JP3270681B2 - 絞りしごき缶用樹脂被覆アルミニウム合金板の製造方法 - Google Patents
絞りしごき缶用樹脂被覆アルミニウム合金板の製造方法Info
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Description
含む加工により製造される2ピース缶に用いる材料の製
造方法に関する。より詳細には水、あるいは水系潤滑剤
などによる冷却、あるいは潤滑を行うことなく、製缶後
の缶の洗浄を必要としない、絞りしごき加工を含む加工
により缶壁厚が薄い2ピース缶を製造するのに適した、
熱可塑性樹脂を被覆した絞りしごき缶用樹脂被覆アルミ
ニウム合金板の製造方法に関する。
ース缶としては、ぶりきまたはアルミニウム合金板を絞
り加工、およびしごき加工により得られるDI缶(Draw
n andIroned Can)が従来より製造されている。DI缶
はぶりきまたはアルミニウム合金板を絞り加工した後、
連続的に配置された数個のしごきダイスとポンチを用い
て、大量の水、あるいは水系潤滑剤で冷却および潤滑し
ながら缶壁厚を元板厚の1/3程度に薄肉化し、その後
脱脂洗浄、乾燥し、塗装が施される。近年、特開平6−
312223号公報に、絞りしごき加工を含む複合加工
法により、樹脂被覆金属板から2ピース缶を製造する方
法が開示されている。この方法は従来のDI缶の製造法
とは異なり、高温揮発性の潤滑剤を塗布した樹脂被覆金
属板を絞り加工した後、水、あるいは水系潤滑剤を用い
ることなく、乾式で再絞りおよびしごき加工を同時に行
う複合加工法により、缶壁厚が薄い2ピース缶を製造す
るものである。この複合加工法によれば、2ピース缶に
成形した後の缶の脱脂洗浄、乾燥、塗装工程が不要とな
り、環境を殆ど汚染することなく、2ピース缶を製造す
ることが可能である。本発明は、この複合加工法に適し
た樹脂被覆アルミニウム合金板を提供することを目的と
して検討したものである。複合加工法に適した材料に関
しては、特開平7−266496号公報に、降伏強度、
抗張力、板厚、中心線粗さなどを限定した材料が開示さ
れ、実施例にJIS 3004 H19のアルミニウム合
金の使用が示されている。
312223号公報に示されるような複合加工法に適し
た樹脂被覆アルミニウム合金板を提供することを目的と
する。本発明が対象とする複合加工法は、再絞り加工部
としごき加工部が一対となったダイスを用い、再絞りお
よびしごき加工を同時に行う加工法である。複合加工法
の一つの特徴は、再絞り加工を行う部分のダイスの肩ア
ールの寸法を小さくし、このダイス肩アール部において
材料を曲げ・曲げ戻し加工し、缶壁厚を薄肉化すること
にある.この複合加工においては、加工する板厚の2〜
数倍程度の小さなダイス肩ア−ルで厳しい曲げ・曲げ戻
し加工を行うため、材料表面に肌荒れ、割れを生じ易
く、加工条件によってはこのダイス肩アール部で缶壁破
断が生じる。また、ダイス肩アール部で破断を生じない
場合においても、肌荒れ、表面割れは、被覆樹脂被膜と
アルミ合金板との密着性の低下をもたらし、続くしごき
加工において缶壁破断が極めて生じやすくなる。本発明
は、小さな肩ア−ルのダイス肩アール部における曲げ・
曲げ戻し加工、および続くしごき加工を含む複合加工を
乾式で行うに際して、缶壁破断が生じ難く、かつ缶とし
て必要な強度を有する樹脂被覆アルミ合金板を導くこと
を課題とする。なお、特開平7−266496号公報の
実施例に示されるJISアルミ合金3004H19は、
必要とされる強度は有するものの、加工性は本発明の目
標に対しては、不十分なものである.
