JP3044736B2

JP3044736B2 - 空調ダクト騒音減衰装置

Info

Publication number: JP3044736B2
Application number: JP2086735A
Authority: JP
Inventors: 福司川上; 伸一佐原
Original assignee: Yamaha Corp
Current assignee: Yamaha Corp
Priority date: 1990-03-30
Filing date: 1990-03-30
Publication date: 2000-05-22
Anticipated expiration: 2015-05-22
Also published as: JPH03286948A

Description

【発明の詳細な説明】〔産業上の利用分野〕この発明は、ホール、視聴覚室、録音スタジオその他
各種建築物における空調ダクト騒音減衰装置に関し、ダ
クト内を伝搬されてくる騒音を簡単な構成で効果的に減
音できるようにしたものである。

〔従来の技術〕

ホール、視聴覚室、録音スタジオ等の設計にあたって
は、壁面の遮音構造のほか、空調ダクトを通して侵入す
る騒音に対しても十分な対策が講じられなければならな
い。

従来における建築物の設計は、建築設計と設備設計が
分離して行なわれていたため、空調ダクトに対する遮音
対策は、建築設計で設けたダクトスペースに鉄板ダクト
をそのまま通したり、ダクトスペース内に減衰装置（吸
音エルボ、吸音チャンバ、マフラ形消音器など）を配置
して必要な吸音量を確保していた。

従来における空調ダクトに対する遮音対策を第２図に
示す。この建築物10には、舞台とか部屋とか廊下とかの
主スペース以外に周囲が界壁12で囲まれて密閉されたダ
クトスペース14が構成され、その中に鉄板ダクトで作ら
れた空調ダクト16,18が界壁12に形成された孔19から通
されている。ダクトスペース14内において、空調ダクト
16には直管形のサイレンサ（マフラ形消音器）20が介挿
されている。このサイレンサ20は空調ダクト16の断面積
ρよりも大きな断面積Ｓを有し、吸音材が内張されて、
膨脹形減音および吸収形吸音により、空調ダクト16内を
伝搬されてくる騒音を減音する。

ダクトスペース14内において、空調ダクト18には２段
の吸音エルボ22,24が介挿されている。これら吸音エル
ボ22,24はそれぞれ流路を直角に曲げるとともに吸音材
が内張されて、直角曲りによる反射と内張吸音材による
吸音によって空調ダクト18内を伝搬されてきた騒音を減
音する。

〔発明が解決しようとする課題〕

前記サイレンサ20による減音では、減音量はS/ρに比
例するため、減音量を大きくするには、サイレンサ20の
断面積を大きくしなければならず、必要な減音量を得る
ためには、サイレンサ20が大型化し、コストが高くなる
とともに、ダクトスペース14が広く必要となる欠点があ
った。また、低音の減衰量が少なく、特に高域音型のも
のでは、低域での減衰量がせいぜい５〜10dB程度しか得
られなかった。また、実験データ（カタログ値）が施工
現場で確保できないなど、設置条件の影響を受け易かっ
た。

また、前記吸音エルボ22,24による減音では、減音量
が小さく、特に低域では数dB程度しか得られなかった。
また、ダクトスペース14内で空調ダクト18に吸音エルボ
22,24を取り付けるのは施工性が悪かった。

この発明は、前記従来の技術における欠点を解決し
て、簡易な構成および小さな設置スペースで大きな減音
効果が得られる空調ダクト騒音減衰装置を提供しようと
するものである。

〔課題を解決するための手段〕

この発明は、建築物の界壁で囲まれた共通の界壁囲繞
部分を介して配管される複数本の空調用ダクトにおい
て、その複数本のダクト本体は上記界壁囲繞部分内に位
置する部分の一部または全部が空気に対してほぼ不透過
性で音響的にほぼ透過性の材質でそれぞれ構成され、上
記界壁囲繞部分内の空間は前記ダクトごとに個別に収容
する空間に仕切ることなく構成されていることを特徴と
するものである。

