JP3047474B2 - 積層体およびそれを用いた回路基板 - Google Patents

積層体およびそれを用いた回路基板

Info

Publication number
JP3047474B2
JP3047474B2 JP2415004A JP41500490A JP3047474B2 JP 3047474 B2 JP3047474 B2 JP 3047474B2 JP 2415004 A JP2415004 A JP 2415004A JP 41500490 A JP41500490 A JP 41500490A JP 3047474 B2 JP3047474 B2 JP 3047474B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
laminate
pps
sheet
temperature
fiber sheet
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2415004A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH04224941A (ja
Inventor
新一郎 宮治
健次 喜田
雄吉 出口
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toray Industries Inc
Original Assignee
Toray Industries Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toray Industries Inc filed Critical Toray Industries Inc
Priority to JP2415004A priority Critical patent/JP3047474B2/ja
Publication of JPH04224941A publication Critical patent/JPH04224941A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3047474B2 publication Critical patent/JP3047474B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Laminated Bodies (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、積層体およびそれを用
いた回路基板に関し、更に詳しくは、繊維シートとポリ
−p−フェニレンスルフィドを主成分とする未延伸シー
トからなる積層体および該積層体をベース基材とした回
路基板に関する。
【0002】
【従来の技術】電気、電子工業分野において、機器の小
型化、高機能化の観点から、耐熱性、熱寸法安定性、低
吸湿性、難燃性、高周波特性などの諸特性がバランス
し、比較的低温で融着可能な(自己融着性を有する)基
材の要求が増加している。接着加工に接着剤を用いる
と、上記の諸特性を低下させてしまうので、該諸特性を
低下させないためには、自己融着性が極めて重要であ
り、特に回路基板(多層回路基板も含む。)の分野にお
いて、高周波基板やシールド基板などの作製に、自己融
着性が強く要求されている。
【0003】この分野で最も注目を浴びている基材とし
て、ポリ−p−フェニレンスルフィドの未延伸シート及
び二軸配向フイルムがある。二軸配向ポリ−p−フェニ
レンスルフィドフイルム(以下PPSフイルムと略称す
ることがある。)を用いた積層フイルムや積層体として
は、(1)ポリエステルフイルムとの積層フイルム(特
開昭62−292431号公報)、(2)芳香族ポリア
ミドの繊維シートと接着剤を介して積層したもの(特開
昭60−63158号公報)、(3)300℃の温度で
不融で、かつ150℃の温度下での熱膨張係数が50×
10-61/℃以下の繊維シートとの積層体(特開平1−
95585号公報)などが知られている。また、(4)
ポリ−p−フェニレンスルフィドの未延伸シート(以下
PPSシートと略称することがある。)とPPSフイル
ムとの積層体も知られている(特願昭63−19559
1号)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記のPPS
シート、フイルムおよび積層体は、それぞれ下記のよう
な問題点を有している。
【0005】PPSシート単体としては、PPSフイル
ムと比べると耐熱温度が低く(ガラス転移点を越えると
熱変形しやすい。)、加熱工程が増加する程結晶化が進