用樹脂被覆アルミニウム合金板の製造方法は、重量%
で、Mn:0.5〜2.0%、Mg:0.2〜2.0%、不
可避的不純物としてSi:≦0.3%、Fe:≦0.7%
を含有し、かつ(Si+Fe):≦0.8 %であるアル
ミニウム合金鋳塊を均質化熱処理し、熱間圧延を行い熱
延板とし、ついで冷間圧延し、連続焼鈍を行い、その後
圧延率:30〜50%未満で二次冷間圧延して、その組
成中にAl−Fe−Mn系の晶出物を含まないアルミニ
ウム合金板を製造し、次いで、前記アルミニウム合金板
表面を、エッチング処理、および/または電解クロム酸
処理を施し、該処理を施したアルミニウム合金板を22
0〜300℃の範囲に加熱し、その両面に熱可塑性樹脂
を被覆し、被覆後急冷する工程からなり、再絞り加工を
行う部分のダイスの肩アールの寸法を小さくし、このダ
イス肩アール部において材料を曲げ・曲げ戻し加工し、
缶壁厚を薄肉化することを特徴とする。請求項2の絞り
しごき缶用樹脂被覆アルミニウム合金板の製造方法は、
重量%で、Mn:0.5〜2.0%、Mg:0.2〜2.0
%、不可避的不純物としてSi:≦0.3%、Fe:≦
0.7%を含有し、かつ(Si+Fe):≦0.8 %で
あるアルミニウム合金鋳塊を均質化熱処理し、熱間圧延
を行い熱延板とし、ついで冷間圧延し、連続焼鈍を行
い、その後圧延率:30〜50%未満で二次冷間圧延し
て、その組成中にAl−Fe−Mn系の晶出物を含まな
いアルミニウム合金板を製造し、次いで、前記アルミニ
ウム合金板表面をリン酸クロム酸処理し、該処理を施し
たアルミニウム合金板を220〜300℃の範囲に加熱
し、その両面に熱可塑性樹脂を被覆し、被覆後急冷する
工程からなり、再絞り加工を行う部分のダイスの肩アー
ルの寸法を小さくし、このダイス肩アール部において材
料を曲げ・曲げ戻し加工し、缶壁厚を薄肉化することを
特徴とする。請求項3の絞りしごき缶用樹脂被覆アルミ
ニウム合金板の製造方法は、重量%で、Mn:0.5〜
2.0%、Mg:0.2〜2.0%、不可避的不純物とし
てSi:≦0.3%、Fe:≦0.7%を含有し、かつ
(Si+Fe):≦0.8% であるアルミニウム合金鋳
塊を均質化熱処理し、熱間圧延を行い熱延板とし、つい
で冷間圧延し、連続焼鈍を行い、その後圧延率:50〜
80%で二次冷間圧延して、220〜280℃の温度で
1分間〜5時間安定化加熱して、その組成中にAl−F
e−Mn系の晶出物を含まないアルミニウム合金板を製
造し、次いで、前記アルミニウム合金板表面を、エッチ
ング処理、および/または電解クロム酸処理を施し、該
処理を施したアルミニウム合金板を220〜300℃の
温度範囲に加熱し、その両面に熱可塑性樹脂を被覆し、
被覆後急冷する工程からなり、再絞り加工を行う部分の
ダイスの肩アールの寸法を小さくし、このダイス肩アー
ル部において材料を曲げ・曲げ戻し加工し、缶壁厚を薄
肉化することを特徴とする。請求項4の絞りしごき缶用
樹脂被覆アルミニウム合金板の製造方法は、重量%で、
Mn:0.5〜2.0%、Mg:0.2〜2.0%、不可避
的不純物としてSi:≦0.3%、Fe:≦0.7%を含
有し、かつ(Si+Fe):≦0.8% であるアルミニ
ウム合金鋳塊を均質化熱処理し、熱間圧延を行い熱延板
とし、ついで冷間圧延し、連続焼鈍を行い、その後圧延
率:50〜80%で二次冷間圧延して、220〜280
℃の温度で1分間〜5時間安定化加熱して、その組成中
にAl−Fe−Mn系の晶出物を含まないアルミニウム
合金板を製造し、次いで、前記アルミニウム合金板表面
をリン酸クロム酸処理し、該処理を施したアルミニウム
