JP3040358B2 - グロー放電プラズマ処理方法及びその装置 - Google Patents

グロー放電プラズマ処理方法及びその装置

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JP3040358B2
JP3040358B2 JP9133716A JP13371697A JP3040358B2 JP 3040358 B2 JP3040358 B2 JP 3040358B2 JP 9133716 A JP9133716 A JP 9133716A JP 13371697 A JP13371697 A JP 13371697A JP 3040358 B2 JP3040358 B2 JP 3040358B2
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discharge
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基和 湯浅
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Sekisui Chemical Co Ltd
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、大気圧近傍の圧力
下におけるグロー放電プラズマ処理方法及びその装置に
関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、低圧条件下でグロー放電プラ
ズマを発生させて、表面改質を行う方法が実用化されて
いる。しかし、低圧条件下における処理は工業的には不
利であるため、電子部品等の高価な処理品に対してし
か、適用されていない。このため、大気圧近傍の圧力下
で放電プラズマを発生させる方法が提案されている。例
えば、ヘリウム雰囲気下で処理を行う方法が特開平2−
48626号公報に、アルゴンとアセトン及び/又はヘ
リウムからなる雰囲気下で処理を行う方法が特開平4−
74525号公報に開示されている。
【0003】しかし、上記方法はいずれも、ヘリウム又
はアセトン等の有機化合物を含有するガス雰囲気中でプ
ラズマを発生させるものであり、ガス雰囲気が限定され
る。さらに、ヘリウムは高価であるため工業的には不利
であり、有機化合物を含有させた場合には、有機化合物
自身が被処理体と反応する場合が多く、所望する表面改
質処理が出来ないことがある。
【0004】さらに、従来の方法では、処理速度が遅く
工業的なプロセスには不利であり、また、プラズマ重合
膜を形成させる場合など、膜形成速度より膜分解速度の
方が早くなり良質の薄膜が得られないという問題があっ
た。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記問題を
鑑み、処理の際のガス雰囲気を問わず、大気圧近傍の圧
力下で均一なグロ−放電プラズマを継続して発生させ、
安定して基材の表面を行うためのグロー放電プラズマ処
理方法及びそれに用いられる装置を提供することを目的
とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明のグロー放電プラ
ズマ処理方法は、大気圧近傍の圧力下で、対向電極の少
なくとも一方の対向面に固体誘電体を設置し、当該対向
電極間に電界を印加することによりグロー放電プラズマ
処理を行う方法であって、印加される電界がパルス化さ
れたものであり、電圧立ち上がり時間が100μs以
下、電界強度が1〜100kV/cmとなされているこ
とを特徴とするグロー放電プラズマ処理方法。
【0007】大気圧近傍の圧力下では、上記ヘリウム、
ケトン等の特定のガス以外は安定してプラズマ放電状態
が保持されずに瞬時にアーク放電状態に移行することが
知られているが、パルス化された電界を印加することに
より、アーク放電に移行する前に放電を止め、再び放電
を開始するというサイクルが実現されていると考えられ
る。
【0008】大気圧近傍の圧力下においては、本発明の
パルス化された電界を印加する方法によって、初めて、
ヘリウム等のプラズマ放電状態からアーク放電状態に至
る時間が長い成分を含有しない雰囲気において、安定し
て放電プラズマを発生させることが可能となる。
【0009】なお、本発明の方法によれば、プラズマ発
生空間中に存在する気体の種類を問わずグロー放電プラ
ズマを発生させることが可能である。公知の低圧条件下
におけるプラズマ処理はもちろん、特定のガス雰囲気下
の大気圧プラズマ処理においても、外気から遮断された
密閉容器内で処理を行うことが必須であったが、本発明
のグロー放電プラズマ処理方法によれば、開放系、ある
いは、気体の自由な流失を防ぐ程度の低気密系での処理
が可能となる。
【0010】さらに、パルス化された電界を印加する方
法によれば高密度のプラズマ状態を実現出来るため、連
続処理等の工業プロセスを行う上で大きな意義を有す
る。上記高密度のプラズマ状態の実現には、本発明が有
する2つの作用が関係する。
【0011】第1に、電界強度が1〜100kV/cm
で、立ち上がり時が100μs以下という、急峻な立
ち上がりを有するパルス電界を印加することにより、プ
ラズマ発生空間中に存在する気体分子が、効率よく励起
する作用である。立ち上がりが遅いパルス電界を印加す
ることは、異なる大きさを有するエネルギーを段階的に
投入することに相当し、まず低エネルギーで電離する分
子、すなわち、第一イオン化ポテンシャルの小さい分子