みもろくなる。プリント基板のベースとして用いる場合
は、結晶サイズ等をコントロールして、耐熱性ともろさ
をある程度満足させているが、急激に熱が加わると熱変
形しやすいという問題を有している。
【0006】一方、PPSフイルム単体としては、熱収
縮による寸法変化を起こすため、例えば回路基板の製造
工程で熱が加わると回路のズレが生じやすい。また積層
回路基板のスル−ホール加工時に裂けやすいなどの問題
点を有していた。更に積層工程では、熱融着温度が26
0℃以上と高温であるため、このような熱融着(自己融
着性)を必要とする分野では加工しにくかった。
【0007】このようなPPSシート、フイルム単体に
おける問題点を解決するために、前述の如く種々の積層
フイルムや積層体が提案されているが、それぞれ問題点
を残している。前述の(1)項のポリエステルフイルム
との積層フイルムは、スル−ホール加工時の裂けやすさ
は改善されるが、熱寸法安定性、耐熱性の改善にはなら
ない。(2)項の芳香族ポリアミドの繊維シートと接着
剤を介して積層した積層体は、耐熱性は改善されるが、
接着剤の耐熱性が該基材に悪影響を与え(つまり接着剤
の耐熱性が基材全体としての耐熱性の律則となり)、P
PSフイルムの優れた特性が活かしきれない。また、P
PSフイルムと繊維シートを熱融着で積層した(3)項
の積層体は、接着力に乏しく、折り曲げ等の力が加わっ
たときに剥離しやすい。上記(1)〜(3)項の積層フ
イルム及び積層体は、いずれにしても自己融着性を改善
する効果はない。前述の(4)項の積層体は、PPSシ
ート側に自己融着性はもたせられるものの、積層対象が
PPSフイルムであるため、積層体全体としての熱寸法
安定性、耐熱性に欠ける。
【0008】本発明は、上記の問題点を解消し、耐熱
性、寸法安定性(熱および湿度)、難燃性、高周波に対
する安定性などの諸特性がバランスし、しかも比較的低
温で熱融着できる機能(自己融着性)を有し、特に回路
基板(多層回路基板も含む。)に用いて最適な耐熱基材
を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は繊維
シート(A層)の少なくとも片方の面に、ポリ−p−フ
ェニレンスルフィドを主成分とする未延伸シート(B
層)が接着剤を介することなく固着されている積層体で
あって、B層の残留結晶化エネルギーΔHtが該B層を
構成する樹脂の結晶化エネルギーΔHqの20%以上で
あることを特徴とする積層体、および該積層体の少なく
とも片方の面に電気回路を設けてなることを特徴とする
回路基板を提供する。
【0010】本発明における繊維シートとは、繊維の集
合体によって構成された薄葉体であって、クロス、布、
フエルト、不織布、紙などの総称で、厚さ10〜500
μm(好ましくは10〜300μm)のものである。該
繊維シートは、易接着、着色などの加工及び2種以上の
素材を混合したり積層してあってもよい。繊維シートの
中でもクロスが好ましく、特にガラス繊維のクロスが該
繊維シートの内部までポリ−p−フェニレンスルフィド
ポリマが入り込みやすく(含浸しやすく)、耐熱性、寸
法安定性および加工性の点で好ましい。
【0011】上記繊維シートは、400℃の温度まで融
点を有しないものが好ましく、この融点を有しない繊維
シートとは、400℃の温度に対して不融である繊維シ
ートを言う。ここで不融とは400℃の温度にさらされ
たときに、溶融したり、軟化したりしない状態をいう。
本発明に用いる繊維シートが上記の特性を有しないと、
本発明の積層体が300℃付近の温度まで加熱されたと
き、熱変形したり、熱寸法変化率が大きくなる。
【0012】本発明において、ポリ−p−フェニレンス
ルフィド(以下PPSと略称することがある。)とは、
繰り返し単位の70モル%以上(好ましくは85モル%
以上が下記構造式(化1)で示される構成単位からなる
重合体をいう。かかる成分が70モル%未満ではポリマ
の結晶性、熱転移温度等が低くPPSを主成分とする樹
脂組成物からなるフイルムの特徴である耐熱性、寸法安
定性、機械的特性等を損なう。
【0013】
【化1】
【0014】上記PPSにおいて、繰り返し単位の30
モル%未満、好ましくは15モル%未満であれば共重合
可能なスルフィド結合が含有する単位が含まれていても
差し支えない。また該重合体の共重合の仕方は、ランダ
ム、ブロック型を問わない。
【0015】本発明において、ポリ−p−フェニレンス
ルフィドを主成分とする樹脂組成物(以下PPS系組成
物と略称することがある。)とは、ポリ−p−フェニレ
ンスルフィドを60重量%以上含む組成物をいう。PP
Sの含有量が60重量%未満では、該組成物からなる未
延伸シートの引き裂き強さなどの機械特性や耐熱性等を
