JP3192410B1 - 食品用ステロール脂肪酸エステルの製造方法 - Google Patents

食品用ステロール脂肪酸エステルの製造方法

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Abstract

【要約】 【課題】 脱臭スカム油から、安全性の高い安価な食品
用ステロール脂肪酸エステルを製造する際の原料の処理
条件、合成反応条件、さらには後の精製工程において、
一般食品素材や健康食品素材あるいは医薬品素材として
利用できるよう構成し、色、におい、味などの官能面に
おける品質に優れ、且つトランス型脂肪酸を殆ど含まな
い、安全性に優れた安価なステロール脂肪酸エステルの
製造方法を提供する。 【解決手段】 脱臭スカム油を原料とし、脱臭スカム油
中に含まれるトリアシルグリセロールなどの脂肪酸エス
テル類を予め化学触媒による加水分解反応によって分解
して、生成した脂肪酸類を分子蒸留により除去し、ステ
ロールを含む画分を得る。引き続いて、ステロールを含
む画分に任意のトリアシルグリセロールを主成分とする
油脂を加えたものを原料として、脂質分解活性を有する
酵素を触媒として厳密に制御された反応条件でステロー
ル脂肪酸エステルの合成反応を行い、更に、食品として
適当な品質を得るために数段階の精製処理を施して、ト
ランス型脂肪酸をはじめとする劣化した脂肪酸を殆ど含
まない、安全性の高い安価な食品用ステロール脂肪酸エ
ステルを酵素的に製造する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、脱臭スカム油から
低コストに食品用ステロール脂肪酸エステルを製造する
食品用ステロール脂肪酸エステルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】大豆油や菜種油などの植物油脂の精製過
程において、β-シトステロールをはじめとする多くの
ステロール類が不ケン化物の一部として得られるが、こ
のうち特にβ-シトステロールについては血漿コレステ
ロールの低下作用を持つことが知られている。また、最
近では、β-シトステロールの飽和型であるβ-シトスタ
ノールがβ-シトステロールよりも強力な血漿コレステ
ロール低下作用を示すことが明らかとなり、益々注目を
浴びつつある。
【0003】しかしながら、上記の遊離ステロール及び
遊離スタノールは消化管内のミセル相には不溶であるた
めに、その生理効果を得るための適切な摂取形態とは言
い難い。これに対し、脂溶性を改善するためにステロー
ル脂肪酸エステルとしての摂取が提案され、最近では、
ステロール脂肪酸エステルとしての植物ステロール入り
マーガリンをはじめとする各種食品への添加も試みられ
ている。
【0004】しかし、ステロール脂肪酸エステルはこれ
まで、主としてコレステリック液晶、医薬化粧品用親水
性基材として用いられている。このため、その製造方法
としては酸触媒、塩基触媒による化学合成法が用いられ
てきた。しかし、一般に化学合成ではその反応条件が過
酷であるが故に、品質の劣化を招きやすいこと、副反応
物が生成しやすいなどの問題点があり、合成反応後の精
製工程が非常に煩雑になることは避けられず、また、仮
に食品あるいは医薬品等に使用する場合には、副反応物
や反応触媒の混入が懸念されるという問題点があった。
【0005】そこで、上記の如き不具合を回避するため
に酵素の利用が検討されている。
【0006】このような酵素としてコレステロールエス
テラーゼおよびリパーゼがある。ともにカルボン酸エス
テルヒドロラーゼの一つとして分類され、コレステロー
ルエステラーゼは加水分解反応によってコレステロール
脂肪酸エステルから遊離ステロールと遊離脂肪酸を生成
する酵素と定義されている。また、リパーゼ(主として
トリアシルグリセロールリパーゼを示す。)は加水分解
反応によってグリセロール脂肪酸エステルからグリセロ
ールと遊離脂肪酸を生成する酵素と定義されている。
【0007】しかしながら、コレステロールエステラー
ゼ活性とリパーゼ活性が同一酵素中にみいだされている
例も多く(D. Lombardoら、Biochem. Biophys. Acta, 6
11,(1980),147-)、コレステロールエステラーゼおよび
リパーゼが同様にトリアシルグリセロールの分解反応を
触媒することも示されており(W. E.Momsenら、Bioche
m. Biophys. Acta, 486, (1977),103-)、現在において
もコレステロールエステラーゼであるか、或いはリパー
ゼであるか明確に分類できない例が少なからず知られて
いる。
【0008】ところで、上記の酵素は通常カルボン酸エ
ステルの加水分解反応を触媒する一方で、エステル合成
反応を触媒することが知られている。
【0009】Lawrence A.らはコレステロールエステラ
ーゼとして知られているイヌ膵液由来のステロールエス
テルヒドロラーゼによって、遊離コレステロールと遊離
オレイン酸からコレステロールオレイン酸エステルを合
成できることを示している(Biochem. Biophys. Acta,
231, (1971), 558-560)。
【0010】また、同様にD. Lombardoらは、ヒト膵液
由来のコレステロールエステラーゼがコレステロール脂
肪酸エステルの合成反応を触媒することを示している
(Biochimie et al, 1980, 62, 427-432 )。
【0011】また、明星らはリパーゼによってコレステ
ロール脂肪酸エステルを合成できることを確認している
(特願昭60-45128号)。
【0012】以上の様に前述の化学合成に対して、酵素
を用いたコレステロール脂肪酸エステルの合成が可能で
あることがこれまでに示されている。
【0013】しかしながら、上記酵素を用いた従来のコ
レステロール脂肪酸エステルの製造方法については、以
下の問題点があった。
【0014】(1)上記の例はいずれも単にステロール
脂肪酸エステルの合成反応についてのみ示したものであ
り、一般食品素材や健康食品素材あるいは医薬品素材と
してステロール脂肪酸エステルを製造することを意図し
たものではない。つまり、合成反応条件、さらには後の
精製方法において、一般食品素材や健康食品素材あるい
は医薬品素材として利用するために重要となる色、にお
い、味などの官能面における品質、さらには安全性を考
慮していない。
【0015】(2)また、ステロールエステル脂肪酸エ
ステルの原料となるステロール類については、精製度の
高い純品を原料としていることから合成後のステロール
脂肪酸エステルは高価なものとなり、食品等への利用は
コスト的に無理である。
【0016】(3)また、植物油脂の脱臭工程で発生す
る脱臭スカム油には、ステロールをはじめとする不ケン
化物や脂肪酸などが高濃度に含まれており、これらを原
料とすれば低コストにステロール脂肪酸エステルを得る
ことができる。しかしながら、この脱臭スカム中には劣
化した脂肪酸の産物として過酸化物やトランス型脂肪酸
が含まれていることが知られている。このうち、トラン
ス型脂肪酸は主に油脂の部分水素添加工程や高温下での
脱臭工程において生成することが明らかとなっている
が、人間がこのトランス型脂肪酸を多量に摂取した場
合、冠状動脈性心臓病発生のリスクが高くなるという報
告がなされている。特に欧米を中心として各種食品中の
トランス型脂肪酸含量に関心がもたれており、近年では
マーガリンなどにおいて、トランス型脂肪酸を低減化し
た製品が見られるようになってきた。つまり、脱臭スカ
ム油そのものを原料としてステロール脂肪酸エステルを
合成する際に、ランダムにエステル化反応を触媒する酵
素や化学触媒や用いた場合は、トランス型脂肪酸やその
他の劣化した脂肪酸を含むステロール脂肪酸エステルが
得られることとなるため、安全性の面から好ましくな
