JP3273561B2 - 分散スピーカ利用の音像定位拡声方法及び拡声システム - Google Patents

分散スピーカ利用の音像定位拡声方法及び拡声システム

Info

Publication number
JP3273561B2
JP3273561B2 JP29171799A JP29171799A JP3273561B2 JP 3273561 B2 JP3273561 B2 JP 3273561B2 JP 29171799 A JP29171799 A JP 29171799A JP 29171799 A JP29171799 A JP 29171799A JP 3273561 B2 JP3273561 B2 JP 3273561B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
sound
speaker
loudspeaker
pressure level
peripheral
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP29171799A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2001112083A (ja
Inventor
雄二 是永
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kajima Corp
Original Assignee
Kajima Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kajima Corp filed Critical Kajima Corp
Priority to JP29171799A priority Critical patent/JP3273561B2/ja
Publication of JP2001112083A publication Critical patent/JP2001112083A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3273561B2 publication Critical patent/JP3273561B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Obtaining Desirable Characteristics In Audible-Bandwidth Transducers (AREA)
  • Stereophonic System (AREA)
  • Circuit For Audible Band Transducer (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術の分野】本発明は分散スピーカ利用
の音像定位拡声方法及び拡声システムに関し、とくに講
演、式典、会議その他の集会に利用される空間におい
て、音声や演奏音等を拡声する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】図16(A)は従来の拡声方式の一例で
ある集中拡声方式を示し、同図(B)は他の例である分
散配置拡声方式を示す。集中拡声方式では、話者または
演奏者など音源Oの近傍にマイクロホンを設置し、発声
などにより生じる音圧変化をマイクアンプおよびパワー
アンプなどにより増幅し、単数または複数のスピーカS
で拡声することにより音源Oからの音を聴者2へ伝達す
る。スピーカSは通常、舞台の両側に配置される。また
分散配置拡声方式では、天井等に一定間隔で配置された
複数のスピーカS0〜S4から音源Oの音を同時に拡声す
る。図17(A)及び(B)は、集中拡声方式及び分散
拡声方式における、各スピーカからの拡声音が受音点に
到達する時刻(以下、拡声音到達時刻という。)と受音
点に到達した拡声音の音圧レベル(以下、拡声音到達音
圧レベルという。)との関係の一例を示す。
【0003】しかし、従来の集中拡声方式及び分散配置
拡声方式には、以下のような問題点がある。
【0004】(1)見る方向と聞こえる方向とが違う。 スピーカが舞台両側にある集中拡声方式では、視野の中
央にくる話者Oに対し、座席位置が舞台中央の対称軸よ
り右側のときは右側のスピーカから話者Oの音声が聞こ
え、対称軸より左側のときは左側のスピーカから話者O
の声が聞こえる状態となる。また分散配置拡声方式で
は、舞台上の話者Oの音声が頭上の天井スピーカから聞
こえる状態となる。何れの方式も、聴者2にとっては話
者Oの認知方向が視覚と聴覚で異なるという間題があ
る。
【0005】(2)音がボケて聞こえる。 分散配置拡声方式では、図17(B)に示すように複数
のスピーカS0〜S4から受音点に到達する音に方向および
時間のズレが生じており、各スピーカS0〜S4からの音波
の干渉により受音点において周波数特性に多くの山谷が
生じる。その結果、受音点において音源の音がボケて不
明瞭になる。
【0006】(3)音の大きさが不自然となる。 集中拡散方式では、スピーカSを舞台中央付近に置くこ
とで、視覚と聴覚の方向の不一致の解消が可能となる。
しかし、舞台に近い場所と遠い場所とでは音の強さが大
きく異なり、近くはうるさく、遠くでは聞こえないとい
う問題が生じる。一方、分散スピーカをすべて同じ音量
で拡声すると均一な音場がえられるものの、話者の見え
方と音の大きさが不自然であると聴者に感じさせる問題
がある。話者から離れた位置でも接近した位置と変わら
ない音量で聞こえると、日常の経験すなわち話者から離
れると声は小さくなるという経験と著しく異なるため、
音を不自然に感じてしまう。この不自然さは、話者から
話しかけられている感じ(対話性)を損ない、話に集中
できない、言いたいことが伝わらないなどの結果を生む
とされている。
【0007】上述した問題点を解決する拡声方法とし
て、図16(C)に示すように、音源Oの近傍に主音源
スピーカ(メインスピーカ)S0を配置し、音源から離れ
た場所の天井に分散スピーカS1〜S3を配置する半分散拡
声方式がある。この方式では、分散スピーカに近い受音
点でも話者方向から音がくるような感じ(話者方向と一
致する方向の音像定位)を得るため、メインスピーカの
発音時刻に対し分散スピーカの発音時刻を遅らせるよう
に制御している。半分散拡声方式による各スピーカS0〜
S3からの拡声音の受音点における到達時刻と到達音圧レ
ベルとの関係の一例を図17(C)に示す。
【0008】音像定位の方向は先行音効果と呼ばれるヒ
トの聴覚知覚に基づく。先行音効果とは、例えば図8
(B)に示すように、受音点においてスピーカAの方向
からの音(先行音)を聞くと、別の方向のスピーカBか
ら一定範囲の時間遅れと一定範囲の音圧レベル差を伴っ
て到達する別の音(補強音)をスピーカAの方向(先行
音の方向)に定位してしまう音響心理効果である。図8
(A)は、受音点において先行音効果が得られる先行音
と補強音との間の到達時刻差(遅延時間、Tb−Ta=補強
音の受音点到達時刻−先行音の受音点到達時刻)と到達
音圧レベル差(Lb−La=補強音の受音点到達音圧レベル
−先行音の受音点到達音圧レベル)との関係を示す。図
中の斜線で示す範囲が先行音効果の得られる範囲、すな
わち音像定位領域である。なお先行音効果はハース効果
又は第一波面の法則と呼ばれることがある。
【0009】半分散拡声方式では、図17(C)に示す
ように、メインスピーカS0からの音を受音点の聴者2に
最初に到達するように制御する。また分散スピーカS1〜
S3からの補強音(以下、後続音ということがある。)
は、受音点の聴者2にメインスピーカS0からの先行音よ
り10ms程度の時間遅れと図8(A)に示す一定範囲の音
圧レベル差を伴って到達するように制御する。このよう
に各スピーカS0、S1〜S3からの拡声音の到達時刻と到達
音圧レベルを制御することにより、受音点においてメイ
ンスピーカ方向の音像を定位することが可能となる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の半分散
拡声方式では、メインスピーカS0と分散スピーカS1〜S3
の音色の相違により、音場内の全ての受音点で音像定位
を得ることが難しい問題点がある。先行音効果を得るた
めには、先行音と後続音との音色、すなわち周波数特性
が近いことが必要である。とくに中音域(250Hz〜1kH
z)で先行音と後続音との周波数特性に差がないことが
必要である。半分散拡声方式では、メインスピーカS0と
分散スピーカS1〜S3とはその役割の相違から異なる性能
とせざるを得ないので、音場内の全ての受音点において
両スピーカからの拡声音を同じ周波数特性で伝えること
が難しく、先行音効果を得られない受音点の発生が避け
られない。
【0011】また半分散拡声方式では、音源の位置の変
化に対応できない問題点がある。音像定位を得るために
は、聴者から見た話者(音源)の方向と先行音スピーカ
の方向とのずれが一定の許容範囲内にある必要がある。
図7を参照するに、話者(音源)と聴者(受音点)とが