損なう。また、該組成物中の残りの40重量%未満はP
PS以外のポリマ、無機または有機のフィラー、滑剤、
着色剤などの添加物を含むことができる。さらに、PP
S系組成物の溶融粘度は、温度300℃、剪断速度20
0sec -1のもとで、700〜20000ポイズの範囲が
シートの成形性の点で好ましい。
【0016】本発明にいう未延伸(無配向)ポリフェニ
レンスルフィドシート(PPSシート)とは、上記のP
PS系組成物を、溶融成形してなる厚さ700μm以下
のフイルム、シート、板の総称であり、実質的に未延伸
(無配向)のものをいう。
【0017】本発明の積層体は、前述の繊維シートとP
PSシートが接着剤を介することなく積層されたもので
ある。接着剤が介在すると、接着剤が悪影響し、積層体
の耐熱性、電気特性等が低下してしまう。ここで接着剤
とは、積層体の各層を接合するために用いられる繊維シ
ート、PPSシート以外の厚さ1μm以上の層をいう。
【0018】また、本発明の積層体において、繊維シー
トとPPSシートの接着界面は両者が面で接合していて
も、PPSシートが繊維シートの内部まで入り込んでい
ても(含浸)よいが、スル−ホール加工が行なわれる場
合はPPSシートが繊維シートの内部に入り込んでいる
方がスル−ホールの加工性の上で好ましい。
【0019】本発明における積層体のB層の残留結晶化
エネルギーΔHtとは、該積層体(積層後)のPPSシ
ート層の結晶化エネルギーであり、積層体全体から、あ
るいはミクロトーム等で顕微鏡で観察しながらPPSシ
ートを取り出して、示差走査熱量計(DSC)にて、昇
温時に表われる結晶化(Tcc)の発熱ピーク面積から
求めることができる。
【0020】B層を構成する樹脂の結晶化エネルギーΔ
Hqとは、積層体のPPSシートを示差走査熱量計(D
SC)にて融点以上の温度まで上げ、一旦溶融させたも
のを液体窒素等の冷媒中で急冷したサンプルを、再びD
SCにて昇温した際現われる結晶化の発熱ピーク面積か
ら求めることができる。このΔHqの、積層体形成後の
残留比率、つまりΔHt/ΔHq×100が20%以上
であることが、本発明の目的である自己融着性を付与さ
せるために必要である。
【0021】本発明の積層体の厚み構成は、繊維シート
の厚さを〔A〕、PPSシートの厚さを〔B〕とした場
合、本発明の第1の様態である繊維シート/PPSシー
トの2層積層体は、0.3≦A/B≦3.0の範囲が含
浸性、耐熱性、熱寸法安定性及び作業性の点で好まし
い。また、積層体全体の厚さは20〜500μmの範囲
が好ましい。
【0022】更に積層構成の第2の様態である3層積層
体(PPSシート/繊維シート/PPSシート)は、各
層の厚さをそれぞれ〔B〕、〔A〕、〔B’〕とする
と、0.3≦B+B’/A≦3.0の範囲内が上記2層
積層体と同様の理由で好ましい。また積層体全体の厚さ
は30〜700μmの範囲が好ましい。またBとB’の
厚み比B/B’は0.5〜2.0の範囲が加工性の上で
好ましい。また該積層体が熱や紫外線などで酸化架橋し
てあってもよい。
【0023】本発明の積層体は、特に回路基板(多層回
路基板も含む)のベース基材として最適である。本発明
の回路基板は、上記の積層体の少なくとも片方の面に電
気回路が形成されたものである。電気回路とは、導電体
をパターン化した電気の通路で、導電体としては銅、ア
ルミニウムなどの金属または、銅、銀、カーボンなどを
含有する導電性塗料などが通常用いられる。また電気回
路に電気、電子部品が実装されていてもよい。また、該
回路基板が2層以上積層されてあってもよい。
【0024】本発明の積層体は、自己融着性をもたせる
ために、B層の残留結晶化エネルギーΔHtがB層の樹
脂を構成する結晶化エネルギーΔHqの20%以上であ
ることを必須の条件としているが、該積層体を用いて作
製した本発明の回路基板にあっては、ΔHtは必ずしも
ΔHqの20%以上でなくてもよい。つまり、前記回路
基板や積層回路基板のように、加熱工程をいくつか経て
きて最終製品となった場合の、積層体のB層のΔHt
は、必ずしも20%以上とは限らない場合がある。しか
しこの場合においても、回路基板や積層回路基板加工、
作製の段階において、本発明による積層体の自己融着性
が十分に活用されたことになり、かつ最終製品において
も接着剤を用いないことによる耐熱性向上効果、接着力
向上効果が得られる。
【0025】(製造方法)次に本発明の積層体および回
路基板の製造方法について述べる。まず、本発明に用い
るPPSは、硫化アルカリとパラジハロベンゼンとを極
性溶媒中で高温高圧下に反応させて得られる。特に、硫
化ナトリウムとパラジクロルベンゼンを、N−メチルピ
ロリドン等のアミド高沸点極性溶媒中で反応させるのが
