JP3362399B2 - 清浄性およびエッチング穿孔性に優れたFe−Ni 系合金冷延板およびその製造方法 - Google Patents

清浄性およびエッチング穿孔性に優れたFe−Ni 系合金冷延板およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、高鮮明TVのシャドウ
マスク材として使用することができる、エッチング穿孔
時に、欠陥が発生せず、そして、熱膨張率の低い、清浄
性およびエッチング穿孔性に優れたFe-Ni 系合金冷延板
およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、Fe-Ni 系合金板は、主として電子
部品用材として使用されている。例えば、42wt.%のニッ
ケルを含有するFe-Ni 系合金板は、電気伝導性、耐熱
性、曲げ加工性、メッキ付着性およびハンダ付け性にお
いて優れているので、ICリ−ドフレ−ム材として使用さ
れている。更に、熱膨張率が非常に小さい、36wt.%のニ
ッケルを含有するFe-Ni 系合金板は、カラ−テレビのシ
ャドウマスク材または低温の液体を保存するための容器
の材料として使用されている。
【0003】高鮮明TVのシャドウマスク材としてのFe-N
i 系合金冷延板には、エッチング穿孔時に欠陥が発生せ
ず、そして、熱膨張率が低いことが要求される。TVのシ
ャドウマスク材としてのFe-Ni 系合金冷延板として、次
に示すFe-Ni 系合金冷延板が提案されている。
【0004】特開昭 62-161,936 号公報に開示された、
冷間圧延時の表面性状に優れた、本質的に下記からなる
Fe-Ni 系合金冷延板: ニッケル : 30 〜 45 wt.% 、 マンガン : 0.3 〜 1.0 wt.%、 シリコン : 0.1 〜 0.3 wt.%、 アルミニウム: 0.0004〜0.0020 wt.% 、および、残り、
鉄および不可避的不純物、但し、前記不可避的不純物と
しての非金属介在物は、図6に示すAl2O3-Mn0-SiO2系三
元状態図において、 ポイント1: Al2O3: 4 wt.% 、 MnO :58 wt.% 、 SiO2 :38 wt.% 、 ポイント2: Al2O3: 5 wt.% 、 MnO :49 wt.% 、 SiO2 :46 wt.% 、 ポイント3: Al2O3:23 wt.% 、 MnO :23 wt.% 、 SiO2 :54 wt.% 、 ポイント4: Al2O3:27 wt.% 、 MnO :31 wt.% 、 SiO2 :42 wt.% 、および、 ポイント5: Al2O3:17 wt.% 、 MnO :54 wt.% 、 SiO2 :29 wt.% 、 を順次に結ぶ線によって囲まれた領域内の組成物からな
っている(以下、「先行技術」という)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述した先行技術は、
次のような問題を含んでいる。即ち、非金属介在物が、
図6に示すAl2O3-MnO-SiO2系三元状態図において、ポイ
ント1、2、3、4および5を順次に結ぶ線によって囲
まれた領域内の組成物からなっていることに起因して、
非金属介在物が、最も温度の低い、1,200 ℃の液相温度
線に囲まれた、スペッサ−タイトに近い領域内の組成物
からなっている。その結果、非金属介在物は、融点が低
く、且つ、変形能が大きく、そして、その合計量が多
い。非金属介在物の粒径が大きく、または、融点の低い
化合物の含有量が多いと、合金インゴットを熱間圧延、
冷間圧延して冷延板を調製したときに、冷延板中の非金
属介在物が線状に変形し、その結果、エッチング穿孔時
に欠陥が生じる原因となる。
【0006】このようなことから、高鮮明TVのシャドウ
マスク材として使用することができる、エッチング穿孔
時に欠陥が発生せず、そして、熱膨張率の低い、清浄性
およびエッチング穿孔性に優れたFe-Ni 系合金冷延板が
要求されているが、かかる合金冷延板およびその製造方
法は、まだ提案されていない。
【0007】従って、この発明の目的は、高鮮明TVのシ
ャドウマスク材として使用することができる、エッチン
グ穿孔時に欠陥が発生せず、そして、熱膨張率の低い、
清浄性およびエッチング穿孔性に優れたFe-Ni 系合金冷
延板およびその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上述した
観点から、高鮮明TVのシャドウマスク材として使用する
ことができる、エッチング穿孔時に欠陥が発生せず、そ
して、熱膨張率の低い、清浄性およびエッチング穿孔性
に優れたFe-Ni 系合金冷延板およびその製造方法を開発
すべく、鋭意研究を重ねた。その結果、次の知見を得
た。
【0009】30から45wt.%の範囲内のニッケルを含有す
る、脱燐および脱炭したFe-Ni 系溶融合金を調製し、20
から40wt.%の範囲内のCaO を含有するMgO-CaO 系耐火物
製の取鍋内において、このように調製した前記Fe-Ni 系
溶融合金にアルミニウムおよびチタンを添加し、アルミ
ニウムおよびチタンを添加した前記Fe-Ni 系溶融合金
を、前記取鍋内において、下記からなる CaO-Al2O3- Ti
02-MgO系スラグ: CaO およびAl2O3: 57 wt.%以上、 Ti02 : 30 wt.%以下、 但し、CaO /(CaO +Al2O3 +Ti02) の比は0.7 以上、 MgO : 25 wt.% 以下 、 SiO2 : 15 wt.% 以下、および、シリコンよ
りも酸素親和力の弱い金属の酸化物 : 3 wt.%以下、と
反応させて、前記Fe-Ni 系溶融合金を脱酸することによ
り、溶融合金中の溶存酸素量が低下し、そして、溶融合
金中に生成した酸化物がスラグに吸収される。
【0010】その結果、Fe-Ni 系合金冷延板中に存在す
る非金属介在物の合計量が、酸素に換算して0.002 wt.%
以下になる。換言すれば、上述した溶融合金中の溶存酸
素量が低下するに伴って、溶融合金の凝固時に、析出す
る非金属介在物の総量が低下するだけでなく、析出核と
なる低融点懸濁物が存在しないので、非金属介在物の粒
径の成長が抑制される。Fe-Ni 系合金冷延板中に存在す
る非金属介在物は、主として、チタン酸化物からなって
おり、その粒径は6μm 以下である。
【0011】この発明は、上述した知見に基づいてなさ
