JP3014179B2 - インクジェット記録装置のキャッピング解除状態報知方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、記録手段から被記録材
へインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置
のキャッピング解除状態報知方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】プリンタ、複写機、ファクシミリ等の機
能を有する記録装置、あるいはコンピューターやワード
プロセッサ等を含む複合型電子機器やワークステーショ
ンの出力機器として用いられる記録装置は、画像情報に
基づいて用紙やプラスチック薄板等の被記録材（記録媒
体）に画像を記録していくように構成されている。前記
記録装置は、記録方式により、インクジェット式、ワイ
ヤドット式、サーマル式、レーザービーム式等に分ける
ことができる。

【０００３】被記録材の搬送方向（副走査方向）と交叉
する方向に主走査するシリアルスキャン方式を採るシリ
アルタイプの記録装置においては、被記録材を所定の記
録位置にセットした後、被記録材に沿って移動するキャ
リッジ上に搭載した記録手段によって画像を記録（主走
査）し、１行分の記録を終了した後に所定量の紙送り
（ピッチ搬送）を行ない、その後に再び停止した被記録
材に対して、次の行の画像を記録（主走査）するという
動作を繰り返すことにより、被記録材全体の記録が行な
われる。一方、被記録材の搬送方向の副走査のみで記録
するラインタイプの記録装置においては、被記録材を所
定の記録位置にセットし、一括して１行分の記録を行な
った後、所定量の紙送り（ピッチ送り）を行ない、さら
に、次の行の記録を一括して行なうという動作を繰り返
すことにより、被記録材全体の記録が行なわれる。

【０００４】上記記録装置のうち、インクジェット式の
記録装置（インクジェット記録装置）は、記録手段（記
録ヘッド）から被記録材にインクを吐出して記録を行な
うものであり、記録手段のコンパクト化が容易であり、
高精細な画像を高速で記録することができ、普通紙に特
別の処理を必要とせずに記録することができ、ランニン
グコストが安く、ノンインパクト方式であるため騒音が
少なく、しかも、多色のインクを使用してカラー画像を
記録するのが容易であるなどの利点を有している。中で
も、紙幅方向に多数の吐出口を配列したラインタイプの
記録手段を使用するライン型の装置は、記録の一層の高
速化が可能である。

【０００５】特に、熱エネルギーを利用してインクを吐
出するインクジェット式の記録手段（記録ヘッド）は、
エッチング、蒸着、スパッタリング等の半導体製造プロ
セスを経て、基板上に製膜された電気熱変換体、電極、
液路壁、天板などを形成することにより、高密度の液路
配置（吐出口配置）を有するものを容易に製造すること
ができ、一層のコンパクト化を図ることができる。一
方、被記録材の材質に対する要求も様々なものがあり、
近年では、通常の被記録材である紙や樹脂薄板（ＯＨＰ
等）などの他に、薄紙や加工紙（ファイリング用のパン
チ孔付き紙やミシン目付き紙、任意な形状の紙など）な
どを使用ことが要求されるようになってきた。

【０００６】上記インクジェット記録装置においては、
記録手段（記録ヘッド）のインク吐出部に紙粉やゴミ等
の異物が付着したり、あるいは吐出口部分のインクが乾
燥して増粘または固着すると吐出不良（不吐出を含む）
を起こす恐れがあり、これを防止する手段として、被記
録時にインク吐出部をキャップで密閉する方法が採られ
ている。このキャップは一般にゴム状弾性材で形成され
ている。

【０００７】上記インクジェット記録装置においては、
記録ヘッドの吐出安定を図るために記録装置が自動的に
各種のシーケンスを実行するように構成されており、も
し、使用者などが無意識に記録装置の電源を切った場合
には、キャップによるインク吐出部の密閉（キャッピン
グ）が行われないままとなることがあった。このように
キャップによるインク吐出部の密閉（キャッピング）が
確実に実行されない状態で記録装置が輸送または長期間
放置されると、輸送時における吐出口からのインク漏出
または吐出口内のインク固着やインク増粘などによる吐
出不良が発生しやすくなり、さらに、振動等によるメニ
スカス部への空気侵入も発生しやすくなる。そこで、従
来のインクジェット記録装置においては、不完全なキャ
ッピングを防止するために、記録中での電源切断を禁止
するだけでなく、キャッピングが確実に実行されるのに
必要な時間だけ待った後に電源を切断する方法、あるい
は機械的な動作音によりキャッピング完了を判断して電
源を切断する方法が採られている。さらには、パワーオ
フシーケンスを備えた記録装置においては、記録装置の
電源を切断した後に常に一連のシーケンスが実行される
ので、実質的に長い待ち時間を必要とし、その動作中に
電源コードを抜くことはできなかった。