の励起が優先的に起こり、次に高いエネルギーが投入さ
れた際にはすでに電離している分子がより高い準位に励
起し、プラズマ発生空間中に存在する分子を効率よく電
離することは難しい。これに対して、立ち上がり時間が
100μs以下であるパルス電界によれば、空間中に存
在する分子に一斉にエネルギーを与えることになり、空
間中の電離した状態にある分子の絶対数が多く、すなわ
ちプラズマ密度が高いということになる。
【0012】第2に、ヘリウム以外のガス雰囲気のプラ
ズマを安定して得られることにより、ヘリウムより電子
を多くもつ分子、すなわちヘリウムより分子量の大きい
分子を雰囲気ガスとして選択し、結果として電子密度の
高い空間を実現する作用である。一般に電子を多く有す
る分子の方が電離はしやすい。前述のように、ヘリウム
は電離しにくい成分であるが、一旦電離した後はアーク
に至らず、グロ−プラズマ状態で存在する時間が長いた
め、大気圧プラズマにおける雰囲気ガスとして用いられ
てきた。しかし、放電状態がアークに移行することを防
止できるのであれば、電離しやすい、質量数の大きい分
子を用いるほうが、空間中の電離した状態にある分子の
絶対数を多くすることでき、プラズマ密度を高めるこ
とができる。従来技術では、ヘリウムが90%以上存在
する雰囲気下以外でのグロー放電プラズマを発生するこ
とは不可能であり、唯一、アルゴンとアセトンからなる
雰囲気中でsin波により放電を行う技術が特開平4−
74525号公報に開示されているが、本発明者らの追
試によれば、実用レベルで安定かつ高速の処理を行える
ものではない。また、雰囲気中にアセトンを含有するた
め、親水化目的以外の処理は不利である。
【0013】上述のように、本発明は、ヘリウムより多
数の電子を有する分子が過剰に存在する雰囲気、具体的
には分子量10以上の化合物を10体積%以上含有する
雰囲気下において、はじめて安定したグロー放電を可能
にし、これによって表面処理に有利な、高密度プラズマ
状態を実現するものである。
【0014】上記大気圧近傍の圧力下とは、100〜8
00Torrの圧力下を指す。圧力調整が容易で、装置
が簡便になる700〜780Torrの範囲が好まし
い。
【0015】本発明のプラズマ発生方法は、一対の対向
電極を有し、当該電極の対向面の少なくとも一方に固体
誘電体が設置されている装置において行われる。プラズ
マが発生する部位は、上記電極の一方に固体誘電体を設
置した場合は、固体誘電体と電極の間、上記電極の双方
に固体誘電体を設置した場合は、固体誘電体同士の間の
空間である。
【0016】上記電極としては、銅、アルミニウム等の
金属単体、ステンレス、真鍮等の合金、金属間化合物等
からなるものが挙げられる。上記対向電極は、電界集中
によるアーク放電の発生を避けるために、対向電極間の
距離が略一定となる構造であることが好ましい。この条
件を満たす電極構造としては、平行平板型、円筒対向平
板型、球対向平板型、双曲面対向平板型、同軸円筒型構
造等が挙げられる。
【0017】上記固体誘電体は、上記電極の対向面の一
方又は双方に設置する。この際、固体誘電体と設置され
る側の電極が密着し、かつ、接する電極の対向面を完全
に覆うようにする。固体誘電体によって覆われずに電極
同士が直接対向する部位があると、そこからアーク放電
が生じるためである。
【0018】上記固体誘電体の形状は、シート状でもフ
ィルム状でもよいが、厚みが0.01〜4mmであるこ
とが好ましい。厚すぎると放電プラズマを発生するのに
高電圧を要し、薄すぎると電圧印加時に絶縁破壊が起こ
りアーク放電が発生するためである。
【0019】上記固体誘電体の材質としては、ポリテト
ラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート等の
プラスチック、ガラス、二酸化珪素、酸化アルミニウ
ム、二酸化ジルコニウム、二酸化チタン等の金属酸化
物、チタン酸バリウム等の複酸化物等が挙げられる。
【0020】また、上記固体誘電体は、比誘電率が2以
上(25°C環境下、以下同)であることが好ましい。
比誘電率が2以上の誘電体の具体例としては、ポリテト
ラフルオロエチレン、ガラス、金属酸化膜等を挙げるこ
とができる。さらに高密度の放電プラズマを安定して発
生させるためには、比誘電率が10以上の固定誘電体を
用いことが好ましい。比誘電率の上限は特に限定される
ものではないが、現実の材料では18,500程度のも
のが知られている。比誘電率が10以上の固体誘電体と
しては、酸化チタニウム5〜50重量%、酸化アルミニ
ウム50〜95重量%で混合された金属酸化物皮膜、ま
たは、酸化ジルコニウムを含有する金属酸化物皮膜から
なり、その被膜の厚みが10〜1000μmであるもの
を用いることが好ましい。
【0021】上記電極間の距離は、固体誘電体の厚さ、
印加電圧の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮し
て決定されるが、1〜50mmであることが好ましい。
1mm未満では、電極間の間隔を置いて設置するのに充
分でない。50mmを超えると、均一な放電プラズマを
発生させることが困難である。
【0022】本発明においては、上記電極間に印加され
る電界がパルス化されたものであり、電圧立ち上がり時
が100μs以下、電界強度が1〜100kV/cm
となされていることを特徴とする。
【0023】図1にパルス電圧波形の例を示す。波形
(A)、(B)はインパルス型、波形(C)は方形波
型、波形(D)は変調型の波形である。図1には電圧印