れたものであって、この発明の、清浄性およびエッチン
グ穿孔性に優れたFe-Ni 系合金冷延板は、本質的に下記
からなっている。 ニッケル: 30〜 45wt.% 、 マンガン: 0.1〜 1.0 wt.% 、および、 残り、鉄および不純物、但し、不純物としてのチタン含
有量は、0.6 wt.%以下、不可避的不純物としてのシリコ
ン、クロム、炭素、窒素、硫黄、燐、酸素、アルミニウ
ムおよび非金属介在物のそれぞれの含有量は、 シリコンについては、0.4 wt.%以下、 クロムについては、0.1 wt.%以下、 炭素については、0.005 wt.%以下、 窒素については、0.005 wt.%以下、 硫黄については、0.005 wt.%以下、 燐については、0.010 wt.%以下、 酸素については、0.002 wt.%以下、 アルミニウムについては、0.030 wt.%以下、および、 非金属介在物については、酸素に換算して、0.002 wt.%
以下 からなり、前記非金属介在物は、主としてチタン酸化物
からなっていることに特徴を有するものである。
【0012】この発明の、清浄性およびエッチング穿孔
性に優れたFe-Ni系合金冷延板の製造方法は、下記ステ
ップからなっている。30から45wt.%の範囲内の量のニッ
ケルを含有する、脱燐および脱炭したFe-Ni系溶融合金
を調製し、20から40wt.%の範囲内の量のCaO を含有す
る、MgO-CaO 系耐火物製の取鍋内において、このように
調製した前記Fe-Ni 系溶融合金にアルミニウムおよびチ
タンを添加し、アルミニウムおよびチタンを添加した前
記Fe-Ni 系溶融合金を、前記取鍋内において、下記から
なる CaO- Al2O3-Ti02-MgO系スラグ: CaO およびAl2O3: 57 wt.%以上、 Ti02 : 30 wt.%以下、 但し、CaO /(CaO +Al2O3 +Ti02) の比は、0.7 以上、 MgO : 25 wt.% 以下 、 SiO2 : 15 wt.% 以下、および、シリコンよ
りも酸素親和力の弱い金属の酸化物 : 3 wt.%下、と反
応させて、前記Fe-Ni 系溶融合金を脱酸し、前記脱酸し
たFe-Ni系溶融合金を、インゴットに鋳造し、そして前
記インゴットを分塊圧延し、熱間圧延し、そして、冷間
圧延して、その粒径が6μm 以下で、且つ、酸素に換算
して0.002 wt.%以下の量の非金属介在物を含有するFe-N
i 系合金冷延板を製造する。
【0013】この発明の、清浄性およびエッチング穿孔
性に優れたFe-Ni系合金冷延板の化学成分組成を、上述
した範囲内に限定した理由について、以下に述べる。 (1)ニッケル:ニッケルは、Fe-Ni 系合金板の熱膨張
率に大きな影響を及ぼす成分である。ニッケル含有量
が、30から45wt.%の範囲内では、合金板の熱膨張率が小
さい。しかしながら、ニッケル含有量が、30wt.%未満の
場合には、合金板の熱膨張率が高くなる。一方、ニッケ
ル含有量が、45wt.%を超えても、合金の熱膨張率が高く
なる。熱膨張率の高いFe-Ni 系合金冷延板を、シャドウ
マスク材として使用したときには、色ずれの原因とな
る。従って、ニッケル含有量は、30から45wt.%の範囲内
に限定すべきである。なおニッケルの原料として、イン
コニッケル(インタ−ナショナル社製のニッケルの商品
名)、電解ニッケルが通常用いられる。コストを低下さ
せるために、コバルトを含有するト−ニメット(東京ニ
ッケル社製のニッケルの商品名)を使用してもよい。こ
の際、1 wt.%以下の量のコバルトが含まれるけれども、
ニッケルの含有量が、上述した範囲内であれば問題はな
い。
【0014】(2)マンガン:マンガンは、Fe-Ni 系合
金板の熱間加工性を向上させる作用を有している。しか
しながら、マンガン含有量が0.1wt.%未満では、上述し
た作用に所望の効果が得られない。一方、マンガン含有
量が1.0 wt.%を超えると、合金板の硬度が過度に高くな
り、シャドウマスク材として適さない。従って、マンガ
ン含有量は、0.1 から1.0 wt.%の範囲内に限定すべきで
ある。
【0015】(3)シリコン:シリコンは、Fe-Ni 系合
金中に不可避的に混入する不純物の1つである。シリコ
ン含有量は、少ない程、好ましいが、シリコン含有量
を、工業的規模で大幅に低減させることは、経済性の観
点から困難である。しかしながら、シリコンの含有量が
0.4 wt.%を超えると、Fe-Ni 系合金板のエッチング穿孔
時に、エッチング液が汚れて、生産性を低下させる。従
って、シリコンの含有量は、0.4 wt.%以下に限定すべき
である。
【0016】(4)クロム:クロムは、Fe-Ni 系合金中
に不可避的に混入する不純物の1つである。クロム含有
量は、少ない程、好ましいが、クロム含有量を、工業的
規模で大幅に低減させることは、経済性の観点から困難
である。しかしながら、クロムの含有量が0.1 wt.%を超
えると、Fe-Ni 系合金板のエッチング穿孔速度が遅くな
って、生産性を低下させ、そして、合金板の熱膨張率が
高くなって、色ずれが生じる。従って、クロムの含有量
は、0.1 wt.%以下に限定すべきである。
【0017】(5)チタン チタンは、Fe-Ni 系合金中に脱酸剤として積極的に添加
し、圧延時に非金属介在物が線状に変形することを抑制
する成分であり、脱酸後は、少ない程好ましい不純物で
あるが、チタン含有量を、工業的規模で大幅に低減させ
ることは、経済性の観点から困難である。しかしなが
ら、チタンの含有量が0.6 wt.%を超えると、合金板の黒
化処理性が低下し、且つ、チタン酸化物の被膜が生成し
て、エッチング性能が低下する。従って、チタン含有量
は、0.6 wt.%以下に、より好ましくは0.1 wt.%以下に限
定すべきである。
【0018】(6)炭素:炭素は、Fe-Ni 系合金中に不
可避的に混入する不純物の1つである。炭素含有量は、
少ない程、好ましいが、炭素含有量を、工業的規模で大
幅に低減させることは、経済性の観点から困難である。
しかしながら、炭素含有量が0.005 wt.%を超えると、Fe
-Ni 系合金板中に鉄炭化物が多量に生成して、合金板の
エッチング穿孔性を阻害し、穿孔欠陥を生じる原因とな
る。更に、炭素含有量が0.005 wt.%を超えると、合金板
のプレス成形性が低下する。従って、炭素含有量は、0.
