JP3101735B2 - 芭蕉繊維の製造方法 - Google Patents

芭蕉繊維の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、芭蕉の幹(茎)を
そのまま(原木)又は幹(茎)を裂いて調製した原皮を
灰汁液(灰液)に所定時間浸漬し、繊維抽出して芭蕉繊
維を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】奄美大島地方での布製品として、絹織物
で形成される大島紬がよく知られている。即ち、「大島
紬」は、高価であるが、その染色と絣模様が精巧かつ気
品があり古雅な点は、他の追随を許さず愛用されてい
る。(「世界大百科事典4」(1972-4-25) 平凡社、p.18
0 )
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、「大島紬」は
高価であるためその需要が限られているとともに、原料
である真綿(繭から引き伸ばした綿)を確保しがたくな
っている。このため、奄美大島地方での紬機織りの技術
を生かした繊維産業の維持・育成の見地から、「大島
紬」に変わる新たな織物製品(布製品)の出現が望まれ
ていた。
【0004】そこで、本発明者らは、奄美大島と同じ亜
熱帯地域である沖縄を主産地とする芭蕉布に着目した。
芭蕉布は、糸バショウ(糸芭蕉)の繊維で形成した糸を
用いて織った布である。そして、芭蕉布は、張りがあ
り、着物にすると風通しがよく肌につかない。(「世界
大百科事典24」(1972-4-25) 平凡社、p.442 ) 上記糸芭蕉からの芭蕉繊維の製造は、芭蕉の幹(茎)を
裂いて調製した原皮を灰汁液に入れ所定時間、浸漬煮沸
する繊維抽出工程を経て芭蕉繊維を製造していた。そし
て、取り出した原皮は洗浄後、2〜3本に裂いたあと、
さらに竹バサミ(木グシ)で何回かしごいて不純物(繊
維結合中間層)を除去していた。
【0005】また、ミバショウ(実芭蕉:バナナ)から
芭蕉繊維を取り出す方法として、”化学大辞典編集委員
会編「化学大辞典7」(昭37-7-31)共立出版、p.7
6”に茎を包む葉ショウを木グシでかいて髄質を大部分
除いた後、さらに、アルカリ液で煮沸して完全に髄質を
除いて製造する旨の記載がある。
【0006】しかし、上記芭蕉繊維の製造方法は、いず
れも、繊維抽出工程(煮沸工程)とともに木グシ等によ
る面倒な梳き工程が必要であり、生産工数が嵩んだ。ま
た、染色工程は、別に必要であった。
【0007】本発明は、上記にかんがみて、面倒な梳き
工程が不要で、必要により、繊維抽出工程で染色も同時
可能な芭蕉繊維の製造方法を提供することを目的とす
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の芭蕉繊維の製造
方法は、下記のような構成により、上記の課題を解決す
るものである。
【0009】 芭蕉の幹(茎)をそのまま(原木)又は
幹(茎)を裂いて調製した原皮を灰汁液に所定時間浸漬
する繊維抽出工程を経て芭蕉繊維を製造するに際して、
灰汁液として、ワラとソテツ葉の混合灰を、必要により
直接染料を溶解させたものを使用することを特徴とする
ものである。
【0010】 ここで、ワラとソテツ葉の混合重量比
が、ワラ/ソテツ葉=9.5/0.5〜1/9であるこ
とが望ましい。
【0011】灰汁液が、さらに、アルカリ又はアルカリ
土類金属の塩化物を含むことにより、染色の堅牢度(耐
水性)が増大して望ましい。
【0012】前記灰汁液の組成は、例えば、混合灰:1
