JP3174183B2 - 変速機のシフトロッド支持構造及びその組付方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、シフトロッドを支持す
る支持部材にディテント機構が配置されている変速機の
シフトロッド支持構造及びその組付方法に関するもので
ある。

【０００２】

【従来の技術】チエンジレバーの操作に応じて変速を行
う変速機は、一般に、エンジンにクラッチを介して連結
される入力軸と、この入力軸と同軸上に、入力軸とは独
立に回転可能に配設され、複数の変速用のギヤが配列さ
れた出力軸と、出力軸に配列されたギヤと歯合する複数
のギヤを有し、入力軸の回転力を出力軸に伝達するため
のカウンタ軸と、出力軸またはカウンタ軸に配置された
同期装置とを備えるギヤトレイン系統と、同期装置のス
リーブを動作させるためのシフトフォークを有する複数
のシフトロッド等から成るシフト系統と、各種付属機構
等から構成されている。

【０００３】この種の変速機において、シフトロッドの
中立位置及び作動位置の位置決めを行うと共にシフト動
作時に節動感を与えるディテント機構を備えたものは従
来から知られている。例えば、従来のディテント機構の
構造としては、図１１に示される様に、変速機ケースに
取りつけられた支持部材１００に嵌合穴１０２が設けら
れてこの嵌合穴１０２にシフトロッド１０４が嵌合さ
れ、シフトロッド１０４にそれぞれ３つの係合溝１０４
ａ，１０４ｂ，１０４ｃが形成されると共に、支持部材
１００に形成された凹所１００ａに圧縮コイルバネ１０
６とボール１０８とが備えられ、このボール１０８が圧
縮コイルバネ１０６の付勢力によりシフトロッド１０４
の係合溝に係合し、シフトロッド１０４を所定の操作位
置に保持する様にしたものが知られている。また、複数
のシフトロッドの同時作動防止のためのインターロック
機構としては、例えば、特開平２−８５５８号後方に示
される様に、複数のシフトロッドを支持する支持部材も
しくはシフトロッド間に装着した部材に、シフトロッド
と直交する方向に移動可能なインターロックピンが設け
られ、且つ１つのシフトロッドが作動位置に移動すると
ソレノイドによってインターロックピンが他のシフトロ
ッドをロックする位置に動く様にした構造が知られてい
る。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】ところで、近年自動車
の自動組立の技術は非常に発達してきており、変速機の
組み立てにおいても、機械による自動組立が要望されて
いる。しかしながら、図１１に示される従来のディテン
ト機構においては、組み立て方法が人間の感に頼る様な
ところがあり、自動組み立てに適さないという問題点が
あった。

【０００５】ここで、従来のディテント機構の組み立て
方法について説明する。まず、図１１において嵌合穴１
０２のボールに対向する位置に形成された貫通穴１０２
ａから、ボール１０８を押圧するための押圧部材１１０
を挿入し、ボール１０８を圧縮コイルバネ１０６の付勢
力に抗して、嵌合穴１０２の側壁面に形成された凹所１
００ａ内に退避させる。この状態で、図１１に示す様
に、嵌合穴１０２内にシフトロッド１０４を挿入する。
そして、シフトロッド１０４の先端部が、押圧部材１１
０の側面に当接した状態から、押圧部材１１０を矢印Ａ
で示す様に嵌合穴１０２外に退避させると共に、シフト
ロッド１０４を矢印Ｂ方向に押していき、シフトロッド
１０４をボール１０８の上に乗り上げさせて、シフトロ
ッド１０４を嵌合穴１０２の奥まで挿入するというもの
である。すなわち、このような組立方法においては、押
圧部材１１０を嵌合穴１０２外に退避させるタイミング
と、シフトロッド１０４を押し込むタイミングが難し
く、そのタイミングによっては、シフトロッド１０４が
ボール１０８の上にうまく乗り上がらず、組み立てを失
敗することがあるという問題点があった。