005wt.%以下に限定すべきである。
【0019】(7)窒素:窒素は、Fe-Ni 系合金中に不
可避的に混入する不純物の1つである。窒素含有量は、
少ない程、好ましいが、窒素含有量を、工業的規模で大
幅に低減させることは、経済性の観点から困難である。
しかしながら、窒素含有量が0.005 wt.%を超えると、合
金板中に金属窒化物が多量に生成して、合金板のエッチ
ング穿孔性を阻害し、穿孔欠陥を生じる原因となる。従
って、窒素含有量は、0.005 wt.%以下に限定すべきであ
る。
【0020】(8)硫黄:硫黄は、Fe-Ni 系合金中に不
可避的に混入する不純物の1つである。硫黄含有量は、
少ない程、好ましいが、硫黄含有量を、工業的規模で大
幅に低減させることは、経済性の観点から困難である。
しかしながら、硫黄含有量が0.005 wt.%を超えると、Fe
-Ni 系合金板中に硫化物系非金属介在物が多量に生成し
て、合金板のエッチング穿孔性を阻害し、穿孔欠陥を生
じる原因となる。従って、硫黄含有量は、0.005 wt.%以
下に限定すべきである。
【0021】(9)燐:燐は、Fe-Ni 系合金中に不可避
的に混入する不純物の1つである。燐含有量は、少ない
程、好ましいが、燐含有量を、工業的規模で大幅に低減
させることは、経済性の観点から困難である。しかしな
がら、リン含有量が 0.010wt.%を超えると、Fe-Ni 系合
金板の熱間加工性が著しく劣化する。従って、燐含有量
は、0.010 wt.%以下に限定すべきである。
【0022】(10)酸素:酸素は、Fe-Ni 系合金中に不
可避的に混入する不純物の1つである。酸素含有量は、
少ない程、好ましいが、酸素含有量を、工業的規模で大
幅に低減させることは、経済性の観点から困難である。
しかしながら、酸素含有量が0.002 wt.%を超えると、合
金中に酸化物系非金属介在物が多量に生成して、合金板
のエッチング穿孔性を阻害し、穿孔欠陥を生じる原因と
なる。従って、酸素含有量は、0.002 wt.%以下に限定す
べきである。
【0023】(11)アルミニウム:アルミニウムは、Fe
-Ni 系合金中に不可避的に混入する不純物の1つであ
る。アルミニウム含有量は、少ない程、好ましいが、ア
ルミニウム含有量を、工業的規模で大幅に低減させるこ
とは、経済性の観点から困難である。しかしながら、ア
ルミニウムが0.030wt.% を超えると、合金板の黒化処理
性が低下する。従って、アルミニウムの含有量は、0.03
0wt.% 以下に限定すべきである。
【0024】(12) 非金属介在物: 非金属介在物は、Fe-Ni 系合金板中にチタンを積極的に
添加した場合に不可避的に生成される不純物の1つであ
る。非金属介在物は、主として、チタン酸化物からなっ
ており、Fe-Ni 系合金板のエッチング穿孔性に大きな影
響を及ぼす成分である。合金板中の非金属介在物の含有
量が、酸素に換算して0.002 wt.%を超えると、合金板の
エッチング穿孔性を阻害して、穿孔欠陥を生じる原因と
なる。従って、非金属介在物の含有量は、酸素に換算し
て0.002 wt.%以下に限定すべきである。
【0025】次に、この発明に従って、Fe-Ni 系溶融合
金を取鍋内において精錬するに際して、20から40wt.%の
範囲内の量のCaO を含有する MgO-CaO系耐火物製の取鍋
を使用する理由を、以下に述べる。 (1) 耐火物中の CaOの含有量が 20 wt.%未満では、スラ
グの耐火物中への侵潤深さ(penetration depth) が大き
くなって、耐火物の劣化が生じる。一方、CaOの含有量
が40wt.%を超えると、耐火物融点が低くなり、溶損度合
い( wornratio)が大きくなって、高温において長時間
にわたり溶融合金をスラグ精錬することが不可能にな
る。従って、耐火物中のCaO の含有量は、20から40wt.%
の範囲内に限定すべきである。
【0026】上述したことを、図2を参照して詳述す
る。図2において、「●」は、スラグの浸潤深さ、そし
て、実線は、その浸潤深さ曲線を示し、「○」は、耐火
物の溶損度合いを、そして、破線は、その溶損度合い曲
線を示す。図2において、縦軸は、浸潤深さ、および、
溶損度合いを示す。横軸は、MgO および CaOの含有量を
示す。即ち、横軸の上部目盛りは、0 から100 wt.%のMg
O 含有量を示し、そして、その下部目盛りは、100 から
0 wt.% の CaO含有量を示す。従って、横軸は、MgO お
よび CaOの合計量が常に 100 wt.% であることを示して
いる。例えば、MgO の含有量が 100 wt.% のときは、 C
aOの含有量は 0 wt.% であり、そして、MgO の含有量が
20 wt.%のときは、CaO の含有量は 80 wt.%である。図
2から明らかなように、CaO の含有量が、20から40wt.%
の範囲内のときには、スラグの浸潤深さ、および、耐火
物の溶損度合いが共に小さくなっている。
【0027】(2) MgO-CaO 系耐火物製の取鍋は、合金酸
化物の源であるFe2O3 、SiO2およびCr2O3 等の酸化物の
含有量が少ないので、溶融合金中の酸素濃度を低く維持
