JP3309390B2 - 高温超電導導体巻線 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ この発明は、高温超電導導体巻線に関するもので、特
に、このような高温超電導導体巻線の特性とりわけ臨界
電流特性の向上に関するものである。

［従来の技術］ セラミックス系超電導体として知られている高温超電
導材料は、これを金属被覆した状態で、塑性加工するこ
とにより、薄いテープ状となるように強加工し、このよ
うな塑性加工と熱処理とを組合せることにより、高い臨
界電流密度が得られることがわかっている。

［発明が解決しようとする課題］ 上述のようなテープ状の高温超電導線をたとえばコイ
ルに応用しようとするには、これを巻線しなければなら
ない。特に、高温超電導線がテープ状である場合には、
これをダブルパンケーキコイルの形に巻線するのが適当
である。

ところが、ダブルパンケーキコイルの場合、１本の高
温超電導線によって、２つのコイル部分を形成すること
になるので、一方のコイル部分から他方のコイル部分ま
で延びる渡りの部分が必要となってくる。しかしなが
ら、テープ状の高温超電導線を用いる場合、この渡りの
部分で必ずひねられるため、ここに剪断応力を受け、そ
れによって臨界電流密度が低下することがわかった。

それゆえに、この発明の目的は、上述したように、テ
ープ状の高温超電導線が用いられるとき、臨界電流密度
の低下につながる渡り部分における剪断応力の発生を抑
制できる、ダブルパンケーキコイルの形に巻線された高
温超電導導体巻線を提供しようとすることである。

［課題を解決するための手段］ この発明は、金属と複合化されたテープ状の高温超電
導線がダブルパンケーキコイルの形に巻線された、高温
超電導導体巻線に向けられるものであって、渡りの部分
の長さが、上述した剪断応力ひいては臨界電流密度と重
要な関わりをもつことに着目したものである。

すなわち、この発明では、上述した技術的課題を解決
するため、パンケーキ間の渡りの部分の長さをテープ状
の高温超電導線の幅の４倍以上に選んだことが特徴であ
る。

この発明に係る高温超電導導体巻線において、高温超
電導線は、マイカ、ガラス繊維、石英繊維などの無機物
質、または４フッ化エチレン、ポリイミド樹脂、フォル
マール樹脂などの有機物質からなる絶縁材料で被覆され
てもよい。

また、この高温超電導導体巻線は、エポキシ含浸され
ることが望ましく、さらに望ましくは、このエポキシに
繊維および／または粉末が含有される。

また、高温超電導線に含まれる高温超電導体は、多芯
に分割されてもよい。

［発明の作用および効果］ この発明によれば、渡りの部分の長さをテープ状の高
温超電導線の幅の４倍以上とすることにより、渡りの部
分での剪断応力の発生を抑制でき、応じて、臨界電流密
度の剪断応力による低下を防止することができる。

この発明において、高温超電導線が絶縁被覆されてい
ると、特別な絶縁材を用いることなく、そのまま、高温
超電導線を巻線することができる。

また、この発明に係る高温超電導導体巻線がエポキシ
含浸されていると、このような巻線を作製するときや励
磁される場合に受ける応力に対して強くなり、さらに、
このエポキシに繊維および／または粉末が含まれている
と、上述の応力に対して一層強くなる。

また、高温超電導線に含まれる高温超電導体が多芯に
分割されていると、耐歪み特性が優れたものとなり、高
温超電導体が焼結された後であっても、問題なく巻線す
ることができる。

［実施例］ 第１図および第２図は、この発明の一実施例による高
温超電導導体巻線１を示している。ここで、第１図は、
正面図であり、第２図は上面図である。

高温超電導導体巻線１は、金属と複合化されたテープ
状の高温超電導線２が、ダブルパンケーキコイルの形に
なるように、円筒状の巻枠３上に巻線されることによっ
て形成される。

より詳細には、１本のテープ状の高温超電導線２は、
上のパンケーキすなわち第１のコイル部分４を形成する
ように、巻枠３上に内周側から巻かれる。第１のコイル
部分４の巻き始端に連なる渡りの部分５は、巻枠３上で
斜め下方に延びるように導かれ、同じ高温超電導線２
は、下のパンケーキすなわち第２のコイル部分６を形成
するように、巻枠３の外周面上において内周側から第１
のコイル部分４とは逆の方向に巻かれる。

