JP3285440B2 - N−アルコキシカルボニルアミノ酸エステルの製造方法 - Google Patents

N−アルコキシカルボニルアミノ酸エステルの製造方法

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JP3285440B2 JP29623293A JP29623293A JP3285440B2 JP 3285440 B2 JP3285440 B2 JP 3285440B2 JP 29623293 A JP29623293 A JP 29623293A JP 29623293 A JP29623293 A JP 29623293A JP 3285440 B2 JP3285440 B2 JP 3285440B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、N−アルコキシカルボ
ニルアミノ酸エステルを容易に製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、アミノ酸エステルをN−アルコキ
シカルボニル化し、N−アルコキシカルボニルアミノ酸
エステルを合成する方法は知られている。例えば、アミ
ノ酸エステルの酸との塩を、有機溶媒中で化学量論量の
トリエチルアミンの存在下にジ−t−ブチルジカーボネ
ートと反応させる方法が知られている(ジャーナル・オ
ブ・オルガニック・ケミストリー(J.Org.Che
m.)50巻、22号、4332−6頁、1985
年)。
【0003】また、こうした反応において使用されるア
ミノ酸エステルの酸との塩は、例えばアミノ酸にオレフ
ィン及び硫酸を反応させる方法により得られる。なお、
この方法において、得られた反応液には、目的物である
アミノ酸エステル硫酸塩の他に未反応の硫酸も含まれ
る。従って、かかるアミノ酸エステル硫酸塩の製造方法
では、反応終了後、該反応液に、生成したアミノ酸エス
テル硫酸塩を単離精製する操作を施すのが一般的であ
る。しかして、この精製操作としては、通常、上記反応
液に塩基の水溶液を加え、前記硫酸と共に目的物である
アミノ酸エステル硫酸塩も一旦中和し、塩は水層に残し
たまま、この中和により遊離したアミノ酸エステルを水
と混合しない有機溶媒で抽出し、さらに、以上により単
離された該アミノ酸エステルを酸と接触させて、再び安
定な酸との塩とする方法が採用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、このアミノ
酸エステル硫酸塩の精製操作は、操作が煩雑であり、上
記のようなアミノ酸のエステル化方法により、まず、ア
ミノ酸からアミノ酸エステル硫酸塩を製造し、次いで、
このアミノ酸エステル硫酸塩を原料として前記したN−
アルコキシカルボニル化反応を行いN−アルコキシカル
ボニルアミノ酸エステルを製造する場合においては、該
製造を効率的に行うことの妨げとなっていた。
【0005】また、アミノ酸エステルは、水に対しても
ある程度の溶解性を有するため、このアミノ酸エステル
硫酸塩の精製操作時においては、そのかなりの量が有機
溶媒層に抽出されず、水層に残留して消失する。従っ
て、上記のようなアミノ酸を出発原料としてN−アルコ
キシカルボニルアミノ酸エステルを製造する場合でも、
該アミノ酸エステルの精製操作時に、過度に多量の有機
溶媒を使用して抽出操作を繰り返さなければ、該アミノ
酸エステルの水層へのロスが生じ、満足いくだけの収率
でN−アルコキシカルボニルアミノ酸エステルを得るこ
とができなかった。
【0006】以上の背景から、アミノ酸を原料にしてN
−アルコキシカルボニルアミノ酸エステルを製造するに
際し、簡便な操作で該化合物を高収率で得る方法の開発
が望まれていた。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記実状に
