JP3369489B2 - 無線通信装置及び無線通信方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、無線通信システム
において使用される無線通信装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】無線通信システムにおいて、多元アクセ
ス方式とは、同一の帯域で複数の局が同時に通信を行う
際の回線接続方式のことである。この多元アクセス方式
においてＣＤＭＡ（Code Division Multiple Access）
とは、符号分割多元接続のことであり、情報信号のスペ
クトルを、本来の情報帯域幅に比べて十分に広い帯域に
拡散して伝送するスペクトル拡散通信によって多元接続
を行う技術である。スペクトル拡散多元接続（ＳＳＭ
Ａ）という場合もある。

【０００３】一般に、ＣＤＭＡシステムでは、各ユーザ
毎に割り当てられる通信チャネルにおいて、通信間の伝
送路の状態に応じた送信電力制御（Transmit Power Con
trol：以後ＴＰＣと呼ぶ）が行われる。ＣＤＭＡ通信で
は、複数の通信が同一の周波数を共有するため、受信端
での干渉波（他局の通信波）と希望波との強さを同一に
する問題（遠近問題）があり、この克服がＣＤＭＡシス
テム実現の前提になる。

【０００４】遠近問題は、異なる位置にいる多数の移動
局からの電波を同時に受信する基地局受信（上り回線）
で厳しくなり、このため、移動局側では、各伝送路の状
態に応じたＴＰＣが必須のものとなっている。一方、下
り回線（基地局から移動局への回線）においても、フェ
ージング変動や周辺セルからの干渉によるＳＩＲ（希望
波受信電力対干渉電力比）に追従してＴＰＣが行われ
る。

【０００５】また、ＣＤＭＡにおいて、同期検波を行う
ためのチャネル推定技術は必要不可欠である。チャネル
推定方式に関しては、安倍田、安藤、佐和橋、安達ら
の”ＤＳ／ＣＤＭＡ複数シンボル重み付き平均化（ＷＭ
ＳＡ）パイロットチャネルの特性”信学技報 ＲＣ９７
−１６３，１９９７−１１）に示されているように、周
期的にパイロットシンボルを挿入する時分割型パイロッ
トチャネル方式と連続的に電力を抑圧した形で送信する
並列パイロットチャネル方式がある。従来、これら２つ
の方式のチャネル推定を特性改善する方式としては、上
記文献で提案されている複数シンボル重み付け（Weight
ed Multi-Symbol Averaging : ＷＭＳＡ）チャネル推定
方式がある。

【０００６】図７は、時間多重型パイロットチャネル方
式の回線推定装置を備えた受信部の構成を示すブロック
図である。送信側では、送信データＮｓシンボル毎にＮ
ｐ個のパイロットデータを挿入して送信する。受信側で
は、アンテナ７０１で受信した信号は、無線受信回路７
０２でダウンコンバートされ、復調された後、サーチ回
路７０３で検出されたタイミングでマッチドフィルタ７
０４により逆拡散される。

【０００７】パイロットシンボルは、逆拡散信号から抽
出され、数スロットに渡ってそのデータが蓄積され、そ
の情報に基づいてチャネル推定が回線推定回路７０５，
７０６において行われる。逆拡散信号は、回線推定回路
７０５，７０６において得られた推定値を用いて同期検
波部７０７，７０８で同期検波され、遅延処理部７０
９，７１０で時間遅延を補償した上で、各パスの信号が
合成部７１１において最大比合成（ＲＡＫＥ合成）され
る。

【０００８】チャネル推定方式の原理としては、ｌ番目
のブランチのｎ番目のスロットのｍ番目シンボルの複素
インパルスレスポンスの推定値を下記式（１）とする
と、同期加算後の複素インパルスレスポンスは下記式
（２）のようになり、さらに前後の複数スロットのパイ
ロットシンボルを用いることにより、下記式（３）に示
すチャネル推定値が得られる。

【０００９】

【数１】

【数２】

【数３】 ここで、αｉ（≦１）は重み係数である。相関の高い前
後のスロットの推定値を用いることにより、チャネル推
定の精度を向上できる。

【００１０】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
方式では、他チャネルの送信信号が複数のアンテナから
ダイバーシチ送信されている場合において、他チャネル
にもパイロット信号があるにも拘わらず、自チャネルの
パイロット信号しか回線推定（チャネル推定）に使用し
ていないという課題がある。

【００１１】特に、時間多重型パイロットチャネル方式
では、自チャネルと他チャネルのパイロット信号の送信
タイミングがずれている場合には、他チャネルのパイロ
ット信号に、自チャネルのパイロット信号では得られな
い区間の回線状態の情報が含められているにも拘わら
ず、これをチャネル推定に使用していない。

【００１２】また、一般にＣＤＭＡセルラ無線通信装置
には、ソフトハンドオーバ及びＲＡＫＥ合成のために、
複数の復調系（相関器及び回線推定回路）が備えられて
いる。この復調系を状況に応じて切り替えて使用するこ
とができれば、新たな上記復調系を増加することなく、
他チャネルの回線状態を推定することが可能になる。

