ところで、ワイヤハーネスの分岐部分に結束バンドを装着する際には、バンドカッタにて、結束バンドの締付け及び余分長部分の切断を行う必要がある。
しかしながら、特許文献1に開示の技術では、幹線側腕部が、クリップ保持部に保持されるクリップよりも上方に大きく延出しているため、幹線側腕部の上方突出部分が、結束バンドの締付け及び余分長部分の切断作業の妨げとなってしまう。このため、結束バンドの締付け及び余分長部分の切断作業を行うためには、ワイヤハーネスの分岐部分を一旦、分岐用電線保持部から取外す必要がある。ところが、ワイヤハーネスの分岐部分を分岐用電線保持部から取外した状態で、バンドの締付け及び余分長部分の切断作業を行うと、切断作業作業が面倒となる上、ワイヤハーネスの寸法精度も悪くなってしまう。
また、ワイヤハーネスの種類によっては、その分岐部分近くにコルゲートチューブ等の保護材が取付けられる。しかしながら、特許文献1に開示の技術では、幹線側腕部自体がある程度の幅を有する部材であるため、ワイヤハーネスの分岐部分の根本近くに保護材を取付けることが困難であるという問題がある。
また、特許文献1に開示の技術では、クリップは、主として自重によってクリップ保持部内の所定位置に収っている態様であるため、電線布線時或は結束バンド結束時等に、クリップがクリップ保持部から外れてしまい、再度のクリップ取付作業が必要となってしまう恐れがある。
また、特許文献1に開示の技術では、クリップ及び結束バンドの有無等は、外観検査工程における目視検査に頼らざるを得ない。このため、取付けた工程で、その部品の有無を保証するという、自工程保証を実現し難い。
そこで、本考案の第1の課題は、ワイヤハーネスの分岐部分を治具から取外すことなく、結束バンドの締付け及び切断作業を行えるようにすることにある。第2の課題は、ワイヤハーネスの分岐部分近くに他の部材を取付けることができるようにすることにある。第3の課題は、作業中において治具からのクランプの外れを防止することにある。第4の課題は、クランプ又は結束バンドの有無を検査できるようにすることにある。
第1の態様に係るワイヤハーネスの分岐結束用組立治具は、ワイヤハーネスのうち幹線の途中から枝線が分岐する部分を保持するワイヤハーネスの分岐結束用組立治具であって、支柱と、前記支柱の上端部に取付けられた基部と、前記基部に立設され、前記分岐部分から延びる枝線を支持可能な一対の枝線保持部と、前記基部に、前記一対の枝線保持部から間隔を有して立設され、一対の枝線保持部との間で前記幹線を支持可能な幹線保持部と、を備え、前記幹線保持部に、クランプを保持可能なクランプ保持部が形成され、前記幹線保持部は、前記クランプ保持部に保持された前記クランプの上端部を越えない程度の高さ寸法に設定されたものである。
第2の態様は、第1の態様に係るワイヤハーネスの分岐結束用組立治具であって、前記一対の枝線保持部が棒状部材に形成されたものである。
第3の態様は、第1又は第2の態様に係るワイヤハーネスの分岐結束用組立治具であって、前記基部は、その上面よりも下方位置で前記一対の枝線保持部を挿通保持する保持凹部を有し、前記基部の上面と前記保持凹部との間で、前記一対の枝線保持部が前記基部の外周囲に露出しているものである。
第4の態様は、第1〜第3のいずれかの態様に係るワイヤハーネスの分岐結束用組立治具であって、前記クランプ保持部に保持されたクランプに、抜止め可能かつ係脱可能に係合するクランプロック部をさらに備えたものである。
第5の態様は、第1〜第4のいずれかの態様に係るワイヤハーネスの分岐結束用組立治具であって、前記クランプ保持部へのクランプ保持を検出し、検出結果を出力するクランプ検出部をさらに備えたものである。
第6の態様は、第1〜第5のいずれかの態様に係るワイヤハーネスの分岐結束用組立治具であって、前記幹線保持部に、前記クランプ保持部に保持される前記クランプのバンド挿通孔に連続し、前記バンド挿通孔に挿通された結束バンドを、前記幹線の外周囲の一部に沿って案内する案内溝が形成され、前記案内溝に、前記結束バンドの通過を検出し、検出結果を出力するバンド検出部が設けられたものである。
第7の態様は、第6の態様に係るワイヤハーネスの分岐結束用組立治具であって、前記クランプ保持部に保持される前記クランプのバンド挿通孔の真下に前記バンド検出部が設けられたものである。