【０００８】

【発明が解決しようとしている課題】しかし、前述のよ
うなインクジェット記録装置においては、ブラックボッ
クス状態で記録ヘッドの密閉状態を判別することは困難
であり、使用者にとっては必要以上に長い待ち時間を必
要としていた。また、記録装置のオンライン状態におい
ては、パーソナルコンピューター等のホストからの記録
指令により任意の時間に記録がスタートするため、一定
時間内であれば、キャップを開放したままにして次の記
録指令に即座に対応し得るように構成されている。その
ため、キャップが開放しているか密閉しているかを判別
することが非常に困難であり、キャップを開放したまま
電源を切断するおそれがあった。

【０００９】さらに、記録装置のオフライン状態におい
ても、吐出口の安定吐出のために記録装置独自の動作を
実行する場合があり、そのような場合にも、キャップの
状態を判別することが困難であり、キャップ開放の状態
で電源を切断するおそれがあった。さらにまた、パワー
オフシーケンスを有する記録装置においても、電源切断
後の待ち時間が長く、装置のコストが高くなり、余分の
スペースが必要であるといった解決すべき課題があっ
た。

【００１０】本発明はこのような技術的課題に鑑みてな
されたものであり、本発明の目的は、記録ヘッドを密閉
するためのキャップが開放状態またはその直前の状態に
あることを使用者に認識させることにより、使用者が電
源切断のタイミングを容易に判別することができ、オン
ライン状態およびオフライン状態のいずれにおいても、
記録ヘッドが開放した状態での記録装置の電源切断を無
くし、その後の記録ヘッドの吐出安定および輸送時等に
おけるインク漏れを防止することが可能なインクジェッ
ト記録装置を提供することである。

【００１１】

【課題解決のための手段】請求項１の発明は、被記録材
へインクを吐出する記録手段のインク吐出部へのキャッ
プによる密閉と開放とを行うインクジェット記録装置の
キャッピング解除状態報知方法において、前記キャップ
の前記インク吐出部に対する状態を密閉状態から開放状
態に移行させるためのキャッピング解除動作の開始を、
前記開放状態に移行完了する前に報知する構成とするこ
とにより、装置がキャッピング解除動作を開始したこと
を使用者は認識することができ、キャッピング解除動作
中の装置の電源を切ってしまうという有害事態の発生を
防止することができ、キャップと記録ヘッドが適切な形
態で接触していないことによるキャップ等の変形、ある
いはインク漏洩や吐出口の乾燥による吐出不良の発生等
をより確実に防止することができるインクジェット記録
装置のキャッピング解除状態報知方法を提供するもので
ある。

【００１２】請求項４の発明は、被記録材へインクを吐
出する記録手段のインク吐出部へのキャップによる密閉
と開放とを行うインクジェット記録装置のキャッピング
解除状態報知方法において、前記キャップの前記インク
吐出部に対する状態を密閉状態から開放状態に移行させ
るためのキャッピング解除動作の開始を、前記開放状態
に移行完了する前に報知する第１の報知の実行と、前記
キャッピング解除動作の完了に伴って前記開放状態にあ
ることを報知する第２の報知の実行と、を行う構成とす
ることにより、装置がキャッピング解除動作を開始した
ことを使用者は認識することができ、キャッピング解除
動作中の装置の電源を切ってしまうという有害事態の発
生を防止することができ、キャップと記録ヘッドが適切
な形態で接触していないことによるキャップ等の変形、
あるいはインク漏洩や吐出口の乾燥による吐出不良の発
生等をより確実に防止することができるインクジェット
記録装置のキャッピング解除状態報知方法を提供するも
のである。

【００１３】

【実施例】以下図面を参照して本発明の実施例を詳細に
説明する。図１は本発明を適用したインクジェット記録
装置の一実施例を示す斜視図である。図１において、イ
ンクジェット記録装置１は、記録手段２から用紙やプラ
スチック薄板等の被記録材７にインクを吐出させて記録
を行なうように構成されている。なお、図１はカラー記
録用のインクジェット記録装置の場合を示し、記録手段
２は複数（４個）の記録ヘッド２Ａ、２Ｂ、２Ｃ、２Ｄ
で構成され、これらの記録ヘッドでは、例えば、イエロ
ー（Ｙ）、マゼンタ（Ｍ）、シアン（Ｃ）、ブラック
（Ｂｋ）のインク色が使用される。