加が正負の繰り返しであるものを挙げたが、正又は負の
いずれかの極性側に電圧を印加する、いわゆる片波状の
波形を用いてもよい。
【0024】本発明におけるパルス電圧波形は、ここで
挙げた波形に限定されないが、パルスの立ち上がり時間
が短いほどプラズマ発生の際のガスの電離が効率よく行
われる。パルスの立ち上がり時間が100μsを超える
と放電状態がアークに移行しやすく不安定なものとな
り、パルス電界による高密度プラズマ状態を期待できな
くなる。また、立ち上がり時間は早いほうがよいが、常
圧でプラズマが発生する程度の大きさの電界強度を有
し、かつ、立ち上がり時間が早い電界を発生させる装置
には制約があり、現実的には40ns未満の立ち上がり
時間のパルス電界を実現することは困難である。より好
ましくは立ち上がり時間が50ns〜5μsである。な
お、ここでいう立ち上がり時間とは、電圧変化が連続し
て正である時間を指すものとする。
【0025】また、パルス電界の立ち下がり時間も急峻
であることが好ましく、立ち上がり時間と同様の100
μs以下のタイムスケールであることが好ましい。パル
ス電界発生技術によっても異なるが、例えば、本発明の
実施例で使用した電源装置では、立ち上がり時間と立ち
上がり時間が同じ時間に設定できる。
【0026】さらに、パルス波形、立ち上がり時間、周
波数の異なるパルスを用いて変調を行ってもよい。
【0027】パルス電界の周波数は、0.5kHz〜1
00kHzであることが好ましい。0.5kHz未満で
あるとプラズマ密度が低いため処理に時間がかかりす
ぎ、100kHzを超えるとアーク放電が発生しやすく
なる。より好ましくは、1kHz以上であり、このよう
な高周波数のパルス電界を印加することにより、処理速
度を大きく向上させることが出来る。
【0028】また、上記パルス電界におけるパルス継続
時間は、1〜1000μsであることが好ましい。1μ
s未満であると放電が不安定なものとなり、1000μ
sを超えるとアーク放電に移行しやすくなる。より好ま
しくは、3μs〜200μsである。ここで、ひとつの
パルス継続時間とは、図2中に例を示してあるが、O
N、OFFの繰り返しからなるパルス電界における、パ
ルスが連続する時間を言う。図2(a)のような間欠型
のパルスでは、パルス継続時間はパルス幅時間と等しい
が、図2(b)のような波形のパルスでは、パルス幅時
間とは異なり、一連の複数のパルスを含んだ時間を言
う。
【0029】さらに、放電を安定させるためには、放電
時間1ms内に、少なくとも1μs継続するOFF時間
を有することが好ましい。
【0030】上記放電は電圧の印加によって行われる。
電圧の大きさは適宜決められるが、本発明においては、
電極間の電界強度が1〜100kV/cmとなる範囲に
する。1kV/cm未満であると処理に時間がかかりす
ぎ、100kV/cmを超えるとアーク放電が発生しや
すくなる。また、パルス電圧の印加において、直流を重
畳してもよい。
【0031】図3に、このようなパルス電界を印加する
際の電源のブロック図を示す。さらに、図4に、電源の
等価回路図を示す。図4にSWと記されているのはスイ
ッチとして機能する半導体素子である。上記スイッチと
して500ns以下のターンオン時間及びターンオフ時
間を有する半導体素子を用いることにより、上記のよう
な電界強度が1〜100kV/cmであり、かつ、パル
スの立ち上がり時間及び立ち下がり時間が100μs以
下であるような高電圧かつ高速のパルス電界を実現する
ことが出来る。
【0032】以下、図4の等価回路図を参照して、電源
の原理を簡単に説明する。+Eは、正極性の直流電圧供
給部、−Eは、負極性の直流電圧供給部である。SW1
〜4は、上記のような高速半導体素子から構成されるス
イッチ素子である。D1〜4はダイオードを示してい
る。I1 〜I4 は電流の流れ方向を表している。
【0033】第一に、SW1をONにすると、正極性の
負荷が電流I1 の流れ方向に充電する。次に、SW1が
OFFになってから、SW2を瞬時にONにすることに
より、充電された電荷が、SW2とD4を通ってI3
方向に充電される。また次に、SW2がOFFになって
から、SW3をONにすると、負極性の負荷が電流I2
の流れ方向に充電する。次に、SW3がOFFになって
から、SW4を瞬時にONにすることにより、充電され
た電荷が、SW4とD2を通ってI4 の方向に充電され
る。上記一連の操作を繰り返し、図5の出力パルスを得
ることが出来る。表1にこの動作表を示す。
【表1】 この回路の利点は、負荷のインピーダンスが高い場合で
あっても、充電されている電荷をSW2とD4又はSW
4とD2を動作させることによって確実に放電すること
が出来る点、及び、高速ターンオンのスイッチ素子であ
るSW1、SW3を使って高速に充電を行うことが出来
る点にあり、このため、図5のように立ち上がり時間、
立ち下がり時間の非常に早いパルス信号を得ることが出
来る。
【0034】上記の方法により得られる放電において、
対向電極間の放電電流密度は、0.2〜300mA/c
2 となされていることが好ましい。
【0035】上記放電電流密度とは、放電により電極間
に流れる電流値を、放電空間における電流の流れ方向と
直交する方向の面積で除した値を言い、電極として平行
平板型のものを用いた場合には、その対向面積で上記電
流値を除した値に相当する。本発明では電極間にパルス
電界を形成するため、パルス状の電流が流れるが、この
場合にはそのパルス電流の最大値、つまりピーク−ピー
ク値を、上記の面積で除した値を言う。
