶剤脱脂、表面調整処理(アルカリ性の表面調整処理、酸性の表面調整処理)等の処理を施しておくことができる。また、表面処理鋼板の使用環境下での黒変(めっき表面の酸化現象の一種)を防止する目的で、必要に応じて、予めめっき皮膜表面に鉄族金属イオン(Niイオン,Coイオン,Feイオンの1種以上)を含む酸性又はアルカリ性水溶液による表面調整処理を施しておくこともできる。また、電気亜鉛めっき鋼板を下地鋼板として用いる場合には、黒変を防止する目的で電気めっき浴に鉄族金属イオン(Niイオン,Coイオン,Feイオンの1種以上)を添加し、めっき皮膜中にこれらの金属を1ppm以上含有させておくことができる。この場合、めっき皮膜中の鉄族金属濃度の上限については特に限定はない。
本発明の表面処理鋼板は、上記亜鉛系めっき鋼板の表面に、第1層皮膜として、特定の樹脂化合物(A)と、第4アンモニウム塩基を有するカチオン性ウレタン樹脂(B)と、亜鉛化合物(C)と、ジルコニウム化合物(D)と、リン酸又は/及びリン酸塩(E)と、フッ酸、酢酸、硝酸、硫酸及びこれらの塩の中から選ばれる少なくとも1種の酸化合物(F)とを含有する表面処理剤(表面処理組成物)を塗布し、乾燥することにより表面処理皮膜を形成し、その上部に第2層皮膜として、皮膜形成有機樹脂(J)と一部又は全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(L)からなる活性水素含有化合物(K)との反応生成物(X)と、特定の防錆添加成分(Y)と、固形潤滑剤(Z)とを含む有機皮膜を形成したものである。これらの表面処理皮膜及び有機皮膜は六価クロムを含まない。
まず、上記表面処理皮膜及びこの皮膜を形成するための表面処理剤について説明する。
上記表面処理剤(表面処理組成物)に含まれる樹脂化合物(A)は耐食性を付与するために配合するもので、その化学構造は下記一般式(I)により表される。
式中、ベンゼン環に結合しているY1及びY2は、それぞれ互いに独立に水素、又は下記一般式(II)、又は(III)により表されるZ基であり、1ベンゼン環当たりのZ基の置換数の平均値は0.2〜1.0である。nは2〜50の整数を表す。
式(II)及び(III)中、R1、R2、R3、R4及びR5は、それぞれ互いに独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基を表し、A−は水酸イオン又は酸イオンを表す。
上記表面処理剤(表面処理組成物)に含まれる樹脂化合物(A)は耐食性を付与するために配合するもので、その化学構造は下記一般式(I)により表される。
ここで、上記一般式(I)において、Z基の置換数の平均値とは、全Z基導入数を全ベンゼン環数(即ち2n)で除した数値のことである。この平均値が0.2未満では表面処理剤の保存安定性が不十分となり、一方、1.0を超えると表面処理皮膜の耐水性が低下し、これに伴って白錆抑制効果も低下する。また、nは平均重合度であり、このnが2未満では皮膜のバリア効果が小さくなり、耐食性、耐アルカリ性が不十分となる。一方、nが50を超えると水溶性の低下、増粘などによって処理剤中での安定性が低下し、表面処理剤の保存安定性が不十分となる。
上記一般式(II)および(III)において、アルキル基又はヒドロキシアルキル基の炭素数が10を超えると樹脂化合物(A)を十分に水溶化することができず、処理剤中で不安定となり適用できなくなる。また、R1、R2、R3、R4及びR5の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、ヒドロキシイソブチル等を挙げることができる。また、A−の酸イオンの具体例としては、硫酸イオン、硝酸イオン、酢酸イオン、フッ素イオン、リン酸イオン等を挙げることができる。
一般式(I)で表される樹脂化合物(A)は、ビスフェノール−ホルマリン縮合物であり、その合成方法に特に制限はないが、例えば、アルカリ触媒存在下、ビスフェノールAにホルマリンとアミンを作用させることにより得ることができる。
一般式(I)で表される樹脂化合物(A)は、ビスフェノール−ホルマリン縮合物であり、その合成方法に特に制限はないが、例えば、アルカリ触媒存在下、ビスフェノールAにホルマリンとアミンを作用させることにより得ることができる。
表面処理剤(表面処理組成物)に含まれるカチオン性ウレタン樹脂(B)は、カチオン性官能基として第4アンモニウム塩基を有するものであればよく、構成されるモノマー成分であるポリオール、イソシアネート成分及び重合方法に特別な制限はない。カチオン性官能基としては、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、トリメチルアミノ基、トリエチルアミノ基等が挙げられるが、第4アンモニウム塩基であれば本発明の性能を損なわない限り制限はない。第4アンモニウム塩基にするために対イオンが必要となるが、この対イオンとしては、硫酸イオン、硝酸イオン、酢酸イオン、フッ素イオン、リン酸イオン等を挙げることができる。
第4アンモニウム塩基を有するカチオン性ウレタン樹脂(B)は、形成される皮膜を緻密化してバリア性を高めることに効果がある。そのため水、塩類等のような腐食因子の浸透を遅延させることが可能となり、耐食性や耐水性が向上する。また、アルカリ液に溶解しにくい皮膜とすることができ、アルカリ液に対する耐久性も高められる。
第4アンモニウム塩基を有するカチオン性ウレタン樹脂(B)は、形成される皮膜を緻密化してバリア性を高めることに効果がある。そのため水、塩類等のような腐食因子の浸透を遅延させることが可能となり、耐食性や耐水性が向上する。また、アルカリ液に溶解しにくい皮膜とすることができ、アルカリ液に対する耐久性も高められる。
樹脂化合物(A)とカチオン性ウレタン樹脂(B)の固形分換算での配合比[A:B]は7:3〜4:6、好ましくは6:4〜5:5とする。この配合比[A:B]において、樹脂化合物(A)が7を超えると耐水性が低下し、4未満では耐食性が低下する。樹脂化合物(A)は白錆の発生を遅延させることに対して有効であるが、水やアルカリ液が浸透しやすい。しかし、カチオン性ウレタン樹脂(B)を配合することで造膜性が向上し、皮膜中への水分等の浸透を抑制することができるため、耐水性を保持できる。したがって、上記配合比の範囲において、耐食性と耐水性のバランスが保たれるのである。
表面処理剤(表面処理組成物)に含まれる亜鉛化合物(C)は、亜鉛系めっきの白錆発生を抑制する効果がある。さらに、高温高湿下でのめっき黒変、皮膜の変色(黒変、黄変)を抑制するとともに、塗装時の高温焼付けや長時間加熱による皮膜変色も抑制する効果もある。この亜鉛化合物(C)としては、酢酸亜鉛、硝酸亜鉛、リン酸亜鉛、リン酸二水素亜鉛、リン酸カルシウム亜鉛、硫酸亜鉛、フッ化亜鉛、硼酸亜鉛、硼フッ化亜鉛、酸化亜鉛、塩化亜鉛、炭酸亜鉛等の無機化合物、或いはメチオニン、酢酸、酒石酸、クエン酸、2,4-ペンタンジオン、N-n-オクチル-イソチアゾリン-3-オン、4,5-ジクロロ-N-n-オクチル-イソチアゾリン-3-オン等のイソチアゾリン-3-オン、1-ヒドロキシピリジン-2-チオン、3-ヒドロキシ-4-メチルチアゾール-2(3H)-チオン、C3-C5アルキル-1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、3-ヒドロキシ-4-メチルチアゾール-2(3H)-チオン、1-ヒドロキシピリジン-2-チオン等の有機化合物を配位子とする有機金属錯体等が挙げられ、これらの中から選ばれる1種以上を用いることができる。
亜鉛化合物(C)の配合量は、樹脂化合物(A)とカチオン性ウレタン樹脂(B)の固形分の合計量に対して2〜20質量%、好ましくは5〜15質量%とする。亜鉛化合物(C)の配合量が2質量%未満では耐食性が低下し、一方、20質量%を超えると表面処理剤の保管安定性が低下する。
亜鉛化合物(C)の配合量は、樹脂化合物(A)とカチオン性ウレタン樹脂(B)の固形分の合計量に対して2〜20質量%、好ましくは5〜15質量%とする。亜鉛化合物(C)の配合量が2質量%未満では耐食性が低下し、一方、20質量%を超えると表面処理剤の保管安定性が低下する。
表面処理剤(表面処理組成物)に含まれるジルコニウム化合物(D)は、亜鉛系めっき鋼板の白錆発生を抑制し、長期に亘って高耐食性を維持できる効果がある。
ジルコニウム化合物(D)はジルコニウムの供給源となるものであればよく、対となるアニオンに特別な制限はない。具体例としては、酢酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、リン酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム、ジルコンフッ化水素酸等が挙げられ、これらの中から選ばれる1種以上を用いることができる。
ジルコニウム化合物(D)の配合量は、樹脂化合物(A)とカチオン性ウレタン樹脂(B)の固形分の合計量に対して2〜20質量%、好ましくは5〜15質量%とする。ジルコニウム化合物(D)の配合量が2%未満では耐食性が低下し、一方、20質量%を超えると表面処理剤の保管安定性が低下する。
ジルコニウム化合物(D)はジルコニウムの供給源となるものであればよく、対となるアニオンに特別な制限はない。具体例としては、酢酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、リン酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム、ジルコンフッ化水素酸等が挙げられ、これらの中から選ばれる1種以上を用いることができる。
ジルコニウム化合物(D)の配合量は、樹脂化合物(A)とカチオン性ウレタン樹脂(B)の固形分の合計量に対して2〜20質量%、好ましくは5〜15質量%とする。ジルコニウム化合物(D)の配合量が2%未満では耐食性が低下し、一方、20質量%を超えると表面処理剤の保管安定性が低下する。
表面処理剤(表面処理組成物)に含まれるリン酸又は/及びリン酸塩(E)は、亜鉛系めっき鋼板表面で亜鉛系めっきと反応し、形成した皮膜が白錆発生を抑制する効果がある。リン酸・リン酸塩(E)としては、リン酸、ピロリン酸、トリメタリン酸、テトラメタリン酸、ヘキサメタリン酸、ポリリン酸、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム等が挙げられ、これらの中から選ばれる1種以上を用いることができる。
リン酸又は/及びリン酸塩(E)の配合量は、樹脂化合物(A)とカチオン性ウレタン樹脂(B)の固形分の合計量に対して5〜30質量%、好ましくは10〜25質量%とする。リン酸又は/及びリン酸塩(E)の配合量が5質量%未満では耐食性が低下し、一方、30質量%を超えると皮膜が吸水しやすくなり、耐食性及び耐水性が低下する。
リン酸又は/及びリン酸塩(E)の配合量は、樹脂化合物(A)とカチオン性ウレタン樹脂(B)の固形分の合計量に対して5〜30質量%、好ましくは10〜25質量%とする。リン酸又は/及びリン酸塩(E)の配合量が5質量%未満では耐食性が低下し、一方、30質量%を超えると皮膜が吸水しやすくなり、耐食性及び耐水性が低下する。