【００１４】図１において、前記記録手段（記録ヘッ
ド）２はキャリッジ３上に搭載されており、該キャリッ
ジ３は、被記録材７に沿って平行に設置されたガイドレ
ール５、５上に往復移動（主走査）可能に装着されてい
る。前記キャリッジ３は、不図示のモーターにより、一
対のプーリー間に張架されたタイミングベルト４を介し
て駆動される。また、記録ヘッド２と対向する位置に
は、ほぼ記録領域をカバーする長さのプラテン（図示の
例ではプラテンローラ）６が回転可能に軸支されてい
る。このプラテンローラ６は被記録材７を紙送りする搬
送ローラを兼ねており、被記録材７は矢印Ａ方向からプ
ラテンローラ６の周面に送り込まれ、記録位置を通過し
た後矢印Ｂ方向へ排出される。

【００１５】記録ヘッド２の移動範囲内であって、記録
領域を外れた位置（図示の例では、プラテンローラ６の
左側）には、該記録ヘッド２のインク吐出の安定性を確
保するとともに長期放置の場合のインク固着を防止する
ための回復機構１１が設けられている。この回復機構１
１の前面には、非記録時に各記録ヘッド２の吐出口形成
面（インク吐出部）を密閉（キャッピング）するための
キャップ１６が設けられている。図示の例では、このキ
ャップ１６も、複数の記録ヘッド２Ａ〜２Ｄのそれぞれ
に対応して、複数のキャップ１６Ａ、１６Ｂ、１６Ｃ、
１６Ｄで構成されている。これらのキャップ１６Ａ〜１
６Ｄ自体は、吐出口形成面を気密状態で密閉（シール）
し得るように、一般に、ゴム状弾性材で形成されてい
る。このキャップ１６Ａ〜１６Ｄを吐出口形成面に圧接
するための動作機構としては、例えば、回復機構１１を
記録ヘッド２に対して前後進させる機構、あるいはキャ
リッジ３の移動によってキャップ１６Ａ〜１６Ｄを吐出
口形成面に押し付ける機構などが提案されている。

【００１６】図１において、記録装置１には、前記回復
機構１１の動作、前記キャリッジ３の動作、前記プラテ
ンローラ６の動作、各記録ヘッド２の記録動作（インク
吐出）などを制御するためのコントローラ１５（図３）
を有する制御部８が設けられている。また、前記コント
ローラ１５はコンピューターやワードプロセッサ等のホ
スト９に接続されており、ホスト９からコマンド（指令
信号）や画像データ（記録信号）等が送信されるように
構成されている。

【００１７】前記キャリッジ３には、各記録ヘッド２Ａ
〜２Ｄに対応する色のインクを供給するための交換可能
なインクカートリッジ１２が装着されている。また、記
録装置１の前面には、各種のスイッチや各種の表示器を
有するパネル１０が設けられている。

【００１８】前記記録ヘッド２（記録ヘッド２Ａ〜２Ｄ
のそれぞれ）は、熱エネルギーを利用してインクを吐出
するインクジェット記録手段であって、熱エネルギーを
発生するための電気熱変換体を備えたものである。ま
た、前記記録ヘッド２は、前記電気熱変換体によって印
加される熱エネルギーにより生じる膜沸騰による気泡の
成長、収縮によって生じる圧力変化を利用して、吐出口
よりインクを吐出させ、記録を行なうものである。

【００１９】図２は、前記記録ヘッド２のインク吐出部
の構造を模式的に示す部分斜視図である。図２におい
て、被記録材７と所定の隙間（例えば、約０．５〜２．
０ミリ程度）をおいて対面する吐出口形成面５１には、
所定のピッチで複数の吐出口５２が形成され、共通液室
５３と各吐出口５２とを連通する各液路５４の壁面に沿
ってインク吐出用のエネルギーを発生するための電気熱
変換体（発熱抵抗体など）５５が配設されている。本例
においては、記録ヘッド２は、前記吐出口５２がキャリ
ッジ３の走査方向と交叉する方向に並ぶような位置関係
で、該キャリッジ３に搭載されている。こうして、画像
信号または吐出信号に基づいて対応する電気熱変換体５
５を駆動（通電）して、液路５４内のインクを膜沸騰さ
せ、その時に発生する圧力によって吐出口５２からイン
クを吐出させる記録ヘッド２が構成されている。