上述のようなテープ状の高温超電導線２の巻線状態に
おいて、渡りの部分５が形成される結果として、第１の
コイル部分４および第２のコイル部分６の双方に隙間が
形成されるが、これらの隙間は、それぞれ、スペーサ７
および８を入れることによって吸収される。

また、巻線された高温超電導線２の各端部には、通電
端子９および10が取付けられる。

なお、巻枠３は、単純な円筒状に図示されたが、一般
的には、その両端部にフランジ（図示せず）が形成され
ている。

なお、この明細書において、「渡りの部分の長さ」と
いうときは、第１図に示された渡りの部分５が第１のコ
イル部分４および第２のコイル部分６から露出した部分
における中心線の長さを指すものとする。

以下に、この発明の効果を確認するため行なったより
具体的な実施例について説明する。

実施例１ Bi:Pb:Sr:Ca:Cu＝1.82:0.43:2.01:2.22:3.03の組成を
もつように、各々の元素を含む酸化物または炭酸塩を混
合し、熱処理により、Bi:Pb:Sr:Ca:Cuがほぼ2:2:1:2の
組成を有する2212相と非超電導相とからなる粉末を準備
した。これを、2Torrの減圧雰囲気で700℃、３時間の脱
ガス処理した。

このようにして得られた粉末を、銀パイプ内に充填し
た。この銀パイプ1296本を、外径12mmおよび内径10mmの
大きな銀パイプ内に装填し、外径が1mmになるまで伸線
加工し、次いで、0.18mmの厚みになるまで圧延加工し
た。

このようにして得られたテープ状の線材を、840℃で5
0時間熱処理し、次いで、幅4mm、厚さ0.15mmのテープ状
の線材となるように圧延加工した。次に、このテープ状
の線材を、840℃で50時間熱処理した。

次いで、このテープ状の線材を、厚み0.1mmのフォル
マール樹脂で被覆し、外径15mmのボビン上に巻線し、１
つのパンケーキあたり、10ターンのダブルパンケーキコ
イルを作製した。このとき、渡りの部分の長さを変えた
いくつかの試料を作製し、各々の場合における、Jc,coi
l/Jco（＝コイルの形での臨界電流密度／線材のままで
の臨界電流密度）を測定した。

以下の表１にその結果が示されている。

表１から明らかなように、渡りの長さをテープ状の線
材の幅の４倍以上とすることにより、特性の改善が顕著
である。

実施例２ 実施例１と同様にして、幅4.3mm、厚み0.14mmのテー
プ状の線材を作製し、フォルマール樹脂に代えて、ポリ
イミド樹脂でこれを被覆し、実施例１と同様のダブルパ
ンケーキコイルを作製した。実施例２では、このコイル
を、ガラス繊維を含むエポキシ樹脂で含浸した。

得られた各試料の評価結果は、表２に示すとおりであ
る。

表２から、エポキシ樹脂で含浸すると、さらに効果が
増すことがわかる。

実施例３ 実施例１と同様の工程を経て、単芯線を作製した。こ
れを、0.18mmの厚みになるまで圧延加工した後、石英繊
維で被覆し、ダブルパンケーキコイルの形にし、次い
で、840℃で50時間熱処理した。

この場合においても、渡りの長さを、線材の幅の４倍
以上としたとき、コイルの形での臨界電流密度は、線材
のままでの臨界電流密度の90％以上と優れたものであっ
た。

【図面の簡単な説明】

第１図は、この発明の一実施例による高温超電導導体巻
線１を示す正面図である。第２図は、第１図に示した高
温超電導導体巻線１を示す上面図である。 図において、１は高温超電導導体巻線、２は高温超電導
線、４は第１のコイル部分、５は渡りの部分、６は第２
のコイル部分である。

Claims (5)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】金属と複合化されたテープ状の高温超電導
   線がダブルパンケーキコイルの形に巻線された、高温超
   電導導体巻線において、 パンケーキ間の渡りの部分の長さがテープ状の高温超電
   導線の幅の４倍以上であることを特徴とする、高温超電
   導導体巻線。
2. 【請求項２】前記高温超電導線が絶縁被覆されている、
   請求項１に記載の高温超電導導体巻線。
3. 【請求項３】エポキシ含浸されている、請求項１または
   ２に記載の高温超電導導体巻線。
4. 【請求項４】前記エポキシに繊維および／または粉末が
   含まれている、請求項３に記載の高温超電導導体巻線。
5. 【請求項５】前記高温超電導線に含まれる高温超電導体
   は、多芯に分割されている、請求項１ないし４のいずれ
   かに記載の高温超電導導体巻線。