JP3065024U - ゴルフクラブ用シャフト - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 強度および靱性に優れ、軽量で飛距離がでる
とともに、初心者または非力な人でも容易に扱えるゴル
フクラブに適したシャフトを提供する。 【解決手段】 金属製のゴルフクラブ用シャフト１の外
表面２へ、ゴルフクラブ用シャフト１と同等以上の硬度
を有する４０μｍ〜２００μｍのショットを１００ｍ／
ｓｅｃ以上の噴射速度で噴射し、ゴルフクラブ用シャフ
ト１の表面付近の温度をＡ₃ 変態点以上に上昇させて改
質層４を外表面２側に設ける。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【考案の属する技術分野】

この考案は、ゴルフクラブに使用するゴルフクラブ用シャフトに関するもので ある。

【０００２】

【従来の技術】

ゴルフクラブは、ボールの飛距離、方向性などの安定化を図るため、形状、構 造、材質の面で種々の改良が行われている。 ここで、例えばシャフトについて考えてみると、飛距離を伸ばす上から強度、 靱性に優れていることが要求されるが、スチール、カーボン、ボロン、チタンな どの材質は、それぞれ一長一短がある。 そこで、メッキを施したり、繊維シートを巻き付けて塗装することにより、欠 けている強度または靱性を向上させている。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】

しかしながら、メッキを施したり、繊維シートを巻き付けて塗装することによ り、欠けている強度または靱性を向上させても、向上させることのできる強度ま たは靱性には限界があるので、強度および靱性に優れ、軽量で飛距離のでるゴル フクラブを求めるゴルファーの要求を満足させることができていないというのが 現状である。

【０００４】 この考案は、上記したような要求に応えるためになされたもので、強度および 靱性に優れ、軽量で飛距離がでるとともに、初心者または非力な人でも容易に扱 えるゴルフクラブに適したシャフトを提供するものである。

【０００５】

【課題を解決するための手段】

この考案にかかるゴルフクラブ用シャフトは、金属製のシャフトの表面へ、シ ャフトと同等以上の硬度を有する４０μｍ〜２００μｍのショットを１００ｍ／ 秒以上の噴射速度で噴射し、シャフトの表面付近の温度をＡ₃ 変態点以上に上昇 させて改質層を設けたものである。

【０００６】

【考案の実施の形態】

以下、この考案の実施形態を図に基づいて説明する。 図１はこの考案の一実施形態であるゴルフクラブ用シャフトの一部を示す部分 断面図、図２は図１に示したゴルフクラブ用シャフトの拡大断面模式図である。 図１または図２において、１は中空なゴルフクラブ用シャフト、２はゴルフク ラブ用シャフト１の外表面、３はゴルフクラブ用シャフト１の内表面、４はゴル フクラブ用シャフト１の外表面２側に形成された改質層を示す。

【０００７】 次に、改質層４の形成について説明する。 微小な合金鋼、炭素鋼などの球状物体からなるショットをエアー式、遠心式な どの吹き付け加工機で相対的に非常に大きなゴルフクラブ用シャフト１に衝突さ せると、ショットは跳ね返るが、衝突後のショットの速度は遅くなる。 この衝突前の速度と衝突後の速度の比、すなわち反発係数はゴルフクラブ用シ ャフト１の材質硬度によって異なるが、衝突前の速度をＶ₁ 、衝突後の速度をＶ ₂ とし、エネルギー減少をＥ_e とするとともに、ショットの重量をＷとすると、

【０００８】

【数１】

【０００９】 となる。 そして、反発係数をｅとすると、衝突後の速度をＶ₂ は、

【００１０】

【数２】

【００１１】 と表せるので、第（１）式のエネルギー減少Ｅ_e は、

【００１２】

【数３】

【００１３】 と表せる。 このエネルギー減少Ｅ_e は、エネルギー不変の法則により、音以外にその大部 分が熱エネルギーに変換される。 そして、熱エネルギーは、ショットの衝突時に衝突部が変形することによる内 部摩擦と考えられるが、ショットの衝突した変形部分のみで熱交換が行われるの で、部分的に高温になる。 なお、ショットおよびシャフトの表面硬度がともに高い場合の衝突においては 、反発係数ｅは１に近いが、変形部分が小さいため、局部的により高温になる。

【００１４】 ここで、同じ加工において反発係数ｅが一定であるとし、

【００１５】

【数４】

【００１６】 とすると、第（３）式のエネルギー減少Ｅ_e は、

【００１７】

【数５】

【００１８】 と表せる。 そして、変形して温度上昇する部分の重量Ｋ₂ Ｗはショットの重量に比例する と考え、その比熱をＣとし、温度上昇をｔとすると、エネルギー減少Ｅ_e と上昇 温度ｔとは比例すると考えられる。 したがって、第（５）式のエネルギー減少Ｅ_e は、