第1の態様によると、前記幹線保持部は、前記クランプ保持部に保持された前記クランプの上端部を越えない程度の高さ寸法に設定されているため、結束バンドの締付け及び切断作業用の工具が、幹線保持部に干渉し難く、当該工具をワイヤハーネスの分岐部分近くに配設して、結束バンドの締付け及び切断作業を行うことができる。このため、ワイヤハーネスの分岐部分を治具から取外さなくとも、結束バンドの締付け及び切断作業を行える。
第2の態様によると、前記一対の枝線保持部が棒状部材に形成されているところ、そのような棒状部材は比較的小径であっても十分な強度を確保できる。このため、結束バンドの締付け及び切断作業用の工具が、枝線保持部に干渉し難く、当該工具をワイヤハーネスの分岐部分近くに配設して、結束バンドの締付け及び切断作業を行うことができる。このため、ワイヤハーネスの分岐部分を治具から取外さなくとも、結束バンドの締付け及び切断作業を行える。また、同様の理由から、ワイヤハーネスの分岐部分近くに他の部材を取付ける際に、当該他の部材が枝線保持部に干渉し難く、従って、ワイヤハーネスの分岐部分近くに他の部材を取付けることができる。
また、第3の態様によると、前記基部は、その上面よりも下方位置で前記一対の枝線保持部を挿通保持する保持凹部を有し、前記基部の上面と前記保持凹部との間で、前記一対の枝線保持部が前記基部の外周囲に露出しているため、ワイヤハーネスの分岐部分近くに他の部材を取付ける際に、当該他の部材が基部に干渉し難く、従って、ワイヤハーネスの分岐部分近くに他の部材を取付けることができる。
第4の態様によると、前記クランプ保持部に保持されたクランプに、抜止め可能かつ係脱可能に係合するクランプロック部をさらに備えているため、作業中において治具からのクランプの外れを防止することができる。
第5の態様によると、クランプ検出部による検出結果に基づいて、クランプの有無を検査できる。
第6の態様によると、バンド検出部からの検出結果に基づいて、結束バンドの有無を検査できる。
第7の態様によると、前記クランプ保持部に保持される前記クランプのバンド挿通孔の真下に前記バンド検出部が設けられているため、結束バンドの有無及びその装着状態の適否をより確実に検出できる。
以下、実施形態に係るワイヤハーネスの分岐結束用組立治具について説明する。
まず、対象となるワイヤハーネス10の分岐部分12について説明しておく。図1はワイヤハーネス10の分岐部分12を示す平面図である。
ワイヤハーネス10は、車両等において各種電気部品同士を接続するものであり、複数の電線が分岐しつつ適宜箇所にて結束された形態とされる。本分岐結束用組立治具は、そのようなワイヤハーネス10の分岐部分のうち、幹線14の途中から枝線16が略T字状に分岐する部分12を保持して結束するために用いられる。
このような略T字状の分岐部分12の結束態様として、結束バンド18及びクランプ20を有するものがある。
クランプ20は、幹線14の側面であって枝線16に対して反対側の部分に配設されている。また、結束バンド18は、幹線14のうち枝線16を挟む2つの部分のそれぞれに、当該幹線14を結束すると共にクランプ20を固定するようにして、巻回固定されている。そして、前記2つの結束バンド18によって、幹線14の結束状態、及び、幹線14からの枝線16の分岐形態が維持される。
上記クランプ20は、ワイヤハーネス10を車体等の取付対象部位に固定するためのものである。ここでは、クランプ20は、嵌込固定部22と、バンド挿通固定部24と、鍔状部26と、皿状弾性部28とを備えており、樹脂等で一体形成されている。
嵌込固定部22は、略楕円柱状に形成されており、側部に出没可能でかつ突出方向に弾性的に付勢された係合弾性部23を有している。そして、本嵌込固定部22を、取付対象部位に形成された取付孔に挿入すると、係合弾性部23が前記取付孔の周縁部に係合することで、本嵌込固定部22が取付対象部位に固定されるようになっている。
バンド挿通固定部24は、結束バンド18を挿通可能な2つのバンド挿通孔24hを有している。2つのバンド挿通孔24hは、略平行に並ぶように形成されている。この2つの結束バンド18のそれぞれに、結束バンド18が挿通されるようになっている。
鍔状部26は、嵌込固定部22とバンド挿通固定部24との間で、外周側に張出すように形成されている。