い。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明は、食
品用として好適で、しかも低コストに製造でき、且つト
ランス型脂肪酸をはじめとする劣化した脂肪酸を殆ど含
まない、食品用ステロール脂肪酸エステルの製造方法を
提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明の特徴は、脱臭ス
カム油からトランス型脂肪酸をはじめとする劣化した脂
肪酸を殆ど含まない、安全性の高い安価な食品用ステロ
ール脂肪酸エステルを製造することである。
【0019】すなわち、本発明の概要を図1を参照しな
がら説明すると、まず、植物油脂の精製工程の一つであ
る脱臭工程において揮発性成分を含む留出分として発生
する脱臭スカム油を原料とし(ステップ100)、脱臭
スカム油中に含まれるトリアシルグリセロールなどの脂
肪酸エステル類を予め化学触媒による加水分解反応(ス
テップ101)によって分解して(ステップ110)、
生成した脂肪酸類(ステップ112,113)を分子蒸
留(ステップ111)により除去し、ステロールを含む
画分を得る(ステップ120)。
【0020】引き続いて、ステロールを含む画分に任意
のトリアシルグリセロールを主成分とする油脂を加えた
ものを原料(ステップ122)として、脂質分解活性を
有する酵素を触媒として厳密に制御された反応条件でス
テロール脂肪酸エステル(ステップ130)の合成反応
を行い(ステップ121)、更に、食品として適当な品
質を得るために数段階の精製処理(ステップ131,1
41,151)を施して、トランス型脂肪酸をはじめと
する劣化した脂肪酸を殆ど含まない、安全性の高い安価
な食品用ステロール脂肪酸エステル(ステップ160)
を酵素的に製造するものである。
【0021】ここで、本発明に係わる請求項1の発明
は、ステロールを含む画分とトリアシルグリセロールを
主成分とする油脂に脂質分解活性を有する酵素を添加し
てステロール脂肪酸エステルを生成し、この生成された
ステロール脂肪酸エステルにさらに所定の精製工程を加
えて食品用ステロール脂肪酸エステルを製造する方法に
おいて、 ステロール原料として植物油脂の脱臭工程にお
いて発生する脱臭スカム油を使用し、脱臭スカム油中の
脂肪酸エステル類の加水分解反応を行い、第1の分子蒸
留処理によって主として脂肪酸類の除去を行ってステロ
ールを含む画分を回収し、回収されたステロールを含む
画分にトリアシルグリセロールを主成分とする油脂を添
加したものを原料として、脂質分解活性を有する酵素に
よるステロール脂肪酸エステルの合成反応を温度および
水分含量が制御された系内で一定時間行い、さらに、
1の精製工程として第2の分子蒸留処理によって主とし
て未反応のステロールや脂肪酸の除去を行い、第2の精
製工程として吸着剤処理によって主として色素成分の除
去を行い、第3の精製工程として水蒸気蒸留処理によっ
て主として臭気成分の除去を行うとともに精製温度を制
御してトランス型脂肪酸の生成を抑制し、食品用の優れ
た物性を有し、且つ官能面および安全面において優れた
食品用ステロール脂肪酸エステルを得ることを特徴とす
る。
【0022】また、請求項2の発明は、請求項1記載の
発明において、上記加水分解反応は脱臭スカム油中のト
ランス型脂肪酸や酸化脂肪酸等の劣化した脂肪酸を遊離
酸として除きやすい形態にするために行われることを特
徴とする。
【0023】また、請求項3の発明は、請求項1記載の
発明において、ステロール原料として大豆油の精製工程
において発生する大豆脱臭スカム油を用いることを特徴
とする。
【0024】また、請求項4の発明は、請求項1記載の
発明において、脱臭スカム油中の脂肪酸エステル類の加
水分解反応を行う際に、酸またはアルカリ触媒による加
水分解反応を行うことを特徴とする。
【0025】また、請求項5の発明は、請求項1記載の
発明において、第1の分子蒸留処理によって主として脂
肪酸類の除去を行って、ステロールを含む画分を回収す
る際に、13.3Pa以下、100〜200℃で処理することを特徴
とする。
【0026】また、請求項6の発明は、請求項1記載の
発明において、第1の分子蒸留処理によって主として脂
肪酸類の除去を行って、ステロールを含む画分を回収す
る際に、13.3Pa以下、100〜200℃で処理することにより
残存画分としてステロールを含む画分を回収し、さらに
得られたステロールを含む画分を更に13.3Pa以下、170
〜250℃で処理することにより留出画分としてステロー
ルを含む画分を回収することを特徴とする。
【0027】また、請求項7の発明は、請求項1記載の
発明において、回収されたステロールを含む画分にトリ
アシルグリセロールを主成分とする油脂を添加したもの
を原料として、脂質分解活性を有する酵素によるステロ
ール脂肪酸エステルの合成反応を、温度および水分含量
が制御された系内で一定時間行う際に、脂質分解活性を
有する酵素としてステロール脂肪酸エステルの分解活性
を有する酵素を用いることを特徴とする。
【0028】また、請求項8の発明は、請求項1記載の
発明において、回収されたステロールを含む画分にトリ
アシルグリセロールを主成分とする油脂を添加したもの
を原料として、脂質分解活性を有する酵素によるステロ
ール脂肪酸エステルの合成反応を、温度および水分含量
が制御された系内で一定時間行う際に、脂質分解活性を
有する酵素としてシュードモナス(Pseudomonas)属由
来のステロール脂肪酸エステルの分解活性を有する酵素
を用いることを特徴とする。
【0029】また、請求項9の発明は、請求項7又は8
記載の発明において、上記脂質分解活性を有する酵素は
コレステロールエステラーゼであることを特徴とする。
【0030】また、請求項10の発明は、請求項1記載
の発明において、回収されたステロールを含む画分に
リアシルグリセロールを主成分とする油脂を添加したも
のを原料として、脂質分解活性を有する酵素によるステ
ロール脂肪酸エステルの合成反応を、温度および水分含
量が制御された系内で一定時間行う際に、脂質分解活性
を有する酵素としてトリアシルグリセロールの分解活性
を有する酵素を用いることを特徴とする。
【0031】また、請求項11の発明は、請求項1記載
の発明において、回収されたステロールを含む画分に
リアシルグリセロールを主成分とする油脂を添加したも
のを原料として、脂質分解活性を有する酵素によるステ
ロール脂肪酸エステルの合成反応を、温度および水分含
量が制御された系内で一定時間行う際に、脂質分解活性
を有する酵素としてキャンディダ(Candida)属由来の
トリアシルグリセロールの分解活性を有する酵素を用い
ることを特徴とする。
【0032】また、請求項12の発明は、請求項10又
は11記載の発明において、上記脂質分解活性を有する
酵素はリパーゼであることを特徴とする。
【0033】また、請求項13の発明は、請求項1記載
の発明において、回収されたステロールを含む画分に
リアシルグリセロールを主成分とする油脂を添加したも
のを原料として、脂質分解活性を有する酵素によるステ
ロール脂肪酸エステルの合成反応を、温度および水分含
量が制御された系内で一定時間行う際に、トリアシルグ
リセロールを主成分とする油脂に対して0.1〜50重量%
の水分の存在下で、30〜60℃の範囲で、48時間以内の反
応を行うことを特徴とする。
【0034】また、請求項14の発明は、請求項1記載
の発明において、第1の精製工程として第2の分子蒸留
処理によって主として未反応のステロールおよび脂肪酸
の除去を行う際に、13.3Pa以下、100〜250℃で処理する
ことを特徴とする。
【0035】また、請求項15の発明は、請求項1記載
の発明において、第2の精製工程として吸着剤処理によ
って主として色素成分の除去を行う際に、吸着剤とし
て、処理原料重量に対して0.1〜50%の活性白土、シリ
