JP3103434B2 - 柔軟なスエード調人工皮革及び製造方法 - Google Patents

柔軟なスエード調人工皮革及び製造方法

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JP3103434B2 JP17479192A JP17479192A JP3103434B2 JP 3103434 B2 JP3103434 B2 JP 3103434B2 JP 17479192 A JP17479192 A JP 17479192A JP 17479192 A JP17479192 A JP 17479192A JP 3103434 B2 JP3103434 B2 JP 3103434B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、伸縮性および立毛の均
染性に優れたスエード調人工皮革に関するものである。
更に詳しくは、本発明は繰り返し伸長変形を行っても、
実質的に構造変形を生じない、すなわち伸縮性及び繊維
絡合性に優れ、かつ立毛繊維の均染性に優れ柔軟で充実
感のある風合いを有しているスエード調人工皮革に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】従来、伸縮性に優れた絡合不織布とし
て、ポリウレタンをフラッシュ紡糸して得た短繊維を堆
積し、自己膠着などの方法で繊維交点を接着した不織布
やあるいは特開昭52−8177号公報に記載のごと
く、スパンボンド方式により得られたポリウレタンの長
繊維不織布などが知られている。しかしこれらポリウレ
タンの不織布では、繊維自身の弾性が強くかつ柔軟すぎ
るため、ニードルパンチングや流体噴射方式など従来公
知の絡合では十分な繊維絡合体を形成することは困難で
ある。また伸縮性がありかつ強いものとして、例えば特
開昭48−18579号公報には、弾性繊維5〜80重
量%を非弾性繊維に混綿して得た不織布が提案されてい
る。しかしながら、弾性繊維は非弾性繊維とは比較にな
らないくらい剛性及び伸長弾性挙動が異なるため、繊維
を十分に混綿しカード機で良好なウエブを得ること、さ
らには良好な結合を得ることは極めて困難である。また
特開昭52−85575号公報には、非弾性ポリマーと
弾性ポリマーからなる複合繊維を用いて絡合不織布をつ
くりその後各成分ポリマーに剥離する方法が記載されて
いるが、この方法では弾性ポリマーと非弾性ポリマーが
同じ状態で拘束されているため、構造的にも十分な伸縮
性を有することができない。また特公昭40−2792
号公報には弾性ポリマーと非弾性ポリマーからなる混合
紡糸繊維を混綿して不織布とし、得られた不織布を構成
している該繊維中の非弾性ポリマーの少なくとも一種を
溶解させた後、この非弾性ポリマーを不織布内で再凝固
させる方法が提案されている。この方法では良好な絡合
性を有する不織布が得られるが不織布の伸縮性は非弾性
ポリマーからなる繊維に支配されるため、十分な伸縮性
を有するものはない。
【0003】また特公平1−41742号公報では複合
繊維から一成分を除去して得られる弾性繊維と非弾性繊
維を混綿して伸縮性不織布の製造方法が提案されてい
る、この不織布は伸縮性及び絡合性に優れたものである
が、製造方法が混綿方法を採っているために、立毛製品
に使用した場合は弾性繊維の立毛と非弾性繊維の立毛と
が混在しており、立毛の発色性の面で均一性に欠けるも
のであった。また特開昭61−201086号公報で
は、非弾性ポリマーからなる極細繊維と弾性ポリマーか
らなる極細繊維とが同一海成分中に存在する複合海島繊
維の不織布から海成分を除去して弾性ポリマーからなる
極細繊維を一部溶解してバインダーとするシート状物に
ついて記載されているが、弾性ポリマーが非弾性ポリマ
ーからなる極細繊維繊を集束接着してしまうため、極細
繊維の柔軟な風合いが得られず、しかも、かつ弾性ポリ
マーが極細繊維であるために応力が小さくなり目的とす