表面処理剤(表面処理組成物)に含まれる酸化合物(F)としては、フッ酸、硝酸、硫酸等の無機酸、酢酸、蓚酸、クエン酸、こはく酸、りんご酸等の有機酸、これらの無機酸、有機酸の塩等が挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。上記塩としては、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
但し、上記無機酸、有機酸のなかでは、フッ酸、酢酸、硝酸、硫酸及びこれらの塩の中から選ばれる少なくとも1種を用いることが特に好ましい。
上記酸化合物(F)はエッチング性を有し、亜鉛系めっき鋼板表面で亜鉛系めっきとの反応性を促進する。これにより、形成する皮膜とめっきとの界面を強固にすることで密着性を高め、めっき表面を不活性化する効果がある。
但し、上記無機酸、有機酸のなかでは、フッ酸、酢酸、硝酸、硫酸及びこれらの塩の中から選ばれる少なくとも1種を用いることが特に好ましい。
上記酸化合物(F)はエッチング性を有し、亜鉛系めっき鋼板表面で亜鉛系めっきとの反応性を促進する。これにより、形成する皮膜とめっきとの界面を強固にすることで密着性を高め、めっき表面を不活性化する効果がある。
酸化合物(F)の配合量は、樹脂化合物(A)とカチオン性ウレタン樹脂(B)の固形分の合計量に対して0.1〜5質量%、好ましくは0.5〜3質量%とする。酸化合物(F)の配合量が0.1質量%未満では耐食性が低下し、一方、5質量%を超えると皮膜が吸水しやすくなり、耐食性及び耐水性が低下する。
以上のような成分(A)〜(F)が添加された(好ましくは、主成分として添加された)表面処理剤により形成された皮膜は、酸化合物(F)によって活性化されためっき金属表面に、リン酸又は/及びリン酸塩(E)が反応してめっき金属と強固な密着性を有する皮膜を形成するが、これに、(1)酸化合物(F)やリン酸又は/及びリン酸塩(E)だけでは皮膜形成が不十分な部分を亜鉛化合物(C)やジルコニウム化合物(D)による難溶性皮膜が覆う、(2)特定の樹脂化合物(A)と第4アンモニウム塩基を有するカチオン性ウレタン樹脂(B)が造膜性及び疎水性の高い皮膜で腐食因子の進入を抑制する、という作用が複合化することよって極めて高い耐食性が得られる。
表面処理剤(表面処理組成物)には、以上述べた成分以外に無機充填剤やワックスなどの潤滑剤等を添加することもできる。また、レベリング性を調整するために、界面活性剤や溶剤を含有させてもよい。
表面処理剤(表面処理組成物)には、以上述べた成分以外に無機充填剤やワックスなどの潤滑剤等を添加することもできる。また、レベリング性を調整するために、界面活性剤や溶剤を含有させてもよい。
次に、上記表面処理皮膜(第1層皮膜)の上部に第2層皮膜として形成される有機皮膜について説明する。
この有機皮膜は、皮膜形成有機樹脂(J)と一部又は全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(L)からなる活性水素含有化合物(K)との反応生成物(X)と、自己補修性発現物質である下記(a)〜(e)の中から選ばれる1種以上の防錆添加成分(Y)と、固形潤滑剤(Z)とを含む(好ましくは主成分として含む)ものである。
(a)リン酸塩
(b)Caイオン交換シリカ
(c)モリブデン酸塩
(d)酸化ケイ素
(e)トリアゾール類、チオール類、チアジアゾール類、チアゾール類、チウラム類の中から選ばれる1種以上の有機化合物
この有機皮膜は、皮膜形成有機樹脂(J)と一部又は全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(L)からなる活性水素含有化合物(K)との反応生成物(X)と、自己補修性発現物質である下記(a)〜(e)の中から選ばれる1種以上の防錆添加成分(Y)と、固形潤滑剤(Z)とを含む(好ましくは主成分として含む)ものである。
(a)リン酸塩
(b)Caイオン交換シリカ
(c)モリブデン酸塩
(d)酸化ケイ素
(e)トリアゾール類、チオール類、チアジアゾール類、チアゾール類、チウラム類の中から選ばれる1種以上の有機化合物
皮膜形成有機樹脂(J)の種類としては、一部又は全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(L)からなる活性水素含有化合物(K)と反応して、皮膜形成有機樹脂に活性水素含有化合物(K)が付加、縮合などの反応により結合でき、且つ皮膜を適切に形成できる樹脂であれば特別な制約はない。この皮膜形成有機樹脂(J)としては、例えば、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、アクリル系共重合体樹脂、ポリブタジエン樹脂、フェノール樹脂、及びこれらの樹脂の付加物又は縮合物などを挙げることができ、これらのうちの1種を単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
また、皮膜形成有機樹脂(J)としては、反応性、反応の容易さ、防食性などの点から、樹脂中にエポキシ基を含有するエポキシ基含有樹脂(M)が特に好ましい。このエポキシ基含有樹脂(M)としては、一部または全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(L)からなる活性水素含有化合物(K)と反応して、皮膜形成有機樹脂に活性水素含有化合物(K)が付加、縮合などの反応により結合でき、且つ皮膜を適切に形成できる樹脂であれば特別な制約はなく、例えば、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、エポキシ基含有モノマーと共重合したアクリル系共重合体樹脂、エポキシ基を有するポリブタジエン樹脂、エポキシ基を有するポリウレタン樹脂、及びこれらの樹脂の付加物若しくは縮合物などが挙げられ、これらのエポキシ基含有樹脂の1種を単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
また、これらのエポキシ基含有樹脂(M)の中でも、めっき表面との密着性、耐食性の点からエポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂が特に好適である。またその中でも、酸素などの腐食因子に対して優れた遮断性を有する熱硬化性のエポキシ樹脂や変性エポキシ樹脂が最適であり、とりわけ高度な導電性及びスポット溶接性を得るために皮膜の付着量を低レベルにする場合には特に有利である。
前記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ノボラック型フェノールなどのポリフェノール類とエピクロルヒドリンなどのエピハロヒドリンとを反応させてグリシジル基を導入してなるか、若しくはこのグリシジル基導入反応生成物にさらにポリフェノール類を反応させて分子量を増大させてなる芳香族エポキシ樹脂、さらには脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂などが挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。これらのエポキシ樹脂は、特に低温での皮膜形成性を必要とする場合には数平均分子量が1500以上であることが好適である。
前記変性エポキシ樹脂としては、上記エポキシ樹脂中のエポキシ基又は水酸基に各種変性剤を反応させた樹脂を挙げることができ、例えば、乾性油脂肪酸を反応させたエポキシエステル樹脂、アクリル酸又はメタクリル酸などを含有する重合性不飽和モノマー成分で変性したエポキシアクリレート樹脂、イソシアネート化合物を反応させたウレタン変性エポキシ樹脂などを例示できる。
前記エポキシ基含有モノマーと共重合したアクリル系共重合体樹脂としては、エポキシ基を有する不飽和モノマーとアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルを必須とする重合性不飽和モノマー成分とを、溶液重合法、エマルション重合法又は懸濁重合法などによって合成した樹脂を挙げることができる。
前記エポキシ基含有モノマーと共重合したアクリル系共重合体樹脂としては、エポキシ基を有する不飽和モノマーとアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルを必須とする重合性不飽和モノマー成分とを、溶液重合法、エマルション重合法又は懸濁重合法などによって合成した樹脂を挙げることができる。
前記重合性不飽和モノマー成分としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−,iso−若しくはtert−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどのアクリル酸又はメタクリル酸のC1〜24アルキルエステル;アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、ビニルトルエン、アクリルアミド、アクリロニトリル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドのC1〜4アルキルエーテル化物;N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートなどを挙げることができる。
また、エポキシ基を有する不飽和モノマーとしては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなど、エポキシ基と重合性不飽和基を持つものであれば特別な制約はない。
また、このエポキシ基含有モノマーと共重合したアクリル系共重合体樹脂は、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などによって変性させた樹脂とすることもできる。
また、このエポキシ基含有モノマーと共重合したアクリル系共重合体樹脂は、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などによって変性させた樹脂とすることもできる。
前記エポキシ樹脂として特に好ましいのは、ビスフェノールAとエピハロヒドリンとの反応生成物である下記(1)式に示される化学構造を有する樹脂であり、このエポキシ樹脂は特に耐食性に優れているため好ましい。
このようなビスフェノールA型エポキシ樹脂の製造法は当業界において広く知られている。また、上記化学構造式において、qは0〜50、好ましくは1〜40、特に好ましくは2〜20である。
なお、皮膜形成有機樹脂(J)は、有機溶剤溶解型、有機溶剤分散型、水溶解型、水分散型のいずれであってもよい。
なお、皮膜形成有機樹脂(J)は、有機溶剤溶解型、有機溶剤分散型、水溶解型、水分散型のいずれであってもよい。
本発明では皮膜形成有機樹脂(J)の分子中にヒドラジン誘導体を付与することを狙いとしており、このため活性水素含有化合物(K)の少なくとも一部(好ましくは全部)は、活性水素を有するヒドラジン誘導体(L)であることが必要である。
皮膜形成有機樹脂(J)がエポキシ基含有樹脂である場合、そのエポキシ基と反応する活性水素含有化合物(K)として例えば以下に示すようなものを例示でき、これらの1種または2種以上を使用できるが、この場合も活性水素含有化合物(K)の少なくとも一部(好ましくは全部)は、活性水素を有するヒドラジン誘導体であることが必要である。