【0036】大気圧近傍の圧力下でのグロー放電では、
下記に示すように、放電電流密度がプラズマ密度を反映
し、表面処理効果を左右する値であることが、本発明者
らの研究により明らかにされており、電極間の放電電流
密度を前記した0.2〜300mA/cm2 の範囲とす
ることにより、均一な放電プラズマを発生して良好な表
面処理結果を得ることができる。
【0037】一般にプラズマ中の電子密度、いわゆるプ
ラズマ密度はプローブ法や電磁波法によって測定され
る。しかし、大気圧近傍の圧力では、電極間の放電は元
来的にアーク放電に移行しやすいので、探針をプラズマ
中に挿入するプローブ法では探針にアーク電流が流れて
しまい、正確な測定はできない。また、発光分光分析や
レーザ吸光分析などによる電磁波法は、ガス種によって
得られる情報が異なるので分析が困難である。
【0038】大気圧近傍の圧力下におけるグロー放電に
おいては、低ガス圧放電に比してガス分子密度が大きい
ので、電離後、再結合までの寿命が短く、電子の平均自
由行程も短い。そのためグロー放電空間が電極に挟まれ
た空間に限定されるという特徴がある。よってプラズマ
中の電子はそのまま電極を通して電流値に変換され、電
子密度(プラズマ密度)は放電電流密度を反映した値で
あると考えられる。このことは、電極が一種のプローブ
として機能すると言い換えることもできる。
【0039】図6に、本発明者らが用いた放電プラズマ
発生装置と、その放電電圧および放電電流の測定に用い
た測定回路図を示す。この放電プラズマ発生装置におい
ては、平行平板型の対向電極1,2間にパルス電源3か
らkVオーダーのパルス状の電圧を印加することによ
り、電極1,2間にパルス電界を形成するとともに、そ
の一方の電極2の対向面には固体誘電体4を設置した。
そして、一方の電極2とアース電位間に抵抗5を直列接
続し、その抵抗5の両端をBNC端子6を介してオシロ
スコープ7に接続することにより、抵抗5の両端の電圧
値を測定して、その抵抗5の抵抗値を用いて放電電流に
換算した。また、放電電圧は、電極1の電位を高圧プロ
ーブ8により1/1000に減衰させたうえで、BNC
端子9とオシロスコープ7によってアース電位との電位
差を計測することによって測定した。
【0040】この測定回路においては、パルス電界によ
る放電電流が高速に通電・遮断を繰り返しているので、
測定に供したオシロスコープ7は、そのパルスの立ち上
がり速度に対応したナノ秒オーダーの測定が可能な高周
波オシロスコープ、具体的には岩崎通信社製オシロスコ
ープDS−9122とした。また、放電電圧の減衰に用
いた高圧プローブ8は、岩崎通信社製高圧プローブSK
−301HVとした。測定結果を図 に例示する。図7
において波形1が放電電圧であり、波形2が放電電流を
表す波形である。パルス電界の形成による放電電流密度
は、この波形2のピーク−ピーク値の電流換算値を電極
対向面の面積で除した値である。
【0041】本発明の方法により発生させた放電プラズ
マは、様々な分野に応用することが出来る。例を挙げる
と、放電プラズマに励起された化学種と基材表面の反応
を利用した表面改質処理、窒素酸化物の存在下で放電プ
ラズマを発生させることによる窒素酸化物の分解除去処
理、光源としての利用等が可能である。
【0042】以下、基材の表面処理方法について詳述す
る。本発明の表面処理方法は、一対の対向電極を有し、
当該電極の対向面の少なくとも一方に固体誘電体が設置
されている装置において、上記電極の一方に固体誘電体
を設置した場合は固体誘電体と電極の間の空間、上記電
極の双方に固体誘電体を設置した場合は固体誘電体同士
の空間に基材を設置し、当該空間中に発生する放電プラ
ズマにより基材表面を処理するものである。
【0043】本発明の表面処理を施される基材として
は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポ
リカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリテ
トラフルオロエチレン、アクリル樹脂等のプラスチッ
ク、ガラス、セラミック、金属等が挙げられる。基材の
形状としては、板状、フィルム状等のものが挙げられる
が、特にこれらに限定されない。本発明の表面処理方法
によれば、様々な形状を有する基材の処理に容易に対応
することが出来る。
【0044】上記表面処理においては、上記放電プラズ
マ発生空間に存在する気体(以下、処理用ガスとい
う。)の選択により任意の処理が可能である。
【0045】上記処理用ガスとしてフッ素含有化合物ガ
スを用いることによって、基材表面にフッ素含有基を形
成させて表面エネルギーを低くし、撥水性表面を得るこ
とが出来る。
【0046】上記フッ素元素含有化合物としては、4フ
ッ化炭素(CF4 )、6フッ化炭素(C2 6 )、6フ
ッ化プロピレン(CF3 CFCF2 )、8フッ化シクロ
ブタン(C4 8 )等のフッ素−炭素化合物、1塩化3
フッ化炭素(CClF3 )等のハロゲン−炭素化合物、
6フッ化硫黄(SF6 )等のフッ素−硫黄化合物等が挙
げられる。安全上の観点から、有害ガスであるフッ化水
素を生成しない4フッ化炭素、6フッ化炭素、6フッ化
プロピレン、8フッ化シクロブタンを用いることが好ま
しい。
【0047】また、処理用ガスとして以下のような酸素
元素含有化合物、窒素元素含有化合物、硫黄元素含有化
合物を用いて、基材表面にカルボニル基、水酸基、アミ
ノ基等の親水性官能基を形成させて表面エネルギーを高
くし、親水性表面を得ることが出来る。
