JP3033879B2 - 和風便器用の衛生洗浄装置及びこれを備えた和風便器装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、便所の床に組み込む和
風便器に付帯される局部洗浄用の衛生洗浄装置及びこれ
を備えた和風便器装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】腰掛け式の洋風便器には、用便後の局部
洗浄のための洗浄機能を持つ温水洗浄便座を備え付ける
ことができる。この温水洗浄便座は、便器本体に被さる
便座をケーシングに一体化し、このケーシングに内蔵し
たノズル装置によって局部洗浄を可能としたものであ
る。

【０００３】このような洋風の便器に代えて、和風便器
に局部洗浄の温水洗浄装置を備えたものも既に知られて
いる。その例として、たとえば特公平５−１３２１０号
公報に記載されたものがある。

【０００４】これは床に組み込んだ便器本体の左右に沿
って一対の足載せ台を兼ねるケーシングを配置し、その
一方に温水洗浄のための機能部を収納すると共にこの機
能部に温水供給源に接続したノズル装置を備える構成と
したものである。ノズル装置はシリンダとこれに収納し
たノズルロッドとを備え、用便時にはケーシングの中に
ノズルロッドが後退した位置に待機し、洗浄時にはシリ
ンダに洗浄温水が供給される。そして、この洗浄水の供
給による水圧を利用してノズルロッドを洗浄位置まで進
出させ、洗浄水の噴射によって洗浄が行われる。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】腰掛け式の便器に備え
る温水洗浄便座では、人が便座に座る一方でノズルはこ
の便座の下側から洗浄水を噴射するので、便座に座る姿
勢が適切でなかったような場合でも臀部付近だけが洗浄
水を浴びるだけであり、使い勝手に大きな不便を感じる
ことはない。

【０００６】これに対し、先の公報に記載のような和風
便器の場合では、ノズルロッドの先端からの洗浄水が人
体に当たった後に飛び散ったものが、臀部だけでなく脚
や便器のリム周りにまで及ぶ恐れが高い。このため、公
報に記載されているように、ケーシングにはこのような
水の飛散を遮断する跳ね返り防止壁を立ち上げる等の手
段が必要となる。

【０００７】ところが、ケーシング自体は便器本体のリ
ムに沿ってその外側に配置されているので、飛散した水
はこれらのリムとケーシングとの間にまで浸透してしま
う。そして、飛散水の中には汚水や汚物が少量でも含ま
れることが多いので、浸透したままであれば異臭を発生
するほか、衛生面での問題も大きい。

【０００８】このように、従来構造では、洗浄水が便器
本体の外側にまで跳ね返ってしまうと、これを回収する
ことができずに自然乾燥に任せる以外に処置のしようが
なく、便所の環境に悪い影響を与えることになる。

【０００９】本発明において解決すべき課題は、洗浄時
の跳ね水が便器の外まで及ぶことを防ぐと共に便器側に
回収して衛生的な使用が維持でき実用上の障害を除くこ
とにある。

【００１０】

【課題を解決するための手段】本発明は、便器本体のリ
ム部に被さるケーシングと、前記ケーシングから前記便
器本体のボール部の後部に向けて出没可能な局部洗浄手
段と、跳ね返り防止壁とを備えた和風便器用の衛生洗浄
装置において、前記ケーシングはリム部のほぼ全域を覆
う形状に構成されていることを特徴とする。

【００１１】このような和風便器において、前記ケーシ
ングのリム部に被さる部分は便器のボール部に臨む面を
下向きの傾斜を有する洗浄時の跳ね水を前記ボール部側
に案内する回収面とするとともに、前記回収面に表面を
洗い流す洗浄機構を備えてもよい。

【００１２】また、和風便器はそのボール部に洗浄水を
供給可能な水洗式であって、回収面洗浄可能の動作を便
器洗浄に連動させた構成としてもよい。

【００１３】

【００１４】

【作用】便器本体のリム部には局部洗浄機能のためのケ
ーシングが被さっているので、洗浄時に水跳ねを生じて
もこれがリム部の外の床面等に浸潤することが防止され
る。また、ケーシングには、便器本体のボール部側に向
けて下に傾いた回収面を備えているので、飛び散った水
はこの回収面を伝って便器側に戻り、床面側への漏れ出
しもなくなる。