合金板を220〜300℃の温度範囲に加熱し、その両
面に熱可塑性樹脂を被覆し、被覆後急冷する工程からな
り、再絞り加工を行う部分のダイスの肩アールの寸法を
小さくし、このダイス肩アール部において材料を曲げ・
曲げ戻し加工し、缶壁厚を薄肉化することを特徴とす
る。請求項5の絞りしごき缶用樹脂被覆アルミニウム合
金板の製造方法は、請求項1〜4のいずれかにおいて、
被覆する熱可塑性樹脂が熱可塑性ポリエステル樹脂であ
ることを特徴とする。
に優れ、乾式での絞りしごき加工性に優れる樹脂被覆ア
ルミ合金板の製造方法を提供するために多岐にわたり検
討を行った結果、合金組成、熱可塑性樹脂および表面処
理の種類などを定めることにより、目的とする樹脂被覆
アルミ合金板を得ることが可能な製造方法を開発したも
のである。以下、本発明を実施例により詳細に説明す
る。
合金板の被覆基板となるアルミニウム合金板の合金成分
などを限定する理由を以下に説明する。各合金成分は重
量%で示す。 [Mn]Mnは安価に強度が得られるために添加する。
0.5 %未満では効果が不十分である。一方、2.0 %
を超えるとAl−Fe−Mn系の晶出物が増加し、本発
明が課題とする曲げ・曲げ戻し加工性が著しく損なわれ
る。広く工業生産されているDI加工においては、Al
−Fe−Mn系の晶出物は、しごき加工時に潤滑作用を
有し、しごき加工性を向上させるため不可欠とされる。
しかし、本発明においては表面に樹脂が被覆されたアル
ミニウム合金板を加工するため、Al−Fe−Mn系の
晶出物の潤滑作用は必要ではなく、むしろ加工性が損な
われる。すなわち、該晶出物は本発明の樹脂被覆アルミ
合金板の適用を図る複合加工方法には適さないものであ
る。複合加工方法は、再絞り加工部としごき加工部が一
対となったダイスを用いて再絞り加工としごき加工を同
時に行い、再絞りダイスの肩ア−ルを板厚の数倍程度以
下の小さな肩ア−ルとすることを特徴とするが、晶出物
はそのダイス肩アール部における曲げ・曲げ戻し加工性
を著しく損なう。すなわち、曲げ・曲げ戻し加工時に、
アルミニウム合金表面に荒れ、割れが生じやすく、それ
に基づく被覆樹脂被膜の密着性を低下をもたらす。さら
に晶出物の量、サイズ、加工条件によっては缶壁破断を
もたらす。このようにAl−Fe−Mn系晶出物は、D
I加工におけるのとは異なり、本発明にとって好ましか
らざるものであり、極力少なくすることが望ましい。
のある元素である。缶として必要な強度、主として缶底
の耐圧強度を得るため、0.2 %以上添加する。Mgは
高価な元素であり、また添加量が多くなると成形性が低
下するため、成形性、経済性の点から2%を上限とす
る。本発明による樹脂被覆アルミニウム合金板を前記の
複合加工を用いて成形した2ピ−ス缶は、ビ−ル、炭酸
飲料、窒素ガス充填飲料など、缶内圧が陽圧となる内容
物に適用するが、缶底強度が不足すると缶底が座屈変形
し、商品として使用に耐えなくなる。缶底強度には、主
として、板の降伏強度、板厚が影響し、降伏強度が低い
場合は板厚を厚くすることが必要であり、経済性を損な
うことになる。
相変態を生じさせ、いわゆる硬質のα相を形成する。こ
のα相はDI缶の製造においてはしごき加工性を向上さ
せるため必要とされるが、本発明にとっては相変態前の
晶出物以上に曲げ・曲げ戻し加工性を低下させ、好まし
くない。したがって、その上限を0.3%、好ましくは
0.2%以下とするとする。
−Mn系晶出物を形成する。Al−Fe−Mn系は、前
述のように曲げ・曲げ戻し加工性の点から本発明にとっ
て好ましくなく、その形成元素であるFeの上限を0.