・活性水素を有するヒドラジン誘導体
・活性水素を有する第1級又は第2級のアミン化合物
・アンモニア、カルボン酸などの有機酸
・塩化水素などのハロゲン化水素
・アルコール類、チオール類
・活性水素を有しないヒドラジン誘導体又は第3級アミンと酸との混合物である4級塩化剤
皮膜形成有機樹脂(J)がエポキシ基含有樹脂である場合、そのエポキシ基と反応する活性水素含有化合物(K)として例えば以下に示すようなものを例示でき、これらの1種または2種以上を使用できるが、この場合も活性水素含有化合物(K)の少なくとも一部(好ましくは全部)は、活性水素を有するヒドラジン誘導体であることが必要である。
・活性水素を有するヒドラジン誘導体
・活性水素を有する第1級又は第2級のアミン化合物
・アンモニア、カルボン酸などの有機酸
・塩化水素などのハロゲン化水素
・アルコール類、チオール類
・活性水素を有しないヒドラジン誘導体又は第3級アミンと酸との混合物である4級塩化剤
前記活性水素を有するヒドラジン誘導体(L)としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
(1)カルボヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、チオカルボヒドラジド、4,4′−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、ベンゾフェノンヒドラゾン、アミノポリアクリルアミドなどのヒドラジド化合物;
(2)ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチル−5−ピラゾロン、3−アミノ−5−メチルピラゾールなどのピラゾール化合物;
(1)カルボヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、チオカルボヒドラジド、4,4′−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、ベンゾフェノンヒドラゾン、アミノポリアクリルアミドなどのヒドラジド化合物;
(2)ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチル−5−ピラゾロン、3−アミノ−5−メチルピラゾールなどのピラゾール化合物;
(3)1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、5−アミノ−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、2,3−ジヒドロ−3−オキソ−1,2,4−トリアゾール、1H−ベンゾトリアゾール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(1水和物)、6−メチル−8−ヒドロキシトリアゾロピリダジン、6−フェニル−8−ヒドロキシトリアゾロピリダジン、5−ヒドロキシ−7−メチル−1,3,8−トリアザインドリジンなどのトリアゾール化合物;
(4)5−フェニル−1,2,3,4−テトラゾール、5−メルカプト−1−フェニル−1,2,3,4−テトラゾールなどのテトラゾール化合物;
(5)5−アミノ−2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールなどのチアジアゾール化合物;
(6)マレイン酸ヒドラジド、6−メチル−3−ピリダゾン、4,5−ジクロロ−3−ピリダゾン、4,5−ジブロモ−3−ピリダゾン、6−メチル−4,5−ジヒドロ−3−ピリダゾンなどのピリダジン化合物
また、これらのなかでも、5員環又は6員環の環状構造を有し、環状構造中に窒素原子を有するピラゾール化合物、トリアゾール化合物が特に好適である。
これらのヒドラジン誘導体は1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
(5)5−アミノ−2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールなどのチアジアゾール化合物;
(6)マレイン酸ヒドラジド、6−メチル−3−ピリダゾン、4,5−ジクロロ−3−ピリダゾン、4,5−ジブロモ−3−ピリダゾン、6−メチル−4,5−ジヒドロ−3−ピリダゾンなどのピリダジン化合物
また、これらのなかでも、5員環又は6員環の環状構造を有し、環状構造中に窒素原子を有するピラゾール化合物、トリアゾール化合物が特に好適である。
これらのヒドラジン誘導体は1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
活性水素含有化合物(K)の一部として使用できる上記活性水素を有するアミン化合物の代表例としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
(1)ジエチレントリアミン、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミンなどの1個の2級アミノ基と1個以上の1級アミノ基を含有するアミン化合物の1級アミノ基を、ケトン、アルデヒド若しくはカルボン酸と例えば100〜230℃程度の温度で加熱反応させてアルジミン、ケチミン、オキサゾリン若しくはイミダゾリンに変性した化合物;
(1)ジエチレントリアミン、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミンなどの1個の2級アミノ基と1個以上の1級アミノ基を含有するアミン化合物の1級アミノ基を、ケトン、アルデヒド若しくはカルボン酸と例えば100〜230℃程度の温度で加熱反応させてアルジミン、ケチミン、オキサゾリン若しくはイミダゾリンに変性した化合物;
(2)ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジ−n−又は−iso−プロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミンなどの第2級モノアミン;
(3)モノエタノールアミンのようなモノアルカノールアミンとジアルキル(メタ)アクリルアミドとをミカエル付加反応により付加させて得られた第2級アミン含有化合物;
(4)モノエタノールアミン、ネオペンタノールアミン、2−アミノプロパノール、3−アミノプロパノール、2−ヒドロキシ−2′(アミノプロポキシ)エチルエーテルなどのアルカノールアミンの1級アミノ基をケチミンに変性した化合物;
(3)モノエタノールアミンのようなモノアルカノールアミンとジアルキル(メタ)アクリルアミドとをミカエル付加反応により付加させて得られた第2級アミン含有化合物;
(4)モノエタノールアミン、ネオペンタノールアミン、2−アミノプロパノール、3−アミノプロパノール、2−ヒドロキシ−2′(アミノプロポキシ)エチルエーテルなどのアルカノールアミンの1級アミノ基をケチミンに変性した化合物;
活性水素含有化合物(K)の一部として使用できる上記4級塩化剤は、活性水素を有しないヒドラジン誘導体又は第3級アミンはそれ自体ではエポキシ基と反応性を有しないので、これらをエポキシ基と反応可能とするために酸との混合物としたものである。4級塩化剤は、必要に応じて水の存在下でエポキシ基と反応し、エポキシ基含有樹脂と4級塩を形成する。
4級塩化剤を得るために使用される酸は、酢酸、乳酸などの有機酸、塩酸などの無機酸のいずれでもよい。また、4級塩化剤を得るために使用される活性水素を有しないヒドラジン誘導体としては、例えば、3,6−ジクロロピリダジンなどを、また、第3級アミンとしては、例えば、ジメチルエタノールアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリイソプロピルアミン、メチルジエタノールアミンなどを挙げることができる。
4級塩化剤を得るために使用される酸は、酢酸、乳酸などの有機酸、塩酸などの無機酸のいずれでもよい。また、4級塩化剤を得るために使用される活性水素を有しないヒドラジン誘導体としては、例えば、3,6−ジクロロピリダジンなどを、また、第3級アミンとしては、例えば、ジメチルエタノールアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリイソプロピルアミン、メチルジエタノールアミンなどを挙げることができる。
皮膜形成有機樹脂(J)と、一部又は全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(L)からなる活性水素含有化合物(K)との反応生成物(X)は、皮膜形成有機樹脂(J)と活性水素含有化合物(K)とを10〜300℃、好ましくは50〜150℃で約1〜8時間程度反応させて得られる。
この反応は有機溶剤を加えて行ってもよく、使用する有機溶剤の種類は特に限定されない。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;エタノール、ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどの水酸基を含有するアルコール類やエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのエステル類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素等を例示でき、これらの1種又は2種以上を使用することができる。また、これらのなかでエポキシ樹脂との溶解性、塗膜形成性などの面からは、ケトン系又はエーテル系の溶剤が特に好ましい。
この反応は有機溶剤を加えて行ってもよく、使用する有機溶剤の種類は特に限定されない。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;エタノール、ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどの水酸基を含有するアルコール類やエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのエステル類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素等を例示でき、これらの1種又は2種以上を使用することができる。また、これらのなかでエポキシ樹脂との溶解性、塗膜形成性などの面からは、ケトン系又はエーテル系の溶剤が特に好ましい。
皮膜形成有機樹脂(J)と一部又は全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(L)からなる活性水素含有化合物(K)との配合比率は、固形分の割合で皮膜形成有機樹脂(J)100質量部に対して、活性水素含有化合物(K)を0.5〜20質量部、特に好ましくは1.0〜10質量部とするのが望ましい。
また、皮膜形成有機樹脂(J)がエポキシ基含有樹脂(M)である場合には、エポキシ基含有樹脂(M)と活性水素含有化合物(K)との配合比率は、活性水素含有化合物(K)の活性水素基の数とエポキシ基含有樹脂(M)のエポキシ基の数との比率[活性水素基数/エポキシ基数]が0.01〜10、より好ましくは0.1〜8、さらに好ましくは0.2〜4とすることが耐食性などの点から適当である。