【０００６】従って、本発明は上述した課題に鑑みてな
されたものであり、その目的とするところは、シフトロ
ッドを支持する支持部材にディテント機構が配置されて
いる変速機において、支持部材へのシフトロッドの組付
を容易化し、自動組み立てに対応可能なシフトロッド支
持構造及びその組付方法を提供することにある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上述の課題を解決し、目
的を達成するために、本発明の変速機のシフトロッド支
持構造は、シフトロッドを該シフトロッドの端部におい
て支持するために設けられたところの、該端部に嵌合す
る嵌合穴と、該嵌合穴中に設けられたところのディテン
ト部材であって、前記嵌合穴の内周面から弾性的に突出
することにより、前記シフトロッドの長手方向に沿って
形成された複数の係合部と選択的に係合して、前記シフ
トロッドの長手方向の位置を複数段階に規定するディテ
ント部材とを有する変速機のシフトロッド支持構造にお
いて、前記嵌合穴の、前記ディテント部材に対向する側
の壁部を、前記シフトロッドの長手方向に沿って所定量
切り欠いたことを特徴としている。

【０００８】また、本発明のシフトロッドの組付方法
は、シフトロッドを支持するための嵌合穴と、該嵌合穴
の内壁に形成された凹所に配置され、前記嵌合穴内に突
出する方向に弾性的に付勢されたディテント部材と、前
記嵌合穴の前記ディテント部材に対向する側の壁部に、
前記嵌合穴の延出方向に沿って所定長さにわたって形成
された切欠部とを有する支持部材に、前記シフトロッド
を前記嵌合穴に挿入しながら装着するシフトロッドの組
付方法であって、前記切欠部から、前記ディテント部材
を押圧するための押圧部材を前記嵌合穴内に進入させ、
前記押圧部材により、前記ディテント部材を弾性力に抗
して前記凹所内に埋没させ、前記嵌合穴内から退出させ
る工程と、前記嵌合穴内に前記シフトロッドを挿入し、
該シフトロッドの先端部を前記押圧部材の側面に当接さ
せる工程と、前記シフトロッドを前記嵌合穴内に更に挿
入しながら、前記シフトロッドと前記押圧部材とを、前
記嵌合穴及び前記切欠に沿って一体的にスライドさせる
工程と、前記押圧部材を、前記切欠部を介して前記嵌合
穴内から退出させる工程とを具備することを特徴として
いる。

【０００９】

【作用】以上の様に、この発明に係わるシフトロッド支
持構造及びその組付方法は構成されているので、押圧部
材でディテント部材を押圧して、嵌合穴内から退避させ
たままの状態で、押圧部材とシフトロッドとを嵌合穴に
沿って一体的にスライドさせることができるので、シフ
トロッドを確実にディテント部材に乗り上げさせること
ができ、シフトロッドの組付が容易に行える様になり、
自動組付が可能となる。

【００１０】

【実施例】以下、本発明の好適な一実施例について、添
付図面を参照して詳細に説明する。図１は、一実施例の
シフトロッド支持構造及びその組付方法が適用される変
速機の、組み立て手順の概略を示した図である。

【００１１】図１において、変速機１０はエンジンにク
ラッチを介して連結される入力軸１２と、この入力軸１
２と同軸上に、入力軸１２とは独立に回転可能に配設さ
れ、複数の変速用のギヤが配列された出力軸１４と、出
力軸１４に配列されたギヤと歯合する複数のギヤを有
し、入力軸１２の回転力を出力軸１４に伝達するための
カウンタ軸１６と、出力軸１４またはカウンタ軸１６に
配置された同期装置とを備えるギヤトレイン系統１８
と、同期装置のスリーブを動作させるためのシフトフォ
ークを有する複数のシフトロッド等から成るシフト系統
２０とから概略構成されている。そして、変速機１０
は、図１に示す様に、これらギヤトレイン系統１８とシ
フト系統２０とを組み合わせた組立体に、ケース２２を
かぶせることにより、組み立てられる様になされてい
る。