XY平面(水平面)上のY軸上に原点を挟んで反対側(正
側と負側)にあり、先行音スピーカがXZ平面上にあると
仮定した場合、聴者から見て話者方向(Y軸方向)に対
しX軸方向に±10度、Z軸(垂直)方向に±45度の範囲
(同図の斜線で示す範囲)が先行音スピーカの配置許容
範囲とされる。半分散拡声方式で話者の位置が変化する
場合、たとえば舞台位置が変化する場合には、話者の位
置に合わせてメインスピーカS0を図7の配置許容範囲内
に移動せねばならないが、現実にはメインスピーカS0の
移動は困難である。また客席の不特定な位置に質問者等
が現れた場合にも、その質問者に音像を定位させること
も不可能である。このため、大きな講演会場等において
質問者の位置が分からない等の問題が発生している。音
源の位置の変化や質問者の出現に応じて音像定位の方向
が変化する拡声方法の開発が望まれている。
【0012】さらに半分散拡声方式では、聴者2の両耳
に対するメインスピーカS0からの伝送特性と分散スピー
カS1〜S3からの伝送特性との差が許容範囲から外れる問
題点もある。先行音効果を得るためには、先行音スピー
カと後続音スピーカとの聴者2の両耳に対する伝送特性
が似ていることを必要とする。すなわち、受音点から見
た先行音スピーカの方向と後続音スピーカの方向とが所
定の許容範囲内になければならない。先行音スピーカは
図7の斜線で示す領域範囲、すなわち受音点から見て音
源方向に対し水平方向に±10度、垂直方向に±45度の範
囲内にあることが必要であるのに対し、後続音スピーカ
は受音点の真上(垂直)方向を中心軸線として頂角90度
の円錐内にあることが望ましい。半分散拡声方式では、
聴者の両耳に対する伝送特性が許容範囲内となるように
メインスピーカS0と分散スピーカS1〜S3を配置すること
が難しく、先行音効果を得られない受音点が発生する場
合がある。
【0013】そこで本発明の目的は、音像定位の方向を
音源の方向に合わせて変化させ得る分散スピーカ利用の
音像定位拡声方法及び拡声システムを提供するにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】図1の実施例を参照する
に、本発明の分散スピーカ利用の音像定位拡声方法は、
受音面Ph上方の所定位置に音源Oの音の拡声に使う実質
上同一音響特性の複数のスピーカSj(1≦j≦n)を隣
接スピーカのカバーエリアを一部重畳させて下向きに分
散配置し;各スピーカSjの垂直下方の前記受音面Ph上の
部位をそれぞれ受音点Pi(1≦i≦n)とし;各スピー
カSjのうち音源Oに最も近いスピーカを主スピーカSoと
して選び且つ残余のスピーカを主スピーカSoからの距離
の昇順に順位付けされた周辺スピーカSgx(x=1、
2、……、(n−1))とし;主スピーカSoから音源O
の音の拡声音を時間遅延なしの時刻零に所要入力パワー
で発音し;周辺スピーカSgxの各々について前記順位の
昇順に、当該周辺スピーカSgx(例えばSg15)下方の受
音点Pgx(例えばPg15)で当該周辺スピーカSgxからの拡
声音到達時刻Txxが主スピーカSoからの拡声音到達時刻T
oxに対し先行音効果を与える遅延時間Δtxだけ遅れる
(Txx=Tox+Δtx)如き当該周辺スピーカSgx(例えばS
g15)の発音時刻を算出し、当該受音点Pgx(例えばP
g15)に当該周辺スピーカSgx(例えばSg15)からの拡声
音到達時刻Txxより先行して到達する下位順位の周辺ス
ピーカSgk(k=1、2、……、(x−1))及び主ス
ピーカSoからの拡声音のそれぞれの到達音圧レベルの総
和を各スピーカSgk及びSoから当該受音点Pgxまでの距離
と各スピーカSgk及びSoの入力パワー及び音響特性との
関数として求め、且つ当該受音点Pgx(例えばPg15)に
おける当該周辺スピーカSgx(例えばSg15)からの拡声
音到達音圧レベルLxxを前記求めた総和に対し先行音効
果を与える音圧レベル差ΔLxだけ高くなる如きものとし
て定め、定めた到達音圧レベルLxxに対応する当該周辺
スピーカSgx(例えばSg15)の入力パワーを算出し;周
辺スピーカSgxの各々から音源Oの音の拡声音を前記算
出した発音時刻に前記算出した入力パワーで発音するこ
とにより、各受音点Piにおける音像の定位方向を音源O
ヘ向かう方向としてなるものである。
【0015】好ましくは、各受音点Piにおける聴取音圧
レベルの上限となる所定目標音圧レベルLhcを設け、各
周辺スピーカSgx(例えばSg15)下方の受音点Pgx(例え
ばPg1 5)における聴取音圧レベルを当該周辺スピーカSg
xからの拡声音到達音圧レベルLxxと前記先行して到達す
る下位順位の周辺スピーカSgk(k=1、2、……、
(x−1))及び主スピーカSoからの拡声音到達音圧レ
ベルの総和との総計として求め、前記総計が目標音圧レ
ベルLhcを超えるときに各周辺スピーカPgx(例えばS
g15)の拡声音到達音圧レベルLxxを先行音効果が得られ
る範囲内において前記総計が目標音圧レベルLhcと一致
する如く抑制する。
【0016】更に好ましくは、図5に示すように、所定
目標音圧レベルLhcを音源Oからの距離に応じてレベル
が低減し且つ距離に対する低減の傾きが自由音場におけ
る減衰の傾きよりも小さい傾斜型目標音圧レベルLhcと
し、受音面Ph上の各受音点Piにおける聴取音圧レベルを
音源Oからの距離に応じてなだらかに低減させる。
【0017】また図1の実施例を参照するに、本発明の
分散スピーカ利用の音像定位拡声システムは、受音面Ph
上方の所定位置に隣接スピーカのカバーエリアを一部重
畳させて下向きに分散配置した実質上同一音響特性の拡
声用スピーカSj(1≦j≦n);音源Oからの音響信号
を前記各スピーカSjへ伝送する信号伝送装置10;信号伝
送装置10と各スピーカSjとの間に設けられ且つ指示入力
に応じてスピーカSj毎に音響信号の発音時刻と入力パワ
ーとを調整して各スピーカSjへ出力する信号調整装置2
0;各スピーカSjのうち音源Oに最も近いスピーカを主
スピーカSoとして選択するスピーカ選択手段31;主スピ
ーカSo以外のスピーカSjを周辺スピーカSgx(x=1、
2、……、(n−1))として主スピーカSoからの距離
の昇順に順位付けするスピーカ順位付け手段32;主スピ
ーカSoの発音時刻及び入力パワーを指示する主スピーカ
音指示手段33;並びに各スピーカSjの垂直下方の受音面
Ph上に受音点Pi(1≦i≦n)を定め、周辺スピーカSg
xの各々について前記順位の昇順に、当該周辺スピーカS
gx(例えばSg15)下方の受音点Pgx(例えばPg15)で当
該周辺スピーカSgxからの拡声音到達時刻Txxが主スピー
カSoからの拡声音到達時刻Toxに対し先行音効果を与え
る遅延時間Δtxだけ遅れる(Txx=Tox+Δtx)如き当該
周辺スピーカSgx(例えばSg15)の発音時刻を算出し、
当該受音点Pgx(例えばPg15)に当該周辺スピーカSgx
(例えばSg15)からの拡声音到達時刻Txxより先行して
到達する下位順位の周辺スピーカSgk(k=1、2、…
…、(x−1))及び主スピーカSoからの拡声音到達音
圧レベルの総和を各スピーカSgk及びSoから当該受音点P
gxまでの距離と各スピーカSgk及びSoの入力パワー及び
音響特性との関数として求め、且つ当該受音点Pgx(例
えばPg15)における当該周辺スピーカSgx(例えばS
g15)からの拡声音到達音圧レベルLxxを前記求めた総和
に対し先行音効果を与える音圧レベル差ΔLxだけ高くな
る如きものとして定め、定めた到達音圧レベルLxxに対
応する当該周辺スピーカSgx(例えばSg15)の入力パワ
ーを算出し、算出した発音時刻及び入力パワーを指示す
る周辺スピーカ音指示手段34を備え、主スピーカ音指示
手段33及び周辺スピーカ音指示手段34による発音時刻及
び入力パワーの指示を信号調整装置20へ入力することに
より各受音点Piにおける音像の定位方向を音源Oヘ向か
う方向としてなるものである。
【0018】
【発明の実施の形態】図1の実施例は、受音面Phの上方
に25個のスピーカSj(1≦j≦25)を下向きに分散配置
した実施例を示す。受音面Phは、例えば床面6上の聴者
2の耳の高さ位置hに想定した仮想面である。同図は床
面6と平行な水平受音面Phを示すが、本発明が対象とす
る受音面Phは水平面に限定されない。スピーカSjは、受
音面Phから一定高さの上方に、相互の間隔が一定となる
ように下向きに配置することが後述する信号調整の制御
の観点からは望ましい。
【0019】ただし、本発明のスピーカSjの分散配置
は、必ずしも一定の高さ及び間隔での分散配置に限定さ
れない。例えば、天井に段差がある場合は受音面Phから
各スピーカSjまでの高さが一定ではなくなるが、各スピ
ーカSjの入力パワーを前記高さの相違に応じて変化させ
ることにより受音面Ph上における拡声音の音圧の相違を
補償することができる。また後述するように隣接するス
ピーカSjのカバーエリアの重畳が例えば20%程度以上得
られるのであれば、各スピーカSjの間隔も一定である必
要はない。
【0020】図1では実質的に同一音響特性を有する複