【００１５】また、回収面に水を供給してこの部分を洗
い流すようにすれば、汚水や汚物等を少量含む可能性の
高い洗浄水の跳ね水を流し落とすことが可能となる。

【００１６】更に、局部洗浄洗浄手段を駆動したり制御
したりする機器や洗浄水の供給のための弁機構等をケー
シングとは別体の機能部ユニットに集中配置することに
よって、ケーシングの嵩が小さくなり、特に高さ方向の
嵩上げが小さくて済む。また、便器のボール洗浄の動作
に連動させて回収面洗浄機構を作動させるようにすれ
ば、回収面の洗浄のための特別の操作も不要となる。

【００１７】また、足載せ部をケーシングに備えること
によって、ケーシングに組み込まれた局部洗浄手段によ
る洗浄位置と使う人の身体の位置をマッチングさせるこ
とができ、洗浄の的確さを向上させる。

【００１８】

【実施例】図１は本発明の洗浄機能付き和風便器の一実
施例を示す分解斜視図である。

【００１９】図において、リム部１ａだけを残して床に
組み込まれた便器本体１は、従来周知の水洗式の和風便
器であり、ボール部１ｂの汚水・汚物を排出する洗浄水
の供給のためのフラッシュバルブ１ｃを接続している。

【００２０】便器本体１の上には、平坦なリム１ａの全
体に被さるほぼＵ字状の平面形状を持つ局部洗浄装置の
ケーシング２を被せる。また、このケーシング２とは別
体としてその近傍に配置され、洗浄機能を作動させるた
めの機構やコントローラ等を収納した機能部ユニット３
を設ける。

【００２１】図２は便器本体１に対してケーシング２及
び機能部ユニット３をレイアウトしたときの切欠平面図
である。

【００２２】機能部ユニット３には、建屋の給水配管に
接続する給水管３ａを備え、その内部にはこの給水管３
ａに連通する熱交換器３ｂ，流路開閉及び流量調整用の
各種の弁を備えたバルブユニット３ｃを組み込む。給水
管３ａは熱交換器３ｂに入る前に分岐する補助管３ｄを
接続し、この補助管３ｄには電磁弁を用いた開閉弁３ｅ
を設ける。また、ノズル装置（後述）を進退動作させる
減速機付きのモータ３ｆを備えると共に、各機器を制御
するためのコントローラ３ｇを組み込む。

【００２３】機能部ユニット３の上面には、各機能部の
操作スイッチを配置した操作盤として利用する。操作ス
イッチとしては、洗浄スイッチ４ａ，停止スイッチ４
ｂ，温水温度設定スイッチ４ｃ，ケーシング洗浄スイッ
チ４ｄ等であり、バルブユニット３ｃの流量調整弁を操
作する水勢調節摘み４ｅも備える。

【００２４】ケーシング２には、ボール部１ｂの後端側
に位置する部分にノズル装置を設ける。このノズル装置
は、ケーシング２に固定したガイドスリーブ２ａによっ
て保持され軸線方向に移動可能なノズル本体５を備えた
ものである。

【００２５】ノズル本体５をその軸線方向に移動させる
ため、機能部ユニット３のモータ３ｆとの間を３本のリ
ンクロッド６ａ，６ｂ，６ｃによって連接する。そし
て、これらのリンクロッド６ａ〜６ｃにより、モータ３
ｆの出力軸の正逆回転に合わせて、ノズル本体５を図２
中の実線で示す収納位置から一点鎖線で示す洗浄位置ま
での往復動作を可能とする。

【００２６】また、ノズル本体５には、バルブユニット
３ｃからの２本の洗浄水供給管７ａ，７ｂを別々の流路
系統として基端部に接続する。これらの洗浄水供給管７
ａ，７ｂは、ノズル本体５の往復動作に追従できるよう
にゴム等のチューブを利用したものである。

【００２７】更に、ケーシング２の左右にはそれぞれ使
用する人の足を載せるための足載せ台８ａ，８ｂを一体
に設ける。これらの足載せ台８ａ，８ｂは、普通の足の
大きさの人が使う場合に少しゆとりがある程度の平面形
状とし、或る程度の自由度を拘束して身体の位置を決
め、ノズル装置による洗浄ポイントがずれないようにす
る役目を持つ。

【００２８】図３は図１のＡ−Ａ線矢視位置であってケ
ーシング２と便器本体１のリム部１ａとの間の位置関係
を示す概略縦断面図である。

【００２９】ケーシング２の底面には、便所の床から少
し突き出る便器本体１のリム部１ａに上から緩やかに嵌
まり合う凹部２ｂを全長に設ける。また、図１に示した
ように、便器本体１のボール部１ｂに臨む面であってガ
イドスリーブ２ａを除く全体の外郭は、ボール部１ｂ側
へ向けて下向きの傾斜とした跳ね水の回収面２ｃとして
形成する。