【００１２】なお、一実施例のシフトロッド支持構造及
びその組付方法は、図１におけるシフト系統２０に適用
されるものである。次に、図２乃至図１０は、シフト系
統２０の組み立て手順を示した図である。まず、シフト
系統２０の略完成した状態を示した図９を参照して、シ
フト系統２０の構造について説明する。図９において、
シフト系統２０には、不図示のシフトレバーにより操作
される３本のシフトロッド２４，２６，２８が配設され
ており、これら３本のシフトロッド２４，２６，２８
は、支持部材３０に支持されている。支持部材３０は、
本体部３２と、この本体部３２の前方に接続され、後述
するディテント機構が配置されるディテント部３４とか
ら構成されている。そして、本体部３２には、シフトロ
ッド２４，２６，２８が夫々挿入される挿入穴３２ａ，
３２ｂ，３２ｃが形成されている。また、各シフトロッ
ド２４，２６，２８の夫々には、前述したギヤトレイン
系統１８に配置された同期装置のスリーブに係合するシ
フトフォーク３６，３８，４０が取り付けられている。

【００１３】次に、図９及び図１０を参照して、ディテ
ント機構４２について説明する。ディテント機構４２
は、各シフトロッド２４，２６，２８が、不図示のシフ
トレバーによって、その長手方向にスライド動作された
時に、夫々３個所の操作位置で止まる様に保持するため
の機構である。各シフトロッドがそれぞれの操作位置で
止まることにより、ギヤトレイン系統１８の所望のギヤ
の組み合わせが選択され、ギヤチエンジが行われる。そ
して、その選択されたギヤの組み合わせを介して、エン
ジンの回転力が入力軸１２とカウンタ軸１６と出力軸１
４とを介して、前後輪へと伝達される。

【００１４】図９及び図１０において、支持部材３０の
ディテント部３４には、上方が開放されたＵ字溝３４
ａ，３４ｂ，３４ｃが形成されており、これらの溝にシ
フトロッド２４，２６，２８が支持される様になされて
いる。図１０（ｂ）は、図９における一番手前側のＵ字
溝３４ｃの部分の側断面図である。ディテント機構４２
は、各Ｕ字溝３４ａ，３４ｂ，３４ｃの夫々の下部に配
置されているが、これら３個所のＵ字溝３４ａ，３４
ｂ，３４ｃに配置されたディテント機構４２の構造は、
全て同一であるので、Ｕ字溝３４ｃに配置されているデ
ィテント機構４２の構造をその代表として説明する。

【００１５】図１０において、Ｕ字溝３４ｃの下面に
は、下方に突出した凹所３４ｃ１が形成されており、こ
の凹所３４ｃ１には、コイル状の圧縮バネ４４を介し
て、鋼球４６が配置されている。鋼球４６は、圧縮バネ
４４の付勢力により、常に凹所３４ｃ１から飛び出す方
向に付勢されている。一方、シフトロッド２８の下面に
は、３個所の凹部２８ａ，２８ｂ，２８ｃが形成されて
いる。そのため、シフトロッド２８が、その長手方向に
沿ってスライド動作されると、鋼球４６が、圧縮バネ４
４の付勢力によって、３個所の凹部２８ａ，２８ｂ，２
８ｃの夫々にはまり込んで、シフトロッド２８が３つの
スライド位置で保持されることとなる。

【００１６】次に、上記の様に構成されたシフト系統２
０の組み立て手順を図２乃至図１０を参照して説明す
る。まず、図２に示した様に支持部材３０に形成された
挿入穴３２ａ，３２ｂ，３２ｃに、シフトロッド２４，
２６，２８を摺動自在に支持するためのスライドベアリ
ング４８ａ，４８ｂ，４８ｃを装着する。

【００１７】次に、図３に示した様に、支持部材３０に
対して所定の位置に、１速２速シフトフォーク４０、３
速４速シフトフォーク３８、５速リバースシフトフォー
ク３６を配置する。次に、図４（ａ），（ｂ）に示した
様に、支持部材３０のＵ字溝３４ｃの底面に形成された
凹所３４ｃ１に圧縮バネ４４を挿入し、その上方から鋼
球４６を装着する。

