JP3284144B2 - 平版印刷版 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、銀錯塩拡散転写法を応
用した平版印刷材料に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】平版印刷版は、油脂性のインキを受理す
る親油性の画線部分と、インキを受理しない撥油性の非
画線部分とからなり、一般に該非画線部は水を受け付け
る親水性部分から構成されている。通常の平版印刷で
は、水とインキの両方を版面に供給し、画線部は着色性
のインキを、非画線部は水を選択的に受け入れ、該画線
上のインキを、例えば紙等の被印刷体に転写させること
によって印刷がなされている。

【０００３】従って、良い印刷物を得るためには、画線
部と非画線部の親油性及び親水性の差が十分に大きく
て、水及びインキを版面に供給した時に、画線部は十分
量のインキを受け付け、非画線部は全くインキを受付け
ないことが必要である。

【０００４】銀錯塩拡散転写法（ＤＴＲ法）を用いた平
版印刷版、特にハロゲン化銀乳剤層の上に物理現像核層
を有する平版印刷版は、例えば、米国特許第３，７２
８，１１４号、同第４，１３４，７６９号、同第４，１
６０，６７０号、同第４，３３６，３２１号、同第４，
５０１，８１１号、同第４，５１０，２２８号、同第
４，６２１，０４１号明細書等に記載されており、露光
されたハロゲン化銀結晶は、ＤＴＲ現像により化学現像
を生起し黒色の銀となり親水性の非画線部を形成し、一
方、未露光のハロゲン化銀結晶は現像液中の銀塩錯化剤
により銀塩錯体となって表面の物理現像核層まで拡散
し、核の存在により物理現像を生起してインキ受容性の
物理現像銀を主体とする画線部を形成する。

【０００５】このように、該平版印刷版ではゼラチン−
ハロゲン化銀乳剤層の上にある物理現像核層上に析出し
た銀像をインキ受容性の画線部として利用するため、一
般の平版印刷版（例えばＰＳ版等）に比して、画線部の
インキ受理性が不充分であったり、物理現像条件（温度
・時間）や処理液条件（疲労度）によりインキ受理性が
大きく左右する欠点を有している。

【０００６】さらに平版印刷版を製造してから製版する
まで長期に亘って保存することによって地汚れが発生し
たり、インキ受容性が劣化したりする欠点がある。

【０００７】さらに、物理現像銀をインキ受理性とする
為に特公昭４８−２９７２３号、同昭５１−１５７６２
号である種の有機メルカプト化合物を含む親油化剤で処
理する事により、物理現像銀のインキ受理性を向上させ
る技術が開示されているが、充分なインキ受理性とは言
えなかった。

【０００８】つまり、顧客において様々なケースがあ
り、上記親油化剤を含む感脂化剤が使われない場合や物
理現像処理条件も様々でさらに置版も考慮する必要があ
り、安定したインキ受理性を得る事は難しかった。

【０００９】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、イン
キ受理性が向上した、銀錯塩拡散転写法を用いた平版印
刷版を提供することである。本発明の別の目的は、様々
な取り扱い条件においても安定したインキ受理性を有
し、印刷諸特性に優れ、特に物理現像核層または／及び
その隣接層に親水化物質を含有させ、保水性を向上した
場合でもインキ乗りの安定した銀錯塩拡散転写法を用い
た平版印刷版を提供することである。

【００１０】

【課題を解決するための手段】本発明の上記目的は、支
持体上に少なくともハレーション防止層及びハロゲン化
銀乳剤層及び物理現像核層を有する平版印刷版におい
て、少なくとも何れかの層に化３または化４の化合物を
含む事により達成された。

【００１１】

【化３】

【００１２】（式中ｌは１〜３の整数であり、ｍは３〜
５の整数である。）

【００１３】

【化４】

【００１４】（式中ｎは１〜３の整数であり、ｒは３〜
７の整数である。）

【００１５】本発明に用いられる化３及び化４の化合物
はｐＫａが３〜４程度であり、中性水溶液中でも解離し
て銀画像に吸着し、インキ受理性を向上させる。末端の
アルキル基（：Ｃｍ Ｈ_2m+1、あるいはＣｒＨ_2r+1）は
直鎖であっても側鎖を有していてもかまわないが、特に
直鎖のものが好ましい。