【００３０】回収面２ｃの一部であって正面から見て左
右の直線部分に相当する領域には、図３に示すように閉
じた給水チャンバ２ｄを形成する。そして、これらの給
水チャンバ２ｄには、補助管３ｄから分岐した２本の洗
浄管３ｄ−１，３ｄ−２をそれぞれ接続する。また、給
水チャンバ２ｄに供給された洗浄用の水を回収面２ｃに
放出するため、複数のスプレッダスリット２ｅをケーシ
ング２に切開して設ける。

【００３１】これらのスプレッダスリット２ｅは、図１
に示すように、回収面２ｃの前後方向に配列されたもの
である。そして、この回収面２ｃに沿う流れとするた
め、図３に示すようにスプレッダスリット２ｅはその切
開方向を斜め下としている。

【００３２】なお、給水チャンバ２ｄを設けないで洗浄
管３ｄ−１，３ｄ−２のそれぞれ１個又は複数個のスプ
レッダに直結したものとしてもよい。

【００３３】以上の構成において、洗浄スイッチ４ａを
オンすると、モータ３ｆの作動とリンクロッド６ａ〜６
ｃの動作によって、ノズル本体５は図２の一点鎖線の位
置まで進出して停止し、温水がノズル本体５から放出さ
れて局部洗浄が行われる。

【００３４】放出された洗浄水は最終的に局部に当たっ
て周囲に飛散し、その一部はボール部１ｂにそのまま落
下し、一部はケーシング２の表面に付着する。 このよ
うな洗浄水の跳ね返りがあっても、ケーシング２の底面
の凹部２ｂの中に便器本体１のリム１ａが抱き込まれた
据付け構造なので、従来例で示したように便器本体１の
リム１ａに沿う部分に飛散水が浸潤することはない。ま
た、ケーシング２の表面に付着した水は、回収面２ｃの
傾斜によってボール部１ｂ側に自然に流れ落ち、水切り
も促進される。

【００３５】停止スイッチ４ｂを操作するとノズル本体
５からの洗浄水の放出が停止すると共に、ケーシング２
内の収納位置に後退する。そして、洗浄水の跳ね水によ
ってケーシング２の回収面２ｃ部分が汚れたような場合
には、ケーシング洗浄スイッチ４ｄをオンする。これに
より、開閉弁３ｅが開いて水が洗浄管３ｄ−１，３ｄ−
２から給水チャンバ２ｄに供給され、スプレッダスリッ
ト２ｅから回収面２ｃ上に放出される。

【００３６】このようにスプレッダスリット２ｅを回収
面２ｃに設けたことによって、汚水や汚物等を少量含む
可能性がある付着水をボール部１ｂ側に流し落として回
収することができ、ケーシング２の表面の汚れが解消さ
れる。

【００３７】なお、ボール部１ｂに洗浄水を流して汚物
等を排出する便器洗浄操作と同時にスプレッダスリット
２ｅから洗浄水が放出されるようにしておけば、便器を
使用した後には必ず回収面２ｃが洗い流されるので、更
に一層衛生的な使用が可能となる。

【００３８】また、ケーシング２の内部には、ノズル本
体５への洗浄水供給管７ａ，７ｂ，給水チャンバ２ｄへ
の洗浄管３ｄ−１，３ｄ−２及びノズル本体５を動作さ
せるためのリンクロッド６ｂ，６ｃだけが収納され、そ
の他の機器は全て機能部ユニット３に配置されている。

【００３９】このため、ケーシング２の大きさ、特に高
さ方向の嵩を抑えることができ、便器本体１に被せたと
きでも嵩上げの影響は小さく、使い勝手も改善される。
また、ケーシング２の全体が扁平形状となるので、便所
の扉の干渉も避けることができ、既設の便器への組込み
にも支障がない。

【００４０】更に、ケーシング２には足載せ台８ａ，８
ｂを一体に備えているので、先にも説明したように、足
の位置をこの足載せ台８ａ，８ｂに適切に位置させるだ
けで、洗浄時でのノズル本体５による洗浄水の噴出に合
わせた身体の姿勢をとることができる。このため、洗浄
ポイントを正確に合わせることができ、臀部や脚等を不
要に濡らすことなく洗浄が行えるようになる。