〜50g/L、直接染料:0.5〜5g/L、NaC
l:2〜8g/Lの組成のものを使用する。
【0013】上記において、繊維抽出処理条件が80〜
100℃×2〜6時間、又は、常温×10〜20日とす
る。
【0014】後者の処理条件の方が、よりきれいな芭蕉
繊維を得ることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、この発明の芭蕉繊維の製造
方法の一実施形態を説明する。
【0016】ここでは、生産性の見地から同時に染色を
する場合を例に採り説明するが、下記方法において染料
を使用しなければ繊維抽出のみでもよい。
【0017】 (1) 本実施形態の芭蕉繊維の製造方法
は、芭蕉の幹(木)から繊維束状又は繊維を抽出して芭
蕉繊維を製造するに際して、灰汁液として、ワラとソテ
葉の混合灰を溶解させたものを使用することを要旨と
する。
【0018】ここで、芭蕉とは、植物界における「ショ
ウガ目バショウ科」に属する単子葉植物をいい、水バシ
ョウ、山バショウ、糸バショウ、実バショウ(バナナ)
等を含むものである。これらのうちで、実バショウ(バ
ナナ)が入手し易く、繊維強度も相対的に高いため望ま
しい。
【0019】 灰汁として、ワラとソテツ葉の混合灰を
使用することにより、芭蕉繊維の抽出性及び繊維染色性
が増大する。ここで、芭蕉繊維の抽出性とは、繊維結合
中間層(リグニン、ヘミセルロース、ペクチン等)が溶
解(崩壊)して芭蕉繊維としての取り出しのし易さをい
う。
【0020】 ここで、ワラとは、稲、麦、キビ、粟等
のイネ科茎の乾燥したものをいう。ワラを使用する理由
は、主として、ワラソテツの葉(通常、乾燥しないも
の)を着火し易くさせるとともに、染色性が改善される
ためである。染色性が改善される理由は特に明らかでは
ないが、ワラの灰分はアルカリは粘土質の中の鉄分を吸
収して相対的に鉄分に富んでいるため染料吸着性が増大
するものと推定される。
【0021】 ソテツ葉を使用する理由は、芭蕉繊維の
抽出性が良好になるためである。抽出性が良好となる理
由は、特に明らかではないが、他の植物葉に比して、完
全灰化したとき、カリウム分に富み(アルカリ度に富
み)、抽出工程後の繊維中間相が完全に水洗だけで除け
る程度に、溶解するためと推定される。
【0022】
【0023】 具体的には、図3に示す如く、ワラ(稲
又は麦の、通常、稲)とソテツ葉とを薄く敷いた砂層9
上に、ワラ束7を左右上下に所定ピッチで配置し、ソテ
ツ葉8をワラ束7上に交差させて配置する。ワラ束を下
におくのは、燃焼性を良好にするためである。
【0024】このときの、砂層9は、後述の空気遮断後
燃焼の際の、空気微少連続供給の作用を奏する。
【0025】該砂層9を形成する砂、通常、浜砂又はそ
れと同等粒径のものを使用することが望ましく、砂の量
は、ワラの重量の1/2〜2倍、望ましくは同量とす
る。砂の量が少な過ぎると、十分に得難く、逆に多すぎ
ると、砂から灰分を分離回収することが困難となる。砂
として浜砂を使用した場合は、浜砂中に塩が付着してい
ることが多く、後述のNaClの添加が不要となる場合
がある。
【0026】 ここで、ワラとソツ葉の重量比は、ワ
ラ/ソテツ葉=9.5/0.5〜1/9の範囲で任意で
ある。煮沸抽出方式の場合は、ワラが過剰(同量以上)
のほうが望ましく、例えば、ワラ/ソテツ葉=9.5/
0.5〜5/5、望ましくは、9/1〜7/3、さらに
望ましくは8.5/1.5前後とする。また、煮沸しな
い抽出方式(非煮沸抽出方式)の場合は、ソテツ葉が過
剰(同量以上)の方が望ましく、例えば、ワラ/ソテ