【００１３】本発明はかかる点に鑑みてなされたもので
あり、パイロット信号を用いた回線推定により同期検波
を行うＤＳ−ＣＤＭＡ無線通信装置に用いられる回線推
定装置において、自チャネルだけでなく他チャネルのパ
イロット信号をも用いて回線推定を行って、チャネル推
定の精度の向上を図ることを可能とする優れたＣＤＭＡ
無線通信装置を提供することを目的とするものである。

【００１４】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、従来の方
式において、パイロット信号を含む他チャネルの送信信
号が複数のアンテナからダイバーシチ送信されている場
合において、自チャネルのパイロット信号しか回線推定
（チャネル推定）に使用していないことに着目し、自チ
ャネルだけでなく他チャネルのパイロット信号をも用い
て回線推定を行って、チャネル推定の精度の向上を図る
ことができることを見出し本発明をするに至った。

【００１５】すなわち、本発明の無線通信装置は、複数
のアンテナからそれぞれ送信された信号から制御チャネ
ルにおける既知参照信号を抽出し、それぞれの回線状態
を推定して第１の推定値を得る第１の回線推定手段と、
複数のアンテナから送信された信号から通信チャネル信
号の回線状態を推定して第２の推定値を得る第２の回線
推定手段と、前記第１及び第２の推定値を用いて前記複
数のアンテナから前記通信チャネル信号を送信したアン
テナを推定するアンテナ推定手段と、推定されたアンテ
ナについての第１の推定値と第２の推定値とを合成して
合成推定値を得る合成手段と、を具備することを特徴と
する。

【００１６】

【発明の実施の形態】本発明の第１の態様に係る無線通
信装置は、複数のアンテナからそれぞれ送信された信号
から制御チャネルにおける既知参照信号を抽出し、それ
ぞれの回線状態を推定して第１の推定値を得る第１の回
線推定手段と、複数のアンテナから送信された信号から
通信チャネル信号の回線状態を推定して第２の推定値を
得る第２の回線推定手段と、前記第１及び第２の推定値
を用いて前記複数のアンテナから前記通信チャネル信号
を送信したアンテナを推定するアンテナ推定手段と、推
定されたアンテナについての第１の推定値と第２の推定
値とを合成して合成推定値を得る合成手段と、を具備
し、前記アンテナ推定手段は、前記複数のアンテナのう
ち、第１のアンテナから送信された既知参照信号の回線
推定値と第１又は第２のアンテナから送信された通信チ
ャネル信号の回線推定値との差、並びに、前記第２のア
ンテナから送信された既知参照信号の回線推定値と前記
第１又は第２のアンテナから送信された通信チャネル信
号の回線推定値との差を求める演算手段と、求められた
複数の推定値差を互いに比較する比較手段と、を有し、
比較結果に基づいて差が小さい方のアンテナを送信アン
テナとして推定する、構成を採る。

【００１７】この構成によれば、通信相手が複数のアン
テナを備え、すべてのアンテナから制御チャネル信号が
送信され、通信チャネル信号がアンテナを切り替えて送
信されるような送信ダイバーシチが行われる場合に、送
信アンテナを推定した上で、制御チャネル信号の回線推
定値と通信チャネル信号の回線推定値を合成するので、
回線推定能力が向上する。これにより、無線通信装置に
おける同期検波性能を向上させることができる。

【００１８】

【００１９】

【００２０】

【００２１】

【００２２】

【００２３】

【００２４】本発明の第２の態様に係る無線通信装置
は、第１の態様において、第１及び第２の推定値、並び
にアンテナ推定についての判定結果に基づいて、第１及
び第２の推定値に乗算する重み係数を算出する重み演算
手段を具備する構成を採る。

【００２５】この構成によれば、第１及び第２の推定値
から求められた重み係数を乗算するので、アンテナ推定
の信頼度及び／又は回線推定値の信頼度に応じた回線推
定値の重み付け合成ができ、これにより、より正確な回
線推定および同期検波を行なうことができる。

【００２６】本発明の第３の態様に係る無線通信装置
は、複数のアンテナからそれぞれ送信された信号から制
御チャネルにおける既知参照信号を抽出し、それぞれの
回線状態を推定して第１の推定値を得る第１の回線推定
手段と、複数のアンテナから送信された信号から通信チ
ャネル信号の回線状態を推定して第２の推定値を得る第
２の回線推定手段と、前記通信チャネル信号を送信する
アンテナの切替えを要求する制御信号を送信する送信手
段と、前記第１及び第２の推定値並びに前記制御信号を
用いて前記複数のアンテナから前記通信チャネル信号を
送信したアンテナを推定するアンテナ推定手段と、推定
されたアンテナについての第１の推定値と第２の推定値
とを合成して合成推定値を得る合成手段と、を具備する
構成を採る。