カゲル、活性炭のいずれかの単一物、あるいは二種類以
上の混合物を用いて、100℃以下で処理することを特徴
とする。
【0036】また、請求項16の発明は、請求項1記載
の発明において、第3の精製工程として水蒸気蒸留処理
によって主として臭気成分の除去を行う際に、13.3kPa
以下、50〜150℃で処理することを特徴とする。
【0037】また、請求項17の発明は、請求項1記載
の発明において、製品として得られるステロール脂肪酸
エステル中のステロール脂肪酸エステル含量が90重量%
以上であり、且つステロール脂肪酸エステルの構成脂肪
酸中のトランス型脂肪酸含量が2%以下であり、且つ過
酸化物価が10以下であり、且つ酸価が1以下であり、且
つ色が6以下(ガードナー法)であり、且つ官能的に殆
ど無臭であることを特徴とする。
【0038】また、請求項18の発明は、請求項1記載
の発明において、回収されたステロールを含む画分に添
加するトリアシルグリセロールを主成分とする油脂とし
て、大豆油を使用し、その際に製品として得られるステ
ロール脂肪酸エステルの融点が20〜40℃であり、且つス
テロール脂肪酸エステルの構成脂肪酸中のトランス型脂
肪酸含量が2%以下であることを特徴とする。
【0039】また、請求項19の発明は、請求項1記載
の発明において、回収されたステロールを含む画分に添
加するトリアシルグリセロールを主成分とする油脂とし
て菜種油を使用し、その際に製品として得られるステロ
ール脂肪酸エステルの融点が20〜40℃であり、且つステ
ロール脂肪酸エステルの構成脂肪酸中のトランス型脂肪
酸含量が2%以下であることを特徴とする。
【0040】また、請求項20の発明は、請求項1記載
の発明において、回収されたステロールを含む画分に添
加するトリアシルグリセロールを主成分とする油脂とし
てオリーブ油を使用し、その際に製品として得られるス
テロール脂肪酸エステルの融点が25〜45℃であり、且つ
ステロール脂肪酸エステルの構成脂肪酸中のトランス型
脂肪酸含量が1%以下であることを特徴とする。
【0041】また、請求項21の発明は、請求項1記載
の発明において、回収されたステロールを含む画分に添
加するトリアシルグリセロールを主成分とする油脂とし
てパーム油を使用し、その際に製品として得られるステ
ロール脂肪酸エステルの融点が40〜100℃であり、且つ
ステロール脂肪酸エステルの構成脂肪酸中のトランス型
脂肪酸含量が1%以下であることを特徴とする。
【0042】また、請求項22の発明は、請求項1記載
の発明において、回収されたステロールを含む画分に添
加するトリアシルグリセロールを主成分とする油脂とし
てパーム油を使用し、且つ、耐熱性の脂質分解活性を有
する酵素を使用し、その際に製品として得られるステロ
ール脂肪酸エステルの融点が40〜100℃であり、且つス
テロール脂肪酸エステルの構成脂肪酸中のトランス型脂
肪酸含量が1%以下であることを特徴とする。
【0043】また、請求項23の発明は、請求項1記載
の発明において、回収されたステロールを含む画分に添
加するトリアシルグリセロールを主成分とする油脂とし
て魚油を使用し、その際に製品として得られるステロー
ル脂肪酸エステルの融点が-10〜20℃であり、且つステ
ロール脂肪酸エステルの構成脂肪酸中のトランス型脂肪
酸含量が2%以下であることを特徴とする。
【0044】以下、本発明を図1を参照しながら詳細に
説明する。
【0045】まずはじめに、ステップ100の脱臭スカ
ム油の分解に関する工程について説明する。
【0046】本発明において、原料として使用される脱
臭スカム油としては、植物油脂の脱臭工程で発生するも
のであれば任意の植物油に由来する脱臭スカム油を用い
ることができ、例えば大豆脱臭スカム油、菜種脱臭スカ
ム油、パーム脱臭スカム油などがあげられ、その他、ヒ
マワリ油、米ぬか油、コーン油、サフラワー油などに由
来する脱臭スカム油も使用できる。これらの脱臭スカム
油中には、遊離ステロール、遊離脂肪酸をはじめとし
て、トリアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、
モノアシルグリセロール、トコフェロール、カロチン、
ワックスなどが含まれている。
【0047】このうち、遊離ステロールとしてはβ-シ
トステロールをはじめとして、カンペステロール、ブラ
シカステロール、スチグマステロール、コレステロール
などが含まれており、一方、遊離脂肪酸あるいはトリア
シルグリセロール、ジアシルグリセロール、モノアシル
グリセロールに結合している脂肪酸としては、リノール
酸をはじめとして、オレイン酸、パルミチン酸、ステア
リン酸、α-リノレン酸、ミリスチン酸などが含まれて
いる。これらの脂肪酸のうち、不飽和結合を比較的多く
持つリノール酸などではトランス型脂肪酸の割合が高
く、リノール酸を多く含む大豆脱臭スカム油では、その
トランス型脂肪酸含量も高いものと考えられる。
【0048】また、上記のごとき脱臭スカム油には、通
常、色素成分やその他の固形物が含まれている場合が多
いことから、そのままステロール脂肪酸エステルの合成
に用いた場合、脱色、脱臭などの精製工程において困難
が生じる可能性が高い。
【0049】そこで、本発明においては、予め脱臭スカ
ム油中に含まれているトリアシルグリセロールなどの脂
肪酸エステル類を加水分解し(ステップ101)、その
後生成した脂肪酸類(ステップ110)を分子蒸留(第
1の分子蒸留処理)(ステップ111)によって除去し
た後に得られるステロールを含む画分(ステップ12
0)をステロール脂肪酸エステル合成反応の基質とす
る。
【0050】こうして、予めトリアシルグリセロールな
どの脂肪酸エステル類を遊離脂肪酸にし(ステップ11
0)、劣化したトランス型脂肪酸や酸化脂肪酸を分子蒸
留(ステップ111)によって除去しやすくする。
【0051】予め脱臭スカム油中に含まれているトリア
シルグリセロールなどの脂肪酸エステル類を加水分解す
る際に使用する触媒としては、酸、アルカリなどの化学
触媒が挙げられ、食品に使用可能なものであればいずれ
を用いてもよいが、例えば酸としては塩酸、硫酸など
が、また、アルカリとしては水酸化ナトリウム、水酸化
カリウムなどが用いられる。
【0052】尚、一般に脂肪酸エステル類の加水分解に
は、化学触媒の他に、すでに述べたようにリパーゼ等の
脂質分解活性を有する酵素を用いることができるが、本
発明において、脱臭スカム油中の脂肪酸エステル類の加
水分解を行う際にリパーゼなどを使用すると、トリアシ
ルグリセロール類の分解と同時に、ステロール脂肪酸エ
ステルの合成反応が進行するため、本発明中の脂肪酸エ
ステル類の加水分解においてリパーゼ等の脂質分解活性
を有する酵素を用いることは適切ではない。
【0053】脂肪酸エステル類の加水分解反応(ステッ
プ101)における触媒の濃度、反応温度、反応時間は
任意に設定できるが、過度の反応は脱臭スカム油中の各
成分の劣化を引き起こし、着色などの好ましくない現象
を引き起こすことから、150℃以下で数時間以内に反応
を終了することが望ましい。
【0054】反応終了後は、適当な酸またはアルカリに
よって中和を行い、続けて水洗によって化学触媒や生成
したグリセリン、塩類などの除去を行う。水洗後は、油
水分離後、減圧下、60〜120℃程度で一定時間加熱する
ことにより脱水を行う(ステップ110)。
【0055】上記脱水処理後の脱臭スカム(ステップ1
10)は分子蒸留処理によって分画を行う(ステップ1
11)。本発明においては、劣化した脂肪酸類として存
在するトランス型脂肪酸や脂肪酸の過酸化物など(ステ
ップ112,113)を除去することが目的であり、1
3.3Pa以下、100〜200℃で処理して、留出画分として脂
肪酸類を除去して、残存画分としてステロールを含む画
分を得る(ステップ120)。
【0056】また、脱臭スカム油中に含まれている色素