好ましい。この場合、重合度を調整するために、力性ア
ルカリ、カルボン酸アルカリ金属塩等のいわゆる重合助
剤を添加して、230〜280℃で反応させるのが最も
好ましい。重合系内の圧力および重合時間は使用する助
剤の種類や量および所望する重合度等によって適宜決定
する。得られた粉状または粒状のポリマを、水または/
および溶媒で洗浄して、副製塩、重合助剤、未反応モノ
マー等を分離する。
【0026】このポリマを本発明のPPSシートに成形
するには、エクストルーダーに代表される溶融押出機に
該ポリマを供給し、該ポリマの融点以上(好ましくは3
00〜350℃の範囲)の温度に加熱し充分混練した
後、スリット状のダイから連続的に押出し、該フイルム
のガラス転移点以下の温度まで急速冷却することによ
り、結晶化(Tcc)のピーク温度が125℃以上の実
質的に無配向のシートが得られる。押出し温度が低かっ
たり、混練状態が不充分であったり、冷却速度が遅れた
りすると結晶化が起こり好ましくない。示差走査熱量計
(DSC)で不活性ガス雰囲気中、20℃/分の速度で
20〜180℃まで昇温した時に発生する結晶化のピー
ク温度(Tcc)が125℃以上(好ましくは130℃
〜160℃の範囲)のシートが、積層体として熱が加わ
った時に結晶化しにくい点、加工性の点で好ましい。ま
た押出し温度が高すぎると熱分解によりシート上に発砲
が生じるなどの弊害がある。
【0027】得られたPPSシートに、必要に応じてコ
ロナ放電処理、プラズマ処理、プライマー処理などの易
接着を目的とした表面処理を行なう。
【0028】次に積層体の製造方法を述べる。まず、2
層積層体としては、たとえば次の(1)〜(4)の方法
がある。 (1)PPSシートと繊維シートを重ね合わせて温度1
50℃〜270℃、圧力1〜30kg/cm2 の条件下で、
熱ロールプレスまたは熱板プレスで熱固着後、本発明の
積層体のPPSシートの結晶化を防止するために冷却ロ
ール、冷却板や、フレシュエアー、水を介して冷却する
方法。上記の積層温度が150℃未満であると積層体の
接着性が乏しく、逆に270℃を越えると積層体の平面
性が悪化し、該積層体の厚みコントロールがしにくくな
る。また積層圧力が1kg/cm2 未満ではPPSが繊維シ
ートの内部に入りにくく、30kg/cm2 を越えるとPP
Sシートが破断したり積層体の平面性が悪化する。
【0029】(2)PPSシートと繊維シートを重ね合
わせて温度80℃〜130℃、圧力1〜30kg/cm2
条件下で一段積層し、更に(1)に示した方法で二段積
層する方法。この場合、一段積層の積層温度が80℃未
満であると、繊維シートとの接着性が全くなく、続く工
程(1)の作業性が悪い。130℃を越えるとPPSシ
ートの結晶化が進み、続く工程(1)を経て得られ該積
層体の自己融着性、機械的特性等が低下してしまう。ま
た圧力が1kg/cm2 未満では、一段積層の温度範囲では
接着せず、30kg/cm2 を越えると平面性が悪化し、続
く工程(1)での作業性が悪くなる。
【0030】(3)PPSをエクストルーダに代表され
る押出機に供給し、溶融させ、スリット状のダイから押
し出し、下方の繊維シート上に積層しながら一体化する
方法。
【0031】(4)(3)の方法で得た積層体を更に
(1)の方法で積層する方法。PPSを繊維シートの内
部に入り込ませる上で効果的である。2層積層体の厚さ
は、20〜500μmの範囲が平面性の確保と結晶化の
コントロールの点で好ましい。
【0032】次に3層積層体の製造方法について述べ
る。 (5)上記(1)〜(4)の方法で2層積層体を得た
後、該2層積層体の繊維シート側にもう一層のPPSシ
ートを重ね合わせて、(1)の条件で熱固着し、冷却す
る方法。
【0033】(6)PPSシート、繊維シート、PPS
シートをこの順序に重ね合わせて、(1)の条件下で同
時に熱固着、冷却する方法。
【0034】(7)(2)の方法で、3層積層体として
形成し、(1)の条件で熱固着、冷却する方法。などを
挙げることができる。
【0035】3層積層体の厚さは、30〜700μmの
範囲内が平面性の確保と結晶化のコントロールの上で好
ましい。
【0036】更に、本発明の積層体は、PPSシートを
周知の方法で二軸延伸して熱処理したフイルム(二軸配
向フイルム)を用い、該フイルムの融点以上(285℃
以上)の温度下で、上記(1)または(6)の方法で溶
融積層した場合も該PPS層の要件が本発明の範囲なら
含まれる。
【0037】次に本発明の積層体をベースにした回路基
板の製造方法を述べる。上記の積層体の片面又は両面に
アルミニウム、銅などの金属箔を熱融着、又は接着剤を
介して積層するか、上記の金属を真空蒸着法、メッキ