る伸縮性の高いものとはならない。以上のごとく、現状
では加工性が良好で、伸縮性を有し、立毛の均一性の優
れたスエード調人工皮革は得られていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来知られている不織
布の製造方法では、いずれも絡合性及び伸縮性を兼備
し、立毛シートにした場合に優美で均一な立毛を有した
スエード調人工皮革は得られなかった。本発明の目的は
伸縮性不織布として均一な伸長弾性、極めて柔軟でかつ
充実感のある風合いを有し、立毛シートにした場合、表
面が均一である柔軟なスエード調人工皮革を提供するに
ある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、一対の弾性ポ
リマーからなる極細繊維束(弾性極細繊維束)と非弾性
ポリマーからなる極細繊維束(非弾性極細繊維束)とが
集束した極細繊維集束繊維が三次元絡合した不織布の少
なくとも一面に立毛を形成してなるシート状物であっ
て、該極細繊維集束繊維は弾性極細繊維束がその内部お
よび非弾性極細繊維束との間で部分的に膠着しており、
かつ他の極細繊維集束繊維の一部と膠着していることを
特徴とするスエード調人工皮革であり、また、弾性ポリ
マーからなる島成分群と非弾性ポリマーからなる島成分
群を有する2つの海島構造が隣接した極細繊維集束繊維
発生型繊維を用いて絡合不織布を作製する工程、該絡合
不織布を収縮処理する工程、該極細繊維集束繊維発生型
繊維を極細繊維集束繊維に変成する工程、少なくとも一
面に立毛を形成する工程、得られた繊維立毛基体を染色
する工程よりなるスエード調人工皮革の製造方法であ
る。
【0006】本発明のスエード調人工皮革の基体層を構
成する繊維は、一対の弾性ポリマーからなる極細繊維束
(弾性極細繊維束)と非弾性ポリマーからなる極細繊維
束(非弾性極細繊維束)とが集束した極細繊維集束繊維
である。同じように弾性極細繊維と非弾性極細繊維が集
束した極細繊維集束繊維であっても、弾性極細繊維と非
弾性極細繊維とが混合状態で束を形成している繊維にあ
っては本発明の目的を達することができない。本発明の
極細繊維集束繊維は、弾性ポリマーからなる島成分群と
非弾性ポリマーからなる島成分群を有する2つの海島構
造が隣接した極細繊維集束繊維発生型繊維から海成分を
除去することによって得られる。
【0007】すなわち、本発明で用いる極細繊維集束繊
維発生型繊維は、島繊維成分が非弾性ポリマーである非
弾性極細繊維束発生型繊維と島成分が弾性ポリマーであ
る弾性極細繊維束発生型繊維の2つの海島構造繊維をサ
イドバイサイド状に張りつけた構造の繊維である。この
ような繊維を製造する方法としては、ポリマーチップを
混合溶融して、あるいは別々に溶融し分割統合を繰り返
す等して得られる弾性ポリマーあるいは非弾性ポリマー
を島成分とする2つの海島繊維状成分をサイドバイサイ
ド状に複合紡糸する方法、多芯芯鞘繊維の紡糸方法にお
いて芯成分を左右二分してそれぞれに非弾性ポリマー及
び弾性ポリマーを供給してそれぞれの芯成分がブロック
状で隣接するように配置した紡糸ノズルを用いて紡糸す
る方法、などがある。繊維の断面形状は、円形断面の
外、楕円形、繭型等の異型断面であってもよく、また、
中空繊維であってもよい。いずれにしても弾性極細繊維
成分と非弾性極細繊維成分とが実質的に混合することな
くそれぞれが束状で隣接した断面形状の繊維であればよ
い。
【0008】非弾性極細繊維成分と弾性極細繊維成分の
比率は95/5〜5/95、望ましくは85/15〜3
0/70である。非弾性繊維が95%以上になると得ら
れるシートは柔軟性に欠け、弾性繊維の膠着が少なく繊
維が素抜けを起こし易く、一方5%以下になると風合い
は柔軟ではあっても、スエード調の外観に程遠いものと
なる。また、極細繊維集束繊維を構成する極細繊維の単
繊維繊度は、0.5デニール以下、好ましくは0.1デ
ニール〜0.002デニールである。単繊維繊度が0.