して、シリコンおよびクロムのピックアップを防止する
ことができる。従って、MgO-CaO 系耐火物製の取鍋を使
用すべきである。
【0028】次に、この発明に従って、Fe-Ni 系溶融合
金を取鍋内において精錬するに際して、下記からなるCa
O-Al2O3-Ti02-MgO系スラグ: CaO およびAl2O3: 57 wt.%以上、 Ti02 : 30 wt.%以下、 但し、CaO /(CaO +Al2O3 +Ti02) の比は0.7 以上、 MgO : 25 wt.% 以下 、 SiO2 : 15 wt.% 以下、および、シリコンよ
りも酸素親和力の弱い金属の酸化物 : 3 wt以下、を使
用する理由を、以下に述べる。
【0029】(1) CaO/(CaO+Al2O3 +Ti02) の比が0.7
未満では、スラグ中のAl2O3 ,Ti02の活量が0.5 を超
える。スラグ中のAl2O3 ,Ti02の活量が0.5 を超える
と、AlおよびTiの量を一定にした場合のAlおよびTiの脱
酸力が低下する。従って、CaO/(CaO+Al2O3 +Ti02) の
比は、0.7 以上に限定すべきである。
【0030】上述したことを、図3を参照して詳述す
る。図3は、CaO-Al2O3-Ti02-MgO系スラグ中のAl2O3
Ti02およびCaO の各々の活量と CaO /(CaO+Al2O3 +Ti
02) の比との間の関係を示すグラフである。縦軸は、Al
2O3 、Ti02およびCaO の各々の活量 (aAl2O3,aTio2 a
nd aCaO ) を示し、そして、横軸は、 CaO /(CaO+ Al2
O3+Ti02) の比を示す。更に、図3は、Al2O3 ,Ti02
よびCaO の一般に知られている3種類の等活量線を示
す。図3から明らかなように、CaO / (CaO+Al2O3+Ti0
2) の比が、0.7 以上では、何れの Al2O3,Ti02の等活
量線においても、Al2O3 およびTi02の活量が 0.5以下に
抑制される。その結果、CaO /(CaO +Al2O3+Ti02) の
比が、0.7 以上のときには、アルミニウムおよびチタン
の脱酸力が強いスラグを得ることができる。
【0031】(2) スラグ中のMgO の含有量が、 25 wt.
%を超えると、スラグの融点が上昇して、スラグのFe- N
i系溶融合金との反応が低下する。従って、 MgOの含有
量は、25 wt.%以下に限定すべきである。
【0032】(3) スラグ中のSiO2の含有量が15 wt.%
を超えると、スラグ中のSiO2の活量(aSiO2) が上昇し、
そして、Fe-Ni 系溶融合金中の酸素量が、SiO2によって
増加する。その結果、Fe-Ni 系合金冷延板中に存在する
酸素含有量が、0.0020wt.%を超える。従って、SiO2の含
有量は、 15 wt.%以下に限定すべきである。
【0033】(4) スラグ中における、 Si よりも酸素
親和力の弱い金属の酸化物の合計量が3 wt.%を超える
と、Fe-Ni 系合金冷延板中に存在する酸素含有量が、0.
0020wt.%を超える。従って、シリコンよりも酸素親和力
の弱い金属の酸化物の合計量は、3 wt.%以下に、そし
て、より望ましくは、1.5 wt.%以下に限定すべきであ
る。
【0034】更に、上述したスラグを使用してFe-Ni 系
溶融合金を脱酸することによって、清浄性に優れたFe-N
i 系合金冷延板を得ることができる理由を、図4を参照
して詳述する。図4は、1,550 ℃の温度の、36wt.%のニ
ッケルを含有するFe-Ni 系溶融合金において、アルミニ
ウム、シリコンまたはチタンによって脱酸が平衡状態に
達したときの、脱酸に使用したアルミニウム、シリコン
またはチタンの、溶融合金中における溶存量と、そし
て、溶融合金中における酸素の溶存量との間の関係を示
すグラフである。
【0035】図4において、縦軸は、溶融合金中におけ
る酸素の溶存量を示し、そして、横軸は、溶融合金中に
おけるアルミニウム、シリコンまたはチタンの溶存量を
示す。更に、図4において、斜め実線は、Al2O3 の等活
量線を示し、そして、斜め破線は、SiO2の等活量線を示
す。更に、図4において、「C」は、本発明の上述した
スラグを使用して溶融合金を脱酸した本発明の溶融合金
における、シリコン、アルミニウムまたはチタンの溶存
量と酸素溶存量とを示し、そして、「A(A1,A2 )」
および「B」の各々は、本発明のスラグを使用しない、
この発明の範囲外の方法(以下、「比較用脱酸法」とい
う)No. 1または2によって脱酸した溶融合金における
シリコン、アルミニウムまたはチタンの溶存量と酸素溶
存量とを示す。
【0036】図4から明らかなように、本発明の溶融合
金においては、酸素溶存量が少ない。即ち、充分な量の
アルミニウム、チタンおよび上述したスラグの存在の下
に、溶融合金を強く攪拌することによって、平衡状態に
あるそれぞれの活量aAl2O3 、aTio2および aSiO2が低
下すると共に、平衡状態にある酸素濃度は、より低く安
定する。かくして、溶融合金中の酸化物から成る非金属
介在物は、スラグに吸着され除去される。その結果、溶
融合金を清浄化し、そして、粒径が極めて微細な、微量