また、皮膜形成有機樹脂(J)がエポキシ基含有樹脂(M)である場合には、エポキシ基含有樹脂(M)と活性水素含有化合物(K)との配合比率は、活性水素含有化合物(K)の活性水素基の数とエポキシ基含有樹脂(M)のエポキシ基の数との比率[活性水素基数/エポキシ基数]が0.01〜10、より好ましくは0.1〜8、さらに好ましくは0.2〜4とすることが耐食性などの点から適当である。
また、活性水素含有化合物(K)中における活性水素を有するヒドラジン誘導体(L)の割合は10〜100モル%、より好ましくは30〜100モル%、さら好ましくは40〜100モル%とすることが適当である。活性水素を有するヒドラジン誘導体(L)の割合が10モル%未満では有機皮膜に十分な防錆機能を付与することができず、得られる防錆効果は皮膜形成有機樹脂とヒドラジン誘導体を単に混合して使用した場合と大差なくなる。
本発明では緻密なバリア皮膜を形成するために、樹脂組成物中に硬化剤を配合し、有機皮膜を加熱硬化させることが望ましい。
樹脂組成物皮膜を形成する場合の硬化方法としては、(1)イソシアネートと基体樹脂中の水酸基とのウレタン化反応を利用する硬化方法、(2)メラミン、尿素及びベンゾグアナミンの中から選ばれた1種以上にホルムアルデヒドを反応させてなるメチロール化合物の一部若しくは全部に炭素数1〜5の1価アルコールを反応させてなるアルキルエーテル化アミノ樹脂と基体樹脂中の水酸基との間のエーテル化反応を利用する硬化方法、が適当であるが、このうちイソシアネートと基体樹脂中の水酸基とのウレタン化反応を主反応とすることが特に好適である。
樹脂組成物皮膜を形成する場合の硬化方法としては、(1)イソシアネートと基体樹脂中の水酸基とのウレタン化反応を利用する硬化方法、(2)メラミン、尿素及びベンゾグアナミンの中から選ばれた1種以上にホルムアルデヒドを反応させてなるメチロール化合物の一部若しくは全部に炭素数1〜5の1価アルコールを反応させてなるアルキルエーテル化アミノ樹脂と基体樹脂中の水酸基との間のエーテル化反応を利用する硬化方法、が適当であるが、このうちイソシアネートと基体樹脂中の水酸基とのウレタン化反応を主反応とすることが特に好適である。
上記(1)の硬化方法で用いるポリイソシアネート化合物は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する脂肪族、脂環族(複素環を含む)又は芳香族イソシアネート化合物、若しくはそれらの化合物を多価アルコールで部分反応させた化合物である。このようなポリイソシアネート化合物としては、例えば以下のものが例示できる。
(i)m−又はp−フェニレンジイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート、o−又はp−キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート
(ii)上記(i)の化合物単独又はそれらの混合物と多価アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコールなどの2価アルコール類;グリセリン、トリメチロールプロパンなどの3価アルコール;ペンタエリスリトールなどの4価アルコール;ソルビトール、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコールなど)との反応生成物であって、1分子中に少なくとも2個のイソシアネートが残存する化合物
これらのポリイソシアネート化合物は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用できる。
(i)m−又はp−フェニレンジイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート、o−又はp−キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート
(ii)上記(i)の化合物単独又はそれらの混合物と多価アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコールなどの2価アルコール類;グリセリン、トリメチロールプロパンなどの3価アルコール;ペンタエリスリトールなどの4価アルコール;ソルビトール、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコールなど)との反応生成物であって、1分子中に少なくとも2個のイソシアネートが残存する化合物
これらのポリイソシアネート化合物は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用できる。
また、ポリイソシアネート化合物の保護剤(ブロック剤)としては、例えば、
(1)メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、オクチルアルコールなどの脂肪族モノアルコール類
(2)エチレングリコール及び/又はジエチレングリコールのモノエーテル類、例えば、メチル、エチル、プロピル(n−,iso)、ブチル(n−,iso,sec)などのモノエーテル
(3)フェノール、クレゾールなどの芳香族アルコール
(4)アセトオキシム、メチルエチルケトンオキシムなどのオキシム
などが使用でき、これらの1種又は2種以上と前記ポリイソシアネート化合物とを反応させることにより、少なくとも常温下で安定に保護されたポリイソシアネート化合物を得ることができる。
(1)メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、オクチルアルコールなどの脂肪族モノアルコール類
(2)エチレングリコール及び/又はジエチレングリコールのモノエーテル類、例えば、メチル、エチル、プロピル(n−,iso)、ブチル(n−,iso,sec)などのモノエーテル
(3)フェノール、クレゾールなどの芳香族アルコール
(4)アセトオキシム、メチルエチルケトンオキシムなどのオキシム
などが使用でき、これらの1種又は2種以上と前記ポリイソシアネート化合物とを反応させることにより、少なくとも常温下で安定に保護されたポリイソシアネート化合物を得ることができる。
このようなポリイソシアネート化合物(N)は、硬化剤として皮膜形成有機樹脂(J)に対し、(J)/(N)=95/5〜55/45(不揮発分の質重量比)、好ましくは(J)/(N)=90/10〜65/35の割合で配合するのが適当である。ポリイソシアネート化合物には吸水性があり、これを(J)/(N)=55/45を超えて配合すると有機皮膜の密着性を劣化させるおそれがある。さらに、有機皮膜上に上塗り塗装を行った場合、未反応のポリイソシアネート化合物が塗膜中に移動し、塗膜の硬化阻害や密着性不良を起こすおそれがある。このような観点から、ポリイソシアネート化合物(N)の配合量は(J)/(N)=55/45以下とすることが好ましい。
なお、皮膜形成有機樹脂(J)は以上のような架橋剤(硬化剤)の添加により十分に架橋するが、さらに低温架橋性を増大させるため、公知の硬化促進触媒を使用することが望ましい。この硬化促進触媒としては、例えば、N−エチルモルホリン、ジブチル錫ジラウレート、ナフテン酸コバルト、塩化第1スズ、ナフテン酸亜鉛、硝酸ビスマスなどが使用できる。
また、例えば、皮膜形成有機樹脂(J)にエポキシ基含有樹脂を使用する場合、付着性など若干の物性向上を狙いとして、エポキシ基含有樹脂とともに公知のアクリル、アルキッド、ポリエステルなどの樹脂を混合して用いることもできる。
また、例えば、皮膜形成有機樹脂(J)にエポキシ基含有樹脂を使用する場合、付着性など若干の物性向上を狙いとして、エポキシ基含有樹脂とともに公知のアクリル、アルキッド、ポリエステルなどの樹脂を混合して用いることもできる。
次に、自己補修性発現物質である防錆添加成分(Y)について説明する。
上記成分(a)であるリン酸塩は、単塩、複塩などの全ての種類の塩を含む。また、それを構成する金属カチオンに限定はなく、リン酸亜鉛、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸アルミニウムなどのいずれの金属カチオンでもよい。また、リン酸イオンの骨格や縮合度などにも限定はなく、正塩、二水素塩、一水素塩又は亜リン酸塩のいずれでもよく、さらに、正塩はオルトリン酸塩の他、ポリリン酸塩などの全ての縮合リン酸塩を含む。
上記成分(a)であるリン酸塩は、単塩、複塩などの全ての種類の塩を含む。また、それを構成する金属カチオンに限定はなく、リン酸亜鉛、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸アルミニウムなどのいずれの金属カチオンでもよい。また、リン酸イオンの骨格や縮合度などにも限定はなく、正塩、二水素塩、一水素塩又は亜リン酸塩のいずれでもよく、さらに、正塩はオルトリン酸塩の他、ポリリン酸塩などの全ての縮合リン酸塩を含む。
また、上記成分(a)であるリン酸塩とともにカルシウム化合物を複合添加することにより、耐食性をさらに向上させることができる。カルシウム化合物は、カルシウム酸化物、カルシウム水酸化物、カルシウム塩のいずれでもよく、これらの1種又は2種以上を使用できる。また、カルシウム塩の種類にも特に制限はなく、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムなどのようなカチオンとしてカルシウムのみを含む単塩のほか、リン酸カルシウム・亜鉛、リン酸カルシウム・マグネシウムなどのようなカルシウムとカルシウム以外のカチオンを含む複塩を使用してもよい。
また、上記成分(b)であるCaイオン交換シリカは、カルシウムイオンを多孔質シリカゲル粉末の表面に固定したもので、腐食環境下でCaイオンが放出されて沈殿膜を形成する。
Caイオン交換シリカとしては任意のものを用いることができるが、平均粒子径が6μm以下、望ましくは4μm以下のものが好ましく、例えば、平均粒子径が2〜4μmのものを用いることができる。Caイオン交換シリカの平均粒子径が6μmを超えると耐食性が低下するとともに、塗料組成物中での分散安定性が低下する。
Caイオン交換シリカ中のCa濃度は1mass%以上、望ましくは2〜8mass%であることが好ましい。Ca濃度が1mass%未満ではCa放出による防錆効果が十分に得られない。なお、Caイオン交換シリカの表面積、pH、吸油量については特に限定されない。
Caイオン交換シリカとしては任意のものを用いることができるが、平均粒子径が6μm以下、望ましくは4μm以下のものが好ましく、例えば、平均粒子径が2〜4μmのものを用いることができる。Caイオン交換シリカの平均粒子径が6μmを超えると耐食性が低下するとともに、塗料組成物中での分散安定性が低下する。
Caイオン交換シリカ中のCa濃度は1mass%以上、望ましくは2〜8mass%であることが好ましい。Ca濃度が1mass%未満ではCa放出による防錆効果が十分に得られない。なお、Caイオン交換シリカの表面積、pH、吸油量については特に限定されない。
