JP3349872B2 - 油冷式スクリュ二段圧縮機 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】 本発明は、油冷式スクリュ
二段圧縮機に関する。

【０００２】

【従来の技術】 従来公知の、ギヤケースの一側面の上
下方向に低圧段圧縮機と、前記低圧段圧縮機回転軸と
略、並行な回転軸を備えた高圧段圧縮機を配置し、共通
する増速ギヤ手段により、それぞれを駆動する形式の油
冷式スクリュ二段圧縮機は、低圧段圧縮機の吐出口と高
圧段圧縮機の吸入口とを端板（インレットケース）内に
設けたチャンネルを介して相互に連通し、かつ、低圧段
圧縮機から吐出する圧縮流体が前記ギヤケース内を流通
するように構成している（例えば、昭和４８年特許出願
公開第２１８０６号公報、昭和５２年実用新案出願公告
第８０８２号公報、昭和５２実用新案出願公告第３３６
１０号公報、昭和５４年特許出願公告第２８６０３号公
報等参照）。

【０００３】 また、ギヤケースに内装した増速ギヤ
（ドライブ及びドリブンギヤ）手段に向かって、レシー
バタンクから圧送される潤滑油が噴射ノズルを介して噴
射・供給され、ギヤケースの下底部に溜った潤滑油は、
低圧段圧縮機から吐出される圧縮空気とオイルミストと
共に高圧段圧縮機の吸入口から吸い込み・回収されるよ
う構成されている。この種形式の油冷式スクリュ二段圧
縮機は、それ以前の形式、たとえば、くし形配置のスク
リュ二段圧縮機と比較して、部品点数を減らして装置を
小型化するとか、騒音の低下、組立・調整を容易にする
などの特徴を備えている。

【０００４】 しかしながら、前述の並列配置形油冷式
スクリュ二段圧縮機には、 （ａ）インレットケースとギヤケースとを兼用させ、部
品点数を減らし、加工または組立工数の低減や圧縮機本
体の小型化を図る。 （ｂ）ギヤケースの下底部に溜る潤滑油を高圧段圧縮機
により回収するようにし、増速ギヤ手段が潤滑油面を撹
拌しないようにすれば、エネルギーロスが減少し、ま
た、潤滑油回収管を不要にできれば、ギヤケースの形状
をよりコンパクトにまとめることが可能。

【０００５】 （ｃ）高圧段圧縮機の吐出側軸受室の圧
力を低下させて、回転軸にかかる吸入側へのスラスト荷
重を低下させ、もって、小型軸受の使用を可能にする。 （ｄ）低圧段圧縮機の吐出側軸受室を中間段通路に接続
することにより、全負荷時における低圧段圧縮機の回転
軸の逆スラスト荷重の発生を抑える。等々の構成を開発
することにより、圧縮機全体の構造をコンパクトにまと
め、コストダウンを可能にする余地がある。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】そこで本発明は、油冷
式スクリュ二段圧縮機について指摘した上記の問題点を
すべて解消し、コンパクトで経済的な、新規構造の油冷
式スクリュ二段圧縮機を開発・提供することを目的とす
る。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達
成するために、以下に述べるとおりの各構成要件を具備
する。 （１） シリンダ内に、おす・めすスクリュロータを収
納・噛み合わせ、各スクリュロータの回転軸の両側を軸
受で軸支して形成した低圧段及び高圧段圧縮機を、ギヤ
ケースの一側面の略、上下方向に、各圧縮機の回転軸が
平行になるように並列・配置し、前記ギヤケースに内装
した増速ギヤ手段により、各圧縮機を駆動し、前記低圧
段圧縮機の吐出口及び高圧段圧縮機の吸入口を前記ギヤ
ケース内空間に連通してなる油冷式スクリュ二段圧縮機
において、前記低圧段圧縮機のシリンダ内と、ギヤケー
ス内空間及び前記シリンダを挟んでギヤケースと反対側
に配置する軸受室との間の各一対の軸部に、それぞれ軸
封装置を設け、前記シリンダを挟んでギヤケースと反対
側に配置する軸受室の少なくとも一方と、前記ギヤケー
ス内空間との間を連通したことを特徴とする油冷式スク
リュ二段圧縮機。