【００２７】この構成によれば、アンテナ切り替えの制
御信号のみで、回線推定値を合成する場合に比べて、制
御信号の伝送誤りに起因する基地局側の送信アンテナ切
り替え誤りによって生じる、端末側の合成誤り（誤った
アンテナの制御チャネルの回線推定値と合成してしま
う）を防ぐことができる。このため、より高い精度でア
ンテナ推定が行なえると同時に、より正確に回線推定が
行え、同期検波性能を向上することができる。

【００２８】本発明の第４の態様に係る通信端末装置
は、第１から第３のいずれかの態様の無線通信装置を備
えたことを特徴とする。また、本発明の第５の態様に係
る基地局装置は、第４の態様の通信端末装置と無線通信
を行うことを特徴とする。

【００２９】これらの構成によれば、回線推定能力の高
い無線通信装置を備えているので、同期検波性能が向上
し、システム間における通信品質の向上を図ることがで
きる。

【００３０】本発明の第６の態様に係る無線通信方法
は、複数のアンテナからそれぞれ送信された信号から制
御チャネルにおける既知参照信号を抽出し、それぞれの
回線状態を推定して第１の推定値を得る第１の回線推定
工程と、複数のアンテナから送信された信号から通信チ
ャネル信号の回線状態を推定して第２の推定値を得る第
２の回線推定工程と、前記第１及び第２の推定値を用い
て前記複数のアンテナから前記通信チャネル信号を送信
したアンテナを推定するアンテナ推定工程と、推定され
たアンテナについての第１の推定値と第２の推定値とを
合成して合成推定値を得る合成工程と、を具備し、前記
アンテナ推定工程は、前記複数のアンテナのうち、第１
のアンテナから送信された既知参照信号の回線推定値と
第１又は第２のアンテナから送信された通信チャネル信
号の回線推定値との差、並びに、前記第２のアンテナか
ら送信された既知参照信号の回線推定値と前記第１又は
第２のアンテナから送信された通信チャネル信号の回線
推定値との差を求める演算工程と、求められた複数の推
定値差を互いに比較する比較工程と、を有し、比較結果
に基づいて差が小さい方のアンテナを送信アンテナとし
て推定する、ようにした。

【００３１】この方法によれば、通信相手が複数のアン
テナを備え、すべてのアンテナから制御チャネル信号が
送信され、通信チャネル信号がアンテナを切り替えて送
信されるような送信ダイバーシチが行われる場合に、送
信アンテナを推定した上で、制御チャネル信号の回線推
定値と通信チャネル信号の回線推定値を合成するので、
回線推定能力が向上する。これにより、無線通信装置に
おける同期検波性能を向上させることができる。

【００３２】

【００３３】

【００３４】

【００３５】

【００３６】本発明の第７の態様に係る無線通信方法
は、複数のアンテナからそれぞれ送信された信号から制
御チャネルにおける既知参照信号を抽出し、それぞれの
回線状態を推定して第１の推定値を得る第１の回線推定
工程と、複数のアンテナから送信された信号から通信チ
ャネル信号の回線状態を推定して第２の推定値を得る第
２の回線推定工程と、前記通信チャネル信号を送信する
アンテナの切替えを要求する制御信号を送信する送信工
程と、前記第１及び第２の推定値並びに前記制御信号を
用いて前記複数のアンテナから前記通信チャネル信号を
送信したアンテナを推定するアンテナ推定工程と、推定
されたアンテナについての第１の推定値と第２の推定値
とを合成して合成推定値を得る合成工程と、を具備す
る。

【００３７】この方法によれば、アンテナ切り替えの制
御信号のみで、回線推定値を合成する場合に比べて、制
御信号の伝送誤りに起因する基地局側の送信アンテナ切
り替え誤りによって生じる、端末側の合成誤り（誤った
アンテナの制御チャネルの回線推定値と合成してしま
う）を防ぐことができる。このため、より高い精度でア
ンテナ推定が行なえると同時に、より正確に回線推定が
行え、同期検波性能を向上することができる。

【００３８】以下、本発明の実施の形態について添付図
面を参照して詳細に説明する。 （実施の形態１）図１は、本発明の実施の形態に係る無
線通信装置（移動局）の構成を示すブロック図である。
また、図２は、図１に示す無線通信装置の送信アンテナ
推定回路の構成を示すブロック図である。また、図３
は、図１に示す無線通信装置と無線通信を行なう基地局
装置の構成を示すブロック図である。以下、図１〜図５
を用いて実施の形態を説明する。

【００３９】本実施の形態では、アンテナからの送信に
おいては、シリアル／パラレル変換された各アンテナか
らの伝送速度を１／ｎに低速にし、ｎ倍の拡散率で送信
するＯＴＤ(Orthogonal Transmit Diversity)を採用す
る場合について説明する。

【００４０】この場合、制御チャネル信号を送信ダイバ
ーシチにより送信する。例えば、制御チャネル信号を、
図４（ａ）に示すようなパターンで送信する。すなわ
ち、既知参照信号（パイロット信号）４０１をすべての
アンテナＡ，Ｂ（ここでは２つ）から送信し、その他の
制御信号４０２を所定の周期又はパターンで送信する。