法、スパッタリング法などの方法で金属層を積層し、塩
化第2鉄水溶液などで所望の回路パターンをエッチング
加工で形成させる。また、銀、銅、カーボンなどを含有
した導電性の塗料を用いてシルク印刷法などの方法で回
路パターンを形成し、必要に応じて該塗料を熱または紫
外線などで硬化せしめる。更に必要に応じて、上記の回
路基板を積層して多層回路基板にしたり、スル−ホール
加工したり、電気、電子回路を実装したりする。
【0038】
【発明の効果】本発明は、以上の構成としたため、耐熱
性、寸法安定性(熱、湿度)、難燃性、高周波特性等が
高次元でバランスしたものとなり、更に自己融着性も備
えた積層体となった。該諸特性は、回路基板、積層回路
基板に最適である。
【0039】(用途)本発明の積層体は、回路基板、積
層回路基板以外にも、トランス、モータなどの耐熱絶縁
材、高温高圧部分などに用いられるケーブルの被覆材、
耐熱粘着テープ、プリプレグ基材、耐熱ラベル基材、ス
ピーカコーン、シールド基材等に最適である。
【0040】また、本発明の積層体の少なくとも片面に
別の素材(金属、シートなど)が積層されてあったり、
別の樹脂やコート剤がコーティングされたり、モールド
されてあってもよい。更に本発明の積層体を、熱や紫外
線などで酸化架橋してあってもよい。
【0041】(特性の評価方法)次に本発明の記述に用
いた、特性の評価方法および評価基準を述べる。 (1)残留結晶化エネルギー(ΔHt) 積層体の表層部のPPSシートを取り出し、PERKI
N−ELMER社製DSC−2型示差走査熱量計にて不
活性ガス雰囲気中、下記条件で20〜180℃まで昇温
した時に現われる結晶化(Tcc)の発熱ピーク面積
を、計算法(半値幅×高さ、底辺×高さ/2)あるいは
重量法で求め、基準物質であるインジウムのピーク面積
から求めた値、定数Kを算出し、下式により積層体の結
晶化エネルギーΔHt(単位: cal/g )を算出する。 ΔHt=(K×R×ピーク面積(cm2 ))/(Ws×Vc(cm/sec ))
【0042】(2)結晶化エネルギー(ΔHq) 積層体のPPSシートの部分をサンプリングし、不活性
ガス雰囲気中DSCにて、20〜340℃まで昇温して
溶融させる。その後、液体窒素等の冷媒で急冷し無配向
のサンプルを得た後、再びDSCを使用してΔHtを測
定した時の条件で結晶化エネルギーΔHqを求める。
【0043】(3)結晶化温度(Tcc) 試料フイルムをPERKIN−ELMER社製(DSC
−2型)の示差走査熱量計にて、下記条件で20〜18
0℃まで昇温した時に現われる結晶化(Tcc)のピー
クを読みとった値で表わした。
【0044】(4)耐熱性 280℃の温度にセットしたハンダ浴中に、2cm角の試
料を5秒間浮べ、次の基準で評価した。 ○ : 全く変化なし △ : 一部に軟化、変形、剥れ、シワ等が見られる。 × : 全面が波打ち又は曲がりなどの変形又は剥離が
あり、各層の寸法変化が大きく異なる。
【0045】(5)熱収縮率 試料を100mm角に切り出し、顕微鏡で更に各辺の長さ
を正確に読みとる(αmm)。次に250℃の温度に加熱
した炉(遠赤外線方式)で5分間エージングした後、上
記の各辺の長さを正確に測定する(βmm)。次式で熱収
縮率(%)を求め、大きい側の熱収縮率で表わした。 熱収縮率(%)=((α−β)/α)×100
【0046】(6)密着性 積層体を180度に5回折り曲げ、その折り曲げ部分を
観察し、次の基準で評価した。 ○ : 折り曲げ部分の剥れ、その部分の剥離強さの低
下が全くない。 △ : 折り曲げ部分が部分的に剥れ、剥離強さが少し
低下している。 × : 折り曲げ部分が剥れる。
【0047】(7)自己融着力 積層体を温度200℃〜250℃、圧力1kg/cm2 の条
件で熱融着し、剥離強度(kg/cm)をテンシロンで測定
した。
【0048】(8)回路のズレ 回路基板を200℃の温度にセットした炉(遠赤外線方
式)に5秒間通過させ、該炉を通過させていないものと
の回路のズレを見た。
【0049】(9)スル−ホール性 スル−ホール加工したサンプルのスル−ホール部を顕微
鏡で観察し、導電性塗料の密着状態を調べた。
【0050】(10)誘電特性(誘電損失) 周波数を変えて、誘電損失の変化を調べた。(JIS−
C−6481に準じて測定した。)
【0051】(11)折り曲げ性 積層体を10mm幅に切り出し、180度に20回折り曲
げた後の折り曲げ部分のクラックの発生度を観察した。 ○ : クラックは全く発生しない。 △ : 幅方向に5mm未満のクラックが発生した。 × : 幅方向に5mm以上のクラックが発生した。
【0052】
【実施例】次に本発明を実施例を挙げて詳細に説明す