鑑み、N−アルコキシカルボニルアミノ酸エステルを簡
便な操作で高収率で製造する方法を鋭意検討した。その
結果、アミノ酸、オレフィン、及び硫酸を反応させてア
ミノ酸エステル硫酸塩を含む反応液を得、次いで、この
アミノ酸エステル硫酸塩を含む反応液を塩基で中和した
後、生成したアミノ酸エステルを含む反応液と特定の一
般式で示されるジカーボネートとを混合することによ
り、上記の課題が解決できることを見いだし本発明を完
成させるに至った。
【0008】即ち、本発明は、アミノ酸、オレフィン、
及び硫酸を反応させてアミノ酸エステル硫酸塩を含む反
応液を得、次いで、このアミノ酸エステル硫酸塩を含む
反応液を塩基で中和した後、生成したアミノ酸エステル
を含む反応液と一般式(1)
【化1】 (但し、R 1 は、アルキル基、アルケニル基またはアラ
ルキル基である。) で示されるジカーボネートとを混合してN−アルコキシ
カルボニルアミノ酸エステルを含む反応液を得、このN
−アルコキシカルボニルアミノ酸エステルを含む反応液
からの N−アルコキシカルボニルアミノ酸エステルの単
離を水の存在下で行うことを特徴とするN−アルコキシ
カルボニルアミノ酸エステルの製造方法である。
【0009】
【化2】
【0010】(但し、R1は、アルキル基、アルケニル
基またはアラルキル基である。)で示されるジカーボネ
ートとを反応させてN−アルコキシカルボニルアミノ酸
エステルを生成させ、この反応液から該N−アルコキシ
カルボニルアミノ酸エステルの単離を水の存在下で行う
ことを特徴とするN−アルコキシカルボニルアミノ酸エ
ステルの製造方法である。
【0011】本発明においてアミノ酸のエステル化に使
用されるオレフィンは、特に制限されないが、好適に
は、炭素数2〜10のものが好ましい。具体的には、エ
チレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブ
チレン、1−ペンテン、2−ペンテン、イソペンテン、
1−ヘキセン、2−ヘキセン、イソヘキセン、シクロヘ
キセン等が挙げられる。
【0012】本発明において使用されるアミノ酸は、分
子内に少なくとも1つ以上のアミノ基またはイミノ基、
およびカルボキシル基を有する化合物であれば公知の化
合物を何等制限なく用い得る。一分子中に2個以上のア
ミノ基もしくはイミノ基またはそれらがアルキル基等に
より置換された置換アミノ基もしくは置換イミノ基を有
するアミノ酸の場合は、少なくとも1個のアミノ基また
はイミノ基さえ有していれば、他のアミノ基またはイミ
ノ基はアルキル基等により置換されていてもよい。
【0013】本発明において好適に使用し得るアミノ酸
を具体的に示せば、例えば、グリシン、アラニン、β−
アラニン、バリン、ノルバリン、ロイシン、ノルロイシ
ン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、ジヨ
ードチロシン、トレオニン、セリン、ホモセリン、イソ
セリン、プロリン、ヒドロキシプロリン、トリプトファ
ン、チロキシン、メチオニン、ホモメチオニン、シスチ
ン、ホモシスチン、α−アミノ酪酸、γ−アミノ酪酸、
β−アミノ酪酸、α−アミノイソ酪酸、アスパラギン
酸、グルタミン酸、ホモグルタミン酸、アスパラギン、
グルタミン、リジン、オルニチン、ヒドロキシリジン、
アルギニン、ヒスチジン、アンチカプシン、N−イミノ
エチルオルニチン、α−アミノ−β−(2−イミダゾリ
ジニル)プロピオン酸、N−メチルグリシン、タウリ
ン、γ−ホルミル−N−メチルノルバリン、N−トシル
−アルギニン、N−ベンジルオキシカルボニル−アルギ
ニン、アスパラギン酸−β−ベンジルエステル、S−ア
セトアミドメチル−システイン、S−ベンジル−システ
イン、グルタミン酸−γ−ベンジルエステル、N−ベン