【００１８】次に、図５（ａ），（ｂ）に示す様に、先
端部に円錐状の凹部５０ａが形成された押圧部材５０に
より、鋼球４６を凹所３４ｃ１内に押し込む様に押圧
し、図６（ａ）に示す様に鋼球４６を凹所３４ｃ１内に
退避させる。この状態で、図７に示す様に、シフトフォ
ーク４０の挿入穴４０ａにシフトロッド２８を挿入した
後に、シフトロッド２８の先端部を、図６（ａ）に示す
様にＵ字溝３４ｃ１に挿入し、シフトロッド２８の先端
部を押圧部材５０の側面に当接させる。

【００１９】この状態から、シフトロッド２８と、押圧
部材５０とをＵ字溝３４ｃに沿って矢印Ｃ方向に一体的
にスライドさせる。このとき、鋼球４６が押圧部材５０
により下方に押されたままの状態で、シフトロッド２８
が、鋼球４６の上方に乗り上げるので、圧縮バネ４４と
鋼球４６は、確実に凹所３４ｃ１内に押し込まれた状態
で、シフトロッド２８は、図６（ｂ）に示した状態を経
て図６（ｃ）に示した位置まで支持部材３０に挿入され
ることとなる。図６（ｃ）に示した状態では、押圧部材
５０は、支持部材３０の本体部３２に当接しているの
で、これ以上矢印Ｃ方向へスライドすることはできな
い。そのため、この位置において、押圧部材５０を上方
（矢印Ｄ方向）に退避させて、シフトロッド２８を更
に、スライドベアリング４８ｃ内に挿入する。これによ
り、図８（ａ）に示した様に、シフトロッド２８は、支
持部材３０に完全に組みつけられた状態となる。

【００２０】このように、この一実施例においては、押
圧部材５０が、シフトロッド２８と一体的にスライド可
能となる様に、鋼球４６に対向する挿入穴の壁部、すな
わちＵ字溝３４ｃの上部が、シフトロッド２８の長手方
向に沿って切り欠かれている（開放されている）ので、
ディテント機構４２を構成する圧縮バネ４４と鋼球４６
の組み付けが容易に行われる。

【００２１】次に、図８（ｂ）に示す様に、Ｕ字溝３４
ｃの側壁に形成された貫通穴３５ｃに、矢印Ｅ方向か
ら、貫通穴３５ａ，３５ｂを各々介してインターロック
ピン５２を挿入する。このインターロックピン５２の作
用により、同時に２本のシフトロッドが操作されること
が防止される。以上により、シフトロッド２８の支持部
材３０への組付が終了する。なお、シフトロッド２４，
２６も、シフトロッド２８と同様の手順により支持部材
３０に組み付けられる。

【００２２】このようなシフトロッド２８，２６，２４
の支持部材３０への組み付けが終了すると、次に、図９
に示す様に１速２速シフトフォーク４０、３速４速シフ
トフォーク３８、５速リバースシフトフォーク３６の夫
々のピン穴４０ｂ，３８ｂ，３６ｂに、スプリングピン
５８，５６，５４を挿入し、各シフトフォーク４０，３
８，３６を、シフトロッド２８，２６，２４に固定す
る。以上の組み立て動作により、図９，図１０（ａ），
（ｂ）に示した様に、シフト系統２０が完成する。

【００２３】以上説明した様に、この一実施例において
は、押圧部材５０が、シフトロッド２４，２６，２８と
一体的にスライド可能となる様に、鋼球４６に対向する
挿入穴の壁部、すなわちＵ字溝３４ａ，３４ｂ，３４ｃ
の上部が、シフトロッド２４，２６，２８の長手方向に
沿って切り欠かれている（開放されている）ので、ディ
テント機構４２を構成する圧縮バネ４４と鋼球４６の組
み付けが容易に行われ、シフト系統２０の自動組立が可
能となる。