=5/5〜1/9、望ましくは4.5/5.5〜2/
8、さらに望ましくは3.3/6.7前後とする。
【0027】 一般的には、ワラが過多では、灰中に占
めるソテツ葉灰の量が少なくなり、繊維抽出性が低下す
る。したがって、煮沸しない無煮沸抽出方式の場合、繊
維抽出性の作用が強いソテツ葉灰の量を過剰にする必要
があることが首肯できる。逆にワラが過少ではワラ灰の
量が少なくなり、染色性が低下する。
【0028】 次に、ワラを着火させ、ソテツ葉も燃焼
させ、ほぼソテツ葉が燃えつきた時点で、空気遮断をさ
せ、ソテツ(茎部)の灰化を完全に行なう。
【0029】例えば、ベニヤ板で三角状の屋根を作りそ
の上にビニールシートを被せて長時間(本形態では約1
2時間)放置する。これによって、灰化が完全に進行し
て灰が砂層9中に浸透する。
【0030】砂層9が冷えると、灰は砂層9を落下して
下に沈降するので下に配した受けシート(金属板でも合
成樹脂シートでも可)で受けて分離・回収する。
【0031】また、本実施形態で染料として直接染料を
使用するのは、染料自体が水溶性を有し、繊維に特別な
処理不要なため生産性に優れているためである。
【0032】直接染料としては、コンゴーレッド、ベン
ゾパープリン、ダイレクトブラックBH、クロランチン
ファストグリーン等を使用できる。より具体的には、例
えば、「シリアス−ファストイエローGR」(純度10
0%)、「シリアス−ファストブルー3GL」(純度5
5%)等の商品名で上市されているものを好適に使用で
きる。
【0033】なお、これら直接染料は単独又は2種以上
の組み合わせとして用いることができ、最大34色まで
用いることが可能である。
【0034】次に、上記燃焼灰と染料とを水に溶解させ
て灰汁液を調製する。ここで、灰汁液には、さらに、ア
ルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物を含ませるこ
とが、洗濯堅牢度が増大して望ましい。
【0035】上記塩化物としては、NaCl、KCl、
MgCl2 等を挙げることができ、特に、NaClが入
手が容易で洗濯堅牢度が増大して望ましい。
【0036】ここで、塩化物としてNaClを使用する
場合の、灰汁液の組成は、たとえば、下記のようなもの
とする。
【0037】混合灰:1〜50g/L(望ましくは3〜
30g/L、さらに望ましくは12.5g/L又は30
g/L)、 直接染料:0.5〜5g/L、(望ましくは1〜2.5
g/L、さらに望ましくは1.25g/L)、 NaCl:1〜10g/L(望ましくは3〜6g/L、
さらに望ましくは4.5g/L)、 植物灰、直接染料、および金属塩化物の配合量が過少で
あると、それぞれの作用、すなわち、繊維抽出性、染色
性、洗濯堅牢性にそれぞれ問題が発生し易い。逆に、そ
れらの成分が過多であると、材料損失につながるととも
に、抽出処理後の繊維の洗浄に時間がかかり、生産性に
も悪影響を与える。
【0038】(2) 次に、芭蕉の茎(幹)をそのまま(原
木)又は茎(幹)の外皮をはいだ芯材を手で裂いて調製
した帯び状の原皮(幅10〜50mm×厚み0.5〜1.
5mm)としたものを束ねて処理槽(処理液)11に投入
して浸漬処理する。
【0039】このときの処理時間は、灰の濃度および処
理温度により異なるが、例えば煮沸処理(80〜100
℃)の場合1〜6時間(望ましくは2〜3時間)、非煮
沸抽出方式(常温処理)の場合、10〜20日(望まし
くは14〜16日)とする。
【0040】なお、非煮沸方式は、例えば、長さ:3.
