JP3199587U - 特殊仮撚加工糸および布帛 - Google Patents
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Abstract
【課題】 自然なムラ感を発現できてゆらぎ調の色合いに染色できる特殊仮撚加工糸を提供し、この特殊仮撚加工糸を用いることにより自然なムラ感やゆらぎ調の色合いを発現でき肌触り感に優れる布帛を提供する。【解決手段】 それぞれ異なる仮撚条件で仮撚加工され、それぞれ異なる伸縮度と捲縮度を有する第1の糸条1Aと第2の糸条1Bとを合糸して得られる特殊仮撚加工糸1とし、特殊仮撚加工糸1を用いて編織成することにより、同一条件で染色してもゆらぎ調の色合いを発現でき肌触り感に優れる布帛とした。【選択図】図1
Description
本考案は、仮撚加工糸およびこの仮撚加工糸を用いた布帛に関し、特に、意匠性に優れた色合いに染色できて自然なムラ感を発現できる特殊仮撚加工糸および布帛に関するものである。
従来、ポリエステル繊維等の人工繊維を用いて、天然繊維が備える嵩高で柔らかで風合いに優れた糸質を得るために、仮撚加工糸を用いることが行われている。例えば、ポリエステル長繊維を仮撚加工して得られるポリエステル仮撚加工糸は、嵩高で捲縮性に優れており、天然繊維を用いた編織物に似た製品を作製可能になる。ポリエステル長繊維は、繊維原料を溶融し、微小な紡糸孔から引き出すフィラメントを複数本束ねて所定太さのマルチフィラメント糸として製造している。
仮撚加工糸は、マルチフィラメント糸を延伸して加撚した状態で熱を加えて一旦撚りを固定し、その後で解撚する仮撚加工を経て得ることができる。また、加撚する方向によりS撚仮撚加工糸とZ撚仮撚加工糸を製造できる。
すなわち、仮撚加工時の仮撚方向により糸に残留する残留トルクの方向(S方向とZ方向)が異なるため、S撚仮撚加工糸とZ撚仮撚加工糸がある。そのために、残留トルクを打ち消すことを目的として、S撚仮撚加工糸とZ撚仮撚加工糸を合糸したノントルク仮撚加工糸が既に提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、S仮撚加工糸とZ仮撚加工糸を合糸してトルクのない糸を製造すること以外にも、それぞれ異なる特性を有する複数のマルチフィラメント糸を組み合わせて複合仮撚加工糸を製造することが行われている。
仮撚加工糸は、マルチフィラメント糸を延伸しながら仮撚・熱固定・解撚加工を施したものであり、糸に捲縮性を付与して天然繊維に似た色合いや風合いを出現させることができる。また、所定の色の繊維製品や布製品を得るために、糸の状態で染色を行う糸染めや、生地を織編成したあと染める生地染めなどの染色工程を経ている。
また、自然なムラ感を持つ複合加工糸を得るために、異なる2成分のマルチフィラメント糸を所定の糸長差をもって複合して、長手方向に不均一なムラを発現させる不均一複合加工糸が既に提案されている(例えば、特許文献2参照)。
長手方向に不均一なムラを有する複合加工糸であれば、長手方向に不均一な染色ムラを発現できて、自然なムラ感を持つ布帛を製造できる。
しかしながら、長手方向に不均一なムラを発現するために、わざわざ成分の異なる複数のマルチフィラメント糸を準備することは好ましくない。また、所定の風合いや色合いの布帛を得るために、複数の成分の異なる糸条を用いることは好ましくない。
すなわち、単一の同じ繊維素材から成るマルチフィラメント糸を用いても長手方向に不均一な染色ムラを発現できることが好ましく、不均一な染色ムラを発現できる仮撚加工糸を用いることにより、自然なムラ感を持つ布帛やゆらぎ調の色合いに染色できる布帛を編織成できることが好ましい。
また、不均一な染色ムラを発現できることに加えて、人が着用した際には、肌触り感に優れて良好な風合いを呈することが好ましく、このような特殊仮撚加工糸を容易に製造できることが好ましい。