皿状弾性部28は、嵌込固定部22とバンド挿通固定部24との間であって嵌込固定部22側の位置に形成されている。皿状弾性部28は、嵌込固定部22側に向けて順次広がる皿状で、かつ、弾性変形容易な程度の薄手に形成されている。そして、上記嵌込固定部22が取付対象部位に形成された取付孔に挿入された状態で、本皿状弾性部28が取付対象部位表面に当接することで、クランプ20を取付対象部位から離れる方向に付勢し、もって、クランプ20をがたつき無く一定位置で固定できるようにする。
結束バンド18は、線状体の束等を結束するものであり、柔軟な線状(ここでは細帯状)のバンド本体部18aと、バンド本体部18aの任意の部位に係止可能な係止部18bとを有している。そして、バンド本体部18aを線状体の束周りに巻回した状態で、バンド本体部18aの先端部を係止部18bに挿通して引張ることで、係止部18bがバンド本体部18aの長手方向所定位置に係止し、線状体の束を結束状態で維持するようになっている。このような結束バンド18としては、結束バンド、ケーブルタイ等と呼ばれるものを含み、複数の電線を結束状態で維持可能な種々構成のものを用いることができる。
ワイヤハーネス10の分岐結束用組立治具30について説明する。図2及び図3は分岐結束用組立治具30にクランプ20をセットした状態を示す斜視図であり、図4は分岐結束用組立治具30にクランプ20をセットした状態を示す平面図であり、図5は図4のV−V線断面図であり、図6は図4のVI−VI線断面図である。なお、図4及び図5では分岐結束作業中における幹線14及び枝線16等を2点鎖線で示している。
この分岐結束用組立治具30は、支柱32と基部40と一対の枝線保持部50と幹線保持部60とを備えている。
支柱32は、棒状部材により形成されており、ワイヤハーネス10が組立てられる図板11上に立設されている。
基部40は、支柱32の上端部に取付固定されている。ここでは、基部40は、略直方体ブロック状に形成されており、その下部に支柱32の上端部が挿通されている。この基部40の上面である載置面42は、ワイヤハーネス10の分岐部分12を載置状に支持可能に構成されている。
一対の枝線保持部50は、上記基部40に立設されている。一対の枝線保持部50間の間隔寸法は、分岐結束作業対象となる枝線16の径寸法と略同じ又はそれよりも大きく(好ましくは若干大きく)設定されており、分岐部分12から延びる枝線16を一対の枝線保持部50間で支持可能に構成されている(図4参照)。
ここでは、一対の枝線保持部50は、それぞれ棒状部材、より具体的には、金属製の丸棒状部材により形成されている。枝線保持部50の直径は、5mm程度であることが好ましい。一対の枝線保持部50を棒状部材で形成することで、従来技術のように、板状部分で形成する場合よりも、小径、小幅にしつつ必要な強度を得ることができる。
また、一対の枝線保持部50は、基部40の一端側で隣合う一対の角部にそれぞれ挿通支持されている。より具体的には、基部40の一端側の一対の角部に、有底穴状の保持凹部44がそれぞれ形成されている。保持凹部44の上方開口は、基部40の載置面42よりも下方(例えば、10mm程度下方)に位置している。そして、枝線保持部50の端部を保持凹部44内に挿通することで、枝線保持部50の上端部を載置面42よりも上方に突出させた状態で、枝線保持部50が基部40の載置面42よりも下方位置の保持凹部44で挿通保持される。
また、基部40の一端側で隣合う一対の角部のうち基部40の載置面42と保持凹部44との間部分には、上方保持凹部45が形成されている。上方保持凹部45は、円筒周面の一部をその軸方向に沿って切り欠いて側方開口45aを形成した内周面形状を有する凹形状に形成されている。枝線保持部50の長手方向中間部分は、保持凹部44の上方で上方保持凹部45内に挿通されている。そして、基部40の載置面42と保持凹部44の上方開口との間で、枝線保持部50の側部が、上方保持凹部45の側方開口45aを通じて基部40の外周囲に露出する態様となっている(図2参照)。なお、この上方保持凹部45は、省略されていもよい。