【０００８】（２） シリンダ内に、おす・めすスクリ
ュロータを収納・噛み合わせ、各スクリュロータの回転
軸を両側を軸受で軸支して形成した低圧段及び高圧段圧
縮機を、ギヤケースの一側面の略、上下方向に、各圧縮
機の回転軸が平行になるように並列・配置し、前記ギヤ
ケースに内装した増速ギヤ手段により、各圧縮機を駆動
し、前記低圧段圧縮機の吐出口及び高圧段圧縮機の吸入
口を前記ギヤケース内空間に連通してなる油冷式スクリ
ュ二段圧縮機において、前記低圧段圧縮機のおす・めす
スクリュロータのいずれか一方のギヤケース側回転軸端
に被駆動ギヤを固定し、前記一方のスクリュロータの、
ギヤケース側及び前記シリンダを挟んでギヤケースと反
対側の軸部に、それぞれ軸封装置を設けると共に、前記
シリンダを挟んでギヤケースと反対側に配置する軸受室
と、前記ギヤケース内空間とを連通し、他方のスクリュ
ロータのギヤケース側に配置する軸受室を前記ギヤケー
ス内空間に対し隔壁によって遮断する一方、スクリュロ
ータの前記シリンダを挟んでギヤケースと反対側の軸部
に軸封装置を設けると共に、前記シリンダを挟んでギヤ
ケースと反対側に配置する軸受室と、前記低圧段圧縮機
における吸入閉じ込み後１ピッチの作用空間とを連通し
たことを特徴とする油冷式スクリュ二段圧縮機。

【０００９】（３） シリンダ内に、おす・めすスクリ
ュロータを収納・噛み合わせ、各スクリュロータの回転
軸を両側を軸受で軸支して形成した低圧段及び高圧段圧
縮機を、ギヤケースの一側面の略、上下方向に、各圧縮
機の回転軸が平行になるように並列・配置し、前記ギヤ
ケースに内装した増速ギヤ手段により、各圧縮機を駆動
し、前記低圧段圧縮機の吐出口及び高圧段圧縮機の吸入
口を前記ギヤケース内空間に連通してなる油冷式スクリ
ュ二段圧縮機において、前記高圧段圧縮機のおす・めす
スクリュロータのいずれか一方のギヤケース側回転軸端
に被駆動ギヤを固定し、前記被駆動ギヤの外径を、前記
一方のスクリュロータの外径よりも小径にして、被駆動
ギヤの外径下側よりも高圧段圧縮機の吸入口下側を低く
したことを特徴とする油冷式スクリュ二段圧縮機。

【００１０】（４） シリンダ内に、おす・めすスクリ
ュロータを収納・噛み合わせ、各スクリュロータの回転
軸を両側を軸受で軸支して形成した低圧段及び高圧段圧
縮機を、ギヤケースの一側面の略、上下方向に、各圧縮
機の回転軸が平行になるように並列・配置し、前記ギヤ
ケースに内装した増速ギヤ手段により、各圧縮機を駆動
し、前記低圧段圧縮機の吐出口及び高圧段圧縮機の吸入
口を前記ギヤケース内空間に連通してなる油冷式スクリ
ュ二段圧縮機において、前記高圧段圧縮機のスクリュロ
ータの吐出口側に配置する軸受室と、前記低圧段圧縮機
の吸入閉じ込み後１ピッチの作用空間とを連通したこと
を特徴とする油冷式スクリュ二段圧縮機。

【００１１】（５） シリンダ内に、おす・めすスクリ
ュロータを収納・噛み合わせ、各スクリュロータの回転
軸を両側を軸受で軸支して形成した低圧段及び高圧段圧
縮機を、ギヤケースの一側面の略、上下方向に、各圧縮
機の回転軸が平行になるように並列・配置し、前記ギヤ
ケースに内装した増速ギヤ手段により、各圧縮機を駆動
し、前記低圧段圧縮機の吐出口及び高圧段圧縮機の吸入
口を前記ギヤケース内空間に連通してなる油冷式スクリ
ュ二段圧縮機において、前記ギヤケース内空間とレリー
フバルブの吸気側とを連通すると共に、前記レリーフバ
ルブの排気側を高圧段圧縮機の吐出口からレシーバタン
クまでの間に連通したことを特徴とする油冷式スクリュ
二段圧縮機。

【００１２】（６） 前記低圧段圧縮機の吐出口を、シ
リンダを挟んでギヤケースと反対側に設け、これを中間
段通路を介して前記ギヤケース内空間と連通し、増速ギ
ヤ手段を構成する各歯車をそれぞれ、はすば歯車とした
ことを特徴とする請求項１または２記載の油冷式スクリ
ュ二段圧縮機。 （７） 前記高圧段圧縮機のシリンダを挟んでギヤケー
スと反対側に配置するおす・めすスクリュロータの各軸
受室の下部を、それぞれ通路を介して連通し、前記各軸
受室の内の、いずれか一方の軸受室の下部と、低圧段圧
縮機の吸入閉じ込み後１ピッチの作用空間とを連通した
ことを特徴とする請求項４記載の油冷式スクリュ二段圧
縮機。 （８） 前記低圧段圧縮機のシリンダを挟んでギヤケー
スと反対側に配置するおす・めすスクリュロータの各軸
受室の下方に中間段通路と連通する開口を設けたことを
特徴とする請求項６記載の油冷式スクリュ二段圧縮機。