5デニール以上になるとスエード調の外観は劣り、風合
いの硬いものとなり、一方0.002デニール以下にな
ると、極細繊維が細過ぎて発色性の劣るものとなる。
【0009】本発明に用いる島成分の弾性ポリマーと
は、該ポリマーを繊維に形成し、この繊維を室温にて5
0%伸長した場合の1分後の伸長弾性回復率が50%以
上であるポリマーを意味し、また非弾性ポリマーとは同
様にして測定した伸長弾性回復率が50%以下または室
温に於て限界伸長率が50%に達しないポリマーを意味
している。島成分にもちいられる非弾性ポリマーは、た
とえばポリエチレンテレフタレートまたはそれを主体と
する共重合体、ポリブチレンテレフタレートまたはそれ
を主体とする共重合体、脂肪族ポリエステルまたはその
共重合体等の可紡性ポリエステル類、ナイロン6、ナイ
ロン66、ナイロン610、ナイロン12で代表される
ナイロン類、その他の可紡性ポリアミド類、ポリエチレ
ン、ポリプロピレン、ポリブチレンなどのポリオレフイ
ン類、アクリル系共重合体、ポリビニールアルコール等
が挙げられる。
【0010】一方、島成分に用いられる弾性ポリマー
は、例えばポリエステルジオール、ポリエーテルジオー
ル、ポリエステルエーテルジオール、ポリラクトンジオ
ール、ポリカーボネートジオール、などの平均分子量5
00〜3500のポリマージオールから選ばれた少なく
とも一種と有機ジイソシアネートと活性水素原子を2個
有する鎖伸長剤とを反応させて得られるポリウレタン
類、ポリイソプレン、ポリブタジエンなどの共役ジエン
重合体あるいは共役ジエン重合体ブロックを分子中に有
するポリマー類、その他紡糸可能な上記したゴム弾性挙
動を示すポリマー類が挙げられる。
【0011】また、海成分を構成するポリマーは、島成
分の非弾性ポリマー及び弾性ポリマーとは特定の溶剤や
分解剤に対する溶解性あるいは分解性を異にするポリマ
ーであり、かつ熱成形温度範囲が重なっているもので、
溶融状態において紡糸に要する時間内ではこれらのポリ
マー間で紡糸に支障を生ずる反応や相互作用を及ぼさな
いもの等が用いられる。例えばポリエチレン、ポリプロ
ピレン、エチレンプロピレン共重合体、エチレン酢酸ビ
ニル共重合体、ポリスチレン、スチレンアクリル共重合
体、スチレンエチレン共重合体、などのポリマーから選
ばれた少なくとも一種類のポリマーである。非弾性ポリ
マー及び弾性ポリマーと組み合わせる海成分は同一のも
のであっても異なったものであっても構わないが、異な
ったものを用いる場合には紡糸性、不織布製造工程にお
ける繊維の割れ防止、極細化処理に用いる溶剤あるいは
分解剤の選択の容易さ等を考慮して適宜選定する。
【0012】得られた極細繊維集束繊維発生型繊維は従
来公知の方法にて、延伸、熱固定、捲縮、カット、開繊
などの処理工程を行って、原綿を作製する。かかる原綿
はカードで解繊されウエーバでランダムウエーブまたは
クロスラップウエーブに形成される。ウエーブは必要に
応じて積層し、所望の重さにする。ウエーブの重さは指
向する用途によりことなるが、一般的に100〜300
0g/m2の範囲が望ましい。極細繊維集束繊維発生型繊
維には本発明の効果を損なわない範囲で弾性繊維成分を
含まない極細繊維束発生型繊維を混合して用いることが
できる。この場合の混合量は、全体の非弾性極細繊維成
分と弾性極細繊維成分の比率で95/5〜5/95、望
ましくは85/15〜30/70の範囲である。
【0013】ついで公知の手段にて繊維絡合処理を施し
て繊維絡合不織布を形成する。好ましい絡合処理はニー
ドルパンチング法および/または高圧水流噴射法であ
る。ニードルパンチ数及び条件は使用針の形状やウエー
ブの厚みで異なるが一般的に200〜2500パンチ/
cm2の範囲で設定される。ニードルパンチ条件が強すぎ
る場合には繊維の絡合効果よりもむしろ繊維の切断が増
加することになり、構造破壊を生じウエーブ面積の拡大
を招き、引き裂き強力等の物性低下を招くことになる。
また絡合が不十分な場合には剥離強力等の物性低下と立
毛繊維不足による外観不良の物となる。
【0014】本発明で得られるスエード調人工皮革に十