【００１６】またｌ、ｍ、ｎ、ｒについてはｌ＝１〜
３、ｍ＝３〜５、ｎ＝１〜３、ｒ＝３〜７の間の任意の
数を選ぶことができるが、ｍが６以上あるいはｒが８以
上になると銀画像のインキ受理性を向上させる効果が弱
くなり、水に対する溶解性も悪くなる。ｌとｎについて
はｌ＝１〜３、ｎ＝１〜３の間の任意の数を選ぶことが
できるが、４以上になるとやはりインキ受理性を向上さ
せる効果が弱まる。以下に本発明に用いられる化合物の
代表的な化合物を記載するが、これらに限定されるもの
ではない。

【００１７】化３の化合物例

【００１８】

【化５】

【００１９】

【化６】

【００２０】

【化７】

【００２１】

【化８】

【００２２】

【化９】

【００２３】

【化１０】

【００２４】化４の化合物

【００２５】

【化１１】

【００２６】

【化１２】

【００２７】

【化１３】

【００２８】

【化１４】

【００２９】

【化１５】

【００３０】比較に用いた化合物

【００３１】

【化１６】

【００３２】

【化１７】

【００３３】

【化１８】

【００３４】

【化１９】

【００３５】

【化２０】

【００３６】

【化２１】

【００３７】本発明の化３、化４の化合物の合成は、基
本的には対応するアミノ化合物をイソチオシアネートに
変換した上で、ナトリウムアジドと反応環化させる事に
より、容易に合成できる。以下に合成例を用いて合成法
の詳細を述べる。

【００３８】合成例（化６）の合成 クロロホルム４００mlと水２００ml中に炭酸カルシウム
３４ｇ、Ｎ，Ｎ−ジ−ｎ−ブチルエチレンジアミン２６
ｇを加えておき、ここにチオフォスゲン１９．６ｇを滴
下し、室温で３時間攪拌し、反応させる。クロロホルム
層を分液後、水層をさらにクロロホルムで抽出してクロ
ロホルム層に加える。クロロホルム層から溶媒を減圧留
去し、２−（ジ−ｎ−ブチルアミノ）エチルイソチオシ
アネートを黄褐色オイルとして３０ｇを得た。このイソ
チオシアネートをエタノール３００mlと水２０mlの混合
溶液に溶かし、ナトリウムアジド２７ｇを加えて４時間
加熱還流する。反応液からエタノールを減圧留去し、残
ったオイルを水２５０mlに溶かし、エーテル５０mlにて
３回洗浄する。水溶液に１Ｎ塩酸を加えてｐＨ＝７〜８
として、析出したオイルをクロロホルム５０mlで３回抽
出し、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥した。硫酸ナト
リウムを濾別した後、クロオホルムを減圧留去し、残っ
たオイルをシリカゲルカラムクロマログラフィー（クロ
ロホルム：メタノール＝１０：１）で分解し、１−［２
−（ジ−ｎ−ブチルアミノ）エチル］−５−メルカプト
−テトラゾール ８．５ｇを黄色オイルとして得た。

【００３９】¹Ｈ−ＮＭＲ（ＣＤＣｌ₃ ）：δ（ppm） ４．７５（２Ｈ，ｔ，ＣＨ₂ ）３．７９（２Ｈ，ｔ，Ｃ
Ｈ₂ ） ３．３１（４Ｈ，ｍ，ＣＨ₂ ）１．７７（４Ｈ，ｍ，Ｃ
Ｈ₂ ） １．３９（４Ｈ，ｍ，ＣＨ₂ ） ０．９４（６Ｈ，ｔ，ＣＨ₃ ）

【００４０】¹³Ｃ−ＮＭＲ（ＣＤＣｌ）：δ（ppm），
１６７．６（Ｃ−テトラゾール） ５３．０（ＣＨ₂ ），５０．２（ＣＨ₂ ），４０．７
（ＣＨ₂ ） ２５．５（ＣＨ₂ ），１９．９（ＣＨ₂ ），１３．４
（ＣＨ₃ ）

