JP3260446B2

JP3260446B2 - 耐時効性および溶接性の良好なほうろう用鋼板

Info

Publication number: JP3260446B2
Application number: JP27162592A
Authority: JP
Inventors: 一典大澤; 誠今中; 俊之加藤
Original assignee: JFE Steel Corp
Current assignee: JFE Steel Corp
Priority date: 1992-10-09
Filing date: 1992-10-09
Publication date: 2002-02-25
Anticipated expiration: 2017-02-25
Also published as: JPH06122938A

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、耐つまとび性、焼成歪
などのほうろう用鋼板としての最低限の特性を満足し、
かつ耐時効性および溶接性の良好なほうろう用鋼板に関
するものである。

【０００２】

【従来の技術】ほうろうは鋼板表面にガラス質を焼き付
けた不燃性材料で耐熱性をはじめとして、耐候性、耐薬
品性、耐水性および耐汚染性など種々の特性を備える
他、表面が美麗であるという種々の特長を有し、広い用
途にわたって使用されている。これにかかわるほうろう
用の素地は主に冷延鋼板が多く、要求される特性として
は耐焼成歪特性、耐つまとび性、密着性および耐泡・黒
点性などがあり、これらの特性を満足し、かつプレス成
形性ならびに溶接性なども備えていなければならない。

【０００３】プレス成形性に優れた連鋳製ほうろう用鋼
板の代表的なものは、特公平４−16539 号公報に開示さ
れているようなTi添加Alキルド鋼である。しかしなが
ら、この種の鋼板は、プラズマ溶接やTIG 溶接などで継
ぎ手溶接をした際、溶接部が凹状になったり、ブローホ
ールを形成したりし、ほうろう加工後の表面に筋状欠陥
や泡欠陥を発生したりしていた。

【０００４】従来、この欠陥を防止する手段としては、
ほうろうメーカーにおいて溶接速度を遅くしたり、溶接
電流を比較的高めに設定したりする方法が取られていた
が、必ずしも適切な手段ではなく、生産性が低下する上
に、かなりの不良率で欠陥製品を発生しているのが現状
である。また最近、ほうろうメーカーでは特開平２−23
5550号公報に開示されているようなほうろうの表面特性
が良好であり、かつ溶接性が優れていることから高酸素
鋼の使用が多くなってきている。しかしながら、高酸素
鋼は酸素量が高いがゆえにTi、Zrなどの炭化物、窒化物
形成元素を添加してもほとんどが酸化物となってしまう
ため歩留りが悪く、完全に固溶Ｃ、Ｎを固定させること
ができないため材質の時効劣化が起こりやすく、プレス
成形時にストレッチャー・ストレインが発生したり、割
れが生じやすかったりしていた。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明はプレ
ス成形性がTi添加Alキルド鋼と同等もしくはそれ以上で
あり、かつ耐時効性および溶接性が良好なほうろう用鋼
板を提供することを目的とするものである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、重
量比にして、Ｃ：0.0050％以下、 Mn：0.05〜1.0 ％、 Al：0.010 ％以下、Ｎ：0.0034％以下、 Cu：0.010 〜0.100 ％、Ｏ：0.020 超〜0.100 ％、Ｂ：0.0030超〜0.0200％、Ｖ：0.001 〜0.100 ％、を含み、さらにNb、Ta、Ｗ、Mo、Crの内から１種または
２種以上を合計で 0.001％〜0.100 ％を含有し、残部が
鉄および不可避的不純物から成る耐時効性および溶接性
の良好なほうろう用鋼板である。

【０００７】また、Seを 0.001〜 0.050％を残部の鉄の
同量と置換してなる耐時効性および溶接性の良好なほう
ろう用鋼板である。

【０００８】

【作用】すなわち、本発明は酸素との結合力がTi、Zrよ
りも弱いＶ、Ｂを添加し、さらにNb、Ta、Ｗ、Mo、Crを
複合添加させることによって高酸素を維持しつつ、かつ
材質劣化の原因になる固溶Ｃ、Ｎを有効に炭化物あるい
は窒化物として固定し、従来、問題であった高酸素鋼の
時効劣化を防止させてプレス成形性と溶接性とを向上さ
せた鋼板を開示したものである。