【００４１】また、通信チャネル信号を送信する場合、
例えば図５に示すような周期又はパターンで送信する。
すなわち、既知参照信号（パイロット信号）５０１及び
データ５０２を択一的にいずれかのアンテナＡ，Ｂから
送信する。このアンテナの切替えの周期は、単位スロッ
ト毎、単位フレーム毎など適宜設定することができる。

【００４２】上記のような送信パターンで送信ダイバー
シチを行なって送信を行なう場合には、図３に示す構成
を有する基地局装置が使用される。この場合、制御チャ
ネルにおける送信信号は、シリアル／パラレル変換器３
０１でシリアル／パラレル変換される（ここでは、２パ
ス）。これにより、各アンテナからの伝送速度を１／２
にする。この信号は、既知参照信号と多重された後、デ
ータ変調回路３０２に送られ、データ変調回路３０２で
変調され、拡散変調回路３０３で所定の拡散符号により
拡散処理される。ここでの拡散率は２倍とする。拡散処
理された信号は、無線送信回路３０４でアップコンバー
トされてアンテナ３０５ａ，３０５ｂから送信される。

【００４３】通信チャネルの送信信号は、既知参照信号
と多重された後、データ変調回路３０６に送られ、デー
タ変調回路３０６で変調され、拡散変調回路３０７で所
定の拡散符号により拡散処理される。拡散処理された信
号は、切替え信号によって切替えられるスイッチ３０８
で、どちらか一方のアンテナの制御信号と多重され、無
線送信回路３０４でアップコンバートされてアンテナ３
０５ａ又は３０５ｂから送信される。このようにして送
信された信号は、図１に示す無線通信装置（通信端末装
置）で受信される。

【００４４】図１に示す無線通信装置において、アンテ
ナ１０１で受信した信号は、無線受信回路１０２でダウ
ンコンバートされ、復調された後、マッチドフィルタ１
０３ａ，１０３ｂにおいて、送信側で拡散処理された際
に使用した拡散符号を用いて逆拡散処理される。マッチ
ドフィルタ１０３ａは、基地局装置のアンテナ３０５ａ
から送信された制御チャネル信号を逆拡散し、マッチド
フィルタ１０３ｂは、基地局装置のアンテナ３０５ｂか
ら送信された制御チャネル信号を逆拡散し、マッチドフ
ィルタ１０３ｃは、基地局装置のアンテナ３０５ａ又は
３０５ｂから送信された通信チャネル信号を逆拡散す
る。

【００４５】これらのマッチドフィルタ１０３ａ〜１０
３ｃで逆拡散処理された信号はそれぞれ第１〜第３の回
線推定回路１０４〜１０６に送られて、回線推定が行な
われた後に、送信アンテナ推定回路１０８に送られる。
送信アンテナ推定回路１０８では、それぞれの回線推定
回路１０４〜１０６の推定結果に基づいて、送信に供さ
れたアンテナを選択し、さらに合成のための重み係数を
算出する。

【００４６】送信アンテナ推定回路１０８は、第１〜第
３の回線推定回路１０４〜１０６からの推定結果を用い
て所定の演算を行なう演算回路２０１と、演算回路２０
１における演算結果を比較する比較回路２０２と、比較
回路２０２における比較結果に基づいてアンテナ推定の
判定を行なう判定回路２０３と、比較回路２０２の結果
と第１〜第３の回線推定回路１０４〜１０６からの推定
結果とを用いて重み係数を求める重み演算回路２０４と
を有する。

【００４７】送信アンテナ推定回路１０８で得られたア
ンテナ推定情報及び重み係数は合成回路１０９に送られ
る。合成回路１０９では、アンテナ推定情報及び重み係
数にしたがって制御チャネル信号と通信チャネル信号の
回線推定値を合成する。合成された信号は、同期検波回
路１１０に送られて、そこで遅延器１０７で遅延処理さ
れた信号との間で同期検波処理される。

【００４８】次に、上記構成を有する無線通信装置の動
作について説明する。マッチドフィルタ１０３ａ〜１０
３ｃで逆拡散処理された受信信号は、それぞれ第１〜第
３の回線推定回路１０４〜１０６に送られて、回線推定
が行なわれる。すなわち、第１の回線推定回路１０４で
は、基地局のアンテナ３０５ａから送信された制御チャ
ネル信号についての回線推定を行ない、第２の回線推定
回路１０５では、基地局のアンテナ３０５ｂから送信さ
れた制御チャネル信号についての回線推定を行なう。こ
の回線推定は、前後数スロットの既知参照信号を用いて
行なう。また、第３の回線推定回路１０６では、基地局
のアンテナ３０５ａ又は３０５ｂから送信された通信チ
ャネル信号についての回線推定を行なう。この回線推定
も、前後数スロットの既知参照信号を用いて行なう。た
だし、通信チャネル信号についてのアンテナ切替えがス
ロット毎に行なわれる場合には、回線推定は、１スロッ
ト内の既知参照信号を用いて行なう。

