JP3180923B2 - 滑り止めタイルとその製造法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、浴場床、トイレ床等に
敷設する滑り止めタイル、いわゆるノンスリップタイル
に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来から、このノンスリップタイルとし
て、例えば特公昭６０−３９８２７号公報に記載されて
いるように、陶磁器質のタイル表面に、溶融温度がタイ
ルの焼成温度よりも高い溶融アルミナを釉薬に混合して
固定し、あるいは、溶融粘性の高い釉薬を施して表面に
凹凸面を形成して、タイルに滑り止め機能を付加してい
る。

【０００３】ところが、かかる凹凸面への塵、汚れの堆
積物の除去は困難であり、とくに、このようなノンスリ
ップタイルを浴場床等に施した場合、この凹凸面の存在
による汚れは形成され易く、また、落ち難いため、外観
上も目立ち、不潔感をもたらす。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、表面
に凹凸面を形成して滑り止め機能を付与したタイルにお
いて、汚れが付き難く、また、比較的簡単に汚れを除去
できる手段を、タイル凹凸の態様面から見出そうとする
ものである。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明は、タイル表面の
滑り止め機能をもたらす凹凸の程度と、タイル表面に堆
積した塵等の落ち易さの指標としての光沢度とのバラン
スから、これらの最適範囲を凹凸面の粗さが１０点平均
粗さで２５〜２００μｍ、好ましくは５０〜１５０μｍ
であり、且つ、光沢度が５〜２０％、好ましくは８〜１
２％とすることによって上記の課題を解決した。ここ
で、光沢度は５％未満であると汚れの除去が困難とな
り、２０％超であると滑りやすくなるので好ましくな
い。

【０００６】このような表面凹凸を有する滑り止めタイ
ルは、タイル素地表面に、耐火度がＳＫ３ａ〜１１の下
地釉薬による施釉を行い、この下地施釉層が生の状態の
ときに、耐火度が下地釉薬よりも高いか、もしくは同等
程度の凹凸表面形成用釉薬による施釉を行った後、焼成
することによって製造できる。

【０００７】

【作用】タイル表面の滑りの防止機能、とくに、素足に
対して、しかも、表面が濡れた通常のタイルの滑りの防
止機能は、タイル表面に形成された凹凸の程度と一義的
な関係がある。また、汚れの発生と表面からの除去され
易さは、その光沢の程度と一義的な関連を有する。この
凹凸面を１０点平均粗さで２５〜２００μｍの範囲に規
定し、また、光沢度を５〜２０％の範囲に規定すること
によって、滑り止め機能を何ら損なうことなく、堆積塵
が除去しやすいタイルが得られる。

【０００８】

【実施例】図１は、本発明に係る滑り止めタイルの形成
過程を示す図であり、図中１はタイル素地を示し、２は
タイル素地１上に形成された下地釉薬層を示し、３は下
地釉薬層２が生の状態にあるときに、スクリーン印刷に
よって下地釉薬層２の上に形成された凹凸面形成のため
の釉薬層を示す。

【０００９】長石２０重量部、珪石１０重量部、焼タル
ク２０重量部、石灰１０重量部、粘土５重量部それにフ
リット３５重量部とからなる融点が１１８０℃（耐火度
ＳＫ５ａ）の釉薬を調製し、これを浴場床張り用タイル
素地１の表面に４００μｍ厚に一様に施釉して下地釉薬
層２を形成した。この下地釉薬層２が生の状態で、珪石
４０重量部、焼タルク２５重量部それにフリット３５重
量部からなる融点が１２００℃（耐火度ＳＫ６ａ）の表
面状態調整用の釉薬を調製し、この釉薬をスクリーン印
刷によって、凹凸面形成のための釉薬層３を形成し、こ
れをトンネル炉中で、１２００℃で２４時間焼成した。

【００１０】これにより、表面性状が１０点平均粗さが
２００〜２５０μｍ、光沢度が１０〜１５％、滑り抵抗
（ＢＰＮ値）３０〜３２のタイルが得られた。

【００１１】また、長石４０重量部、珪石１０重量部、
珪灰石１５重量部、アルミナ１５重量部、粘土１０重量
部及び亜鉛華１０重量部とからなる融点が１２３０℃
（耐火度ＳＫ７）の釉薬を調整し、これをトイレ床用タ
イル素地１の表面に４００μｍ厚に一様に施釉して下地
釉薬層２を形成した。この下地釉薬層２が生の状態で、
下地釉薬層２と同組成のものにアルミナ等の耐火度を上
げる原料粉末を２５重量％以内で外添加した融点が１２
８０℃（耐火度ＳＫ９）の表面状態調整用の釉薬を調整
し、この釉薬をスクリーン印刷によって、凹凸面形成の
ための釉薬層３を形成し、これをトンネル炉中で１２５
０℃で２０時間焼成した。