7%とする。好ましくは0.4%以下とする。
Fe−Mn系晶出物の量、特に硬質なα相の量を低いレ
ベルとするため上限を定める。Fe、Si量の上限を前
記の如く定めるが、それぞれが上限近傍である場合、A
l−Fe−Mn系晶出物が加工性を損なう。よってその
上限を0.8%、好ましくは0.5%以下とする。
定しないが、Cu、Znは以下の理由により下記の範囲
が好ましい。CuはMgとともにAl−Cu−Mg系析
出物による析出硬化を示し、高強度化の点からは有効で
あるが、多くなると加工性を低下させるため、0.3%
以下であることが好ましく、0.2%以下がより好まし
い。Zn添加は晶出物の分散を適正にする効果があり、
晶出物の弊害を軽減するため、0.01〜0.5%含有す
ることが好ましい。
る。上記の化学成分を有するアルミニウム合金を、常法
により溶解、鋳造し、得られた鋳隗に熱間圧延前に均質
化熱処理を施す。この均質化熱処理は、ミクロ偏析の均
質化、過飽和元素の析出などを図り、材質の均質化、お
よび以後の熱間圧延性を向上させる。500℃未満では
効果は不十分であり、600℃を超えると、バ−ニング
などにより、板表面の性能が低下する。上記温度範囲で
の保持時間は、好ましくは1時間以上である。
より熱間圧延を行う。熱間圧延時の温度は特に限定しな
いが、熱間開始温度は400〜520℃、仕上げ圧延温
度は230〜350℃の範囲が好ましい。
で連続焼鈍を行う。連続焼鈍を行う場合の加熱速度、お
よび冷却速度は、100℃/分以上が好ましい。100
℃/分未満の場合は結晶粒の粗大化が生じ、強度、加工
性が不十分となる。また加熱温度は400〜580℃と
する。400℃未満では再結晶が不十分であり加工性の
改善が果たされない。また、580℃を越えると板表面
がバ−ニングし、表面性状が悪化する。また、5分を越
えて加熱を行うと軟化し、必要な強度を得ることが出来
ない。
延を行う。この二次冷間圧延、および圧延後の熱処理の
一つの態様として、圧延率を低くし、30〜50%未満
とする。圧延率の増大に伴い晶出物が圧延方向に延伸さ
れ、かつ晶出物の周囲にボイドの形成、加工歪の蓄積が
生じ、曲げ・曲げ戻し加工性が低下する。このため加工
性の点から圧延率を50%未満とする。また必要強度を
得るために、圧延率の下限を30%とする。この条件で
冷間圧延した場合は、後の工程で表面処理を施した後、
直ちにアルミニウム合金板を220〜300℃に加熱
し、その両面に樹脂を被覆する。
して、圧延率を上記の態様より高めの50〜80%とす
る。この条件で冷間圧延した場合は、圧延後に220〜
280℃の温度範囲で1分間〜5時間の安定化加熱処理
を施す。圧延率が80%を超えると、安定化加熱の加熱
温度下限の220℃以下で5時間以上加熱しても加工性
が不十分となる。また圧延率が50%以下のものを22
0℃以上で5時間以上加熱すると強度が不足するため、
圧延率の下限を50%とする。一方、この態様において
は、冷間圧延率が50〜80%と高いため、その加工性
を回復するためには最低でも220℃で5時間加熱する
ことが必要である。しかし220℃を越える温度で5時
間以上加熱すると必要強度が得られなくなるので、加熱
時間の上限は5時間とする。また、加熱温度が280℃
を越えると、極めて短時間で軟化し、必要強度に制御で
きなくなるので、加熱温度の上限を280℃、加熱時間
の下限を1分間とする。
冷間圧延とその後の安定化加熱処理のいずれかを施され
た後、アルミニウム合金板は陽極酸化処理、浸漬クロム
酸処理、リン酸クロム酸処理、アルカリ溶液、酸溶液に
よるエッチング処理、電解クロム酸処理など公知の方法
による表面処理が施されるが、本発明にはエッチング処
理、およびまたは電解クロム酸処理、またはリン酸クロ
ム酸処理がより好ましい。特に、アルミニウム合金板に
電解クロム酸処理により金属クロムとクロム水和酸化物
からなる二層皮膜を形成させる場合、積層される樹脂フ