【００４１】合成例２（化１２）の合成 クロロホルム２００mlと水１００ml中に炭酸カルシウム
１９ｇ、２−（ｎ−ヘキシルチオ）エチルアミン１５ｇ
を加えておき、ここにチオフォスゲン１０．８ｇを滴下
し、室温で３時間攪拌し、反応させた。クロロホルム層
を分液後、さらに水層を抽出し、クロロホルムを減圧留
去し、２−（ｎ−ヘキシルチオ）エチルイソチオシアネ
ート１８．３ｇを黄褐色オイルとして得た。また、２−
（ｎ−ヘキシルチオ）エチルアミンは、２−アミノエタ
ンチオールを、ｎ−ヘキシルブロミドでＳ−アルキル化
する事によって合成した。２−（ｎ−ヘキシルチオ）エ
チルイソチオシアネートをエタノール１５０mlと水２０
mlの混合溶液に溶かし、ナトリウムアジド１７ｇを加え
て４時間加熱還流した。反応液からエタノールを減圧留
去し、残ったオイルを水２５０mlに溶かし、エーテル３
０mlにて５回洗浄する。水溶液に６Ｎ塩酸を加えてｐＨ
＝１〜２として、析出したオイルをクロロホルム３０ml
で５回抽出し、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥する。
硫酸ナトリウムを濾別した後、クロロホルムを減圧留去
し、残ったオイルをシリカゲルカラムクロマログラフィ
ー（クロロホルム：メタノール＝１０：１）で展開、精
製し、１−［２−（ｎ−ヘキシルチオ）エチル−５−メ
ルカプトーテトラゾール１０ｇを褐色オイルとして得
た。

【００４２】¹Ｈ−ＮＭＲ（ＣＤＣｌ₃ ）：δ（ppm）１
４．２（１Ｈ，br．s，−ＳＨ） ４．９９（２Ｈ，ｔ，ＣＨ₂ ）３．０４（２Ｈ，ｔ，Ｃ
Ｈ₂ ） ２．６０（２Ｈ，ｔ，ＣＨ₂ ）１．６１（２Ｈ，ｍ，Ｃ
Ｈ₂ ） １．３８（２Ｈ，ｍ，ＣＨ₂ ）１．３０（４Ｈ，ｍ，Ｃ
Ｈ₂ ） ０．８９（３Ｈ，ｔ，ＣＨ₃ ）

【００４３】本発明の化合物は、ハレーション防止層及
びハロゲン化銀乳剤層及び物理現像核層の少なくとも何
れかの層に含有せしめるもので、本発明の化合物は水に
対する溶解性が高く、アルコール等の有機溶剤で溶解せ
ず各層に含有させる事もできるが、必要に応じて有機溶
剤も使える。

【００４４】本発明の化合物は上記各層の何れかに含有
させる事でインキ受理性を高める事ができるが、より好
ましくはハレーション防止層に含有させる方が有効であ
り、写真保存性への影響も少ない。

【００４５】本発明の化合物の使用量は０．０１〜１mm
ol／ｍ² が、好ましくは０．０３〜０．２mmol／ｍ² が
より好ましい。

【００４６】本発明の対象たる平版印刷版はゼラチンを
含有しており、その含有量は下塗り層であり、乳剤層で
あり、また物理現像核層でもありうる。これらのゼラチ
ン含有量は、ゼラチン硬膜剤で硬化することができる。
ゼラチン硬膜剤としては、例えばクロム明ばんのような
無機化合物、ホルマリン、グリオキザール、マレアルデ
ヒド、グルタルアルデヒドのようなアルデヒド類、尿素
やエチレン尿素等のＮ−メチロール化合物、ムコクロル
酸、２，３ージヒドロキシー１，４ージオキサンの様な
アルデヒド類、２，４ージクロロー６ーヒドロキシーＳ
−トリアジン塩や、２，４ージヒドロキシー６ークロロ
ートリアジン塩のような活性ハロゲンを有する化合物、
ジビニルスルホン、ジビニルケトンやＮ、Ｎ、Ｎ−トリ
アクロイルヘキサヒドロトリアジン、活性な三員環であ
るエチレンイミノ基やエポキシ基を分子中に二個以上有
する化合物類、高分子硬膜剤としてのジアルデヒド澱粉
等の種々の化合物の一種もしくは二種以上をもちいるこ
とができる。

【００４７】硬膜剤はすべての層に添加することも出
来、幾つか又は一層にのみ添加することも可能である。
勿論、拡散性の硬膜剤は二層同時塗布の場合、何れか一
層にのみ添加することが可能である。添加方法は乳剤製
造時に添加したり、塗布時にインラインで添加すること
もできる。