本考案は、上記問題点に鑑み、自然なムラ感を発現できてゆらぎ調の色合いに染色できる特殊仮撚加工糸を提供し、この特殊仮撚加工糸を用いることにより、自然なムラ感やゆらぎ調の色合いを発現でき肌触り感に優れる布帛を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために本考案は、同じ素材のマルチフィラメント糸から成る第1の糸条と第2の糸条とを仮撚加工した後で合糸して得られる特殊仮撚加工糸であって、第1の糸条を仮撚加工する際の仮撚条件と第2の糸条を仮撚加工する際の仮撚条件は、それぞれ異なる条件に設定して製造されており、第1の糸条と第2の糸条はそれぞれ異なる伸縮度と捲縮度を有することを特徴とする。
この構成によると、第1の糸条と第2の糸条との仮撚条件をそれぞれ異ならせて、糸条の伸縮度や捲縮度に差を生じさせているので、第1の糸条と第2の糸条とを合糸して得られる特殊仮撚加工糸を染色した際には、長手方向に不均一なムラを発現できる。すなわち、本考案によれば、自然なムラ感を発現できてゆらぎ調の色合いに染色できる特殊仮撚加工糸を得ることができる。また、伸縮度や捲縮度に差を有する2本の糸を合糸しているので、天然繊維調の優れた風合いや肌触り感を発現できる布帛を編織成できるようになる。
また本考案は、上記構成の特殊仮撚加工糸において、互いに異ならせる上記仮撚条件は、延伸率とヒーター温度と加撚量との少なくとも一つ、もしくは、それらの組み合わせであることを特徴としている。この構成によると、仮撚工程中の延伸率、又は、ヒーター温度、もしくは加撚量を異ならせているので、糸条の伸縮度や捲縮度に差が生じて長手方向に不均一なムラをより大きく発現できる。そのために、同じ糸素材を同じ色に染色しても不均一なムラを発現できて、ゆらぎ調の色合いを発現できる特殊仮撚加工糸を得ることができる。
また本考案は、上記構成の特殊仮撚加工糸において、第1の糸条はS撚仮撚加工され、第2の糸条はZ撚仮撚加工糸されることを特徴としている。この構成によると、S撚仮撚加工糸とZ撚仮撚加工糸とを合糸することにより、残留トルクが抑制されてふくらみのある風合いにすぐれた特殊仮撚加工糸を得ることができる。
また本考案は、上記構成の特殊仮撚加工糸において、第1の糸条と第2の糸条とを合糸する際に、合糸部に圧縮空気を吹き付けてフィラメント同士を交絡させる交絡処理を施すことを特徴としている。この構成によると、S撚仮撚加工糸とZ撚仮撚加工糸とを良好に交絡させて糸分かれしない一本の糸にすることができる。また、色合いや風合いが異なる糸条同士を糸分かれしないように合糸しているので、ゆらぎ感のある色調を呈することが可能になる。
また本考案は、上記構成の特殊仮撚加工糸において、第1の糸条と第2の糸条とは共にポリエステルマルチフィラメント糸から成ることを特徴としている。この構成によると、各種の衣料用素材となるポリエステルを用いた特殊仮撚加工糸となるので、自然なムラ感を発現できてゆらぎ調の色合いに染色できる衣服を作製できる特殊仮撚加工糸を得ることができる。
また本考案は、上記構成の特殊仮撚加工糸を用いて編織成された編織物から成る布帛であることを特徴としている。
この構成によると、第1の糸条と第2の糸条との仮撚条件をそれぞれ異ならせているので、糸条の伸縮度や捲縮度に差が生じて長手方向に不均一なムラを発現できる。また、マルチフィラメント糸から成り伸縮度や捲縮度が異なる第1の糸条と第2の糸条とを編織成されて成る布帛は、ぬめり感に加えてシャリ感を呈する。そのために、同じ糸素材を同じ色に染色しても不均一なムラを発現できて、自然なムラ感やゆらぎ調の色合いを発現でき肌触り感に優れる布帛を得ることができる。
本考案によれば、第1の糸条と第2の糸条との仮撚条件をそれぞれ異ならせて第1と第2の糸条の伸縮度や捲縮度に差が生じるように仮撚加工を行い、その後で合糸しているので、第1と第2の糸条の伸縮度や捲縮度の差に応じて長手方向に不均一なムラを発現できる特殊仮撚加工糸を得ることができる。また、この特殊仮撚加工糸を用いることにより、自然なムラ感を発現できてゆらぎ調の色合いに染色でき肌触り感に優れる布帛を編織成することができる。