【００２０】以上のようなインクジェット記録装置にお
いては、記録ヘッド２がキャップ１６により密閉されず
に出荷されたり輸送された場合には、インクカートリッ
ジ１２との水頭差により取り扱い時に吐出口５２からイ
ンクが漏出することがあり、また、吐出口５２内のイン
クの増粘や固着あるいは吐出口形成面への塵埃等の付着
によって、その後の記録時に吐出不良が発生することが
あり、これらを防止することが要請される。

【００２１】図３は上記吐出不良の防止および解消を図
るための回復機構１１の構成を示す平面図である。図３
において、回復機構１１の前面には前記キャップ１６Ａ
〜１６Ｄが前進後退可能に装着され、回復機構１１の内
部には回復ポンプ２１が設けられている。この回復ポン
プは、キャッピング状態において吐出口５２からインク
を吸引したり、キャップ１６内の廃インクを吸引排出す
るためのものである。前記キャップ１６のキャッピング
動作（前進後退）および前記回復ポンプ２１の吸引動作
は、回復用のモーター２２および該モーターで駆動され
る回転カム板２３によって制御駆動される。前記回転カ
ム板２３には、キャップ１６を駆動するための円周カム
２４と前記ポンプ２１を駆動するための突起カム２５が
形成されている。キャップ１６は、前記円周カム２４の
変位により、回動レバー２６を介して前進後退駆動され
る。前記ポンプ２１は、前記突起カム２５により、ポン
プレバー２７を介して駆動される。

【００２２】また、回復機構１１には、前記円周カム２
４の回転位置からキャップ１６のキャッピング状態（開
放、密閉）を検知するためのスイッチ２８が設けられて
おり、該スイッチ２８のオン・オフによりキャッピング
状態を判別するように構成されている。なお、キャップ
１６の開閉状態を検知する手段としては、他に、キャッ
プ開スイッチを設け、該スイッチの開閉動作と回復機構
１１のモーター（パルスモーター）２２のステップ数か
ら、キャッピング（密閉状態）を検知する手段、あるい
は、キャリッジ３の動きでレバー等を押圧することによ
り記録ヘッド２をキャッピングするように構成し、該キ
ャリッジ３の位置によってキャッピング状態を検知する
手段などを使用してもよい。

【００２３】図４は、キャップ１６の開閉を制御すると
ともに該キャップの開閉状態を表示するための構成例を
示すブロック図である。図４において、記録装置１のコ
ントローラ１５にはＣＰＵ１５Ａ、ＲＯＭ１５Ｂおよび
ＲＡＭ１５Ｃが設けられており、このコントローラ１５
はインターフェイス１７を介してコンピューター等のホ
スト９に接続されている。また、前記コントローラ１５
には前記パネル１０とメカ駆動系およびセンサ系１８が
接続されており、相互に信号を遣り取りできるように構
成されている。さらに、前記コントローラ１５はヘッド
駆動系およびセンサ系１９を介して前記各記録ヘッド２
Ａ〜２Ｄに接続されており、相互に信号を遣り取りしな
がら各記録ヘッド２Ａ〜２Ｄの記録動作を制御するよう
に構成されている。

【００２４】前記パネル１０には、コントローラ１５に
よって制御されるキャッピング状態が表示される。すな
わち、オンライン状態では、ホスト９からコントローラ
１５にデータが転送されてくると、該コントローラ１５
によって、記録指令を発生し、キャリッジ３や紙送り
（搬送）機構等の駆動並びに各動作部のセンサー検知が
実行され、その制御による現在の動作状態がパネル１０
に表示される。このオンライン状態では、ホスト９から
のデータ転送が任意の時期に行なわれるので、データ転
送に応じて即座に記録動作を実行し得るように制御する
ことが要請される。そのため、キャッピング等の直接記
録に動作に関与しない機構はなるべく動作させずに、一
定時間以上にわたって記録指令が来ない場合に、記録ヘ
ッド２の吐出安定のためのキャッピング動作を実行する
ように構成されている。

【００２５】キャップ１６が開状態にあるか閉状態にあ
るかを判別し難い場合、あるいは、キャリッジ３の動作
が停止してキャップ１６が閉状態にならない場合には、
使用者自身ではパワーオフのタイミングを正確に判断で
きないので、キャップ１６が密閉した状態とそれ以外の
動作状態とを表示器で表示し、確実に認識できるように
構成することが要請される。

