JP3376421B2 - ダイヤモンドライクカーボン膜の形成方法 - Google Patents

ダイヤモンドライクカーボン膜の形成方法

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JP3376421B2
JP3376421B2 JP2000309770A JP2000309770A JP3376421B2 JP 3376421 B2 JP3376421 B2 JP 3376421B2 JP 2000309770 A JP2000309770 A JP 2000309770A JP 2000309770 A JP2000309770 A JP 2000309770A JP 3376421 B2 JP3376421 B2 JP 3376421B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ダイヤモンドライ
クカーボン(以下、DLCという。)膜の形成方法に関し、
特に、液相を利用したDLC膜の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】DLC薄膜は高硬度、耐摩耗性、低摩擦係
数及び導電性などの特性を有する。かかる特性を利用し
て、DLC薄膜は、機械部品の摺動部及び電気部品などに
利用されている。
【0003】DLC膜は、現在、スパッタリング法、イオ
ン化蒸着法、高周波プラズマCVD法などにより作製され
ている。スパッタリング法は、低圧気体中の金属を加熱
又はイオン衝撃するとき、蒸発又は衝突によって金属面
から原子が気体中に飛散して付近の物体面に付着する現
象を利用したものである。
【0004】イオン化蒸着法は、熱フィラメントによる
高温アーク放電を用いてプラズマを発生させ、別に設置
した電極に負バイアスをかける方式である。この方法
は、ナノオーダーでの膜厚制御が可能であること、比較
的高硬度の膜が得られることが特徴である。
【0005】高周波プラズマCVD法は、チタン、エチレ
ンなどの原料ガスに高周波をかけて放電させると、電極
は自己バイアス効果により負電位となり表面にDLCが形
成される。この方式の大きな特徴として、絶縁物への成
膜が可能なことが挙げられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の
DLCの製造方法は、すべて気相堆積法であり、基板加
熱、プラズマ発生などの高エネルギー状態を要求する。
特に真空系を用いるプロセスでは、真空の発生と維持に
も大きな設備とエネルギーを必要とする。
【0007】すなわち、DLC膜を形成する場合、一般
に、より高度な装置又は高度なプロセスを必要とし、そ
の結果として、多くの資源とエネルギーを消費し、より
多くの廃棄物や、排エネルギーを発生させる。このよう
な多くの廃棄物や排エネルギーの生産は、地球環境を考
慮した場合に望ましいことではない。
【0008】したがって、高エネルギーを必要とせず、
より環境負荷の少ない状態でDLC膜を形成することが
できれば望ましい。薄膜形成工程において、必要最小限
の原料を用いて膜を形成し、残存した原料を容易に回収
し、リサイクルできればより望ましい。しかし、こうし
た環境負荷が少なく、かつ、低コストな、薄膜形成方法
は、これまで知られていない。さらに、任意の個所にパ
ターン化した膜を形成する場合にもマスキング及びマス
クの除去等の前処理を必要としない方法も知られていな
い。
【0009】そこで、本発明の目的は、より環境負荷の
少ないプロセスでDLC膜を形成し、さらに任意のパター
ンを形成し得る方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、発明者らは、液相中で、針形状のアノード電極及び
カソード電極を使用することにより、カソード電極上に
膜を形成し得ることを見出した。
【0011】本発明のDLC膜の形成方法は、有機溶媒
又は窒素含有有機溶媒中に、少なくとも先端が針形状の