5m、深さ:25cmで、幅1〜2mの穴を地中に掘り合
成樹脂シートで底壁・周囲・上面を覆って形成した処理
槽で浸漬処理することが望ましい。地面の吸熱・放熱作
用により処理槽の温度安定性が図れるためである。
【0041】こうして、抽出処理により芭蕉の原皮にお
ける繊維相互を結合している中間層が崩壊又は溶解して
パルプとなる。このとき、非煮沸抽出方式(常温処理)
のほうが、純白度が高い且つより柔軟な芭蕉繊維がバラ
バラな状態で得易い。
【0042】このパルプは図5に示すようなトウ状の繊
維束(繊維集合体)16であり、処理液(処理槽)から
取り出す。この際、染色液及び固定液としてライトシリ
コーン80M(商品名)を用いてもよい。その後、真水
(通常、水道水)でよく洗い、トウに付着している塩
分、灰等を落して、陰干し(1日程)後、日光で自然乾
燥させる。本発明の方法では、従来の如く、後工程で竹
ばさみで抽出後の繊維束をしごかなくても、水洗いする
だけで奇麗な束状で、芭蕉の幹と同様の長さの繊維が得
られる。
【0043】また、灰汁液に染料を加えずに該方法を用
いると、純白のきれいな芭蕉の繊維を得ることができ
る。
【0044】処理液は田畑に散水することによって殺菌
効果を果たすため、土質の改良に役立つことができ、灰
液を散水して芭蕉を栽培することが可能である。
【0045】なお、廃液を芭蕉の根元に散水すると一時
的には芭蕉葉が黄ばんだが、1ケ月後には、青々と散水
しないものより繁り、土地改良の効果を確認している。
【0046】(3) この繊維束は通常、適当の太さに裂い
てフィラメントとして機結びでつないで、通常、撚りを
かけて、芭蕉糸とする。なお、機結びしたフィラメント
をそのまま、芭蕉糸としてもよい。また、該繊維束を、
叩解(叩きほぐす)後、アルカリを加えた液中で分散さ
せて煮沸後、引き上げて、洗浄した綿状としたものを、
慣用の方法で、解綿・紡糸して芭蕉糸を調製することも
勿論できる。
【0047】当然、これらの芭蕉糸は、単独で又は後述
の芭蕉紙糸と組み合わせて各種布製品、例えば、織布、
不織布、編み物(ニット)、組みひも(平ひも、丸ひ
も)、レース、網等に使用できる。
【0048】(4) 次に、上記繊維束を使用して、芭蕉紙
を製造し、さらに、芭蕉紙糸を製造する方法を説明す
る。
【0049】ここで、芭蕉紙とは、芭蕉繊維を50%以
上含んだものをいう。すなわち、芭蕉繊維100%のも
のでもよいが、芭蕉繊維を主体とし、通常の和紙の製造
原料である、コウゾ(楮)、ミツマタ(三椏)又はガン
ピ(雁皮)の繊維を50%未満混合させたものでもよ
い。例えば、コウゾ繊維を混合することにより、後述の
芭蕉紙糸とした場合に、糸強度の向上が図れる。
【0050】しかし、コウゾ繊維の割合が高くなると、
芭蕉繊維自体の特色(糸の張り・肌付きがない・風通し
等)を減じることになるので、通常、芭蕉繊維:70〜
97容量%(望ましくは85〜95容量%)とする。、
コウゾ繊維:5〜20%が適度で、好ましくは芭蕉の繊
維約90%、楮の繊維約10%である。
【0051】芭蕉紙の製造は、下記の如く行なう。
【0052】 上記で得た芭蕉繊維束(パルプ)を、
まず水で洗って川晒し作業を行ない、その後、苛性ソー
ダを投入しながら釜で所定時間(例えば、約1時間)煮
込む。
【0053】 柔らかくなった芭蕉繊維を塵よりして
塵を除去し、玉状に絞る。
【0054】 玉状に絞られた芭蕉繊維は、同様に絞
られた楮繊維と混合し、棒あるいは機械等で叩いて湿っ
た綿状に形成する。
【0055】 混合された繊維は植物性粘着剤として
のねりを混合して流し漉きにかける。
【0056】 流し漉きで形成した紙葉は、敷板に積
み重ねて、水切り後1枚毎はがして干す。
【0057】このように製造した芭蕉紙は上記直接染料