【０００９】次に本発明のほうろう用鋼板の成分限定理
由について説明する。Ｃ：0.0050％以下Ｃは侵入型固溶元素であり、0.0050％超の含有はプレス
成形性を著しく劣化させることからＣの含有は極力低減
する必要がある。よって、本発明のＣ量の上限を 0.005
％とした。

【００１０】Mn：0.05〜1.0 ％ Mnは赤熱脆性の原因になるＳをMnS として固定するの
に、また本発明のように酸素が多量に添加させている成
分系においては、MnO を形成してつまとび欠陥の原因に
なる水素をトラップさせることができることから、本発
明では有効な元素である。これらの効果を引き出すに
は、少なくとも0.05％以上の含有量が必要である。しか
しながら、1.0 ％超の添加は溶鋼コストを上昇させてし
まうことから上限を1.0 ％とした。

【００１１】Al：0.010 ％以下 Alは、通常、製鋼段階での脱酸剤として使用されるもの
であるが、本発明では酸素を耐つまとび性を改善する目
的から特定範囲にコントロールしている。そのためAlは
それに必要な量があれば十分である。しかしながら、0.
01％超の含有量は本発明において重要な元素である酸素
をAl₂O₃として除去してしまう危険性があることから本
発明では0.01％以下の範囲に限定した。

【００１２】Ｏ：0.020 超〜0.100 ％Ｏは、耐つまとび性を改善する元素であり、また本発明
では溶接性を著しく向上させる元素であることからその
含有は非常に重要であるが、0.020 ％以下の含有量では
溶接性の著しい向上は得られない。一方、0.10％超の含
有では連鋳スラブのブローホールが多く、スラブ表面手
入れのコストがかかる上、製品歩留りが悪くなることか
ら、その含有量の範囲を0.020 ％超〜0.100 ％とした。

【００１３】Ｎ：0.0034％以下 0.0034％超のＮの含有は、材質にとって極めて有害であ
り、Ｂあるいはその他の高価な窒化物形成元素を多量に
添加しなければならなくなることからＮ量の上限を0.00
34％とした。 Cu：0.010 〜0.100 ％ Cuはほうろう前処理時の酸洗速度をコントロールする目
的から添加している元素であり、これらの効果を引き出
すには0.010 ％以上の含有量が好ましい。しかしなが
ら、0.100 ％超の添加はほうろう前処理時に酸洗されに
くくなり、密着性に有効な微細な凹凸が鋼板表面に形成
されなくなることから、Cuの添加量を0.010 〜0.100 ％
とした。

【００１４】Ｂ：0.0030超〜0.0200％Ｂは時効劣化の原因になる固溶ＮをBNとして固定し、プ
レス成形性を確保する効果をもっており、また、耐２次
加工脆性を著しく向上させるに有効な元素であるが0.00
30％以下ではほとんどが酸化物となり、以上の効果がな
くなってしまう。また、0.0200％超の含有は熱間圧延時
に割れが生じやすくなってしまうことから本発明ではＢ
量の範囲を0.0030超〜0.0200％とした。

【００１５】Ｖ：0.001 〜0.100 ％Ｖは時効劣化の原因になる固溶Ｃ、Ｎを固定する元素と
して有効である。しかしながら0.001 ％未満の添加では
ほとんどが酸化物となってしまうことから材質向上の効
果が得られない。また、0.100 ％超の添加量では得られ
る効果が飽和してしまうことから本発明ではＶ添加量の
範囲を0.001 〜0.100 ％とした。

【００１６】Nb、Ta、Ｗ、Mo、Cr：0.001 〜0.100 ％ Nb、Ta、Ｗ、Mo、Crのいずれも炭化物を形成しうる元素
であり、時効劣化の原因になる固溶Ｃを減少させること
ができる元素である。その効果を引き出すためには１種
または２種以上を合計で0.001 ％以上含有させる必要が
ある。しかしながら、0.100 ％超の含有は溶鋼コストを
著しく高くしてしまうことから、これらの元素の添加量
を１種または２種以上を合計で0.001 〜0.100 ％とし
た。

【００１７】Se：0.001 〜0.050 ％ Seは主に溶接性を改善する目的から添加するものである
が、その効果を引き出すには0.001 ％以上の添加が必要
であり、また0.050 ％超の添加は表面性状を劣化させる
ことから、その添加量を0.001 〜0.050 ％とした。その
他、不可避的不純物については極力低減する必要がある
が、本発明ではこれらの量を特に規制はしない。