アノード電極と、カソード電極とを配置して、前記針形
状のアノード電極と前記カソード電極との間に所定の電
圧を印加することにより、カソード電極上に前記有機溶
媒の構成元素である炭素又は炭素と窒素を含んでなるD
LC膜を形成することを特徴とする。
【0012】本発明のDLC膜の形成方法の好ましい実
施態様としては、前記有機溶媒が、アクリロニトリル、
メタノール、エタノール、アセトン、2-プロパノー
ル、1-プロパノール、テトラヒドロフラン、グリコー
ル、グリセリンからなる群から選択される少なくとも1
種であることを特徴とする。
【0013】本発明のDLC膜の形成方法の好ましい実
施態様としては、前記アノード電極又はカソード電極を
移動させて、任意の個所にパターン化されたDLC膜を
形成することを特徴とする。
【0014】本発明のDLC膜の形成方法の好ましい実
施態様としては、前記有機溶媒が、含水溶媒であること
を特徴とする。
【0015】本発明のDLC膜の形成方法の好ましい実
施態様としては、有機溶媒が、0.001〜10%の水を含有
する水溶液であることを特徴とする。
【0016】本発明のDLC膜の形成方法の好ましい実
施態様としては、前記アノード電極及びカソード電極と
の間に、通電してDLC膜を形成することを特徴とす
る。
【0017】本発明のDLC膜の形成方法の好ましい実
施態様としては、前記有機溶媒に窒素ガスを導入して、
DLC膜を形成することを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明のDLC膜の形成方法にお
いては、有機溶媒あるいは窒素を含む有機溶媒中に、少
なくとも先端が針形状のアノード電極と、カソード電極
とを配置してDLC膜を形成する。DLC膜は、通常、
ラマン分光において、1450cm を中心にした1
150〜1650cm−1の大変幅が広い山を有するも
のを意味するが、本発明においては、G(1580cm
−1)とD(1332cm−1)に山を有する微細な(3n
m以下)グラファイト類似構造の部分とその部分が乱れ
た部分とが混在するものを意味する。
【0019】有機溶媒としては、特に限定されないが、
例えば、アクリロニトリル、メタノール、エタノール、
アセトン、2-プロパノール、1-プロパノール、テトラ
ヒドロフラン、グリコール、グリセリンからなる群から
選択される少なくとも1種を挙げることができる。本発
明においては、かかる有機溶媒の構成元素を含むDLC
膜を形成できるので、目的とするDLC膜の成分を含む
有機溶媒を選択して用いる。
【0020】また、有機溶媒は、含水有機溶媒であって
もよい。含水有機溶媒である場合、0.001〜10%の水を
含有するのが好ましい。かかる範囲としたのは、0.001
未満とすると、水を加えた効果を発揮できないからであ
り、10以上とするとDLC膜が形成されないか、形成され
ても特性が悪いからである。
【0021】電極に関しては、一般的な、銅電極、タン
グステン電極、白金電極などを使用することができ、特
に限定されない。但し、アノード電極の形状は、少なく
とも先端が針形状とする。これは、電流が流れる領域を
限定し、その領域にのみDLC膜を形成できるからであ
り、さらに、これにより、パターン形成を行う場合に、
微細加工が容易となるからである。
【0022】針の材質としては、例えば、タングステ
ン、白金等を挙げることができる。針の直径は、特に限
定されないが、好ましくは、針の先端が0.1μm〜0.1mm
である。このような範囲としたのは、0.1μm以下にする
のが困難であるためであり、0.1mm以上では電流の集中
によるパターン化がおこりにくくなるというという観点
からである。
【0023】また、本発明においては、アノード電極と
カソード電極との間に所定の電圧を印加することによ
り、カソード電極上に前記有機溶媒の構成元素とを含ん
でなるDLC膜を形成する。このとき、印加する電圧
は、合成するDLC膜の膜厚、パターンの形態等により