で染色(以下「一次染色」)した色が全面に表れてく
る。
【0058】この芭蕉紙は、帯状に細く(例えば、10
mm)帯状に裁断後、より(紙捻り)をかけてひも状
(径:例えば、0.5〜1mm)の芭蕉紙糸とする。
【0059】(5) 必然的では無いが、織物に使用する場
合は、芭蕉紙糸は、通常、次のようにして二次染色をす
る。
【0060】 それぞれの芭蕉紙糸に直接染料で所定
の色を刷り込んだ後、影ぼしを長時間(例えば、約24
時間程)行なう。
【0061】 水で洗浄及び自然乾燥(例えば、天
日:24時間)でする。
【0062】 蒸気式ボイラに芭蕉紙糸を入れ、所定
時間(例えば、1時間)煮込む。
【0063】 その後、色止液に浸し、再び影ぼしを
長時間(例えば、24時間以上)行ない自然乾燥させ
る。
【0064】 乾燥した糸は、毛羽立ちを防止するた
めに水に浸して所定時間(例えば、一昼夜)自然乾燥さ
せる。
【0065】こうして調製した芭蕉紙糸は色落ちせず強
度を有している。この為、後述の織物の製造に際して、
ヨコ糸及び/又はタテ糸に使用して製織を行なうことに
なる。
【0066】当然、これらの一次染色又は二次染色され
た芭蕉紙糸は、前記芭蕉糸と同様、単独で又は前記芭蕉
糸と組み合わせて、織物以外の布製品、例えば、不織
布、編み物(ニット)、組みひも(平ひも、丸ひも)、
レース、網等に使用できる。
【0067】(6) 次に、上記芭蕉糸と芭蕉紙糸とを用い
ての芭蕉布(織物)を製造方法を説明する。
【0068】本形態の芭蕉繊維を含む織物は、ヨコ糸
(緯糸)および/又はタテ糸(経糸)として、上記芭蕉
糸および芭蕉紙糸を使用するものである。
【0069】ここでは、タテ糸がヨコ糸の下に沈む交錯
の場合におけるヨコ糸として、上記芭蕉糸および芭蕉紙
糸を使用する場合を例に採り説明するが、ヨコ糸ととも
にタテ糸も上記芭蕉糸および芭蕉紙糸を使用したり、逆
に、ヨコ糸のみ上記芭蕉糸および芭蕉紙糸としてもよ
く、さらには、タテ糸がヨコ糸の上に浮く交錯の場合も
同様である。
【0070】なお、芭蕉糸および芭蕉紙糸における一次
染色では、灰染めを行なうことにより、例えば、白や金
茶色または藍色等各種の色を糸全体に付着させることが
でき、芭蕉紙糸における二次染色では1本の糸の必要な
箇所に織物模様を出すための色を刷り込む。
【0071】芭蕉を使用した織物は、芭蕉特有の張りの
強さ、織物にした時の風通しのよさ、また肌につかない
等の特徴を有しているので大島紬と異なった新たな織物
を提供できる。しかも和紙糸で形成された緯糸は、さら
りとした肌ざわりを有するため、特に夏用の織物にふさ
わしい。
【0072】芭蕉糸及び芭蕉紙糸を他の糸と組み合わせ
てヨコ糸の一部に使用すると、生産量の少ない芭蕉を効
果的に織布することができ、また、全てのヨコ糸に芭蕉
糸及び芭蕉紙糸を使用すれば芭蕉の良さを強調できる。
さらに、タテ糸には、絹や綿あるいは絹と綿との混合糸
を使用すると、芭蕉と絹の良さを引き出すことができ、
絹と綿との混合糸はタテ糸の強度を上げることができ
る。
【0073】製織は手織り機で行なう。タテ糸は細くて
長い糸が望ましく上述のように絹・綿の混合糸、あるい
は絹または綿、さらには芭蕉糸が使用され、和紙糸ある
いは芭蕉紙糸は太くて強く色彩の表現を強調できるため
ヨコ糸に使用することが望ましい。
【0074】なお、芭蕉紙糸以外の和紙糸の製造方法、
例えば、楮または雁皮、あるいはみつまた等の和紙製造
方法は、一般に和紙を製造する方法で行なわれ、芭蕉紙
糸以外の二次染色は芭蕉紙糸の二次染色の方法と同様に
行なう。
【0075】芭蕉糸と、芭蕉紙糸を用いて製織された織
物は、例えば、図1の帯1で示される。帯1は、長さが
約5m、幅約34cm程に形成され、タテ糸2には絹・
綿混合糸が使用され、ヨコ糸3には従来から製造されて