【００１９】

【数６】

【００２０】 と表せ、上昇温度ｔは、

【００２１】

【数７】

【００２２】 と表せるので、変形して温度が上昇する部分の重量Ｋ₂ Ｗは、ショットの速度が 速くなるにしたがって大きくなるが、その比率は小さい。 なお、温度が上昇する部分の重量Ｋ₂ Ｗが、ショットの速度に比例するとして も、上昇温度ｔは衝突前の速度Ｖ₁ に比例することになる。

【００２３】 したがって、Ａ₃ 変態点以上の加熱、ピーニング加工、焼き入れ焼き戻しを繰 り返してゴルフクラブ用シャフト１の表面に対して行うと、ゴルフクラブ用シャ フト１の硬度および疲労強度の向上を図ることができる。

【００２４】 なお、ショット径を４０μｍ〜２００μｍとしたのは、噴射速度および噴射密 度との関係からで、ショット径が余り大きいと、噴射速度を高速にすることがむ ずかしく、また、噴射密度が低いと、噴射圧力を大きくしても、改質層４が不均 一になるからであり、さらには、被加工表面の粗さによる影響を少なくするため でもある。

【００２５】 ここで、加工処理の一例を挙げると、硬度がＨＲＣ３８の炭素鋼からなるゴル フクラブ用シャフト１の外表面２へ、ショット径が５５μｍのアルミナシリカビ ーズを、エアー式で噴射圧力を４ｋｇ／ｃｍ² （０．３９ＭＰａ）とし、噴射速 度を１５０ｍ／秒以上として１５０ｍｍ離れた所から１２００ｍｍシャフトに３ ００秒間噴射することにより、シャフト外表面が瞬時に熱処理され、表面硬度が Ｈｖ６００（ＨＲＣ５５）、表面内部残留圧縮応力が３００ＭＰａ〜８００ＭＰ ａとなり、疲労強度が３０００回から２００００回となった。

【００２６】 また、腐食後の顕微鏡による観察では、ショットピーニングにより、外表面２ がＡ₃ 変態点以上に加熱されてマルテンサイト変態が生じており、丁度焼き入れ 、焼き戻し処理が行われたのと同様のマルテンサイト組織の焼き入れ層となり、 その下部にトルースタイトまたはベイナイトの再焼き戻し層をなす軟化層が生じ 、素地が元のままの状態で存在していた。 すなわち、ショットピーニングによってゴルフクラブ用シャフト１が加熱され 、同時にピーニング加工されると、一種の恒温変態に似た現象で、表層は残留オ ーステナイトがマルテンサイトに変態し、表面から３０μｍの間にマルテンサイ トが多く析出し、表層が硬度を高め、表層下部はベイナイトおよび／またはトル ースタイト（結節状）に変態する。

【００２７】 換言すると、表層はマルクエンチでマルテンサイト変態が起こって焼き戻し、 焼き割れや変形がないマルテンサイト組織が得られ、表層下部は常温まで冷却さ れる間に、マルテンパによってマルテンサイトとベイナイトとの混合した硬度が 高く、靱性に富む組織が得られ、また、表面下部付近でオーテンパにより焼き割 れ、曲がりの生じないベイナイト組織が得られると同時に、一種の焼き戻しに似 た現象で、一旦マルテンサイト変態した組織が４００℃付近で焼き戻されてマル テンサイトが分解し、靱性に富む二次トルースタイト組織となる。

【００２８】

【考案の効果】

以上のように、この考案によれば、金属製のシャフトの表面へ、シャフトと同 等以上の硬度を有する４０μｍ〜２００μｍのショットを１００ｍ／秒以上の噴 射速度で噴射し、シャフトの表面付近の温度をＡ₃ 変態点以上に上昇させて改質 層を設けたので、強度および靱性に優れたゴルフクラブ用シャフトとすることが できる。 また、強度および靱性が優れることにより、ゴルフクラブ用シャフトの肉厚を 薄くできるので、軽量で飛距離がでるとともに、初心者または非力な人でも容易 に扱えるゴルフクラブを得ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この考案の一実施形態であるゴルフクラブ用シ
ャフトの一部を示す部分断面図である。

【図２】図１に示したゴルフクラブ用シャフトの拡大断
面模式図である。

【符号の説明】

１ ゴルフクラブ用シャフト ２ 外表面 ３ 内表面 ４ 改質層

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 金属製のシャフトの表面へ、このシャフ
   トと同等以上の硬度を有する４０μｍ〜２００μｍのシ
   ョットを１００ｍ／秒以上の噴射速度で噴射し、前記シ
   ャフトの表面付近の温度をＡ₃ 変態点以上に上昇させて
   改質層を設けた、 ことを特徴とするゴルフクラブ用シャフト。