の非金属介在物を、溶融合金中に分布させることができ
る。
【0037】Fe-Ni 系合金インゴットの分塊圧延におい
て、圧延率を、70% 以上とし、そして、圧延温度を、1,
150 から1,250 ℃の範囲内とすることが望ましい。その
理由は、次の通りである。 (1) 圧延率が70% 以上のときには、分塊圧延時における
合金の組織および合金中の非金属介在物を破砕して、冷
延板中の非金属介在物の粒径を極微細にする効果があ
る。従って、圧延率を、70% 以上に限定すべきである。 (2) 圧延温度が1,150 ℃未満のときには、分塊圧延が困
難であり、一方、圧延温度が1,250 ℃を超えるときに
は、マトリックス金属の変形抵抗が小さくなって、非金
属介在物の破砕が困難になる。従って、圧延温度を、1,
150 から1,250 ℃の範囲内に限定すべきである。
【0038】
【実施例】次に、この発明の清浄性およびエッチング穿
孔性に優れた Fe-Ni系合金冷延板およびその製造方法
を、この発明の範囲外の比較例と対比しながら、実施例
により、更に詳細に説明する。表1に示す原料を使用し
て、次の製造工程によって、Fe-Ni 系合金冷延板を調製
した。
【0039】
【表1】
【0040】 1.転炉を使用する精錬 2.下記を含むVAD(真空−電弧−脱ガスの省略)設
備を使用する精錬 脱燐精錬 ニッケル溶解 3.VOD(真空−酸素−脱炭の省略)設備を使用する
精錬 送酸脱炭 真空脱炭 スラグ脱酸 4.造塊 5.分塊圧延 6.熱間圧延 7.冷間圧延
【0041】上述したVADおよびVOD設備を使用す
る精錬の工程を図1に示す。即ち、攪拌用ガスを吹き込
むための底部プラグを備えた250t上吹き転炉内におい
て、脱燐溶銑を精錬して、未脱酸のままの溶鋼を得、次
いで、これを250t取鍋内に移した。次いで、このように
して得た250tの溶鋼のうち、20t を250t取鍋から50t 取
鍋内に収容した。前記溶鋼の成分組成は下記の通りであ
った。
【0042】
【0043】上述した20tの溶鋼を、57.2 wt.% のMgO
、38.4 wt.% のCaO 、1.6 wt.%のSiO2および0.2 wt.%
のAl2O3 からなるマグネシア−ドロマイト煉瓦を使用し
た別の20t取鍋に、ロ−タリ−ノズルで注湯した。次い
で、前記取鍋をVAD(真空−電弧−脱ガス)設備内に
配置し、そして、ここで前記溶鋼を脱燐した。このよう
に、未脱酸のままの溶鋼を使用することによって、溶鋼
中に窒素が吸収されることを防止した。次いで、除滓し
た後、減圧下において、3相電極加熱装置によって、取
鍋内の溶鋼を 1,600℃以上の温度に加熱しながら、下記
条件下で、純ニッケル塊およびニッケル合金塊を、取鍋
内に装入して、これを溶解した。
【0044】 真空度 :200 〜600 Torr、 底吹きアルゴンガスの流量:0.5 〜1.5 Nl/min.t、 溶滓剤の投入時期 :VAD 精錬開始直前、 溶滓剤の組成 :焼石灰 15 Kg/T、 蛍石
4 Kg/T。
【0045】ニッケルの溶解後、今や約30t に増量し
た、取鍋内のこのようにして得られたFe-Ni 系溶融合金
を、下記条件下で、1,700 ℃以上、より好ましくは、1,
750 ℃以上の温度に加熱した。 真空度 : 200 〜400 Torr、 底吹きアルゴンガスの流量: 0.5 〜1.5 Nl/min.t、 造滓剤投入 : なし。
【0046】この段階における、Fe-Ni 系溶融合金中の
炭素およびニッケル含有量を調べた結果は、次の通りで
あった。
【0047】ニッケル溶解後の上述した加熱によって、
次のVOD(真空−酸素−脱炭)設備を使用した精錬完
了後の加熱は不要であった。次いで、前記取鍋を、VO
D設備内に移して、ここでFe-Ni 系溶融合金を脱炭し
た。溶融合金の脱炭は、上吹きランスによって酸素を吹
き込みながら行なう脱炭(以下、「上吹きランスによる
送酸脱炭」という)、および、減圧下における真空脱炭
からなっていた。
【0048】先ず、上吹きランスによる送酸脱炭を、下
記条件下で行った。 真空度 :100 Torr以下、 底吹きアルゴンの流量 :1.0 〜2.0 Nl/min.t、 上吹き酸素ガスの流量 :0.8 〜1.2 Nm3/min.t
、 送酸量 : 2〜5 Nm3/t 、 ランス−溶融合金表面間の距離:700 〜 900 mm 、 溶滓剤投入 :なし。
【0049】このようにして、酸素を富化したFe-Ni 系
溶融合金を、底吹きアルゴンガスによって攪拌しなが
ら、炭素−酸素間反応を促進させることによって、その
炭素含有量が 0.005wt.%以下に減少するまで、溶融合金
を減圧下で脱炭した。なお、上述した上吹きランスによ
る送酸脱炭の末期において、取鍋を再度VOD設備に移
し、そして、溶融合金中にニッケルを添加して、溶融合
金中のニッケル成分を微調整し、そして、溶融合金の温
度を、約1,750 ℃に調整した。この段階における、溶融
合金中のニッケル、炭素および窒素の含有量は、次の通
りであった。
【0050】
【0051】次いで、減圧処理下における真空脱炭を、
下記条件下で行った。 真空度 :1 Torr以下、 底吹きアルゴンガスの流量 :1.5 〜2.5 Nl/min.