【００１３】

【発明の実施の形態】以下に、本発明油冷式スクリュ二
段圧縮機の一実施形態について、図面に沿って説明する
が、本実施形態を構成する各要件のうちには、本出願当
時の当業界における通常の技術レベルの範囲内で、当業
者により各種の変形が可能なものを含むから、格別の理
由を示すことなく、本実施形態が開示する特定構成のみ
に基づいて、本発明の要旨を限定して解することは許さ
れない。

【００１４】 図は、本発明油冷式スクリュ二段圧縮機
の一実施形態を示すもので、図１は、当該スクリュ二段
圧縮機の概略側断面で、図２におけるＡ−Ａ線に沿う断
面図、図２は、図１においてＢ−Ｂ線矢視の一部を切り
欠いて示す正面図、図３は、図１におけるＣ−Ｃ線断面
矢視図で、図４及び５は、それぞれ図２におけるＤ−Ｄ
線、Ｅ−Ｅ線に沿う断面図を示す。

【００１５】 図中、一つのギヤケース１の側面上方側
に低圧段圧縮機のシリンダ２を、同側面の下側方に高圧
段圧縮機のシリンダ３を、シリンダ軸心が相互に並列す
るように取付けると共に、各シリンダ２，３内に、それ
ぞれ一対の低圧段及び高圧段圧縮機の、おす・めすスク
リュロータ（以下、ロータという）４，４’及び５，
５’を内装・並設して、各ロータの回転軸４１，４１’
と５１，５１’を各端板部材６，７と前記ギヤケース１
側に設けた軸受４２，４２，４３，４３’及び５２，５
２’，５３，５３’によって、それぞれ軸支して、各一
対のロータ４，４’及び５，５’を各々独立に軸支し、
各一対のロータ４，４’及び５，５’に形成したスクリ
ュ歯形を互いに噛み合わせると共に、いずれか一方側の
ロータ４，５の回転軸４１，５１のギヤケース１側に延
長した端部に、それぞれ被駆動ギヤ４４，５４を取付
け、それらをギヤケース１に配設した軸受６２，６３に
軸支される大径駆動ギヤ８に噛み合わせ、それぞれ増速
ギヤ手段を構成する。

【００１６】 各一対のロータ間の回転伝導は、噛み合
わせたスクリュ歯形面相互の滑動により行なわれる。ロ
ータのスクリュ歯形の噛み合わせ面とシリンダ内壁、端
板により区画される作用空間はロータの回転に従って、
その容積を狭め、作用空間に吸入された空気を（ほぼ、
断熱）圧縮し終端において圧縮した空気を吐出する。各
端板部材６，７と前記ギヤケース１側に設けた軸受４
２，４２’，４３及び５２，５２’と、一対のロータ
４，４’及び５，５’の端面との間の軸部には、軸封装
置４７，４７’，４８及び５７，５７’が設けられ、軸
受４２，４２’及び５２，５２’を収容する軸受室６
１，６１’及び７１，７１’とシリンダ２及び３内との
間、ギヤケース１内空間とシリンダ２及び３内との間の
空気、オイルの流通が遮断されている。なお、前記軸封
装置には、それぞれ高圧潤滑油を供給し、性能・寿命の
向上を図る。図中、圧縮機の内部空間に示された矢印を
有する曲線は、装置内を流通する空気、オイルミスト及
びオイルの流れ方向を示している。

【００１７】 図３を参照して、増速ギヤ手段を構成す
る上述の大径駆動ギヤ８及び被駆動ギヤ４４，５４は、
それぞれ、はすば歯車よりなり、前記大径駆動ギヤ８と
被駆動ギヤ４４，５４の歯の捻じれ方向とその回転方向
を、各回転軸に対し圧縮機の圧縮作用により発生するス
ラスト力と反対方向の逆スラスト力が作用するように選
定している。また、少なくとも、高圧段圧縮機の被駆動
ギヤ54の外径Ｄ₂ は、同圧縮機のロータの径Ｄ₁ より
も、小さく構成されている（図５参照）。そして、被駆
動ギヤ５４の外周下側の方が、大径駆動ギヤ８の外周下
側よりも低い位置を占めるようにギヤケース１に組み付
けてある（図３参照）。

【００１８】 上記ギヤケース１の上部に開口する給油
孔１１，１２からギヤケース１内にオイルクーラを通っ
た高圧潤滑油を供給・噴射し、前記潤滑油は、それぞれ
ギヤケースに内装した増速ギヤ手段、軸受４３，５３，
５３’，６２，６３などの潤滑・冷却を行う。なお、矢
印で「ＯＩＬ」と記載した個所は、潤滑油の供給孔を示
している。上記潤滑油の一部は、それぞれ所要の作用を
果たした後、ギヤケース１内の底部に重力により落下
し、そこで滞留する。