【００４９】ここで、回線推定方式の原理としては、ｎ
番目のスロットのｍ番目シンボルのｌパス目の逆拡散信
号を上記式（１）とすると、ｎ番目のパイロットブロッ
クのｌパス目の回線推定値は上記式（２）にしたがって
求めることができる。なお、回線推定値は、位相、振
幅、パワなどで得られる。これらの回線推定値が送信ア
ンテナ推定回路１０８の演算回路２０１に送られる。

【００５０】演算回路２０１では、基地局のアンテナ３
０５ａから送信された既知参照信号の回線推定値と、基
地局のアンテナ３０５ａ又は３０５ｂから送信された通
信チャネル信号の回線推定値との差、並びに基地局のア
ンテナ３０５ｂから送信された既知参照信号の回線推定
値と、基地局のアンテナ３０５ａ又は３０５ｂから送信
された通信チャネル信号の回線推定値との差を求める。

【００５１】これらの回線推定値の差は、比較回路２０
２に送られて、そこで両者が比較される。この比較結果
は判定回路２０３に送られる。通信チャネルの回線推定
値そのものの信頼度が低い場合や、いずれかのアンテナ
から送信された制御チャネル信号の回線推定値が低い信
頼度である場合、又は通信チャネルの回線推定値と比較
して、いずれの制御チャネル信号の回線推定値も同等の
品質である場合には、通信チャネルがいずれのアンテナ
から送信されたか判定が困難又は極めて低い信頼度とな
るため、回線推定値を合成しない方が良いと考え、比較
回路２０３では、比較結果が所定のしきい値以下であれ
ば、基地局においていずれのアンテナから送信されたか
の推定を行なわない。

【００５２】これにより、アンテナ推定を行なわないの
で、不必要な処理を回避することができ、装置に対する
負担を軽減することができるだけでなく、合成によって
かえって回線推定能力が低下することを防止することも
できる。このアンテナを推定しない情報は、アンテナ推
定情報として合成回路１０９に送られる。

【００５３】一方、比較回路２０３で、比較結果が所定
のしきい値を超えれば、どちらかのアンテナから送信さ
れた既知参照信号による回線推定値が高い品質であり、
通信チャネルがいずれのアンテナから送信されたかの判
定がある程度高い信頼度で行なえるので、回線推定値を
合成しない方が良いと考え、アンテナを推定する。これ
により、回線推定値の品質が高いと思われる回線のアン
テナを推定するので、より正確な回線推定及び同期検波
を行なうことができる。どちらのアンテナを推定したか
の情報は、アンテナ推定情報として合成回路１０９に送
られる。

【００５４】なお、比較対象である両者の回線推定値の
受信レベルが共に小さい場合には、いずれのアンテナに
ついての回線推定値の品質が同等に悪いと判断すること
ができるので、この場合にもアンテナ推定を行なわない
ようにしても良い。

【００５５】また、上記回線推定値は、重み演算回路２
０４に送られる。同様に、比較回路２０２における比較
結果及び判定回路２０３の判定結果が重み演算回路２０
４に送られる。重み演算回路２０４においては、回線推
定値の信頼度に応じて軟判定を行ない、比較結果及び判
定結果に基づいて重み係数を求める。

【００５６】このようにして重み係数を乗算するので、
回線推定値の信頼度及び／又はアンテナ推定の信頼度に
応じた回線推定値の重み付け合成ができ、これにより、
より正確な回線推定及び同期検波を行なうことができ
る。

【００５７】ここで、回線推定値の信頼度とは、例えば
通信チャネル信号の既知参照信号の受信レベルに対する
制御チャネル信号の既知参照信号の受信レベルの割合や
差などを挙げることができる。例えば、通信チャネル信
号の既知参照信号に対する制御チャネルの既知参照信号
の割合や差が小さい場合には、制御チャネルの回線推定
値の信頼度が小さく、通信チャネルがどちらのアンテナ
から送信されたかのアンテナ推定の信頼度も小さくな
る。重み係数はその信頼度に応じて求められる。このよ
うに、上記判定により、アンテナ推定を行なう場合に
は、回線推定値及び比較結果を用いて重み係数を算出す
る。この重み係数は、合成回路１０９に送られる。

【００５８】合成回路１０９では、送信アンテナ推定回
路１０８からのアンテナ推定情報及び重み係数にしたが
って、回線推定値の合成を行なう。すなわち、アンテナ
３０５ａから送信された既知参照信号についての回線推
定値と、アンテナ３０５ａ及びアンテナ３０５ｂから送
信された通信チャネル信号についての回線推定値を重み
係数を乗算して合成する、又はアンテナ３０５ｂから送
信された既知参照信号についての回線推定値と、アンテ
ナ３０５ａ及びアンテナ３０５ｂから送信された通信チ
ャネル信号についての回線推定値を重み係数を乗算して
合成する。