【００２６】一方、オフラインの状態でも、キャリッジ
３を停止させて、吐出安定のためにキャップ１６内にイ
ンクを予備吐出したり、キャリッジの一定動作ごとに、
キャップ１６内を大気に連通させたり、キャップ１６内
のインクを空吸引する動作を行なうことがあり、そのよ
うな場合に、使用者にキャップ１６が開放しているか密
閉しているかを認識させる必要がある。

【００２７】また、記録動作中においても、記録ヘッド
２の吐出口形成面５１のワイピング（拭き取り清掃）や
吐出口５２からのダミー吐出のために、キャリッジ３を
記録領域外に退避させることがあり、そのような状態で
記録装置の電源を切断することを防止するためにも、キ
ャップ１６の開状態と閉状態を使用者に正確に認識させ
る必要がある。

【００２８】そこで、本発明を適用したインクジェット
記録装置のキャッピング解除状態報知方法においては、
キャップ１６のインク吐出部に対する状態を密閉状態か
ら開放状態に移行させるためのキャッピング解除動作の
開始を、前記開放状態に移行完了する前に報知するよう
に構成される。また、キャップ１６が開放状態である時
にはその状態を表示器によって認識させ、さらに、キャ
ップ１６の状態が密閉から開放に移行する直前にキャッ
プ機構が開放状態になることを認識させるように構成さ
れる。また、記録ヘッド２の回復動作またはキャップ１
６内のインクの吸引動作などにおいても、キャップ１６
の状態が開放から密閉に移行することを表示器等で認識
させるように構成される。さらに、ホスト９からの記録
指令によりキャップ１６を開放して記録動作に移行する
直前にも、キャップ機構が開放状態になることを表示器
によって認識させるように構成される。

【００２９】図５および図６は、それぞれ、前述の各状
態において、キャップ１６の開閉状態およびその間の移
行状態を表示するための表示器１０の構成および動作を
示す模式図であり、図５はセグメント表示を用いる場合
を、図６は液晶表示を用いる場合を示す。

【００３０】図５において、パネル１０にセグメント表
示器３１が設けられており、キャップ１６が開状態の時
には（Ａ）に示すように表示の一部を点滅または点灯さ
せ、キャップ１６が確実に閉状態となった時には（Ｂ）
に示すように“Ｃ”を点灯表示することにより、使用者
にキャップ１６の開閉状態を正確に認識させるように構
成されている。

【００３１】また、図６においては、パネル１０に液晶
表示器３２が設けられており、その桁表示の最下位桁等
を用いて、キャップ１６の開閉状態を簡易メッセージで
表示するように構成されている。図示の例では、キャッ
プ１６が開状態の時には（Ａ）に示すように“Ｏ”を点
滅表示し、キャップ１６が確実に閉状態となった時には
（Ｂ）に示すように“Ｃ”を点灯表示することにより、
使用者にキャップ１６の開閉状態を正確に認識させるよ
うに構成されている。なお、キャップ１６の開閉状態の
表示方法および表示内容は、図５および図６の例に限定
されるものではなく、その他の種々の態様で実行しても
よい。

【００３２】図７および図８は、それぞれ、キャップ１
６が閉状態から開状態へ移行している途中で記録装置の
電源を切断しないように、キャップ１６が開状態になる
ことを事前に使用者に知らせる場合の動作を例示するタ
イミングチャートであり、図７はオンライン状態で記録
動作が開始される場合を、図８は回復動作が開始される
場合を示す。

【００３３】図７においては、オンライン状態でホスト
９からのデータ受け付けを開始（ａ時点）すると、ま
ず、ｂ時点で表示器３１または３２にキャップ開状態を
表示させ、その後、ｃ時点で記録駆動系の動作を開始さ
せる。このような制御動作を採ることにより、記録駆動
系の動作開始後に記録装置の電源を切断することが防止
される。

【００３４】また、図８においては、ｄ時点で回復動作
の開始信号（自動回復指令）があると、まず、ｅ時点で
表示器３１または３２にキャップ開状態を表示させ、そ
の後、ｆ時点でキャップ１６の開放動作を含む回復動作
（自動回復駆動）の駆動が開始される。すなわち、タイ
マー管理または一定動作ごとに自動的に吐出安定のため
の回復動作を行なう場合には、キャップ１６が開放され
ることを事前（ｅ時点）に表示器３１または３２に表示
し、その後で回復動作の駆動を開始するように制御され
る。このような制御動作を採ることにより、使用者が事
前にキャップ開放を認識することができ、回復動作が開
始された後に記録装置の電源を切断すること、すなわ
ち、キャップ開放状態で使用者が電源を切断することを
確実に防止することができる。