分な伸縮挙動を付与し柔軟性を得ること及び起毛処理を
施したときに十分な立毛繊維を得るためには繊維絡合不
織布を収縮させなければならない。収縮の程度は収縮処
理前の不織布の面積に対して10%〜80%の面積収縮
を生じる程度である。この収縮処理は、島成分である非
弾性繊維成分より弾性繊維成分のほうがより大きく収縮
する条件下で行わなければならない。一般的に弾性ポリ
マーは非弾性ポリマーより低温にて収縮する傾向を有し
ている。同一海成分に非弾性ポリマーと弾性ポリマーの
島成分が混在する海島繊維の場合には弾性ポリマーのみ
が収縮する条件下で収縮処理をおこなっても非弾性ポリ
マーが突っ張り状態になり単繊維としては収縮を起こさ
ないが、本発明の繊維においては2種の島成分が区分さ
れてブロック状に配置されているため、島成分の非弾性
ポリマーより弾性ポリマーのほうがより大きく収縮する
条件下で収縮処理を行なった場合、繊維はバイメタル状
となりクリンプを発現し収縮した状態になる。この状態
は後で海成分を除去した場合に、非弾性ポリマーの極細
繊維束は組織として緩んだ状態になり、目的とする伸縮
性と柔軟性が得られる。
【0015】最終のスエード調人工皮革の態様の一つと
して、繊維絡合不織布にバインダー樹脂を含有させるこ
とも可能である。バインダー樹脂を含有させることによ
りスエード調人工皮革の性質をかえることができる。従
って付与されるバインダー樹脂は弾性ポリマーでも非弾
性ポリマーでも、さらにこの両者の中間領域を占めるポ
リマーであてもよい。しかし柔軟性と弾性が大きい人工
皮革を希望する場合は弾性ポリマーを用いるのが好まし
い。バインダー樹脂の含浸量は、樹脂の弾性特性や目的
とする最終製品の風合いなどによって適宜増減するが、
極細繊維成分に対して100%以下、好ましくは50%
以下の範囲である。バインダー樹脂の量が多すぎると風
合いが堅くなったり、ゴム様の反発感がでたり伸縮性に
劣るものとなる。
【0016】バインダー樹脂として用いられる弾性ポリ
マーの具体例を挙げると、ポリエステル系ポリウレタ
ン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリエステルエーテ
ル系ポリウレタン、ポリラクトン系ポリウレタン、ポリ
カーボネート系ポリウレタン等のポリウレタン類、アク
リル酸またはアクリル酸エステルの重合体または共重合
体類、ポリイソプレン、ポリブタジエンなどの共役ジエ
ン重合体あるいは共役ジエン重合体ブロックを分子中に
有するポリマー類、スチレン−ブタジエン共重合体、ア
クリロニトリル−ブタジエン共重合体、酢酸ビニル重合
体、または共重合体等のポリマーが挙げられる。弾性挙
動の小さい樹脂をバインダー樹脂として用いた場合に
は、塩化ビニル重合体または共重合体の可塑化ポリマ
ー、ポリアミド類または変性ポリアミド類、エチレン−
酢酸ビニル共重合体等のポリマーを用いることができ
る。
【0017】これらのポリマーの内から一種または2種
以上を選び、不織布構成繊維を溶解または著しく膨潤さ
せない溶剤または分散剤に溶解あるいは分散させて、こ
の溶液を不織布に含浸させる。バインダー樹脂の溶液ま
たは分散液を不織布に含浸する順序は、(1)収縮処理
前の繊維絡合不織布に含浸する、(2)収縮処理後の繊
維絡合不織布に含浸する、(3)繊維絡合不織布を構成
する繊維の海成分を除去した後に含浸する、のいずれの
順序で行ってもよいが、伸縮性と柔軟性の腰のある風合
いを得たい場合には(2)の順序によりバインダー樹脂
を付与するのが好ましい。また、(3)の順序で行う場
合には、極細繊維をバインダー樹脂により固定化しない
ため、バインダー樹脂含浸に先立って水溶性樹脂などの
仮固定樹脂を含浸しておくことが好ましい。
【0018】繊維絡合不織布に含浸したバインダー樹脂
溶液または分散液からバインダー樹脂を凝固させる方法
としては、熱処理で凝固させる方法、熱水処理で凝固さ
せる方法、塩水溶液中で処理して凝固させる方法、非溶
剤または溶剤−非溶剤混合液中で処理して凝固させる方
法などがあるが、バインダー樹脂の特性に応じて適当な