【００５９】この場合、制御チャネル信号の回線推定値
をζｌ（ｎ）control、通信チャネル信号の回線推定値
をζｌ（ｎ）user、重み係数をαとすると、合成後の出
力２０６は下記式（４）のようになる。

【００６０】 ζl(n) =α×ζl(n)control + ζl(n)user （４） 上記のようにして得られた合成推定値を用いて、逆拡散
信号について遅延処理部１０７で時間遅延を補償した上
で、同期検波回路１１０で同期検波する。

【００６１】このように、基地局が複数のアンテナを備
え、すべてのアンテナから制御チャネル信号が送信さ
れ、通信チャネル信号がアンテナを切り替えて送信され
るような送信ダイバーシチが行われる場合に、送信アン
テナを推定した上で、制御チャネル信号の回線推定値と
通信チャネル信号の回線推定値を合成するので、回線推
定能力が向上する。これにより、無線通信装置における
同期検波性能を向上させることができる。

【００６２】（実施の形態２）本実施の形態では、送信
側（基地局）が図４（ｂ）に示すパターンで制御チャネ
ル信号を送信ダイバーシチにより送信する場合について
説明する。図４（ｂ）に示す送信パターンにおいては、
制御信号４０２を特定のアンテナＡから送信するように
なっている。

【００６３】上記のような送信パターンで送信ダイバー
シチを行なって送信を行なう場合には、図６に示す構成
の基地局装置が使用される。この場合、制御チャネルに
おける送信信号は、スイッチ６０１で切り替えながら送
信される。すなわち、送信は、アンテナ６０５ａ側のラ
インを常時接続し、アンテナ６０５ｂ側のラインを切替
えながら行われる（ここでは、２ライン）。この信号
は、既知参照信号と多重された後、データ変調回路６０
２に送られ、データ変調回路６０２で変調され、拡散変
調回路６０３で所定の拡散符号により拡散処理される。
拡散処理された信号は、無線送信回路６０４でアップコ
ンバートされてアンテナ６０５ａ，６０５ｂから送信さ
れる。

【００６４】通信チャネルの送信信号は、既知参照信号
と多重された後、データ変調回路６０６に送られ、デー
タ変調回路６０６で変調され、拡散変調回路６０７で所
定の拡散符号により拡散処理される。拡散処理された信
号は、切替え信号によって切替えられるスイッチ６０８
で、どちらか一方のアンテナの制御信号と多重され、無
線送信回路６０４でアップコンバートされてアンテナ６
０５ａ又は６０５ｂから送信される。このようにして送
信された信号は、図１に示す無線通信装置（通信端末装
置）で受信される。

【００６５】図１に示す無線通信装置（通信端末装置）
における処理は、実施の形態１と同様である。このよう
に、基地局が複数のアンテナを備え、すべてのアンテナ
から制御チャネル信号が送信され、通信チャネル信号が
アンテナを切り替えて送信されるような送信ダイバーシ
チが行われる場合に、送信アンテナを推定した上で、制
御チャネル信号の回線推定値と通信チャネル信号の回線
推定値を合成するので、回線推定能力が向上する。これ
により、無線通信装置における同期検波性能を向上させ
ることができる。

【００６６】（実施の形態３）本実施の形態では、送信
側（基地局）が図４（ｃ）に示すパターンで制御チャネ
ル信号を送信ダイバーシチにより送信する場合について
説明する。図４（ｃ）に示す送信パターンにおいては、
所定の周期又はパターンにしたがって両方のアンテナ
Ａ，Ｂから択一的に制御信号４０２を送信するようにな
っている。

【００６７】上記のような送信パターンで送信ダイバー
シチを行なって送信を行なう場合には、図６に示す構成
の基地局装置が使用される。この場合、制御チャネルに
おける送信信号は、スイッチ６０１で切り替えながら送
信される。すなわち、送信は、アンテナ６０５ａ側のラ
インとアンテナ６０５ｂ側のラインとを切替えながら行
われる（ここでは、２ライン）。この信号は、既知参照
信号と多重された後、データ変調回路６０２に送られ、
データ変調回路６０２で変調され、拡散変調回路６０３
で所定の拡散符号により拡散処理される。拡散処理され
た信号は、無線送信回路６０４でアップコンバートされ
てアンテナ６０５ａ，６０５ｂから送信される。

【００６８】通信チャネルの送信信号は、既知参照信号
と多重された後、データ変調回路６０６に送られ、デー
タ変調回路６０６で変調され、拡散変調回路６０７で所
定の拡散符号により拡散処理される。拡散処理された信
号は、切替え信号によって切替えられるスイッチ６０８
で、どちらか一方のアンテナの制御信号と多重され、無
線送信回路６０４でアップコンバートされてアンテナ６
０５ａ又は６０５ｂから送信される。このようにして送
信された信号は、図１に示す無線通信装置（通信端末装
置）で受信される。