〔作用〕

この発明は、建築設計と設備設計を融合して減音構造
を実現したもので、あらかじめ設けられたダクトスペー
スやデッドスペース等建築物の界壁で囲まれた空間その
ものを利用して減音を行なうものである。すなわち、ダ
クト中を流れてきた空気は音響的にほぼ透過性の材質で
構成された部分をそのまま通過するが、ダクト中を伝搬
されてきた音は界壁囲繞部分内でこの音響的にほぼ透過
性の材質で構成された部分でダクト外に漏出されて拡散
されるため、そこで膨脹形減音が行なわれる。この場
合、吸音量は、〔拡散部分の断面積〕÷〔ダクト断面積〕に比例するが、拡散を生じる部分の断面積は界壁囲繞部
分の断面積そのものなので、従来のサイレンサ（第２図
符号20）に比べてきわめて広い断面積を確保することが
でき、大きな減音量を得ることができて、特に低音域の
減衰量を従来のものに比べて大きく確保することができ
る。

また、ダクトの一部を音響的にほぼ透過性の材質（例
えばグラスウールダクト）で構成するだけですむので、
簡単かつ安易に構成することができ、設置スペースも小
さくてすむ。

また、ダクトが複数系統（複数本）あっても、単独で
配置した場合と同等の減音量が各系統について得られる
ので、系統数が多くなっても、設置スペースの大きさは
そのままですみ、系統数が多くなるほど効果的となる。

また、音響的にほぼ透過性の材質をグラスウールで構
成した場合、このグラスウールがダクトスペース部分の
吸音材としても機能するので、ダクトスペース部分に流
出拡散した音をさらに減衰させ、再びダクト内に戻るエ
ネルギーを充分低減することができて、さらに効果的で
ある。

〔実施例〕

この発明の一実施例を第１図に示す。この建築物30
は、ダクト配管などのために予め設けれた、あるいはデ
ッドスペースとなっているような、周囲が界壁32（コン
クリートなどによる駆体壁、スラブ等）で囲まれた密閉
されたいわゆるダクトスペース31（界壁囲繞部分）が構
成され、その中に４系統の空調ダクト34〜37（ダクト本
体）が通されている。

空調ダクト34〜37は、ダクトスペース31の外側にある
部分34a〜37a（一般には部屋、舞台等の主スペースに連
結する部分となっている）が鉄板ダクトで構成され、そ
の開口端部が界壁32に形成された同一断面積の孔40に連
通するように、この界壁32の外面にボルト止め等により
固定されている。

また、空調ダクト34〜37はダクトスペース31の内側に
ある部分34a〜37aがグラスウールダクトで構成され、そ
の開口端部が前記孔40に連通するように、界壁32の内面
にボルト止め等により固定されている。グラスウールダ
クト34b〜37bは比較的硬度のあるグラスウールボード等
をパイプ状に成形してなるもので、場合によっては外被
にアルミ泊（低音についてはほぼ透過となる）を設ける
こともある。このグラスウールダクトは、空気に対して
はほぼ不透過性で、音響的にはほぼ透過性の性質を有し
ている。

空調ダクト34〜37内には各主要スペースへの流通空気
が流されている。また、送風機等からの騒音もその中を
通って伝搬されてくる。

以上説明した第１図の構成によれば、空調ダクト34〜
37内を流れてきた空気は、グラスウールダクト34b〜37b
内をそのまま通過する。また、空調ダクト34〜37を伝搬
されてきた騒音は、ダクトスペース31内でグラスウール
ダクト34b〜37bの壁面を通して漏出し、ダクトスペース
31内に拡散される。この拡散により、膨脹形減音が行な
われる。また、このグラスウールダクト34b〜37b自体に
よる吸収形吸音も行なわれる。

