JP3033567B1 - レーザ加工用保護ウィンドウ部材、その再生方法、およびレーザ加工用組レンズ - Google Patents

レーザ加工用保護ウィンドウ部材、その再生方法、およびレーザ加工用組レンズ

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JP3033567B1 JP10293340A JP29334098A JP3033567B1 JP 3033567 B1 JP3033567 B1 JP 3033567B1 JP 10293340 A JP10293340 A JP 10293340A JP 29334098 A JP29334098 A JP 29334098A JP 3033567 B1 JP3033567 B1 JP 3033567B1
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Abstract

【要約】 【課題】 安価な手段で再生でき、光学基板の繰返し使
用を可能とすることができるように改良されたレーザ加
工用保護ウィンドウ部材を提供することを主要な目的と
する。 【解決手段】 赤外透明基板8の少なくとも一方に、水
に可溶性の水可溶性膜からなる反射防止膜9が設けられ
ている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、一般に、レーザ
加工用保護ウィンドウ部材に関するものであり、より特
定的には、加工対象物からの飛散物により汚れた反射防
止膜のみを簡単にかつ完全に除去でき、繰返し使用を可
能とすることができるように改良されたレーザ加工用保
護ウィンドウ部材に関する。この発明は、また、そのよ
うなレーザ加工用保護ウィンドウ部材の再生方法に関す
る。この発明は、さらに、そのようなレーザ加工用保護
ウィンドウ部材を含むレーザ加工用組レンズに関する。
【0002】
【従来の技術】保護ウィンドウ部材は、プリント基板の
レーザ穴開け加工やレーザマーキング等、すなわち、C
2 レーザに代表される低出力赤外レーザ光による微細
加工に用いられるFθレンズ等の集光光学部品の、汚れ
防止のために用いられる。
【0003】図6は、従来のレーザ加工用組レンズの概
念図である。図6を参照して、筒1の中に、複数個のレ
ンズ2が組込まれている。レンズ2と加工対象物3との
間に保護ウィンドウ部材4が配置される。保護ウィンド
ウ部材4は、筒1に、ネジがネジ穴に嵌め込まれるよう
にして、固定される。垂直方向からθだけずれてレンズ
2に入射されたレーザ光7は、レンズ2の軸芯と加工対
象物3とが交わる点OからFθ(Fはレンズの焦点距
離)だけずれた位置に、集光される。このようなレンズ
2は、Fθレンズと呼ばれる。加工対象物3には、照射
されたレーザ光7により、微細な穴が形成される。
【0004】プリント基板のレーザによる高速微細穴開
け加工が本格化してきた今日、それに伴って穴開け加工
時に、プリント基板から飛散する粉塵が、Fθレンズに
代表される集光光学部品の、加工面側の面に付着し、そ
の透過性能の劣化が問題となってきた。このような問題
を解決するために、保護ウィンドウ部材4が有効とな
る。
【0005】図7を参照して、従来の保護ウィンドウ部
材4は、CVD−ZnSe多結晶体の平面研磨基板5を
備える。基板5の両面に、反射防止膜6が形成されてい
る。
【0006】反射防止膜6を形成するのは、図8を参照
して、反射防止膜を形成しないと、レーザ光7が、基板
5の表面で反射し、透過率が小さくなるからである。
【0007】従来は、このような保護ウィンドウ部材4
を、レンズ2を収容する筒1の、加工面側に装着するこ
とで、赤外透過窓が形成され、レンズ2が保護されてい
る。保護ウィンドウ部材4の表面に、加工対象物から飛
散してきた粉塵が付着し、その透過率性能が極度に低下
した場合には、保護ウィンドウ部材4ごと、新しい物に