成分やその他の固形物を除くために、先の分子蒸留処理
(ステップ111)によって得られた残存画分(ステッ
プ120)を再び13.3Pa以下、170〜250℃で処理して、
留出画分としてステロールが含まれた画分(ステップ1
20)を得ることができる。これにより、後の精製工程
において、特に脱色、脱臭工程が容易に行えることとな
り、また、得られる製品において特に色、におい、味な
どの点で非常に優れたものを得ることができる。
【0057】次に、ステップ121,122,130の
ステロール脂肪酸エステルの合成に関する工程について
説明する。これによって、ステロール脂肪酸エステル
(ステップ130)が生成される。
【0058】前述の脱臭スカム油の分解および蒸留によ
って得られたステロールを含む画分(ステップ120の
画分)を一方の原料とし、任意のトリアシルグリセロー
ルを主成分とする油脂(ステップ122)を他方の原料
としてステロール脂肪酸エステルの合成反応を行う。
【0059】トリアシルグリセロールを主成分とする油
脂としては、大豆油、菜種油、オリーブ油、パーム油、
ひまわり油、サフラワー油、コーン油、綿実油、ゴマ
油、米ぬか油、ヤシ油、落花生油、牛脂、豚脂、鶏脂、
魚油などが挙げられるが、これらの油脂は単独で用いて
も、あるいは二種類以上を混合したものを用いてもよ
い。本発明においては、任意の油脂を採用することによ
り、所望する特定の融点をもつステロール脂肪酸エステ
ルを得ることができる。
【0060】また、近年、特定の脂肪酸に生理活性が見
出されることが知られており、本発明においては、脂肪
酸の生理機能に着目して、所望の脂肪酸を多く含む油脂
を選択することもできる。
【0061】油脂の添加量としては、ステロールを含む
画分に対して、50〜500重量%であるとよいが、より好
ましくは100〜300重量%である。
【0062】ステロール脂肪酸エステルの合成反応にお
いて触媒として使用される脂質分解活性を有する酵素と
してはリパーゼやコレステロールエステラーゼが挙げら
れる。これらは、各種微生物、動物、植物起源のいずれ
でも良く、微生物起源のものとしては、例えばシュード
モナス(Pseudomonas)属、アルカリゲネス(Alcalig en
es)属、キャンディダ(Candida)属、ムコール(Muco
r)属、リゾプス(Rhizopus)属、ジオトリカム(Geotr
icum)属由来の脂質分解活性を有する酵素などが挙げら
れ、動物起源のものとしては、ブタ膵臓由来の脂質分解
活性を有する酵素などが挙げられる。
【0063】また、本発明において用いられる酵素は、
ステロール脂肪酸エステルの分解活性を有する酵素(コ
レステロールエステラーゼ)か、あるいはトリアシルグ
リセロールの分解活性を有する酵素(リパーゼ)であ
り、前者の例としてはシュードモナス(Pseudomonas
属由来の酵素などが挙げられ、後者の例としてはアルカ
リゲネス(Alcaligenes)属、キャンディダ(Candida
属などが挙げられる。尚、ステロール脂肪酸エステルの
分解活性とトリアシルグリセロールの分解活性を併せ持
つ酵素も数多く知られており、本発明においてはステロ
ール脂肪酸エステルの合成反応を触媒することが可能な
脂質分解活性を有する酵素であれば、酵素分類学上の定
義によって制約されない。
【0064】尚、高温条件下でステロール脂肪酸エステ
ルの合成反応を行う場合には、耐熱性の脂質分解活性を
有する酵素を用いてもよい。また、酵素は精製されたも
のであっても、粗精製のものであってもよく、また、微
生物由来の脂質分解活性を有する酵素を使用する場合
は、菌体そのものを用いても、培養液を用いてもよい。
さらに、上記酵素は遊離型のものでもよく、セライト等
の各種担体によって固定化されたものでもよい。
【0065】本発明で用いられる脂質分解活性を有する
酵素によるステロール脂肪酸エステルの合成反応条件と
しては、色、におい、味などの官能面における品質はも
とより、安全性を考慮した、食品として適当な品質を有
する製品を安価に得るために厳密に制御する必要性があ
る。以下に合成反応条件について述べる。
【0066】使用する酵素量は処理原料中に含まれるス
テロール1g当たり50,000単位以下、より好ましくは10,0
00単位以下にするとよい(1単位とはオリーブ油から1分
間に1マイクロモルの脂肪酸を遊離する酵素量とす
る)。製造工程中の加熱処理による劣化を防ぎ、また、
より低コストに製品を得るためには酵素使用量をできる
限り低減することが望ましく、処理原料中に含まれるス
テロール1g当たり5,000単位以下にするとよい。更に合
成反応中に酵素を段階的に添加することで酵素使用量を
低減することも可能である。
【0067】本発明においては、水分が全く存在しない
か或いは非常に微量に存在する場合には、トリアシルグ
リセロールあるいは微量のジアシルグリセロール、モノ
アシルグリセロールが残存する可能性が非常に高く、後
の精製工程で除くことが困難になることから、予め0.1
%以上の水分を添加して酵素反応を行うことが望まし
い。0.1%以上の水分存在下で酵素反応を行うことによ
りトリアシルグリセロールおよび共存するジアシルグリ
セロール、モノアシルグリセロールなどは加水分解反応
を受けることになり、遊離脂肪酸とグリセリンに分解さ
れ、分解によって生成した脂肪酸もまたステロール脂肪
酸エステルのエステル合成反応の基質となる。
【0068】また、合成反応そのものは水の添加を増や
すことにより反応効率が高められるが、一方で、添加し
た水をステロール脂肪酸エステル合成後の精製工程にお
いて除去しなければならないことから、製造費用を圧縮
するためにも水の使用量は最小限に止める必要性があ
り、原料となるステロール画分に対して300重量%以下
であることが望ましい。
【0069】温度および時間については、反応中の熱劣
化を極力抑える為に低温、短時間で行うことが望まし
く、通常は30〜60℃で48時間以内であるとよい。尚、低
温で処理する場合には、低温で活性を発現しやすい脂質
分解活性を有する酵素を用いるとよい。
【0070】また、その一方で、原料となるステロール
類は融点が非常に高いために、もう一方の基質である脂
肪酸類との溶解性が非常に悪く、ステロール脂肪酸エス
テルの合成反応効率が低い場合がある。この問題を解消
するために、より高温で合成反応を行うことも可能であ
り、耐熱性の脂質分解活性を有する酵素を用いて、50〜
90℃で24時間以内で反応を行うとよい。この際には、反
応中の熱劣化が更に激しく進むこと、また、反応中に酵
素が失活する可能性があることから、ステロール脂肪酸
エステルの加熱劣化及び酸化劣化を防止するために、ビ
タミンEや茶ポリフェノール等の酸化防止効果を有する
物質を添加し、また、酵素の失活を防止するために胆汁
酸塩等の塩類や糖類、蛋白質などの酵素失活を防止する
物質を添加してもよい。
【0071】尚、本反応では合成反応効率を高めるため
に、通常、撹拌を行いながら反応させるが、場合によっ
ては静置反応も可能である。静置反応を行う場合には乳
化剤などを添加してもよい。また、ヘキサン等の有機溶
媒を使用することによって、反応効率を高めることもで
きるが、その場合は溶媒除去が必要となり、製造コスト
の上昇を招く可能性がある。
【0072】ステロール脂肪酸エステルの合成反応後は
酵素の失活処理、脱水処理、酵素蛋白質の除去を行う。
酵素の失活処理は60〜100℃で30〜120分程度撹拌するこ
とにより達成できる。脱水処理については、減圧条件下
において60〜120℃で一定時間処理することによって行
う。酵素蛋白質の除去は通常の濾紙や濾布、或いは濾過
フィルターを用いることができるが、その際に酵素蛋白
質の除去が不十分である場合、その後の工程において、
加熱による着色などの品質劣化を生じやすくなることか
ら、より完全に酵素蛋白質の除去を行うことが必要であ