【００２４】なお、本発明は、その主旨を逸脱しない範
囲で上記実施例を修正または変形したものに適用可能で
ある。

【００２５】

【発明の効果】以上説明した様に、本発明のシフトロッ
ド支持構造及びその組付方法によれば、押圧部材でディ
テント部材を押圧して、嵌合穴内から退避させたままの
状態で、押圧部材とシフトロッドとを嵌合穴に沿って一
体的にスライドさせることができるので、シフトロッド
を確実にディテント部材に乗り上げさせることができ、
シフトロッドの組付が容易に行える様になり、自動組付
が可能となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】一実施例のシフトロッド支持構造及びその組付
方法が適用される変速機の組み立て手順の概略を示した
図である。

【図２】支持部材にスライドベアリングを取り付ける様
子を示した図である。

【図３】支持部材に対して所定の位置にシフトフォーク
を配置した状態を示した図である。

【図４】支持部材に鋼球と圧縮バネを挿入する様子を示
した図である。

【図５】押圧部材により、鋼球と圧縮バネとを支持部材
の凹所内に押し込む様子を示した図である。

【図６】支持部材へのシフトロッドの組み込み手順を示
した図である。

【図７】支持部材へのシフトロッドの組み込み手順を示
した図である。

【図８】支持部材にシフトロッドが組み付けられた状態
を示した図である。

【図９】シフト系統が略完成した状態を示した斜視図で
ある。

【図１０】シフト系統が略完成した状態を示した平面図
及び側面図である。

【図１１】従来のシフトロッドの支持部材への組み付け
方法を示した図である。

【符号の説明】

１０ 変速機 １２ 入力軸 １４ 出力軸 １６ カウンタ軸 １８ ギヤトレイン系統 ２０ シフト系統 ２２ ケース ２４，２６，２８ シフトロッド ３０ 支持部材 ３２ 本体部 ３４ ディテント部 ３６，３８，４０ シフトフォーク ４２ ディテント機構 ４４ 圧縮バネ ４６ 鋼球 ５０ 押圧部材 １００ 支持部材 １０２ 嵌合穴 １０４ シフトロッド １０６ 圧縮コイルバネ １０８ ボール １１０ 押圧部材

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 シフトロッドを該シフトロッドの端部に
   おいて支持するために設けられたところの、該端部に嵌
   合する嵌合穴と、該嵌合穴中に設けられたところのディ
   テント部材であって、前記嵌合穴の内周面から弾性的に
   突出することにより、前記シフトロッドの長手方向に沿
   って形成された複数の係合部と選択的に係合して、前記
   シフトロッドの長手方向の位置を複数段階に規定するデ
   ィテント部材とを有する変速機のシフトロッド支持構造
   において、 前記嵌合穴の、前記ディテント部材に対向する側の壁部
   を、前記シフトロッドの長手方向に沿って所定量切り欠
   いたことを特徴とする変速機のシフトロッド支持構造。
2. 【請求項２】 シフトロッドを支持するための嵌合穴
   と、該嵌合穴の内壁に形成された凹所に配置され、前記
   嵌合穴内に突出する方向に弾性的に付勢されたディテン
   ト部材と、前記嵌合穴の前記ディテント部材に対向する
   側の壁部に、前記嵌合穴の延出方向に沿って所定長さに
   わたって形成された切欠部とを有する支持部材に、前記
   シフトロッドを前記嵌合穴に挿入しながら装着するシフ
   トロッドの組付方法であって、 前記切欠部から、前記ディテント部材を押圧するための
   押圧部材を前記嵌合穴内に進入させ、前記押圧部材によ
   り、前記ディテント部材を弾性力に抗して前記凹所内に
   埋没させ、前記嵌合穴内から退出させる工程と、 前記嵌合穴内に前記シフトロッドを挿入し、該シフトロ
   ッドの先端部を前記押圧部材の側面に当接させる工程
   と、 前記シフトロッドを前記嵌合穴内に更に挿入しながら、
   前記シフトロッドと前記押圧部材とを、前記嵌合穴及び
   前記切欠に沿って一体的にスライドさせる工程と、 前記押圧部材を、前記切欠部を介して前記嵌合穴内から
   退出させる工程とを具備することを特徴とするシフトロ
   ッドの組付方法。