交換して、穴開け加工を継続させていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】さて、上述したよう
に、プリント基板のレーザ穴開け加工において発生する
飛散粉塵によるFθレンズの加工面側の汚れの防止は、
赤外透過窓である保護ウィンドウ部材4の装着により、
短期的に回避できる。しかし、加工不良が生ずるレベル
にまで透過率が低下すれば、新しい物と交換するか、使
用済品の表面再生処理を行なう必要がある。また、従来
採用されてきた新品交換の場合、基板材料、基板研磨加
工、光学コーティング加工が極めて高価なものとなり、
穴開けの加工コストに跳ね返り、問題であった。
【0009】また、汚れた透過窓の表面再生処理を行な
うとすると、乾式法では、イオンミリング等による表面
コートの除去を採用する必要があるが、特別な真空装置
が必要であり、また、基板表面の損傷も免れないことか
ら、対応が困難である。また、湿式法により、簡単な化
学的処理で、表面コートを除去することも考えられる
が、保護ウィンドウ部材として広く用いられているZn
Se基板は、毒物であるため、対応できない。
【0010】また、図7を参照して、反射防止膜6は、
弗化トリウム(ThF4 )とセレン化亜鉛(ZnSe)
または硫化亜鉛(ZnS)の組合せという、難水溶性な
いし非水溶性の膜材が主体となっているため、汚れた基
板表面の反射防止膜6のみを容易に除去できないという
問題点があった。
【0011】それゆえに、この発明は、保護ウィンドウ
部材に用いられている高価な基板の、形状および加工面
の品質を損なうことなく、飛散粉塵による汚れの発生し
た反射防止膜を簡単にかつ完全に除去でき、再コーティ
ングを可能とならしめるように改良されたレーザ加工用
保護ウィンドウ部材を提供することを目的とする。
【0012】この発明は、また、そのようなレーザ加工
用保護ウィンドウ部材の再生方法を提供することを目的
とする。
【0013】この発明は、さらにそのような保護ウィン
ドウ部材を備えるレーザ加工用組レンズを提供すること
を目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】請求項1に係る発明は、
レーザ加工に用いられるものであり、組レンズに装着さ
れて、加工対象物より飛散してくる飛散物から組レンズ
を保護する、所定波長で反射防止機能を有するレーザ加
工用保護ウィンドウ部材に係る。当該レーザ加工用保護
ウィンドウ部材は、上記加工対象物側に向く一方の面と
レーザ光源側に向く他方の面とを有し、水に不溶性の赤
外透明基板を備える。上記赤外透明基板の少なくとも上
記一方の面に、水溶性材料で形成された単層膜からなる
反射防止膜が設けられている。本発明に係るレーザ加工
用保護ウィンドウ部材によれば、上記レーザ加工を、上
記飛散物によるダメージが上記反射防止膜内に留まり、
上記赤外透明基板にまで及ばない条件で行ない、それに
よって、前記飛散物により上記反射防止膜が汚染された
ときには、上記反射防止膜のみを水によって完全に除去
し、再度、上記赤外透明基板の上記一方の面に清浄な反
射防止膜を再形成することにより、繰返し使用すること
ができる。 請求項2に係る発明は、レーザ加工に用いら
れるものであり、組レンズに装着されて、加工対象物よ
り飛散してくる飛散物から上記組レンズを保護する、所
定波長で反射防止機能を有するレーザ加工用保護ウィン
ドウ部材に係る。当該レーザ加工用保護ウィンドウ部材
は、上記加工物対象側に向く一方の面とレーザ光源側に
向く他方の面とを有し、水に不溶性の赤外透明基板を備
える。上記赤外透明基板の少なくとも上記一方の面に、
水溶性材料で形成された膜を再下層とする多層膜からな
る反射防止膜が設けられている。この発明によれば、上
記レーザ加工を、上記飛散物によるダメージが上記反射
防止膜内に留まり、上記赤外透明基板にまで及ばない条
