JP3297345B2 - 工事用エレベータのガバナロープ繰出し方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、ビル建築工事の進
行過程に応じて機械室を段階的に吊上げることによりか
ご昇降行程を順次延長するようにした工事用エレベータ
のガバナロープ繰出し方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】一般に高層ビルなどの建築工事において
は、地上階から高層階まで建設作業者が上ったり建築資
材を昇降させたりするのに多大な時間を要するため、ビ
ル建築工事の効率化を阻害する原因の１つとなってい
る。

【０００３】そこで従来、例えば特開平８−１３３６３
５号公報に記載されているように、ビル建築工事の進行
過程に応じて機械室を段階的に吊上げることによりかご
昇降行程を順次延長するようにした工事用エレベータが
提案されている。

【０００４】この従来の工事用エレベータでは、かごの
昇降行程を延長する際に、機械室が位置する高さ位置ま
でかごを吊上げるとともに、ガバナ装置のガバナロープ
を前記の吊上げた分だけ長いものに交換するようになっ
ていた。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】ところで、前述した従
来の工事用エレベータでは、機械室を吊上げた高さに応
じてガバナ装置のガバナロープを長いものに交換して再
び張設する必要があるため、このガバナロープの交換作
業にかなりの手間や時間がかかり作業効率が劣る他コス
トがかかるという問題があった。

【０００６】本発明はこのような従来技術における実情
に鑑みてなされたもので、その第１の目的は、ガバナロ
ープの交換を要せずに、ビル建築工事の進行過程に応じ
て機械室を段階的に吊上げることのできる工事用エレベ
ータを提供することにある。

【０００７】また、その第２の目的は、機械室を段階的
に吊上げる際にガバナロープの取扱いが容易であり、ガ
バナロープ長さの調整作業を円滑に行なうことのできる
工事用エレベータを提供することにある。

【０００８】また、その第３の目的は、機械室を段階的
に吊上げる際にガバナロープのねじれに伴う下部プーリ
の回動を抑制でき、機械室の移設作業を円滑に行なうこ
とのできる工事用エレベータを提供することにある。

【０００９】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明は、昇降路内に仮設される機械室と、この機
械室に設置され、巻上ロープを駆動する巻上装置と、前
記巻上ロープにより吊上げられ、前記昇降路を昇降する
かごおよびつり合いおもりと、前記機械室に設置される
上部プーリ、および前記昇降路の下部に設置される下部
プーリに巻掛けられ、前記かごの昇降動作と連動するガ
バナロープとを備え、ビル建築工事の進行過程に応じて
前記機械室を段階的に移設する際に前記ガバナロープを
順次繰出すようにした工事用エレベータのガバナロープ
繰出し方法において、前記ガバナロープの長さを、前記
ビルの完成時に必要となる所定長さに設定して、前記ガ
バナロープの一端を前記かごに固定するとともに、前記
ガバナロープの他端側を前記かごに設けたロープリール
装置に繰出し可能に巻き取っておき、前記機械室の移設
時に、この移設距離以上の長さを有する一対のガバナロ
ープにガイドさせて前記下部プーリを上昇させた後、前
記ガバナロープの他端側のロープリール装置からガバナ
ロープを繰出して前記下部プーリを下降させるようにし
た構成にしてある。

【００１０】上記のように構成した本発明の請求項１に
係る発明では、ガバナロープの中間部が上部プーリおよ
び下部プーリに巻掛けられてループ部が形成されるとと
もに、ガバナロープの他端側がかごに移動可能に取付け
られているので、必要に応じてガバナロープの他端側の
取付状態を解除した後、この他端側の部分を繰出して前
記のループ部の長さを長くする。これによって、ビル建
築工事の進行過程に応じて機械室を段階的に移設する際
に、ガバナロープの交換を要せずに済む。

【００１１】また、当初、ガバナロープの一部をロープ
リール装置に巻取っておき、必要に応じてロープリール
装置からガバナロープを繰出すようになっているので、
機械室を段階的に吊上げる際にガバナロープの取扱いが
容易であり、上述したループ部の長さを調整する作業を
円滑に行なえる。

【００１２】また、機械室の吊上に伴ってガバナロープ
を介して下部プーリが引上げられる際、ガバナロープに
ねじれ力が掛っている場合でも、一対のガイドロープに
より下部プーリがガイドされるため、この下部プーリの
回動を抑制できる。これによって、ガバナロープがねじ
れることがなくて済むので、機械室の移設作業を円滑に
行なえる。