数のスピーカSjを用い、受音面Phにおいて隣接するスピ
ーカのカバーエリアの一部分、例えば20%程度が重畳す
る高さHに配置している。半分散拡声方式のように分散
スピーカと異なるメインスピーカを用いるのではなく、
例えば音圧周波数特性や指向係数等の音響特性が実質的
に同一のスピーカSjを用いることにより、各スピーカSj
からの音色を揃え、受音面Ph上において音色の違いによ
る先行音効果の阻害を避けることができる。また、例え
ば1kHzを中心とする1オクターブバンド、好ましくは5
00Hz〜2kHzのバンドのカバーエリアを一部分重畳させ
ることにより、受音面Ph上にそのバンドの音の到達しな
い領域が発生するのを避け、受音面Ph上のあらゆる位置
で先行音効果を得ることを可能とする。
【0021】一般的に、スピーカSjの特性A0(f)は、周
波数f(Hz)における1(watt)信号入力時のスピーカ
正面軸(水平指向方向0°、垂直指向方向0°)上の1m
の点における自乗音圧P2(単位はPa(パスカル)の自
乗、即ちPa2)として定義される。また音圧レベルL
は、下記(1)式で示すように、20μPaの音圧P0(Pa)を
基準とする自乗音圧P2として定義される。以下の説明に
おいて、20μPaの音圧P0を基準とする自乗音圧P2(P2
P0 2)を自乗音圧Iと表す。
【0022】スピーカの音圧周波数特性は、1(watt)
信号入力時のスピーカ正面軸1mの点での音圧レベルL
の周波数特性として定義される。また、水平指向方向
φ、垂直指向方向θにおける音圧をA(f、θ、φ)と表
し、A0(f)をA(f、0、0)と表せば、指向係数D(f、
θ、φ)は下記(2)式のように定義される。スピーカに対
し水平指向方向φ、垂直指向方向θの方向に距離R
(m)だけ離れた受音点に到達する拡声音の自乗音圧I
及び音圧レベルLは、下記(3)式及び(4)式に示すよう
に、スピーカSから受音点までの距離R(m)と、スピ
ーカの指向係数D(f、θ、φ)と、スピーカの音圧周
波数特性A(f)と、入力パワーW(watt)との関数と
して表される。
【0023】
【数1】 音圧レベルL=10log(P2/P0 2)(dB)=10logI(dB) ……………………(1) 指向係数D(f、θ、φ)=A(f、θ、φ)/A(f、0、0)…………………………(2) 受音点Pの自乗音圧I=W・D(f、θ、φ)・A(f)/R2(dB) …………………(3) 受音点Pの音圧レベルL=10・log{W・D(f、θ、φ)・A(f)/R2}(dB) …(4)
【0024】図1では、音圧周波数特性、指向係数等の
音響特性が同一のスピーカSjのみを使用している。図9
(B)のグラフは、正面軸に対し音圧レベルLが−6dB
減衰する開き角度(指向角)の指向周波数特性を示す。
例えば図9(B)の指向周波数特性のスピーカを本発明
の分散配置スピーカSjとして選択した場合、1kHzの指
向角が85〜90度程度であるから、その指向角とカバーエ
リアの重畳率とを考慮して各スピーカSjの受音面Phから
の配置高さを設計することができる。図1のスピーカ配
置は、図9に示す指向周波数特性のスピーカを分散配置
した場合の一例である。
【0025】ただし、本発明で用いるスピーカSjは必ず
しも同一種類のものに限定されない。例えば1kHzを中
心とする1オクターブバンド、好ましくは500Hz〜2kHz
のバンドの音質の違いが少なく、実質的に同一音響特性
であるときは、種類の異なるスピーカを用いることがで
きる。
【0026】分散配置スピーカSjの相互間隔は、受音点
に対する音源O方向の2つのスピーカSjの伝送特性が類
似するように定める。後述するように本発明では、音源
Oに最も近いスピーカSjを先行音スピーカとし、音源O
から受音点(聴者2)へ向かう方向の周辺のスピーカSj
を後続音スピーカとして音像を定位する。配置高さとの
関係を考慮しつつ分散配置スピーカSjの間隔を適当に設
計することにより、受音面Ph上の任意の受音点におい
て、音源方向の先行音スピーカと後続音スピーカの両耳
に対する伝送特性の差を音像定位が可能な許容範囲内と
することができる。
【0027】さらに、上述したスピーカSjの配置におい
て、受音点から見た音源Oの方向と先行音スピーカの方
向とのずれを図7に示す許容範囲内に収める。例えば図
1では、スピーカS5の下方の聴者2から見て、話者Oが
他の何れのスピーカSjの下方にいる場合でも、話者Oの
方向に対し話者上方のスピーカSjが図7の許容範囲内に
配置されているので、話者上方のスピーカを先行音スピ
ーカとして音像定位を得ることができる。すなわち本発
明では、複数のスピーカSjを上記カバーエリアの重畳を
得る高さと、類似の伝送特性を得る相互間隔と、先行音
スピーカの配置許容範囲とを満たす所定位置に分散配置
する。
【0028】分散配置した各スピーカSjには、信号伝送
装置10により音源Oからの音響信号が入力される。図1
の信号伝送装置10は、マイクロホン3とミキサー11と信
号伝送路とを有する。マイクロホン3は音場内の話者や
演奏者その他の音源Oの近傍に配置して直接音を収音す
る。収音した直接音は、マイクアンプ(図示せず)で増
幅したのち、ミキサー11により音場全体の音量コントロ
ールが施され、後述の信号調整装置20へ送られる。ミキ
サー11でのマイク音量コントロールは、音源Oの音量を
考慮して、オペレータが手動でコントロールできる。た
だし、本発明の適用範囲は音場内の音源Oの音の拡声に
限定されず、例えば予め録音した音源から拡声により音
像を定位させる場合等にも適用できる。
【0029】本発明では、信号伝送装置10と各スピーカ
Sjとの間に、各スピーカSjの音響遅延と音圧レベルを調
整する信号調整装置(イフェクタ)20を挿入する。信号
調整装置20の一例は、図12及び13に示すように、コ
ンピュータ30からの指示信号の入力に応じて、スピーカ
Sj毎に音響信号の発音時刻と入力パワーとを調整する音
響遅延回路21及び音圧レベル制御回路(音量制御回路)
22を有するものである。各信号調整装置20はコンピュー
タ30に接続され、コンピュータ30より各信号調整装置20
の音響遅延と入力パワーの調整とが一括して制御され
る。
【0030】図6は、音場内の音源Oの音の拡声により
音像定位を得る場合におけるコンピュータ30による信号
調整装置20の制御の流れ図の一例を示す。以下、図6の
流れ図を参照して本発明の拡声方法を説明する。先ずス
テップ601において音場内の音源Oの位置を検出する。
図1では、マイクロホン位置検出装置37の検出信号に基
づき音源Oの位置を検出している。次にステップ602に
おいて、スピーカ選択手段31により音源Oに最も近いス
ピーカS1を主スピーカSoとして選択する。スピーカ選択
手段31の一例は、音源Oと各スピーカSjとの間の距離を
計算して距離最小のスピーカS1を選択するコンピュータ
内蔵のプログラムである。マイクロホン3の位置の検出
には、オペレータによる手動入力又は従来技術に属する
様々な自動検出技術が利用できる。ただしマイクロホン
位置検出装置37は本発明の必須要件ではない。
【0031】ステップ603では、例えばコンピュータ30
内蔵のプログラムであるスピーカ順位付け手段32によ
り、主スピーカSo以外の分散配置スピーカSjを主スピー
カSoからの距離の昇順に順位付けする。本明細書におい
て、順位付けされたスピーカSjを周辺スピーカSgx(x
=1、2、……、(n−1))という。例えば図1で
は、分散配置のスピーカS2を音源Oに一番近い周辺スピ
ーカSg1とし、スピーカS3を4番目に近い周辺スピーカS
g4とし、スピーカS4を8番目に近い周辺スピーカSg8と
し、スピーカS5を15番目に近い周辺スピーカSg15として
順位付けしている。
【0032】ステップ601〜603に示すように、本発明で
は主スピーカSoの位置を固定せず、音源Oに最も近い分
散スピーカを主スピーカSoとし、主スピーカSoからの距
離に応じて周辺スピーカSgxを順位付けするので、音源
Oが移動した場合でも移動に応じて主スピーカSoの位置
及び周辺スピーカSgxの順位を変化させ、受音面Ph上に
おける音像定位を変化させることができる。
【0033】ステップ604において、例えばコンピュー
タ30内蔵のプログラムである主スピーカ音指示手段33に
より、主スピーカSoの発音時刻To及び入力パワーWoを指
示する。図10は主スピーカSoの発音時刻及び入力パワ
ーの決定方法を示す。例えば主スピーカSoで信号伝送装
置10からの音響信号を時間遅延なく発音し、その発音時
刻Toを時刻零(ms)とおく。ただし主スピーカSoの発音
時刻Toに時間遅延を設けても、本発明の音像定位を得る
ことが可能である。また主スピーカSoの入力パワーWo
は、マイクロホン3における主スピーカSoからの拡声音
到達音圧レベルが、話者Oから肉声の到達音音圧レベル
(1m離れた地点の音圧レベル)に比べてハウリング防
止に要するレベル、例えば2dBだけ低いレベルとなるよ
うに決定する。ただし、ハウリングの発生がない場合は
主スピーカSoの入力パワーWoを所要レベルとすることが