ジルオキシカルボニル−ヒスチジン、N−ベンジルオキ
シカルボニル−リジン、N−ベンジルオキシカルボニル
−オルニチン、O−ベンジル−セリン、O−ベンジル−
トレオニン、N−ホルミル−トリプトファン、2−(2
−アミノ−4−チアゾリル)−2−メトキシイミノ酢
酸、2−(2−アミノ−4−チアゾリル)−2−ペンテ
ン酸、ピペコリン酸、trans−4−アミノメチル−
1−シクロヘキサンカルボン酸、γ−アミノ−β−ヒド
ロキシ酪酸、フェニルグリシン、4−ヒドロキシフェニ
ルグリシン等を挙げることができる。
【0014】これらのアミノ酸は、側鎖の官能基は保護
されてもよく、光学異性体を含むラセミ混合物であって
もよく、異種のアミノ酸の混合物であってもよい。ま
た、アミノ酸が2個以上つながったペプチドも本発明に
おいて使用することができる。
【0015】本発明において、こうしたアミノ酸のエス
テル化反応は、該アミノ酸、前記オレフィン、及び硫酸
を反応させることにより、アミノ酸エステル硫酸塩を生
成させることにより実施される。ここで、上記オレフィ
ンの使用量は、特に制限されるものではないがアミノ酸
1当量に対して1当量以上であれば好適である。通常、
このエステル化反応は、アミノ酸と濃硫酸を有機溶媒に
溶解あるいは懸濁させ、さらにオレフィンを飽和まで溶
解させて行うのが一般的である。
【0016】本発明において硫酸の使用量は、特に制限
されるものではないが、アミノ酸1当量に対して1当量
以上、好ましくは1〜3当量であるのが好適である。
【0017】本発明において、アミノ酸のエステル化に
使用される溶媒を具体的に示せば、例えば、ジオキサ
ン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ジクロルメタ
ン、ジクロルエタン等の塩素系溶媒;トルエン等の炭化
水素等が好適に使用される。
【0018】アミノ酸のエステル化反応における反応温
度は、特に制限されないが、通常系の凝固点〜100℃
の範囲、好ましくは−20〜80℃の範囲であることが
好適である。反応に要する時間は反応温度、原料オレフ
ィンおよびアミノ酸の種類によっても異なるが、通常は
1〜120時間の範囲である。
【0019】以上のエステル化反応により得られた反応
液には、目的物であるアミノ酸エステル硫酸塩の他、未
反応の硫酸が共存している。
【0020】本発明では、このようにしてアミノ酸エス
テル硫酸塩を生成させた後、反応液に塩基を加え、該ア
ミノ酸エステル硫酸塩を中和する。この中和によりアミ
ノ酸エステル硫酸塩の他、前記エステル化反応液に共存
する硫酸も中和され、該液にはアミノ酸エステルと硫酸
塩が生成する。ここで、中和に用いる塩基としては、特
に制限されないが、好適に使用しうる塩基を具体的に例
示すると、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルア
ミン等の有機アミン類、水酸化ナトリウム、水酸化カリ
ウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウム、水
酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、炭酸
ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩、炭酸水素ナトリ
ウム、炭酸水素カリウム等の重炭酸塩等を挙げることが
できる。これらの塩基はそのまま用いてもよいし、水あ
るいは有機溶媒中に溶解あるいは懸濁させて用いてもよ
い。
【0021】中和に用いる塩基の量は、アミノ酸のエス
テル化反応に用いた硫酸1グラム当量に対して、塩基
0.8〜2グラム当量、好ましくは1〜1.5グラム当
量の範囲で選べばよい。中和に塩基の水溶液を用いる場
合は、中和によって得た水溶液のpHが好ましくは5〜