【００３５】以上説明した実施例によれば、表示器３１
または３２において、常に記録ヘッド２のキャッピング
状態（キャップ状態が開放か密閉か）を表示するので、
使用者はキャッピング状態を認識した上で装置の電源切
断のタイミングを的確に判断することが可能となり、キ
ャップ閉状態で記録装置の電源を切断することが無くな
り、その後の記録ヘッド２のインク吐出の安定性および
輸送時のインク漏れを防止することが可能になった。

【００３６】なお、前述の実施例では、記録手段（記録
ヘッド）２をキャリッジ３に搭載し、被記録材７に沿っ
て主走査するシリアルタイプのインクジェット記録装置
を例に挙げて説明したが、本発明は、被記録材の記録幅
の全体または一部に対応するライン型の記録手段を用い
るラインタイプのインクジェット記録装置の場合にも、
同様に適用することができ、同様の効果を達成し得るも
のである。また、前述の実施例では、異なる色のインク
で記録する複数個の記録ヘッドを用いるカラー記録用の
インクジェット記録装置の場合を例に挙げて説明した
が、本発明は、１個の記録ヘッドを用いる単色記録用の
インクジェット記録装置、あるいは同一色彩で濃度の異
なるインクで記録する複数の記録ヘッドを用いる階調記
録用のインクジェット記録装置など、記録ヘッドの数に
も関係なく同様に適用することができ、同様の作用効果
を達成し得るものである。

【００３７】さらに、記録手段（記録ヘッド）２として
は、記録ヘッドとインクタンクを一体化したカートリッ
ジタイプのもの、あるいは記録ヘッドとインクタンクを
別体としこれらをインク供給チューブで接続する構成の
ものなど、記録手段およびインクタンクの構成がどのよ
うなものであっても、同様に適用することができ、同様
の効果を達成し得るものである。

【００３８】なお、本発明は、インクジェット記録装置
であれば、例えば、ピエゾ素子等の電気機械変換体等を
用いる記録手段（記録ヘッド）を使用するものに適用で
きるが、中でも、熱エネルギーを利用してインクを吐出
する方式のインクジェット記録装置において優れた効果
をもたらすものである。かかる方式によれば、記録の高
密度化、高精細化が達成できるからである。

【００３９】その代表的な構成や原理については、例え
ば、米国特許第４７２３１２９号明細書、同第４７４０
７９６号明細書に開示されている基本的な原理を用いて
行なうのが好ましい。この方式は、所謂オンデマンド
型、コンティニュアス型のいずれにも適用可能である
が、特に、オンデマンド型の場合には、液体（インク）
が保持されているシートや液路に対応して配置されてい
る電気熱変換体に、記録情報に対応していて核沸騰を越
える急速な温度上昇を与える少なくとも一つの駆動信号
を印加することによって、電気熱変換体に熱エネルギー
を発生せしめ、記録手段（記録ヘッド）の熱作用面に膜
沸騰させて、結果的にこの駆動信号に一対一対応し液体
（インク）内の気泡を形成出来るので有効である。

【００４０】この気泡の成長、収縮により吐出用開口を
介して液体（インク）を吐出させて、少なくとも一つの
滴を形成する。この駆動信号をパルス形状とすると、即
時適切に気泡の成長収縮が行なわれるので、特に応答性
に優れた液体（インク）の吐出が達成でき、より好まし
い。このパルス形状の駆動信号としては、米国特許第４
４６３３５９号明細書、同第４３４５２６２号明細書に
記載されているようなものが適している。尚、上記熱作
用面の温度上昇率に関する発明の米国特許第４３１３１
２４号明細書に記載されている条件を採用すると、更に
優れた記録を行なうことができる。

【００４１】記録ヘッドの構成としては、上述の各明細
書に開示されているような吐出口、液路、電気熱変換体
の組み合わせ構成（直線状液流路又は直角液流路）の他
に熱作用部が屈曲する領域に配置されている構成を開示
する米国特許第４５５８３３３号明細書、米国特許第４
４５９６００号明細書を用いた構成も本発明に含まれる
ものである。加えて、複数の電気熱変換体に対して、共
通するスリットを電気熱変換体の吐出部とする構成を開
示する特開昭５９年第１２３６７０号公報や熱エネルギ
ーの圧力波を吸収する開孔を吐出部に対応させる構成を
開示する特開昭５９年第１３８４６１号公報に基づいた
構成としても本発明は有効である。すなわち、記録ヘッ
ドの形態がどのようなものであっても、本発明によれ
ば、記録を確実に効率よく行なうことができるようにな
るからである。