る。 実施例1 (1)本発明に用いるPPS未延伸シートの調整。 オートクレーブに、硫化ナトリウム32.6kg(250
モル、結晶水40重量%を含む)、水酸化ナトリウム1
00g、安息香酸ナトリウム36.1kg(250モ
ル)、およびN−メチル−2ピロリドン(以下NMPと
略称することがある)79.2kgを仕込み205℃で脱
水したのち、1,4ジクロルベンゼン37.5kg(25
5モル)、およびNMP20.0kgを加え、265℃で
4時間反応させた。反応生成物を水洗、乾燥して、p−
フェニレンスルフィドユニット100モル%からなり、
溶融粘度3100ポイズのポリ−p−フェニレンスルフ
ィド21.1kg(収率78%)を得た。
【0053】この組成物に、平均粒径0.7μmのシリ
カ微粒粉末0.1重量%、ステアリン酸カルシウム0.
05重量%を添加し、40mm径のエクストルーダによっ
て310℃で溶融し、金属繊維を用いた95%カット孔
径10μmのフィルタで濾過したのち長さ400mm、間
隔0.5mmの直線状のリップを有するTダイから押し出
し、表面を25℃に保った金属ドラム上にキャストし、
厚さ25μmの未延伸シートを得た(PPSシート−1
とする)。
【0054】(2)繊維シートの調整 ガラスクロス(EPC030(株)有沢製作所製)の3
4μmを用いた(繊維シート−1とする)。
【0055】(3)積層体の形成 上記のPPSシート−1と繊維シート−1を重ね合わせ
て、温度240℃、圧力8kg/cm2 の条件で熱板プレス
し、1分間プレスした後直ちに該熱板を水で冷却し、1
00℃の温度まで降温し、積層体を得た(積層体−
1)。
【0056】実施例2 実施例1の繊維シート−1の両側にPPSシート−1を
重ね合わせて、加熱ロールプレス法で熱圧着した。積層
条件は、温度230℃、圧力10kg/cm2 であり、ライ
ン速度は1.0m/分である。更に積層後、加熱ロール
に後続する冷却ロール(ロール温度20℃、水冷)で冷
却し、3層積層体を得た(積層体−2)。
【0057】実施例3 実施例2の方法で、積層条件を温度120℃、圧力10
kg/cm2にして積層し、更に温度200℃、圧力10kg
/cm2 の条件で再び熱融着し、実施例2の条件で冷却し
た(積層体−3)。
【0058】実施例4 実施例1で用いたPPSポリマを30mm径のエクストル
ーダによって310℃で溶融し、長さ240mm、間隔
0.5mmの直線状のリップを有するTダイから押し出し
た。一方、Tダイ直下に表面温度を90℃に保った金属
製のプレスロールを設け、実施例1で用いた繊維シート
−1を1m/分の速度でプレスしながら上記押出しポリ
マと積層した。更に実施例1の条件で該積層体の繊維シ
ート側に、もう一層のPPSシート−1を積層した(積
層体−4)。
【0059】比較例1 実施例1のPPSシートの製造条件で、溶融温度を29
0℃、Tダイから押し出された後のキャストフイルムを
除冷する方法に変更した他は実施例1の条件でPPSシ
ートを得た(PPSシート−2とする)。次に繊維シー
ト−1の両側にPPSシート−2を重ね合わせて、実施
例1の条件で3層積層体を得た(積層体−5)。
【0060】比較例2 実施例2の積層構成で、実施例1の方法で積層した。積
層条件は実施例1の条件であるが、急冷せずに除冷した
(積層体−6)。
【0061】比較例3 実施例1の条件で100μm厚さのPPSシートを得
た。更に該シートを250℃の温度で5分間熱処理した
(PPSシート−3とする)。
【0062】比較例4 東レ(株)社製“トレリナ”タイプ3000の100μ
m厚さの二軸配向PPSフイルムを準備した(PPSフ
イルム−1とする)。
【0063】比較例5 東レ(株)社製“トレリナ”タイプ3030の25μm
厚さを準備(PPSフイルム−2とする)し、繊維シー
ト−1の両側にPPSフイルム−2を、コロナ処理面が
繊維シートに接するように重ね合わせて、温度270
℃、圧力10kg/cm2 の条件で加熱ロールプレス法にて
積層した(積層体−7)。
【0064】比較例6 比較例5の積層構成でエポキシ系の接着剤(“ケミット
エポキシ”TE5920(東レ(株)製))を介して積
層した。接着剤をPPSフイルム−2のコロナ処理面
に、グラビアロール法で10μm(ドライ条件)の厚さ
に塗布し、繊維シート−1の両面に積層した。接着剤の
乾燥条件は100℃の温度で3分間、積層条件は、12
0℃の温度で3kg/cm2 のプレス圧であった。更に15
0℃の温度で2時間熱硬化せしめた(積層体−8)。
【0065】比較例7 実施例2の積層構成で、比較例6の方法で積層した(積
層体−9)。
【0066】(実施例、比較例の評価)実施例1〜4、
比較例1〜7の積層体およびシート、フイルムの評価結