以上のようなCaイオン交換シリカとしては、W.R.Grace&Co.製のSHIELDEX C303(平均粒子径2.5〜3.5μm、Ca濃度3mass%)、SHIELDEX AC3(平均粒子径2.3〜3.1μm、Ca濃度6mass%)、SHIELDEX AC5(平均粒子径3.8〜5.2μm、Ca濃度6mass%)(以上、いずれも商品名)、富士シリシア化学(株)製のSHIELDEX(平均粒子径3μm、Ca濃度6〜8mass%)、SHIELDEX SY710(平均粒子径2.2〜2.5μm、Ca濃度6.6〜7.5mass%)(以上、いずれも商品名)などを用いることができる。
上記成分(c)であるモリブデン酸塩は、その骨格、縮合度に限定はなく、例えば、オルトモリブデン酸塩、パラモリブデン酸塩、メタモリブデン酸塩などが挙げられる。また、単塩、複塩などの全ての塩を含み、複塩としてはリン酸モリブデン酸塩などが挙げられる。
上記成分(d)である酸化ケイ素は、コロイダルシリカ、乾式シリカのいずれでもよい。コロイダルシリカとしては、水系皮膜形成樹脂をベースとする場合には、例えば、日産化学工業(株)製のスノーテックスO、スノーテックスN、スノーテックス20、スノーテックス30、スノーテックス40、スノーテックスC、スノーテックスS(以上、いずれも商品名)、触媒化成工業(株)製のカタロイドS、カタロイドSI−350、カタロイドSI−40、カタロイドSA、カタロイドSN(以上、いずれも商品名)、旭電化工業(株)製のアデライトAT−20〜50、アデライトAT−20N、アデライトAT−300、アデライトAT−300S、アデライトAT20Q(以上、いずれも商品名)などを用いることができる。
上記成分(d)である酸化ケイ素は、コロイダルシリカ、乾式シリカのいずれでもよい。コロイダルシリカとしては、水系皮膜形成樹脂をベースとする場合には、例えば、日産化学工業(株)製のスノーテックスO、スノーテックスN、スノーテックス20、スノーテックス30、スノーテックス40、スノーテックスC、スノーテックスS(以上、いずれも商品名)、触媒化成工業(株)製のカタロイドS、カタロイドSI−350、カタロイドSI−40、カタロイドSA、カタロイドSN(以上、いずれも商品名)、旭電化工業(株)製のアデライトAT−20〜50、アデライトAT−20N、アデライトAT−300、アデライトAT−300S、アデライトAT20Q(以上、いずれも商品名)などを用いることができる。
また、溶剤系皮膜形成樹脂をベースとする場合には、例えば、日産化学工業(株)製のオルガノシリカゾルMA−ST−M、オルガノシリカゾルIPA−ST、オルガノシリカゾルEG−ST、オルガノシリカゾルE−ST−ZL、オルガノシリカゾルNPC−ST、オルガノシリカゾルDMAC−ST、オルガノシリカゾルDMAC−ST−ZL、オルガノシリカゾルXBA−ST、オルガノシリカゾルMIBK−ST(以上、いずれも商品名)、触媒化成工業(株)製のOSCAL−1132、OSCAL−1232、OSCAL−1332、OSCAL−1432、OSCAL−1532、OSCAL−1632、OSCAL−1722(以上、いずれも商品名)などを用いることができる。
特に、有機溶剤分散型シリカゾルは、分散性に優れ、ヒュームドシリカよりも耐食性に優れている。
また、ヒュームドシリカとしては、例えば、日本アエロジル(株)製のAEROSIL R971、AEROSIL R812、AEROSIL R811、AEROSIL R974、AEROSIL R202、AEROSIL R805、AEROSIL 130、AEROSIL 200、AEROSIL 300、AEROSIL 300CF(以上、いずれも商品名)などを用いることができる。
微粒子シリカは、腐食環境下において緻密で安定な亜鉛の腐食生成物の生成に寄与し、この腐食生成物がめっき表面に緻密に形成されることによって、腐食の促進を抑制することができると考えられている。
耐食性の観点からは、微粒子シリカは粒子径が5〜50nm、望ましくは5〜20nm、さらに好ましくは5〜15nmのものを用いるのが好ましい。
また、ヒュームドシリカとしては、例えば、日本アエロジル(株)製のAEROSIL R971、AEROSIL R812、AEROSIL R811、AEROSIL R974、AEROSIL R202、AEROSIL R805、AEROSIL 130、AEROSIL 200、AEROSIL 300、AEROSIL 300CF(以上、いずれも商品名)などを用いることができる。
微粒子シリカは、腐食環境下において緻密で安定な亜鉛の腐食生成物の生成に寄与し、この腐食生成物がめっき表面に緻密に形成されることによって、腐食の促進を抑制することができると考えられている。
耐食性の観点からは、微粒子シリカは粒子径が5〜50nm、望ましくは5〜20nm、さらに好ましくは5〜15nmのものを用いるのが好ましい。
上記成分(e)の有機化合物のうち、トリアゾール類としては、1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、5−アミノ−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、1H−ベンゾトリアゾールなどが、またチオール類としては、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール、2−メルカプトベンツイミダゾールなどが、またチアジアゾール類としては、5−アミノ−2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールなどが、またチアゾール類としては、2−N,N−ジエチルチオベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール類などが、またチウラム類としては、テトラエチルチウラムジスルフィドなどが、それぞれ挙げられる。
有機皮膜中での上記防錆添加成分(Y)の合計の配合量(上記成分(a)〜(e)の中から選ばれる1種以上の自己補修性発現物質の合計の配合量)は、基体樹脂(反応生成物(X))の固形分100質量部に対して、1〜100質量部、好ましくは5〜80質量部、さらに好ましくは10〜50質量部とする。防錆添加成分(Y)の配合量が1質量部未満では耐食性向上効果が小さい。一方、配合量が100質量部を超えても耐食性が低下するので好ましくない。
以上述べた第2層皮膜である有機皮膜の防食機構については、次のように考えられる。
すなわち、単なる低分子量のキレート化剤ではなく、皮膜形成有機樹脂にヒドラジン誘導体を付与することによって、(1)緻密な有機高分子皮膜により酸素や塩素イオンなどの腐食因子を遮断する効果が得られること、(2)ヒドラジン誘導体が第1層皮膜の表面と安定で強固に結合して不動態化層を形成できること、(3)腐食反応によって溶出した亜鉛イオンを皮膜中のフリーのヒドラジン誘導体基がトラップし、安定な不溶性キレート化合物層を形成するため、界面でのイオン伝導層の形成が抑制されて腐食の進行が抑制されること、などの作用効果により腐食の進行が効果的に抑制され、優れた耐食性が得られるものと考えられる。
すなわち、単なる低分子量のキレート化剤ではなく、皮膜形成有機樹脂にヒドラジン誘導体を付与することによって、(1)緻密な有機高分子皮膜により酸素や塩素イオンなどの腐食因子を遮断する効果が得られること、(2)ヒドラジン誘導体が第1層皮膜の表面と安定で強固に結合して不動態化層を形成できること、(3)腐食反応によって溶出した亜鉛イオンを皮膜中のフリーのヒドラジン誘導体基がトラップし、安定な不溶性キレート化合物層を形成するため、界面でのイオン伝導層の形成が抑制されて腐食の進行が抑制されること、などの作用効果により腐食の進行が効果的に抑制され、優れた耐食性が得られるものと考えられる。
また、皮膜形成有機樹脂(J)として、特にエポキシ基含有樹脂を用いた場合には、エポキシ基含有樹脂と架橋剤との反応により緻密なバリア皮膜が形成され、このバリア皮膜は酸素などの腐食因子の透過抑制能に優れ、また、分子中の水酸基により素地との優れた結合力が得られるため、特に優れた耐食性(バリア性)が得られる。さらに、活性水素を有するヒドラジン誘導体(L)として、特に活性水素を有するピラゾール化合物または/および活性水素を有するトリアゾール化合物を用いることにより、より優れた耐食性(バリア性)が得られる。
従来技術として皮膜形成有機樹脂にヒドラジン誘導体を混合した組成物を用いる方法が知られているが、この従来技術のように皮膜形成有機樹脂に単にヒドラジン誘導体を混合しただけでは、腐食抑制の向上効果はほとんど認められない。その理由は、皮膜形成有機樹脂の分子中に組み込まれていないヒドラジン誘導体は、キレート化合物を形成するものの、そのキレート化合物は低分子量のため緻密なバリア層にはならないためであると考えられる。これに対して、本発明のように皮膜形成有機樹脂の分子中にヒドラジン誘導体を組み込むことにより、格段に優れた腐食抑制効果が得られる。
また、前記防錆添加成分(Y)(自己補修性発現物質)を皮膜中に適量配合することにより得られる防食機構は以下のように考えられる。
まず、上記(a)の成分は、腐食環境化において加水分解によってリン酸イオンに解離し、溶出金属と錯形成反応を起こすことにより保護皮膜を形成する。
また、上記(b)の成分の場合は、腐食環境下でNaイオンなどのカチオンが侵入すると、イオン交換作用によりシリカ表面のCaイオンが放出され、さらに、腐食環境下でのカソード反応によりOHイオンが生成してめっき界面近傍のpHが上昇すると、Caイオン交換シリカから放出されたCaイオンがCa(OH)2としてめっき界面近傍に沈殿し、緻密で難溶性の生成物として欠陥を封鎖し、腐食反応を抑制する。また、溶出した亜鉛イオンはCaイオンと交換されてシリカ表面に固定される効果も考えられる。
まず、上記(a)の成分は、腐食環境化において加水分解によってリン酸イオンに解離し、溶出金属と錯形成反応を起こすことにより保護皮膜を形成する。
また、上記(b)の成分の場合は、腐食環境下でNaイオンなどのカチオンが侵入すると、イオン交換作用によりシリカ表面のCaイオンが放出され、さらに、腐食環境下でのカソード反応によりOHイオンが生成してめっき界面近傍のpHが上昇すると、Caイオン交換シリカから放出されたCaイオンがCa(OH)2としてめっき界面近傍に沈殿し、緻密で難溶性の生成物として欠陥を封鎖し、腐食反応を抑制する。また、溶出した亜鉛イオンはCaイオンと交換されてシリカ表面に固定される効果も考えられる。
また、上記(c)の成分は、不動態化効果によって自己補修性を発現する。すなわち、腐食環境下で溶存酸素と共にめっき皮膜表面に緻密な酸化物を形成し、これが腐食起点を封鎖することによって腐食反応を抑制する。
また、上記(d)の成分は、腐食環境下において緻密で安定な亜鉛の腐食生成物の生成に寄与し、この腐食生成物がめっき表面に緻密に形成されることによって、腐食の促進を抑制する。
また、上記(e)の成分は吸着効果によって自己補修性を発現する。すなわち、腐食によって溶出した亜鉛やアルミニウムが、上記(e)の成分が有する窒素や硫黄を含む極性基に吸着して不活性皮膜を形成し、これが腐食起点を封鎖することによって腐食反応を抑制する。
また、上記(d)の成分は、腐食環境下において緻密で安定な亜鉛の腐食生成物の生成に寄与し、この腐食生成物がめっき表面に緻密に形成されることによって、腐食の促進を抑制する。