いる和紙から撚糸される和紙糸と、前述の芭蕉糸及び芭
蕉紙糸とが使用され、それぞれ芭蕉紙糸面4、芭蕉糸面
5が交互に配列されて形成されている。もちろん、ヨコ
糸3が全て芭蕉繊維層であってもよい。
【0076】タテ糸2に使用される絹・綿混合糸は、染
色されている絹糸と綿糸とを撚り合わせたものを抜染し
た後、自然灰による灰染めを行なって再度染色すること
によって形成される。絹と綿との混合糸は、絹の原糸に
比べて強度的に向上する。また、上記の灰染め方法は、
後述の芭蕉糸を抽出する際にも行なわれ、自然灰による
灰液と直接染料が用いられる。
【0077】ヨコ糸3の芭蕉紙糸面4には、コウゾある
いはガンピ又はミツマタから抽出された繊維で製造され
る和紙を撚糸して形成された和紙糸が使用され、和紙糸
の染色は、和紙から糸に形成する際に必要に応じた直接
染料を用いて行なう。
【0078】また、芭蕉繊維面5には、図2に示すよう
に、芭蕉糸51と芭蕉紙糸52とが交互に配列するよう
に使用する。特に、帯1の結び目あたりに芭蕉繊維を使
用することによって、結び目を強固にすることができほ
ぐれにくくなる。
【0079】製織された帯1には、ヨコ糸3に形成され
た一次染色の原糸と二次染色された縞模様とで鮮やかに
表現されることになる。
【0080】なお、芭蕉繊維を含む織物は、上記の帯以
外に着物やその他の織物を対象にして製織することがで
きる。
【0081】
【実施例】次に、本発明の芭蕉繊維の製造方法を、実施
例に基づいて説明する。
【0082】なお、原料である芭蕉材は、実施例1の場
合は、約1mに裁断した原木(約20cmφ)を、実施例
2の場合は裁断せずにそのまま約3mの原木(約20cm
φ)を準備した。
【0083】 <実施例1> (1) 灰の調製: 稲ワラ7とほぼ同量の砂浜で砂層9を形成後、砂層
9上に稲ワラ7とソテツ葉8を前者/後者=30kg/5
kgの重量比で交差状に並べて、上に敷設した後、燃焼さ
せる。
【0084】 燃焼完了後、燃焼物を砂層9ごと、ベ
ニヤ板で三角状の屋根を作りその上にビニールシートを
被せて12時間放置する。
【0085】 浜砂9の底部に沈下した灰を取り出
す。
【0086】(2) 処理液(灰液)の調製:灰約250g
に対して水を約10Lを加えて、かき混ぜて混合し、さ
らに、水10L、食塩90gおよび直接染料(「シリア
ス−ファストイエローGR」純度100%)25gを加
えて、合計量20Lの処理槽(処理液:該灰液)を調製
する。この灰液は、通常、黒色であった。
【0087】(3) 繊維抽出処理: 芭蕉材15kgを上記処理液(20L)に投入し
て、常温で約12時間放置後、約2時間半煮沸した。蒸
発により液量が減った分の湯を時々補給した。
【0088】 煮沸後、パルプ(繊維束)化した芭蕉
材を取り出し、水道水で洗浄した後、影ぼし(約12時
間)後、一昼夜(12時間)を行ない自然乾燥する。
【0089】このようにして得た、芭蕉繊維束は、きれ
いに金色に染色されており、水に一昼夜漬けても、色落
ちしなかった。
【0090】 <実施例2> (1) 灰の調製: シート状に砂浜で砂層9(1m四方×厚さ50mm)
を形成後、砂層9上に稲ワラ7とソテツ葉8を前者/後
者=30kg/60kgの重量比で交差状に並べて、上に敷
設した後、燃焼させる。
【0091】 燃焼完了後、燃焼物を砂層9ごと、ベ
ニヤ板で三角状の屋根を作りその上にビニールシートを
被せて12時間放置する。
【0092】 浜砂9の底部にシート上に沈下した灰
を取り出す。
【0093】(2) 処理液(灰液)の調製:灰約1kgに対
して水を約200Lを加えて、かき混ぜて混合して調製
した。灰液の色は黒色であった。
【0094】(3) 繊維抽出処理: 上記処理液を、長さ:3.5m、深さ:25cmで、
幅1〜2mの穴を地中に掘り合成樹脂シートで底壁・周