幹線保持部60は、上記一対の枝線保持部50から間隔を有した位置で、前記基部40に立設されている。ここでは、幹線保持部60は基部40と樹脂により一体形成されている。一対の枝線保持部50と幹線保持部60との間の間隔寸法は、分岐結束対象となる幹線14の径寸法と略同じか又はそれよりも大きく(好ましくは若干大きく)設定されており、幹線14を一対の枝線保持部50と幹線保持部60との間で支持可能に構成されている(図4参照)。
また、幹線保持部60には、クランプ20を保持可能なクランプ保持部64が形成されている。ここでは、幹線保持部60のうち基部40の載置面42よりも上方部分にクランプ保持部64が形成されている。クランプ保持部64は、所定間隔を隔てて立設された一対のクランプ保持腕66間に、クランプ20の一部である鍔状部26及び皿状弾性部28を挿入可能な凹状部分を形成した構成とされている。また、クランプ保持腕66の内向き面には、鍔状部26及び皿状弾性部28の周縁部を嵌め込み可能な凹溝部66gが上下方向に沿って形成されている(図4参照)そして、クランプ20の鍔状部26及び皿状弾性部28の周縁部を凹溝部66gに嵌め込むようにして、クランプ20をクランプ保持部64の凹状部分内に保持可能に構成されている。この状態では、クランプ20は、クランプ20のバンド挿通固定部24を、幹線保持部60の内向き部分よりも一対の枝線保持部50側を向かせて突出させると共に、嵌込固定部22を本分岐結束用組立治具30の外側方を向かせた姿勢となっている(図2及び図3参照)。
また、幹線保持部60は、クランプ保持部64に保持されたクランプ20の上端部を越えない程度の高さ寸法に設定されている。ここでは、幹線保持部60の上端部であるクランプ保持部64の上端部、つまり、一対のクランプ保持腕66の上端部は、クランプ保持部64に保持されたクランプ20の上端部である鍔状部26及び皿状弾性部18の上端部と略一致する程度の高さとされている(図5及び図6参照)。勿論、幹線保持部60の上端部は、クランプ20を保持可能な範囲で、当該保持されたクランプ20の上端部より低くてもよい。
また、この幹線保持部60には、クランプ保持部64へのクランプ20保持の有無を検出するクランプ検出部68が組込まれている(図5及び図6参照)。ここでは、クランプ検出部68は、リミットスイッチにより構成されており、クランプ保持部64へのクランプ20保持によりヘッド部が押されて接点がオンになる位置及び姿勢で、幹線保持部60に組込まれている。ここでは、クランプ検出部68は、一対のクランプ保持腕66間の下部に位置して配設され、クランプ保持部64へのクランプ20保持により、クランプ20の嵌込固定部22がクランプ検出部68のヘッド部を押圧する構成となっている。クランプ検出部68としては、その他、光学式のセンサ等、クランプ20の所定位置への存在を検出可能な種々のセンサを用いることができる。
このクランプ検出部68からの検出信号は、外部の検査部79に出力される。検査部79は、その検出信号に応じて、表示部や発音体等を通じてクランプ20の有無を報知する。
また、上記幹線保持部60には、案内溝70が形成されている。案内溝70は、幹線保持部60の内向き面に、クランプ保持部64に保持されるクランプ20の各バンド挿通孔24hの開口から連続して、下方に延びるように2つ形成されている。そして、案内溝70は、バンド挿通孔24hに挿通された結束バンド18を、幹線14の外周囲の一部(幹線保持部60側の一部)に沿って下方に向けて案内可能に構成されている(図2及び図5の矢符P1、P2、P3参照)。
ここで、基部40の全体が幹線保持部60と略同等幅であるとすると、案内溝70は下方に向けて外方に大きく広がるように屈曲する態様で形成する必要があり、結束バンド18を無理に曲げるような力が作用する。すると、結束バンド18が直線状に復帰しようとする力が、クランプ20をクランプ保持部64から外すような力として作用し得る。そこで、ここでは、基部40のうち幹線保持部60側の部分を、その他の部分よりも幅狭に形成することで、案内溝70を下方に向けてなるべく直線的に延びる態様にしている。また、このように案内溝70を直線状に近づけることで、案内溝70に案内挿通された結束バンド18を幹線14に結束する際に、案内溝70から外し易いというメリットもある。