できる。主スピーカSoの入力パワーWoの決定に際し、図
10に示すようにマイクロホン3に対応するミキサー11
のボリュームを適宜調整でき、その際のアンプ12の減衰
器(attenuator)の減衰量(以下、アッテネータ位置と
いうことがある。)を0(dB)とおくことができる。
【0034】ステップ605以降の周辺スピーカ音指示手
段34による各周辺スピーカSgxの発音時刻及び入力パワ
ーの決定方法については、説明簡単化のため、話者Oと
聴者2との間に5つのスピーカS1〜S5を配置した図2を
参照して説明する。図2は、話者Oに最も近いスピーカ
S1を主スピーカSoとし、スピーカS2〜S5を周辺スピーカ
Sg1〜Sg4として順位付けし、周辺スピーカSg4の下方に
聴者2がいる場合である。ステップ605では、先ず各ス
ピーカS1〜S5の垂直下方の受音面Ph上に受音点P1〜P5を
定める。図2において、受音点P1は主スピーカSoの垂直
下方の受音点Po、受音点P2〜P5は周辺スピーカSgx(Sg1
〜Sg4)の垂直下方の受音点Pgx(Pg1〜Pg4)である。
【0035】主スピーカSoからの拡声音が周辺スピーカ
Sgx下方の受音点Pgxに到達するに要する時間は、主スピ
ーカSoと受音点Pgxとの間の距離をRoxとすれば、下記(1
0)式として算出できる。(10)式において符号Cは音速(m
/s)を表す。通常は音速Cとして常温・常湿(23℃、相
対湿度60%)の音速を用いる。また、受音点Pgxに到達
した主スピーカSoからの拡声音の音圧レベルLoxは、式
(4)を参照して下記(11)式として表すことができる。(1
1)式において、Woは主スピーカSoの入力パワー、Doは主
スピーカSoの指向係数を示す。
【0036】また、周辺スピーカSgxからその下方の受
音点Pgxへの拡声音の到達に要する時間及び到達音圧レ
ベルLxxも、周辺スピーカSgxと受音点Pgxとの間の距離
をRxxとすれば、主スピーカSoの場合と同様にして(12)
式、(13)式として表わすことができる。(13)式におい
て、Wxは周辺スピーカSgxの入力パワー、Dxは周辺スピ
ーカSgxの指向係数を示す。なお図示例では、主スピー
カSoと周辺スピーカSgxとは同一の音響特性であるか
ら、(11)式と(13)式のA(f)は同じである。
【0037】各受音点Pgxには、主スピーカ及び複数の
周辺スピーカからの拡声音が到達し得る。複数の同一特
性A(f)のスピーカSj(j=1、2、3、……)からの拡
声音が到達する受音点Pgxでの合成音圧レベル(以下、
聴取音圧レベルという。)は、各スピーカSjからの到達
音圧の自乗音圧Iの総和に基づき、下記(14)式で表すこ
とができる。
【0038】
【数2】 主スピーカSoから受音点Pgxへの拡声音到達に要する時間 =Rox/C(s)=1000・Rox/C(ms) ……………………………………(10) 主スピーカSoから受音点Pgxへの拡声音到達音圧レベルLox=10logIox =10・log{Wo・Do(fo、θo、φo)・A(f)/Rox2}(dB)……………(11) 周辺スピーカSgxから受音点Pgxへの拡声音到達に要する時間 =Rxx/C(s)=1000・Rxx/C(ms) ……………………………………(12) 周辺スピーカSgxから受音点Pgxへの拡声音到達音圧レベルLxx=10logIxx =10・log{Wx・Dx(fx、θx、φx)・A(f)/Rxx2}(dB)……………(13) 受音点Pgxでの聴取受音レベル=10log(ΣIxx) =10・log[Σ{Wj・Dj(fj、θj、φj)・A(f)/Rkj2}](dB) ……(14)
【0039】ステップ605〜612では、各周辺スピーカSg
xの順位の昇順に従い、各周辺スピーカSgxの発音時刻及
び入力パワーを決定する。先ず図2の周辺スピーカSg1
について、ステップ605で主スピーカSoから周辺スピー
カSg1の下方の受音点Pg1までの距離Ro1と、周辺スピー
カSg1から受音点Pg1までの距離R11を算出する。周辺ス
ピーカSg1の場合は、下位順位の周辺スピーカSgx、すな
わち周辺スピーカSg1よりも更に主スピーカSoに近い周
辺スピーカSgxは存在しない。ステップ606では、主スピ
ーカSoから受音点Pg1までの距離Ro1の(10)式ヘの代入結
果と主スピーカSoの発音時刻To=0(ms)とから、受音
点Pg1における主スピーカSoからの拡声音到達時刻To1を
算出する。また、主スピーカSoから受音点Pg1までの距
離Ro1と主スピーカSoの入力パワーWo及び指向係数Doと
の(11)式ヘの代入結果から、受音点Pg1における主スピ
ーカSoからの拡声音到達音圧レベルLo1を算出する。た
だし主スピーカSoの音圧周波数特性A(f)は所定とする。
【0040】ステップ607では、主スピーカSoからの拡
声音到達時刻To1に対し先行音効果を与える遅延時間Δt
1を求める。この遅延時間Δt1は、主スピーカSoに最も
近い距離の周辺スピーカSg1で最短遅延時間Δtmin、例
えば3msとし、主スピーカSoから最も遠い距離の周辺ス
ピーカSg4で最長遅延時間Δtmax、例えば10msとし、他
の周辺スピーカSg2、Sg3では主スピーカSoから当該周辺
スピーカSg2、Sg3下方の受音点Pg2、Pg3までの距離Ro
2、Ro3に比例配分した時間として定めることができる。
【0041】ただし遅延時間Δt1の決定方法は前記距離
に応じた比例配分による方法に限定されない。例えば、
図11に示すように、主スピーカSoから周辺スピーカSg
2、Sg3下方の受音点Pg2、Pg3までの距離Ro2、Ro3の対数
(logRox)に比例した最短遅延時間と最長遅延時間との
間の時間として定めることができる。下記表1は、図1
1のグラフから定めた各周辺スピーカSg1〜Sg4の遅延時
間Δtxを示す。ただし表1では、最短遅延時間Δtminで
ある周辺スピーカSg1の遅延時間Δt1を6msとし、最長
遅延時間Δtmaxである周辺スピーカSg4の遅延時間Δt4
を30msとしている。
【0042】求めた遅延時間Δt1と主スピーカSoからの
拡声音到達時刻To1との和として、ステップ607におい
て、周辺スピーカSg1からの拡声音が受音点Pg1に到達す
べき到達時刻T11(=To1+Δt1)を算出する。拡声音の
到達すべき時刻T11が分かれば、周辺スピーカSg1から受
音点Pg1までの距離R11を(12)式へ代入することにより、
ステップ608において拡声音到達時刻T11に対応する周辺
スピーカSg1の発音時刻を決定することができる。
【0043】
【表1】
【0044】ステップ609において、受音点Pg1に周辺ス
ピーカSg1からの拡声音到達時刻T11より先行して到達す
る下位順位の周辺スピーカSgk及び主スピーカSoからの
拡声音到達音圧レベルの総和を求める。この場合は、受
音点Pg1において周辺スピーカSg1からの拡声音到達時刻
より先行して到達する拡声音は主スピーカSoからの拡声
音のみであるから、主スピーカSoからの拡声音の到達音
圧レベルLo1を先行する拡声音の到達音圧レベルの総和
とし、ステップ610において主スピーカSoからの拡声音
到達音圧レベルLo1に対し先行音効果を与える音圧レベ
ル差ΔL1を算出する。この音圧レベル差ΔL1は、例えば
図8(A)に示すように、先行音効果を与えるに必要な
先行音から後続音までの遅延時間Δtと先行音・後続音
間の音圧レベル差ΔLとの関係式(ΔL=f(Δt))
を予め実験等により定め、周辺スピーカSg1の発音時刻
の算出に要する遅延時間Δt1を図8の関係式へ代入(Δ
L1=f(Δt1))することにより定めることができる。
【0045】求めた音圧レベル差ΔL1と主スピーカSoか
らの拡声音到達音圧レベルLo1(=10logIo1)とから、
ステップ612において周辺スピーカSg1からの拡声音が受
音点Pg1において示すべき音圧レベルL11(=10logIo1+
ΔL1)を算出し、算出した到達音圧レベルL11と周辺ス
ピーカSg1から受音点Pg1までの距離R11とを(13)式へ代
入することにより、ステップ612において周辺スピーカS
g1の入力パワーW1を決定する。
【0046】例えば図8では、周辺スピーカSg1の到達
時間の遅延時間Δt1を6msとした場合、周辺スピーカSg1
からの到達音圧レベルと主スピーカSoからの到達音圧レ
ベルとの差が6dB以内であれば音像定位が得られること
を示す。主スピーカSoの受音点Pg1における到達音圧レ
ベルLo1は、(11)式に示すように、距離減衰などにより
下がっている。主スピーカSoの受音点Pg1における到達
音圧レベルLo1を基準とし、受音点Pg1において周辺スピ
ーカSg1からの音圧レベルが(Lo1+6)(dB)となるよ
うに周辺スピーカSg1の相対入力レベルをアンプ12のア
ッテネータ位置により決めた結果が表1に示す-3(dB)
である。このように、周辺スピーカSgxの入力パワーが
ステップ611で算出した値となるように、アンプ12のア
ッテネータ位置を調整し又は補正することができる。
【0047】ステップ612で周辺スピーカSg1の発音時刻