【００４８】本発明のゼラチン含有層におけるゼラチン
は、その一部を、水溶性ゼラチン、澱粉、デキストリ
ン、アルブミン、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシエ
チルセルロース、アラビアゴム、ポリビニルアルコー
ル、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロー
ス、ポリアクリルアミド、スチレン−無水マレイン酸共
重合体、ポリビニルメチルエーテル−無水マレイン酸共
重合体等の親水性高分子の一種又は二種以上で置換する
ことも出来る。さらにビニル重合体水性分散物（ラテッ
クス）をゼラチン層に添加することも出来る。

【００４９】下塗り層の高分子結合剤は、一般に０．５
〜１０ｇ／ｍ² より好ましくは１〜６ｇ／ｍ² である。
下塗り層にはハレーション防止の目的でカーボンブラッ
ク等の顔料、染料等を含み得るし、また耐刷力向上のた
めに平均粒径２〜１０ミクロンの固形粉末（例えばシリ
カ粒子）を含み得る。さらに現像主薬等の写真用添加物
も含むことが出来る。また下塗り層は特開昭４８−５５
０３号、同昭４８−１００２０３号、同昭４９−１６５
０７号公報に記載のようなものであってもよい。

【００５０】ハロゲン化銀乳剤層は、例えば、塩化銀、
臭化銀、塩臭化銀、及びこれらにヨウ化銀を含むものか
らなる。ハロゲン化銀結晶は、ロジウム塩、イリジウム
塩、パラジウム塩、ルテニウム塩、ニッケル塩、白金塩
等の重金属塩を含んでいてもよく、添加量はハロゲン化
銀１モル当り１０^ー8〜１０^ー3モルである。ハロゲン化銀
の結晶形態に特に制限はなく、立方体ないし１４面体粒
子、さらにはコアシェル型、平板状粒子でもよい。ハロ
ゲン化銀結晶は、単分散、多分散結晶であってもよく、
その平均粒径は０．２〜０．８μｍの範囲である。好ま
しい例の一つとしては、ロジウム塩もしくはイリジウム
塩を含む、塩化銀が８０モル％以上の単分散もしくは多
分散結晶がある。

【００５１】ハロゲン化銀乳剤は、それが製造される時
又は塗布される時に種々な方法で増感することが出来
る。例えば、チオ硫酸ナトリウム、アルキルチオ尿素に
よって、又は金化合物、たとえばロダン金、塩化金によ
って、又はこれらの両者の併用など当該技術分野におい
て良く知られた方法で化学的に増感することが好まし
い。ハロゲン化銀乳剤は又、例えばシアニン、メロシア
ニン等の色素によってポジティブにもネガティブにも増
感又は減感され得る。その増感又は減感され得る波長域
に特に制限はない。従って、オルソ増感、パンクロ増
感、ヘリウム−ネオンレーザー用増感、アルゴンレーザ
ー用増感、ＬＥＤ用増感、半導体レーザー用増感もなし
得るし、明室用にＵＶ増感、可視光減感もなし得る。

【００５２】乳剤層の上部に存在する表面層には物理現
像核を含む。物理現像核としては銀、アンチモン、ビス
マス、カドミウム、コバルト、鉛、ニッケル、パラジウ
ム、ロジウム、金、白金等の金属コロイド微粒子や、こ
れらの金属の硫化物、多硫化物、セレン化物、又はそれ
らの混合物、混晶であっても良い。物理現像核には、親
水性バインダーを含んでいてもいなくても良いが、ゼラ
チン、澱粉、ジアルデヒド澱粉、カルボキシメチルセル
ロース、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、ヒドロ
キシエチルセルロース、ポリスチレンスルホン酸、ビニ
ルイミダゾールとアクリルアミドの共重合体、ポリビニ
ルアルコール等の親水性高分子又はそのオリゴマーを含
むことが出来、その含有量は０．５ｇ／ｍ² 以下である
ことが好ましい。さらに物理現像核層には、ハイドロキ
ノン、メチルハイドロキノン、カテコール等の現像主薬
や、ホルマリン、ジクロロ−ｓ−トリアジン等の公知の
硬膜剤を含んでいてもよい。

【００５３】下塗り層、ハロゲン化銀乳剤層、物理現像
核層等の各塗布層には、塗布助剤として、陰イオン、陽
イオンもしくは中性界面活性剤のいくつかを含んでいて
もよいし、カブリ防止剤、マット剤、増粘剤、帯電防止
剤等を含むことが出来る。