果を表1、表2に示す。実施例1〜4の本発明の積層体
は、耐熱性、熱寸法安定性、誘電特性、密着性および機
械特性などがバランス良く兼ね備えられ、かつ自己融着
性をも有しており、本発明の目的を達成しているのが判
る。
【0067】一方、比較例1、2の積層体は、本発明で
言う残留結晶化エネルギー率が20%未満のため、折り
曲げ性や自己融着性に乏しく本発明の目的を達成できな
い。
【0068】また、比較例3のPPSシートは、耐熱性
に乏しい。比較例4の二軸配向PPSフイルムは、熱寸
法安定性が大きく、自己融着性に欠ける。
【0069】比較例5の積層体は、密着性に乏しいため
急激に熱が加わると、二軸配向PPSフイルムの熱収縮
時の応力で繊維シートとの界面が剥れる場合がある。ま
た二軸配向PPSフイルムを用いているため自己融着性
に欠ける。
【0070】比較例6、7の積層体は、接着剤を介して
いるため接着剤が耐熱性や誘電特性を低下させる。また
比較例6の積層体は二軸配向PPSフイルムを用いてい
るので、熱が加わった時に接着剤が軟化し、二軸配向P
PSフイルム層が熱収縮してしまう。更に自己融着性に
欠ける。
【0071】実施例5 実施例2の積層方法で、積層温度および積層圧力を変化
させて積層状態、積層体の特性を調べた。積層温度は、
150〜270℃の範囲が接着性、平面性および作業性
の点で有利であった。また、積層温度を240℃にして
積層圧力を変えてみると、1kg/cm2 〜30kg/cm2
範囲が接着性、繊維シートへのポリマの含浸性、平面
性、作業性の点で有利であった。
【0072】実施例6 実施例1〜4の積層体の片面に銀を含有した導電性塗料
をシルク印刷法で電気回路をパターン化し、150℃の
温度で10分間硬化せしめ、回路基板を作成した。該塗
料の厚さは10μmであった。上記の4種類の回路基板
とも、280℃ハンダに対する変形はなく、また回路ズ
レも発生しなかった。また直径0.5mmのスル−ホール
加工を行なったが、導電性塗料の密着性も良好であっ
た。また、上記の各々の回路基板を4層ずつ、温度24
0℃、圧力1kg/cm2 の条件で積層したが自己融着性も
良好であった。
【0073】比較例8 比較例2〜6までの積層体およびフイルム、シートの片
面に実施例6の条件で電気回路を設け、5種類の回路基
板を得た。比較例2の積層体をベースにしたものは、ス
ル−ホール加工時にPPS層が裂けやすく、多層化の場
合の自己融着性が乏しい。比較例3のPPSシート−3
を用いたものは、280℃のハンダに浮べると変形して
しまう。比較例4のPPSフイルム−1を用いたものは
熱寸法変化率が大きく、回路のズレが発生した。比較例
5の積層体を用いたものは、繊維シートPPSフイルム
との接着性が弱く、スル−ホール加工時に剥れる。比較
例6の積層体は、高温にさらされると接着剤が軟化し、
表層のPPSフイルムが熱収縮し、回路のズレが発生し
た。また高周波特性等が接着剤の影響で低下する。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭57−96588(JP,A) 特開 昭59−3991(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B32B 1/00 - 35/00 H05K 1/03

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 繊維シート(A層)の少なくとも片方の
    面に、ポリ−p−フェニレンスルフィドを主成分とする
    未延伸シート(B層)が接着剤を介することなく固着さ
    れている積層体であって、B層の残留結晶化エネルギー
    ΔHtが該B層を構成する樹脂の結晶化エネルギーΔH
    qの20%以上であることを特徴とする積層体。
  2. 【請求項2】 前記繊維シートが、400℃まで実質的
    に融点を有しないものである請求項1の積層体。
  3. 【請求項3】 前記繊維シートがガラスクロスである請
    求項2の積層体。
  4. 【請求項4】 請求項1ないし請求項3のいずれかに記
    載の積層体の少なくとも片方の面に電気回路を設けてな
    ることを特徴とする回路基板。
JP2415004A 1990-12-27 1990-12-27 積層体およびそれを用いた回路基板 Expired - Fee Related JP3047474B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2415004A JP3047474B2 (ja) 1990-12-27 1990-12-27 積層体およびそれを用いた回路基板