と入力パワーとを決定したのち、ステップ613ヘ進み、
全ての周辺スピーカについて発音時刻と入力パワーの算
出が終了したか否かを判断する。この場合は周辺スピー
カSg2〜Sg4の処理が残っているのでステップ605へ戻
り、ステップ605〜612を繰り返すことにより、周辺スピ
ーカSg2について発音時刻及び入力パワーを決定する。
周辺スピーカSg2の場合は下位順位の周辺スピーカSg1が
存在するので、ステップ605において主スピーカSoから
受音点Pg2までの距離Ro2、周辺スピーカSg2から受音点P
g2までの距離R22の算出に加えて、下位順位の周辺スピ
ーカSg1から受音点Pg2までの距離R12を算出する。また
ステップ606において、下位順位の周辺スピーカSg1から
の拡声音が受音点Pg2に到達する時刻、及び拡声音到達
音圧レベルL12を(12)式及び(13)式に基づき算出する。
【0048】ステップ607において主スピーカSoからの
拡声音到達時刻To2に対し先行音効果を与える遅延時間
Δt2を求めるが、この算出方法は周辺スピーカSg1につ
いて上述した方法と同様である。この遅延時間Δt2と主
スピーカSoからの拡声音到達時刻To2との和から、受音
点Pg2において周辺スピーカSg2からの拡声音が到達すべ
き時刻T22(=To2+Δt2)を求める。拡声音の到達すべ
き時刻T22が分かれば、周辺スピーカSg2から受音点Pg2
までの距離R22を(12)式へ代入することにより、ステッ
プ608において周辺スピーカSg2の発音時刻を決定でき
る。
【0049】ステップ609では、受音点Pg2において周辺
スピーカSg2からの拡声音到達時刻T22と周辺スピーカSg
1からの拡声音到達時刻T12とを比較し、周辺スピーカSg
1からの拡声音到達時刻T12が先行する場合は、受音点Pg
2における周辺スピーカSg1からの到達拡声音の自乗音圧
I12と主スピーカSoからの到達拡声音の自乗音圧Io2との
和(I12+Io2)を求め、その自乗音圧の和(I12+Io2)
を(14)式へ代入することにより、周辺スピーカSg1から
の拡声音到達音圧レベルL12と主スピーカSoからの拡声
音到達音圧レベルLoxとの総和(=10log(I12+Io2))
を算出する。
【0050】本発明者は、各受音点Pgxにおいて下位順
位の周辺スピーカSgk(k=1、2、……、(x−
1))からの拡声音が周辺スピーカSgxからの拡声音に
対し先行して到達している場合は、主スピーカSoからの
拡声音到達音圧レベルLoxのみではなく、下位順位の周
辺スピーカSgkからの拡声音到音圧レベルLkx(=10log
ΣIkx)と主スピーカSoからの拡声音到達音圧レベルLox
(=10logIox)との総和(=10log(ΣIkx+Iox))に
対して先行音効果を与えるように当該受音点Pgxの上方
の周辺スピーカSgxからの拡声音到達音圧レベルLxxを定
めることにより、広い受音面Phにおいて、その上のあら
ゆる受音点で確実に先行音効果が得られることを見出し
た。本発明はかかる知見に基づくものである。
【0051】ステップ610では、例えば図8の関係式へ
周辺スピーカSg2の発音時刻の遅延時間Δt2を代入(ΔL
2=f(Δt2))することにより音圧レベル差ΔL2を求
める。求めたレベル差ΔL2を前記総和(=10log(I12+
Io2))ヘ加えることにより、周辺スピーカSg2からの到
達音が受音点Pg2で示すべき音圧レベルL22(=10log(I
12+Io2)+ΔL2)を求める。到達音圧レベルが求まれ
ば、ステップ612において、上述した周辺スピーカSg1の
場合と同様に(13)式への代入により周辺スピーカSg2の
入力パワーW2を決定できる。
【0052】ステップ612で周辺スピーカSg2の発音時刻
と入力パワーとを決定したのち、ステップ613から反復
してステップ605へ戻り、周辺スピーカSg3、Sg4につい
てステップ605〜612を繰り返す。図6のステップ605〜6
12を全ての周辺スピーカSgxについて順位の昇順に繰り
返すことにより、全ての周辺スピーカSgxの発音時刻及
び入力パワーが決定できる。コンピュータ30により決定
した各周辺スピーカSgxの発音時刻及び入力パワーの指
示信号を信号調整装置20ヘ入力することにより、信号伝
送装置10からの音響信号の発音時刻と入力パワーとをス
ピーカSj毎に調整し、調整後の音響信号をパワーアンプ
12経由で各スピーカSjへ入力する(図1参照)。
【0053】図3は、上述したように決定した各スピー
カSo、Sg1〜Sg4からの拡声音が受音点Sg4につくる音圧
を示す。すなわち、この場合は話者Oからの肉声が最先
の先行音として到達し、話者Oに最も近い主スピーカSo
からの拡声音が続き、次に周辺スピーカSg1、Sg2、Sg3
の拡声音が順に到達する。最後に周辺スピーカSg4から
の拡声音が到達する。肉声と各スピーカからの拡声音と
の関係、スピーカからの拡声音の相互関係は先行音効果
が働く条件を満たしているため、受音点Sg4の聴者2の
音場知覚にとっては、合成された音圧の主観レベルが図
4の実線のようになると考えられる。すなわち図4の実
線は、複数の分散配置のスピーカからの拡声音が一つの
音として聴者2に知覚されることを示す。
【0054】本発明は、実質的に同一の音響特性のスピ
ーカを用いるのでスピーカの音色の違いはなく、またス
ピーカ間隔の適当な設定により聴者の両耳に対する伝送
特性の差を許容範囲に収め、しかも各周辺スピーカの発
音時刻と入力パワーを主スピーカからの拡声音が先行音
となるように制御するので、受音面上のあらゆる位置で
音源Oヘ向かう方向に音像が定位できる。また音源の位
置の移動に応じて主スピーカの選択と周辺スピーカの順
位付けを行なうことができるので、移動する音源に音像
を定位させることができる。また不特定な位置に表れる
質問者等に音像を定位させることも可能である。
【0055】こうして本発明の目的である「音像定位の
方向を音源の方向に合わせて変化させ得る分散スピーカ
利用の音像定位拡声方法及び拡声システム」の提供を達
成できる。
【0056】好ましくは、各受音点Piの聴取音圧レベル
を所定目標音圧レベルLhcに抑制することにより、聴者
2が受音面Phの如何なる受音点Piにいても、所定目標音
圧レベルで聴取できるようにする。この場合は図6のス
テップ611で、例えば受音点Pg4における聴取音圧レベル
を、受音点Pg4における周辺スピーカSg4からの拡声音到
達音圧レベルL44(=10logI44)と、先行して到達する
下位順位の周辺スピーカSgk(k=1、2、3)及び主
スピーカSoからの拡声音到達音圧レベルの総和(=10lo
g(ΣIk4+Io4))との総計(=10logΣ(I44+ΣIk4+
Io4))として求める。求めた聴取音圧レベルが目標音
圧レベルLhcを超えるときは、周辺スピーカPg4の到着音
音圧レベルL44を先行音効果が得られる範囲内において
総計(=10logΣ(I44+Ik4+Io4))が目標音圧レベル
Lhcと一致するまで抑制する。
【0057】更に好ましくは、目標音圧レベルLhcを図
5の実線に示すように定め、各スピーカSjのつくる受音
面Ph上の合成音場の音圧レベルが、音源Oから離れるに
従って減衰するように制御する。この減衰制御は、音源
Oから離れると音が小さくなるという日常の経験と合致
した音場の形成を可能とし、聴者にとって音場が自然な
感じで知覚されるように作用する。このため、講演会な
どであれば聴者は話者から話しかけられているという感
じをもちながら聴くことができ、話者は聴衆の反応をよ
く感じ取りながら話題を展開する等の心理的なフィード
バックが可能となリ、参加者にとって互いの意思の疎通
が図れるという効果が期待できる。
【0058】図5に示す目標音圧レベルLhcは、音源O
からの距離Rhに応じてレベルが低下するが、距離Rhに対
する低下の傾きが自由音場における音の減衰の傾きより
も小さいものである。この目標音圧レベルLhcによれ
ば、聴者に自然な知覚を与えつつ、十分大きな音圧で拡
声することができる。図中の40dB以下の黒く塗りつぶし
た部分は、音が小さすぎて聴者の聞き取りに支障が生じ
る範囲を示す。自由音場では、話者がやや大きい声で発
声した場合でも100m程度離れた聴者には聞き取り難い
場合があるが、図5の目標音圧レベルLhcを用いた拡声
方法によれば、聴者に自然な音場感覚を与えつつ、100
m離れた地点でも十分な音圧で話者の発声を聞くことが
できる。
【0059】本発明者は、図5に示すように目標音圧レ
ベルLhcとして、主スピーカSo下方の受音点Poにおける
主スピーカSoからの拡声音到達音圧レベルLooを最大レ
ベルとし、主スピーカSoからの距離Rhの対数(logRh)
に比例してレベルが低減するような傾斜型目標音圧レベ
ルLhc=Loo−3.0×logRhを用いることにより、聴者が音
と距離との不自然なずれを感じることなく、話者から離
れた位置でも話者が近くにいるかのように明瞭でスッキ
リした自然な音を聞くことができる音場が形成できるこ
とを実験的に確認した。ただし、傾斜型目標音圧レベル