【００５４】本発明の平版印刷版の支持体としては、
紙、又は合成もしくは半合成高分子フィルム、アルミニ
ウム、鉄等の金属板等で平版印刷に耐えるものであれば
使用することが出来る。支持体の表面を一層又はそれ以
上の高分子フィルム、又は金属薄膜で、片面もしくは両
面を被覆することも出来る。これらの支持体の表面を塗
布層との接着を良くする為に表面処理することも可能で
ある。

【００５５】特に好ましく用いられる支持体は、両面も
しくは片面をポリオレフィン重合体で被覆した紙、ポリ
エステルフィルム、表面を親水化処理したポリエステル
フィルム、表面処理を行ったアルミニウム板等である。
これらの支持体にはハレーション防止のための顔料や表
面物性改良の為に固形微粒子を含んでいてもよい。又支
持体は裏面露光が可能なように光透過性であっても良
い。

【００５６】本発明で使用する現像処理液には、アルカ
リ性物質、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、
水酸化リチウム、第三リン酸ナトリウム等、保恒剤とし
ての亜硫酸塩、ハロゲン化銀溶剤、例えばチオ硫酸塩、
チオシアン酸塩、環状イミド、２−メルカプト安息香
酸、アミン等、粘稠剤、例えばヒドロキシエチルセルロ
ース、カルボキシメチルセルロース等、カブリ防止剤、
例えば臭化カリウム、特開昭４７−２６２０１号公報に
記載の化合物等、現像剤、例えばハイドロキノン類、カ
テコール、１−フェニル−３−ピラゾリドン等、現像変
性剤、例えばポリオキシアルキレン化合物、オニウム化
合物等を含むことが出来る。さらに現像処理液には、米
国特許第３，７７６，７２８号に記載の如き表面銀層の
インキ乗りを良くする化合物等を使用することが出来
る。

【００５７】本発明の平版印刷版の現像後の表面銀層
は、任意の公知の表面処理剤でインキ受容性に変換ない
しは受容性を増強せしめ得る。このような処理液として
は、例えば特公昭４８−２９７２３号、米国特許第３，
７２１，５５９号等に記載されている。印刷方法、ある
いは使用する不感脂化液、給湿液等は普通に良く知られ
た方法によることが出来る。

【００５８】

【実施例】以下に本発明を実施例により説明するが勿論
本発明はこれだけに限定されるものではない。

【００５９】実施例１ １３５ｇ／ｍ² 両面ポリエチレン被覆紙の片面に平均粒
子サイズ５μのシリカ粒子を含有するマット化層を設
け、反対側の面をコロナ放電加工後、カーボンブラッ
ク、及び平均粒径７μのシリカ粉末を含む下塗り層（ゼ
ラチン３．５ｇ／ｍ² ）と、その上に１−フェニル−３
−ピラゾリドン０．１ｇ／ｍ² を有するオルソ増感され
た高感度塩化銀乳剤（ゼラチン０．８ｇ／ｍ² 含む）を
硝酸銀として１．０ｇ／ｍ² になるように、二層同時塗
布を行った。

【００６０】硬膜剤としては、２，４−ジクロロ−６−
ヒドロキシ−ｓ−トリアジンナトリウムを下塗り層に１
７０ｍｇ／ｍ² 含有し、乳剤層にはＮ−メチロールエチ
レン尿素を８０ｍｇ／ｍ² 含有させた。乾燥後、特開昭
５８−２１６０２の実施例２に記載の核塗布液（ポリマ
ーとしてはNo.3のアクリルアミドとイミダゾールとの共
重合体を含み現像主薬としてハイドロキノンを０．８ｇ
／ｍ² の割合で含む）を塗布、乾燥し本発明の比較例Ｒ
となる平版印刷版を作成した。

【００６１】本発明の実施例となる平版印刷版は上記平
版印刷版（比較例Ｒ）に於いてハレーション防止層（下
塗層）にそれぞれ化５〜化２１の本発明の化合物及び比
較の化合物をそれぞれ０．０５mmol／ｍ² 含有させて本
発明及び比較の平版印刷版Ａ〜Ｑを作成し、表１にまと
めた。

【００６２】これら１８種の平版印刷版を製造直後およ
び５０℃３日間保存した後、それぞれ像反転機構を有す
る製版用カメラで像露光を行い、銀錯塩拡散転写現像液
により３０℃で１分間現像処理を行った。