また、上記各案内溝70の途中に、結束バンド18の通過を検出して、その検出結果を出力するバンド検出部72が設けられている。ここでは、バンド検出部72は、バンド検出片74と、リミットスイッチ76とを備えている。バンド検出片74は、案内溝70の長手方向途中の底部に形成された凹部71設けられ、その底部に対して出没自在な態様で、支軸74aを介して揺動自在に支持されている。また、リミットスイッチ76は、上記バンド検出片74の姿勢変更に応じてヘッド部が押圧される態様で、幹線保持部60内に組込まれている。そして、結束バンド18が案内溝70を通って案内される際、結束バンド18がバンド検出片74に当接して、当該バンド検出片74を押込み、これに連動してリミットスイッチ76のヘッド部が押圧されて、検出信号を出力するようになっている。このバンド検出部72からの検出信号は、外部の検査部79に出力される。検査部79は、その検出信号に応じて、表示部や発音体等を通じて結束バンド18の有無を報知する。
なお、上記バンド検出部72は、クランプ保持部64に保持されるクランプ20のバンド挿通孔24hの真下となる位置に配設されている(図4参照)。これにより、バンド挿通孔24hを通って案内溝70に挿通された結束バンド18をより確実に検出でき、その以外の要因による誤検出、例えば、正規のバンド挿通孔24hを通らない結束バンド18の誤検出や外部からの接触による誤検出を有効に回避できるようになっている。
なお、バンド検出部72としては、その他、光学式のセンサ等、案内溝70を通る結束バンド18を検出可能な種々のセンサを用いることができる。
また、上記幹線保持部60の外向き面には、クランプロック部80が設けられている。クランプロック部80は、クランプ保持部64に保持されたクランプ20を抜止め可能かつ係脱可能に係合するように構成されている。
より具体的には、クランプロック部80は、ロックアーム部82と、付勢部材86とを備えている。
ロックアーム部82は、樹脂等により形成された部材であり、長尺状のアーム本体部83の一端部に係合ロック片84が突設された側面視略L字状の部材に形成されている。ロックアーム部のアーム本体部83の長手方向中間部が、幹線保持部60の外向き面に突出形成された揺動支持片88の先端部に揺動可能に支持されている。そして、係合ロック片84がクランプ保持部64側に近接して当該クランプ保持部64に保持されたクランプ20の嵌込固定部22の側部に上方から当接状に係合可能なロック姿勢(図5及び図6参照)と、係合ロック片84がクランプ保持部64から離間し当該クランプ保持部64に保持されたクランプ20の嵌込固定部22の側部から外側方に離れたに位置に配設された非ロック姿勢(図6の2点鎖線参照)との間で、ロックアーム部82が揺動可能とされる。
また、付勢部材86は、ここでは、コイルバネによって構成されており、上記アーム本体部83の下端部と幹線保持部60の外向き面との間に圧縮状に介在配置されている。そして、この付勢部材86の付勢力によって、アーム本体部83が上記ロック姿勢に付勢されている。
このように構成されたワイヤハーネス10の分岐結束用組立治具30を用いた分岐結束作業について説明する。
まず、付勢部材86の付勢力に抗してロックアーム部82のアーム本体部83の上端部を外方に押して非ロック姿勢に姿勢変更した状態で、クランプ20をクランプ保持部64に挿入保持させる。これにより、クランプ検出部68からクランプ20の存在を検出した旨の検出信号が出力される。この後、アーム本体部83に対する押込力を解除すると、付勢部材86の付勢力によってアーム本体部83がロック姿勢に復帰して、ロック片84がクランプ20に係合して当該クランプ20を抜止め状に保持する。
この状態で、複数の電線を幹線保持部60及び一対の枝線保持部50間、及び、一対の枝線保持部50を通るようにして、分岐状に布線して、幹線14及び枝線16を形成する。
この後、一つの結束バンド18のバンド本体部18aを、クランプ20のバンド挿通孔24hに挿通して、案内溝70に沿って通していく。すると、結束バンド18が、幹線14の外周囲のうち幹線保持部60側の部分に沿って上方から下方へ通るように配設される(図2及び図5の矢符P1、P2、P3参照)。この際、案内溝70に沿った結束バンド18の通過が、バンド検出部72で検出され、その検出信号が出力される。上記クランプ検出部68及びバンド検出部72からの検出信号に基づいて、クランプ20の有無及び結束バンド18の有無が判定され、その判定結果が所定の表示部又は発音体等を通じて報知される。もう一つの結束バンド18についても同様にして、クランプ20の他方のバンド挿通孔24hに挿通して、他方の案内溝70に沿って通していく。この後、それぞれのバンド本体部18aを幹線14周りに巻回するようにして、バンド本体部18aの先端部を係止部18bに通して係止させる。