t、 溶滓剤投入 :なし、 真空脱炭開始時の溶融合金の温度:1,745 ℃ その結果、その炭素含有量が、0.0009wt.%以下に減少す
るまで、Fe-Ni 系溶融合金を脱炭することができた。
【0052】次いで、引き続きVOD設備内において、
Fe-Ni 系溶融合金中に、チタン合金、アルミニウムなど
の脱酸剤および溶滓剤を添加し、そして、底吹きアルゴ
ンガスによって溶融合金を強く攪拌しながら、下記条件
下において、溶融合金とスラグとの間の反応によって、
溶融合金を脱酸した(以下、「本発明の脱酸法」とい
う)。
【0053】 真空度 :1Torr以下、 底吹きアルゴンの流量:0.5 〜 2.5 Nl/min.t、 溶滓剤および脱酸剤の投入(2回) 第1回投入 溶滓剤の組成: 焼石灰 :30 Kg/t 、 蛍石 : 5 Kg/t 、 脱酸剤の組成: アルミニウム :10 Kg/t 、 フェロシリコン : 2 Kg/t 、 フェロチタン : 8 Kg/t 、 投入時期: 脱酸精錬開始直前、 第2回投入 添加物の組成:溶融合金成分の微調整剤、 投入時期 : 脱酸精錬中期。
【0054】溶融合金をスラグによって脱酸する前の、
Fe- Ni系溶融合金中のチタン、シリコンおよびSol.Alの
含有量は、次の通りであった。
【0055】上述した、溶融合金と反応させたCaO-Al2O
3-Ti02-MgO系スラグは、下記からなっていた。 (a) 成分組成 (b) CaO /(CaO+Al2O3 +Ti02) の比 : 0.58 (c) Si よりも酸素親和力の弱い金属の酸化物の合計含
有量( 即ち、T.Fe+MnO+Cr2O3):0.9 wt.%
【0056】Fe-Ni 系溶融合金のVOD 設備内における上
述した脱酸精錬の結果は、下記の通りであった。 溶融合金中のSi含有量 :0.1 〜0.3 wt.
%、 SiO2の活量(aSiO2)の推定値 :0.001 〜0.005 、 溶融合金中のTiの含有量 :0.1 〜0.6 w
t.%、 TiO2の活量(a TiO2)の推定値 :10-2 〜10-8、 平衡酸素の推定濃度 :1 〜2ppm 、
および、 溶融合金中の T. 酸素の実績含有量:7〜14 ppm。
【0057】更に、Fe-Ni 系溶融合金とスラグとの間の
反応による、溶融合金の上述した脱酸は、高い真空度の
下に、溶融合金を強く攪拌しながら行われたので、溶融
合金中への吸窒を防止することができた。なお、スラグ
によるFe-Ni 系溶融合金の上述した脱酸は、炭素ピック
アップを防止するために、ア−ク加熱を適用しないで行
われた。
【0058】このときのFe-Ni 系溶融合金の成分組成は
次の通りであった。
【0059】次いで、VAD設備およびVOD設備にお
ける処理の終了後、上広型の7tまたは5t鋳型を使用
して、下注ぎ造塊法によって、下記条件で、Fe-Ni 系溶
融合金をインゴットに鋳造した。 (1) 注入流の温度:1,490 〜 1,525℃、 (2) 鋳込み速度 : 150 〜 190mm/ 分、 (3) シ−ルの状況:取鍋ノズルと注入管との間を覆いで
囲み、そして、アルゴンガスを、130Nm3/Hr の割合で供
給した。
【0060】注入流を、アルゴンガスによって、大気か
ら完全に密閉したので、鋳込みを開始してから2分経過
以降は、覆い内の酸素濃度は、0.1 % 以下であった。そ
の結果、空気の巻き込みによる、溶融合金の再酸化また
は溶融合金中への吸窒を防止することができた。
【0061】注入流から採取したFe-Ni 系溶融合金の成
分組成は次の通りであった。
【0062】このようにして調製した下注インゴットの
湯道部分の凝固塊中の非金属介在物を、SEM(走査電
子顕微鏡)分析した結果、非金属介在物は、チタン酸化
物からなっていた。そして、湯道部分の凝固塊中のSol.
Al、窒素および酸素の含有量は次の通りであった。
【0063】次いで、このように調製したインゴット
を、70% 以上の圧下率、および、1,150 から1,250 ℃の
範囲内の温度において、分塊圧延し、次いで、スラブの
表面手入れ、熱間圧延、脱スケ−ル、冷間圧延、焼鈍、
冷間圧延および歪取り熱処理からなる一連の工程によっ
て、表3に示す、0.15 mm の厚さを有する、本発明のFe
-Ni 系合金冷延板の供試体(以下、「本発明の供試体と
いう」)No. 1〜3を調製した。
【0064】
【表3】
【0065】本発明の供試体No. 1の成分組成は、次の
通りであった:
【0066】更に、本発明の供試体No. 1のトップ端お
よびボトム端におけるマンガン、シリコン、硫黄、窒素
および酸素の分布状態を調べた結果は次の通りであっ
た。 上記から、本発明供試体No. 1中のマンガン、シリコ
ン、硫黄、窒素および酸素は、実用レベルでは、極めて
均一に分布していることがわかる。
【0067】次いで、比較のために、脱酸精錬を減圧下
において、スラグを使用することなく、シリコンおよび
マンガンを使用して行なった(以下、「比較用脱酸法 N
o.1」という)以外は、上述した本発明におけると同一
の工程によって、表3に併せて示す、0.15 mm の厚さを
有する、本発明の範囲外のFe-Ni 系合金冷延板の供試体
(以下、「比較用供試体」という)No. 1および2を調
製した。
【0068】比較用脱酸法 No.1 によると、脱酸精錬に
おける酸化物からなる非金属介在物は、主として、Al2O
3 、MnOおよび SiO2 からなっており、そして、その組
成は、図1に示す、スペッサ−タイトの領域内にあり、
そして、その融点が低く、且つ、熱間圧延において展伸
性が高かった。
【0069】上述した比較用脱酸法 No.1 における脱酸