り、濾過前に珪藻土や白土などの濾過助剤を予め添加、
撹拌した後に濾過することによって、効率的に実施する
ことができる。以上がステロール脂肪酸エステルの合成
に関する工程である。
【0073】次にステロール脂肪酸エステルの精製方法
について述べる。
【0074】本発明では、色、におい、味などの食品と
して適当な品質を有し、なおかつ安全面において優れた
ステロール脂肪酸エステルを低コストに得るために、前
述の合成反応後の精製を慎重に行わなければならない。
特に高温での処理はトランス型脂肪酸や過酸化物などの
生成を新たに引き起こす可能性があることから、温度管
理を厳密に行わなければならない。
【0075】まず、第1の精製工程として分子蒸留処理
(第2の分子蒸留処理)(ステップ131)によって主
として未反応のステロール、脂肪酸類(ステップ13
2)を除去する。酵素蛋白質の除去処理後のステロール
脂肪酸エステル(反応生成物)中には未反応のステロー
ル、脂肪酸、その他の微量成分が含まれており、これら
を除去しなければならない。
【0076】本発明においては、まず、ステロール、脂
肪酸(ステップ132)などを効率よく除去するために
分子蒸留処理(ステップ131)を施す。その際には製
品となるステロール脂肪酸エステルは残存画分(ステッ
プ140)として得られ、未反応のステロール、脂肪酸
及び一部の臭気成分が留出画分(ステップ132)とし
て除去される。分子蒸留を行う装置としては流下薄膜
式、遠心式、さらにはその他の短行程蒸留装置など挙げ
られるが、所望する真空度、温度を達成することがで
き、目的とする遊離ステロール、遊離脂肪酸およびその
他の微量成分を除去できるものであれば、いずれの蒸留
装置を用いてもよい。
【0077】分子蒸留条件としては、133Pa以下、100〜
300℃が望ましいが、好ましくは13.3Pa以下、100〜250
℃であるとよい。尚、分子蒸留操作は複数回繰り返して
行ってもよい。尚、第3の精製工程である水蒸気蒸留処
理(ステップ151)では除去しきれない臭気成分を本
工程によって除くことが可能であり、また、一方で本工
程によって若干の加熱臭が発生する場合があることか
ら、臭気成分が効率よく除去された製品を得るために
は、水蒸気蒸留処理(ステップ151)の前に、分子蒸
留処理を行う必要がある。
【0078】引き続いて、第2の精製工程(ステップ1
41)として主として色素成分(ステップ142)など
の除去を行う。分子蒸留処理後のステロール脂肪酸エス
テル(ステップ140)には原料由来の色素成分や、分
子蒸留中の加熱によって生成した色素成分、臭気成分な
どが含まれている。
【0079】本発明では、色素成分(ステップ142)
を効率よく除去するために吸着剤処理(ステップ14
1)を施す。この場合に使用する吸着剤としては、通常
の油脂精製に使用される活性白土、酸性白土、活性炭、
シリカ、シリカマグネシア等が用いられるが、好ましく
は活性白土、活性炭、シリカのいずれかを用いるとよ
い。これらは単独で用いても、二種類以上を混合したも
のを用いてもよい。これらの吸着剤は処理原料に対して
0.1〜50重量%添加するとよいが、より好ましくは1〜20
%重量添加するとよい。また、より効率良く脱色を行う
ために、ヘキサン等の非極性溶媒中で前述の吸着剤を処
理してもよい。使用する溶媒は処理原料に対して、0.1
〜50倍重量であることが好ましいが、より好ましくは0.
5〜20倍重量であるとよい。非極性溶媒を使用しない場
合は、吸着剤を添加し40〜150℃で、一定時間撹拌す
る。常圧で行うこともできるが、処理原料の劣化を抑制
し、かつ効率よく脱色するために減圧下で行うと更によ
い。圧力は低い方が好ましく13.3kPa以下で行うとよ
い。吸着剤処理後の吸着剤除去は通常の濾紙や濾布、或
いは濾過フィルターを用いることができるが、濾過前に
珪藻土などの濾過助剤を予め添加、撹拌した後に濾過す
ることによって、効率的に実施することができる。ま
た、非極性溶媒を使用する場合には、あらかじめ処理原
料を非極性溶媒に溶解し、その後吸着剤を添加して0〜6
0℃で一定時間撹拌する。前述と同様に吸着剤除去を行
い、その後、蒸留法によって非極性溶媒を除去する。よ
り完全に色素成分を除去する場合や、処理原料の色が悪
い場合には、上記のような吸着剤処理を数回繰り返して
行うとよい。繰り返して行う場合は、吸着剤の濾過後に
再び任意の吸着剤を添加し、同様な処理を行う。非極性
溶媒を用いる場合は、吸着剤の添加、撹拌、濾過を行っ
た後に、溶媒除去を行うことなく再び吸着剤を添加し、
同様に処理する。溶媒除去は最終の濾過が終わった後に
行う。
【0080】尚、以上のような吸着剤処理を行う前に、
酸処理、アルカリ処理などを施すことにより更に効果的
に脱色された製品を得ることができる。その際には、ヘ
キサン等の非極性溶媒に処理原料を溶解してミセラ状態
とし、酸処理、アルカリ処理などを行ってもよい。尚、
本工程において同時に臭気成分が生成または付着する可
能性があることから、以上の吸着剤処理(ステップ14
1)は分子蒸留処理(ステップ131)後で、且つ水蒸
気蒸留後処理(ステップ151)前に実施する必要性が
ある。
【0081】こうして色素成分(ステップ142)が除
去されたステロール脂肪酸エステル(ステップ150)
が得られると、最後に第3の精製工程として、水蒸気蒸
留処理(ステップ151)によって臭気成分(ステップ
152)などの除去を行う。脱色後のステロール脂肪酸
エステルを食品として使用するためには、原料に由来す
る臭気成分や前述までの工程において発生した臭気成分
を除かなければならない。また、有機溶媒を用いて脱色
処理を行った場合は、溶媒除去処理後においても、有機
溶媒が残存している可能性があることから、それらを完
全に除かなければならない。そこで、水蒸気蒸留処理に
よって、上記の臭気成分や残存溶媒をほぼ完全に除去す
ることが可能である。水蒸気蒸留を行う装置としては、
連続式、半連続式、バッチ式のものを使用できるが、ど
の方式の装置を用いても構わない。水蒸気蒸留条件とし
ては、13.3kPa以下、50〜200℃が望ましいが、好ましく
は1330Pa以下、50〜150℃とするとよい。水蒸気蒸留操
作は複数回繰り返して行ってもよい。
【0082】一般に脱臭目的で実施される水蒸気蒸留処
理を高温で実施することにより、トランス型脂肪酸が顕
著に生成することが知られており、本発明においては、
少なくとも200℃以下、好ましくは150℃以下で水蒸気蒸
留処理を行うことが重要である。また、先に記述したよ
うに、水蒸気蒸留(ステップ151)のみでは除去しき
れない臭気成分を完全に取り除くためには、水蒸気蒸留
処理(ステップ151)と分子蒸留処理(ステップ13
1)を共に実施する必要性があり、その際には水蒸気蒸
留処理(ステップ151)の前に分子蒸留処理(ステッ
プ131)を行うことが重要である。
【0083】本発明によって最終的に得られる製品とし
てのステロール脂肪酸エステル(ステップ160)は、
殆ど無味、無臭であり、かつ無色あるいは淡黄色を呈
し、さらにはトランス型脂肪酸を全く、或いは殆ど含ま
ない、安全面において優れた、一般食品、健康食品、医
薬品素材として適切な品質を有するものである。
【0084】このステロール脂肪酸エステルにはコレス
テロール低下作用が期待されており、機能性素材として
マーガリン、ドレッシングなどの一般食品への添加が検
討されており、本発明によれば、所望の融点を示す製品
が得られることから、より広範囲の食品への応用が期待
されるものである。
【0085】また、任意の脂肪酸を多く含むステロール
脂肪酸エステルは、脂肪酸の機能性をも意図した生理活
性の高い新たな素材として、健康食品や将来的には医薬
品等への利用も期待されるものである。
【0086】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例について説