異なり特に限定されないが、好ましくは、1000〜3000ボ
ルトの範囲である。
【0024】アノード電極とカソード電極との間の距離
も特に限定されないが、好ましくは、通電が起こるよう
な距離とする。例えば、アノード電極とカソード電極と
間は、0.1mm〜10mm、好ましくは、1〜3mmとする。通電
を継続することが可能な場合には、アノード電極及びカ
ソード電極との間を、10mm以上とすることができる。
【0025】さらに、アノード電極とカソード電極との
関係は、アノード電極の少なくとも先端にある針の先端
を、カソード電極としての基板に向けて配置することが
好ましい。好ましくは、針先端を、カソード電極として
の基板に垂直に配置する。このように針先端を基板に垂
直とするのは、成膜する位置をより正確に制御すること
ができるからである。
【0026】また、高電圧を印加するなどにより通電し
て成膜する場合、アークによる有機溶媒の燃焼や爆発を
防止するために、好ましくは、窒素ガスを有機溶媒中に
導入し、反応によって生成した酸素を排出しながら行
う。
【0027】なお、DLC膜の形成を促進するために、
磁気スターラーなどを用いて、有機溶媒を攪拌して成膜
してもよい。
【0028】本発明のDLC膜の形成方法においては、
任意の個所にパターン形成されたDLC膜を形成するこ
ともできる。これは、アノード電極の少なくとも先端を
針形状としたために、先端部でのアノード放電によるエ
ネルギーが集中し、より正確な位置に局所的に成膜化す
ることが可能となるためである。この時のアノード放電
によるエネルギーは、プラズマ又は電離放射線によるも
のに匹敵する。したがって、本発明によれば、プラズマ
又は電離放射線によって引き起こされる環境に類似した
最高の成膜環境を作ることができる。この環境は、従来
の電気分解に比較してより十分なsp3結合した炭素原子
を生成するのに好ましい。
【0029】なお、本発明においては、有機溶媒中での
アノード放電による化学反応を主とするものであるが、
任意の個所にDLC膜をパターン形成することが可能で
あり、半導体製造等の微細加工過程に本発明を応用する
ことができる。この場合、本発明においては、微細加工
において必須であるマスキング、マスクの除去等の前処
理をおこなうことなく、カソード電極に基板を設置して
電圧を印加するだけで、直接基板上にパターンを形成す
ることができる。
【0030】
【実施例】ここで、本発明の一実施例を説明するが、本
発明は、下記の実施例に限定して解釈されるものではな
い。また、本発明の趣旨を逸脱することなく、本発明を
適宜変更して実施することが可能である。
【0031】実施例1 本発明のDLC膜の形成方法の一実施例についての概略
図を図1に示す。分析的に純粋なアクリロニトリル(CH2C
HCN)溶媒を電解溶媒として使用した。有機溶媒の温度
は、80℃以下であった。10〜20Ω・cmの抵抗を有するP型
Si基板を銅棒電極に取り付けた。アノードは、銅棒に結
合した細いタングステン針(指摘した先端の直径は約5μ
m)とした。タングステン針を曲げて、タングステン針が
Si基板に対して垂直になる構造を形成させた。タングス
テン針と板との間の距離は、約2mmにセットした。有機
溶媒に垂直なタングステン針の部分はガラス管によって
保護された。実験前及び実験中は、窒素ガスを有機溶媒
中に導入して、空気を排出し爆発するのを防いだ。有機
溶媒の拡散を促進するために、磁気スターラーを使用し
た。基板に適用した電圧は、0〜3000ボルトへ変化させ
ることが出来、電流限界は、100mAであった。
【0032】X線光電子分光法(XPS)、ラマン分光、及び
フーリエ変換赤外(FTIR)分光によって、堆積したDLC膜
を調べた。
【0033】この実験において、ある高い電圧を使用し
た場合、アークが肉眼ですら観察できた。実験中、エネ
ルギー供給はより十分に集中されたものであったと予想
される。
【0034】XPS結果は、堆積した膜は、炭素、窒素及