【００１９】〔低圧段圧縮機〕 図１，４を参照して、低圧段圧縮機は、そのシリンダ２
のギヤケース１側端の一部に空気の吸入口４５を開口
し、その反対側の端板６に、吐出口４６が開口してい
る。前記吸入口４５の外気との通路はギヤケース１内空
間とは別個で、前記通路はギヤケース内空間に対し、回
転軸４１の軸封装置４８及び軸受４３’の軸受室の隔壁
により密封・遮断されており（図４参照）、その開口部
には吸入空気の容量制御装置（アンローダ）９を備えて
いる。前記吐出口４６の開口部は、中間段通路２０を通
してギヤケース１内空間に連通している。前記ギヤケー
ス１内空間は、外気に対し封止され、かつ、低圧段圧縮
機のシリンダ２内とも同回転軸４１，４１’に設けた軸
封装置４８及び軸受４３’の軸受室を形成する隔壁によ
って密封、遮断されている。また、低圧段圧縮機のおす
ロータ４の吐出側軸受室６１下方を上記中間段通路２０
に開放している（図１，２参照）。

【００２０】 そして、めすロータ４’の吐出側軸受室
６１’は、めすロータ４’の吸入閉じ込み後１ピッチの
作用空間に連通している。しかし、めすロータ４’のギ
ヤケース側軸受４３’の軸受室をギヤケース１内空間に
開放した構成の場合には、軸受４３’とめすロータ４’
の端面との間の吸入側回転軸４１’に軸封装置を設ける
と共に、ロータ４，４’の吐出側軸受室６１，６１’
を、それぞれ前記中間段通路２０に連通する。

【００２１】 シリンダ２の下側中央部に一体的に取り
付けた箱状部材２１（図１参照）は、その内部空間をシ
リンダ２に穿設した孔２２，２２’を通して、作用空間
に連通し、オイルクーラを通って冷却した潤滑油を受入
れ、少なくとも前記低圧段圧縮機の吸入閉じ込み後１ピ
ッチの作用空間に、当該孔２２，２２’から噴射して前
記作用空間で断熱圧縮される空気を冷却し、また、ロー
タ噛み合い面相互のシール、シリンダ内面及び軸受に対
する潤滑作用を行う。なお、図で「ＯＩＬ」の文字を付
した矢印は潤滑油の供給孔を示している。図４中、シリ
ンダ２の横胴中間部に開口する孔２３は、高圧段圧縮機
の吐出側軸受室７１，７１’に連通しており、同室に滞
留する潤滑油を低圧段圧縮機に回収する。また、軸受室
７１，７１’の圧力を低下させ、回転軸５１，５１’に
対し吸入口方向へのスラストが低減するようにしてい
る。

【００２２】〔高圧段圧縮機〕 一方、図１，５を参照して、高圧段圧縮機本体はシリン
ダ３のギヤケース１側端の一部に吸入口５５が開口して
前記ギヤケース１内の空間と連通し、ギヤケースと反対
側の端板７に吐出口５６が開口している。すなわち、高
圧段圧縮機の吸入口５５は、ギヤケース１内空間及び中
間段通路２０を介して、低圧段圧縮機の吐出口４６と連
通している。したがって、前述のギヤケース１内空間
は、外気環境に対し気密にシールされていなければなら
ない。要するに本実施形態におけるギヤケース１は、従
来の並列配置形スクリュ二段圧縮機が具備するインレッ
トケースの機能を兼ね備えている。

【００２３】 図２にも示すレリーフバルブ１３は、前
述ギヤケース１に取り付けてあり、前記レリーフバルブ
１３の吸気側をギヤケース１内空間と連通し、前記レリ
ーフバルブ１３の排気側をスプリングによりギヤケース
内方向に付勢されたピストンを介して図示してないレシ
ーバタンクに連通している。シリンダ３内に開口する潤
滑油供給孔３２は、高圧段圧縮機の吸入閉じ込み後１ピ
ッチの作用空間に、該孔３２から潤滑油を噴射・供給し
て作用空間内で圧縮される空気を冷却すると共に、ロー
タ噛み合い面相互のシール、シリンダ内面、軸受に対す
る潤滑作用を行うよう設けてある。さきに述べたとお
り、高圧段圧縮機の被駆動ギヤ５４の直径Ｄ₂ は、ロー
タ５の径Ｄ₁ よりも小さい。

【００２４】 図１，２を参照して、高圧段圧縮機の吐
出口56は、図示していないレシーバタンクに連通する吐
出管７２に対し開口している。前記吐出管７２とレシー
バタンクとの間には逆止弁７３が設けてあり、圧縮機の
作動が停止した際にレシーバタンク内の高圧空気が圧縮
機内に逆流しないようにしている。