【００１８】また、本発明では製造方法についてとくに
規制するものではないが、以下に本発明の効果を引き出
すのに有効な手段について簡単に説明する。熱延巻取温
度は冷延焼鈍後のプレス成形性を良好ならしめるには 5
00℃以上、好ましくは 600℃以上の温度である。再結晶
焼鈍はとくに箱焼鈍法、連続焼鈍法どちらでも適用可能
であるが、焼鈍温度範囲は再結晶温度〜 900℃とする必
要がある。すなわち、再結晶温度以下の温度では圧延組
織が残り、プレス割れが発生しやすいことからである。
一方、 900℃超の温度では(111) 集合組織がランダム化
し、プレス成形性が著しく劣化してしまうことからであ
る。

【００１９】

【実施例】表１に示したような化学組成の連続鋳造スラ
ブを鋳込み方法をかえて製造した。1200℃の加熱炉に３
時間挿入し、粗圧延後、仕上圧延機にて仕上温度 880
℃、板厚3.5mm になるように熱間圧延し、 550〜700 ℃
の範囲内の温度で巻取った。酸洗後、冷間圧延を施して
板厚0.7mm の冷延板とし、 900℃以下の温度で30秒以内
の均熱保持をする短時間焼鈍を行った。圧下率 0.5％の
調質圧延を施した後、JIS ５号引張試験片に加工して圧
延方向に対して０°、45°、90°方向の機械的特性につ
いて調査した。結果は３方向の平均値で示した。また耐
時効性については、〔 7.5％予歪後、 100℃で30分の時
効処理した後の下降伏応力〕−〔 7.5％予歪時の応力〕
を調べ、結果はA.I.として示した。

【００２０】ほうろう特性については、アルカリ脱脂
後、20秒酸洗し、市販の下引き釉薬を施釉した後、露点
40℃、 850℃の電気炉に５分間挿入し焼成を行った。そ
の後、160 ℃の恒温槽内に16時間挿入するつまとび欠陥
発生の促進試験を行った。つまとび欠陥発生の有無を目
視で観察し、耐つまとび性を評価した。またほうろう密
着性については同一サンプルをASTM C313−59の試験方
法によって調査した。

【００２１】さらに、溶接性は溶接電流 130Ａ、速度50
cm／min でTIG 溶接を行い、溶接開始から孔あきが発生
するまでの溶接距離で評価した。これらの結果を表２に
示した。その結果、本発明の化学組成を満足した鋼板
は、プレス成形性、耐時効性、耐つまとび性が良好であ
り、かつ溶接性も良好であり、溶接部の仕上がりの形状
も平滑であった。これに対して、本発明外の鋼板は材質
および溶接性に問題が認められた。

【００２２】

【表１】

【００２３】

【表２】

【００２４】

【発明の効果】本発明によって製造された鋼板は耐時効
性および溶接性が良好であり、この鋼板を使用すること
により、ほうろうメーカーでの溶接条件をロット単位で
変更させる必要性がなくなるばかりでなく、生産性を一
層向上させることも可能となる。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献特開平２−236254（ＪＰ，Ａ) 特開平２−235550（ＪＰ，Ａ) 特開平３−232947（ＪＰ，Ａ) 特開平３−223441（ＪＰ，Ａ) 特開平３−166336（ＪＰ，Ａ) 特開平４−235226（ＪＰ，Ａ) 特開平３−10048（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) C22C 38/00 301 C22C 38/32

Claims

(57)【特許請求の範囲】

【請求項１】重量比にして、Ｃ：0.0050％以下、 Mn：0.05〜1.0 ％、 Al：0.010 ％以下、Ｎ：0.0034％以下、 Cu：0.010 〜0.100 ％、Ｏ：0.020 超〜0.100 ％、Ｂ：0.0030超〜0.0200％、Ｖ：0.001 〜0.100 ％、を含み、さらにNb、Ta、Ｗ、Mo、Crの内から１種または
２種以上を合計で 0.001％〜0.100 ％を含有し、残部が
鉄および不可避的不純物から成る耐時効性および溶接性
の良好なほうろう用鋼板。
【請求項２】重量比にして、 Seを0.001 〜0.050 ％を残部の鉄の同量と置換してなる
請求項１記載の耐時効性および溶接性の良好なほうろう
用鋼板。