び酸素元素だけを含むことを示した。周囲の大気から酸
素の存在を取り除くことができなかった。窒素の存在
は、顕著であった。N1ピークとC1ピークの領域によれ
ば、この膜において窒素([N]/[N]+[C])の含有量
は、約28.7%である(βC34の理論値は、57%であ
る。)。
【0035】ラマンスペクトル分光は、炭素材料の性質
に対する最も一般的な技術であり、典型的なサンプルの
ラマンスペクトル分光を、図2に示す。図2において
は、それぞれ、ラマンGバンドとDバンドと呼ばれて同定
される1590cm−1及び1380cm−1に位置する広いバンドを
含む。Gバンドは、炭素原子のsp2結合からなるミクロ
領域のグラファイト類似層に相当し、一方、Dバンド
は、炭素のsp2結合からなるグラファイト領域が小さい
ために、結合が乱れた部分からできる。主に炭素のsp3
結合に相当するもので、このDバンド相当部分が多いほ
どダイヤモンドライクであるということができる。さら
に、堆積させたサンプルのスペクトルは、入射レーザー
ビームが重ね合わされこのサンプルにおける高い水素レ
ベルを示した。水素化アモルファス膜に対して、最も顕
著な傾向は、線幅がより広く、D強度が減少し、光学ギ
ャップが増加して、膜におけるsp3結合した炭素の部分
が対応して増加する。それゆえ、このサンプルは、sp2
及びsp3結合した炭素−炭素又は炭素−窒素結合を含ん
だ水素化アモルファス炭素窒素膜として特徴つけること
ができる。sp3結合のような四面体状C−N及び直線状C≡
N伸縮結合が報告された場所の1250及び2250cm−1近傍に
おいていくつかの特徴があるが、それらは、非常に弱
く、ノイズ気味なので確認できなかった。
【0036】典型的なサンプルのFTIRスペクトルを図3
に示す。2335cm−1での鋭いピークは大気中のCO2による
ものである。2988及び1650cm−1でのバンドは、それぞ
れ、C−H及びN−Hの振動モードに関係し、水素原子も存
在しており窒素及び炭素に結合していることを示した。
これらの結果は、ラマンスペクトルの結果と一致する。
2245,1550,1370及び1250cm-1での特徴的バンドは、C
及びN原子が膜において化学的に結合していることを示
す。2245cm−1での吸収バンドは、炭素―窒素三重結合
の伸縮振動に相当する。1370及び1590cm−1でのバンド
は、それぞれラマン活性なD及びGモードに関係する。グ
ラファイト単一結晶において、これらのモードは、ラマ
ン活性である一方、CNx膜に対する窒素原子の結合のた
めに、グラファイトリングの対称性が破壊されるとき、
IR禁制は、IR活性となる。特に、1250cm−1に中心のあ
るバンドは、sp3結合したC−Nモードに関係する。結晶C
3N4において、炭素が窒素にsp3結合するなら、対応する
吸収結合は、1250cm−1の周囲である。溶媒の電気分解
を細い針形状アノードを使用して行ったとき、局所ジュ
ール熱が溶媒中に生じ、その後、適当な状況のエネルギ
ー損失の下で、もし適用した電圧が十分高いなら、グロ
ー放電が起こるかもしれない。この場合、溶媒に初めか
ら高濃度のラジカルを含む非常に狭い第一反応領域を形
成することができる。したがって、プラズマや電離放射
線によって引き起こされるものと非常に近似した最高の
環境を作ることができる。すなわち、いくつかの非平衡
反応が生じるか、いくつかの準安定な生成物を得ること
ができる。これは、本発明で高い含有量のsp3結合した
炭素―窒素膜がなぜ形成されるかの理由である。
【0037】アノード放電技術は、80℃以下の温度にて
アクリロニトリル(CH2CHCN)における窒化炭素膜を合成
するのに使用した。アノードは、細いタングステン針で
ある一方、カソードは、Si基板であった。適用した電圧
が、十分であれば、スパークを堆積中に観察することが
できた。この膜において、窒素[N]/[N]+[C]の含有量
は約28.7%であった。この技術が、sp3結合したC-Nを形