凝固条件を採用すればよい。
【0019】バインダー樹脂を付与したあるいは付与し
ない繊維絡合不織布は、極細繊維集束繊維発生型繊維の
海成分の溶剤あるいは分解剤で処理することにより海成
分を除去し極細繊維集束繊維に変成し繊維質基体とす
る。海成分除去のための溶剤処理を行うと、多くの場
合、弾性ポリマーは溶剤により膨潤され溶剤の乾燥時に
極細繊維束内部及び繊維交絡部において部分的な膠着を
生ずる。このような膠着を生じない場合には、他の適当
な溶剤や膨潤剤で処理してあるいは熱処理して弾性極細
繊維を極細繊維束内部及び繊維交絡部において部分的に
膠着させる。この膠着処理は、弾性極細繊維束内部の部
分的膠着、極細繊維集束繊維内部での弾性極細繊維束と
非弾性極細繊維束の部分的な膠着、及び繊維交絡部にお
ける極細繊維集束繊維同士の膠着を行うことであり、弾
性極細繊維成分が溶解し非弾性極細繊維束内部に浸透し
再凝固することにより非弾性極細繊維束を結束一体化し
てしまうことは避けなければならない。弾性繊維成分に
より非弾性極細繊維束が結束一体化されると繊維束が堅
くなりシートの風合いが堅くなると共にスエード感のあ
る優美な立毛が得られない。このような弾性極細繊維間
の部分的膠着と非弾性極細繊維と弾性極細繊維の部分的
膠着により、シートの形態安定性が向上するとともに表
面を起毛したときの毛羽の脱落防止効果も向上する。
【0020】次に繊維質基体は少なくとも一面に極細繊
維を主体とした繊維立毛面を形成させる。繊維立毛を形
成させる方法は、従来公知のサンドペーパーによるバッ
フィング、針布起毛等の方法により行うことができる。
表面に繊維立毛を形成した繊維質基体は次いで染色する
が、繊維質基体を構成する樹脂の材質に応じて通常の方
法にて染色すればよい。染色したスエード調繊維質基体
は、従来公知の揉み、柔軟化処理、ブラッシングなどの
仕上げ処理を行い、スエード調人工皮革の製品が得られ
る。
【0021】本発明で得られたスエード調人工皮革は、
表面の立毛繊維の均一性に優れ、柔軟で伸縮性があり、
かつ充実感のある風合いを有したもので衣料用、靴用、
インテリヤ用等に好適である。
【0022】
【実施例】次に本発明の実施を具体的に実施例で説明す
るが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではな
い。尚、実施例中の部及び%は断わりのない限り重量に
関するものである。
【0023】実施例−1 サイドバイサイド紡糸設備を用いて、押出機(A)側に
6ナイロンのチップとポリエチレンを重量比率1:1で
混合したものを、押出機(B)にポリエステル系ポリウ
レタンとポリスチレンのチップを1:1に混合したもの
を、吐出量比率を押出機(A):押出機(B)=60:
40にて溶融紡糸を行い10デニールの原糸を得た。こ
の原糸の断面写真を観察すると、図1の様に海成分がポ
リエチレンとポリスチレンの二層に別れ、ポリエチレン
の海成分にはナイロンの島成分が約280島、ポリスチ
レンの海成分にはポリエステル系ポリウレタンの島成分
が約100島に分散しているサイドバイサイド複合繊維
であった。
【0024】次にこの複合繊維を2.5倍に延伸し、捲
縮を行い繊維長51mmに切断して繊度4デニールのステ
ープルを得た。ついでクロスラップウエーバーでウエー
ブを作製しウエブの両面から交互に合計600パンチ/
cm2のニードルパンチングを行い、目付け約780g/m
2の繊維絡合不織布をつくった。この繊維絡合不織布を
95℃の熱水にて面積で25%収縮させた。収縮処理し
た繊維絡合不織布を乾燥し、熱パークロルエチレンにて
繊維絡合不織布の海成分のポリエチレンとポリスチレン
を除去した。この海成分除去処理によりポリエステル系
ポリウレタンの極細繊維間の融着及びナイロン極細繊維
とポリエステル系ポリウレタンの極細繊維の接している
部分に膠着による接着点を形成し、厚さ1.4mm、重さ
525g/m2の繊維基体を得た。
【0025】該繊維基体の厚みを二分割にスライスし、
スライス面をサンドペーパーにてバフィングし厚さ0.