【００１２】これにより、表面性状が１０点平均粗さ１
１０〜１３５μｍ、光沢度６〜１０％、滑り抵抗（ＢＰ
Ｎ値）４１〜４５のタイルが得られた。

【００１３】これらの実施例のように、この印刷用釉薬
の焼タルクとフリットの量またはアルミナと長石の量を
増減することによって、種々の表面粗さを有するタイル
を得た。

【００１４】また、光沢度は表面粗さの調整と同様に、
焼タルクとフリットの量まはアルミナと長石の量を増減
することによって、光沢度を変化せしめた試料タイルを
作成した。

【００１５】表１は各試料タイル（実施例１及び２）と
従来のタイル（比較例１〜４）の表面状態と滑り抵抗と
汚れ回復度を示す。

【００１６】

【表１】

【００１７】表１において、１０点平均粗さＲｚは、東
京精密株式会社製サーコム５７０ＡによってＪＩＳ Ｂ
０６０１規格に基づいて測定した結果を示し、滑り抵抗
は谷藤機械工業株式会社製のスベリ抵抗測定器によって
測定した。また、光沢度は、日本電色工業株式会社製
光沢度計を用いてＪＩＳ Ｚ ８７４１に基づいて測定
した値を示すものである。

【００１８】また、同表において汚染率％は、 汚染率％＝｛１−（汚染後の拡散反射率／汚染前の拡散
反射）｝×１００ として表わし、また、回復率％は、流水洗浄によって除
去処理を行ったのちの汚染状態を 回復率％＝（洗浄処理後の反射率／汚染前の拡散反射）
×１００ によって示す。

【００１９】同表において、滑り抵抗値はＫＯＤＡＮ
（ＡＳＴＭ Ｅ３０３）２２１すべり評価法によれば、
湿潤状態で「問題なし」とされ、歩行性のランクとして
「良好」のランクに入るＢＰＮ値（滑り抵抗値：Ｂｒｉ
ｔｉｓｈ ＰｅｎｄｕｌｕｍＮｕｍｂｅｒによって表わ
す。）は３０〜５３の間にあり、その場合の１０点平均
粗さは２５〜２００μｍの範囲内にある。

【００２０】また、同表において、汚染率と汚染回復率
は、それぞれ５％以内、９０％以上の場合が平滑面を有
するタイルに近似するもので、これを基準にすると、そ
れぞれ光沢度が５〜２０％の範囲内のものが、この汚染
率と汚染回復率における許容範囲に入る。

【００２１】図２は、表１に示すこれらの関係を図示し
たものである。滑り止め効果を発揮するための表面凹凸
の程度は、凹凸面の粗さが１０点平均粗さで２５〜２０
０μｍであり、且つ、光沢度が５〜２０％の場合に、汚
染率、汚染回復率によって表される汚れの程度が低く、
その総合的な効果はこれらがそれぞれの規定範囲にある
場合に、最高のバランス効果を示すことが判る。

【００２２】

【発明の効果】本発明によって以下の効果を奏する。

【００２３】（１）タイルを凹凸状表面に形成し、１０
点平均粗さが２５〜２００μｍであり、且つ光沢度が５
〜２０％として、表面凹凸性状と光沢度をコントロール
することにより、耐滑り性と耐汚れ性の相反する機能を
両立させたタイルを得ることが可能となる。

【００２４】（２）格別複雑な工程を付加する必要はな
く、付着しみの除去機能を有するタイルを簡単に得るこ
とができる。

【００２５】（３）凹凸面形成のための釉薬層の厚みを
変えることにより、用途に応じたノンスリップタイルが
得られる。

【００２６】（４）印刷技法等を用いるようにすれば、
従来のノンスリップタイルに比し、装飾性が向上する。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明に係るタイルの製造方法の過程を示す
図である。

【図２】 表面に形成した凹凸による滑り止め効果と光
沢度による汚れの回復効果との総合効果を示す図であ
る。

【符号の説明】

１ タイル素地 ２ 下地釉薬層 ３ 凹凸面形成のための釉薬層

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) C04B 41/86 C04B 41/89 E04F 15/08

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 タイル素地表面に下地施釉層が形成さ
   れ、同下地施釉層に凹凸面を形成した滑り止めタイルに
   おいて、同凹凸面の粗さが１０点平均粗さで２５〜２０
   ０μｍであり、且つ、同凹凸面の光沢度が５〜２０％で
   ある滑り止めタイル。
2. 【請求項２】 タイル素地表面に、耐火度がＳＫ３ａ〜
   １１の下地釉薬による施釉を行い、この下地施釉層が生
   の状態のときに耐火度が下地釉薬と同程度もしくは高耐
   火度の凹凸表面形成用釉薬による施釉を行った後、焼成
   する凹凸面の粗さが１０点平均粗さで２５〜２００μｍ
   であり、且つ、同凹凸面の光沢度が５〜２０％である滑
   り止めタイルの製造方法。