また、上記(e)の成分は吸着効果によって自己補修性を発現する。すなわち、腐食によって溶出した亜鉛やアルミニウムが、上記(e)の成分が有する窒素や硫黄を含む極性基に吸着して不活性皮膜を形成し、これが腐食起点を封鎖することによって腐食反応を抑制する。
一般の有機皮膜中に上記(a)〜(e)の成分を配合した場合でも、ある程度の防食効果は得られるが、本発明のように特定の有機高分子樹脂からなるバリア性に優れた有機皮膜中に上記(a)〜(e)の自己補修性発現物質を配合したことにより、両者の効果(バリア性と自己補修性)が複合化し、これにより極めて優れた防食効果が発揮されるものと考えられる。
また、上記(a)の成分とともにカルシウム化合物を複合添加した場合には、カルシウム化合物は、腐食環境下においてめっき金属よりも優先的に溶出することにより、めっき金属の溶出をトリガーとせずにリン酸イオンと錯形成反応を起こして緻密で難溶性の保護皮膜を形成し、腐食反応を抑制する。
なお、以上述べた(a)〜(e)の成分のうちの2種以上を複合添加すれば、各々の成分による腐食抑制作用が複合化されるため、より優れた耐食性が得られる。
また、上記(a)の成分とともにカルシウム化合物を複合添加した場合には、カルシウム化合物は、腐食環境下においてめっき金属よりも優先的に溶出することにより、めっき金属の溶出をトリガーとせずにリン酸イオンと錯形成反応を起こして緻密で難溶性の保護皮膜を形成し、腐食反応を抑制する。
なお、以上述べた(a)〜(e)の成分のうちの2種以上を複合添加すれば、各々の成分による腐食抑制作用が複合化されるため、より優れた耐食性が得られる。
また、有機皮膜中には上記の防錆添加成分に加えて、腐食抑制剤として、他の酸化物微粒子(例えば、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化アンチモンなど)、リンモリブデン酸塩(例えば、リンモリブデン酸アルミニウムなど)、有機リン酸及びその塩(例えば、フィチン酸、フィチン酸塩、ホスホン酸、ホスホン酸塩、及びこれらの金属塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩など)、有機インヒビター(例えば、ヒドラジン誘導体、チオール化合物、ジチオカルバミン酸塩など)などの1種又は2種以上を添加できる。
次に、皮膜の耐疵つき性(加工性)を向上させるために添加される固形潤滑剤(Z)について説明する。
この固形潤滑剤(Z)としては、例えば、ポリオール化合物と脂肪酸とのエステル化物である脂肪酸エステルワックス、シリコン系ワックス、フッ素系ワックス、ポリエチレン等のポリオレフィンワックス、ラノリン系ワックス、モンタンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナウバワックスなどを挙げることができる。これらの固形潤滑剤は1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
この固形潤滑剤の平均粒径Dと有機皮膜の皮膜厚tの比D/tは、1.5〜15であることが好ましい。この比D/tが15を超えると皮膜の摺動時に固形潤滑剤が皮膜から剥離し易く、一方、1.5未満では固形潤滑剤が有機皮膜表面から十分に突出していないため、耐疵つき性が劣る傾向がある。
この固形潤滑剤(Z)としては、例えば、ポリオール化合物と脂肪酸とのエステル化物である脂肪酸エステルワックス、シリコン系ワックス、フッ素系ワックス、ポリエチレン等のポリオレフィンワックス、ラノリン系ワックス、モンタンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナウバワックスなどを挙げることができる。これらの固形潤滑剤は1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
この固形潤滑剤の平均粒径Dと有機皮膜の皮膜厚tの比D/tは、1.5〜15であることが好ましい。この比D/tが15を超えると皮膜の摺動時に固形潤滑剤が皮膜から剥離し易く、一方、1.5未満では固形潤滑剤が有機皮膜表面から十分に突出していないため、耐疵つき性が劣る傾向がある。
固形潤滑剤の配合量(Z)は、基体樹脂(反応生成物(X))の固形分100質量部に対して、0.1〜15重量部、好ましくは1〜5質量部とする。配合量が0.1質量部未満では耐疵つき性(加工性)が乏しく、一方、配合量が15質量部を超えると塗料密着性が低下するので好ましくない。
また、固形潤滑剤の軟化点は、塗料組成物を塗布した後の乾燥処理における皮膜乾燥温度以上であることが好ましい。固形潤滑剤の軟化点が皮膜乾燥温度未満では、固形潤滑剤が溶融してしまうため本来の潤滑性が発揮されず、耐疵つき性が低下する。
また、固形潤滑剤の軟化点は、塗料組成物を塗布した後の乾燥処理における皮膜乾燥温度以上であることが好ましい。固形潤滑剤の軟化点が皮膜乾燥温度未満では、固形潤滑剤が溶融してしまうため本来の潤滑性が発揮されず、耐疵つき性が低下する。
本発明の表面処理鋼板において、表面処理皮膜(第1層皮膜)の皮膜厚は0.01〜3μm、好ましくは0.1〜2.5μm、さらに好ましくは0.3〜2μmとする。表面処理皮膜の皮膜厚が0.01μm未満では耐食性が不十分であり、一方、3μmを超えると加工性が低下する。また、有機皮膜(第2層皮膜)の皮膜厚は0.01〜5μm、好ましくは0.1〜4μm、さらに好ましくは0.3〜3μmとする。有機皮膜の皮膜厚が0.01μm未満では耐疵つき性が不十分であり、一方、5μmを超えると性能が飽和し、経済的な観点から好ましくない。
次に、本発明の表面処理鋼板の製造方法について説明する。
本発明の表面処理鋼板を製造するには、まず、上述した各成分を含有する表面処理剤(表面処理組成物)を、上述した皮膜厚となるように亜鉛系めっき鋼板表面に塗布し、水洗することなく加熱乾燥することにより、表面処理皮膜を形成する。なお、亜鉛系めっき鋼板の表面は、上記処理剤を塗布する前に必要に応じてアルカリ脱脂処理し、さらに密着性、耐食性を向上させるために表面調整処理等の前処理を施すことができる。
本発明の表面処理鋼板を製造するには、まず、上述した各成分を含有する表面処理剤(表面処理組成物)を、上述した皮膜厚となるように亜鉛系めっき鋼板表面に塗布し、水洗することなく加熱乾燥することにより、表面処理皮膜を形成する。なお、亜鉛系めっき鋼板の表面は、上記処理剤を塗布する前に必要に応じてアルカリ脱脂処理し、さらに密着性、耐食性を向上させるために表面調整処理等の前処理を施すことができる。
表面処理剤をめっき鋼板表面に塗布する方法としては、所謂塗布法、浸漬法、スプレー法のいずれでもよい。塗布法としては、ロールコーター(3ロール方式、2ロール方式等)、スクイズコーター、ダイコーター等のいずれの手段を用いてもよい。また、スクイズコーター等による塗布処理、或いは浸漬処理、スプレー処理の後に、エアナイフ法やロール絞り法により塗布量の調整、外観の均一化、膜厚の均一化を行うことも可能である。
塗布後の加熱乾燥を行うための手段としては、ドライヤー、熱風炉、高周波誘導加熱炉、赤外線炉等を用いることができる。加熱処理は、到達板温で40〜250℃、好ましくは50℃〜200℃、より好ましくは60℃〜150℃の範囲で行うことが適当である。加熱温度が250℃を超えると皮膜の色調が変化してしまうために意匠性の点から好ましくない。さらに、皮膜に欠陥が生じて耐食性が低下する場合がある。
以上のように亜鉛系めっき鋼板の表面に表面処理皮膜(第1層皮膜)を形成した後、その上層に、上述した各成分を含有する有機皮膜形成用の塗料組成物を、上述した皮膜厚となるように塗布し、加熱乾燥することにより有機皮膜を形成する。
塗料組成物を塗布する方法としては、塗布法、浸漬法、スプレー法等の任意の方法を採用できる。塗布法としては、ロールコーター(3ロール方式、2ロール方式等)、スクイズコーター、ダイコーター等のいずれの方法を用いてもよい。また、スクイズコーター等による塗布処理、浸漬処理またはスプレー処理の後に、エアナイフ法やロール絞り法により塗布量の調整、外観の均一化、膜厚の均一化を行うことも可能である。
塗料組成物を塗布する方法としては、塗布法、浸漬法、スプレー法等の任意の方法を採用できる。塗布法としては、ロールコーター(3ロール方式、2ロール方式等)、スクイズコーター、ダイコーター等のいずれの方法を用いてもよい。また、スクイズコーター等による塗布処理、浸漬処理またはスプレー処理の後に、エアナイフ法やロール絞り法により塗布量の調整、外観の均一化、膜厚の均一化を行うことも可能である。
塗料組成物の塗布後、通常は水洗することなく加熱乾燥を行うが、塗料組成物の塗布後に水洗工程を実施しても構わない。
加熱乾燥処理には、ドライヤー、熱風炉、高周波誘導加熱炉、赤外線炉等を用いることができる。加熱処理は到達板温で50〜350℃、好ましくは80℃〜250℃の範囲で行うことが望ましい。加熱温度が50℃未満では皮膜中に水分が多量に残り、耐食性が不十分となる。また、加熱温度が350℃を超えると非経済的であるばかりでなく、皮膜に欠陥が生じて耐食性が低下するおそれがある。
なお、以上述べた第1層皮膜+第2層皮膜は、めっき鋼板の片面にのみ形成してもよいし、両面に形成してもよい。
加熱乾燥処理には、ドライヤー、熱風炉、高周波誘導加熱炉、赤外線炉等を用いることができる。加熱処理は到達板温で50〜350℃、好ましくは80℃〜250℃の範囲で行うことが望ましい。加熱温度が50℃未満では皮膜中に水分が多量に残り、耐食性が不十分となる。また、加熱温度が350℃を超えると非経済的であるばかりでなく、皮膜に欠陥が生じて耐食性が低下するおそれがある。
なお、以上述べた第1層皮膜+第2層皮膜は、めっき鋼板の片面にのみ形成してもよいし、両面に形成してもよい。
表1〜表6に示す樹脂化合物(表1)、カチオン性有機樹脂(表2)、亜鉛化合物(表3)、ジルコニウム化合物(表4)、リン酸・リン酸塩(表5)、酸化合物(表6)を攪拌下で脱イオン水のなかに適宜添加して表面処理皮膜形成用の表面処理剤を得た。また、第2層皮膜(有機皮膜)形成用として、下記のように合成した基体樹脂(1)、(2)(表7)に対して、表8に示す防錆添加剤と表9に示す固形潤滑剤を適宜配合した塗料組成物を調製した。
[合成例1]
EP828(油化シェルエポキシ社製、エポキシ当量187)1870部とビスフェノールA912部、テトラエチルアンモニウムブロマイド2部、メチルイソブチルケトン300部を四つ口フラスコに仕込み、140℃まで昇温して4時間反応させ、エポキシ当量1391、固形分90%のエポキシ樹脂を得た。このものに、エチレングリコールモノブチルエーテル1500部を加えてから100℃に冷却し、3,5−ジメチルピラゾール(分子量96)を96部とジブチルアミン(分子量129)を129部加えて、エポキシ基が消失するまで6時間反応させた後、冷却しながらメチルイソブチルケトン205部を加えて、固形分60%のピラゾール変性エポキシ樹脂を得た。これを基体樹脂(1)(表7)とする。この基体樹脂(1)は、皮膜形成有機樹脂(J)と、活性水素を有するヒドラジン誘導体(L)を50mol%含む活性水素含有化合物との生成物である。