続いて、結束バンド18の締付け及び切断用の工具90の先端部を、本分岐結束用組立治具30の上方に近づけ、結束バンド18の先端部を当該工具90の先端部内に挿入する(図6参照)。そして、工具90の先端部を分岐部分12に押付けつつ、工具90に対する所定の締付け操作及び切断操作を行うことで、結束バンド18が締付けられると共に、結束バンド18のうち係止部18bから突出した余長部分が切断される。
そして、付勢部材86の付勢力に抗してロックアーム部82のアーム本体部83の上端部を外方に押して非ロック姿勢に姿勢変更した状態で、分岐部分12及びクランプ20を、分岐結束用組立治具30から上方に取外すことで、分岐結束作業が終了する。
以上のように構成された分岐結束用組立治具30によると、幹線保持部60は、クランプ検出部68に保持されたクランプ20の上端部を越えない程度の高さ寸法に設定されているため、結束バンド18の締付け及び切断作業用の工具90が幹線保持部60に干渉し難い。従って、ワイヤハーネス10の分岐部分12を分岐結束用組立治具30から取外さなくとも、当該工具90をワイヤハーネス10の分岐部分12の直ぐ近くに配設して、結束バンド18の締付け及び切断作業を行うことができる(図6参照)。これにより、結束バンド18の締付け及び切断作業の容易化、及び、ワイヤハーネス10の寸法精度の向上を図ることができる。
また、一対の枝線保持部50は、棒状部材に形成されている。このような棒状部材は、従来技術のように板状に形成する場合と比べて、比較的小径であっても、十分な強度を確保できる。このため、上記工具90が枝線保持部50にも干渉し難く、この点からも、当該工具90をワイヤハーネス10の分岐部分12の近くに配設し易い。これにより、上記と同様に、ワイヤハーネス10の分岐部分12を分岐結束用組立治具30から取外さなくとも、結束バンド18の締付け及び切断作業を行うことができ、各作業の容易化、及び、ワイヤハーネス10の寸法精度の向上を図ることができる。
また、同様の理由から、ワイヤハーネス10の分岐部分12の近くの幹線14又は枝線16に、他の部材、例えば、コルゲートチューブ等の保護材を配設し易い。このため、ワイヤハーネス10の分岐部分12の近くにそのような保護材等の他の部材を装着し易い。
また、基部40は、載置面42よりも下方位置で一対の枝線保持部50を挿通保持する保持凹部44が形成され、基部40の載置面42と保持凹部44の上方開口との間では、一対の枝線保持部50が基部40の外周囲に露出している。この点からも、ワイヤハーネス10の分岐部分12の近くの幹線14又は枝線16に、他の部材、例えば、コルゲートチューブ等の保護材を配設し易くすることができ、ワイヤハーネス10の分岐部分12の近くにそのような保護材等の他の部材を容易に装着できる。
また、クランプ保持部64に保持されたクランプ20に、抜止め可能かつ係脱可能に係合するクランプロック部80を備えているため、作業中において分岐結束用組立治具30からのクランプ20の外れを有効に防止できる。これにより、設計上必要な位置にずれることなくクランプ20を固定して、分岐部分12を形成することができる。
また、クランプ20の有無を検出するクランプ検出部68及び結束バンド18の有無を検出するバンド検出部72を備えているため、その検出結果に基づいて、クランプ20の有無及び結束バンド18の有無の検査することができ、目視によらずとも、本分岐結束作業において、それらの部品の有無を保証する自工程保証を容易に実現できる。
しかも、クランプ保持部64に保持されるクランプ20のバンド挿通孔24hの真下にバンド検出部72が設けられているため、バンド挿通孔24hを通って案内溝70に挿通された結束バンド18をより確実に検出でき、その以外の要因による誤検出、例えば、正規のバンド挿通孔24hを通らない結束バンド18の誤検出や外部からの接触による誤検出を有効に回避できる。これにより、結束バンド18の有無及び装着状態の適否をより確実に検査できる。