成するのにより好ましい最高の環境を作ることが可能な
ことは、ラマンスペクトル分光及びフーリエ変換赤外線
吸収によって予測することができた。
【0038】実施例2 次に、アークを発生させながら成膜した場合と、アーク
を発生させずに成膜した場合とを比較するために、実施
例1と同様の方法を用いてサンプルを作製した。アーク
を発生させる場合には、1300ボルトの高電圧を印加して
成膜した。一方、アークを発生させない場合には、1200
ボルトの電圧を印加して成膜した。
【0039】図4(A)及び(B)は、それぞれ、非スパーク
及びスパークによって得られた典型的な膜のSEM像を示
す。非スパーク膜の形態が、幾分コーン状で密でないこ
とが分かる。一方、スパーク膜は、小さくコンパクトな
粒子からなっている。
【0040】ラマンスペクトル分光は、炭素関連材料の
特徴を調べるのに最も一般的で技術である。図4に示す
膜A及びBに関するラマンスペクトルを図5に示す。図
5’(A)は、それぞれ、Gバンド及びCバンドと呼ばれて
同定される1590及び1380cm-1に位置する2つのバンドを
含む。1550cm−1の鋭いピークは、大気中のO2によるも
のである。Gバンドは、炭素のsp2結合からなるミクロ領
域のグラファイト状の層に相当し、一方、Dバンドは、
炭素のsp2結合からなるグラファイト領域が小さいため
に、結合が乱れた部分から出てくる主に炭素のsp3結合
に由来するものである。位置、G及びDバンドのバンド
幅、及びDからGバンドまでの強度の割合を、構造的秩序
の程度を測定するために決定した。
【0041】1380及び1590cm-1での幅広いバンドの他
に、図3は、約1293及び1452cm−1にて別の2つのバン
ドを示す。Kumar等の調査において、1300cm-1にてより
低いピークにあるものは、完全な立方体対称を有しない
sp3結合のC-C振動モードのためである。約1452cm-1に中
心を持つバンドは、いくらかの文献において報告されて
いる。このバンドは、通常、四面体状結合したダイヤモ
ンド類似性による。したがって、アークを発生させた条
件下で調製したサンプルBは,サンプルAによって作製さ
れた非スパークのものと比較してかなり改善したダイヤ
モンド特性を持つと考えられる。
【0042】溶媒の電気分解を細い針形状アノードを使
用して行ったとき、局所的なジュール熱が溶媒において
起こる可能性があり、その後適当なエネルギー損失条件
の下で、もし、適用した電圧が十分高いなら、グロー放
電が起こり得る。この場合、溶媒から本質的にある高濃
度のラジカルを含む非常に浅い第一反応領域を形成する
ことができる。したがって、プラズマ又は電離放射線に
よって引き起こされるものに類似した最高の環境を作る
ことができる。すなわち、いくつかの非平衡反応が起こ
るか、いくらかの準安定生成物を得ることができる。こ
の環境は、従来の電気分解に比較してより十分なsp3結
合した炭素原子を生成するのに好ましい。
【0043】要約すると、ダイヤモンドライクカーボン
膜を、高電圧下で、細いタングステン針状アノードを使
用してエタノール溶媒下でシリコン基板上に放電堆積さ
せ、堆積中、もし適用した電圧が十分なら、スパークを
観察することができる。この方法が、従来の電気分解と
比較してより十分なsp3結合した炭素原子を形成するの
に好ましい最高の環境を作ることができるとラマンスペ
クトル分光から推測される。
【0044】実施例3 次に、実施例1と同様の方法を用いて、DLC膜のパターン
化を数回行った。結果を図6に示す。図7及び図8は、パ
ターン形成した結果を示す。図7は、エタノール中で、
室温にて、電圧1200Vで115分間パターン形成を行ったも
のである。なお、アノード電極の針先端からカソード電
極上のSi基板まで距離は、2mm以下であった。図8は、
電圧を1000Vで135分間パターン形成を行ったものであ
り、他の条件は、図7におけるものと同様である。な
お、パターンの膜厚は、1〜5μmであった。