【００６９】図１に示す無線通信装置（通信端末装置）
における処理は、実施の形態１と同様である。このよう
に、基地局が複数のアンテナを備え、すべてのアンテナ
から制御チャネル信号が送信され、通信チャネル信号が
アンテナを切り替えて送信されるような送信ダイバーシ
チが行われる場合に、送信アンテナを推定した上で、制
御チャネル信号の回線推定値と通信チャネル信号の回線
推定値を合成するので、回線推定能力が向上する。これ
により、無線通信装置における同期検波性能を向上させ
ることができる。

【００７０】なお、上記実施の形態における送信パター
ンにおいては、既知参照信号４０１がすべてのアンテナ
Ａ，Ｂから同時に送信する場合について示しているが、
本発明は、既知参照信号４０１がすべてのアンテナＡ，
Ｂから異なるタイミングで送信する場合についても適用
可能である。

【００７１】上記実施の形態では、送信ダイバーシチを
行なうアンテナが２つの場合について説明しているが、
本発明は、送信ダイバーシチを行なうアンテナが３つ以
上である場合にも適用することができる。

【００７２】通信チャネル信号の送信においては、上述
したように、あらかじめ決められた周期又はパターンで
送信アンテナを切り替える方式の他に、通信端末装置側
からのアンテナ切り替えを求める旨の制御信号を受け
て、その制御信号にしたがって送信アンテナを切り替え
る方式や、上り回線の受信品質を比較して自律的に送信
アンテナを切り替える方式などがある。本発明は、これ
らのいずれの方式にも適用することが可能である。

【００７３】特に、通信端末装置側からのアンテナ切り
替えを求める旨の制御信号を受けて、その制御信号にし
たがって送信アンテナを切り替える方式では、アンテナ
推定の制御のみで、回線推定値を合成する場合に比べ
て、制御信号の伝送誤りに起因する基地局側の送信アン
テナ切り替え誤りによって生じる、端末側の合成誤り
（誤ったアンテナの制御チャネルの回線推定値と合成し
てしまう）を防ぐことができる。このため、より高い精
度でアンテナ推定が行なえると同時に、より正確に回線
推定が行え、同期検波性能を向上することができる。

【００７４】本発明の無線通信装置においては、一般に
ＣＤＭＡセルラ無線通信装置に備えられているソフトハ
ンドオーバ及びＲＡＫＥ合成のための複数の復調系（相
関器及び回線推定回路）を用いて状況に応じて切り替え
て使用することにより、新たな上記復調系を増加するこ
となく、他チャネルの回線状態を推定することが可能に
なる。

【００７５】また、本発明においては、複数のアンテナ
を備え、すべてのアンテナから制御チャネル信号が送信
され、通信チャネル信号がアンテナを切り替えて送信さ
れるような送信ダイバーシチが行われる方式であれば、
特に制限されない。

【００７６】本発明の無線通信装置は、ＣＤＭＡ無線通
信システムにおける通信端末装置や基地局装置に好適に
使用することができる。これにより、回線推定能力の高
い無線通信装置を備えるので、同期検波性能が向上し、
システム間における通信品質の向上を図ることができ
る。

【００７７】

【発明の効果】以上説明したように本発明の無線通信装
置及び無線通信方法は、基地局が複数のアンテナを備
え、すべてのアンテナから制御チャネル信号が送信さ
れ、通信チャネル信号がアンテナを切り替えて送信され
るような送信ダイバーシチが行われる場合に、送信アン
テナを推定した上で、制御チャネル信号の回線推定値と
通信チャネル信号の回線推定値を合成するので、回線推
定能力が向上する。これにより、無線通信装置における
同期検波性能を向上させることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施の形態に係る無線通信装置（移動
局）の構成を示すブロック図

【図２】図１に示す無線通信装置の送信アンテナ推定回
路の構成を示すブロック図

【図３】実施の形態１に係る無線通信装置と無線通信を
行なう基地局装置の構成を示すブロック図

【図４】制御チャネルにおける送信パターンを示す図

【図５】通信チャネルにおける送信パターンを示す図

【図６】実施の形態２及び３に係る無線通信装置と無線
通信を行なう基地局装置の構成を示すブロック図

【図７】従来の無線通信装置（受信部）の構成を示すブ
ロック図

【符号の説明】

１０１ アンテナ １０２ 無線受信回路 １０３ａ〜１０３ｃ マッチドフィルタ １０４ 第１の回線推定回路 １０５ 第２の回線推定回路 １０６ 第３の回線推定回路 １０７ 遅延器 １０８ 送信アンテナ推定回路 １０９ 合成回路 １１０ 同期検波回路 ２０１ 演算回路 ２０２ 比較回路 ２０３ 判定回路 ２０４ 重み演算回路

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平10−107768（ＪＰ，Ａ) 特開 平10−126331（ＪＰ，Ａ) 特開 平10−190537（ＪＰ，Ａ) 特開 平10−51354（ＪＰ，Ａ) 特開 平10−190626（ＪＰ，Ａ) 特開 平２−200018（ＪＰ，Ａ) 特開 平10−262028（ＪＰ，Ａ) 特開 平11−69405（ＪＰ，Ａ) 特開 平11−88247（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) H04J 13/00 - 13/06 H04B 1/69 - 1/713 H04B 1/707 H04B 7/08 H04B 7/26