【0048】上記酸素元素含有化合物としては、酸素、
オゾン、水、一酸化炭素、二酸化炭素、一酸化窒素、二
酸化窒素の他、メタノール、エタノール等のアルコール
類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタ
ナール、エタナール等のアルデヒド類等の酸素元素を含
有する有機化合物等が挙げられる。これらは単独でも2
種以上を混合して用いてもよい。さらに、上記酸素元素
含有化合物と、メタン、エタン等の炭化水素化合物のガ
スを混合して用いてもよい。また、上記酸素元素含有化
合物の50体積%以下でフッ素元素含有化合物を添加す
ることにより親水化が促進される。フッ素元素含有化合
物としては上記例示と同様のものを用いればよい。
【0049】上記窒素元素含有化合物としては、窒素、
アンモニア等が挙げられる。上記窒素元素含有化合物と
水素を混合して用いてもよい。
【0050】上記硫黄元素含有化合物としては、二酸化
硫黄、三酸化硫黄等が挙げられる。また、硫酸を気化さ
せて用いることも出来る。これらは単独でも2種以上を
混合して用いてもよい。
【0051】また、分子内に親水性基と重合性不飽和結
合を有するモノマーの雰囲気下で処理を行うことによ
り、親水性の重合膜を堆積させることも出来る。上記親
水性基としては、水酸基、スルホン酸基、スルホン酸塩
基、1級若しくは2級又は3級アミノ基、アミド基、4
級アンモニウム塩基、カルボン酸基、カルボン酸塩基等
の親水性基等が挙げられる。また、ポリエチレングリコ
ール鎖を有するモノマーを用いても同様に親水性重合膜
を堆積が可能である。
【0052】上記モノマーとしては、アクリル酸、メタ
クリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N
−ジメチルアクリルアミド、アクリル酸ナトリウム、メ
タクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、メタクリ
ル酸カリウム、スチレンスルホン酸ナトリウム、アリル
アルコール、アリルアミン、ポリエチレングリコールジ
メタクリル酸エステル、ポリエチレングリコールジアク
リル酸エステル等が挙げられる。これらのモノマーは、
単独または混合して用いられる。
【0053】上記親水性モノマーは一般に固体であるの
で、溶媒に溶解させたものを減圧等の手段により気化さ
せて用いる。上記溶媒としては、メタノール、エタノー
ル、アセトン等の有機溶媒、水、及び、これらの混合物
等が挙げられる。
【0054】さらに、Si、Ti、Sn等の金属の金属
−水素化合物、金属−ハロゲン化合物、金属アルコラー
ト等の処理用ガスを用いて、SiO2 、TiO2 、Sn
2等の金属酸化物薄膜を形成させ、基材表面に電気
的、光学的機能を与えることが出来る。
【0055】経済性及び安全性の観点から、上記処理用
ガス単独雰囲気よりも、以下に挙げるような希釈ガスに
よって希釈された雰囲気中で処理を行うことが好まし
い。希釈ガスとしては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、
キセノン等の希ガス、窒素気体等が挙げられる。これら
は単独でも2種以上を混合して用いてもよい。また、希
釈ガスを用いる場合、処理用ガスの割合は1〜10体積
%であることが好ましい。
【0056】なお、上述したように、雰囲気ガスとして
は電子を多く有する化合物のほうがプラズマ密度を高め
高速処理を行う上で有利である。よって入手の容易さと
経済性、処理速度を考慮した上で最も望ましい選択は、
アルゴン及び/又は窒素を希釈ガスとして含有する雰囲
気である。
【0057】従来、大気圧近傍の圧力下においては、ヘ
リウムが大過剰に存在する雰囲気下で処理が行われてき
たが、本発明の方法によれば、ヘリウムに比較して安価
なアルゴン、窒素気体中における安定した処理が可能で
あり、さらに、これらの分子量の大きい、電子をより多
く有するガスの存在下で処理を行うことにより、高密度
プラズマ状態を実現し、処理速度を上げることが出来る
ため、工業上大きな優位性を有する。
【0058】図8に、本発明の表面処理方法を行う装置
の一例を示す。この装置においては下部電極15上に固
体誘電体16が設置されており、固体誘電体16と上部
電極14の間の空間3に放電プラズマが発生する。容器
12は、ガス導入管18、ガス排出口20及びガス排気
口21を備えており、上記処理用ガスはガス導入管18
から放電プラズマ発生空間13に供給される。本発明に
おいては、発生した放電プラズマに接触した部位が処理
されるので、図8の例では基材17の上面が処理され
る。基材の両面に処理を施したい場合は放電プラズマ発
生空間13に基材を浮かせて設置すればよい。
【0059】処理用ガスはプラズマ発生空間に均一に供
給されることが好ましい。複数種の処理用ガスを用いる
場合又は処理用ガスと希釈ガスの混合気体中で処理を行
う場合、供給時に不均一になることを避けるような装置
の工夫がされていることが好ましく、特に面積の大きな
基材を処理する場合や比重差の大きい複数のガスを用い
る場合は、不均一になり易いので注意を要する。図8の
装置に示した例では、ガス導入管18が多孔構造をもつ
電極4に連結されてなり、処理用ガスは電極14の孔を
通して基材上方からプラズマ発生空間13に供給され
る。希釈ガスは、これと別に希釈ガス導入管19を通っ
て供給される。気体を均一に供給可能であれば、このよ
うな構造に限定されず、気体を攪拌又は高速で吹き付け
る等の手段を用いてもよい。