【００４２】さらに、記録装置が記録できる被記録材
（記録媒体）の最大幅に対応した長さを有するフルライ
ンタイプの記録ヘッドに対しても、本発明は有効に適用
できる。そのような記録ヘッドとしては、複数記録ヘッ
ドの組み合わせによってその長さを満たす構成や、一体
的に形成された１個の記録ヘッドとしての構成のいずれ
でもよい。加えて、上例のようなシリアルタイプのもの
でも、装置本体に固定された記録ヘッド、あるいは装置
本体に装着されることで装置本体との電気的な接続や装
置本体からのインクの供給が可能になる交換自在のチッ
プタイプの記録ヘッド、あるいは記録ヘッド自体に一体
的にインクタンクが設けられたカートリッジタイプの記
録ヘッドを用いた場合にも本発明は有効である。

【００４３】また、本発明に記録装置の構成として設け
られる、記録ヘッドに対しての回復手段、予備的な補助
手段等を付加することは本発明の効果を一層安定できる
ので好ましいものである。これらを具体的に挙げれば、
記録ヘッドに対しての、キャッピング手段、クリーニン
グ手段、加圧或は吸引手段、電気熱変換体或はこれとは
別の加熱素子或はこれらの組み合わせによる予備加熱手
段、記録とは別の吐出を行なう予備吐出モードを行なう
ことも安定した記録を行なうために有効である。

【００４４】また、搭載される記録ヘッドの種類ないし
個数についても、例えば、単色のインクに対応して１個
のみが設けられたものの他、記録色や濃度を異にする複
数のインクに対応して複数個数設けられるものであって
もよい。すなわち、例えば、記録装置の記録モードとし
ては、黒色等の主流色のみの記録モードだけではなく、
記録ヘッドを一体的に構成するか複数個の組み合わせに
よるか、いずれでもよいが、異なる色の複色カラー又
は、混色によるフルカラーの少なくとも一つを備えた装
置にも本発明は極めて有効である。

【００４５】さらに加えて、以上説明した本発明実施例
においては、インクを液体として説明しているが、室温
やそれ以下で固化するインクであって、室温で軟化もし
くは液化するもの、あるいは、インクジェット方式で
は、インク自体を３０℃以上７０℃以下の範囲内で温度
調整を行ってインクの粘性を安定吐出範囲にあるように
温度制御するものが一般的であるから、使用記録信号付
与時にインクが液状をなすものであればよい。加えて、
積極的に熱エネルギーによる昇温をインクの固形状態か
ら液体状態への状態変化のエネルギーとして使用せしめ
ることで防止するか、または、インクの蒸発防止を目的
として放置状態で固化するインクを用いるかして、いず
れにしても、熱エネルギーの記録信号に応じた付与によ
ってインクが液化し、液状インクが吐出されるものや、
記録媒体に到達する時点ではすでに固化し始めるもの等
のような、熱エネルギーによって初めて液化する性質の
インクを使用する場合も本発明は適用可能である。

【００４６】本発明においては、上述した各インクに対
して最も有効なものは、上述した膜沸騰方式を実行する
ものである。

【００４７】さらに加えて、本発明によるインクジェッ
ト記録装置の形態としては、コンピュータ等の情報処理
機器の画像出力端末として用いられるものの他、リーダ
等と組み合わせた複写装置、さらには送受信機能を有す
るファクシミリ装置の形態を採るもの等であってもよ
い。

【００４８】

【発明の効果】以上の説明から明らかなごとく、請求項
１の発明によれば、被記録材へインクを吐出する記録手
段のインク吐出部へのキャップによる密閉と開放とを行
うインクジェット記録装置のキャッピング解除状態報知
方法において、前記キャップの前記インク吐出部に対す
る状態を密閉状態から開放状態に移行させるためのキャ
ッピング解除動作の開始を、前記開放状態に移行完了す
る前に報知する構成としたので、装置がキャッピング解
除動作を開始したことを使用者は認識することができ、
キャッピング解除動作中の装置の電源を切ってしまうと
いう有害事態の発生を防止することができ、キャップと
記録ヘッドが適切な形態で接触していないことによるキ
ャップ等の変形、あるいはインク漏洩や吐出口の乾燥に
よる吐出不良の発生等をより確実に防止することができ
るインクジェット記録装置のキャッピング解除状態報知
方法が提供される。