【００１３】

【発明の実施の形態】以下、本発明の工事用エレベータ
の実施の形態を図に基づいて説明する。図１は本発明の
一実施形態に係る工事用エレベータの要部構成を示す説
明図、図２は本実施形態の工事用エレベータに備えられ
るガイド部材の正面図、図３はガイド部材の側面図、図
４は本実施形態の工事用エレベータの全体構成を示す縦
断面図である。

【００１４】一般に工事用エレベータは、図４に示すよ
うに、昇降路１内に仮設される機械室２と、この機械室
２に設置され、巻上ロープ３を駆動する巻上装置４と、
巻上ロープ３により吊上げられ、昇降路１を昇降するか
ご５およびつり合いおもり６と、かご５の昇降動作と連
動するガバナロープ７を有するガバナ装置８とを備えて
いる。機械室２は吊上ロープ２ａを介して支持されてお
り、ビル９の建築工事の進行過程に応じて機械室２を段
階的に移設することによりかご５の昇降行程を順次延長
するようになっている。

【００１５】巻上ロープ３は、一端が支持体１０を介し
て機械室２の底部に固定され、中間部がつり合いおもり
６の上部のプーリ１１と、機械室２のプーリ１２および
巻上装置４と、かご５の上部のプーリ１３とに順次巻回
されるとともに、他端部が機械室２の巻上ロープリール
１４に巻掛けられている。ガバナロープ７は、中間部が
機械室２に設置される上部プーリ１５と、昇降路１の下
部に設置される下部プーリ１６とに巻掛けられており、
この下部プーリ１６は、図１に示すように、昇降路１の
下部に立設されるガイドレール１７にブラケット１８を
介して取付けられている。

【００１６】そして、本実施形態の工事用エレベータで
は、従来のものと比べて、ガバナロープ７の長さをビル
９の完成時に必要となる所定長さに設定したことと、昇
降路１の下部に下部プーリ１６をガイドするガイド部材
１９を設けたことと、かご５の上部にロープリール装置
２０を設置したこととが主として異なっており、その他
の構成は基本的には同様である。

【００１７】上述したガバナロープ７の一端は、図１に
示すように、かご５にロープ端支持部２１を介して固定
され、ガバナロープ７の中間部は、上部プーリ１５およ
び下部プーリ１６に巻掛けられ、これらの上部プーリ１
５および下部プーリ１６間でループ部７ａが形成されて
いる。また、ガバナロープ７の他端側は、かご５にロー
プ端支持部２１を介して移動可能に取付けられており、
この他端側の部分７ｂはロープリール装置２０により巻
取られている。

【００１８】上述したガイド部材１９は、図２に示すよ
うに、ガバナロープ７のループ部７ａと略平行となるよ
う鉛直方向に張設される一対のガイドロープ２２と、こ
の一対のガイドロープ２２の各端部がボルト２３を介し
て固定されるブラケット２４ａ、２４ｂとからなってい
る。これらのブラケット２４ａ、２４ｂは、昇降路１の
下部に立設されるガイドレール１７に取付けられ、機械
室２の１回当りの移設距離Ｌより少し大きな間隔を置い
て設けられている。また、下部プーリ１６には、一対の
ガイドロープ２２と係合する係合部、例えばシャックル
２５が設けられている。

【００１９】この実施形態にあっては、まず下部プーリ
１６をガイドレール１７に取付けた状態を解除した後、
機械室２を所定距離Ｌ吊上げることにより、ガバナロー
プ７のループ部７ａを介して下部プーリ１６が一対のガ
イドロープ２２に沿って鉛直方向に引上げられる。次い
で、前記の所定距離Ｌに応じて巻上ロープリール１４か
ら巻上ロープ３を繰出すとともに、ガバナロープ７の他
端側の部分７ｂをロープ端支持部２１に取付ける２個の
Ｕクリップ２６をそれぞれ緩めた後、ロープリール装置
２０からガバナロープ７の他端側の部分７ｂを繰出して
ループ部７ａの長さを長くして、２個のＵクリップ２６
をそれぞれ締込むことによりガバナロープ７の他端側の
部分７ｂを再びロープ端支持部２１に取付ける。そし
て、昇降路１の全長にわたって上記の手順を繰返すこと
により機械室２を段階的に移設し、かご５の昇降行程を
順次延長するようになっている。