【0060】上記容器12の材質は、樹脂、ガラス等が
挙げられるが、特に限定されない。電極と絶縁のとれた
構造になっていれば、ステンレス、アルミニウム等の金
属を用いることも出来る。
【0061】本発明のグロー放電プラズマ処理は、基材
を加熱または冷却して行ってもよいが、室温下で充分可
能である。上記グロー放電プラズマ処理に要する時間
は、印加電圧、処理用ガスの種類および混合気体中の割
合等を考慮して適宜決定される。
【0062】
【実施例】以下の実施例では、図3の等価回路図による
電源(ハイデン研究所社製、半導体素子:IXYS社
製、型番TO−247ADを使用)を用いた。
【0063】実施例1〜4 図8の装置(パイレックスガラス製、容量:5L)にお
いて、上部電極14(ステンレス(SUS304)製、
大きさ:φ80×80mm、φ1mmの孔が10mm間
隔で配設)と下部電極15(ステンレス(SUS30
4)製、大きさ:φ80×80mm)の電極間距離6m
mの空間中の下部電極上に、固体誘電体16としてポリ
テトラフルオロエチレン(PTFE、大きさ:120×
120mm、厚み:500μm)を下部電極15を完全
に覆うように設置し、この上にポリエチレンテレフタレ
ート基材17(東レ社製、ルミラーT50、大きさ:1
00×100mm、厚み:50μm)を配置した。油回
転ポンプで装置内が1Torrになるまで排気を行っ
た。次に窒素ガスを希釈ガス導入管19から、装置内が
760Torrになるまで導入した。上部電極14、下
部電極15間に表2に示す波形、波高値、周波数、パル
ス幅、立ち上がり/立ち下がり時間のパルス電界の印加
を15秒間行って放電プラズマを発生させ、これをポリ
エチレンテレフタレート基材17に接触させて処理品を
得た。また、このときの放電電流密度を図6の装置によ
り測定した。なお、実施例4の波形(D)は、周波数
1.0kHz、パルス幅800μsの波形(C)にさら
に周波数20kHz、パルス幅20μsのパルスを変調
したものである。実施例1〜4のいずれも発生したプラ
ズマはグロー放電に特有の均一な発光状態であった。
【0064】実施例5〜8 実施例1と同様の装置中にSiO2 ガラス基材17(大
きさ:100×100mm、厚み:2mm)を配置し
た。油回転ポンプで装置内が1Torrになるまで排気
を行った。次に表1に示す処理用ガスを表2に示す流量
でガス導入管18から、アルゴンガスを希釈ガス導入管
19から、装置内が760Torrになるまで導入し、
上部電極14、下部電極15間に表2に示す波形、波高
値、周波数、パルス幅、立ち上がり/立ち下がり時間の
パルス電界の印加を1分間行って放電プラズマを発生さ
せ、これをSiO2 ガラス基材17に接触させて処理を
行った。また、このときの放電電流密度を図6の装置に
より測定した。実施例5〜8のいずれも発生したプラズ
マはグロー放電に特有の均一な発光状態であった。得ら
れた処理品には、干渉縞が確認された。X線光電分光法
により表面状態を観察したところ、Si元素は検出され
なかった。このことから、X線光電分光法において測定
可能な深さである100Åの以上の深さに渡ってプラズ
マ処理膜が堆積していることが確認された。なお、実施
例7においては、波形(A)のパルス電界に、−1kV
の直流を重畳させた電界により放電を行った。
【0065】実施例9、10 実施例1と同様の装置において、固体誘電体16として
石英ガラス(大きさ:120×120mm、厚み:3m
m)を用いて、この上にポリエチレンテレフタレート基
材17(東レ社製、ルミラーT50、大きさ:100×
100mm、厚み:50μm)を配置した。油回転ポン
プで装置内が1Torrになるまで排気を行った。次に
表1に示す処理用ガスを表3に示す流量でガス導入管1
8から、窒素ガス又はアルゴンガスを希釈ガス導入管1
9から、装置内が760Torrになるまで導入し、上
部電極14、下部電極15間に表2に示す波形、波高
値、周波数、パルス幅、立ち上がり/立ち下がり時間の
パルス電界を15秒間印加して放電プラズマを発生さ
せ、これをポリエチレンテレフタレート基材17に接触
させて処理を行った。また、このときの放電電流密度を
図6の装置により測定した。実施例9、10ともに発生
したプラズマはグロー放電に特有の均一な発光状態であ
った。
【0066】実施例11、12 炭素鋼板(SS41、大きさ:140×140mm、厚
み:10mm)の片面にプラズマ溶射法により酸化チタ
ン13%、酸化アルミニウム87%からなる皮膜(比誘
電率14、膜厚:500μm)を形成した。実施例1と
同様の装置において、固体誘電体16として上記炭素鋼
板を、皮膜面が上になるように設置し、この上にポリエ
チレンテレフタレート基材17(東レ社製、ルミラーT
50、大きさ:100×100mm、厚み:50μm)
を配置した。油回転ポンプで装置内が1Torrになる
まで排気を行った。次に表1に示す処理用ガスを表3に
示す流量でガス導入管18から、窒素ガス又はアルゴン
ガスを希釈ガス導入管19から、装置内が760Tor
rになるまで導入し、上部電極14、下部電極15間に
表3に示す波形、波高値、周波数、パルス幅、立ち上が
り/立ち下がり時間のパルス電界の印加を15秒間行っ
て放電プラズマを発生させ、これをポリエチレンテレフ
タレート基材17に接触させて処理を行った。また、こ
のときの放電電流密度を図6の装置により測定した。実
施例11、12のいずれも発生したプラズマはグロー放
電に特有の均一な発光状態であった。
【0067】比較例1 パルス電界の代わりに、波高値8.4kV、周波数2.