件で行ない、それによって上記飛散物により上記反射防
止膜が汚染されたときには、該反射防止膜のみを水によ
って完全に除去し、再度、上記赤外透明基板の上記一方
の面に清浄な反射防止膜を再形成することにより、繰返
し使用することができる。 請求項3に係る発明は、レー
ザ加工に用いられるものであり、組レンズに装着され
て、加工対象物より飛散してくる飛散物から上記組レン
ズを保護する、所定波長で反射防止機能を有するレーザ
加工用保護ウィンドウ部材に係る。当該レー ザ加工用保
護ウィンドウ部材は、水に不溶性の赤外透明基板を備え
る。上記赤外透明基板は上記加工物対象側に向く一方の
面とレーザ光源側に向く他方の面とを有する。上記赤外
透明基板の少なくとも上記一方の面に、水溶性材料の膜
材料と他の膜材料が所定の配合比率で混合された混合膜
からなる反射防止膜が設けられている。 この発明によれ
ば、上記レーザ加工を、上記飛散物によるダメージが上
記反射防止膜内に留まり、上記赤外透明基板にまで及ば
ない条件で行ない、それによって、上記飛散物により上
記反射防止膜が汚染されたときには、該反射防止膜を、
水によって完全に除去し、再度、上記赤外透明基板の上
記一方の面に清浄な反射防止膜を再形成することによ
り、繰返し使用することができる。
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】請求項に係るレーザ加工用保護ウィンド
ウ部材においては、上記赤外透明基板は、セレン化亜鉛
またはゲルマニウムで形成される。
【0021】請求項に係るレーザ加工用保護ウィンド
ウ部材においては、上記水可溶性膜の膜材料は、弗化
鉛、弗化バリウム、弗化ストロンチウム、臭化カリウ
ム、塩化カリウム、および塩化ナトリウムからなる群よ
り選ばれる。
【0022】請求項に係るレーザ加工用保護ウィンド
ウ部材においては、上記他の膜材料は、セレン化亜鉛、
硫化亜鉛および硫化砒素からなる群より選ばれる。
【0023】請求項に係るレーザ加工用保護ウィンド
ウ部材においては、上記混合膜は、その屈折率が上記レ
ーザの波長における上記赤外透明基板の屈折率の平方根
になるように制御されており、該混合膜の光学的厚さ
は、上記レーザの波長の4分の1に調整されている。
【0024】請求項に係る発明は、加工対象物側に向
く一方の面とレーザ光源側に向く他方の面とを有する赤
外透明基板と、該赤外透明基板の少なくとも上記一方の
面に設けられた反射防止膜とを備え、組レンズに装着さ
れて、加工対象物より飛散してくる飛散物から該組レン
ズを保護するレーザ加工用保護ウィンドウ部材の再生方
法に係る。まず、上記飛散物で汚染された上記レーザ加
工用保護ウィンドウ部材を水に浸漬し、それによって、
上記反射防止膜を、上記赤外透明基板から剥がす。次
に、上記反射膜が剥がされた上記赤外透明基板の上記一
方の面に、水で剥がすことのできる材料で形成された反
射防止膜を再度形成する。
【0025】請求項に係る発明は、加工対象物のレー
ザ加工に用いられる、所定波長で反射防止機能を有する
レーザ加工用組レンズに係る。当該レーザ加工用組レン
ズは、レンズを備える。上記レンズと上記加工対象物等
の間に、レーザ加工用保護ウィンドウ部材が設けられて
いる。上記レーザ加工用保護ウィンドウ部材は、上記加
工対象物側に向く一方の面とレーザ光源側に向く他方の
面とを有し、かつ水に不溶性の赤外透明基板を含む。上
記赤外透明基板の少なくとも上記一方の面に、水で剥が
すことのできる材料で形成された反射防止膜が設けられ
ている。本発明によると、上記レーザ加工を、上記加工
対象物からの飛散物によるダメージが上記反射防止膜内
部に留まり、上記赤外透明基板にまで及ばない条件で行
なった後、上記飛散物より汚染された上記反射防止膜
を、水によって剥がし、再度上記赤外透明基板の上記一
方の面に清浄な反射防止膜を再形成することにより、繰
返し使用することができる。