精錬の結果は、下記の通りであった。 溶融合金中のSi含有量 :0.1 〜0.3 wt.%、 SiO2の活量(aSiO2)の推定値 :0.1 〜0.3 、 溶融合金中のSol.Alの含有量 :0.0004〜0.0020 w
t.% 、 Al2O3 の活量(a Al2O3 )の推定値:0.10〜0.20、 平衡酸素の推定濃度 :10〜15 ppm、およ
び 溶融合金中の T. 酸素の実績含有量:25〜35 ppm。
【0070】更に、比較のために、脱酸精錬を減圧下に
おいて、スラグを使用することなく、アルミニウムを使
用して行なった(以下、「比較用脱酸法 No.2 」とい
う)以外は、上述した本発明におけると同一の工程によ
って、表3に示す、0.15 mm の厚さを有する、本発明の
範囲外のFe-Ni 系合金冷延板の供試体(以下、「比較用
供試体」という)No. 3および4を調製した。比較用脱
酸法 No.2 によると、脱酸精錬における酸化物からなる
非金属介在物は、主として、Al2O3 からなっており、そ
して、融点が高く、且つ、熱間圧延において展伸性が低
かった。
【0071】上述した比較用脱酸法No.2における脱酸精
錬の結果は、下記の通りであった。 溶融合金中のSi含有量 :0.1 〜0.3 wt.%、 SiO2の活量(aSiO2)の推定値 :0.1 〜0.2 、 溶融合金中のSol.Alの含有量 :0.005 〜0.030 w
t.%、 Al2O3 の活量(a Al2O3 )の推定値:1、 平衡酸素の推定濃度 :3 ppm 、および 溶融合金中の T. 酸素の実績含有量:15〜20 ppm。
【0072】表3から明らかなように、供試体中におけ
るT.O 含有量は、本発明供試体No.1〜3において最も
少なく、次いで、比較用供試体No. 3および4がこれに
続き、そして、比較用供試体No. 1および2において、
多かった。即ち、図4から明らかなように、本発明の脱
酸法においては、比較用脱酸法No. 1および2に比し
て、平衡酸素の濃度が低下し、そして、スラグによる懸
濁介在物の吸着除去による効果によって、T.酸素含有量
が低下している。
【0073】次いで、このように調製した本発明供試体
No. 1〜3、並びに、比較用供試体No. 1〜4の各々に
おける、長手方向の板厚断面内の60mm2 の区域内を、80
0 倍の顕微鏡によって観察して、その区域内に存在する
非金属介在物の幅および長さを測定した。その際、非金
属介在物を、形状および大きさによって下記の通り分類
し、そして、1mm2 当たりに存在する非金属介在物の個
数を測定した。 (a) 長さ/幅の比が3以下の非金属介在物(以下、「球
状非金属介在物」という)、および、(b) 長さ/幅の比
が3を超える非金属介在物(以下「線状非金属介在物」
という)。その結果を、表4に示す。
【0074】
【表4】
【0075】表4に示すように、本発明供試体 No.1〜
3における非金属介在物の数は、次の通りであった。即
ち、本発明供試体No. 1においては、幅3μm 未満の球
状非金属介在物が6個のみであり、本発明供試体No. 2
においては、幅8μm 未満の球状非金属介在物が8個
と、幅 3μm 〜 6μm 未満の球状非金属介在物が1個の
みであり、そして、本発明供試体No. 3においては、幅
3μm 未満の球状非金属介在物が7個のみであった。こ
のように、本発明供試体においては、粒径が極めて小さ
い球状非金属介在物が少量存在するのみであった。
【0076】一方、比較用供試体 No.1における非金属
介在物の数は、次の通りであった。 球状非金属介在物の数: 幅 3μm 未満 : 8個、 幅 3μm 〜 6μm 未満 : 1個、 線状非金属介在物の数: 幅 3μm 未満 :20個、 幅 3μm 以上 : 8個。 上記のように、比較用供試体 No.1においては、線状非
金属介在物が多数存在しており、従って、非金属介在物
の粒径が大きいことがわかった。上述したことは、比較
用供試体 No.2に関しても、同様であった。
【0077】更に、比較用供試体 No.3における非金属
介在物の数は、次の通りであった。球状非金属介在物の
数: 幅 3μm 未満 :10個、 幅 3μm 〜 6μm 未満 : 4個、 幅 6μm 〜14μm 未満 : 1個、 線状非金属介在物の数: 幅 3μm 未満 1個、 幅 3μm 以上 なし。
【0078】即ち、比較用供試体 No.5においては、本
発明供試体No. 1〜3に比して、球状非金属介在物の数
が多かった。上述したことは、比較用供試体 No.6に関
しても、同様であった。
【0079】上述したように、比較用供試体No. 1〜4
の何れも、非金属介在物の数が多く、および/または、
非金属介在物の粒径が大きかった。その結果、Fe-Ni 系
合金冷延板のエッチング穿孔性を阻害した。これに対し
て、本発明供試体No. 1〜3においては、非金属介在物
の数が少なく、そして、その粒径が小さかった。その結
果、Fe- Ni系合金冷延板のエッチング穿孔性に優れてい
た。
【0080】次に、上述した本発明供試体No. 1〜3、
および、比較用供試体No. 1〜4に対して、実際に、直
径 135ー 280μm のピッチエッチング穿孔を実施して、
その結果を調べた。エッチング穿孔を実施したそれぞれ
の供試体を、顕微鏡によって観察したところ、エッチン
グ穿孔欠陥は、図5に示す、(A) 、(B) 、(C) および
(D) の4つの型に分類することができた。その結果を、
表4に、併せて示す。
【0081】本発明供試体 No.1および3における、エ
ッチング穿孔不良発生率は、皆無であった。上述したよ
うに、非金属介在物の数が少なかったこと、および、そ
の粒径が小さかったことに起因して、本発明供試体 No.