【００４１】ここで、足載せ台８ａ，８ｂは、ケーシン
グ２に対して一体成形するのに代えて、ケーシング２と
の間で互いに嵌め合い等によって固定されケーシング２
との位置関係すなわち洗浄ポイントが特定されるもので
あれば、ケーシング２と別体として成形したものであっ
てもよい。

【００４２】なお、洗浄水の飛散をリム部１ａよりも外
側に向かわせないための構造として、たとえば図４に示
すようにリム部１ａの内側に位置するケーシング２に空
気チャンバ２ｆを設け、エアカーテンによって飛散を遮
断することもできる。

【００４３】この場合では、たとえば給水チャンバ２ｄ
の下方に空気チャンバ２ｆを設けると共に下向きに細い
開口断面の放出スリット２ｇを開ける。そして、空気チ
ャンバ２ｆを機構部ユニット３に備える送風ファン（図
示せず）にダクトで接続しておき、洗浄の期間継続して
この送風ファンを作動させることによって、リム部１ａ
の内周に沿う部分に強い空気流れのエアカーテンを造り
出す。これにより、外に向かおうとする跳ね水は遮断さ
れてボール部１ｂ側に回収され、リム部１ａの外側の床
面への飛散水の浸潤が防止される。

【００４４】

【発明の効果】本発明では、局部洗浄手段を組み込むケ
ーシングを利用して便器本体のリム部及びその周りを隠
してしまうことによって、洗浄時の水跳ねがリム部と床
面との境等に浸潤することがなく、異臭の放散等がない
衛生的な環境を維持できる。

【００４５】また、回収面によって跳ね水を便器側に戻
せるだけでなく、この回収面に洗浄水を流すことで汚水
等を含む付着するを洗い落とすことができ、清潔な使用
が可能となる。

【００４６】更に、機能部ユニットを別配置とすれば、
ケーシングの内部には局部洗浄手段とその配管系の組込
みだけで済み、ケーシングの嵩を抑えることができ、既
設の便器への組込みにも容易に対応できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の和風便器用の衛生洗浄装置及び機能部
を付帯した和風便器装置の分解斜視図である。

【図２】便器本体とケーシングのレイアウトを示す切欠
平面図である。

【図３】図１のＡ−Ａ線矢視位置であってケーシングと
便器本体のリム部１ａとの間の位置関係を示す概略縦断
面図である。

【図４】エアカーテンによる跳ね水の外側への飛散を示
す概略縦断面図である。

【符号の説明】

１ 便器本体 １ａ リム部 １ｂ ボール部 ２ ケーシング ２ａ ガイドスリーブ ２ｃ 回収面 ２ｄ 給水チャンバ ２ｅ スプレッダスリット ３ 機能部ユニット ３ｄ 補助管 ３ｄ−１，３ｄ−２ 洗浄管 ３ｅ 開閉弁 ３ｆ モータ ５ ノズル本体 ６ａ，６ｂ，６ｃ リンクロッド ７ａ，７ｂ 洗浄水供給管 ８ａ，８ｂ 足載せ台

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 松下 博之 福岡県北九州市小倉北区中島２丁目１番 １号 東陶機器株式会社内 (72)発明者 小代 禎彦 福岡県北九州市小倉北区中島２丁目１番 １号 東陶機器株式会社内 (56)参考文献 特開 昭56−89638（ＪＰ，Ａ) 実開 昭62−99680（ＪＰ，Ｕ) 特公 平５−13210（ＪＰ，Ｂ２) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) E03D 9/00 - 9/16

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 便器本体のリム部に被さるケーシング
   と、前記ケーシングから前記便器本体のボール部の後部
   に向けて出没可能な局部洗浄手段と、跳ね返り防止壁と
   を備えた和風便器用の衛生洗浄装置において、前記ケー
   シングはリム部のほぼ全域を覆う形状に構成されている
   ことを特徴とする和風便器用の衛生洗浄装置。
2. 【請求項２】 前記ケーシングのリム部に被さる部分は
   便器のボール部に臨む面を下向きの傾斜を有する洗浄時
   の跳ね水を前記ボール部側に案内する回収面とするとと
   もに、前記回収面に表面を洗い流す洗浄機構を備えてな
   る請求項１記載の和風便器用の衛生洗浄装置。
3. 【請求項３】 和風便器はそのボール部に洗浄水を供給
   可能な水洗式であって、回収面洗浄可能の動作を便器洗
   浄に連動させた構成とすることを特徴とする請求項１又
   は２記載の和風便器用の衛生洗浄装置。