【００６３】

【表１】

【００６４】＜転写現像液＞ 水 ７００ｍｌ 水酸化カリウム ２０ｇ 無水亜硫酸ナトリウム ５０ｇ ２−メルカプト安息香酸 １．５ｇ ２−メチルアミノエタノール １５ｇ 水を加えて１リットルとする。 現像処理後、該原版を２本の絞りローラー間に通し、余
分の現像液を除去し、直ちに下記組成を有する中和液で
２５℃２０秒間処理し、絞りローラーで余分の液を除去
し室温で乾燥した。

【００６５】＜中和液＞ 水 ６００ｍｌ クエン酸 １０ｇ クエン酸ナトリウム ３５ｇ コロイダルシリカ（２０％液） ５ｍｌ エチレングリコール ５ｍｌ 水を加えて１リットルとする。 以上の操作により作成した平版印刷版をオフセット印刷
機に装着し、下記の不感脂化液を版面にくまなく与え、
下記給湿液を用いて印刷を行った。

【００６６】 ＜不感脂化液＞ 水 ６００ｍｌ イソプロピルアルコール ４００ｍｌ エチレングリコール ５０ｇ ３−メルカプト−４−アセトアミド−５−ｎ−ヘプチル−１，２，４−トリ アゾール １ｇ

【００６７】＜給湿液＞ ｏ−リン酸 １０ｇ 硝酸ニッケル ５ｇ 亜硝酸ナトリウム ５ｇ エチレングリコール １００ｇ コロイダルシリカ（２０％液） ２８ｇ 水を加えて２リットルとする。

【００６８】印刷機は、リョービ３２００ＣＤ（リョー
ビＫ．Ｋ社製オフセット印刷機の商標）を使用し、非画
像部の地汚れ及び銀画像部の欠落による画像飛びが生じ
て印刷に供せなくなった時の印刷枚数で、耐刷力を次の
評価基準により判定した。 ○ １０，０００〜２０，０００枚 △ ５，０００〜１０，０００枚 × ２，０００〜 ５，０００枚 印刷結果を表２に示す。

【００６９】一方、非画像部の保水性（地汚れ）を見る
ために、インキとして大日本インキ製Ｆグロス紫６８Ｎ
を使用し、給湿液としてＥｕ−３，１％液（ＰＳ版用湿
し水／エッチ液 富士フィルム製）を使い印刷機はリョ
ービ３２００ＣＤを使用し、地汚れが発生し印刷に供せ
なくなた時の印刷枚数で、次の評価基準により判定し
た。 ◎ ５０００枚以上 ○ １０００〜５０００枚 △ ３００〜１０００枚 × １〜３００枚 印刷結果を表２に示す。

【００７０】上記、耐刷力の評価で、インキ乗りのテス
トも同時に行った。インキ乗りはムラなく、インキ盛り
も問題ない状態になるまでの印刷枚数でそれぞれ表２に
評価した。この時版面へのインキ供給２回転、ブランケ
ットゴムへのタッチ２回転後、印刷用紙を供給し、印刷
を開始した。

【００７１】

【表２】

【００７２】上記の結果から、本発明の化３及び化４の
化合物は印刷諸特性に優れ、特にインキ乗りに優れてい
ることが確認された。

【００７３】実施例２ 物理現像核層に特開平４−２７７７４７号で実施したプ
ルラン１０を５ｍｇ／ｍ² 含有させる事以外は実施例１
と同じ方法でサンプルＡ′〜Ｒ′を準備し、テスト評価
した結果を表３に示す。

【００７４】

【表３】

【００７５】上記の結果から本発明化３及び化４の化合
物は保水性に優れ、インキ乗りに優れている事が確認さ
れた。

【００７６】

【発明の効果】本発明によれば、銀錯塩拡散転写法を応
用した平版印刷版のインキ乗りを良くし、さらには物理
現像核層または／及びその隣接する層に親水化物質を含
有させ保水性を向上した場合においてもインキ乗りが問
題とならない。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) G03F 7/07

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 支持体上に少なくともハレーション防止
   層及びハロゲン化銀乳剤層及び物理現像核層を有する銀
   錯塩拡散転写法を応用した平版印刷材料に於て、少なく
   とも何れかの層に化１または化２の化合物を含む事を特
   徴とするポジ型平版印刷材料。 【化１】 （式中ｌは１〜３の整数であり、ｍは３〜５の整数であ
   る。） 【化２】 （式中ｎは１〜３の整数であり、ｒは３〜７の整数であ
   る。）