EP828(油化シェルエポキシ社製、エポキシ当量187)1870部とビスフェノールA912部、テトラエチルアンモニウムブロマイド2部、メチルイソブチルケトン300部を四つ口フラスコに仕込み、140℃まで昇温して4時間反応させ、エポキシ当量1391、固形分90%のエポキシ樹脂を得た。このものに、エチレングリコールモノブチルエーテル1500部を加えてから100℃に冷却し、3,5−ジメチルピラゾール(分子量96)を96部とジブチルアミン(分子量129)を129部加えて、エポキシ基が消失するまで6時間反応させた後、冷却しながらメチルイソブチルケトン205部を加えて、固形分60%のピラゾール変性エポキシ樹脂を得た。これを基体樹脂(1)(表7)とする。この基体樹脂(1)は、皮膜形成有機樹脂(J)と、活性水素を有するヒドラジン誘導体(L)を50mol%含む活性水素含有化合物との生成物である。
[合成例2]
EP1007(油化シェルエポキシ社製、エポキシ当量2000)4000部とエチレングリコールモノブチルエーテル2239部を四つ口フラスコに仕込み、120℃まで昇温して1時間で完全にエポキシ樹脂を溶解した。このものを100℃に冷却し、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール(分子量84)を168部加えて、エポキシ基が消失するまで6時間反応させた後、冷却しながらメチルイソブチルケトン540部を加えて、固形分60%のトリアゾール変性エポキシ樹脂を得た。これを基体樹脂(2)(表7)とする。この基体樹脂(2)は、皮膜形成有機樹脂(J)と、活性水素を有するヒドラジン誘導体(L)を100mol%含む活性水素含有化合物との生成物である。
EP1007(油化シェルエポキシ社製、エポキシ当量2000)4000部とエチレングリコールモノブチルエーテル2239部を四つ口フラスコに仕込み、120℃まで昇温して1時間で完全にエポキシ樹脂を溶解した。このものを100℃に冷却し、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール(分子量84)を168部加えて、エポキシ基が消失するまで6時間反応させた後、冷却しながらメチルイソブチルケトン540部を加えて、固形分60%のトリアゾール変性エポキシ樹脂を得た。これを基体樹脂(2)(表7)とする。この基体樹脂(2)は、皮膜形成有機樹脂(J)と、活性水素を有するヒドラジン誘導体(L)を100mol%含む活性水素含有化合物との生成物である。
素材めっき鋼板としては、表10に示す亜鉛系めっき鋼板を用いた。このめっき鋼板表面をアルカリ脱脂処理し、水洗・乾燥した後、上記表面処理剤を塗布し、所定の到達板温になるように加熱乾燥した。次いで、その上部に上記第2層皮膜形成用の塗料組成物を塗布し、各種温度で乾燥させ、発明例および比較例の表面処理鋼板を得た。なお、第1層皮膜および第2層皮膜の膜厚は、皮膜組成物の固形分(加熱残分)や処理時間等により調整した。
得られた表面処理鋼板の品質性能(耐食性、アルカリ脱脂後耐食性、耐変色性、耐疵つき性、耐水性、塗料密着性)を評価した結果を、試験条件、皮膜構成とともに表11〜表18に示す。なお、各品質性能の測定及び評価方法は、以下の通りである。
得られた表面処理鋼板の品質性能(耐食性、アルカリ脱脂後耐食性、耐変色性、耐疵つき性、耐水性、塗料密着性)を評価した結果を、試験条件、皮膜構成とともに表11〜表18に示す。なお、各品質性能の測定及び評価方法は、以下の通りである。
(1)耐食性
試験片に塩水噴霧試験SST(JIS−Z−2371)を施し、400時間経過後の白錆面積率で評価した。評価基準は以下の通りである。
○ :白錆面積率5%未満
○−:白錆面積率5%以上、10%未満
△ :白錆面積率10%以上、25%未満
× :白錆面積率25%以上
試験片に塩水噴霧試験SST(JIS−Z−2371)を施し、400時間経過後の白錆面積率で評価した。評価基準は以下の通りである。
○ :白錆面積率5%未満
○−:白錆面積率5%以上、10%未満
△ :白錆面積率10%以上、25%未満
× :白錆面積率25%以上
(2)アルカリ脱脂後耐食性
アルカリ脱脂剤「CLN−364S」(日本パーカライジング(株)製)を20g/lの濃度で純水に溶解して60℃に加温し、これを試験片に1kgf/cm2の圧力で2分間スプレー処理した後、塩水噴霧試験SST(JIS−Z−2371)を施し、300時間経過後の白錆面積率で評価した。評価基準は以下の通りである。
○ :白錆面積率5%未満
○−:白錆面積率5%以上、10%未満
△ :白錆面積率10%以上、25%未満
× :白錆面積率25%以上
アルカリ脱脂剤「CLN−364S」(日本パーカライジング(株)製)を20g/lの濃度で純水に溶解して60℃に加温し、これを試験片に1kgf/cm2の圧力で2分間スプレー処理した後、塩水噴霧試験SST(JIS−Z−2371)を施し、300時間経過後の白錆面積率で評価した。評価基準は以下の通りである。
○ :白錆面積率5%未満
○−:白錆面積率5%以上、10%未満
△ :白錆面積率10%以上、25%未満
× :白錆面積率25%以上
(3)耐疵付き性
試験片を「ラビングテスター」(太平理化工業(株)製)を用いて段ボールでラビング後、試験片表面を目視で観察し、下記基準にしたがって評価した。なお、ラビング試験は、段ボールの押し付け荷重:500g、摺動距離:60mm、速度:120mm/s、ラビング回数:1000回で行った。
◎:疵の本数が0本
○:疵の本数が1〜2本
△:疵の本数が3〜10本
×:疵の本数が11本以上
試験片を「ラビングテスター」(太平理化工業(株)製)を用いて段ボールでラビング後、試験片表面を目視で観察し、下記基準にしたがって評価した。なお、ラビング試験は、段ボールの押し付け荷重:500g、摺動距離:60mm、速度:120mm/s、ラビング回数:1000回で行った。
◎:疵の本数が0本
○:疵の本数が1〜2本
△:疵の本数が3〜10本
×:疵の本数が11本以上
(4)耐変色性
(4-1)加熱試験
試験片を200℃で24時間加熱する前後の目視判定及び色差測定ΔEにより評価を行った。なお、色差測定ΔEは下式で定義される値である。
ΔE={(ΔL)2+(Δa)2+(Δb)2}1/2 …(A)
ここで、ΔL、Δa、ΔLは、JIS Z 8729に規定するLab表示系における二つの物体色のCIE1976明度Lの差及び色座標a、bの試験前後の差である。
評価基準は以下の通りである。
○ :目視で色調変化やムラが認められない。ΔE≦1
○−:目視で色調変化が殆どない。1<ΔE≦2
△ :目視で若干の色調変化(黄変)が起こっている。2<ΔE≦3
× :目視で明らかに色調変化(黄変)が起こっている。ΔE>3
(4-2)湿潤試験
試験片を80℃、RH98%の雰囲気下に2週間放置した前後の色差測定ΔE、及び目視判定により評価を行った。(ΔEは上記(A)式と同じである)
評価基準は以下の通りである。
○ :目視で色調変化やムラが認められない。ΔE≦1
○−:目視で色調変化が殆どない。1<ΔE≦2
△ :目視で若干の色調変化(黄変)が起こっている。2<ΔE≦3
× :目視で明らかに色調変化(黄変)が起こっている。ΔE>3
(4-1)加熱試験
試験片を200℃で24時間加熱する前後の目視判定及び色差測定ΔEにより評価を行った。なお、色差測定ΔEは下式で定義される値である。
ΔE={(ΔL)2+(Δa)2+(Δb)2}1/2 …(A)
ここで、ΔL、Δa、ΔLは、JIS Z 8729に規定するLab表示系における二つの物体色のCIE1976明度Lの差及び色座標a、bの試験前後の差である。
評価基準は以下の通りである。
○ :目視で色調変化やムラが認められない。ΔE≦1
○−:目視で色調変化が殆どない。1<ΔE≦2
△ :目視で若干の色調変化(黄変)が起こっている。2<ΔE≦3
× :目視で明らかに色調変化(黄変)が起こっている。ΔE>3
(4-2)湿潤試験
試験片を80℃、RH98%の雰囲気下に2週間放置した前後の色差測定ΔE、及び目視判定により評価を行った。(ΔEは上記(A)式と同じである)
評価基準は以下の通りである。
○ :目視で色調変化やムラが認められない。ΔE≦1
○−:目視で色調変化が殆どない。1<ΔE≦2
△ :目視で若干の色調変化(黄変)が起こっている。2<ΔE≦3
× :目視で明らかに色調変化(黄変)が起こっている。ΔE>3
(5)耐水性
試験片に紙を接触させた状態で60℃に加温した純水に30秒浸漬し、取り出し後、濡れた紙が試験片に十分に接触した状態で90秒放置した。その後、紙を取り除き水分を拭き取り、試験片表面を目視で観察し、下記基準にしたがって評価をした。
○:白化なし。
△:斜めから見ると白化が確認できる。
×:明らかな白化が認められる。(斜めから見なくても確認できる)
試験片に紙を接触させた状態で60℃に加温した純水に30秒浸漬し、取り出し後、濡れた紙が試験片に十分に接触した状態で90秒放置した。その後、紙を取り除き水分を拭き取り、試験片表面を目視で観察し、下記基準にしたがって評価をした。
○:白化なし。
△:斜めから見ると白化が確認できる。
×:明らかな白化が認められる。(斜めから見なくても確認できる)
(6)塗料二次密着性
試験片にメラミン系の焼付塗料(膜厚30μm)を塗装した後、沸水中に2時間浸漬し、直ちに、碁盤目(10×10個、1mm間隔)のカットを入れて接着テープによる貼着・剥離を行い、塗膜の剥離面積率を測定した。評価基準は以下の通りである。
◎:剥離なし
○:剥離面積率5%未満
△:剥離面積率5%以上、20%未満
×:剥離面積率20%以上
試験片にメラミン系の焼付塗料(膜厚30μm)を塗装した後、沸水中に2時間浸漬し、直ちに、碁盤目(10×10個、1mm間隔)のカットを入れて接着テープによる貼着・剥離を行い、塗膜の剥離面積率を測定した。評価基準は以下の通りである。
◎:剥離なし
○:剥離面積率5%未満
△:剥離面積率5%以上、20%未満
×:剥離面積率20%以上
表11〜表18によれば、本発明例であるNo.1〜3、6〜9、11〜14、16〜20、23〜25、28〜36、38〜42、46〜53、55、56、58〜64、66、67、72、74、75、77〜79は、いずれも耐食性、耐変色性、耐疵つき性、耐水性および塗料密着性が優れている。
これに対して、表面処理皮膜の組成が本発明条件を満足しないNo.4、5、10、15、21、22、26、27、65、68の各比較例、有機皮膜中の防錆添加成分が本発明条件を満足しないNo.54、57の比較例は、耐食性、耐変色性、耐水性、耐疵つき性、塗料密着性のいずれかが劣っている。
これに対して、表面処理皮膜の組成が本発明条件を満足しないNo.4、5、10、15、21、22、26、27、65、68の各比較例、有機皮膜中の防錆添加成分が本発明条件を満足しないNo.54、57の比較例は、耐食性、耐変色性、耐水性、耐疵つき性、塗料密着性のいずれかが劣っている。
また、No.43、44の比較例のようにカチオン性ウレタン樹脂(B)をカチオン性アクリル樹脂やカチオン性エポキシ樹脂に置き換えても、耐食性、耐変色性、耐水性をすべて満足できるものはない。また、No.45の比較例(特許文献1の実施例15)は耐変色性が劣っている。また、単層皮膜であるNo.69、70の比較例、表面処理皮膜および有機皮膜の皮膜厚が本発明条件を満足しないNo.71、73の比較例、表面処理皮膜および有機皮膜の乾燥温度の低いNo.37、76の比較例は耐食性、耐疵つき性のいずれかが劣っている。
なお、表11〜表18において、*1〜*12は以下の内容を示している。
*1 表1に示す樹脂化合物No.