【００２５】 吐出側軸受室７１，７１’の空間は通路
を介して、図４に示すように低圧段圧縮機のシリンダ２
の横胴中間部に設けた油回収孔２３に連通している。こ
の油回収孔２３のシリンダ壁開口位置は、ロータ歯面と
シリンダ壁とによって形成される作用空間の吸入閉じ込
み後１ピッチ進んだ空間と連通している。本発明実施形
態では、低圧段圧縮機と高圧段圧縮機との圧縮比を同じ
にすると比動力〔吐出空気量当りの消費動力（ＫＷ／ｍ
³ ／ｍｉｎ）〕が良くなるので、中間段通路内の圧力
は、最終絶対圧力の平方根の値であることが理想的であ
る。一方、各段圧縮機の吸入口側と吐出口との圧力差を
比較すると、低圧段圧縮機の圧力差よりも高圧段圧縮機
の圧力差の方が遥かに大きくなるから、高圧段圧縮機の
圧縮作用に伴って回転軸に生じるスラスト力は、圧力差
と同様に低圧段圧縮機のそれよりも大きい。

【００２６】 そのため、高圧段圧縮機における上記ス
ラスト力は、はすば歯車駆動による逆スラスト力よりも
大きいので、高圧段圧縮機の吐出側回転軸端にかかる圧
力を低圧段圧縮機の吸入閉じ込み後１ピッチの作用空間
に回収して高圧段圧縮機の吐出側軸受室の圧力を低下さ
せ、回転軸に逆スラストを生じさせ、圧縮作用に伴って
生じる前記スラスト力を相殺する。これにより、前記軸
受室７１，７１’内の潤滑油の回収も比較的適正に行わ
れると同時に、圧縮機の性能低下も全く認められない。
本発明油冷式スクリュ二段圧縮機の実施形態の詳細は、
以上述べたとおりで、次に、その作動について概略説明
する。

【００２７】

【作用】アンローダ９を介して外気を、低圧段圧縮機の
吸入口45からロータ４，４’の作用空間に取り込み、同
空間の閉じ込み後にシリンダ２に設けた孔２２，２２’
から潤滑油を作用空間に噴射して、ロータ噛み合い面相
互、シリンダ内壁・端面との間のシール及び潤滑、ロー
タ、シリンダ等の冷却を行う。低圧段圧縮機のおすロー
タ４は、ギヤケース１内に装架した駆動ギヤ８、被駆動
ギヤ４４を介して増速運転している。

【００２８】 前記ギヤは、はすば歯車からなり、駆動
ギヤ８と被動ギヤ４４の歯の捻じれ方向と回転方向は、
回転軸に対し圧縮作用により発生するスラスト力と反対
方向に逆スラスト力が作用するように設けたので、その
駆動回転中、回転軸４１に吐出口４６方向（図中、右か
ら左方向に）の逆スラスト力を与え、それが作用空間内
で圧縮されている空気の圧力に基づきロータ４，４’の
回転軸４１，４１’に作用する吸入口方向（図中、左か
ら右方向へ）のスラスト力と相殺する。

【００２９】 低圧段圧縮機の圧縮作用に伴いロータの
回転軸に生じるスラスト力は、はすば歯車の増速駆動に
よって生じる逆スラスト力と略、同量であるため別にス
ラスト力相殺のための手段を必要としないので、吐出側
軸受室を中間段通路に連通してロータ両回転軸端に掛か
る力の釣合いを図っている。これにより、軸受４２…５
３’に掛かるスラスト力が軽減され、軸受装置を小型化
することが可能になる。この増速ギヤ手段には、ギヤケ
ース１に設けた孔１１，１２から潤滑油を射出・供給し
て歯面の潤滑・冷却を行う一方、余剰の潤滑油をギヤケ
ース１の底部に収集・滞留させる。

【００３０】 低圧段圧縮機の吐出口４６からギヤケー
ス１内の空間までの中間段通路２０とロータ４，４’の
吐出側軸受４２，４２’の軸受室６１，６１’とを連通
して軸受室６１内の潤滑油を中間段通路２０に回収する
と共に、低圧段圧縮機の吸入側及び吐出口側の回転軸の
軸端に加わる圧力差をなくして、それに基づき全負荷時
に吐出口４６側に推される逆スラストが高まらぬように
し、もって、軸受４２，４２’、４３，４３’の負荷を
小さく摩耗を少なくし同軸受の小型化を可能とする。ま
た、軸受室６１，６１’空間に軸受を潤滑した後の潤滑
油が滞留しないので、軸受の油撹拌ロスが低減する。た
だし、この場合はロータのギヤケース側回転軸４１’の
軸受４３’の軸受室が、ギヤケース１内空間に開放され
た構造を採用していることが条件となる。