【0045】パターンの線幅は、約5-10μmであった。
これらは、電極を手動で走査しているため、鋭いパター
ンを形成するのが困難であった。しかし、コンピュータ
ー制御された装置を用いて、より微細なパターンを形成
し得ることは明らかである。
【0046】実施例4 ラマン測定をエタノール有機溶媒において水を加えて得
た膜において行った。これらの結果を図9に示す。これ
らラマンスペクトルから、我々は、様々な傾向、すなわ
ち、0〜4.0ml の水(溶媒に対して約0.001〜4.0mlに相
当する水。)を変化させて加えたとき、D及びGバンドの
両方のバンド幅が減少し、ID(Dバンドの強度)/IG割合
が増加するのを示すのが分かる。D及びGバンド幅におけ
る増大は、グラファイトに見られる120℃の結合角にあ
る3個の結合した炭素原子の結合角がひずむことに相当
する。結合角障害のために、バンド幅は、水の添加と共
に非常に大きくなった。その後、さらに水の添加によっ
て障害が一部除かれるにつれて、バンドが狭くなった。
【0047】水の添加によるID/IG強度の増加は、結晶
の数及び/又はサイズにおける成長を予測するモデルと
一致した。文献においてアモルファスカーボンのアニー
ルに関して報告されたように、アニール温度が増加した
とき、結晶の大きさ及び/又は数が成長し、ラマンスペ
クトルに寄与し始め、ID/IG率を増加させた。
【0048】水の添加は、有機溶媒の抵抗を減少させ
た。上記ラマン結果から水の添加は結合角障害が部分的
に除去され、結晶優勢域が増加し、DLC膜の質の低下を
導くと見られる。
【0049】次に、電解溶媒の電圧電流特性における水
の影響を調べた。実施例1と同様の方法を用いて、メタ
ノール(CHOH)、エタノール(CHCHOH)、アセトン(H
O-CO-CH)、及び2-プロパノール(CHCHOHCH) 、
1-プロパノール(CHCHCHOH)、テトラヒドロフラ
ン(CHO)、グリコール(HOCH-CHOH)、グリセリン
(HOCHCHCHOH)の電解溶媒を使用してDLC膜を形成
した。形成したDLC膜についてそれぞれラマン測定を
行いDLC膜であることを確認した。
【0050】これらのメタノール(CHOH)、エタノール
(CHCHOH)、アセトン(HO-CO-CH)、及び2-プロ
パノール(CHCHOHCH) 、1-プロパノール(CHCHC
HOH)、テトラヒドロフラン(CHO)、グリコール(HO
CH-CHOH)、グリセリン(HOCHCHCHOH)の電解溶媒
を使用して、電解溶媒の電圧電流特性における水の影響
を調べた。
【0051】グリコール及びグリセリンの場合、非常に
粘度があり、高沸点であるので、抵抗に対する温度依存
性(R=V/I、Vは適用した電圧、Iは、対応する電流であ
る。)を分析した。
【0052】電流と電圧との関係における水の影響は、
有機溶媒に依存する。メタノールの場合の結果を図10に
示す。
【0053】メタノールの場合、はじめに水を加える
と、まさに予想した通り抵抗は減少した。しかしなが
ら、さらに水を加えると抵抗は増加した(図10参照)。エ
タノールの場合、抵抗は、水の付加と共に減少するが、
減少の程度はそれほどではなかった。
【0054】アセトン及び1-プロパノール、2-プロパ
ノール及びテトラヒドロフランの場合、抵抗は、水の付
加にともない減少し、増加の程度は劇的であった。
【0055】グリコールとグリセリンについては有機溶
媒は非常に粘性がある。室温において、我々が、電源の
最大電圧(3.0kV)を適用したときでさえ、電流を決定
することができなかった。しかしながら、室温が増加す
るにつれて、抵抗は著しく減少した。
【0056】加えた水の体積及び様々な有機溶媒の抵抗
の対数プロットを図11に示す。グリコール及びグリセ
リンに異なる体積の水を付加した場合の抵抗の温度依存
性を図12及び図13に示す。
【0057】図11から抵抗に対する水の影響が有機溶
媒に依存しているのが分かる。この現象は異なる有機溶
