JP3285347B2 - トラクターの変速伝動装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

この発明は、トラクターの変速伝動措置に関する。

【０００２】

【従来の技術、及び発明が解決しようとする課題】

従来、特開昭63−26448号公報に示されるように、伝
動ケース（M2）に隔壁（17）を形成し、この隔壁（17）
の前側に前部変速機構（Ｅ）を、後側に後部変速機構
（Ｇ）を内装し、前部変速機構（Ｅ）は少なくとも上下
２軸の伝動軸（32c），（75）で構成し上下軸間に配設
する複数の変速用歯車によって複数段の回転速度を出力
し、後部変速機構（Ｇ）は前記前部変速機構の上下伝動
軸と同一軸心上で独立して回転可能な上下変速軸（8
4），（33）で構成し上下軸間に配設する複数の変速用
歯車によって複数段の回転速度を出力するトラクターの
変速伝動装置が知られている。 また、実開昭57−139756号公報に示されるように、隔
壁（12）を挿通する上下の伝動軸（８）（4a）間に常時
噛合い式ギヤ（13），（33）を設け、この常時噛み合い
式ギヤにおける動力伝達を、前記前部のクラッチ（６）
を直結状態と非直結状態に切り換えてたときに、駆動側
と従動側とを切り換えて利用するものが知られている。

【０００３】 しかしながら、上記前者の公報による伝動構成は、
入力軸（32a）から出力軸（32d）までに所定の変速段を
得るには、この段数と同数のギヤ組を必要とするので、
伝動ケースが長くなるという課題や、ギヤに係る部品点
数が多くなってコストがかかるという課題、車体後部
に装着する作業機へ動力を伝達する伝動軸（符号23）
が、前部及び後部変速機構とは別軸で構成されているの
で、伝動ケースの上下幅も大きくなるという課題が有っ
た。 また、後者の公報による伝動構成では、上下の伝動軸
（８）（4a）間に常時噛合い式ギヤ（13），（33）を設
け、上側の伝動軸（８）と入力軸（１）との間にクラッ
チスリーブ（25）を設けて、このクラッチスリーブ（2
5）を後方のクラッチ（27）と噛み合わせて前後の軸を
直結状態した時と、非直結状態とした時とで前記常時噛
合い式ギヤ（13），（33）における駆動側と従動側とを
切り換えて後部の変速機構へ伝達する構成として、前者
の公報による課題を解消、即ちギヤに係る部品点数を削
減し、伝動ケースの長さを短く構成するものであるが、
同ケースの上下幅をするには、尚改良の余地が有った。

【０００４】

【課題を解決するための手段】

この発明は、伝動ケース（６）に隔壁（３）を形成
し、この隔壁（３）の前側に前部変速機構（７）を、後
側に後部変速機構（８）を内装し、前部変速機構（７）
は少なくとも上下２軸の伝動軸（28），（51）で構成し
上下軸間に配設する複数の変速用歯車によって複数段の
回転速度を出力し、後部変速機構（８）は前記前部変速
機構（７）の上下伝動軸（28），（51）と同一軸心上で
独立して回転可能な上下変速軸（40），（９）で構成し
上下軸間に配設する複数の変速用歯車によって複数段の
回転速度を出力するトラクターの変速伝動装置におい
て、 前記前部変速機構（７）の駆動側変速用歯車を有する伝
動軸（51）と、同軸（51）と同一軸心上に設けた後部変
速機構（８）の変速軸（９）とを中空軸状に形成し、こ
の中空筒軸内に後部作業機へ動力を伝達する伝動軸（5
4）を挿通軸架すると共に、両軸（51），（９）間に、
前記伝動軸（51）から前記変速軸（９）側へスプライン
上を移動し両軸（51），（９）を直結する前部クラッチ
（12b）を設け、 一方、前記前部変速機構（７）の従動側変速用歯車を有
する伝動軸（28）と、この伝動軸（28）の後方で同一軸
心上に設ける変速軸（40）との間に、前記変速軸（40）
から前記伝動軸（28）側へスプライン上を移動し両軸
（40），（28）を直結する後部クラッチ（59）を設け、 更に、該前部変速機構（７）の従動側変速用歯車を有す
る伝動軸（28）と、前記前部クラッチ（12b）により直
結可能な後部変速機構（８）の変速軸（９）との間に常
時噛み合い式ギヤ（25），（44）を設け、 前記前部クラッチ（12b）を直結状態と非直結状態に切
り換えることによって前記常時噛み合い式ギヤ（25），
（44）における動力伝達の駆動側と従動側を切り換えて
利用したことを特徴とするトラクターの変速伝動装置と
する。