ィルムの加工密着性の点から、クロム水和酸化物の量は
クロムとして3〜25mg/m2 であればよく、7〜2
0mg/m2 の範囲がより好ましい。また、金属クロム
量は特に限定する必要はないが、加工後の耐食性、積層
される樹脂フィルムの加工密着性の観点から1〜100
mg/m2の範囲が好ましく、5〜30mg/m2の範囲
がより好ましい。また、リン酸クロム酸処理を施す場
合、形成されるクロメート皮膜の量はクロムとして5〜
50mg/m2 の範囲であればよく、15〜30mg/
m2 の範囲がより好ましい。
の少なくとも片面に積層される熱可塑性樹脂としては、
ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹
脂、ポリカーボネート樹脂などを主成分とした単層また
は複層の樹脂フィルム、これらの樹脂を2種以上をブレ
ンドした樹脂フィルム、あるいは共重合した樹脂フィル
ムなどを用いることができる。特に本発明の厳しい成形
加工が施される絞りしごき缶用には、ポリエチレンテレ
フタレート、エチレンテレフタレート繰り返し単位を主
体とする共重合ポリエステル樹脂、ポリブチレンテレフ
タレート、ブチレンテレフタレート繰り返し単位を主体
とするポリエステル樹脂、またはこれらのポリエステル
樹脂を少なくとも2種類ブレンドしたポリエステル樹
脂、または上記のポリエステル樹脂を少なくとも2種類
積層してなる複層のポリエステル樹脂のいずれか、さら
にポリカーボネート樹脂、またはポリカーボネート樹脂
と上記のポリエステル樹脂を少なくとも1種類ブレンド
した樹脂、さらに、ポリカーボネート樹脂と上記のポリ
エステル樹脂を少なくとも2種類積層した複層樹脂から
なり、公知の押し出し機によりフィルム成形後、縦横二
方向に延伸し、熱固定して製造される二軸配向樹脂フィ
ルムが好ましい。
μmの範囲が好ましく、10〜30μmの範囲がより好
ましい。厚さが5μm以下の場合、連続的に高速で金属
板に積層することがむずかしい。一方、積層される樹脂
フィルムの厚さが50μm以上になると、製缶用材料に
広く使用されているエポキシ系樹脂塗料などと比較し経
済性の点からも好ましくない。
に直接積層されてもよいし、樹脂フィルムとアルミニウ
ム合金板の間にエポキシ−フェノール樹脂のような熱硬
化性接着剤を介在させて積層されてもよい。熱硬化性接
着剤を樹脂フィルムまたはアルミニウム合金板のどちら
かの、互いと接着する片面に予め塗布しておくことによ
り、熱硬化性接着剤を介在させて樹脂フィルムをアルミ
ニウム合金板に積層することができる。
合金板の温度は、被覆する樹脂の種類により異なるが、
220〜300℃とする。220℃以下では得られた樹
脂被覆アルミニウム合金板を絞りしごき加工した場合、
加工密着性に乏しく被覆した樹脂フィルムが容易に剥離
する。一方、300℃以上では被覆する樹脂フィルムが
溶融し、ラミネートロ−ルなどに付着し、被覆作業が不
可能となる。以上の理由により、樹脂フィルムを被覆す
る際のアルミニウム合金板の温度の上限、および下限を
定める。
ム合金板の両面に、上記の熱可塑性樹脂フィルムを接触
させ、1対のラミネートロールの間で重ね合わせ、挟み
つけて圧着した後、直ちに熱可塑性樹の再結晶温度以下
に急冷する。以上の工程から絞りしごき缶用樹脂被覆ア
ルミニウム合金板が得られる。
製造された熱可塑性樹脂フィルム被覆アルミニウム合金
板の上面に高温揮発性潤滑剤を塗布し、絞りしごき加工
を施すことにより、水、あるいは水系潤滑剤などによる
冷却、あるいは潤滑を行うことなく、製缶後の缶の洗浄
を必要としない、缶壁厚が薄い2ピース缶を製造するこ
とができる。高温揮発性潤滑剤としては、絞りしごき加
工後に200℃程度の温度で数分の加熱を施した時に5
0%以上飛散することが望ましく、具体的には流動パラ
フィン、合成パラフィン、天然ワックスなどの単体、ま
たはこれらの混合物から加工条件、加工後の加熱条件に