4kHzのsin波形の交流電圧による放電を行ったこ
と以外は、実施例1と同様にして処理品を得た。ストリ
ーマーが多数見られる不均一な放電状態が確認された。
【0068】<接触角評価>実施例1〜12および比較
例1の処理品の被処理面に水滴2μlを滴下し、接触角
測定装置(協和界面科学社製、商品名:CA−X15
0)を用いて静的接触角を測定した。結果を表2、表3
に示す。実施例1〜4の窒素雰囲気下の処理品、実施例
8のメタノール雰囲気下の処理品は基材全表面で略一定
の低い接触角を示し、実施例5〜7のフッ化炭素雰囲気
下の処理品は基材全表面で略一定の高い接触角を示し、
良好な親水化処理又は撥水化処理が行われていることが
確認された。一方、不均一な放電状態が確認された比較
例1の処理品は、40〜60度の範囲となり、均一な処
理がなされていなかった。また、立ち上がり/立ち下が
り時間が高速である実施例9〜12は、より高いレベル
で処理がなされていることが確認できる。
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】実施例13 図9の装置において、上部電極24(ステンレス(SU
S304)製、大きさ:150×300mm、φ1mm
の孔が10mm間隔で配設)と下部電極25(ステンレ
ス(SUS304)製、大きさ:150×300mm)
の電極間距離6mmの空間中の下部電極上に、固体誘電
体26としてパイレックスガラス(大きさ:200×4
00mm、厚み:3mm)を下部電極25を完全に覆う
ように設置し、ポリエチレンテレフタレートフィルム基
材27(東レ社製、ルミラーT50、幅:300mm、
厚み:50μm)を図8のように配置した。フィルム導
入口31、フィルム排出口32を閉じた状態でガス導入
管28から3%CF4 /Arの混合ガスを流量15SL
Mで供給し、ポリエチレンテレフタレートフィルム基材
27を15m/minで走行させながら、上部電極2
4、下部電極25間に波形(A)、波高値11.6k
V、周波数6.5kHz、パルス幅100μsのパルス
電界を印加を行って放電プラズマを発生させ、ポリエチ
レンテレフタレートフィルム基材27の連続処理を行っ
た。
【0072】比較例2 3%CF4 /Arに代えて、3%CF4 /Heの混合ガ
スを供給し、パルス電界を印加する代わりに、波高値1
5.0kV、周波数15kHzのsin波形の交流電圧
による放電を行ったこと以外は、実施例13と同様にし
て処理品を得た。
【0073】実施例14 実施例13と同様の装置において、固体誘電体26とし
て実施例11と同様の酸化チタン−酸化アルミニウム皮
膜を有する炭素鋼板を用いた。ガス導入管28から窒素
ガスを流量30SLMで供給し、ポリエチレンテレフタ
レートフィルム基材を30m/minで走行させなが
ら、上部電極24、下部電極25間に波形(A)、波高
値10.0kV、周波数12kHz、パルス幅10μ
s、立ち上がり/立ち下がり時間100nsのパルス電
界を印加を行って放電プラズマを発生させ、ポリエチレ
ンテレフタレートフィルム基材27の連続処理を行っ
た。
【0074】比較例3 窒素ガスに代えて、1%N2 /Heの混合ガスを供給
し、パルス電界を印加する代わりに、波高値15.0k
V、周波数15kHzのsin波形の交流電圧による放
電を行ったこと以外は、実施例14と同様にして処理品
を得た。
【0075】実施例13、14、及び、比較例2、3で
処理されたフィルムについて実施例1と同様に接触角評
価を行った。実施例13及び比較例2で処理されたフィ
ルムのX線光電分光法による表面F量の測定を行ったと
ころ、実施例13は31.5%、比較例2は9.2%で
あった。また、実施例14及び比較例3で処理されたフ
ィルムの接触角評価及び表面N量の測定を行ったとこ
ろ、実施例14は9.87%、比較例3は2.87%で
あった。接触角評価、表面F量、表面N量ともに、パル
ス電界による実施例13、14は高いレベルで処理がな
されていることがわかる。この結果から、パルス電界に
より高密度プラズマ状態が実現されており、本発明の表
面処理方法は高速連続化処理に適していることが確認で
きる。
【0076】また、本発明の高速処理対応性を調べるた
めに成膜速度の比較実験を行った。以下の実験では、希
釈ガスとしてヘリウム、アルゴン、窒素を用いた場合の
比較、及び、周波数による成膜速度の影響を調べた。
【0077】実施例15〜18 実施例1と同様の装置において、実施例11と同様の酸
化チタン及び酸化アルミニウムからなる皮膜が形成され
た炭素鋼板を、皮膜面が上になるように設置し、この上
にポリエチレンテレフタレート基材17(東レ社製、ル
ミラーT50、大きさ:100×100mm、厚み:5
0μm)を配置した。油回転ポンプで装置内が1Tor
rになるまで排気を行った。次にエチレンガスを流量9
80sccmでガス導入管18から、実施例15はヘリ
ウム、実施例16はアルゴン、実施例17、18は窒素
ガスを流量20sccmで希釈ガス導入管19から、装
置内が760Torrになるまで導入し、上部電極1
4、下部電極15間に波形(A)、立ち上がり/立ち下
がり時間5μs、1パルスの電界形成時間100μs、
表4に示す周波数及び波高値のパルス電界の印加を2分
間行って放電プラズマを発生させ、これをポリエチレン
テレフタレート基材に接触させて処理を行った。このと
きの波高値は、ガス雰囲気中で放電がもっとも安定とな
るように調整した値である。また、このときの放電電流
密度を図6の装置により測定した。実施例15〜18い
ずれも発生したプラズマはグロー放電に特有の均一な発
光状態であった。
【0078】実施例15〜18によるエチレン重合薄膜
の膜厚をエリプソメーター(溝尻光学工業社製、DVA
−36VW)によって5点測定し、平均値から成膜速度
を算出した。この結果を表4に示す。
【0079】
【表4】
【0080】表4から明らかなように、ヘリウムを用い