媒の物理的性質に関連すべきである。表1において、様
々な有機溶媒の物理的特性がリストされている。
【0058】
【表1】 図11及び表1から、我々は、メタノール、エタノー
ル、1-プロパノール、2-プロパノール及びテトラヒド
ロフランの有機溶媒に対して、誘電率が大きくなると、
それらの抵抗が小さくなるという規則性を見出した。物
質の誘電率が、物質の分極能であることが知られてい
る。誘電率が大きいと、その分極能が強くなり、さらに
分極した粒子型が多くなる。したがって、電解溶媒の誘
電率は、放電堆積中の電流密度に対する鍵となる要因で
ある。
【0059】表1から、メタノールの誘電率は、エタノ
ール、アセトン、1-プロパノール、2-プロパノール及
びテトラヒドロフランのものより大きく、これが、メタ
ノールが電解溶媒として使用したとき、抵抗が他の有機
溶媒(エタノール、アセトン、1-プロパノール、2-プ
ロパノール、テトラヒドロフラン)より、十分抵抗が低
いことの理由である。また、水の誘電率が、エタノー
ル、アセトン、1-プロパノール、2-プロパノール、テ
トラヒドロフランの有機溶媒より高いことが明白であ
り、放電堆積中に少量の水をそれらの5つの有機溶媒中
に加えたとき、この誘電率の高さが、電流が増加する理
由である。しかしながらメタノールの場合、現象は、少
し異なり、抵抗は、水の更なる添加によって増加した。
【0060】これに対して、グリコールとグリセリンの
場合において、実験結果は上記規則性に反対を示した。
グリコール及びグリセリンの誘電率は、メタノールやエ
タノール等より高い、一方、それらの抵抗はメタノール
などのものより大きい。ここで、粘度の概念がこれらの
現象を説明するのに適用される。
【0061】すべての液体は、形を変えるための明確な
抵抗をもつ。この性質、すなわち内部摩擦の種類は、粘
度と呼ばれる。言い換えれば、ある有機溶媒の粘度が高
ければ、拡散するのがより困難となる。表1からグリコ
ール及びグリセリンの粘度はメタノール、エタノールな
どより十分大きいのが分かる。したがって、それらの誘
電率でさえ、分子は、有機溶媒において別の部分に容易
に拡散しない。それゆえ、電解溶媒としてグリコール及
びグリセリンを使用したとき、抵抗が少し低くなるので
ある。
【0062】温度が増加したとき、粘度が減少すること
が知られている。異なる量の水を添加したときのグリコ
ール及びグリセリンの抵抗の温度依存性を図12及び図
13に示す。それらは、温度が増加したとき、抵抗が減
少することを示した。これらの結果は、より十分に拡散
しやすくする高温において有機溶媒の粘度が減少したた
めである。
【0063】一方、グリコール及びグリセリンの有機溶
媒における水添加の影響の程度は少し異なることは注目
すべきである。グリコールの場合には、水添加は抵抗の
減少においてみられる一方、グリセリンにおいてあまり
影響がなかった。表1からグリセリン(10690)の粘度
は、いずれの他の有機溶媒よりも十分より高いことが分
かる。その誘電率が十分水のものより高いときでさえ、
放電堆積中により十分に分極した分子を形成するかもし
れない。要約すると、有機溶媒の抵抗に関して少なくと
も2つの要因、すなわち誘電率及び粘度があることが判
明した。
【0064】
【発明の効果】本発明のDLC膜の形成方法によれば、
液相から成膜することができ、環境にできるだけ近い常
温、常圧付近の有機溶媒を用いることによって、環境に
優しく、DLC膜を形成できるという有利な効果を奏す
る。
【0065】本発明のDLC膜の形成方法によれば、膜
形成に利用されなかった原料のリサイクルが可能である
という有利な効果を奏する。即ち、低温工程とリサイク
ル可能な液相での工程によって、環境に産業廃棄物を排
出する量を極めて低減できるという有利な効果を奏す
る。
【0066】本発明のDLC膜の形成方法によれば、手
軽に、かつ、低コストで薄膜形成及びパターン形成を行
うことができる。即ち、直接薄膜を形成するため、例え