応じ選択する。塗布される潤滑剤の特性としては融点が
25〜80℃、沸点が180〜400℃の範囲にあるも
のが本発明の目的を果たすのに望ましい。また、塗布量
は缶外面となる面、缶内面となる面、加工条件、加工後
の加熱条件等を考慮し、決定されるべきであるが、5〜
100mg/m2、好ましくは30〜60mg/m2の範
囲が適している。
ウム合金を常法により溶解、鋳造、面削し、550℃で
1時間均質化熱処理を行った後、常法により熱間圧延、
冷間圧延、連続焼鈍を行い、その後表1〜3に示す圧延
率で二次冷間圧延し、0.25mm の板厚とし、下記に
示すエッチング処理(A)、電解クロム酸処理(B)、また
はエッチング処理後にさらに電解クロム酸処理する
(C)、リン酸クロム酸処理(D)のいずれかの表面処理を
施した。 [A]60℃の水酸化ナトリウム水溶液(50g/l)に
15秒間浸漬後水洗し、ついで15℃の硫酸(15g/
l)に15秒間浸漬後水洗し、乾燥する。 [B]無水クロム酸:100g/lを主剤とし、フッ化ナ
トリウム5g/lを助剤とからなる40℃の水溶液中
で、100A/dm2 の電流密度で陰極電解し、金属ク
ロムが32〜41mg/m2、クロム水和酸化物が12
〜15mg/m2からなる2層皮膜を形成させる。 [C]60℃の水酸化ナトリウム水溶液(50g/l)に
15秒間浸漬後水洗し、ついで15℃の硫酸(15g/
l)に15秒間浸漬後水洗し、引き続いて無水クロム
酸:100g/lを主剤とし、フッ化ナトリウム5g/
lを助剤とからなる40℃の水溶液中で、100A/d
m2 の電流密度で陰極電解し、金属クロムが21〜28
mg/m2、クロム水和酸化物が7〜11mg/m2から
なる2層皮膜を形成させる。 [D]リン酸:70g/l、無水クロム酸:12g/l、
およびフッ化ナトリウム5g/lとからなる60℃の水
溶液をスプレーし、クロム量として13〜20mg/m
2のクロメート皮膜を形成させる。ついで上記のいずれ
かの方法により表面処理を施した後、表1〜3に示す条
件でアルミニウム合金板を加熱し、その両面にポリエチ
レンイソフタレート12モル%とポレエチレンテレフタ
レート88モル%からなる厚み20μmの共重合ポリエ
ステル樹脂二軸配向フィルムを積層し、直ちに水中に浸
漬冷却した。乾燥した後、その両面にグラマーワックス
(沸点115℃)を約50mg/m2 塗布し供試板とし
た。供試板の評価は、前述の曲げ・曲げ戻し後の強度、
複合加工による加工性、耐圧強度、加工後の被覆樹脂フ
ィルムとアルミ合金板表面の密着性について行った。曲
げ・曲げ戻し後の強度は、曲げ半径 0.5mmでの曲げ
・曲げ戻し加工を施した供試板の引っ張り強度が加工前
の供試板の強度の30%以上の場合を○(良)、30%未
満を×(不良)とした。耐圧強度は通常の絞り加工により
缶形65mmの缶を成形し、缶底部をドーミング加工し
た後内圧を付加し、缶底が座屈する圧力で良否を評価
し、座屈圧力が 6.3kg/cm2以上の場合を ○
(良)、6.3kg/cm2未満の場合を×(不良)とした。
複合加工性の評価は、絞り比 1.6で成形した直径10
0mmの絞り缶を直径75mm、缶壁厚が元板厚の80
%である一次再絞り缶に加工し、続く二次再絞り加工性
を評価した。二次再絞り加工は再絞り比を 1.15と
し、再絞りダイス肩ア−ル 0.4mmとし、しごきダイ
スのクリアランスを変更してダイス肩部、しごき加工部
での加工性を加工時の缶壁破断の発生の有無で評価し、
缶壁破断が無い場合を○(良)、缶壁破断が発生した場合
を×(不良)とした。密着性は、上記と同一条件で二次再
絞り加工を行った後の缶壁内面について、被覆樹脂の剥
離の有無によりにより評価し、剥離無しを○(良)、剥離
無しを×(不良)とした。評価結果を表4〜6に示す。
%、Mg:0.2〜2.0%、不可避的不純物としてS
i:≦0.3%、Fe:≦0.7%を含有し、かつ(Si
+Fe):≦0.8 %であるアルミニウム合金鋳隗を均