た場合に比較して、アルゴン、窒素を用いた場合のほう
が波高値で放電が安定し、放電電流密度の値が大きく、
成膜速度も向上していることが認められる。また、周波
数により成膜速度が大きく向上することも確認できる。
【0081】
【発明の効果】本発明のパルス電界を印加する方法によ
れば、大気圧近傍の圧力下において、ガス雰囲気を問わ
ずに、安定して均一な放電プラズマを発生させることが
出来る。さらに、高分子量の化合物の雰囲気下でグロー
放電を行え、かつ、放電空間中に存在する化合物の励起
を効率よく行わせることにより、プラズマ放電状態を高
密度で実現出来るため、短時間で高いレベルの処理が可
能であり、高速連続処理等の工業プロセスを行う上で大
きな意義を有する。
【0082】また、ガス雰囲気が限定されないため、減
圧装置を要しないばかりか、完全密閉を行うための装置
も必要とせず、プラズマ処理の適用可能な分野を大きく
拡げる効果を有する。
【0083】
【図面の簡単な説明】
【図1】 パルス電界の例を示す電圧波形図
【図2】 パルス継続時間の説明図
【図3】 パルス電界を発生させる電源のブロック図
【図4】 パルス電界を発生させる電源の等価回路図
【図5】 パルス電界の動作表に対応する出力パルス信
号の図
【図6】 放電電圧及び放電電流の測定回路の説明図
【図7】 図6の測定回路による放電電圧(波形1)と
放電電流(波形2)の測定結果を示す図
【図8】 本発明のグロー放電プラズマ処理装置の一の
【図9】 本発明のグロー放電プラズマ処理装置の他の
【符号の説明】
1、2 電極 3 高電圧パルス電源 4 固体誘電体 5 抵抗 6、9 BNC端子 7 オシロスコ−プ 8 高圧プロ−ブ 11−1 高電圧パルス電源(交流電源) 11−2 直流電源 12 パイレックスガラス製容器 13 放電プラズマ発生空間 14 上部電極 15 下部電極 16 固体誘電体 17 基材 18 ガス導入管 19 希釈ガス導入管 20 ガス排出口 21 排気口 22 高電圧パルス電源 23 連続処理容器 24 上部電極 25 下部電極 26 固体誘電体 27 シ−ト状基材 28 ガス導入管 29 ガス排出口 30−1、2 巻き取りロール 31 フィルム導入管 32 フィルム排出口
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平6−49243(JP,A) 特開 平6−41755(JP,A) 特開 平3−236475(JP,A) 特開 平3−61375(JP,A) 特開 平9−59777(JP,A) 特開 平9−49083(JP,A) 特開 平5−217690(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H05H 1/24 C23C 16/50 H05H 1/46 C08J 7/00 H01L 21/3065

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】大気圧近傍の圧力下で、対向電極の少なく
    とも一方の対向面に固体誘電体を設置し、当該対向電極
    間に電界を印加することによりグロー放電プラズマ処理
    を行う方法であって、印加される電界がパルス化された
    ものであり、電圧立ち上がり時間が100μs以下、電
    界強度が1〜100kV/cmとなされていることを特
    徴とするグロー放電プラズマ処理方法。
  2. 【請求項2】パルス化された電界における、周波数が
    0.5〜100kHz、パルス継続時間が1〜1000
    μsとなされていることを特徴とする請求項1に記載の
    グロー放電プラズマ処理方法。
  3. 【請求項3】高電圧直流を供給可能な直流電圧供給部、
    並びに、ターンオン時間及びターンオフ時間が500n
    s以下である半導体素子により当該高電圧直流を高電圧
    パルスに変換するパルス制御部、から構成される高電圧
    パルス電源によりパルス化された電界を印加することを
    特徴とする請求項1又は2に記載のグロー放電プラズマ
    処理方法。
  4. 【請求項4】大気圧近傍の圧力下にある、分子量が10
    以上の化合物を10体積%以上含有する雰囲気中で、対
    向電極の少なくとも一方の対向面に固体誘電体を設置
    し、当該対向電極の間に、電圧立ち上がり時間が100
    μs以下のパルス化された電界を印加することを特徴と
    するグロー放電プラズマ処理方法。
  5. 【請求項5】大気圧近傍の圧力下にある、アルゴン及び
    /又は窒素からなる雰囲気中で、対向電極の少なくとも
    一方の対向面に固体誘電体を設置し、当該対向電極の間
    、電圧立ち上がり時間が100μs以下のパルス化さ
    れた電界を印加することを特徴とするグロー放電プラズ
    マ処理方法。
  6. 【請求項6】対向電極の少なくとも一方の対向面に固体
    誘電体を設置し、一方の電極と該固体誘電体又は該固体
    誘電体同士の間に基材を配置して、当該基材表面を処理
    することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載
    のグロー放電プラズマ処理方法。
  7. 【請求項7】対向電極、該対向電極の少なくとも一方の
    対向面に設置された固体誘電体、当該一対の電極間にパ
    ルス化された電界を印加するようになされている高電圧
    パルス電源からなり、該高電圧パルス電源が、高電圧直
    流を供給可能な直流電圧供給部、並びに、ターンオン時
    間及びターンオフ時間が500ns以下である半導体素
    子により当該高電圧直流を高電圧パルスに変換するパル
    ス制御部から構成されるものであることを特徴とするグ
    ロー放電プラズマ処理装置。
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