*2 表2に示すカチオン性有機樹脂No.
*3 表3に示す亜鉛化合物No.
*4 表4に示すジルコニウム化合物No.
*5 表5に示すリン酸・リン酸塩No.
*6 表6に示す酸化合物No.
*7 表10に示すめっき鋼板No.
*8 配合量は質量部(但し、「樹脂化合物(A)」及び「ウレタン樹脂(B)等」については固形分の質量部)
*9 表7に示す有機樹脂No.
*10 表8に示す防錆添加成分No.
*11 表9に示す固形潤滑剤No.
*12 配合量は基本樹脂の固形分100質量部に対する固形分の質量部
*1 表1に示す樹脂化合物No.
*2 表2に示すカチオン性有機樹脂No.
*3 表3に示す亜鉛化合物No.
*4 表4に示すジルコニウム化合物No.
*5 表5に示すリン酸・リン酸塩No.
*6 表6に示す酸化合物No.
*7 表10に示すめっき鋼板No.
*8 配合量は質量部(但し、「樹脂化合物(A)」及び「ウレタン樹脂(B)等」については固形分の質量部)
*9 表7に示す有機樹脂No.
*10 表8に示す防錆添加成分No.
*11 表9に示す固形潤滑剤No.
*12 配合量は基本樹脂の固形分100質量部に対する固形分の質量部
Claims (4)
- 亜鉛系めっき鋼板の表面に、第1層皮膜として、下記一般式(I)で表される樹脂化合物(A)と、第4アンモニウム塩基を有するカチオン性ウレタン樹脂(B)と、亜鉛化合物(C)と、ジルコニウム化合物(D)と、リン酸又は/及びリン酸塩(E)と、フッ酸、酢酸、硝酸、硫酸及びこれらの塩の中から選ばれる少なくとも1種の酸化合物(F)とを含有し、且つ樹脂化合物(A)とカチオン性ウレタン樹脂(B)の固形分換算での配合比[A:B]が7:3〜4:6であり、樹脂化合物(A)とカチオン性ウレタン樹脂(B)の固形分の合計量に対して、亜鉛化合物(C)を2〜20質量%、ジルコニウム化合物(D)を2〜20質量%、リン酸又は/及びリン酸塩(E)を5〜30質量%、酸化合物(F)を0.1〜5質量%含有する表面処理剤を塗布し、乾燥することにより形成された皮膜厚が0.01〜3μmの表面処理皮膜を有し、
その上部に第2層皮膜として、皮膜形成有機樹脂(J)と一部又は全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(L)からなる活性水素含有化合物(K)との反応生成物(X)と、下記(a)〜(e)の中から選ばれる1種以上の防錆添加成分(Y)と、固形潤滑剤(Z)とを含み、前記反応生成物(X)の固形分100質量部に対して防錆添加成分(Y)の合計の含有量が1〜100質量部、固形潤滑剤(Z)の含有量が0.1〜15質量部である、皮膜厚が0.01〜5μmの有機皮膜を有することを特徴とする耐食性、耐疵つき性、耐変色性及び耐水性に優れた表面処理鋼板。
(a)リン酸塩
(b)Caイオン交換シリカ
(c)モリブデン酸塩
(d)酸化ケイ素
(e)トリアゾール類、チオール類、チアジアゾール類、チアゾール類、チウラム類の中から選ばれる1種以上の有機化合物 - 有機皮膜に含まれる固形潤滑剤(Z)の平均粒径Dと有機皮膜の皮膜厚tの比D/tが1.5〜15であることを特徴とする請求項1に記載の耐食性、耐疵つき性、耐変色性及び耐水性に優れた表面処理鋼板。
- 亜鉛系めっき鋼板の表面に、下記一般式(I)で表される樹脂化合物(A)と、第4アンモニウム塩基を有するカチオン性ウレタン樹脂(B)と、亜鉛化合物(C)と、ジルコニウム化合物(D)と、リン酸又は/及びリン酸塩(E)と、フッ酸、酢酸、硝酸、硫酸及びこれらの塩の中から選ばれる少なくとも1種の酸化合物(F)とを含有し、且つ樹脂化合物(A)とカチオン性ウレタン樹脂(B)の固形分換算での配合比[A:B]が7:3〜4:6であり、樹脂化合物(A)とカチオン性ウレタン樹脂(B)の固形分の合計量に対して、亜鉛化合物(C)を2〜20質量%、ジルコニウム化合物(D)を2〜20質量%、リン酸又は/及びリン酸塩(E)を5〜30質量%、酸化合物(F)を0.1〜5質量%含有する表面処理剤を塗布し、到達板温が30〜300℃となる温度で乾燥することにより、皮膜厚が0.01〜3μmの表面処理皮膜を形成し、
その上部に、皮膜形成有機樹脂(J)と一部又は全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(L)からなる活性水素含有化合物(K)との反応生成物(X)と、下記(a)〜(e)の中から選ばれる1種以上の防錆添加成分(Y)と、固形潤滑剤(Z)とを含み、前記反応生成物(X)の固形分100質量部に対して防錆添加成分(Y)の合計の含有量が1〜100質量部、固形潤滑剤(Z)の含有量が0.1〜15質量部である塗料組成物を塗布し、到達板温が50〜300℃となる温度で乾燥することにより、皮膜厚が0.01〜5μmの有機皮膜を形成することを特徴とする耐食性、耐疵つき性、耐変色性及び耐水性に優れた表面処理鋼板の製造方法。
(a)リン酸塩
(b)Caイオン交換シリカ
(c)モリブデン酸塩
(d)酸化ケイ素
(e)トリアゾール類、チオール類、チアジアゾール類、チアゾール類、チウラム類の中から選ばれる1種以上の有機化合物 - 有機皮膜に含まれる固形潤滑剤(Z)の平均粒径Dと有機皮膜の皮膜厚tの比D/tを1.5〜15とし、且つ、前記固形潤滑剤(Z)の軟化点を皮膜乾燥温度以上とすることを特徴とする請求項3に記載の耐食性、耐疵つき性、耐変色性及び耐水性に優れた表面処理鋼板の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006021530A JP2007204770A (ja) | 2006-01-30 | 2006-01-30 | 耐食性、耐疵つき性、耐変色性及び耐水性に優れた表面処理鋼板並びにその製造方法 |
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Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2011101952A (ja) * | 2009-11-10 | 2011-05-26 | Jfe Steel Corp | 容器用樹脂被覆金属板 |
JP2018049704A (ja) * | 2016-09-20 | 2018-03-29 | 大日本印刷株式会社 | 電池用外装材 |
JP2019188743A (ja) * | 2018-04-27 | 2019-10-31 | 国立大学法人広島大学 | 修復性めっき基材 |
US10508203B2 (en) | 2014-09-26 | 2019-12-17 | The Boeing Company | Compositions and coatings with non-chrome corrosion inhibitor particles |
-
2006
- 2006-01-30 JP JP2006021530A patent/JP2007204770A/ja active Pending
Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2011101952A (ja) * | 2009-11-10 | 2011-05-26 | Jfe Steel Corp | 容器用樹脂被覆金属板 |
US10508203B2 (en) | 2014-09-26 | 2019-12-17 | The Boeing Company | Compositions and coatings with non-chrome corrosion inhibitor particles |
US11459466B2 (en) | 2014-09-26 | 2022-10-04 | The Boeing Company | Compositions and coatings with non-chrome corrosion inhibitor particles |
JP2018049704A (ja) * | 2016-09-20 | 2018-03-29 | 大日本印刷株式会社 | 電池用外装材 |
JP2019188743A (ja) * | 2018-04-27 | 2019-10-31 | 国立大学法人広島大学 | 修復性めっき基材 |
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