Lhcの減衰の比例定数は図示例に限定されない。
【0060】
【実施例】図12は、市販されているモノラル式の信号
調整装置20aを用いて本発明を実現したブロックダイヤ
グラムの実施例を示す。この実施例では、信号調整装置
20aとメインアンプ12とがスピーカSj毎に別個に設ける
必要がある。このため、信号伝送装置10からの信号を各
スピーカSjへ分配する音声信号分配器13を、ミキサー11
と信号調整装置20aとの間に挿入している。またコンピ
ュータ30は各信号調整装置20aに対してそれぞれ制御ラ
インを持つ必要がある。
【0061】また、図13は信号調整装置20とアンプ24
を一体にした複合アンプ20bを用いた本発明の他の実施
例を示し、図14は同実施例で使用する複合アンプ20b
のブロック図を示す。図示例では、複合アンプ20bの相
互間はタンデム接続されており、1本のデジタル音響信
号ライン27と制御信号ライン28とにより複合アンプ20b
の各々へ音響信号と制御信号とを供給している。複合ア
ンプ20bは2つの音響遅延部21L、21Rと2つの音量制御
部22L、22Rを有し、2チャンネルのデジタル音響信号を
同時に処理することができる。
【0062】コンピュータ30(図15参照)により算出
された主スピーカSo及び各周辺スピーカSgxの発音時刻
(遅延時間)と入力パワー(音量)は、インターフェー
ス14及び制御ライン28経由で複合アンプ20bのCPU25
へ送られる。CPU25は音響遅延部21L、21R、音量制御
部22L、22Rとに接続され、パターンメモリ26に記憶され
た処理パターンに従って2チャンネルのデジタル音響信
号の発音時刻及び入力パワーを調整する。調整後のデジ
タル音響信号は、ミキサ23でミキシングされ、アンプ2
4、出力ライン29経由でスピーカへ送られる。同図の複
合アンプ20bを用いれば、2つの音源の音を同時に処理す
ることができ、受音面Ph上の2箇所の音源に向けた音像
を同時に定位させることが可能となる。
【0063】図15は、複合アンプ20bを用いた本発明
の更に他の実施例を示す。床面から3.5mの高さに5m×3.
5mの間隔で格子状に14台のスピーカSjを分散配置し、各
スピーカSjにそれぞれ複合アンプ20を取り付けた。同図
に示すように、スピーカS1の下方の第1音源とスピーカ
S4の下方の第2音源の音をそれぞれマイクロホン3及び
4で収音し、ミキサー11経由でインターフェース14へ入
力した。他方、コンピュータ30では2つの音源への音像
定位に必要な制御信号を図6の流れ図に従ってそれぞれ
算出し、インターフェース14へ入力した。ミキサ11から
のデジタル音響信号とコンピュータ30からの制御信号と
をインタフェース14経由で各スピーカSjの複合アンプ20
へ伝送した。各複合アンプ20は図15に示すようにタン
デム状に接続した。複合アンプ20bにおいて右チャンネ
ルヘ送られたマイクロホン3からのデジタル音響信号
と、左チャンネルへ送られたマイクロホン4からのデジ
タル音響信号とを同時に処理し、ミキサー23及びメイン
アンプ24経由で各スピーカSjへ出力した。
【0064】図15の実施例で用いた制御信号の一例を
表2に示す。本発明者は、表2の制御信号により、受音
面Ph上で第1音源へ向かう音像と第2音源ヘ向かう音像
とを同時に定位できることを確認した。図15及び表2
の実施例から分かるように、例えば舞台上の講演者と会
場内の質間者などのように音場内に2つの音源Oが存在
する場合でも、本発明の拡声方法によれば、講演者を第
一音源として音像定位し且つ同時に質間者を第二音源と
して音像定位を行うことが可能である。この同時に2つ
の音像定位を行なうことにより、講演者と質問者がお互
いの声をよく聞くことができるので話しやすい、さらに
は会場内のどこにいても両者のやりとりが自然な感じで
聞こえる、という音場を創り出すことができる。
【0065】
【表2】
【0066】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明によ
る分散スピーカ利用の音像定位拡声方法及び拡声システ
ムは、受音面上方に複数の実質的に同一音響特性のスピ
ーカSjをカバーエリアを一部重畳させて下向きに分散配
置し、各スピーカSjのうち音源Oに最も近いスピーカを
主スピーカSoとし且つ残余のスピーカを主スピーカSoか
らの距離の昇順に順位付けされた周辺スピーカSgxと
し、各周辺スピーカの下方の受音点において主スピーカ
からの拡声音が先行音効果を与えるように各周辺スピー
カの発音時刻と入力レベルを制御し、受音面上の音像の
定位方向を音源Oヘ向かう方向とするので、次の顕著な
効果を奏する。
【0067】(イ)分散配置したスピーカのうち、音源
に最も近いスピーカを選択して主スピーカとするので、
音源が移動する場合でも主スピーカを選択し直すことに
より、移動に応じた音源へ向かう方向に音像を定位する
ことができる。 (ロ)実質的に同一音響特性のスピーカを用いるので、
スピーカからの音色の違い等が音像定位を阻害すること
がなく、受音面上のどこにいても音源方向の音像定位が
得られる。
【0068】(ハ)多チャンネル対応の信号調整装置等
を用い、各チャンネルにより異なる音源の音響信号を処
理することにより、音場内に複数の音像を同時に定位す
ることができる。例えば講演者を第一音源として音像定
位し、質間者を第二音源として音像定位することによ
り、舞台上の講演者と会場内の質間者などのやりとりが
スムーズにできる。 (ニ)音源に最も近いスピーカを主スピーカとし、音源
の音を音源の近傍へ戻すので、主スピーカをいわゆる
「はねかえり用スピーカ」とすることができる。話者
は、受音面上の如何なる位置にいる場合でも必ずはねか
えり音を聞くことができるので、常に自分の声を確認し
ながら話せるので、楽に話せているという実感が得られ
る。
【0069】(ホ)各受音点における聴取音圧レベル
を、音源からの距離に応じた減衰が得られるように調整
することにより、聴者の日常の経験に沿った自然な音場
を作り出すことができ、音場の臨場感を高めることがで
きる。 (ヘ)自然で臨場感の高い音場を作り出すことができる
ので、コンサートなどでは演奏者の音楽を通した心情表
現が臨場感をもって感じられるという効果が期待でき、
講演などでは聴衆が話者から話しかけられているという
感じをもちながら聴くことが期待できる。また講演者の
側も質問者等の聴衆の反応を自然に受け取ることがで
き、講演者と参加者、参加者相互間の意思疎通の向上へ
の利用も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、本発明の一実施例の説明図である。
【図2】は、本発明の音像定位の原理を示す説明図であ
る。
【図3】は、図2の受音点における各スピーカからの到
達音の説明図である。
【図4】は、図2の受音点における音強度の説明図であ
る。
【図5】は、受音点の目標音圧レベルの説明図である。
【図6】は、各スピーカの発音時刻と入力パワーの算出
方法の流れ図の一例である。
【図7】は、先行音効果を得るための先行音スピーカの
配置許容範囲の説明図である。
【図8】は、先行音効果が得られる先行音と補強音との
関係の説明図である。
【図9】は、スピーカの音響特性の一例の説明図であ
る。
【図10】は、主スピーカの発音時刻及び入力パワーの
決定方法を示す説明図である。
【図11】は、周辺スピーカの発音時刻の遅延時間の一
算出方法の説明図である。
【図12】は、信号分配器を用いた本発明の実施例の説
明図である。
【図13】は、2チャンネル複合アンプを用いた本発明
の実施例の説明図である。
【図14】は、2チャンネル複合アンプの説明図であ
る。
【図15】は、本発明の他の実施例の説明図である。
【図16】は、従来の集中拡声方式、分散拡声方式、及
び半分散拡声方式の説明図である。
【図17】は、従来の集中拡声方式、分散拡声方式、及
び半分散拡声方式における受音点での到達音声レベルの
説明図である。
【符号の説明】
1…話者 2…聴者 3…マイクロホン 4…第2マイクロホン 5…天井面 6…床面 10…信号伝送装置 11…ミキサー 12…アンプ 13…信号分配器 14…インターフェース 20…信号調整装置 20a…モノラル信号調整装置 20b…2チャンネル式信号調整装置 21…音響遅延部 22…音量制御部 23…ミキサ 24…アンプ 25…CPU 26…パターンメモリ 27…デジタル音声入力ライン 28…制御入力ライン 29…出力ライン 30…コンピュータ 31…スピーカ選択手段 32…スピーカ順位付け手段 33…主スピーカ音指示手段 34…周辺スピーカ音指示手段 37…マイクロホン位置検出装置 A…音圧 C…音速 f…周波数 H…天井高さ h…受音面の高さ I…自乗音圧 Jh…話者方向 Js…音像方向 L…音圧レベル Lh…聴取音圧レベル Lhc…目標音圧レベル Lp…音強度 O…音源 Pi…受音点 Ph…受音面 R…距離 S、Sj…スピーカ So…主スピーカ Sgx…周辺スピーカ T…時刻 Δt…遅延時間 w…音源入力パワー φ…仰角(垂直面) θ…方位角(水平面)