13、さらに好ましくは6〜11に至らしめる量であれ
ばよい。
【0022】なお、本発明では、かかる中和を、塩基そ
のもの、または溶媒成分が該アミノ酸のエステル化反応
で用いた溶媒と同種のものである塩基の溶液や懸濁液を
使用して実施した場合には、この中和液の溶媒成分はほ
ぼ単一組成であるため、中和後減圧留去等の方法によ
り、その任意量を回収してもよい。ここで、溶媒を回収
再使用するためには、中和に用いる塩基は、中和時に水
を生成しない塩基を用いることが好ましい。また、この
ように中和後アミノ酸を回収する際には、用いるアミノ
酸としては、セリン等のように分子中に水酸基を有し、
上記減圧留去時に、該アミノ酸の水酸基と他のアミノ酸
のカルボキシル基が縮合して2量体エステルが副生する
おそれのないものを用いるのが好ましい。
【0023】次に、本発明では、以上の中和によりアミ
ノ酸エステルが生成した反応液から該化合物を単離精製
することなく、続けて、この反応液に前記式(1)で示
されるジカーボネートを混合して、上記アミノ酸エステ
ルのN−アルコキシカルボニル化反応を行う。ここで、
アミノ酸エステルは、上記N−アルコキシカルボニル化
反応により生成するN−アルコキシカルボニルアミノ酸
エステルに比較して、水への溶解性がかなり大きく、ま
た、有機溶媒への溶解性がかなり小さい化合物であり、
有機溶媒による抽出等の単離精製操作においては水層等
への消失が比較的大きい化合物である。従って、本発明
では、上記の如く前記アミノ酸のエステル化反応により
得られた反応液を直接N−アルコキシカルボニル化反応
に供することにより、単に製造操作が簡略化されるだけ
でなく、上記アミノ酸エステルの精製操作を施すことに
より生じていた該化合物の消失がなくなり、その結果、
目的とするN−アルコキシカルボニルアミノ酸エステル
の大幅な収率向上が達成されるものである。
【0024】また、こうして得られるN−アルコキシカ
ルボニル化反応液には、N−アルコキシカルボニルアミ
ノ酸エステルの他、前記アミノ酸のエステル化反応液の
中和液の精製操作が施されていないことに起因して相当
量の硫酸塩が共存している。硫酸塩は水に良く溶解し、
一方、N−アルコキシカルボニルアミノ酸エステルは水
には溶解し難いので、本発明においては、N−アルコキ
シカルボニル化反応により得られた反応液に水が含有さ
れていると、こうした硫酸塩とN−アルコキシカルボニ
ルアミノ酸エステルの水への溶解性の違いを利用して、
該N−アルコキシカルボニルアミノ酸エステルを反応液
から簡単に単離することができる。この単離方法として
は、特に制限されるものではないが、具体的には、前記
反応液からN−アルコキシカルボニルアミノ酸エステル
の結晶を晶析させる方法や、水を含む反応液に、水と非
相溶性であり且つN−アルコキシカルボニルアミノ酸エ
ステルを溶解する有機溶媒を混合したり、或いは該有機
溶媒が溶媒成分である反応液に水を混合したりすること
により、この有機溶媒層にN−アルコキシカルボニルア
ミノ酸エステルを抽出する方法等が挙げられる。しかし
て、このようにして硫酸塩とN−アルコキシカルボニル
アミノ酸エステルの水への溶解性の違いを利用して、該
N−アルコキシカルボニルアミノ酸エステルを単離した
場合、この化合物は、上記水が含有される反応液に共存
する硫酸塩の塩析効果により効率的に反応液から晶析し
たり、該塩の溶解濃度の高さからこの反応液中より有機
溶媒層へ効率的に抽出されたりする。従って、本発明の
製造方法では、この硫酸塩の塩析効果により、N−アル
コキシカルボニルアミノ酸エステルの収率はさらに向上
する。
【0025】本発明において、N−アルコキシカルボニ
ル化に使用されるジカーボネートは、前記式(1)で示
される化合物である。式中、R1で示されるアルキル基
は、特に制限されるものではないが、メチル基、エチル
基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、
i−ブチル基、t−ブチル基等の低級アルキル基が好適
であり、アルケニル基はアリル基が好適であり、アラル
キル基はベンジル基が好適である。
【0026】本発明において好適に使用し得るジカーボ
ネートを具体的に例示すると、ジメチルジカーボネー
ト、ジエチルジカーボネート、ジイソプロピルジカーボ
ネート、ジイソブチルジカーボネート、ジ−t−ブチル
ジカーボネート、ジ−t−アミルジカーボネート、ジア
リルジカーボネート、ジベンジルジカーボネート等を挙
げることができる。
【0027】アミノ酸エステルに対するジカーボネート
の使用量は、あまりに過剰に用いると経済的ではないた
め、通常は保護したいアミノ酸エステルのアミノ基また
はイミノ基1当量に対して1〜5当量、好ましくは1〜
2当量、さらに好ましくは1〜1.5当量の範囲で選べ
ばよい。
【0028】N−アルコキシカルボニル化反応は、水ま
たは有機溶媒またはこれらの混合溶媒中で制限なく実施
することができるため、本発明では、前記アミノ酸エス
テル化反応及び続く中和反応を経て得られたアミノ酸エ
ステルを含む反応液を該N−アルコキシカルボニル化反
応に供すに際しては、さらに、種々の溶媒を補充して該
反応を行っても良い。また、このアミノ酸エステルを含
む反応液は、その溶媒の任意量を減圧留去等により留去
したり、かかる留去後これに他の溶媒を補充したりし
て、上記N−アルコキシカルボニル化反応に供しても良
い。
【0029】N−アルコキシカルボニル化反応における
反応温度は特に制限されないが、あまり温度が高いと原
料のジカーボネートおよび生成物が分解するため、通
常、系の凝固点〜100℃の範囲、好ましくは、0〜8
0℃の範囲であることが好適である。
【0030】N−アルコキシカルボニル化反応における
反応圧力は、常圧、加圧、減圧のいずれの場合も実施可
能であり、反応に要する時間は、反応温度、原料のアミ
ノ酸の種類によっても異なるが、通常は1〜120時間
の範囲である。反応は回分式、連続式のいずれでも実施
可能である。
【0031】なお、本発明では、かかるN−アルコキシ
カルボニル化反応、及びアミノ酸のエステル化反応及び
中和反応で用いる各溶媒が同じものである場合には、こ
のN−アルコキシカルボニル化反応液の溶媒成分はほぼ
単一組成であるため、該反応後減圧留去等の方法によ
り、その任意量を回収してもよい。ここで、溶媒を回収
再使用するためには、中和に用いる塩基は、中和時に水
を生成しない塩基を用いることが好ましい。
【0032】次に、本発明において、以上のN−アルコ
キシカルボニル化反応により得られた反応液中に水を存
在させる方法は特に制限されるものではない。例えば、
前記アミノ酸のエステル化反応液の中和を塩基の水溶液
を用いて行った場合には、上記N−アルコキシカルボニ
ル化反応液中には該水溶液に由来して既に多量の水が含
有されているため、特に留意しなくても、前記単離操作
を行うことができる。他方、前記アミノ酸のエステル化
反応液の中和を塩基そのもの、或いは塩基の有機溶媒に
よる溶液や懸濁液を用いて行った場合等の、前記反応液
がそのままでは実質的に無水の状態で得られる際には、
かかる単離操作時等において該反応液に水を混合すれば
良い。ここで、該反応液中での水の含有量は、特に制限
されるものではないが、上記N−アルコキシカルボニル
アミノ酸エステルの単離効率を勘案すれば、結晶の析出
時或いは化合物の抽出時において40重量%以上好まし
くは60重量%以上であるのが好ましい。
【0033】本発明において、こうした水が存在する反
応液からのN−アルコキシカルボニルアミノ酸エステル
の単離を、前記した晶析により行う場合、その操作は、