【００３１】 ロータのギヤケース側回転軸４１’の軸
受４３’の軸受室がギヤケース１内の空間と遮断されて
いる構造の場合は、前記軸受室６１の空間を中間段通路
２０に連通させ、別に軸受室６１’の空間は、低圧段圧
縮機のロータの吸入閉じ込み後１ピッチの作用空間に連
通することにより、ロータの回転軸に掛かるスラスト力
を削減するようにしている。この際は、回転軸４１’の
軸受４３’の軸受室の内圧力が、ギヤケース１内の圧力
の影響を受けないからである。このようにして、上記各
軸受に掛かる力を小さくすることができ、軸受装置の小
型化を可能とする。

【００３２】 また、軸部に設けた各軸封装置４７…４
８及び隔壁は、ロータの作用空間とギヤケース１内空
間、軸受室等との間の空気の流通（洩れ）をなくし、こ
れによって、圧縮機の圧縮効率の向上を図る。その外、
さきに述べたとおり、高圧段圧縮機のロータ５，５’の
吐出側軸受室７１，７１’の圧力を可及的に低下せし
め、回転軸５１，５１’の端面が吸入側に推される力が
高まらぬようにして、もって軸受５１，５１’、５２，
５２’に掛かるスラスト負荷を小さく摩耗を少なくし小
型軸受の使用を可能としている。さらに、軸受室７１，
７１’の空間には潤滑油が滞留しないから、軸受による
潤滑油撹拌ロスが軽減される。

【００３３】 中間段通路２０は、ギヤケース１の内部
に開口するから、低圧段圧縮機の吐出口４６から排出さ
れる高圧空気・オイルミストがギヤケース１内空間に充
満し、増速ギヤ、各軸受装置、その他の潤滑を行う。ま
た、前記高圧空気・オイルミストは、すべて高圧段圧縮
機の吸入口５５から、その作用空間に吸い込まれる。こ
のような構造を採用しているので本実施形態は、従来装
置に比べて構造が簡単である。

【００３４】 そのため、構成部品点数が節減され、余
分な機械加工、シール部構造の組立て、検査等の手間を
省くことができる。のみならず、装置全体の寸法を縮小
することができ、圧縮機容量の大きさに比べて狭いスペ
ースでも設置することが可能になる。ギヤケース１に設
けたレリーフバルブ１３は前記ギヤケース内圧力がスプ
リングにより予め設定された圧力を超えた場合、前記ス
プリングによりギヤケース内方向に付勢されているピス
トンを押し上げ、前記レリーフバルブの吸気側と排気側
の通路を連通し、前記ギヤケース内圧力を図示していな
いレシーバタンクに逃がすようにしており、万一、低圧
段圧縮機のみ作動して高圧段圧縮機が機能しない等の事
故が発生しても、ギヤケース１内圧力が異常上昇しない
よう用意されている。

【００３５】 高圧段圧縮機の吸入口５５は、ギヤケー
ス１内空間に向いて開口しており、その底部はロータ
５，５’の外周と一致し、かつ、前記ロータ５，５’の
径Ｄ₁ を、被駆動ギヤ５４の径Ｄ₂ よりも大きくしてい
る。そのため、ギヤケース１の底部に滞留する余剰潤滑
油の油面は、ロータ５の外周面下側よりも上方に上がる
ことがない。すなわち、潤滑油の油面がロータ５の外周
面下側よりも上方になるまで溜りそうになると、その分
だけ高圧段圧縮機の吸入口55から作用空間内に流れ込
み、潤滑油が吸い込まれてしまうからである。

【００３６】 この吸い込まれた潤滑油が高圧段圧縮機
のロータ噛み合い面相互、シリンダ内壁・端面との間の
潤滑及びシール作用及びロータ、シリンダ等の冷却を行
うことは勿論である。そのため、ギヤケース１の底部に
滞留する余剰潤滑油を別の方法を使って外部へ排出する
必要がなく、しかも、この油面を被駆動ギヤ５４が撹拌
することがないから、オイル撹拌による無用のエネルギ
ーの消費を抑えることができる。

【００３７】 以上、述べたように、ギヤケース１の底
部に滞留する余剰潤滑油は、高圧段圧縮機の作用空間を
通って吐出口から排出されるから、従来装置のように、
別途にギヤケース１に対し専用の潤滑油排油管を設ける
必要がない。さきに説明したように高圧段圧縮機の場合
も、そのシリンダ３の中間部に潤滑油の供給孔３２を設
けて、作用空間内に噴射し、潤滑及びシール、冷却して
いることは、低圧段圧縮機の場合と同様である。また、
吐出側軸受室７１，７１’の空間を、低圧段圧縮機のシ
リンダ２の横胴中間部に連通していること、それに基づ
く効果は、さきに述べたとおりである。高圧段圧縮機の
吐出口５６は、吐出管７２、逆止弁７３を介して、図示
してないレシーバタンクに連通している。