【0026】
【発明の実施の形態】穴開け加工コストに跳ね返らない
安価な保護ウィンドウ部材を提供するためには、劣化し
た保護ウィンドウ部材の基板そのものの品質を損なうこ
となく、飛散粉塵により汚れた反射防止膜のみを簡単
に、かつ完全に除去でき、再度、清浄基板に反射防止コ
ートが再形成できるという、いわゆる基板の繰返し使用
を可能とする反射防止膜を使用することが必要である。
【0027】したがって、劣化した保護ウィンドウ部材
の容易な再生方法としては、特殊な化学的溶剤ではな
く、最もポピュラーな水に浸漬させることで、基板は全
く化学的損傷を受けることなく、反射防止膜のコート前
の形状および表面状態に回復させる方法が好ましい。
【0028】したがって、反射防止膜の膜材料として
は、劣化した反射防止膜のみが完全に溶出して、基板表
面にわずかでも残留しないように、水に対して適度な溶
解度を持つ膜材料が好ましい。ただし、反射防止膜は、
低出力レーザ光に対し、十分の耐光性を有する必要があ
る。また、反射防止膜を水溶性にすると、一方で低耐湿
性をもたらすが、光学部品としての、レーザ加工に支障
を来す品質劣化時間が、飛散粉塵による劣化の時間より
も、十分長い必要がある。
【0029】図1は、本発明の実施の形態に係るレーザ
加工用保護ウィンドウ部材の断面図である。
【0030】本発明の実施の形態に係るレーザ加工用保
護ウィンドウ部材4は、組レンズに装着されて、加工対
象物からの飛散物から組レンズを保護する、所定波長で
反射防止機能を有するものである。保護ウィンドウ部材
4は、加工対象物側に向く一方の面とレーザ光源側に向
く他方の面とを有し、水に不溶性の赤外透明基板8を備
える。赤外透明基板8の両面に、水に可溶性の水可溶性
膜9が設けられている。
【0031】水による洗浄で基板の再生を可能とするた
めに、赤外透明基板8は、非水溶性である必要があり、
セレン化亜鉛(ZnSe)、ガリウム砒素(GaA
s)、ゲルマニウム(Ge)を使用するのが好ましい。
【0032】赤外透明基板8の上に形成する水可溶性膜
9、すなわち反射防止膜の材料としては、所望波長9〜
11μmの赤外域で低吸収性で、水溶性であるものを用
いる必要がある。
【0033】水溶性の膜材料としては、弗化物である弗
化鉛(PbF2 )、弗化バリウム(BaF2 )、弗化ス
トロンチウム(SrF2 )や、アルカリハライドである
臭化カリウム(KBr)、塩化カリウム(KCl)、塩
化ナトリウム(NaCl)が好ましく、これらの材料は
低屈折率材として用いられる。
【0034】上述の水溶性膜材料を用いて、反射防止膜
を、基板8面上に形成するわけであるが、その膜構造
は、図2を参照して、非水溶性である高屈折率のセレン
化亜鉛(ZnSe)や硫化亜鉛(ZnS)で形成した層
等を組合せた光学多層膜(単層を含む)とするのも好ま
しい。
【0035】この場合、基板に接する最下層11は、水
溶性の膜材料でなければならない。なぜなら、再生時
に、水の浸漬により、基板8面から、膜が完全に除去さ
れる必要があるからである。多層反射防止膜の場合に
は、非水溶性の基板8の屈折率が2.40,4.00と
高いことから、基板8側の最下層11を水溶性の低屈折
率材で形成し、最上層10を高屈折率材とする2層膜が
有効である。ここで、最下層11の屈折率が、基板8の
屈折率の平方根にほぼ一致するようであれば、その光学
的厚さ(物理的厚さdに屈折率nをかけたものnd)を
所望波長の4分の1とすることで、単層膜で反射防止を
実現できる。
【0036】また、多層反射防止膜でない構造として、
図3に示すような、水溶性の膜材料と他の膜材料が所定
の配合比率で混合されてなる、単層の混合膜12も好ま
しく使用できる。混合膜12が反射防止条件を満たすに
は、混合膜12の屈折率が基板8の屈折率の平方根で、
かつその光学的膜厚が所望波長の4分の1に制御されれ
ばよい。したがって、非水溶性の膜材の配合率が0とな