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2415004A JP3047474B2 (ja) 1990-12-27 1990-12-27 積層体およびそれを用いた回路基板

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH04224941A JPH04224941A (ja) 1992-08-14
JP3047474B2 true JP3047474B2 (ja) 2000-05-29

Family

ID=18523418

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2415004A Expired - Fee Related JP3047474B2 (ja) 1990-12-27 1990-12-27 積層体およびそれを用いた回路基板

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3047474B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2023128291A (ja) 2022-03-03 2023-09-14 Dic株式会社 樹脂組成物含浸ガラスクロス、およびそれを用いた銅張積層板及びプリント基板

Also Published As

Publication number Publication date
JPH04224941A (ja) 1992-08-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US7285321B2 (en) Multilayer substrates having at least two dissimilar polyimide layers, useful for electronics-type applications, and compositions relating thereto
US7026436B2 (en) Low temperature polyimide adhesive compositions and methods relating thereto
JP2002096437A (ja) 多層ポリイミドフィルムおよび積層体
WO2007097585A1 (en) Double side conductor laminates and its manufacture
JP3047474B2 (ja) 積層体およびそれを用いた回路基板
WO1994022941A1 (en) Resin-impregnated fiber sheet
JP3077857B2 (ja) 金属ベース回路基板
JP3139515B2 (ja) 繊維シートおよびそれを用いた回路基板
JP2805882B2 (ja) 積層体
JP3152002B2 (ja) 樹脂含浸繊維シート
JPH03104185A (ja) 両面導体ポリイミド積層体の製造方法
JPH04232739A (ja) 積層体およびそれを用いた回路基板
JP3339098B2 (ja) 樹脂含浸繊維シート
JP3060729B2 (ja) 多層配線基板
KR20190091393A (ko) 연성금속박적층체 및 연성금속박적층체용 열가소성 폴리이미드 전구체 조성물
JPH0598042A (ja) ポリ−フエニレンスルフイド樹脂含浸繊維シート
JPH04155883A (ja) 積層回路基板
US11021606B2 (en) Multilayer film for electronic circuitry applications
JP3029071B2 (ja) 積層体
KR102521460B1 (ko) 연성금속박적층체, 이를 포함하는 연성인쇄회로기판 및 폴리이미드 전구체 조성물
KR102548414B1 (ko) 연성금속박적층체
JP2006328407A (ja) ポリイミドフィルムおよびそれを用いた電気・電子機器用基板
JP2002225029A (ja) 熱可塑性樹脂含浸繊維シートおよび回路基板
US20010038911A1 (en) Polyphenylene sulfide film, method for producing the same, and circuit board using the same
JPH0195585A (ja) 回路基板

Legal Events

Date Code Title Description
LAPS Cancellation because of no payment of annual fees