Claims (7)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 複数のアンテナからそれぞれ送信された
   信号から制御チャネルにおける既知参照信号を抽出し、
   それぞれの回線状態を推定して第１の推定値を得る第１
   の回線推定手段と、複数のアンテナから送信された信号
   から通信チャネル信号の回線状態を推定して第２の推定
   値を得る第２の回線推定手段と、前記第１及び第２の推
   定値を用いて前記複数のアンテナから前記通信チャネル
   信号を送信したアンテナを推定するアンテナ推定手段
   と、推定されたアンテナについての第１の推定値と第２
   の推定値とを合成して合成推定値を得る合成手段と、を
   具備し、 前記アンテナ推定手段は、前記複数のアンテナのうち、
   第１のアンテナから送信された前記既知参照信号の回線
   推定値と第１又は第２のアンテナから送信された通信チ
   ャネル信号の回線推定値との差、並びに、前記第２のア
   ンテナから送信された既知参照信号の回線推定値と前記
   第１又は第２のアンテナから送信された通信チャネル信
   号の回線推定値との差を求める演算手段と、求められた
   複数の推定値差を互いに比較する比較手段と、を有し、
   比較結果に基づいて差が小さい方のアンテナを送信アン
   テナとして推定する、 ことを特徴とする無線通信装置。
2. 【請求項２】 第１及び第２の推定値、並びにアンテナ
   推定についての判定結果に基づいて、第１及び第２の推
   定値に乗算する重み係数を算出する重み演算手段を具備
   することを特徴とする請求項１記載の無線通信装置。
3. 【請求項３】 複数のアンテナからそれぞれ送信された
   信号から制御チャネルにおける既知参照信号を抽出し、
   それぞれの回線状態を推定して第１の推定値を得る第１
   の回線推定手段と、複数のアンテナから送信された信号
   から通信チャネル信号の回線状態を推定して第２の推定
   値を得る第２の回線推定手段と、前記通信チャネル信号
   を送信するアンテナの切替えを要求する制御信号を送信
   する送信手段と、前記第１及び第２の推定値並びに前記
   制御信号を用いて前記複数のアンテナから前記通信チャ
   ネル信号を送信したアンテナを推定するアンテナ推定手
   段と、推定されたアンテナについての第１の推定値と第
   ２の推定値とを合成して合成推定値を得る合成手段と、
   を具備することを特徴とする無線通信装置。
4. 【請求項４】 請求項１から請求項３のいずれかに記載
   の無線通信装置を備えたことを特徴とする通信端末装
   置。
5. 【請求項５】 請求項４記載の通信端末装置と無線通信
   を行なうことを特徴とする基地局装置。
6. 【請求項６】 複数のアンテナからそれぞれ送信された
   信号から制御チャネルにおける既知参照信号を抽出し、
   それぞれの回線状態を推定して第１の推定値を得る第１
   の回線推定工程と、複数のアンテナから送信された信号
   から通信チャネル信号の回線状態を推定して第２の推定
   値を得る第２の回線推定工程と、前記第１及び第２の推
   定値を用いて前記複数のアンテナから前記通信チャネル
   信号を送信したアンテナを推定するアンテナ推定工程
   と、推定されたアンテナについての第１の推定値と第２
   の推定値とを合成して合成推定値を得る合成工程と、を
   具備し、 前記アンテナ推定工程は、前記複数のアンテナのうち、
   第１のアンテナから送信された前記既知参照信号の回線
   推定値と第１又は第２のアンテナから送信された通信チ
   ャネル信号の回線推定値との差、並びに、前記第２のア
   ンテナから送信された既知参照信号の回線推定値と前記
   第１又は第２のアンテナから送信された通信チャネル信
   号の回線推定値との差を求める演算工程と、求められた
   複数の推定値差を互いに比較する比較工程と、を有し、
   比較結果に基づいて差が小さい方のアンテナを送信アン
   テナとして推定する、 ことを特徴とする無線通信方法。
7. 【請求項７】 複数のアンテナからそれぞれ送信された
   信号から制御チャネルにおける既知参照信号を抽出し、
   それぞれの回線状態を推定して第１の推定値を得る第１
   の回線推定工程と、複数のアンテナから送信された信号
   から通信チャネル信号の回線状態を推定して第２の推定
   値を得る第２の回線推定工程と、前記通信チャネル信号
   を送信するアンテナの切替えを要求する制御信号を送信
   する送信工程と、前記第１及び第２の推定値並びに前記
   制御信号を用いて前記複数のアンテナから前記通信チャ
   ネル信号を送信したアンテナを推定するアンテナ推定工
   程と、推定されたアンテナについての第１の推定値と第
   ２の推定値とを合成して合成推定値を得る合成工程と、
   を具備することを特徴とする無線通信方法。