る水溶性膜材のみで、反射防止条件を満たさない場合に
は、適当量の非水溶性の膜材を混合させればよい。
【0037】なお、混合膜12の屈折率nc は、水溶性
膜の屈折率をna 、その配合重量率をta 、非水溶性膜
の屈折率をnb 、およびその配合重量率をtb とすれ
ば、概略的には、nc =na ・ta +nb ・tb で見積
もられる。
【0038】本発明に係る保護ウィンドウ部材によれ
ば、レーザ穴開け加工時に飛散した粉塵が膜に付着し
て、膜を劣化させても、水に浸漬させることにより、劣
化した反射防止膜のみを溶解させる。不溶性基板の形状
およびその加工表面は、全く損傷しない。反射防止膜の
みの再コーティングにより、繰返し、レーザ加工に供す
ることができる。このため、基板として、非水溶性で、
赤外透明基板を使用し、かつ反射防止膜として、その膜
材料が水に対する適度な溶解度を持つ、低光吸収のもの
を用いる。
【0039】反射防止膜の膜構造が、屈折率の異なる多
層膜である場合、水溶性膜を最下層として、この層と異
なる屈折率の非水溶性膜とを組合せて、2層膜にして、
反射防止条件を満足させている。この構造では、水への
浸漬により、基板側の最下層が水に溶解するので、非水
溶性膜を反射防止膜の構成要素に含んでいても、反射防
止多層膜の全体を完全に除去できる。
【0040】また、水溶性膜材料と非水溶性膜材料の、
単層の混合膜を反射防止膜とする場合、単なる混合状態
にあるため、膜の水溶性の性質は持ち合わせており、水
への浸漬により、容易に膜全体を完全に除去できる。
【0041】
【実施例】プリント基板のレーザ穴開け加工に用いるレ
ーザは、波長が、9.3μmから10.6μmのものが
使用される。それゆえ、保護ウィンドウの赤外透明基板
として、セレン化亜鉛(ZnSe)、やゲルマニウム
(Ge)を用いる場合、基板の表面に形成する反射防止
膜の膜厚は、所望の波長での使用する基板の、屈折率に
より異なる。所望波長での基板屈折率を、表1にまとめ
る。
【0042】
【表1】
【0043】反射防止膜を構成する材料のうち、水溶性
の低屈折率の膜材の屈折率と、その水に対する溶解度、
および、非水溶性(難溶性)の高屈折率膜材の屈折率
を、表2に示す。
【0044】
【表2】
【0045】ZnSeを基板とする場合、単層で反射防
止条件を満たす膜材料は、基板の屈折率の平方根にする
という要請がある。2.40の平方根は1.55である
から、表2から、膜材料として、弗化鉛(PbF2 )と
臭化カリウム(KBr)が、この条件を満足することが
わかる。
【0046】また、所望波長10.6μmでの2層反射
防止膜を形成する場合において、基板をセレン化亜鉛
(ZnSe)、ゲルマニウム(Ge)で形成した場合
の、膜の設計の結果を表3に示す。なお、基板の厚み
は、約5mmである。
【0047】
【表3】
【0048】次に、水溶性の低屈折率材料と非水溶性の
高屈折率材料を混合して、単層の反射防止膜を形成し
た。ウィンドウ基板として、セレン化亜鉛(ZnSe)
とゲルマニウム(Ge)のそれぞれを用いた。混合膜中
の、水溶性で低屈折率材料の配合重量比(%)を、配合
相手の高屈折率材料に対応させて、算出した結果を表4
に示す。
【0049】
【表4】
【0050】混合膜の膜厚は、所望波長を10.6μm
とする場合、ZnSe基板では1.71μm、Ge基板
では1.33μmである。
【0051】以上、水溶性の反射防止膜が単一膜材で形
成される単層膜、水溶性低屈折率材と非水溶性高屈折率
材との組合せによる2層膜、および反射防止条件を満た
す混合膜についての数値的解析を示した。
【0052】次に、実際に、赤外透明基板に作製した反
射防止膜が、水への浸漬により、容易にかつ完全に除去
できるか否かを調べた。膜材料としては、ZnSe基板
に対して、単層膜で反射防止条件を満たすPbF2 を取
上げた。この膜材は、溶解度の点で、他の水溶性膜と比