明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるもので
はない。
【0087】
【実施例1】大豆脱臭スカム油(ステロール含量12.3
%)200gに0.2Nのエタノール性水酸化カリウム(KOH)1
0mlを加え、60℃で2時間撹拌してトリアシルグリセロー
ルをはじめとする脂肪酸エステル類の分解を行った。そ
の後、0.4Nの塩酸により中和を行い、水洗を行ってエタ
ノール、KCl、KOHおよびグリセリンを除去し、減圧下、
80℃で脱水処理を行った。続いて、遠心式分子蒸留装置
によって真空度1.5Pa、蒸発面温度170℃で分子蒸留処理
を行い、主として脂肪酸を留出画分として除去し、ステ
ロールを含む残存画分28gを回収した。
【0088】次に回収した上記のステロールを含む画分
25gと大豆精製油50gを混合したものに対して、水25ml
にシュードモナス(Pseudomonas)属由来の脂質分解活
性を有する酵素粉末(50,000ユニット/g)1.0gを懸濁し
たものを加え、40℃で24時間撹拌しながらステロール脂
肪酸エステルの合成反応を行った。その後、80℃に達温
して30分間撹拌することにより酵素失活処理を行い、湯
洗後、減圧下、80℃で脱水処理を行った後、珪藻土1gを
添加、撹拌し、酵素蛋白質除去のために濾過を行った。
【0089】引き続いて、まず第2の精製工程として遠
心式分子蒸留装置を用いて真空度1.5Pa、蒸発面温度230
℃で分子蒸留処理を行い、未反応の脂肪酸およびステロ
ールを留出画分として除去した。次に、第2の精製工程
としてステロール脂肪酸エステルを含む残存画分に対し
て10%の活性白土を添加して、減圧下、80℃で30分撹拌
し、その後濾過によって色素成分が吸着された活性白土
を除去した。最後に、第3の精製工程としてバッチ式水
蒸気蒸留装置を用いて、真空度500Pa、蒸留温度150℃、
蒸留時間1時間で水蒸気蒸留処理を行い、最終的に臭気
成分が除去されたステロール脂肪酸エステル34gを得る
ことができた。
【0090】得られたステロール脂肪酸エステルは、殆
ど無味、無臭で淡黄色であり、融点は30.1℃で、構成脂
肪酸中のトランス型脂肪酸含量は1.2%であった。分析
結果は表1に示す。
【0091】
【実施例2】実施例1と同様にエタノール性水酸化カリ
ウムによる加水分解を行って得られたものを、遠心式分
子蒸留装置によって真空度1.5Pa、蒸発面温度170℃で分
子蒸留処理を行って、主として脂肪酸を留出画分として
除去し、回収されたステロールを含む残存画分を更に真
空度1.5Pa、蒸発面温度230℃で分子蒸留処理を行って、
留出画分としてステロールを含む画分22gを回収した。
【0092】次に回収したステロールを含む画分20gと
大豆精製油40gを混合したものに対して、水20mlにアル
カリゲネス(Alcaligenes)属由来の脂質分解活性を有
する酵素粉末(90,000ユニット/g)0.4gを懸濁したもの
を加え、40℃で24時間撹拌しながらステロール脂肪酸エ
ステルの合成反応を行い、実施例1と同様に酵素失活処
理、湯洗、脱水処理、酵素蛋白質除去処理を行った。
【0093】引き続いて、実施例1と同様に第2の精製
工程として分子蒸留処理を行い、第2の精製工程として
吸着剤処理を行い、第3の精製工程として水蒸気蒸留処
理を行ってステロール脂肪酸エステル29gを得ることが
できた。
【0094】得られたステロール脂肪酸エステルは、殆
ど無味、無臭でほぼ無色であり、融点は31.5℃であっ
た。また、構成脂肪酸中のトランス型脂肪酸含量は1.3
%であった。分析結果は表1に示す。
【0095】
【実施例3】実施例1と同様な操作を行って回収したス
テロールを含む画分25gと菜種精製油50gを混合したも
のに対して、水25mlにムコール(Mucor)属由来の脂質
分解活性を有する酵素粉末(80,000ユニット/g)0.5gを
懸濁したものを加え、40℃で24時間撹拌しながらステロ
ール脂肪酸エステルの合成反応を行い、実施例1と同様
に酵素失活処理、湯洗、脱水処理、酵素蛋白質除去処理
を行った。
【0096】引き続いて、実施例1と同様に第2の精製
工程として分子蒸留処理を行い、第2の精製工程として
吸着剤処理を行い、第3の精製工程として水蒸気蒸留処
理を行ってステロール脂肪酸エステル35gを得ることが
できた。得られたステロール脂肪酸エステルは、殆ど無
味、無臭で淡黄色であり、融点は31.2℃であった。ま
た、構成脂肪酸中のトランス型脂肪酸含量は1.0%であ
った。分析結果は表1に示す。
【0097】
【実施例4】実施例1と同様な操作を行って回収したス
テロールを含む画分25gとオリーブ精製油50gを混合し
たものに対して、水25mlにキャンディダ(Candida)属
由来の脂質分解活性を有する酵素粉末(360,000ユニッ
ト/g)0.2gを懸濁したものを加え、40℃で24時間撹拌し
ながらステロール脂肪酸エステルの合成反応を行い、実
施例1と同様に酵素失活処理、湯洗、脱水処理、酵素蛋
白質除去処理を行った。
【0098】引き続いて、実施例1と同様に第2の精製
工程として分子蒸留処理を行い、第2の精製工程として
吸着剤処理を行い、第3の精製工程として水蒸気蒸留処
理を行ってステロール脂肪酸エステル36gを得ることが
できた。得られたステロール脂肪酸エステルは、殆ど無
味、無臭で淡黄色であり、融点は34.7℃であった。ま
た、構成脂肪酸中のトランス型脂肪酸含量は0.4%であ
った。分析結果は表1に示す。
【0099】
【実施例5】実施例1と同様な操作を行って回収したス
テロールを含む画分25gとパーム精製油50gを混合した
ものに対して、水25mlに耐熱性を有するリゾプス(Rhiz
opus)属由来の脂質分解活性を有する酵素粉末(60,000
ユニット/g)0.5gを懸濁したものを加え、60℃で12時間
撹拌しながらステロール脂肪酸エステルの合成反応を行
い、実施例1と同様に酵素失活処理、湯洗、脱水処理、
酵素蛋白質除去処理を行った。
【0100】引き続いて、実施例1と同様に第2の精製
工程として分子蒸留処理を行い、第2の精製工程として
吸着剤処理を行い、第3の精製工程として水蒸気蒸留処
理を行ってステロール脂肪酸エステル32gを得ることが
できた。得られたステロール脂肪酸エステルは、殆ど無
味、無臭で淡黄色であり、融点は68.5℃であった。ま
た、構成脂肪酸中のトランス型脂肪酸含量は0.2%であ
った。分析結果は表1に示す。
【0101】
【実施例6】実施例1と同様な操作を行って回収したス
テロールを含む画分25gと精製マグロ油50gを混合した
ものに対して、水25mlにムコール(Mucor)属由来の脂
質分解活性を有する酵素粉末(80,000ユニット/g)0.5g
を懸濁したものを加え、40℃で24時間撹拌しながらステ
ロール脂肪酸エステルの合成反応を行い、実施例1と同
様に酵素失活処理、湯洗、脱水処理、酵素蛋白質除去処
理を行った。
【0102】引き続いて、実施例1と同様に第2の精製
工程として分子蒸留処理を行い、第2の精製工程として
吸着剤処理を行い、第3の精製工程として水蒸気蒸留処
理を行ってステロール脂肪酸エステル35gを得ることが
できた。得られたステロール脂肪酸エステルは、殆ど無
味、無臭で淡黄色であり、融点は15.1℃であった。ま
た、構成脂肪酸中のトランス型脂肪酸含量は1.8%であ
った。分析結果は表1に示す。
【0103】
【比較例1】実施例1で使用した大豆脱臭スカム油(ス
テロール含量12.3%)200gに対して、シュードモナス
Pseudomonas)属由来の脂質分解活性を有する酵素粉
末(50,000ユニット/g)4.0gを懸濁したものを加え、40
℃で48時間撹拌しながらステロール脂肪酸エステルの合
成反応を行い、湯洗後、100℃で脱水処理を行った後、