第３図は、第１図の１本の空調ダクト34について膨脹
形吸音による吸音動作を概念的に示したものである。ダ
クトスペース31の断面積をＳ₀、空調ダクト34の断面積
をρとすると、膨脹形吸音によりＳ₀／ρに比例した減
音量が得られる。Ｓ₀は従来のサイレンサ20（第２図）
の断面積Ｓに比べて非常に大きくとれるので、特に低音
域で大きな減音量が得られる。また、中音域や高音域の
音に対しては、グラスウールダクト34b〜37bの材質その
ものが吸音材となって効果的に減音することができる。

また、系統数（ダクトの本数）が増えても、単独で配
置した場合と同等の減音量が各系統について得られるの
で、系統数が多いほど減音効果は大きくなる。つまり、
ダクトを１本だけ配置した場合の減音量をＡとすると、
ｎ本のダクトを配置した場合の合計の減音量はnAとな
り、ダクトを１本だけ配置した場合に比べて１本当り1/
nのダクトスペースで各ダクトについて同等の減音量が
得られることになる。

以上のような減・吸音作用により、第１図の実施例構
成によれば、コンサートホールなどにおいてNC（noise
criteria）−15以下の低騒音も容易に実現することがで
きる。

なお、第１図のダクトスペース31の内壁面にグラスウ
ール等の吸音材を内張すれば、より減音効果を高めるこ
とができる。

〔変更例〕

前記実施例では、ダクトスペース31内全体にわたって
空調ダクト34〜37をグラスウールダクト34b〜37bで構成
したが、第４図に示すようにダクトスペース31内の一部
について空調ダクト34〜37をグラスウールダクト34b〜3
7bで構成することもできる。

また、前記実施例ではグラスウールダクト34b〜37bの
内径を鉄板ダクト34b〜37bの内径とほぼ同じにしたが、
必ずしも同じ内径でなくてもよい。

また、前記実施例では、音響的にほぼ透過性の材質を
グラスウールとしたが、ロックウールその他空気に対し
てほぼ不透過性で音響的にほぼ透過性の各種材質を用い
ることができる。

〔発明の効果〕

以上説明したように、この発明によれば、ダクト中を
伝搬されてきた音は界壁囲繞部分内で音響的にほぼ透過
性の材質で構成された部分でダクト外に漏出されて拡散
されるようにしたので、そこで膨脹形減音が行なわれ
て、消音を行なうことができる。この場合、拡散を生じ
る部分の断面積は界壁囲繞部分の断面積そのものなの
で、従来のサイレンサに比べて広い断面積を確保するこ
とができ、大きな減音量を得ることができて、特に低音
域の減衰量を従来のものに比べて飛躍的に大きく確保す
ることができる。

また、ダクトの一部を音響的にほぼ透過性の材質で構
成するだけですむので、簡単かつ安易に構成することが
でき、設置スペースも小さくてすむ。

【図面の簡単な説明】

第１図は、この発明の一実施例を示す縦断面図である。第２図は、従来装置を示す縦断面図である。第３図は、第１図の装置による減音作用を示す概念図で
ある。第４図は、この発明の他の実施例を示す縦断面図であ
る。 30……建築物、31……ダクトスペース（界壁囲繞部
分）、32……界壁、34〜37……空調ダクト（ダクト本
体）、34b〜37b……グラスウールパイプ（音響的にほぼ
透過性の材質）。

Claims

(57)【特許請求の範囲】

【請求項１】建築物の界壁で囲まれた共通の界壁囲繞部
分を介して配管される複数本の空調用ダクトにおいて、
その複数本のダクト本体は上記界壁囲繞部分内に位置す
る部分の一部または全部が空気に対してほぼ不透過性で
音響的にほぼ透過性の材質でそれぞれ構成され、上記界
壁囲繞部分内の空間は前記ダクトごとに個別に収容する
空間に仕切ることなく構成されていることを特徴とする
空調ダクト騒音減衰装置。