べて、特別大きくもなく、また小さくもなく、水溶性材
料を代表する最もよい膜材料と考えられるからである。
【0053】PbF2 は、市販の4N純度(99.99
%)の2〜3mmの粒状原料を用い、内るつぼを白金と
する二重るつぼにて、ZnSe基板上に、抵抗加熱方式
で単層蒸着を行なった。PbF2 膜の改質に影響する特
別なイオンアシスト等の補助条件は付加していない。基
板温度は、200℃に設定して、基板が高温になること
に伴う膜の付着力の増加を避けた。
【0054】所望波長を10.6μmとする反射防止膜
をコートしたZnSe基板の透過率特性を図4に示す。
図4はPbF2 の単層からなる反射防止膜をコートした
ZnSe基板の7〜14μm域の透過率スペクトル図で
ある。
【0055】図4を参照して、10.6μmにおける透
過率は99.3%であった。得られたPbF2 の単層膜
をコートしたZnSe基板の水に対する溶解性は、室温
下の水中(水温約25℃)に、一昼夜浸漬することによ
り調べた。その結果、目視にて、完全に膜が除去される
程度に、十分なものであることがわかった。
【0056】また、2層膜構造の反射防止膜の例とし
て、ZnSe基板に水溶性低屈折率膜材BaF2 と高屈
折率膜材ZnSeとを組合せた反射防止膜を作製した。
蒸着条件としては、抵抗加熱蒸着でのBaF2 膜の白濁
化をできるだけ回避させるために、PbF2 膜と比べ2
0℃〜40℃ほど高めに基板温度を設定した。
【0057】図5は、BaF2 /ZnSeの2層からな
る反射防止膜をZnSe基板にコートしたものの、7〜
14μm域の透過率スペクトル図である。所望波長が1
0.6μmでの透過率は、図5を参照して、99.5%
で、十分な特性を示した。室温下の温度で水中に一昼夜
浸漬したが、この条件では、完全に反射防止膜を除去で
きなかった。しかし、卓上型超音波洗浄機を計1時間程
度追加し、水温を40℃まで加温して、水中浸漬を継続
させると、一昼夜でほぼ完全に除去されることがわかっ
た。
【0058】PbF2 単層反射防止膜を形成させた保護
ウィンドウをFθレンズ(焦点距離:100mm)の加
工面側に装着して、これを市販のプリント基板穴開け用
CO 2 レーザ(発振波長9.3μm、最大平均出力:1
00W、パルスエネルギ:3mJ/パルス)にて累計約
100時間の穴開け加工に供した。保護ウィンドウ表面
全体にプリント基板に含有される銅、樹脂を主体とする
粉塵がかなり強力に付着していたが、保護ウィンドウを
外して、室温(約25℃)下の水に一昼夜の間、浸漬さ
せたところ、表面の反射防止膜が痕跡もなく完全に除去
されており、顕微鏡観察、緩衝計による表面形状評価ポ
ラリメータによる基板歪み評価を行なったが、反射防止
膜を施す前の基板品質と何ら変わらない状態であった。
【0059】PbF2 単層反射防止膜を形成させたZn
Se基板およびBaF2 /ZnSeの2層反射防止膜を
形成させたZnSe基板を卓上型超音波洗浄機の併用な
いし加温条件下での水への浸漬により、表面の反射防止
膜を完全に除去した後、この基板を再度反射防止膜を形
成させるために、超音波を用いた7槽型の精密洗浄を行
ない、真空蒸着装置にて所定の反射防止膜を基板表面に
施した。再コートされた基板は、外観品質、透過率特性
とも、初品と全く変わらぬものであり、再生方法の有効
性を確認した。
【0060】Fθレンズの保護ウィンドウとして再生さ
れたものを装着して、Fθレンズ全体としての集光特性
を赤外緩衝計による透過破面収差にて評価したが、十分
な集光特性を有する品質が維持されていることを確認し
た。
【0061】
【発明の効果】本発明によれば、低出力レーザによるプ
リント基板の微細穴開け加工で問題となる飛散粉塵によ
るFθレンズの劣化を、保護ウィンドウ膜材で防止でき
る。保護ウィンドウの表面に形成されている反射防止膜
は水溶性の膜材で形成されているので、膜が汚れても、