酵素蛋白質除去のために濾過を行った。
【0104】引き続いて、遠心式分子蒸留装置を用いて
真空度1.5Pa、蒸発面温度230℃で分子蒸留処理を行い、
ステロール脂肪酸エステル43gを得ることができた。得
られたステロール脂肪酸エステルは、非常に強い苦味と
強い異臭があり、褐色を呈していた。融点は29.8℃で、
構成脂肪酸中のトランス型脂肪酸含量は4.8%であっ
た。またステロール脂肪酸エステル含量は59.2%であっ
た。分析結果は表2に示す。
【0105】
【比較例2】実施例1で使用した大豆脱臭スカム油(ス
テロール含量12.3%)200gに対して、アルカリゲネス
Alcaligenes)属由来の脂質分解活性を有する酵素粉
末(90,000ユニット/g)0.6gを懸濁したものを加え、40
℃で24時間撹拌しながらステロール脂肪酸エステルの合
成反応を行い、湯洗後、100℃で脱水処理を行った後、
酵素蛋白質除去のために濾過を行った。
【0106】引き続いて、遠心式分子蒸留装置を用いて
真空度1.5Pa、蒸発面温度230℃で分子蒸留処理を行い、
未反応の脂肪酸およびステロールを留出画分として除去
し、次に、バッチ式水蒸気蒸留装置を用いて、真空度1k
Pa、蒸留温度250℃、蒸留時間2時間で水蒸気蒸留処理を
行い、ステロール脂肪酸エステル41gを得ることができ
た。得られたステロール脂肪酸エステルは、弱い苦味と
焦げ臭があり、濃い黄色を呈していた。融点は30.5℃
で、構成脂肪酸中のトランス型脂肪酸含量は7.5%であ
った。またステロール脂肪酸エステル含量は58.9%であ
った。分析結果は表2に示す。
【0107】
【比較例3】実施例1と同様に脱臭スカムに対して、脂
肪酸エステル類の加水分解および分子蒸留処理を行い、
続いてステロール脂肪酸エステルの合成反応を行って得
られた脱水処理物に対して、遠心式分子蒸留装置を用い
て真空度1.5Pa、蒸発面温度230℃で分子蒸留処理を行
い、未反応の脂肪酸およびステロールを留出画分として
除去し、次に、バッチ式水蒸気蒸留装置を用いて、真空
度500Pa、蒸留温度150℃、蒸留時間1時間で水蒸気蒸留
処理を行った。最後に10%の活性白土を添加して、減圧
下、80℃で30分撹拌し、その後濾過によってステロール
脂肪酸エステル35gを得ることができた。得られたステ
ロール脂肪酸エステルは、淡黄色であり、苦味と異臭が
感じられた。融点は30.6℃で、構成脂肪酸中のトランス
型脂肪酸含量は1.7%であった。またステロール脂肪酸
エステル含量は95.2%であった。分析結果は表2に示
す。
【0108】
【表1】
【0109】
【表2】
【0110】
【発明の効果】以上説明したように、本発明では、ま
ず、植物油脂の精製工程の一つである脱臭工程において
揮発性成分を含む留出分として発生する脱臭スカム油を
原料とし、脱臭スカム油中に含まれるトリアシルグリセ
ロールなどの脂肪酸エステル類を予め化学触媒による加
水分解反応によって分解して、生成した脂肪酸類を第1
の分子蒸留により除去し、ステロールを含む画分を得
る。引き続いて、ステロールを含む画分に任意のトリア
シルグリセロールを主成分とする油脂を加えたものを原
料として、脂質分解活性を有する酵素を触媒として厳密
に制御された反応条件でステロール脂肪酸エステルの合
成反応を行い、更に、食品として適当な品質を得るため
に数段階の精製処理を施して、トランス型脂肪酸をはじ
めとする劣化した脂肪酸を殆ど含まない、安全性の高い
安価な食品用ステロール脂肪酸エステルを酵素的に製造
することが出来るという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の概要を示す全体構成図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 金子 昌二 広島県福山市箕沖町95番地7 池田食研 株式会社内 (72)発明者 佐藤 ふみ 広島県福山市箕沖町95番地7 池田食研 株式会社内 (56)参考文献 特開 昭62−296894(JP,A) 特開 昭53−106710(JP,A) 特開 昭61−204197(JP,A) 特開2000−302777(JP,A) 特開 昭49−489(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07J 1/00 - 75/00 WPI(DIALOG)

Claims (23)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ステロールを含む画分とトリアシルグリ
    セロールを主成分とする油脂に脂質分解活性を有する酵
    素を添加してステロール脂肪酸エステルを生成し、この
    生成されたステロール脂肪酸エステルにさらに所定の精
    製工程を加えて食品用ステロール脂肪酸エステルを製造
    する方法において、 ステロール 原料として植物油脂の脱臭工程において発生
    する脱臭スカム油を使用し、 脱臭スカム油中の脂肪酸エステル類の加水分解反応を行
    い、第1の分子蒸留処理 によって主として脂肪酸類の除去を
    行ってステロールを含む画分を回収し、 回収されたステロールを含む画分にトリアシルグリセロ
    ールを主成分とする油脂を添加したものを原料として、
    脂質分解活性を有する酵素によるステロール脂肪酸エス
    テルの合成反応を温度および水分含量が制御された系内
    で一定時間行い、さらに、 第1の精製工程として第2の分子蒸留処理によって主と
    して未反応のステロールや脂肪酸の除去を行い、 第2の精製工程として吸着剤処理によって主として色素
    成分の除去を行い、 第3の精製工程として水蒸気蒸留処理によって主として
    臭気成分の除去を行うとともに精製温度を制御してトラ
    ンス型脂肪酸の生成を抑制し、 食品用の優れた物性を有し、且つ官能面および安全面に
    おいて優れた食品用ステロール脂肪酸エステルを得るこ
    とを特徴とする食品用ステロール脂肪酸エステルの製造
    方法。
  2. 【請求項2】 上記加水分解反応は脱臭スカム油中のト
    ランス型脂肪酸や酸化脂肪酸等の劣化した脂肪酸を遊離
    酸として除きやすい形態にするために行われることを特
    徴とする請求項1記載の食品用ステロール脂肪酸エステ
    ルの製造方法。
  3. 【請求項3】 ステロール原料として大豆油の精製工程
    において発生する大豆脱臭スカム油を用いることを特徴
    とする請求項1記載の食品用ステロール脂肪酸エステル
    の製造方法。
  4. 【請求項4】 脱臭スカム油中の脂肪酸エステル類の加
    水分解反応を行う際に、酸またはアルカリ触媒による加
    水分解反応を行うことを特徴とする請求項1記載の食品
    用ステロール脂肪酸エステルの製造方法。
  5. 【請求項5】 第1の分子蒸留処理によって主として脂
    肪酸類の除去を行って、ステロールを含む画分を回収す
    る際に、13.3Pa以下、100〜200℃で処理することを特徴
    とする請求項1記載の食品用ステロール脂肪酸エステル
    の製造方法。
  6. 【請求項6】 第1の分子蒸留処理によって主として脂
    肪酸類の除去を行って、ステロールを含む画分を回収す
    る際に、13.3Pa以下、100〜200℃で処理することにより
    残存画分としてステロールを含む画分を回収し、さらに
    得られたステロールを含む画分を更に13.3Pa以下、170
    〜250℃で処理することにより留出画分としてステロー
    ルを含む画分を回収することを特徴とする請求項1記載
    の食品用ステロール脂肪酸エステルの製造方法。
  7. 【請求項7】 回収されたステロールを含む画分にトリ
    アシルグリセロールを主成分とする油脂を添加したもの