1および3は、エッチング穿孔性に優れていることが明
らかであった。本発明供試体 No.2においても、(C)型
および(D) 型の欠陥が発生したが、その発生率は、極め
て少なく、エッチング穿孔性に優れていることが明らか
であった。
【0082】一方、比較用供試体 No.1においては、エ
ッチング穿孔不良発生状況は、次の通りであった。 (A) 型の不良発生率: 0.04%、 (B) 型の不良発生率: 0.03%、 (C) 型の不良発生率: 2.35%、および (D) 型の不良発生率: 2.54%、
【0083】上述したところから明らかなように、比較
用供試体 No.1においては、エッチング穿孔不良発生率
が高かった。即ち、上述したように、線状非金属介在物
の数が多いことに起因して、比較用供試体 No.1は、エ
ッチング穿孔性に劣っていることが明らかであった。上
述したことは、比較用供試体 No.2に関しても、同様で
あった。
【0084】更に、比較用供試体 No.3においては、エ
ッチング穿孔不良発生状況は、次の通りであった。 (A) 型の不良発生率: 0.75%、 (B) 型の不良発生率: 0.04%、 (C) 型の不良発生率: 0.50%、および (D) 型の不良発生率: 0.01%。
【0085】上述したところから明らかなように、比較
用供試体 No.3においては、本発明供試体No. 1〜3に
比して、エッチング穿孔不良発生率が高かった。即ち、
上述したように、球状非金属介在物の数が多いことに起
因して、比較用供試体 No.3は、エッチング穿孔性に劣
っていることが明らかであった。上述したことは、比較
用供試体 No.4に関しても、同様であった。
【0086】
【発明の効果】以上詳述したように、この発明によれ
ば、高鮮明TVのシャドウマスクとして使用するができ
る、エッチング穿孔時に欠陥が発生せず、そして、熱膨
張率の低い、清浄性およびエッチング穿孔性に優れたFe
-Ni 系合金冷延板およびその製造方法を提供することが
でき、かくして、工業上有用な効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明によるFe-Ni 系溶融合金の精錬のため
のプロセスの1例を示す工程系統図である。
【図2】取鍋で構成するMgO-CaO 系耐火物中の、CaO 含
有量と、前記耐火物の溶損度合と前記耐火物中へのスラ
グの浸潤深さとの間の関係を示すグラフである。
【図3】CaO-Al2O3-MgO 系スラグ中のAl2O3 およびCaO
の各々の活量と、CaO / (CaO+Al2O3)の比との間の関係
を示すグラフである。
【図4】1,550 ℃の温度の、36wt.%のニッケルを含有す
るFe-Ni 系溶融合金中における「Si−脱酸平衡」状態に
ある溶存シリコンレベル、「Al−脱酸平衡」状態にある
溶存アルミニウムレベル、または、「Tiー脱酸平衡」状
態にある溶存チタンレベルと、そして、平衡溶存酸素レ
ベルとの間の関係を示すグラフである。
【図5A〜図5D】Fe-Ni 系合金板のエッチング穿孔時
に発生する欠陥の状態を示す概略説明図である。
【図6】従来の Fe-Ni系合金冷延板中に存在する非金属
介在物の組成の領域を示すAl2 O3-MnO-SiO2 三元系状態
図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 木下 正行 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 渡辺 敦 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 沖本 仲一 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (56)参考文献 特開 昭64−25944(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ニッケル: 30〜 45wt.% 、 マンガン: 0.1〜 1.0 wt.% 、および、 残り、鉄および不純物、 但し、不純物としてのチタン含有量は、0.6 wt.%以下、
    不可避的不純物としてのシリコン、クロム、炭素、窒
    素、硫黄、燐、酸素、アルミニウムおよび非金属介在物
    のそれぞれの含有量は、 シリコンについては、0.4 wt.%以下、 クロムについては、0.1 wt.%以下、 炭素については、0.005 wt.%以下、 窒素については、0.005 wt.%以下、 硫黄については、0.005 wt.%以下、 燐については、0.010 wt.%以下、 酸素については、0.002 wt.%以下、 アルミニウムについては、0.030 wt.%以下、および、 非金属介在物については、酸素に換算して、0.002 wt.%
    以下 からなり、前記非金属介在物は、主としてチタン酸化物
    からなっていることを特徴とする、清浄性およびエッチ
    ング穿孔性に優れたFe-Ni 系合金冷延板。
  2. 【請求項2】 30から45wt.%の範囲内の量のニッケルを
    含有する、脱燐および脱炭したFe-Ni 系溶融合金を調製
    し、20から40wt.%の範囲内の量のCaO を含有するMgO-Ca
    O 系耐火物製の取鍋内において、このように調製した前
    記Fe-Ni 系溶融合金にアルミニウムおよびチタンを添加
    し、アルミニウムおよびチタンを添加した前記Fe-Ni 系
    溶融合金を、前記取鍋内において、下記からなる CaO-Al2O3-Ti02-MgO 系スラグ: CaO およびAl2O3: 57 wt.% 以上、 Ti02 : 30 wt.% 以下、 但し、CaO/(CaO+Al2O3 +Ti02) の比は0.7 以上、 MgO : 25 wt.% 以下、 SiO2 : 15 wt.% 以下、 および、シリコンよりも酸素親和力の弱い金属の酸化物
    の合計量 : 3 wt.% 以下、と反応させて、前記Fe- Ni
    系溶融合金を脱酸し、前記脱酸したFe-Ni 系溶融合金
    を、インゴットに鋳造し、そして、前記インゴットを分
    塊圧延し、熱間圧延し、そして、冷間圧延して、その粒
    径が6μm 以下で、且つ、酸素に換算して0.002 wt.%以
    下の合計量の非金属介在物を含有するFe-Ni 系合金冷延
    板を製造することを特徴とする、清浄性およびエッチン
    グ穿孔性に優れたFe-Ni 系合金冷延板の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記Fe-Ni 系溶融合金の前記調製は、転
    炉内において溶鋼を精錬し、そして、前記溶鋼を、600
    トル以下に減圧された前記取鍋内において、脱燐し、溶
    融ニッケルを添加し、そして、脱炭することからなって
    いる、請求項2記載の方法。
  4. 【請求項4】 前記Fe-Ni 系溶融合金の前記脱酸は、1
    トル以下に減圧された前記取鍋内において行う、請求項
    2記載の方法。
  5. 【請求項5】 前記インゴットの前記分塊圧延は、70%
    以上の圧下率および1,150 から1,250 ℃の範囲内の温度
    において行われる、請求項2から4の何れか1つに記載
    の方法。
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