質化熱処理した後、常法により熱間圧延を行い熱延板と
する工程、ついで冷間圧延、および連続焼鈍を行う工
程、その後圧延率:30〜50%未満で二次冷間圧延
し、ついで表面処理する工程、表面処理を施したアルミ
ニウム合金板を加熱し、板温を220〜300℃の範囲
に保持し、その両面に熱可塑性樹脂を被覆する工程、被
覆後急冷する工程からなる絞りしごき缶用樹脂被覆アル
ミニウム合金板の製造方法であり、または、重量%でM
n:0.5〜2.0%、Mg:0.2〜2.0%、不可避的
不純物としてSi:≦0.3%、Fe:≦0.7%を含有
し、かつ(Si+Fe):≦ 0.8%であるアルミニウ
ム合金鋳隗を均質化熱処理した後、常法により熱間圧延
を行い熱延板とする工程、ついで冷間圧延、および連続
焼鈍を行う工程、その後圧延率:50〜80%で二次冷
間圧延した後、220〜280℃の温度で1分間〜5時
間安定化加熱する工程、ついで表面処理する工程、表面
処理を施したアルミニウム合金板を、220〜300℃
の温度範囲に加熱し、その両面に熱可塑性樹脂を被覆す
る工程、被覆後急冷する工程からなる、絞りしごき缶用
樹脂被覆アルミニウム合金板の製造方法であり、さら
に、被覆する熱可塑性樹脂が熱可塑性ポリエステル樹脂
であることを特徴とし、またアルミニウム合金板に施さ
れる表面処理がエッチング、およびまたは電解クロム酸
処理、またはリン酸クロム酸処理であることを特徴とし
ており、小さな肩ア−ルのダイス肩アール部における曲
げ・曲げ戻し加工、および続くしごき加工を含む複合加
工を乾式で行うに際して、缶壁破断が生じ難く、かつ缶
として必要な強度を有する樹脂被覆アルミ合金板を製造
することが可能となる。
Claims (5)
- 【請求項1】重量%で、Mn:0.5〜2.0%、Mg:
0.2〜2.0%、不可避的不純物としてSi:≦0.3
%、Fe:≦0.7%を含有し、かつ(Si+Fe):
≦0.8 %であるアルミニウム合金鋳塊を均質化熱処理
し、熱間圧延を行い熱延板とし、ついで冷間圧延し、連
続焼鈍を行い、その後圧延率:30〜50%未満で二次
冷間圧延して、その組成中にAl−Fe−Mn系の晶出
物を含まないアルミニウム合金板を製造し、次いで、前
記アルミニウム合金板表面を、エッチング処理、および
/または電解クロム酸処理を施し、 該処理を施したアルミニウム合金板を220〜300℃
の範囲に加熱し、その両面に熱可塑性樹脂を被覆し、被
覆後急冷する工程からなり、再絞り加工を行う部分のダ
イスの肩アールの寸法を小さくし、このダイス肩アール
部において材料を曲げ・曲げ戻し加工し、缶壁厚を薄肉
化することを特徴とする、絞りしごき缶用樹脂被覆アル
ミニウム合金板の製造方法。 - 【請求項2】重量%で、Mn:0.5〜2.0%、Mg:
0.2〜2.0%、不可避的不純物としてSi:≦0.3
%、Fe:≦0.7%を含有し、かつ(Si+Fe):
≦0.8 %であるアルミニウム合金鋳塊を均質化熱処理
し、熱間圧延を行い熱延板とし、ついで冷間圧延し、連
続焼鈍を行い、その後圧延率:30〜50%未満で二次
冷間圧延して、その組成中にAl−Fe−Mn系の晶出
物を含まないアルミニウム合金板を製造し、次いで、前
記アルミニウム合金板表面をリン酸クロム酸処理し、 該処理を施したアルミニウム合金板を220〜300℃
の範囲に加熱し、その両面に熱可塑性樹脂を被覆し、被
覆後急冷する工程からなり、再絞り加工を行う部分のダ
イスの肩アールの寸法を小さくし、このダイス肩アール
部において材料を曲げ・曲げ戻し加工し、缶壁厚を薄肉
化することを特徴とする、絞りしごき缶用樹脂被覆アル
ミニウム合金板の製造方法。 - 【請求項3】重量%で、Mn:0.5〜2.0%、Mg:
0.2〜2.0%、不可避的不純物としてSi:≦0.3
%、Fe:≦0.7%を含有し、かつ(Si+Fe):
≦0.8% であるアルミニウム合金鋳塊を均質化熱処理
し、熱間圧延を行い熱延板とし、ついで冷間圧延し、連