ば、セラミックスをパターン化するために熱処理等のい
くつかの形成工程を省略することができるという有利な
効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明のDLC膜の形成方法の一実
施態様についての概略図である。
【図2】 図2は、サンプルのラマンスペクトル分光を
示す図である。
【図3】 図3は、サンプルのFTIRスペクトルを示す図
である。
【図4】 図4は、サンプルのSEM像を示す図であり、
(A)は、アークを発生させずに成膜した場合のDLC膜のSE
M像を示し、(B)は、アークを発生させて成膜した場合の
SEM像を示す。
【図5】 図5は、ラマンスペクトルを示す図であり、
(A)及び(B)は、それぞれ図4に示す膜(A)及び(B)につい
てのラマンスペクトルを示す図である。
【図6】 図6は、パターン形成したDLC膜を示す図で
ある。
【図7】 図7は、1200Vの電圧を加えたときのパター
ン形成したDLC膜を示す図である。
【図8】 図8は、1000Vの電圧を加えたときのパター
ン形成したDLC膜を示す図である。
【図9】 図9は、エタノール有機溶媒において水を加
えて得られた膜のラマン測定を示す図である。
【図10】 図10は、電流と電圧との関係における水
の影響を示す図である。
【図11】 図11は、加えた水の体積及び様々な有機
溶媒の抵抗の対数プロットとの関係を示す図である。
【図12】 図12は、グリコールに異なる体積の水を
添加した場合の抵抗の温度依存性を示す図である。
【図13】 図13は、グリセリンに異なる体積の水を
添加した場合の抵抗の温度依存性を示す図である。
【符号の説明】
1 DC源 2 Cu銅電極 3 金属針 4 Si基板 5 磁気スターラー 6 温度計 7 N2ガス
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平6−25896(JP,A) 特開 昭62−54095(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 26/00

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 有機溶媒中に、少なくとも先端が針形状
    のアノード電極と、カソード電極としての基板を配置し
    て、前記針形状のアノード電極と前記カソード電極との
    間に所定の電圧を印加することにより、カソード電極上
    に前記有機溶媒由来の構成元素を含む成分からなるダイ
    ヤモンドライクカーボン膜を形成することを特徴とする
    ダイヤモンドライクカーボン膜の形成方法。
  2. 【請求項2】 前記有機溶媒が、アクリロニトリル、メ
    タノール、エタノール、アセトン、2-プロパノール、
    1-プロパノール、テトラヒドロフラン、グリコール、
    グリセリンからなる群から選択される少なくとも1種で
    あることを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 前記アノード電極又はカソード電極を移
    動させて、任意の個所にパターン化されたDLC膜を合
    成する請求項1又は2項に記載の方法。
  4. 【請求項4】 前記有機溶媒が、含水溶媒である請求項
    1〜3項に記載の方法。
  5. 【請求項5】 含水溶媒が、0.001〜10%の水を含有す
    る有機溶媒である請求項4項に記載の方法。
  6. 【請求項6】 前記アノード電極及びカソード電極との
    間に、通電させてDLC膜を形成する請求項1〜5項に
    記載の方法。
  7. 【請求項7】 前記有機溶媒に窒素ガスを導入して、ダ
    イヤモンドライクカーボン膜を形成する請求項1〜6項
    に記載の方法。
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