保護ウィンドウ部材を水へ浸漬することにより、汚れた
該反射防止膜を剥がすことができる。そして、基板へ
射防止膜再コーティングすることにより、容易に保護
ウィンドウ部材の再生が可能となった。これにより、保
護ウィンドウを再製作するという従来の方法に比べて、
著しい費用低減を図ることができるという効果を奏す
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るレーザ加工用保護ウ
ィンドウ部材の断面図である。
【図2】本発明の他の実施の形態に係るレーザ加工用保
護ウィンドウ部材の断面図である。
【図3】本発明のさらに他の実施の形態に係るレーザ加
工用保護ウィンドウ部材の断面図である。
【図4】PbF2 の単層からなる反射防止膜が形成され
たZnSe基板の、7〜14μm域の透過率スペクトル
図である。
【図5】BaF2 /ZnSeの2層からなる反射防止膜
が形成されたZnSe基板の、7〜14μm域の透過率
スペクトル図である。
【図6】従来のレーザ加工用組レンズの概念図である。
【図7】従来のレーザ加工用保護ウィンドウ部材の断面
図である。
【図8】反射防止膜を形成しないレーザ加工用保護ウィ
ンドウ部材の問題点を示す図である。
【符号の説明】
8 赤外透明基板 9 水可溶性膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23K 26/00 - 26/16 B23K 35/36 G02B 1/10,7/02

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 レーザ加工に用いられるものであり、組
    レンズに装着されて、加工対象物より飛散してくる飛散
    物から前記組レンズを保護する、所定波長で反射防止機
    能を有するレーザ加工用保護ウィンドウ部材であって、 前記加工対象物側に向く一方の面とレーザ光源側に向く
    他方の面とを有し、水に不溶性の赤外透明基板と、 前記赤外透明基板の少なくとも前記一方の面に設けら
    、水溶性材料で形成された単層膜からなる反射防止膜
    と、を備え、 前記レーザ加工を、前記飛散物によるダメージが前記反
    射防止膜内に留まり、前記赤外透明基板にまで及ばない
    条件で行ない、それによって、前記飛散物により前記反
    射防止膜が汚染されたときには、前記反射防止膜を、水
    によって除去し、再度、前記赤外透明基板の前記一方の
    面に清浄な反射防止膜を再形成することにより、繰返し
    使用することができるようにされた、 レーザ加工用保護
    ウィンドウ部材。
  2. 【請求項2】 レーザ加工に用いられるものであり、組
    レンズに装着されて、加工対象物より飛散してくる飛散
    物から前記組レンズを保護する、所定波長で反射防止機
    能を有するレーザ加工用保護ウィンドウ部材であって、 前記加工物対象側に向く一方の面と前記光源側に向く他
    方の面とを有し、水に不溶性の赤外透明基板と、 前記赤外透明基板の少なくとも前記一方の面に設けら
    れ、水溶性材料で形成された膜を最下層とする多層膜か
    らなる反射防止膜と、を備え、 前記レーザ加工を、前記飛散物によるダメージが前記反
    射防止膜内に留まり、前記赤外透明基板にまで及ばない
    条件で行ない、それによって、前記飛散物により前記反
    射防止膜が汚染されたときには、前記反射防止膜を水に
    よって完全に除去し、再度、前記赤外透明基板の前記一
    方の面に清浄な反射防止膜を再形成することにより、繰
    返し使用することができるようにされた、 レーザ加工用
    保護ウィンドウ部材。
  3. 【請求項3】 レーザ加工に用いられるものであり、組
    レンズに装着されて、加工対象物より飛散してくる飛散
    物から前記組レンズを保護する、所定波長で 反射防止機