    を原料として、脂質分解活性を有する酵素によるステロ
    ール脂肪酸エステルの合成反応を、温度および水分含量
    が制御された系内で一定時間行う際に、脂質分解活性を
    有する酵素としてステロール脂肪酸エステルの分解活性
    を有する酵素を用いることを特徴とする請求項1記載の
    食品用ステロール脂肪酸エステルの製造方法。
  8. 【請求項8】 回収されたステロールを含む画分にトリ
    アシルグリセロールを主成分とする油脂を添加したもの
    を原料として、脂質分解活性を有する酵素によるステロ
    ール脂肪酸エステルの合成反応を、温度および水分含量
    が制御された系内で一定時間行う際に、脂質分解活性を
    有する酵素としてシュードモナス(Pseudomonas)属由
    来のステロール脂肪酸エステルの分解活性を有する酵素
    を用いることを特徴とする請求項1記載の食品用ステロ
    ール脂肪酸エステルの製造方法。
  9. 【請求項9】 上記脂質分解活性を有する酵素はコレス
    テロールエステラーゼであることを特徴とする請求項7
    又は8記載の食品用ステロール脂肪酸エステルの製造方
    法。
  10. 【請求項10】 回収されたステロールを含む画分に
    リアシルグリセロールを主成分とする油脂を添加したも
    のを原料として、脂質分解活性を有する酵素によるステ
    ロール脂肪酸エステルの合成反応を、温度および水分含
    量が制御された系内で一定時間行う際に、脂質分解活性
    を有する酵素としてトリアシルグリセロールの分解活性
    を有する酵素を用いることを特徴とする請求項1記載の
    食品用ステロール脂肪酸エステルの製造方法。
  11. 【請求項11】 回収されたステロールを含む画分に
    リアシルグリセロールを主成分とする油脂を添加したも
    のを原料として、脂質分解活性を有する酵素によるステ
    ロール脂肪酸エステルの合成反応を、温度および水分含
    量が制御された系内で一定時間行う際に、脂質分解活性
    を有する酵素としてキャンディダ(Candida)属由来の
    トリアシルグリセロールの分解活性を有する酵素を用い
    ることを特徴とする請求項1記載の食品用ステロール脂
    肪酸エステルの製造方法。
  12. 【請求項12】 上記脂質分解活性を有する酵素はリパ
    ーゼであることを特徴とする請求項10又は11記載の
    食品用ステロール脂肪酸エステルの製造方法。
  13. 【請求項13】 回収されたステロールを含む画分に
    リアシルグリセロールを主成分とする油脂を添加したも
    のを原料として、脂質分解活性を有する酵素によるステ
    ロール脂肪酸エステルの合成反応を、温度および水分含
    量が制御された系内で一定時間行う際に、トリアシルグ
    リセロールを主成分とする油脂に対して0.1〜50重量%
    の水分の存在下で、30〜60℃の範囲で、48時間以内の反
    応を行うことを特徴とする請求項1記載の食品用ステロ
    ール脂肪酸エステルの製造方法。
  14. 【請求項14】 第1の精製工程として第2の分子蒸留
    処理によって主として未反応のステロールおよび脂肪酸
    の除去を行う際に、13.3Pa以下、100〜250℃で処理する
    ことを特徴とする請求項1記載の食品用ステロール脂肪
    酸エステルの製造方法。
  15. 【請求項15】 第2の精製工程として吸着剤処理によ
    って主として色素成分の除去を行う際に、吸着剤とし
    て、処理原料重量に対して0.1〜50%の活性白土、シリ
    カゲル、活性炭のいずれかの単一物、あるいは二種類以
    上の混合物を用いて、100℃以下で処理することを特徴
    とする請求項1記載の食品用ステロール脂肪酸エステル
    の製造方法。
  16. 【請求項16】 第3の精製工程として水蒸気蒸留処理
    によって主として臭気成分の除去を行う際に、1330Pa以
    下、50〜150℃で処理することを特徴とする請求項1記
    載の食品用ステロール脂肪酸エステルの製造方法。
  17. 【請求項17】 製品として得られるステロール脂肪酸
    エステル中のステロール脂肪酸エステル含量が90重量%
    以上であり、且つステロール脂肪酸エステルの構成脂肪
    酸中のトランス型脂肪酸含量が2%以下であり、且つ過
    酸化物価が10以下であり、且つ酸価が1以下であり、且
    つ色が6以下(ガードナー法)であり、且つ官能的に殆
    ど無臭であることを特徴とする請求項1記載の食品用ス
    テロール脂肪酸エステルの製造方法。
  18. 【請求項18】 回収されたステロールを含む画分に添
    加するトリアシルグリセロールを主成分とする油脂とし
    て、大豆油を使用し、その際に製品として得られるステ
    ロール脂肪酸エステルの融点が20〜40℃であり、且つス
    テロール脂肪酸エステルの構成脂肪酸中のトランス型脂
    肪酸含量が2%以下であることを特徴とする請求項1記
    載の食品用ステロール脂肪酸エステルの製造方法。
  19. 【請求項19】 回収されたステロールを含む画分に添
    加するトリアシルグリセロールを主成分とする油脂とし
    て菜種油を使用し、その際に製品として得られるステロ
    ール脂肪酸エステルの融点が20〜40℃であり、且つステ
    ロール脂肪酸エステルの構成脂肪酸中のトランス型脂肪
    酸含量が2%以下であることを特徴とする請求項1記載
    の食品用ステロール脂肪酸エステルの製造方法。
  20. 【請求項20】 回収されたステロールを含む画分に添
    加するトリアシルグリセロールを主成分とする油脂とし
    てオリーブ油を使用し、その際に製品として得られるス
    テロール脂肪酸エステルの融点が25〜45℃であり、且つ
    ステロール脂肪酸エステルの構成脂肪酸中のトランス型
    脂肪酸含量が1%以下であることを特徴とする請求項1
    記載の食品用ステロール脂肪酸エステルの製造方法。
  21. 【請求項21】 回収されたステロールを含む画分に添
    加するトリアシルグリセロールを主成分とする油脂とし
    てパーム油を使用し、その際に製品として得られるステ
    ロール脂肪酸エステルの融点が40〜100℃であり、且つ
    ステロール脂肪酸エステルの構成脂肪酸中のトランス型
    脂肪酸含量が1%以下であることを特徴とする請求項1
    記載の食品用ステロール脂肪酸エステルの製造方法。
  22. 【請求項22】 回収されたステロールを含む画分に添
    加するトリアシルグリセロールを主成分とする油脂とし
    てパーム油を使用し、且つ、耐熱性の脂質分解活性を有
    する酵素を使用し、その際に製品として得られるステロ
    ール脂肪酸エステルの融点が40〜100℃であり、且つス
    テロール脂肪酸エステルの構成脂肪酸中のトランス型脂
    肪酸含量が1%以下であることを特徴とする請求項1記
    載の食品用ステロール脂肪酸エステルの製造方法。
  23. 【請求項23】 回収されたステロールを含む画分に添
    加するトリアシルグリセロールを主成分とする油脂とし
    て魚油を使用し、その際に製品として得られるステロー
    ル脂肪酸エステルの融点が-10〜20℃であり、且つステ
    ロール脂肪酸エステルの構成脂肪酸中のトランス型脂肪
    酸含量が2%以下であることを特徴とする請求項1記載
    の食品用ステロール脂肪酸エステルの製造方法。
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