囲を覆って形成した処理槽に投入し、さらに、芭蕉材1
50kgを投入した後、上面を覆った状態で、2週間放
置した。
【0095】 パルプ(繊維束)化した芭蕉材(事実
上ほとんどバラバラになっていた。)を取り出し、水道
水で洗浄した後、影ぼし(約12時間)後、一昼夜(1
2時間)を行ない自然乾燥する。
【0096】このようにして得た芭蕉繊維は純白で柔軟
なものであった。
【0097】
【発明の効果】 本発明の芭蕉繊維の製造方法は、芭蕉
の幹(茎)から繊維抽出して芭蕉繊維を製造するに際し
て、灰汁液として、ワラとソテツ葉の混合灰を溶解させ
たものを使用することにより、面倒な梳き工程が不要
で、染色性良好な繊維が得られ、且つ、必要により、繊
維抽出工程で染色も同時可能となる。
【0098】なお、芭蕉は、年中栽培でき原木さえ有れ
ば、常時、芭蕉繊維の製造が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一形態を示す芭蕉繊維を含む織物
(帯)の簡略図
【図2】図1の部分拡大図
【図3】稲の幹葉とそてつの幹葉を焼却して灰を製造す
る状態を示す簡略図
【図4】芭蕉の幹葉を釜で煮込んで繊維を抽出する状態
を示す簡略図
【図5】抽出された芭蕉の繊維を示す簡略図
【符号の説明】
1…帯 2…タテ糸 3…ヨコ糸 4…和紙層 5…芭蕉繊維層 7…ワラ 8…ソテツ葉 9…砂(浜砂) 10…水 12…芭蕉の幹 13…灰液 14…直接染料 15…食塩 16…芭蕉繊維 51…芭蕉糸 52…芭蕉紙糸

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 芭蕉の幹(茎)をそのまま(原木)又は
    幹(茎)を裂いて調製した原皮を灰汁液に所定時間浸漬
    する繊維抽出工程を経て芭蕉繊維を製造するに際して、 灰汁液として、ワラとソテツ葉の混合灰を溶解させたも
    のを使用することを特徴とする芭蕉繊維の製造方法。
  2. 【請求項2】 ワラとソテツ葉の混合重量比が、ワラ/
    ソテツ葉=9.5/0.5〜1/9であることを特徴と
    する請求項1記載の芭蕉繊維の製造方法。
  3. 【請求項3】 芭蕉の幹(茎)をそのまま(原木)又は
    幹(茎)を裂いて調製した原皮を灰汁液に所定時間浸漬
    する繊維抽出工程を経て芭蕉繊維を製造するに際して、 灰汁液として、ワラとソテツ葉混合灰及び直接染料を溶
    解させたものを使用して、繊維抽出工程において同時に
    染色も行なうことを特徴とする芭蕉繊維の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記灰汁液が、さらに、アルカリ又はア
    ルカリ土類金属の塩化物を含むことを特徴とする請求項
    3記載の芭蕉繊維の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記灰汁液が、混合灰:1〜50g/
    L、直接染料:0.5〜5g/L、NaCl:1〜10
    g/Lの組成であることを特徴とする請求項4記載の芭
    蕉繊維の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記繊維抽出工程の処理条件が80〜1
    00℃×1〜6時間であることを特徴とする請求項5記
    載の芭蕉繊維の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記繊維抽出工程の処理条件が、常温×
    10〜20日であることを特徴とする請求項5記載の芭
    蕉繊維の製造方法。
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