以下に本考案の実施形態を図面を参照して説明するが、本考案はこれにより何ら制限されるものではない。また、同一構成部材については同一の符号を用い、重複する説明は適宜省略する。まず本実施形態に係る特殊仮撚加工糸1について、図1および図2を用いて説明する。
本考案に係る特殊仮撚加工糸1は、ポリエステル繊維などの化合繊から成る第1の糸条1Aと第2の糸条1Bとを仮撚加工した後で合糸して得られる。また、第1の糸条1Aと第2の糸条1Bとは共に仮撚加工糸から成る。例えば、特殊仮撚加工糸1は、ポリエステルマルチフィラメントからなる未延伸糸を延伸仮撚加工されたポリエステル仮撚加工糸から成る。
また、第1の糸条1Aと第2の糸条1Bのいずれか一方がS撚仮撚加工糸であって、いずれか他方がZ撚仮撚加工糸である。例えば、第1の糸条1AがS撚仮撚加工糸であり、第2の糸条1BがZ撚仮撚加工糸である。
また、本実施形態に係る特殊仮撚加工糸1は、第1の糸条1Aを仮撚加工する際の仮撚条件と第2の糸条1Bを仮撚加工する際の仮撚条件は、それぞれ異なる条件に設定して製造されており、第1の糸条1Aと第2の糸条1Bはそれぞれ異なる伸縮度と捲縮度を有することを特徴にしている。すなわち、同じ素材のマルチフィラメント糸から成る構成であっても、それぞれの仮撚条件を異ならせることにより、仮撚加工後の伸縮度と捲縮度をそれぞれ異ならせることができる。
この構成であれば、第1の糸条1Aと第2の糸条1Bとの伸縮度や捲縮度が異なるので、これらを合糸して得られる特殊仮撚加工糸1を染色した際に、長手方向に不均一なムラを発現できる。そのために、同じ糸素材を同じ色に染色しても不均一なムラを発現できて、自然なムラ感を発現できてゆらぎ調の色合いに染色できる特殊仮撚加工糸1を得ることができる。
互いに異ならせる上記仮撚条件は、延伸率とヒーター温度と加撚量との少なくとも一つ、もしくは、それらの組み合わせであることが好ましい。この構成であれば、仮撚工程中の延伸率、又は、ヒーター温度、もしくは加撚量を異ならせているので、糸条の伸縮度や捲縮度に差が生じて長手方向に不均一なムラをより大きく発現できる。そのために、同じ糸素材を同じ色に染色しても不均一なムラを発現できて、ゆらぎ調の色合いを発現できる特殊仮撚加工糸1を得ることができる。
延伸率は、仮撚工程を行う際の糸条の送り出し速度と引き出し速度との比率であり、1.1〜2.5倍程度、好ましくは1.5〜1.9倍程度に設定される。ヒーター温度は、加撚した糸条を加熱する温度であって、糸素材や糸太さや加工速度などにより適宜変更されるが、100〜300℃が好ましく適用される。
また、延伸率とヒーター温度に加えて第1の糸条と第2の糸条とを仮撚加工する際の加撚量を、第1の糸条と第2の糸条とで異ならせるとさらに好ましい。例えば、仮撚ディスクの回転数を異ならせたり、仮撚ベルトの走行速度を異ならせたりすることにより、第1の糸条と第2の糸条の加撚量を制御できる。
この構成であれば、さらに、仮撚工程中の加撚・解撚の量を異ならせることにより、糸条の伸縮度や捲縮度に微妙な差を生じさせることができて長手方向に不均一なムラをより大きく発現できる。そのために、同じ色に染色しても不均一なムラを発現できて、ゆらぎ調の色合いを発現できる特殊仮撚加工糸を得ることができる。
また、例えば、第1の糸条1AはS撚仮撚加工され、第2の糸条1BはZ撚仮撚加工糸されている。この構成であれば、S撚仮撚加工糸とZ撚仮撚加工糸とを合糸することにより、残留トルクが抑制されてふくらみのある風合いにすぐれた特殊仮撚加工糸1を得ることができる。
第1の糸条1Aと第2の糸条1Bとを合糸する際に、合糸部に圧縮空気を吹き付けてフィラメント同士を交絡させる交絡処理を施すことが好ましい。この構成であれば、S撚仮撚加工糸とZ撚仮撚加工糸とを良好に交絡させて糸分かれしない一本の糸にすることができ、色合いや風合いが異なる糸条同士を糸分かれしないように合糸しているので、ゆらぎ感のある色調を呈することが可能になって好ましい。
次に、本実施形態に係る特殊仮撚加工糸1の製造方法について説明する。
本実施形態に係る特殊仮撚加工糸1の製造方法は図2の概念図に示すように、給糸パッケージPAから引き出した第1の糸条1Aと、給糸パッケージPBから引き出した第2の糸条1Bとを、それぞれ仮撚加工した後で合糸して1個のパッケージに巻き取るものである。
第1の糸条1Aを仮撚加工する装置と第2の糸条1Bを仮撚加工する装置は、それぞれ別の装置でも同じ装置でもよい。別の装置であれば、それぞれ異なる仮撚条件に設定することは容易である。また、同じ装置であっても、それぞれの加工部の条件を個別に設定可能な装置であれば実行できる。
図2は本考案に係る特殊仮撚加工糸の製造工程の概念を示す概略説明図であって、第1の糸条1Aと第2の糸条1Bを仮撚加工して合糸して1個のパッケージに巻き取るまでの工程を概念的に示すものである。
例えば、給糸パッケージPAから引き出した第1の糸条1Aと、給糸パッケージPBから引き出した第2の糸条1Bとを、供給ローラー2(2A、2B)、仮撚ヒーター3(3A、3B)、仮撚具4(4A、4B)、引取りローラー5(5A、5B)を介して仮撚加工し、合糸ローラー6、送りローラー8、巻取りローラー9を介して合糸しながら巻取りパッケージ10を巻成する。
すなわち、供給ローラー2(2A、2B)、仮撚ヒーター3(3A、3B)、仮撚具4(4A、4B)、引取りローラー5(5A、5B)までの製造工程が仮撚工程であり、引取りローラー5(5A、5B)から、合糸ローラー6、送りローラー8、巻取りローラー9までの製造工程が合糸工程および巻取工程(合糸巻取り工程)である。
ここで、同じ糸素材を用いて同じ色に染色しても不均一なムラを発現できて、自然なムラ感を発現できる特殊仮撚加工糸1を得るために、本実施形態では、仮撚工程における仮撚条件、例えば、第1の糸条1Aの延伸率とヒーター温度と第2の糸条1Bの延伸率とヒーター温度とをそれぞれ異なる値に設定して製造可能にしている。
第1の糸条1Aの延伸率は、供給ローラー2Aの送り速度と引取りローラー5Aの引取り速度との比により決定され、第2の糸条1Bの延伸率は、供給ローラー2Bの送り速度と引取りローラー5Bの引取り速度との比により決定されるので、本実施形態においては、それぞれの速度を適宜設定している。また、仮撚具4AはS撚仮撚具であり、仮撚具4BはZ撚仮撚具である。
また、仮撚ヒーター3Aと仮撚ヒーター3Bの設定温度をそれぞれ異なる温度に設定している。これにより、仮撚工程における第1の糸条1Aの仮撚条件と第2の糸条1Bの仮撚条件をそれぞれ異ならせることができる。
従って、第1の糸条1Aと第2の糸条1Bとの仮撚条件(例えば、延伸率とヒーター温度)をそれぞれ異ならせて仮撚加工することにより、第1の糸条1Aと第2の糸条1Bとが同じ糸素材から成る同じ太さの糸であっても、糸条の伸縮度や捲縮度に差を生じさせて長手方向に不均一なムラを発現できる。そのために、同じ色に染色しても不均一なムラを発現できて、自然なムラ感を発現できる特殊仮撚加工糸1を製造できる。
また、仮撚具4A、4Bを用いて仮撚加工する際の加撚量を、第1の糸条1Aと第2の糸条1Bとで異ならせることにより、糸条の伸縮度や捲縮度にさらに大きな差を生じさせることができて長手方向に不均一なムラをより大きく発現できることは前述した通りである。
また、第1の糸条1Aの仮撚工程はS撚仮撚加工工程であり、第2の糸条1Bの仮撚工程はZ撚仮撚加工工程であり、合糸工程がSZ合糸工程である。また、これらの工程を一台の延伸仮撚機を用いて一連に行うこともできる。この構成であれば、S撚仮撚加工糸とZ撚仮撚加工糸とを製造して合糸し、自然なムラ感を発現できる特殊仮撚加工糸1を製造する製造工程が一台の延伸仮撚機を介して実施可能になるので、特殊仮撚加工糸1の製造工程が簡単になる。すなわち、同じ糸素材を用いても自然なムラ感を発現できる特殊仮撚加工糸1を容易に製造することができる。
また、単に、S撚仮撚加工糸である第1の糸条1AとZ撚仮撚加工糸である第2の糸条1Bとを合糸するだけよりも、合糸部に図2に示す交絡ノズル7を設けて交絡処理を施すことにより、糸別れし難い一本の糸を容易に製造できる。
交絡ノズル7は、例えば、合糸した二本の糸に略直角に圧縮空気を吹き付けて、フィラメント同士を交絡させるインターレースノズルであって、このような交絡ノズル7を用いて交絡処理を行うことにより、第1の糸条1Aの多数のフィラメントと第2の糸条1Bの多数のフィラメントとを交絡させて、第1の糸条1Aと第2の糸条1Bとを略均一に混ぜ合わせて一本の糸にすることが可能になる。
すなわち、S撚仮撚加工糸である第1の糸条1AとZ撚仮撚加工糸である第2の糸条1Bとを単に合糸して、残留トルクが余り大きくない一本の糸に製造できる場合には、交絡ノズル7を用いる必要はないが、一本の糸ではなく、二本に別れる場合が生じる場合には、交絡ノズル7を用いて交絡処理することが好ましい。
また、前述した仮撚工程と合糸工程は、それぞれ別の装置で行ってもよく、一台の延伸仮撚機を用いて実施してもよい。一台の延伸仮撚機を用いる構成であれば、仮撚工程と合糸工程を別の装置を用いて行う製造方法に比べて、製造時間を大幅に短縮できると共に、設備コストも削減できるので、特殊仮撚加工糸1の製造コストを削減できる。
一台の延伸仮撚機にS撚仮撚具とZ撚仮撚具との両方向の仮撚具を備えた例としては、1枚の円盤と2本の仮撚ベルトからなる仮撚装置を備えた仮撚機や、1錘に2つのディスクフリクション仮撚ユニットを並列に配置した仮撚機が既に公知である。
また、本実施形態においては、一本の特殊仮撚加工糸1を二本の糸(第1の糸条1Aと第2の糸条1B)を合糸して製造しているので、従来の糸の半分の太さの糸を仮撚することになって、より小さいピッチの仮撚加工が可能になる。従って、より嵩高な仮撚加工糸を製造できて、より風合いに優れた高級感を発揮する特殊仮撚加工糸1を得ることができる。
次に、特殊仮撚加工糸1の実施例について説明する。
第1の糸条1Aとしてポリエステルセミダル糸のSD80/38(80デニール38フィラメント)から成るPOY(未延伸糸)を用いた。第2の糸条1Bも同じである。
第1の糸条1Aの延伸率(ドローレイシオともいう)と第2の糸条1Bの延伸率を異ならせたものと、延伸率は同じでヒーター温度を異ならせたものと、延伸率とヒーター温度を共に異ならせたものの3種のテストを行った。
第1の糸条1Aの延伸率は1.72としヒーター温度は270℃とし、第2の糸条1Bの延伸率は1.60と1.65の2種類としヒーター温度は170℃とした。
ヒーター温度に100℃の差を付けて、延伸率を2種類テストした結果、いずれも染めむらが発現したが、延伸率の差が大きい方がより安定した染めむらを確認できた。
第1の糸条1Aと第2の糸条1Bは共にポリエステルセミダル糸のSD80/38(80デニール38フィラメント)から成るPOY(未延伸糸)を用いた。
第1の糸条1Aの延伸率(ドローレイシオともいう)は1.72としヒーター温度は290℃とし、第2の糸条1Bの延伸率は1.60と1.72の2種類としヒーター温度は150℃(140℃の差)、190℃(100℃の差)、240℃(50℃の差)の3種類とした。
延伸率が同じ場合にもヒーター温度差が大きくなるにつれて染めむらが発現するが、高圧染めを行うと染めむらは小さくなってしまうことが判った。また、ヒーター温度差に加えて延伸率を異ならせることにより、高圧染めしても染めむらを維持できることが判った。
〈その他の実施例〉
第1の糸条1Aと第2の糸条1Bとを仮撚加工する際の加撚量を異ならせることによっても、染めむらを発現することができることが判った。
第1の糸条1Aと第2の糸条1Bとを仮撚加工する際の加撚量を異ならせることによっても、染めむらを発現することができることが判った。
上記したように本考案によれば、第1の糸条1Aを仮撚加工する際の仮撚条件と第2の糸条1Bを仮撚加工する際の仮撚条件(例えば、延伸率とヒーター温度)とをそれぞれ異ならせて仮撚加工を行い、仮撚加工した後の糸条を合糸しているので、第1と第2の糸条の伸縮度や捲縮度に差が生じて長手方向に不均一なムラを発現できる。そのために、同じ色に染色しても不均一なムラを発現できて、自然なムラ感を発現できてゆらぎ調の色合いに染色できる特殊仮撚加工糸1を得ることができる。
また、上記の特殊仮撚加工糸1を用いて編織成された編織物から成る布帛、すなわち、マルチフィラメント糸から成り伸縮度や捲縮度が異なる第1の糸条1Aと第2の糸条1Bとを編織成されて成る布帛は、ぬめり感に加えてシャリ感を呈する。そのために、同じ糸素材を同じ色に染色しても不均一なムラを発現できて、自然なムラ感を発現できてゆらぎ調の色合いに染色でき肌触り感に優れる布帛を得ることができる。
特に、マルチフィラメント糸から成る第1の糸条1Aと第2の糸条1Bの捲縮度の差が所定以上あれば、編織成した後の布帛がぬめり感に加えてシャリ感を発現できることが判った。例えば、第1の糸条1Aの捲縮度が10%であり、第2の糸条1Bの捲縮度が15%〜20%であるように、5%程度以上の差を有する糸条同士を合糸して用いることにより編織成して得られる布帛はシャリ感を発揮する。
すなわち、本考案に係る特殊仮撚加工糸1を用いて編織成された布帛は、高級な天然素材に由来するゆらぎ調の色合いを発現できることに加えて良好な肌触り感を発揮する布帛となって、人が着用する衣料用素材として好適になる。
そのために本考案は、天然素材が有するゆらぎ調の色合いを発現することが求められ、良好な肌触り感を呈することが求められる衣服や布地を製造するための糸および布帛に好適に利用可能となる。
1 特殊仮撚加工糸
1A 第1の糸条
1B 第2の糸条
2、2A、2B 供給ローラー
3、3A、3B 仮撚ヒーター
4、4A、4B 仮撚具
5、5A、5B 引取りローラー
6 合糸ローラー
7 交絡ノズル
8 送りローラー
9 巻取りローラー
10 巻取りパッケージ
PA 給糸パッケージ(第1の糸条)
PB 給糸パッケージ(第2の糸条)
1A 第1の糸条
1B 第2の糸条
2、2A、2B 供給ローラー
3、3A、3B 仮撚ヒーター
4、4A、4B 仮撚具
5、5A、5B 引取りローラー
6 合糸ローラー
7 交絡ノズル
8 送りローラー
9 巻取りローラー
10 巻取りパッケージ
PA 給糸パッケージ(第1の糸条)
PB 給糸パッケージ(第2の糸条)
Claims (6)
- 同じ素材のマルチフィラメント糸から成る第1の糸条と第2の糸条とを仮撚加工した後で合糸して得られる特殊仮撚加工糸であって、
第1の糸条を仮撚加工する際の仮撚条件と第2の糸条を仮撚加工する際の仮撚条件は、それぞれ異なる条件に設定して製造されており、第1の糸条と第2の糸条はそれぞれ異なる伸縮度と捲縮度を有することを特徴とする特殊仮撚加工糸。 - 互いに異ならせる上記仮撚条件は、延伸率とヒーター温度と加撚量との少なくとも一つ、もしくは、それらの組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載の特殊仮撚加工糸。
- 第1の糸条はS撚仮撚加工され、第2の糸条はZ撚仮撚加工糸されることを特徴とする請求項1または2に記載の特殊仮撚加工糸。
- 第1の糸条と第2の糸条とを合糸する際に、合糸部に圧縮空気を吹き付けてフィラメント同士を交絡させる交絡処理を施すことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の特殊仮撚加工糸。
- 第1の糸条と第2の糸条とは共にポリエステルマルチフィラメント糸から成ることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の特殊仮撚加工糸。
- 請求項1から5のいずれかに記載の特殊仮撚加工糸を用いて編織成された編織物から成ることを特徴とする布帛。
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