    能を有するレーザ加工用保護ウィンドウ部材であって、 前記加工物対象側に向く一方の面とレーザ光源側に向く
    他方の面とを有し、水に不溶性の赤外透明基板と、 前記赤外透明基板の少なくとも前記一方の面に設けら
    れ、水溶性の膜材料と他の膜材料が所定の配合比率で混
    合された混合膜からなる反射防止膜と、を備え、 前記レーザ加工を、前記飛散物によるダメージが前記反
    射防止膜内に留まり、前記赤外透明基板にまで及ばない
    条件で行ない、それによって、前記飛散物により前記反
    射防止膜が汚染されたときには、反射防止膜を、水によ
    って完全に除去し、再度、前記赤外透明基板の前記一方
    の面に清浄な反射防止膜を再形成することにより、繰返
    し使用することができるようにされた、 レーザ加工用保
    護ウィンドウ部材。
  4. 【請求項4】 前記赤外透明基板は、セレン化亜鉛また
    はゲルマニウムで形成されている、請求項1〜3のいず
    れかに記載のレーザ加工用保護ウィンドウ部材。
  5. 【請求項5】 前記水可溶性材料は、弗化鉛、弗化バリ
    ウム、弗化ストロンチウム、臭化カリウム、塩化カリウ
    ム、および塩化ナトリウムからなる群より選ばれてい
    る、請求項1〜3のいずれかに記載のレーザ加工用保護
    ウィンドウ部材。
  6. 【請求項6】 前記他の膜材料は、セレン化亜鉛、硫化
    亜鉛および硫化砒素からなる群より選ばれている、請求
    に記載のレーザ加工用保護ウィンドウ部材。
  7. 【請求項7】 前記混合膜は、その屈折率が前記レーザ
    の波長における前記赤外透明基板の屈折率の平方根にな
    るように制御されており、該混合膜の光学的厚さは、前
    記レーザの波長の4分の1に調整されている、請求項
    に記載のレーザ加工用保護ウィンドウ部材。
  8. 【請求項8】 加工対象物側に向く一方の面とレーザ光
    源側に向く他方の面とを有する赤外透明基板と、該赤外
    透明基板の前記一方の面に設けられた反射防止膜とを備
    え、組レンズに装着されて、加工対象物より飛散してく
    る飛散物から該組レンズを保護するレーザ加工用保護ウ
    ィンドウ部材の再生方法であって、前記飛散物で汚染された前記レーザ加工用保護ウィンド
    ウ部材を水に浸漬し、それによって前記反射防止膜を前
    記赤外透明基板から剥がす工程と、 前記反射防止膜の剥がされた前記赤外透明基板の前記一
    方の面に、水で剥がすことのできる材料で形成された反
    射防止膜を再度形成する工程と、 を備えた、レーザ加工
    用保護ウィンドウ部材の再生方法。
  9. 【請求項9】 加工対象物のレーザ加工に用いられる、
    所定波長で反射防止機能を有するレーザ加工用組レンズ
    であって、 レンズと、 前記レンズと前記加工対象物の間に設けられたレーザ加
    工用保護部分部材とを備え、 前記レーザ加工用保護ウィンドウ部材は、 前記加工対象物側に向く一方の面とレーザ光源側に向く
    他方の面とを有し、水に不溶性の赤外透明基板と、 前記赤外透明基板の少なくとも前記一方の面に設けられ
    た、水で剥がすことのできる材料で形成された反射防止
    膜と、を含み、 前記レーザ加工を、前記加工対象物からの飛散物による
    ダメージが前記反射防止膜内に留まり、前記赤外透明基
    板にまで及ばない条件で行なった後、前記飛散物より汚
    染された前記反射防止膜を、水によって剥がし、再度前
    記赤外透明基板の前記一方の面に清浄な反射防止膜を再
    形成することにより、繰返し使用することができるよう
    にされている、 レーザ加工用組レンズ。
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