【００２０】このように構成した実施形態では、ビル９
の建築工事の進行過程に応じて機械室２を段階的に移設
する際、ガバナロープ７のループ部７ａの長さを調整す
ることができるので、ガバナロープ７の交換を要せずに
済む。

【００２１】また、本実施形態では、当初、ガバナロー
プ７の他端側の部分７ｂをロープリール装置２０に巻取
っておき、必要に応じてロープリール装置２０から前記
の部分７ｂを繰出すようになっているので、その際のガ
バナロープ７の取扱いが容易であり、上述したループ部
７ａの長さを調整する作業を円滑に行なえる。

【００２２】また、本実施形態では、機械室２の吊上に
伴ってガバナロープ７を介して下部プーリ１６が引上げ
られるとき、ガバナロープ７にねじれ力が掛っている場
合でも、一対のガイドロープ２２により下部プーリ１６
がガイドされているため、この下部プーリ１６の回動を
抑制できる。さらに、ガイド部材１９のガイドロープ２
２は、機械室２を吊上げる１回当りの所定距離Ｌより少
し長いので、ガイド部材１９を一度設置すれば、このガ
イド部材１９の移動を要せずに、機械室２の移設作業を
繰返して行なうことができる。

【００２３】

【発明の効果】以上のように構成したので、本発明で
は、ガバナロープの交換を要せずに、ビル建築工事の進
行過程に応じて機械室を段階的に移設することができ、
したがって、ガバナロープの交換を要する従来の場合と
比べて、かご昇降行程を延長する作業を効率的に行なえ
るという効果がある。

【００２４】また、機械室を段階的に移設する際にガバ
ナロープの取扱いが容易であり、ガバナロープの長さを
調整する作業を円滑に行なえる。したがって、比較的長
いガバナロープであってもその取扱いが容易であるた
め、高層ビルにも適用可能な工事用エレベータが得られ
るという効果がある。

【００２５】また、機械室の吊上時にガバナロープのね
じれに伴う下部プーリの回動を抑制できるため、機械室
の移設を円滑に行なうことができ、したがって、この点
からもかご昇降行程を延長する作業を効率的に行なえる
という効果がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施形態に係る工事用エレベータの
要部構成を示す説明図である。

【図２】本実施形態の工事用エレベータに備えられるガ
イド部材の正面図である。

【図３】ガイド部材の側面図である。

【図４】本実施形態の工事用エレベータの全体構成を示
す縦断面図である。

【符号の説明】

１ 昇降路 ２ 機械室 ３ 巻上ロープ ４ 巻上装置 ５ かご ６ つり合いおもり ７ ガバナロープ ７ａ ループ部 ７ｂ 他端側の部分 ９ ビル １５ 上部プーリ １６ 下部プーリ １９ ガイド部材 ２０ ロープリール装置 ２２ ガイドロープ ２４ａ、２４ｂ ブラケット ２５ シャックル（係合部）

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭49−42039（ＪＰ，Ａ) 特開 平９−86827（ＪＰ，Ａ) 特開 平３−36182（ＪＰ，Ａ) 実開 昭51−91476（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭58−41782（ＪＰ，Ｕ) 実開 平２−66578（ＪＰ，Ｕ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) B66B 1/00 - 31/02

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 昇降路内に仮設される機械室と、この機
   械室に設置され、巻上ロープを駆動する巻上装置と、前
   記巻上ロープにより吊上げられ、前記昇降路を昇降する
   かごおよびつり合いおもりと、前記機械室に設置される
   上部プーリ、および前記昇降路の下部に設置される下部
   プーリに巻掛けられ、前記かごの昇降動作と連動するガ
   バナロープとを備え、ビル建築工事の進行過程に応じて
   前記機械室を段階的に移設する際に前記ガバナロープを
   順次繰出すようにした工事用エレベータのガバナロープ
   繰出し方法において、 前記ガバナロープの長さを、前記ビルの完成時に必要と
   なる所定長さに設定して、前記ガバナロープの一端を前
   記かごに固定するとともに、前記ガバナロープの他端側
   を前記かごに設けたロープリール装置に繰出し可能に巻
   き取っておき、前記機械室の移設時に、この移設距離以
   上の長さを有する一対のガバナロープにガイドさせて前
   記下部プーリを上昇させた後、前記ガバナロープの他端
   側のロープリール装置からガバナロープを繰出して前記
   下部プーリを下降させるようにしたことを特徴とする工
   事用エレベータのガバナロープ繰出し方法。