Claims (12)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】受音面Ph上方の所定位置に音源Oの音の拡
    声に使う実質上同一音響特性の複数のスピーカSj(1≦
    j≦n)を隣接スピーカのカバーエリアを一部重畳させ
    て下向きに分散配置し;前記各スピーカSjの垂直下方の
    前記受音面Ph上の部位をそれぞれ受音点Pi(1≦i≦
    n)とし;前記各スピーカSjのうち音源Oに最も近いス
    ピーカを主スピーカSoとして選び且つ残余のスピーカを
    前記主スピーカSoからの距離の昇順に順位付けされた周
    辺スピーカSgx(x=1、2、……、(n−1))と
    し;前記主スピーカSoから前記音源Oの音の拡声音を時
    間遅延なしの時刻零に所要入力パワーで発音し;前記周
    辺スピーカSgxの各々について前記順位の昇順に、当該
    周辺スピーカSgx下方の受音点Pgxで当該周辺スピーカSg
    xからの拡声音到達時刻Txxが前記主スピーカSoからの拡
    声音到達時刻Toxに対し先行音効果を与える遅延時間Δt
    xだけ遅れる(Txx=Tox+Δtx)如き当該周辺スピーカS
    gxの発音時刻を算出し、当該受音点Pgxに当該周辺スピ
    ーカSgxからの拡声音到達時刻Txxより先行して到達する
    下位順位の周辺スピーカSgk(k=1、2、……、(x
    −1))及び主スピーカSoからの拡声音のそれぞれの到
    達音圧レベルの総和を各スピーカSgk及びSoから当該受
    音点Pgxまでの距離と各スピーカSgk及びSoの入力パワー
    及び音響特性との関数として求め、且つ当該受音点Pgx
    における当該周辺スピーカSgxからの拡声音到達音圧レ
    ベルLxxを前記求めた総和に対し先行音効果を与える音
    圧レベル差ΔLxだけ高くなる如きものとして定め、定め
    た到達音圧レベルLxxに対応する当該周辺スピーカSgxの
    入力パワーを算出し;前記周辺スピーカSgxの各々から
    前記音源Oの音の拡声音を前記算出した発音時刻に前記
    算出した入力パワーで発音することにより、前記各受音
    点Piにおける音像の定位方向を前記音源Oヘ向かう方向
    としてなる分散スピーカ利用の音像定位拡声方法。
  2. 【請求項2】請求項1の拡声方法において、前記音源O
    に前記主スピーカSoの下方部位のマイクロホンを含め、
    前記主スピーカSoの入力パワーを、前記マイクロホンに
    おける前記主スピーカSoからの拡声音到達音圧レベルが
    前記音源Oからの音の到達音圧レベルに比しハウリング
    防止に要するレベルだけ低くなる如く定めてなる分散ス
    ピーカ利用の音像定位拡声方法。
  3. 【請求項3】請求項1又は2の拡声方法において、前記
    各周辺スピーカSgxの拡声音到達時刻Txxの算出に要する
    遅延時間Δtxを、前記主スピーカSoに最も近い距離の周
    辺スピーカSgxで最短時間Δtminとし、前記主スピーカS
    oから最も遠い距離の周辺スピーカSgxで最長時間Δtmax
    とし、他の周辺スピーカSgxでは前記主スピーカSoから
    当該周辺スピーカSgx下方の受音点Pgxまでの距離Roxに
    応じた前記最短時間Δtminと最長時間Δtmaxとの間の時
    間(Δtmin≦Δtx≦Δtmax)としてなる分散スピーカ利
    用の音像定位拡声方法。
  4. 【請求項4】請求項3の拡声方法において、前記他の周
    辺スピーカSgxの拡声音到達時刻Txxの算出に要する遅延
    時間Δtxを、前記主スピーカSoから当該周辺スピーカSg
    x下方の受音点Pgxまでの距離Roxの対数(logRox)に比
    例した最短時間Δtminと最長時間Δtmaxとの間の時間と
    してなる分散スピーカ利用の音像定位拡声方法。
  5. 【請求項5】請求項1から4の何れかの拡声方法におい
    て、先行音効果を与えるに必要な先行音から後続音まで
    の遅延時間Δtと先行音・後続音間の音圧レベル差ΔL
    との関係式(ΔL=f(Δt))を実験により定め、前
    記各周辺スピーカSgxの拡声音到達音圧レベルLxxの算出
    に要する音圧レベル差ΔLxを、当該周辺スピーカSgxの
    拡声音到達時刻Txxの算出に要する遅延時間Δtxの前記
    関係式への代入(ΔLx=f(Δtx))により定めてなる
    分散スピーカ利用の音像定位拡声方法。
  6. 【請求項6】請求項1から5の何れかの拡声方法におい
    て、前記各受音点Piにおける聴取音圧レベルの上限とな
    る所定目標音圧レベルLhcを設け、前記各周辺スピーカS
    gx下方の受音点Pgxにおける聴取音圧レベルを当該周辺
    スピーカSgxからの拡声音到達音圧レベルLxxと前記先行
    して到達する下位順位の周辺スピーカSgk(k=1、
    2、……、(x−1))及び主スピーカSoからの拡声音
    到達音圧レベルの総和との総計として求め、前記総計が
    前記目標音圧レベルLhcを超えるときに前記各周辺スピ
    ーカPgxの拡声音到達音圧レベルLxxを前記先行音効果が
    得られる範囲内において前記総計が前記目標音圧レベル
    Lhcと一致する如く抑制してなる分散スピーカ利用の音
    像定位拡声方法。
  7. 【請求項7】請求項6の拡声方法において、前記所定目
    標音圧レベルLhcを前記音源Oからの距離に応じてレベ
    ルが低減し且つ距離に対する低減の傾きが自由音場にお
    ける減衰の傾きよりも小さい傾斜型目標音圧レベルLhc
    とし、前記受音面Ph上の各受音点Piにおける聴取音圧レ
    ベルを前記音源Oからの距離に応じてなだらかに低減さ
    せてなる分散スピーカ利用の音像定位拡声方法。
  8. 【請求項8】請求項7の拡声方法において、前記所定目
    標音圧レベルLhcを、前記主スピーカSo下方の受音点Po
    における当該主スピーカSoからの拡声音到達音圧レベル
    Looを最大レベルとし且つ前記主スピーカSoからの距離R
    hの対数(logRh)に比例してレベルが低減する傾斜型目
    標音圧レベルLhc(=Loo−a×logRh、aは比例定数)
    としてなる分散スピーカ利用の音像定位拡声方法。
  9. 【請求項9】受音面Ph上方の所定位置に隣接スピーカの
    カバーエリアを一部重畳させて下向きに分散配置した実
    質上同一音響特性の拡声用スピーカSj(1≦j≦n);
    音源Oからの音響信号を前記各スピーカSjへ伝送する信
    号伝送装置;前記信号伝送装置と前記各スピーカSjとの
    間に設けられ且つ指示入力に応じて前記スピーカSj毎に
    前記音響信号の発音時刻と入力パワーとを調整して前記
    各スピーカSjへ出力する信号調整装置;前記各スピーカ
    Sjのうち音源Oに最も近いスピーカを主スピーカSoとし
    て選択するスピーカ選択手段;前記主スピーカSo以外の
    スピーカSjを周辺スピーカSgx(x=1、2、……、
    (n−1))として前記主スピーカSoからの距離の昇順
    に順位付けするスピーカ順位付け手段;前記主スピーカ
    Soの発音時刻及び入力パワーを指示する主スピーカ音指
    示手段;並びに前記各スピーカSjの垂直下方の前記受音
    面Ph上に受音点Pi(1≦i≦n)を定め、前記周辺スピ
    ーカSgxの各々について前記順位の昇順に、当該周辺ス
    ピーカSgx下方の受音点Pgxで当該周辺スピーカSgxから
    の拡声音到達時刻Txxが前記主スピーカSoからの拡声音
    到達時刻Toxに対し先行音効果を与える遅延時間Δtxだ
    け遅れる(Txx=Tox+Δtx)如き当該周辺スピーカSgx
    の発音時刻を算出し、当該受音点Pgxに当該周辺スピー
    カSgxからの拡声音到達時刻Txxより先行して到達する下
    位順位の周辺スピーカSgk(k=1、2、……、(x−
    1))及び主スピーカSoからの拡声音のそれぞれの到達
    音圧レベルの総和を各スピーカSgk及びSoから当該受音
    点Pgxまでの距離と各スピーカSgk及びSoの入力パワー及
    び音響特性との関数として求め、且つ当該受音点Pgxに
    おける当該周辺スピーカSgxからの拡声音到達音圧レベ
    ルLxxを前記求めた総和に対し先行音効果を与える音圧
    レベル差ΔLxだけ高くなる如きものとして定め、定めた
    到達音圧レベルLxxに対応する当該周辺スピーカSgxの入
    力パワーを算出し、前記算出した発音時刻及び入力パワ
    ーを指示する周辺スピーカ音指示手段を備え、前記主ス
    ピーカ音指示手段及び周辺スピーカ音指示手段による発
    音時刻及び入力パワーの指示を前記信号調整装置へ入力
    することにより前記各受音点Piにおける音像の定位方向
    を前記音源Oヘ向かう方向としてなる分散スピーカ利用
    の音像定位拡声システム。
  10. 【請求項10】請求項9の拡声システムにおいて、前記
    周辺スピーカ音指示手段に前記先行音効果を与えるに必
    要な先行音から後続音までの遅延時間Δtと先行音・後
    続音間の音圧レベル差ΔLとの関係式(ΔL=f(Δ
    t))を記憶し、前記各周辺スピーカSgxの拡声音到達
    時刻Txxの算出に要する遅延時間Δtxを前記主スピーカS
    oから当該周辺スピーカSgx下方の受音点Pgxまでの距離R
    oxに応じて算出し、前記各周辺スピーカSgxの拡声音到
    達音圧レベルLxxの算出に要する音圧レベル差ΔLxを当
    該周辺スピーカSgxの拡声音到達時刻Txxの算出に要する
    遅延時間Δtxの前記関係式への代入(ΔLx=f(Δt
    x))により求めてなる分散スピーカ利用の音像定位拡
    声システム。
  11. 【請求項11】請求項9又は10の拡声システムにおい
    て、前記周辺スピーカ音指示手段に前記各受音点Piにお
    ける聴取音圧レベルの上限となる目標音圧レベルLhcを
    記憶し、前記各周辺スピーカSgx下方の受音点Pgxにおけ
    る聴取音圧レベルを当該周辺スピーカSgxからの拡声音
    到達音圧レベルLxxと前記先行して到達する下位順位の
    周辺スピーカSgk(k=1、2、……、(x−1))及
    び主スピーカSoからの拡声音到達音圧レベルの総和との
    総計として求め、前記総計が前記目標音圧レベルLhcを
    超えるときに前記各周辺スピーカPgxの拡声音到達音圧
    レベルLxxを前記先行音効果が得られる範囲内において
    前記総計が前記目標音圧レベルLhcと一致する如く抑制
    してなる分散スピーカ利用の音像定位拡声システム。
  12. 【請求項12】請求項11の拡声システムにおいて、前
    記所定目標音圧レベルLhcを前記音源Oからの距離に応
    じてレベルが低減し且つ距離に対する低減の傾きが自由
    音場における減衰の傾きよりも小さい傾斜型目標音圧レ
    ベルLhcとし、前記受音面Ph上の各受音点Piにおける聴
    取音圧レベルを前記音源Oからの距離に応じてなだらか
    に低減させてなる分散スピーカ利用の音像定位拡声シス
    テム。
JP29171799A 1999-10-13 1999-10-13 分散スピーカ利用の音像定位拡声方法及び拡声システム Expired - Fee Related JP3273561B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP29171799A JP3273561B2 (ja) 1999-10-13 1999-10-13 分散スピーカ利用の音像定位拡声方法及び拡声システム