【０００５】

【発明の作用】

前部変速機構（７）に入力された回転動力は、常時噛
合い式ギヤ（25），（44）を介して最終的に後部変速機
構（８）の従動側変速軸（40）に伝達される。 その際、前記常時噛合い式ギヤ（25），（44）におけ
る回転動力は、前記前部変速機構（７）の駆動側変速用
歯車を有する伝動軸（51）と、同軸と同一軸心上に設け
た後部変速機構（８）の変速軸（９）との直結状態若し
くは非直結状態によって駆動側と従動側とが切り換わ
る。

【０００６】 即ち、前記前部クラッチ（12b）が両軸（51），
（９）を直結状態とする場合、回転動力は、前記前部変
速機構（７）の駆動側変速用歯車を有する伝動軸（51）
から、同軸と同一軸心上に設けた後部変速機構（８）の
変速軸（９）へ伝達され、常時噛合い式ギヤ（25），
（44）を含む複数の変速用歯車の噛み合いを介して、後
部変速機構（７）の従動側変速軸（40）若しくはこれと
一体の後部ベベルギヤ（33）を有する伝動軸（34）へ伝
達される。 また、前記クラッチ（12b）が両軸（51），（９）を
非直結状態とする場合、回転動力は、前記前部変速機構
（７）の駆動側変速用歯車を有する伝動軸（51）から、
前記歯車と噛み合う従動側変速用歯車を介して前部変速
機構（７）の伝動軸（28）へ伝達され、後部クラッチ
（59）を介して従動側変速軸（40）へ伝達されるか、若
しくは常時噛合い式ギヤ（25），（44）を介して後部変
速機構（８）の駆動側変速軸（９）へ伝達されて、変速
用歯車の噛み合いを介して、後部変速機構（８）の従動
側変速軸（40）若しくはこれと一体の後部ベベルギヤ
（33）を有する伝動軸（34）へ伝達される。 また、前記前部変速機構（７）の駆動側変速用歯車を
有する伝動軸（51）と、後部変速機構（８）の駆動側変
速軸（９）は、車体後部に装着する作業機へ動力を伝達
する伝動軸（54）上を回転する。

【０００７】

【発明の効果】

以上のように構成したトラクタの変速伝動装置では、
従来のように、上下駆動軸間に変速段毎の歯車を構成す
るものと比較して、所定の段数を得る場合にギヤ数を削
減し、伝動ケースの長さを短く構成することができる
上、後部作業機へ動力を伝達する伝動軸（54）を、前部
及び後部変速機構（７），（８）を構成する伝動軸及び
変速軸の軸内に構成したので、ケースの上下幅も短く構
成することができる。

【０００８】

【実施例】

なお、図例において、前、後進の切替をする切替伝動
機構１を内装した伝動ケース２の後側に、前後方向の中
間部に隔壁３を有して、この隔壁３前側の前部室４と隔
壁３後側の後部室５とからなる変速伝動ケース６を設
け、この変速伝動ケース６の後端部には、左右一対の後
輪に伝動する伝動機構13と後部装着作業機に伝動する伝
動機構14とを内装した後部伝動ケース15を結合する。

【０００９】 前記前部室４の前部には、前、後両軸受16,16と、こ
れら軸受16,16下側の軸受23を支持した軸承体17を設
け、これらの軸受16,16には、前記切替伝動機構１の伝
動軸18から軸継ぎ手19を介して伝動される入力軸20を支
承させ、この入力軸20の後端部には、軸受21を有した主
変速機構７の入力ギヤー22を一体状に設ける。

【００１０】 隔壁３には、複数の駆動軸後端部を後部室５側に突設
する上下の出力孔を開口している。軸受21と隔壁３の上
出力孔に取付けられた軸受24とには、後端部に上部ギヤ
ー25と、この上部ギヤー25後側スプライン26と、軸受部
27とを有した上伝動軸28を支承させ、この上伝動軸28上
には、該軸受24前側のカラー29と、このカラー29前側の
二段ギヤー30,31とを固着する。

【００１１】 前記軸受部27と前記後部伝動ケース15の前壁に設けら
れた二連軸受32,32とには、後端部に小径ベベルギヤー3
3を有した伝動軸34を支承させ、この伝動軸34上の該軸
受32前側には、副変速機構８の終端ギヤー35を固着し、
又該伝動軸34上の該ギヤー35前側には、前端部のスプラ
イン36とこのスプライン36後側の小径ギヤー37と、後端
部の大径ギヤー38とを有した歯車体を回転自在に支承さ
せ、さらに前記スプライン26とスプライン36との間の該
伝動軸34上には、外周面に該スプライン26,36と同径の
スプライン39を有したカラー状軸である上変速軸40を固
着し、この上変速軸40上には、前部の小径ギヤー41と後
部の大径ギヤー42とからなり後述する上伝動軸28と直結
させるクラッチ体である摺動ギヤー体59をスプライン摺
動自在に設ける。

【００１２】 前記隔壁３の軸受24下側の下出力孔と二連軸受32,32
下側とに設けられた両軸受43,43には、前記上部ギヤー2
5に噛合する下部ギヤー44、ギヤー38に噛合するギヤー4
5及び前記摺動ギヤー体の摺動によってギヤー41に噛合
するギヤー46を有した副変速機構８中の中空状一変速部
材９を支承させ、この一変速部材９上には、前記終端ギ
ヤー35に噛合するギヤー47を回転自在に設け、さらに該
一変速部材９の前端部には、内周面の軸承部48と外周面
のスプライン49とを有して前記前部室４内に突出する従
動クラッチ10を一体状に設ける。

【００１３】 前記軸受23と軸承部48とには、前記入力ギヤー22に噛
合するギヤー50を有した主変速機構７の中空軸である下
伝動軸51を支承させ、この下伝動軸51上には、前部にス
プライン49を有して前記ギヤー31に噛合するギヤー52
と、後部にスプライン49を有して前記ギヤー30に噛合す
るギヤー53とを各々回転自在に設け、又前記下伝動軸51
上のギヤー50とギヤー52との間、及び該ギヤー53と前記
クラッチ10との間には、外周面に前記スプライン49と同
径のスプライン49a,49b…を有した主変速機構７の一変
速部材11,11を各々固着し、これらの一変速部材11,11上
には、スプライン摺動によって前記ギヤー52のスプライ
ン49aに噛合する一速用駆動クラッチ12a及び前記従動ク
ラッチ10のスプライン49b,49cに噛合する二，三速用の
駆動クラッチ12bとを各々設ける。

【００１４】 なお、54は原動機側から前記後部装着作業機用の伝動
機構14に伝動する伝動軸、55は左右一対の前輪に伝動す
る伝動軸、56はスプライン摺動によって前記ギヤー47に
噛合して伝動軸55に伝動するギヤー、57はギヤー37に常
時噛合している超低速用ギヤー、58は摺動ギヤー体の摺
動によってギヤー42と噛合する超低速用ギヤーである。

【００１５】 次に作用について説明する。主変速機構７側である一
速用のクラッチ12aをギヤー52のスプライン49aに結合
し、後部の二，三速用の駆動クラッチ12bを図のように
中立状態にし、副変速機構８側の摺動ギヤー体のギヤ4
1,42を歯車体37,38のスプライン36に結合させた場合、
切替伝動機構１の伝動軸18から軸継ぎ手19を介して伝動
される入力軸20は、入力ギヤー22、ギヤー50、下伝動軸
51、前側の一変速部材11及び前部駆動クラッチ12a、ス
プライン49aを介してギヤー52に伝動し、ギヤー52から
ギヤー31、上伝動軸28、隔壁３の上出力孔、上部ギヤー
25を駆動源として後部室５に出力し、下部ギヤー44、一
変速部材９のギヤー45及び他の副変速機構８のギヤー38
及びスプライン36、摺動ギヤー体、さらに上変速軸40、
伝動軸34、小径ベベルギヤー33を介して伝動機構13から
左右の後輪に変速第１速で伝動する。

【００１６】 前記一速用駆動クラッチ12aをスプライン49aから離脱
させて中立にし、後部の二，三速用駆動クラッチ12bを
ギヤー53のスプライン49bに結合させると、入力軸20に
伝動される入力ギヤー22は、ギヤー50、下伝動軸51、後
側の一変速部材11及び駆動クラッチ12b、スプライン49b
を介してギヤー53に伝動し、このギヤー53からはギヤー
30、上伝動軸28、上部ギヤー25、下部ギヤー44へと前記
と同じ伝動経路を経て左右の後輪に変速第２速で伝動す
る。

【００１７】 次に後部の二，三速用駆動クラッチ12bを一変速部材
９のスプライン49cに結合すると、入力軸20に伝動され
る入力ギヤー22は、ギヤー50、下伝動軸51、後側の一変
速部材11及び二，三速用駆動クラッチ12b、一変速部材
９のスプライン49を介して隔壁３の下出力孔から後部室
５に出力し、下部ギヤー44を駆動源として一変速部材９
から以後は前記と同じ伝動経路を経て後輪に変速第３速
で伝動する。

【００１８】 以上が副変速機構８が低速側の場合であり、摺動ギヤ
ー体のギヤー41をギヤー46に噛合させると、副変速機構
８が高速側になり、主変速機構７の操作によって変速第
４速、第５速、第６速が得られる。 なおギヤー42をギヤー58に噛合させると、ギヤー37か
らギヤー42に亘って減速比が増大するため、超低速が得
られる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 この発明の、側断面図である。

【符号の説明】

２……伝動ケース ３……隔壁 ４……前部室 ５……後部室 ６……変速伝動ケース ７……前部変速機構（主変速機構） ８……後部変速機構（副変速機構） ９……下変速軸（一変速部材） 12b……前部クラッチ（二，三速用駆動クラッチ） 25……上部ギヤー 28……上伝動軸 40……上変速軸 44……下部ギヤー 51……下伝動軸 59……後部クラッチ（摺動ギヤ体）

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】伝動ケース（６）に隔壁（３）を形成し、
   この隔壁（３）の前側に前部変速機構（７）を、後側に
   後部変速機構（８）を内装し、前部変速機構（７）は少
   なくとも上下２軸の伝動軸（28），（51）で構成し上下
   軸間に配設する複数の変速用歯車によって複数段の回転
   速度を出力し、後部変速機構（８）は前記前部変速機構
   （７）の上下伝動軸（28），（51）と同一軸心上で独立
   して回転可能な上下変速軸（40），（９）で構成し上下
   軸間に配設する複数の変速用歯車によって複数段の回転
   速度を出力するトラクターの変速伝動装置において、 前記前部変速機構（７）の駆動側変速用歯車を有する伝
   動軸（51）と、同軸（51）と同一軸心上に設けた後部変
   速機構（８）の変速軸（９）とを中空軸状に形成し、こ
   の中空筒軸内に後部作業機へ動力を伝達する伝動軸（5
   4）を挿通軸架すると共に、両軸（51），（９）間に、
   前記伝動軸（51）から前記変速軸（９）側へスプライン
   上を移動し両軸（51），（９）を直結する前部クラッチ
   （12b）を設け、 一方、前記前部変速機構（７）の従動側変速用歯車を有
   する伝動軸（28）と、この伝動軸（28）の後方で同一軸
   心上に設ける変速軸（40）との間に、前記変速軸（40）
   から前記伝動軸（28）側へスプライン上を移動し両軸
   （40），（28）を直結する後部クラッチ（59）を設け、 更に、該前部変速機構（７）の従動側変速用歯車を有す
   る伝動軸（28）と、前記前部クラッチ（12b）により直
   結可能な後部変速機構（８）の変速軸（９）との間に常
   時噛み合い式ギヤ（25），（44）を設け、 前記前部クラッチ（12b）を直結状態と非直結状態に切
   り換えることによって前記常時噛み合い式ギヤ（25），
   （44）における動力伝達の駆動側と従動側を切り換えて
   利用したことを特徴とするトラクターの変速伝動装置。