該反応液をそのままの溶媒組成で冷却等して実施しても
良いし、必要であれば減圧留去等の方法により、有機溶
媒を除いて実施しても良い。晶析時の液の量は、少なす
ぎると攪はんおよび液移送が困難であるため、N−アル
コキシカルボニルアミノ酸エステルのスラリー濃度が3
0%以下、さらには20%以下にいたらしめる量である
ことが好ましい。また、晶析を効率良く行うためには、
液中の硫酸塩濃度が3wt%以上、さらには5wt%〜
25wt%であることが好ましい。晶析温度は、通常系
の凝固点〜40℃、さらには0〜30℃の範囲から採用
することが好ましい。析出した結晶は、公知の方法、例
えばろ過、遠心分離等により分離できる。必要であれ
ば、これらの分離操作中にさらに水洗を行うこともでき
る。
【0034】一方、このN−アルコキシカルボニルアミ
ノ酸エステルの単離を、前記した水と非相溶性であり且
つN−アルコキシカルボニルアミノ酸エステルを溶解す
る有機溶媒による抽出操作により行う場合、該有機溶媒
は、上記性状にあるものが特に制限されることなく使用
される。具体的には、ジクロロメタン、1,2−ジクロ
ロエタン、クロロホルム、トルエン、酢酸エチル、ジイ
ソプロピルエーテル等を挙げることができる。こうした
有機溶媒を混合するに際しては、上記反応液は、必要に
応じて予め減圧留去等の方法により反応溶媒として既に
含有されている有機溶媒を留去させておいても良い。そ
の場合、有機溶媒を混合する前の液量は、少なすぎると
攪はんが困難であるため、N−アルコキシカルボニルア
ミノ酸エステルのスラリー濃度が30%以下、さらには
20%以下にいたらしめる量であることが好ましい。ま
た、抽出を効率良く行うためには、液中の硫酸塩濃度が
3wt%以上、さらには5wt%〜25wt%であるこ
とが好ましい。なお、抽出液は、必要であればさらに水
洗することができる。このようにして得られた抽出液か
ら有機溶媒を留去すれば、N−アルコキシカルボニルア
ミノ酸エステルを得ることができる。また、かかる抽出
液中から公知の方法により、N−アルコキシカルボニル
アミノ酸エステルを晶析させても良い。
【0035】
【発明の効果】本発明によれば、アミノ酸、オレフィ
ン、及び硫酸を反応させてアミノ酸エステル硫酸塩を含
む反応液を得、次いで、このアミノ酸エステル硫酸塩を
含む反応液を塩基で中和した後、生成したアミノ酸エス
テルを含む反応液とジカーボネートとを混合し、得られ
たN−アルコキシカルボニルアミノ酸エステルを含む反
応液から該N−アルコキシカルボニルアミノ酸エステル
を水の存在下で単離する簡単な操作により、N−アルコ
キシカルボニルアミノ酸エステルを高収率で得ることが
できる。従って、本発明は、N−アルコキシカルボニル
アミノ酸エステルの製造方法として、工業的に極めて有
用である。
【0036】
【実施例】以下、実施例を掲げて本発明を説明するが、
本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0037】実施例1 ナスフラスコにグリシン37.5g(0.5モル)、ジ
オキサン400ml、濃硫酸98g(1モル)をいれ、
ドライアイス/アセトン浴で冷却下、イソブチレン56
g(1モル)を吹き込んだ。密栓して室温で1日放置し
た。得られた反応液を、予め4つ口フラスコに入れてお
いた2N水酸化ナトリウム水溶液1L中に、氷冷攪拌下
滴下した。滴下終了後、氷冷下ジ−t−ブチルジカーボ
ネート87.2g(0.4モル)を滴下し、室温で12
時間反応させた。その後ジオキサンおよび生成したt−
ブタノールを減圧留去し、ジクロルメタン400mlを
用いて抽出操作を行った。ジクロルメタン層を水100
mlで2回水洗し、ジクロルメタンを減圧留去して、油
状のN−t−ブトキシカルボニルグリシン−t−ブチル
エステル77.4gを得た。収率は67%であった。