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP29171799A JP3273561B2 (ja) 1999-10-13 1999-10-13 分散スピーカ利用の音像定位拡声方法及び拡声システム

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2001112083A JP2001112083A (ja) 2001-04-20
JP3273561B2 true JP3273561B2 (ja) 2002-04-08

Family

ID=17772493

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP29171799A Expired - Fee Related JP3273561B2 (ja) 1999-10-13 1999-10-13 分散スピーカ利用の音像定位拡声方法及び拡声システム

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3273561B2 (ja)

Families Citing this family (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4939259B2 (ja) * 2007-03-05 2012-05-23 パイオニア株式会社 音響装置及び音声補正方法
WO2009149754A1 (en) * 2008-06-11 2009-12-17 Robert Bosch Gmbh Conference audio system, process for distributing audio signals and computer program
JP5401864B2 (ja) * 2008-08-01 2014-01-29 ヤマハ株式会社 音響装置及びプログラム
CN102484757B (zh) * 2009-09-03 2017-04-26 罗伯特·博世有限公司 用于会议音频***的延迟单元、用于延迟音频输入信号的方法、计算机程序以及会议音频***
KR100972105B1 (ko) 2010-04-19 2010-07-23 부경엔지니어링주식회사 무선 트리거 방식의 광역 경보 시스템
RU2677597C2 (ru) * 2013-10-09 2019-01-17 Сони Корпорейшн Способ и устройство кодирования, способ и устройство декодирования и программа

Also Published As

Publication number Publication date
JP2001112083A (ja) 2001-04-20

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US7995768B2 (en) Sound reinforcement system
Theile Multichannel natural music recording based on psychoacoustic principles
US20050281422A1 (en) In-ear monitoring system and method with bidirectional channel
JP2927492B2 (ja) 電気音響システム
JP3134254B2 (ja) コンサートオーディオシステム
US5822440A (en) Enhanced concert audio process utilizing a synchronized headgear system
JP4258472B2 (ja) 拡声システム
US20140064526A1 (en) Method for controlling a speaker array to provide spatialized, localized, and binaural virtual surround sound
JP2001503581A (ja) 音源をスピーカへ投射する方法及び装置
JP3273561B2 (ja) 分散スピーカ利用の音像定位拡声方法及び拡声システム
US6925186B2 (en) Ambient sound audio system
JP2004032463A (ja) 話者移動に追従して音像定位する分散拡声方法及び分散拡声システム
EP3869502B1 (en) Sound signal processing method and sound signal processing device
WO2018012589A1 (ja) 楽器を用いた音響システム、楽器を用いた音響方法、音響機器、及び音響システム
JPH02230899A (ja) 音声再生方式
Theile Natural 5.1 music recording based on psychoacoustic principals
JP2022152984A (ja) オーディオミキサ及び音響信号の処理方法
JP6972858B2 (ja) 音響処理装置、プログラム及び方法
JP2005217492A (ja) 椅子、及びスピーカシステム
JP2011155500A (ja) モニタ制御装置及び音響システム
JP7524613B2 (ja) 音信号処理方法、音信号処理装置および音信号処理プログラム
JP7524614B2 (ja) 音信号処理方法、音信号処理装置および音信号処理プログラム
CN113286249B (zh) 音信号处理方法及音信号处理装置
WO2017211448A1 (en) Method for generating a two-channel signal from a single-channel signal of a sound source
Boner et al. Sound-reinforcing system design

Legal Events

Date Code Title Description
R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110201

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140201

Year of fee payment: 12

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees