JP3198955B2 - 金属製部品の耐酸化被膜の形成方法 - Google Patents

金属製部品の耐酸化被膜の形成方法

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JP3198955B2 JP32589796A JP32589796A JP3198955B2 JP 3198955 B2 JP3198955 B2 JP 3198955B2 JP 32589796 A JP32589796 A JP 32589796A JP 32589796 A JP32589796 A JP 32589796A JP 3198955 B2 JP3198955 B2 JP 3198955B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属製部品の耐酸
化被膜の形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン
等の内燃機関のシリンダー、ピストン、シリンダーヘッ
ド等の排気系部材のような高温で使用される鉄系部品等
の金属性部品には、耐熱性や断熱性を向上させるために
部品表面に断熱被膜を形成することが行われている。こ
の断熱被膜としては、断熱性に優れたセラミックスを主
体としたものが種々提案されている。この場合、母材の
金属と被膜のセラミックスとの熱膨張係数の差によって
両者の接合界面に大きな熱応力が発生し、接合強度を低
下させる原因になる。
【0003】特開平7−150368号公報には、鉄系
母材とセラミックス被膜との接合強度を確保するため
に、被膜の原料粉末として、鉄の粉末を主体としクロム
等の金属粉末を添加した混合粉末を用い、これを母材表
面に塗布し焼結してセラミックス層を形成する方法が開
示されている。原料粉末としてこの混合粉末を用いる
と、(1) 形成されるセラミックス層の主構造が、母材と
共通の基本成分である鉄の酸化物で構成されるため、焼
結中に母材/セラミックス層相互の固相拡散が促進され
る結果、高い接合強度を持つ接合界面が得られると共
に、(2) 鉄酸化物から成るセラミックス層主構造の空孔
をクロム等の添加金属の酸化物が封孔することにより被
膜自体の強度も向上し被膜の破砕による脱落も防止で
き、広い意味での接合強度も向上する。
【0004】上記公報の方法によれば、このセラミック
ス被膜を形成するには、原料粉末をスラリーにして母材
表面に塗布した後、不活性ガス雰囲気中または真空中に
おいて900〜1000℃で数時間焼成し、次に大気中
において800〜900℃で数時間焼成する必要があ
る。このように、上記従来の方法では被膜形成の処理に
長時間を要するため、生産性が低いという欠点があっ
た。その上、長時間の加熱により母材に歪みや組織変化
による機械強度の低下が発生し易いという問題もあっ
た。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、母材強度を
低下させずに、金属製部品の表面に短時間の処理で高い
接合強度を有する耐酸化被膜を形成する方法を提供する
ことを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明による金属製部品への耐酸化被膜の形成方
法は、金属製部品の表面に、該部品と共通の基本成分を
有し被膜の主構造を形成するための主金属粉末と主構造
の空孔を封止するための封孔用金属粉末との混合粉末を
塗布して塗布層を形成し、該部品の該塗布層形成領域を
大気中で高周波加熱することを特徴とする。
【0007】本発明においては、大気中での高周波加熱
により焼成を行うので、従来数時間を要した焼成時間が
僅か数秒程度と、数千分の1に短縮されるため、生産性
が顕著に向上する。同時に、このような短時間の焼成に
もかかわらず、誘導電流により母材の表層部自体が発熱
して焼成が行われるので、母材/塗布層界面から焼成が
進行して被膜が形成されるため、接合界面にも被膜中に
も気泡が殆ど残留せず緻密な被膜が得られ、高い接合強
度が確保できる。逆に、加熱が極めて短時間であること
は、従来のような長時間の加熱による母材の歪みや組織
低下による機械強度の低下を非常に少なくすることがで
きるという大きな利点がある。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明の方法を行う際に、耐酸化
被膜の原料となる混合粉末を母材に塗布する方法は特に
限定する必要がなく、粉末状態のままで母材表面に付着
させることにより塗布してもよいし、適当な溶媒を用い
てスラリーの状態にして塗布してもよい。粉末(材質、
粒度、粒子形状等)と母材(材質、表面粗度等)の組み
合わせによって、粉末状態のままで母材によく付着して
安定した塗布層が形成できる場合には、粉末状態のまま
で塗布する方が、スラリー形成も塗布後の乾燥も不要な
点で有利である。スラリーにして塗布する方法は、粉末
/母材間の付着性の良否にかかわらず常に安定した塗布
層が得られる点で汎用性が高く、塗布後の取扱いも比較
的容易である点で有利である。これらを考慮して塗布方
法は適宜選択すればよい。
【0009】本発明の望ましい態様においては、高周波
加熱を、塗布層形成領域に不活性ガスを吹き付けながら
行う第1段階と、不活性ガスの吹き付けを停止して行う
第2段階とにより行う。この態様によれば、第2段階に
おいて大気による酸化雰囲気中での酸化物セラミックス
の生成に先立って、第1段階において不活性ガスで大気
との接触を遮断した非酸化性雰囲気中での焼成により塗
布層内での原料粒子間界面および母材/塗布層界面での
固相拡散が行われ、未酸化状態の粒子間の接合および母
材・塗布層間の接合が優先的に行われ、被膜自体の強度
および母材/被膜間の接合強度を更に高めることができ
るという利点がある。
【0010】本発明の別の望ましい態様においては、主
金属粉末として粒子形状が非球状のものを用いる。非球
状とは、真球ではない不定形状であることを意味する。
これにより、粒子同士の接触箇所数および接触面積が増
大し、被膜の構造を形成する粒子同士の接合強度が向上
して被膜自体の破砕による脱落が抑制されると共に、粒
子/母材間の接触箇所数および接触面積も増大し、被膜
/母材間の接合も強化するので、被膜全体としての接合
強度が向上する。
【0011】本発明の別の実施態様においては、主金属
粉末の粒径が数μmから高周波加熱の誘導電流浸透深さ
までの範囲にわたって広く分布し、かつ平均粒径が誘導
電流浸透深さの約1/3である。このように広い粒度分
布を持つ原料粉末を用いると、大小の粒子の混在により
塗布層における充填密度が高まること、平均粒径よりも
大きい粒子の割合が多く、高周波加熱時に大粒子自体の
発熱による焼成促進効果が大きいこと、等の理由によっ
て被膜が緻密化し、接合強度が顕著に向上する。理由は
明らかでないが、平均粒径が誘導電流浸透深さの1/3
程度であると、上記の効果が特に顕著になる。
【0012】本発明の別の望ましい態様においては、高
周波加熱コイルと金属製部品とを、塗布層形成領域に沿
って相対的に移動させながら高周波加熱を行うことによ
り、該塗布層形成領域を逐次加熱する。これは、例えば
高周波コイルを塗布層形成領域に沿って走査することに
より行うことができる。このようにすると、塗布層形成
領域全体が同時に焼成されず、例えば一端から他端へ徐
々に焼成が進行し、焼成反応箇所が徐々に移動してゆく
ので、焼成箇所で発生する熱応力および焼成反応に起因
する応力が、隣接する未焼成部への解放により緩和され
るため、被膜の割れ発生や特に薄肉母材の反り発生を防
止できる。
【0013】本発明の別の望ましい態様においては、高
周波加熱を、塗布層形成領域に窒素ガスを吹き付けなが
ら行う。これにより、被膜表面に硬い窒化物層を生成さ
せ、耐酸化被膜に高い耐摩耗性を付与することができ
る。塗布層は微細な粉末粒子同士が単に付着し合って形
成されているので、大きな粒子表面積がそのまま大きな
反応面積を提供するため、非常に活性が高い状態にあ
り、短時間の加熱であっても塗布層の表面が窒化されて
表面硬化作用が得られる。
【0014】本発明の別の望ましい実施態様において
は、金属製部品の表面に混合粉末の第7群を塗布して第
1塗布層を形成し、第1塗布層上に第1群よりも平均粒
径の大きい混合粉末第2群を塗布して第2塗布層を形成
し、得られた2層構造塗布層形成領域に高周波加熱を行
う。高周波加熱により焼成を行う本発明の方法において
は、入熱時間が短く、入熱部位も局部的であり、また母
材との界面から被膜が形成されていくため、膜厚を大き
くしようとして厚い塗布層を形成しても、塗布層の自由
表面側が焼成不足になって脱落し、結局大きい膜厚が得
られず、また接合強度も低下する。
【0015】単層の塗布層に用いる粒径の粉末で第1の
塗布層を形成し、その上に粒径の大きい粉末で第2の塗
布層を形成して、高周波加熱すると、粒径の大きい第2
塗布層で粉末粒子自体が発熱するため、被膜形成が母材
との界面からに加えて塗布層内部からも進行していく
上、入熱量も増加するので、膜厚全体にわたって焼成が
促進され、膜厚および接合強度ともに増大させることが
できる。
【0016】高周波加熱による発熱量は粉末粒径の3乗
に比例するので、大きい粒径の粉末で形成した第2塗布
層は、有効な発熱源として作用する。大粒子による発熱
作用の利用は、前述の広い粒径分布を用いる態様の場合
にも共通している。発熱量が粒径の3乗に比例する理由
は下記のとおりである。
【0017】まず、粉末粒子に生ずる誘導起電力Eは、
粉末粒子表面を通る磁束φの時間tに対する変化とし
て、 E=−dφ/dt・・・ で表され、磁束φは磁束密度Bと粒子の表面積Sとの積
として、 φ=B・S・・・・・・ で求まり、表面積Sは粒径rの2乗に比例するから、 S∝r2 ・・・・・・・ の関係がある。
【0018】よって、式,,から、 φ∝r2 式,,から、 E∝r2 ・・・・・・・ の関係がある。
【0019】また、発熱量Pは、粉末粒子の抵抗をRと
すると、 P=I/V=V2 /R, (I:電流,V:電圧) R∝r の関係があるから、式のEは即ち上式のVであるか
ら、結局発熱量Pは、 P∝(r2)2 /r=r3 =(d/2)3 となり、すなわち粉末粒子の発熱量Pはその半径dの3
乗に比例する。
【0020】本発明の別の実施態様においては、高周波
加熱による加熱部を直ちに水冷することにより、鉄系部
材のように焼入れ可能な金属製部品について、被膜形成
と同じ工程で焼入れもできるという利点がある。特に、
表面硬化のための部分焼入れについては、従来は表面酸
化が起きて適用できなかった部材についても、耐酸化被
膜で保護しつつ焼入れできるという利点がある。すなわ
ち、塗布層が高周波加熱により焼成され耐酸化被膜を形
成した直後に同部位を水冷することにより、母材を酸化
から保護しつつ表面焼入れが行われる。
【0021】以下に、添付図面を参照して、実施例によ
り本発明を更に詳細に説明する。
【0022】
【実施例】〔実施例1〕 表1に示す成分および配合比で原料粉末をナイロンボー
ルミルにて混合・調整し、混合粉末とした。表1中、F
e−50wt%Ni粉末が本発明の耐酸化被膜の主構造を
形成するための主金属粉末であり、Cr粉末が上記主構
造の空孔を封止する他の金属酸化物を形成するための金
属粉末である。上記の混合粉末を母材鋼板(JIS S
APH440 熱間圧延鋼板)の表面に厚さ約300μ
mに均一に散布した。塗布層形成領域を高周波加熱して
耐酸化被膜を形成した。高周波加熱は、周波数f=41
4kHzの高周波電源を用い、加熱部最高到達温度が1
200〜1300℃になるように出力を調整し、100
℃以上の加熱時間が約2秒となるように行った。
【0023】比較のために、同一原料粉末および同一母
材を用いて、従来のようにAr雰囲気中で950℃×5
時間の炉内焼成により被膜形成を行った。本発明の高周
波加熱により被膜形成したサンプルおよび従来の炉内加
熱により被膜形成した比較サンプルについて、被膜と母
材との界面付近の断面の光学顕微鏡写真をそれぞれ図1
および図2に示す。本発明のサンプル(図1)は、従来
の比較サンプル(図2)のように長時間加熱による組織
の粗大化が起きていないことが分かる。
【0024】図3に、本発明のサンプルと従来の比較サ
ンプルの引張試験結果を示す。同図中には対比のために
焼成前の母材(生材)についての結果も併せて示した。
生材の引張強さ約460MPaに比べて、従来の炉内加
熱後(B)は約230MPa(生材の50%)にまで引
張強さが低下しているのに対して、本発明の高周波加熱
後(A)は約380MPa(生材の80%)の引張強さ
が確保されており、本発明の短時間加熱により組織粗大
化が防止され、母材強度の低下が抑制されたことが分か
る。
【0025】次に、本発明のサンプルと従来の比較サン
プルについて、形成された耐酸化被膜の接合強度を測定
した。測定方法を図4に示す。φ5×20(mm)のアル
ミナ丸棒の一端面を、被膜表面に接着剤で貼り付けて固
定し、この固定端から距離hの点で荷重Pを負荷して被
膜の剥離荷重Pcを求め、下式で算出される被膜/母材
界面の最大法線応力として評価した。以下の実施例にお
いても、接合強度はこれと同じ方法で評価したものであ
る。
【0026】F=4・Pc・g・h/πr3 ここで、F=界面最大法線応力 Pc=被膜剥離時の荷重 g=重力加速度 h=支点からの距離 r=アルミナ丸棒半径 図5に、上記測定結果を示す。本発明の高周波短時間焼
成により、従来の炉内長時間焼成による場合とほぼ同等
の接合強度が得られていることが分かる。 〔実施例2〕 表2に示す成分および配合比で原料粉末、溶媒、バイン
ダーをナイロンボールミルにて混合・調製し、スラリー
とした。表2中、Fe−50wt%Ni粉末が本発明の耐
酸化被膜の主構造を形成するための主金属粉末であり、
Cr粉末が上記主構造の空孔を封止する他の金属酸化物
を形成するための金属粉末である。上記のスラリーを母
材軟鋼板の表面に厚さ約100μmにディッピングによ
り塗布・乾燥した。塗布層形成領域を高周波加熱して耐
酸化被膜を形成した。高周波加熱は実施例1と同じ条件
で行った。ただし、処理パターンは下記の3通りに変え
た。
【0027】(A)大気中で1回加熱。 (B)大気中で1回加熱後、一旦室温まで冷却してか
ら、再度同じ条件で大気中で1回加熱。 (C)先ず一回目の加熱はコイル後端部からArガス
(純度99.9%以上)を流量1L/分で加熱部に吹き
付け、加熱部周辺に不活性雰囲気を形成して行った後、
一旦室温まで冷却してから、Ar吹き付けを停止した以
外は同じ条件で大気中で1回加熱。
【0028】図6に、上記3通りの処理パターンによる
耐酸化被膜の接合強度を示す。同図から、大気中1回加
熱(A)に比べて大気中2回加熱(B)により接合強度
が増加しているが、同じ2回加熱でも1回目不活性雰囲
気(Ar)中加熱+2回目大気中加熱(C)により更に
顕著に接合強度が向上していることが分かる。このよう
に、不活性雰囲気での第1段階と大気中での第2段階に
よる2段階焼成を行った(C)において接合強度が顕著
に向上するのは、不活性雰囲気での加熱中に未酸化のま
まの原料粒子間および塗布層・母材間で固相拡散により
粒子同士および塗布層・母材間の接合が優先的に進行し
た結果である。
【0029】大気中で2回焼成した(B)は第1段階の
雰囲気以外は(C)と同じ処理履歴であるが、(C)の
ように未酸化状態での固相間接合が行われないため、1
回加熱の(A)に比べて単に入熱量が増加して焼成が進
行した分だけ接合強度が若干増加したに留まっている。 〔実施例3〕実施例2と同じく、表2に示す成分および
配合比で原料粉末、溶媒およびバインダーをナイロンボ
ールミルにて混合・調製し、スラリーとした。ただし、
主金属粉末のFe−50wt%Ni粉末として、粉末粒子
の形状が(A)球状のものと(B)非球状(塊状)のも
のをそれぞれ用いて2種類のスラリーを調製した。どち
らも粒度は表2に示したものと同じく−20μmであ
る。図7(A)および(B)に粉末粒子(A)および
(B)の走査電子顕微鏡写真を示す。
【0030】各スラリーを実施例2と同じ母材に塗布・
乾燥し、実施例1と同じ加熱条件で高周波加熱により焼
成して耐酸化被膜を形成した。図8に、各スラリーから
形成した被膜の接合強度を示す。同図から、球状粒子を
用いた(A)に比べて、非球状(塊状)粒子を用いた
(B)の方が接合強度が顕著に向上していることが分か
る。これは、非球状の粉末粒子を用いると、粉末粒子同
士の接触箇所数および接触面積が増大して膜自体の強度
が増加し膜破砕による脱落が防止されると共に、粉末粒
子と母材との接触箇所数および接触面積も増大して母材
/被膜間の接合も強化されるため、結局、被膜全体とし
ての接合強度が向上するためであると考えられる。 〔実施例4〕実施例2と同じく、表2に示す成分および
配合比で原料粉末、溶媒およびバインダーをナイロンボ
ールにて混合・調製し、スラリーとした。ただし、主金
属粉末であるFe−50wt%Ni粉末は、図9に分布曲
線Aで示すように狭い粒度分布を持つ粉末と、分布曲線
Bで示すように広い粒度分布を持つ粉末の2種類を用い
てそれぞれスラリーを調製した。粉末Aは粒度分布が粒
径3μm〜21μmの範囲であるのに対して、粉末Bは
粒度分布が粒径3μm〜44μmの広い範囲である。各
スラリーを実施例2と同じ母材に塗布・乾燥し、実施例
1と同じ加熱条件で高周波加熱により焼成して耐酸化被
膜を形成した。
【0031】図10に、各スラリーから形成した被膜の
接合強度を示す。同図から、広い粒度分布の粉末Bから
形成した被膜は、狭い粒度分布の粉末Aから形成した被
膜にくらべて、接合強度が2倍近くに大幅に向上してい
る。このように広い粒度分布を持つ原料粉末を用いる
と、大小の粒子の混在により塗布層における充填密度が
高まること、平均粒径よりも大きい粒子の割合が多く、
高周波加熱時に大粒子自体の発熱による焼成促進効果が
大きいこと、等の理由によって被膜が緻密化し、接合強
度が顕著に向上するものと考えられる。 〔実施例5〕実施例2と同じく、表2に示す成分および
配合比で原料粉末、溶媒、バインダーをナイロンボール
ミルにて混合・調製し、スラリーとした。これを巾20
mm×長さ150mm×厚さ1mmの母材軟鋼板の長手方向中
心から両端方向へ向けて長さ20mmに渡って厚さ約10
0μmにディッピングにより塗布・乾燥した。塗布層形
成領域を高周波加熱して耐酸化被膜を形成した。高周波
加熱は実施例1と同じ条件で行った。ただし、加熱方法
は、巾20mm×長さ40mmの高周波コイルで塗布層形成
領域全体を一度に加熱する方法(図11(A))と、巾
20mm×長さ5mmの高周波コイルで塗布層形成領域を長
さ20mmの一端から他端まで走査して逐次加熱する方法
(図11(B))の2種類とした。
【0032】被膜形成後に、母材軟鋼板の厚さ方向への
変位(反り)を測定した結果を図12に示す。同図か
ら、コイルを走査して逐次加熱することにより、熱変形
による母材の反りが大幅に軽減することが分かる。 〔実施例6〕実施例2と同じく、表2の成分および配合
組成で混合・調製したスラリーを母材軟鋼板の表面に塗
布・乾燥し、実施例1と同じ加熱条件で焼成して耐酸化
被膜を形成した。ただし、加熱雰囲気は、(A)単に大
気中で加熱および(B)加熱部にN2 ガス(純度99.
9%以上)を流量1L/分で吹き付け、加熱部周辺に窒
化性雰囲気を形成して加熱、の2種類を用いた。
【0033】得られた耐酸化被膜の硬さを測定した結果
を表3に示す。同表から、単に大気中で焼成した場合は
被膜硬さがHV320であったのに対し、N2 ガス吹き
付け下で焼成した場合は被膜硬さがHV770に大幅に
向上していることが分かる。このように高周波による短
時間の加熱にもかかわらず、窒化による顕著な表面硬化
作用が得られた。 〔実施例7〕実施例2と同じく、表2に示す成分および
配合比で原料粉末、溶媒およびバインダーをナイロンボ
ールミルにて混合・調製し、スラリーとした。ただし、
主金属粉末であるFe−50wt%Ni粉末の粒度につい
ては、表2に示した−20μmの粉末(小粒子)を用い
たスラリーと、これよりも大きい平均粒径80μmの粉
末(大粒子)を用いたスラリーの2種類を調製した。こ
れらスラリーを実施例2と同じ母材軟鋼板に下記のよう
に塗布した。
【0034】試料Aとして、粒径−20μmの粉末(小
粒子)によるスラリーのみを、厚さ約400μmに塗布
して単層構造の塗布層を形成した。試料Bとして、粒径
−20μmの粉末(小粒子)によるスラリーを厚さ約1
50μmに塗布し、更にその上に平均粒径80μmの粉
末(大粒子)によるスラリーを厚さ約250μmに塗布
して、合計厚さ約400μmの2層構造の塗布層を形成
した(試料B)。
【0035】これらの試料を実施例1と同じ加熱条件に
て高周波により焼成して耐酸化被膜を形成した。図13
に、これら耐酸化被膜の厚さと接合強度を示す。小粒子
の粉末によるスラリーのみの単層塗布層を焼成して耐酸
化層を形成した試料Aでは、焼成したままの状態では一
応330μm程度の膜厚があったが、厚さ測定時に被膜
の外側の部分が剥離・脱落してしまい、結局実質的な膜
厚は200μm弱であった。接合強度も10MPa弱と
小さかった。したがって、この場合は単層の塗布層によ
り形成できる被膜厚さは200μm程度が限度である。
これは、小粒子のみを被膜原料とした場合、焼成に有効
な発熱は塗布層においては実質的に生ぜず、母材からの
発熱のみにより焼成が進行するため、母材/塗布層界面
から遠い部分では入熱が不足して焼成が十分に進行しな
いためである。
【0036】これに対して、下層小粒子+上層大粒子の
2層構造の塗布層を焼成して耐酸化被膜を形成した試料
Bでは、厚さ約350μmの強固な被膜が形成されてお
り、接合強度も約30MPaに向上している。これは、
塗布層上層を構成する大粒子が有効な発熱源として機能
し、焼成が母材側からと塗布層側からの両側から進行す
ることによって、被膜全厚に渡って十分に焼成が行われ
るためである。このように、塗布層上層を有効な発熱源
となり得る大粒子で形成した2層構造の塗布層とするこ
とにより、単層構造の塗布層による限界を超えた厚い被
膜を高い接合強度を確保しつつ形成できる。 〔実施例8〕実施例2と同じく表2の成分および配合比
でスラリーを調製した。これを、母材である板厚1mmの
溶融亜鉛めっき鋼板に塗布・乾燥した後、実施例1と同
じ加熱条件で高周波加熱により焼成して耐酸化被膜を形
成した。その際、単に加熱のみを行ったものを試料Aと
し、コイル後端部からコイル移動方向に対して60度の
入射角度で試料表面に水を散布しつつ加熱を行ったもの
を試料Bとした。また、比較のためにスラリーを塗布せ
ずに母材のまま加熱したものを試料Cとした。
【0037】加熱後の試料A,Bおよび生材について引
張試験を、試料B,Cについて腐食試験を行った。腐食
試験は、飽和塩水を含浸した綿布を試料上に載せ、90
℃で5分間保持した後に室温まで冷却する過程を1サイ
クルとし、このサイクル数に対して、腐食スケールの堆
積および浸食による板厚の変化を測定することにより行
った。
【0038】図14に示した試料A,Bおよび生材の引
張試験結果から、単に加熱のみを行い加熱後の水冷をし
なかった試料Aは引張強度がむしろ生材よりも低下して
いるのに対して、高周波加熱直後に加熱部を水冷した試
料Bは、有効な焼入れ硬化により著しく高い引張強度が
得られていることが分かる。図15に示した試料B,C
の腐食試験結果から、塗布層を形成せずに母材のまま加
熱した試料Cは腐食試験サイクルの進行に伴い腐食スケ
ールの堆積および浸食により板厚変化Δtが観察された
のに対して、塗布層を形成して加熱した試料Bは板厚変
化が無いことが分かる。これは、試料Cでは亜鉛めっき
膜が大気中で高温に曝されて酸化あるいは蒸発して消失
したこと、これに対して試料Bでは塗布層の焼成により
形成された耐酸化被膜により亜鉛めっき膜の酸化・蒸発
が防止されたことを示している。
【0039】すなわち、本実施例の結果は、耐酸化被膜
の存在により母材表層の酸化等を防止することができ、
有効な焼入れを行うことを示すものである。本実施例に
おいて母材として亜鉛めっき鋼板を用いたのは、母材表
層における酸化反応等の有無を示すマーカーとして亜鉛
めっき層を利用するためである。このように、塗布層を
形成して高周波加熱することにより、望みの母材部位を
酸化させることなく部分焼入れすることができる。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
金属製部品の表面に短時間の処理で高い接合強度を有す
る耐酸化被膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の高周波加熱により形成した耐
酸化被膜と母材との界面付近の金属組織を示す光学顕微
鏡写真である。
【図2】図2は、従来の炉内加熱により形成した耐酸化
被膜と母材との界面付近の金属組織を示す光学顕微鏡写
真である。
【図3】図3は、本発明の高周波加熱により耐酸化被膜
を形成した後の母材強度を、加熱前の生材および従来の
炉内加熱により耐酸化被膜を形成した後の母材強度とを
比較して示すグラフである。
【図4】図4は、耐酸化被膜の接合強度の測定方法を示
す断面図である。
【図5】図5は、本発明の高周波加熱により形成した耐
酸化被膜と従来の炉内加熱により形成した耐酸化被膜に
ついて接合強度を比較して示すグラフである。
【図6】図6は、本発明による高周波加熱を、(A)大
気中で1回行った場合、(B)大気中で2回行った場
合、および(B)Arガス中で1回行った後に大気中で
1回行った場合について、耐酸化被膜の接合強度を比較
して示すグラフである。
【図7】図7は、本発明の耐酸化被膜を形成する主金属
粉末として、粒子形状が(A)球状のものと(B)非球
状(塊状)のものを示す粒子構造の走査電子顕微鏡写真
である。
【図8】図8は、図7に示した(A)球状粒子と(B)
非球状粒子の原料粉末により形成した耐酸化被膜の接合
強度を比較して示すグラフである。
【図9】図9は、本発明の耐酸化被膜を形成する主金属
粉末として、(A)狭い粒度分布と(B)広い粒度分布
を示すグラフである。
【図10】図10は、図9の2種類の粒度分布の粉末を
用いて形成した耐酸化被膜の接合強度を比較して示すグ
ラフである。
【図11】図11は、(A)大きい高周波加熱コイルで
塗布層形成領域全体を一度に加熱する場合と、(B)小
さい高周波加熱コイルで塗布層形成領域を一端から他端
へ走査して逐次加熱する場合を示す断面図である。
【図12】図12は、図11に示した2つの加熱方法に
より耐酸化被膜を形成した後の母材の変位を比較して示
すグラフである。
【図13】図13は、本発明により、小粒子の単層塗布
層により形成した耐酸化被膜と、小粒子の下層と大粒子
の上層からなる2層構造の塗布層により形成した耐酸化
被膜とについて、形成された被膜の厚さおよび接合強度
を比較して示すグラフである。
【図14】図14は、本発明により加熱部を水冷しつつ
耐酸化被膜を形成した場合の母材強度を、被膜形成せず
に加熱した場合の母材強度および加熱前の生材強度と比
較して示すグラフである。
【図15】図15は、本発明により加熱部を水冷しつつ
耐酸化被膜を形成した場合と、被膜形成せずに加熱した
場合について、母材の腐食試験結果を示すグラフであ
る。

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属製部品の表面に、該金属製部品の基
    本成分と同種の金属の酸化物を主成分とする酸化物から
    成る主構造と、該主構造の空孔を封止している他の金属
    酸化物とから成る耐酸化被膜を形成する方法において、 上記金属製品の表面に、上記主構造を形成するための主
    金属粉末と上記空孔を封止する上記他の金属酸化物を形
    成するための金属の 粉末との混合粉末を塗布して塗布層
    を形成し、該部品の該塗布層形成領域を大気中で高周波
    加熱することを特徴とする金属製部品の耐酸化被膜の形
    成方法。
  2. 【請求項2】 該混合粉末をスラリーにして塗布するこ
    とを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 該高周波加熱を、該塗布層形成領域に不
    活性ガスを吹き付けながら行う第1段階と、該不活性ガ
    スの吹き付けを停止して行う第2段階とにより行うこと
    を特徴とする請求項1または2に記載の方法。
  4. 【請求項4】 該主金属粉末の粒子が非球状であること
    を特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載
    の方法。
  5. 【請求項5】 該主金属粉末の粒径が数μmから該高周
    波加熱の誘導電流浸透深さまでの範囲にわたって広く分
    布し、かつ平均粒径が該誘導電流浸透深さの約1/3で
    あることを特徴とする請求項1から5までのいずれか1
    項に記載の方法。
  6. 【請求項6】 高周波加熱コイルと該部品とを、該塗布
    層形成領域に沿って相対的に移動させながら該高周波加
    熱を行うことにより、該塗布層形成領域を逐次加熱する
    ことを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に
    記載の方法。
  7. 【請求項7】 該高周波加熱を、該塗布層形成領域に窒
    素ガスを吹き付けながら行うことを特徴とする請求項1
    から6までのいずれか1項に記載の方法。
  8. 【請求項8】 該金属製部品の表面に該混合粉末の第1
    群を塗布して第1塗布層を形成し、該第1塗布層上に該
    第1群よりも平均粒径の大きい第2群の該混合粉末を塗
    布して第2塗布層を形成し、得られた2層構造塗布層形
    成領域に該高周波加熱を行うことを特徴とする請求項1
    から7までのいずれか1項に記載の方法。
  9. 【請求項9】 該高周波加熱による加熱部を直ちに水冷
    することを特徴とする請求項1から8までのいずれか1
    項に記載の方法。
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