【００３８】

【発明の効果】本発明油冷式スクリュ二段圧縮機は、以
上の構成よりなるから、 （１）低圧段圧縮機の吐出側軸受室を中間段通路に接続
することにより、全負荷時における過度の逆スラスト荷
重の発生を抑える。 （２）インレットケースとギヤケースとを兼用する構成
としたので、部品点数及び組立て工数を低減し、また、
圧縮機本体の小型化を図ることができる。 （３）高圧段圧縮機の吐出側軸受室の圧力を低圧段圧縮
機の作用空間に開放することにより、前記軸受室の圧力
が低下し、吐出口側から吸入口側に向かって作用するス
ラスト荷重が低下する。よって軸受にかかる負荷を軽減
することができる。

【００３９】 （４）ギヤケースの下部に溜った潤滑油
が、高圧段圧縮機のスクリュロータに引かれて移送さ
れ、その油面が常に、高圧段圧縮機の増速ギヤの外径よ
りも低くなるので、当該ギヤが潤滑油を撹拌することが
ない。よって、油撹拌ロスを低減することができる。 （５）ギヤケース内に滞留する潤滑油の油回収用配管が
不要となって、従来装置の場合のように前記配管を取り
付ける下部スペースが不要となり、圧縮機のパッケージ
ングをコンパクトにすることができる。等々、従来、公
知の油冷式スクリュ二段圧縮機に比べ、圧縮機本体の簡
素化、コンパクト化によるコストダウンを図ることがで
き、公知のスクリュ二段式圧縮機には期待することがで
きない、格別の作用、効果を奏するものとなる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明油冷式スクリュ二段圧縮機の実施の形態
例で、図２におけるＡ−Ａ線に沿う側断面図を示す。

【図２】一部を切り欠いて示す、図１におけるＢ−Ｂ矢
視図である。

【図３】図１におけるＣ−Ｃ線断面矢視図である。

【図４】図２におけるＤ−Ｄ線に沿う側断面図を示す。

【図５】図２におけるＥ−Ｅ線に沿う側断面図である。

【符号の説明】

１ ギヤケース ２ 低圧圧縮機側シリンダ ３ 高圧圧縮機側シリンダ ４，４’ 低圧圧縮機側おす・めすロータ ５，５’ 高圧圧縮機側おす・めすロータ ６ 低圧段圧縮機吐出口側端板 ７ 高圧段圧縮機吐出口側端板 ８ 駆動ギヤ

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭62−197685（ＪＰ，Ａ) 特開 昭60−249693（ＪＰ，Ａ) 特開 昭48−21806（ＪＰ，Ａ) 実開 平６−1790（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭62−41889（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭51−162307（ＪＰ，Ｕ) 実公 平６−36312（ＪＰ，Ｙ２) 実公 昭52−8082（ＪＰ，Ｙ２) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) F04C 23/00 F04C 18/16 F04C 29/00