続焼鈍を行い、その後圧延率:50〜80%で二次冷間
圧延して、220〜280℃の温度で1分間〜5時間安
定化加熱して、その組成中にAl−Fe−Mn系の晶出
物を含まないアルミニウム合金板を製造し、次いで、前
記アルミニウム合金板表面を、エッチング処理、および
/または電解クロム酸処理を施し、 該処理を施したアルミニウム合金板を220〜300℃
の温度範囲に加熱し、その両面に熱可塑性樹脂を被覆
し、被覆後急冷する工程からなり、再絞り加工を行う部
分のダイスの肩アールの寸法を小さくし、このダイス肩
アール部において材料を曲げ・曲げ戻し加工し、缶壁厚
を薄肉化することを特徴とする、絞りしごき缶用樹脂被
覆アルミニウム合金板の製造方法。 - 【請求項4】重量%で、Mn:0.5〜2.0%、Mg:
0.2〜2.0%、不可避的不純物としてSi:≦0.3
%、Fe:≦0.7%を含有し、かつ(Si+Fe):
≦0.8% であるアルミニウム合金鋳塊を均質化熱処理
し、熱間圧延を行い熱延板とし、ついで冷間圧延し、連
続焼鈍を行い、その後圧延率:50〜80%で二次冷間
圧延して、220〜280℃の温度で1分間〜5時間安
定化加熱して、その組成中にAl−Fe−Mn系の晶出
物を含まないアルミニウム合金板を製造し、次いで、前
記アルミニウム合金板表面をリン酸クロム酸処理し、該
処理を施したアルミニウム合金板を220〜300℃の
温度範囲に加熱し、その両面に熱可塑性樹脂を被覆し、
被覆後急冷する工程からなり、再絞り加工を行う部分の
ダイスの肩アールの寸法を小さくし、このダイス肩アー
ル部において材料を曲げ・曲げ戻し加工し、缶壁厚を薄
肉化することを特徴とする、絞りしごき缶用樹脂被覆ア
ルミニウム合金板の製造方法。 - 【請求項5】被覆する熱可塑性樹脂が熱可塑性ポリエス
テル樹脂であることを特徴とする、請求項1〜4いずれ
か記載の絞りしごき缶用樹脂被覆アルミニウム合金板の
製造方法。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP11213096A JP3270681B2 (ja) | 1996-04-10 | 1996-04-10 | 絞りしごき缶用樹脂被覆アルミニウム合金板の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP11213096A JP3270681B2 (ja) | 1996-04-10 | 1996-04-10 | 絞りしごき缶用樹脂被覆アルミニウム合金板の製造方法 |
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Publication Number | Publication Date |
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JPH09279320A JPH09279320A (ja) | 1997-10-28 |
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CN103740989B (zh) * | 2013-12-26 | 2016-03-23 | 中铝西南铝冷连轧板带有限公司 | 阳极用5052铝合金基材及其生产方法 |
CN111218590B (zh) * | 2019-12-04 | 2021-07-23 | 中铝材料应用研究院有限公司 | 一种高强度高成型性铝镁铜合金板材及其制备方法 |
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- 1996-04-10 JP JP11213096A patent/JP3270681B2/ja not_active Expired - Fee Related
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