55mmに厚みあわせを行った後、他の面を粒度#400
のサンドペーパーで起毛処理を施し繊維立毛シートとし
た。このシートは1:2型含金錯塩染料で次の条件にて
茶色に染色した。 染色条件 ラニール ブラウン GG 2%owf イルガラン イエロー GRL 1%owf レベランNKD 1g/l 染色温度 92℃ 染色後、乾燥、揉み、整毛処理を行うことにより、表1
に示す通り表面が均一で伸縮性にすぐれた柔軟な茶色の
スエード調人工皮革が得られた。
【0026】
【表1】
【0027】実施例−2 実施例−1の紡糸方法で押出機(A)側に6ナイロンの
チップとポリエチレンを重量比率1:1で混合したもの
を、押出機(B)にポリエステル系ポリウレタンとポリ
エチレンのチップを1:1に混合したものを、吐出量比
率を押出機(A):押出機(B)=60:40にて溶融
紡糸を行った。この原糸の断面写真を観察すると図2に
示す様にポリエチレンの海成分中にナイロンの島成分群
とポリエステル系ポリウレタンの島成分群が二分された
海島複合繊維であった。この繊維を延伸以下実施例−1
と同様の条件にてスエード調人工皮革に試作すると実施
例−1と同様に表1に示す通り表面が均一で伸縮性にす
ぐれた柔軟な茶色のスエード調人工皮革が得られた。
【0028】比較例−1 実施例−1にてもちいた6ナイロンとポリエステル系ポ
リウレタンとポリエチレンを3:2:5の比率にて混合
紡糸を行ない、図3に示す通りポリエチレンが海成分で
島成分として6ナイロンとポリウレタンがランダムに混
在した繊度10デニールの3成分の海島複合繊維を得
た。この繊維を実施例−1と同じ方法により延伸、捲
縮、カットランダムウエブ、ニードルパンチをへて絡合
不織布とした。この不織布を熱水にて収縮処理を行った
結果、面積収縮率が8%と収縮率の少ないものであっ
た。次に熱パークロルエチレンにて海成分のポリエチレ
ンを抽出し実施例−1と同じ方法により起毛、染色仕上
げまで行った結果、表1に示す通り風合いは堅く、伸縮
性のない、表面の立毛繊維の少ないものとなった。得ら
れたシートの極細繊維の状態を観察したところ、ポリウ
レタン極細繊維成分が繊維交絡点で膠着する以外に、極
細繊維束内部でも6ナイロン極細繊維が混在するポリウ
レタン極細繊維成分により随所で膠着一体化しているこ
とが観察された。
【0029】比較例−2 ポリエステル系ポリウレタン50部とポリエチレン50
部からなり、ポリエチレンが海成分となった2成分海島
繊維(A)と、 6ナイロン50部とポリエチレン50
部からなり、ポリエチレンが海成分となった2成分海島
繊維(B)とを、溶融紡糸法で作成し、延伸工程にて
(A):(B)=4:6になるように重ねあわせ、共延
伸を行い、以降は実施例−1と同じ方法にてスエード調
人工皮革に仕上げた。得られたシートは、表1に示す通
り風合いはソフトであるものの、ナイロンの極細繊維集
束繊維の立毛が粗く、異色感もあり毛羽感の悪いもので
あった。
【0030】
【発明の効果】本発明のスエード調人工皮革は構造上の
伸長変化が実質的に生じない伸長範囲で伸長応力が低
く、伸縮性があり、かつ立毛繊維が均一で、風合いは充
実感に優れたもので、衣料用、靴用、袋物、各種手袋等
に好的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で使用する多成分繊維の断面模式図であ
る。
【図2】本発明で使用する多成分繊維の断面模式図であ
る。
【図3】本発明で使用する多成分繊維の断面模式図であ
る。
【図4】従来例で使用する多成分繊維の断面模式図であ
る。
【符号の説明】
1 弾性ポリマーからなる島成分 2 非弾性ポリマーからなる島成分 3、3’ 海成分
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭61−194247(JP,A) 特開 昭63−12744(JP,A) 特開 昭63−264956(JP,A) 特開 昭54−26302(JP,A) 特開 昭60−139879(JP,A) 特開 昭54−125771(JP,A) 特開 昭61−201086(JP,A) 特開 平5−138789(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D06N 3/00 - 3/18 D01D 5/32 D04H 3/10 D04H 3/14

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一対の弾性ポリマーからなる極細繊維束
    (弾性極細繊維束)と非弾性ポリマーからなる極細繊維
    束(非弾性極細繊維束)とが集束した極細繊維集束繊維
    が三次元絡合した不織布の少なくとも一面に立毛を形成
    してなるシート状物であって、該極細繊維集束繊維は弾
    性極細繊維束がその内部および非弾性極細繊維束との間
    で部分的に膠着しており、かつ他の極細繊維集束繊維の
    一部と膠着していることを特徴とするスエード調人工皮
    革。
  2. 【請求項2】 弾性ポリマーからなる島成分群と非弾性
    ポリマーからなる島成分群を有する2つの海島構造が隣
    接した極細繊維集束繊維発生型繊維を用いて絡合不織布
    を作製する工程、該絡合不織布を収縮処理する工程、該
    極細繊維集束繊維発生型繊維を極細繊維集束繊維に変成
    する工程、少なくとも一面に立毛を形成する工程、得ら
    れた繊維立毛基体を染色する工程よりなるスエード調人
    工皮革の製造方法。
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