【0038】比較例1 実施例1において、グリシンのエステル化反応液を2N
水酸化ナトリウム水溶液により中和する操作までは、該
実施例1と同様な操作を行った。中和後、ジオキサンを
減圧留去し、ジクロルメタン400mlを用いてグリシ
ン−t−ブチルエステルを抽出した。次いで、ジクロル
メタン層を分離し、氷冷下ジ−t−ブチルジカーボネー
ト87.2g(0.4モル)を滴下し、室温で12時間
反応させた。得られた反応液を水100mlで2回水洗
し、溶媒を減圧留去して、油状のN−t−ブトキシカル
ボニルグリシン−t−ブチルエステル61.2gを得
た。収率は53%であった。
【0039】実施例2 ナスフラスコにL−プロリン58.0g(0.5モ
ル)、ジクロルメタン400ml、濃硫酸98g(1モ
ル)を入れ、ドライアイス/アセトン浴で冷却下、イソ
ブチレン56g(1モル)を吹き込んだ。密栓して室温
で1日放置した。得られた反応液を、予め4つ口フラス
コに入れておいた、炭酸ナトリウム106g(1モル)
をジクロルメタン300mlに懸濁させた懸濁液中に、
攪拌下10℃以下で滴下した。さらに氷冷下ジ−t−ブ
チルジカーボネート87.2g(0.4モル)を滴下
し、室温で12時間反応させた。その後反応液を水10
0mlで2回洗浄し、ジクロルメタンを減圧留去して、
油状のN−t−ブトキシカルボニル−L−プロリン−t
−ブチルエステル97.6gを得た。収率は72%であ
った。
【0040】実施例3 ナスフラスコにL−ヒドロキシプロリン66.0g
(0.5モル)、ジオキサン400ml、濃硫酸98g
(1モル)を入れ、ドライアイス/アセトン浴で冷却
下、イソブチレン56g(1モル)を吹き込んだ。密栓
して室温で1日放置した。得られた反応液を、予め4つ
口フラスコに入れておいた、0.67Mの炭酸ナトリウ
ム水溶液1.5L中に、攪拌下10℃以下で滴下した。
さらに氷冷下ジ−t−ブチルジカーボネート87.2g
(0.4モル)を滴下し、室温で12時間反応させた。
その後ジオキサンおよび生成したt−ブタノールを減圧
留去し、析出した結晶をろ取した。ろうと上200ml
の水で洗浄し、乾燥させてN−t−ブトキシカルボニル
−L−ヒドロキシプロリン−t−ブチルエステルの結晶
106gを得た。収率は74%であった。
【0041】実施例4〜5 アミノ酸として表1に示した化合物を用いること以外
は、実施例2と同様に行い、表1に示した各N−アルコ
キシカルボニルアミノ酸エステルを得た。用いたアミノ
酸および収率を表1に示した。
【0042】
【表1】
【0043】実施例6〜7 ジカーボネートとして表2に示した化合物を用いること
以外は、実施例2と同様に行い、表2に示した各N−ア
ルコキシカルボニルアミノ酸エステルを得た。用いたジ
カーボネートおよび収率を表2に示した。
【0044】
【表2】

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アミノ酸、オレフィン、及び硫酸を反応さ
    せてアミノ酸エステル硫酸塩を含む反応液を得、次い
    で、このアミノ酸エステル硫酸塩を含む反応液を塩基で
    中和した後、生成したアミノ酸エステルを含む反応液と
    一般式(1) 【化1】 (但し、R 1 は、アルキル基、アルケニル基またはアラ
    ルキル基である。) で示されるジカーボネートとを混合してN−アルコキシ
    カルボニルアミノ酸エステルを含む反応液を得、このN
    −アルコキシカルボニルアミノ酸エステルを含む反応液
    からの N−アルコキシカルボニルアミノ酸エステルの単
    離を水の存在下で行うことを特徴とするN−アルコキシ
    カルボニルアミノ酸エステルの製造方法。
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