Claims (8)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 シリンダ内に、おす・めすスクリュロー
   タを収納・噛み合わせ、各スクリュロータの回転軸の両
   側を軸受で軸支して形成した低圧段及び高圧段圧縮機
   を、ギヤケースの一側面の略、上下方向に、各圧縮機の
   回転軸が平行になるように並列・配置し、前記ギヤケー
   スに内装した増速ギヤ手段により、各圧縮機を駆動し、
   前記低圧段圧縮機の吐出口及び高圧段圧縮機の吸入口を
   前記ギヤケース内空間に連通してなる油冷式スクリュ二
   段圧縮機において、前記 低圧段圧縮機のシリンダ内と、ギヤケース内空間及
   び前記シリンダを挟んでギヤケースと反対側に配置する
   軸受室との間の各一対の軸部に、それぞれ軸封装置を設
   け、 前記シリンダを挟んでギヤケースと反対側に配置する軸
   受室の少なくとも一方と、前記ギヤケース内空間との間
   を連通したことを特徴とする油冷式スクリュ二段圧縮
   機。
2. 【請求項２】 シリンダ内に、おす・めすスクリュロー
   タを収納・噛み合わせ、各スクリュロータの回転軸を両
   側を軸受で軸支して形成した低圧段及び高圧段圧縮機
   を、ギヤケースの一側面の略、上下方向に、各圧縮機の
   回転軸が平行になるように並列・配置し、前記ギヤケー
   スに内装した増速ギヤ手段により、各圧縮機を駆動し、
   前記低圧段圧縮機の吐出口及び高圧段圧縮機の吸入口を
   前記ギヤケース内空間に連通してなる油冷式スクリュ二
   段圧縮機において、前記 低圧段圧縮機のおす・めすスクリュロータのいずれ
   か一方のギヤケース側回転軸端に被駆動ギヤを固定し、 前記一方のスクリュロータの、ギヤケース側及び前記シ
   リンダを挟んでギヤケースと反対側の軸部に、それぞれ
   軸封装置を設けると共に、前記シリンダを挟んでギヤケ
   ースと反対側に配置する軸受室と、前記ギヤケース内空
   間とを連通し、 他方のスクリュロータのギヤケース側に配置する軸受室
   を前記ギヤケース内空間に対し隔壁によって遮断する一
   方、スクリュロータの前記シリンダを挟んでギヤケース
   と反対側の軸部に軸封装置を設けると共に、前記シリン
   ダを挟んでギヤケースと反対側に配置する軸受室と、前
   記低圧段圧縮機における吸入閉じ込み後１ピッチの作用
   空間とを連通したことを特徴とする油冷式スクリュ二段
   圧縮機。
3. 【請求項３】 シリンダ内に、おす・めすスクリュロー
   タを収納・噛み合わせ、各スクリュロータの回転軸を両
   側を軸受で軸支して形成した低圧段及び高圧段圧縮機
   を、ギヤケースの一側面の略、上下方向に、各圧縮機の
   回転軸が平行になるように並列・配置し、前記ギヤケー
   スに内装した増速ギヤ手段により、各圧縮機を駆動し、
   前記低圧段圧縮機の吐出口及び高圧段圧縮機の吸入口を
   前記ギヤケース内空間に連通してなる油冷式スクリュ二
   段圧縮機において、前記 高圧段圧縮機のおす・めすスクリュロータのいずれ
   か一方のギヤケース側回転軸端に被駆動ギヤを固定し、
   前記被駆動ギヤの外径を、前記一方のスクリュロータの
   外径よりも小径にして、被駆動ギヤの外径下側よりも高
   圧段圧縮機の吸入口下側を低くしたことを特徴とする油
   冷式スクリュ二段圧縮機。
4. 【請求項４】 シリンダ内に、おす・めすスクリュロー
   タを収納・噛み合わせ、各スクリュロータの回転軸を両
   側を軸受で軸支して形成した低圧段及び高圧段圧縮機
   を、ギヤケースの一側面の略、上下方向に、各圧縮機の
   回転軸が平行になるように並列・配置し、前記ギヤケー
   スに内装した増速ギヤ手段により、各圧縮機を駆動し、
   前記低圧段圧縮機の吐出口及び高圧段圧縮機の吸入口を
   前記ギヤケース内空間に連通してなる油冷式スクリュ二
   段圧縮機において、前記 高圧段圧縮機のスクリュロータの吐出口側に配置す
   る軸受室と、前記低圧段圧縮機の吸入閉じ込み後１ピッ
   チの作用空間とを連通したことを特徴とする油冷式スク
   リュ二段圧縮機。
5. 【請求項５】 シリンダ内に、おす・めすスクリュロー
   タを収納・噛み合わせ、各スクリュロータの回転軸を両
   側を軸受で軸支して形成した低圧段及び高圧段圧縮機
   を、ギヤケースの一側面の略、上下方向に、各圧縮機の
   回転軸が平行になるように並列・配置し、前記ギヤケー
   スに内装した増速ギヤ手段により、各圧縮機を駆動し、
   前記低圧段圧縮機の吐出口及び高圧段圧縮機の吸入口を
   前記ギヤケース内空間に連通してなる油冷式スクリュ二
   段圧縮機において、前記 ギヤケース内空間とレリーフバルブの吸気側とを連
   通すると共に、前記レリーフバルブの排気側を高圧段圧
   縮機の吐出口からレシーバタンクまでの間に連通したこ
   とを特徴とする油冷式スクリュ二段圧縮機。
6. 【請求項６】 前記低圧段圧縮機の吐出口を、シリンダ
   を挟んでギヤケースと反対側に設け、これを中間段通路
   を介して前記ギヤケース内空間と連通し、 増速ギヤ手
   段を構成する各歯車をそれぞれ、はすば歯車としたこと
   を特徴とする請求項１または２記載の油冷式スクリュ二
   段圧縮機。
7. 【請求項７】 前記高圧段圧縮機のシリンダを挟んでギ
   ヤケースと反対側に配置するおす・めすスクリュロータ
   の各軸受室の下部を、それぞれ通路を介して連通し、 前記各軸受室の内の、いずれか一方の軸受室の下部と、
   低圧段圧縮機の吸入閉じ込み後１ピッチの作用空間とを
   連通したことを特徴とする請求項４記載の油冷式スクリ
   ュ二段圧縮機。
8. 【請求項８】 前記低圧段圧縮機のシリンダを挟んでギ
   ヤケースと反対側に配置するおす・めすスクリュロータ
   の各軸受室の下方に中間段通路と連通する開口を設けた
   ことを特徴とする請求項６記載の油冷式スクリュ二段圧
   縮機。