【００４９】請求項４の発明によれば、被記録材へイン
クを吐出する記録手段のインク吐出部へのキャップによ
る密閉と開放とを行うインクジェット記録装置のキャッ
ピング解除状態報知方法において、前記キャップの前記
インク吐出部に対する状態を密閉状態から開放状態に移
行させるためのキャッピング解除動作の開始を、前記開
放状態に移行完了する前に報知する第１の報知の実行
と、前記キャッピング解除動作の完了に伴って前記開放
状態にあることを報知する第２の報知の実行と、を行う
構成としたので、装置がキャッピング解除動作を開始し
たことを使用者は認識することができ、キャッピング解
除動作中の装置の電源を切ってしまうという有害事態の
発生を防止することができ、キャップと記録ヘッドが適
切な形態で接触していないことによるキャップ等の変
形、あるいはインク漏洩や吐出口の乾燥による吐出不良
の発生等をより確実に防止することができるインクジェ
ット記録装置のキャッピング解除状態報知方法が提供さ
れる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明を適用したインクジェット記録装置の一
実施例の要部構成を示す斜視図である。

【図２】図１中に示す記録ヘッドのインク吐出部の構造
を模式的に示す部分斜視図である。

【図３】図１中に示す回復機構の構成を示す部分拡大平
面図である。

【図４】本発明を適用したインクジェット記録装置の制
御系の要部構成例を示すブロック図である。

【図５】本発明を適用したインクジェット記録装置のパ
ネル上の表示器の表示動作を示す模式図である。

【図６】本発明を適用したインクジェット記録装置のパ
ネル上の表示器の表示動作の他の態様を示す模式図であ
る。

【図７】本発明を適用したインクジェット記録装置の記
録動作開始時の動作を示すタイミングチャートである。

【図８】本発明を適用したインクジェット記録装置の回
復動作開始時の動作を示すタイミングチャートである。

【符号の説明】

１ インクジェット記録装置 ２ 記録手段（記録ヘッド） ３ キャリッジ ５ ガイドレール ６ プラテンローラ ７ 被記録材 ８ 制御部 ９ ホスト １０ パネル １１ 回復機構 １５ コントローラ １６ キャップ １８ メカ駆動系およびセンサ系 ２１ 回復機構のポンプ ２２ 回復機構のモーター ２３ 回転カム板 ２８ キャップ状態検知用のスイッチ ３１ セグメント表示器 ３２ 液晶表示器 ５１ 吐出口形成面 ５２ 吐出口 ５５ 電気熱変換体

フロントページの続き (56)参考文献 特開 平１−285353（ＪＰ，Ａ) 特開 平３−169560（ＪＰ，Ａ) 特開 昭59−224355（ＪＰ，Ａ) 特開 昭63−224960（ＪＰ，Ａ) 実開 昭57−90839（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭61−85455（ＪＰ，Ｕ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) B41J 2/165

Claims (6)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 被記録材へインクを吐出する記録手段
   のインク吐出部へのキャップによる密閉と開放とを行う
   インクジェット記録装置のキャッピング解除状態報知方
   法において、 前記キャップの前記インク吐出部に対する状態を密閉状
   態から開放状態に移行させるためのキャッピング解除動
   作の開始を、前記開放状態に移行完了する前に報知する
   ことを特徴とするキャッピング解除状態報知方法。
2. 【請求項２】 前記記録手段が、インク吐出用の熱エ
   ネルギーを発生するための電気熱変換体を備えているイ
   ンクジェット記録手段であることを特徴とする請求項１
   のインクジェット記録装置のキャッピング解除状態報知
   方法。
3. 【請求項３】 前記記録手段が、前記電気熱変換体に
   よって印加される熱エネルギーによりインクに生じる膜
   沸騰を利用して、吐出口よりインクを吐出させることを
   特徴とする請求項２のインクジェット記録装置のキャッ
   ピング解除状態報知方法。
4. 【請求項４】 被記録材へインクを吐出する記録手段
   のインク吐出部へのキャップによる密閉と開放とを行う
   インクジェット記録装置のキャッピング解除状態報知方
   法において、 前記キャップの前記インク吐出部に対する状態を密閉状
   態から開放状態に移行させるためのキャッピング解除動
   作の開始を、前記開放状態に移行完了する前に報知する
   第１の報知の実行と、 前記キャッピング解除動作の完了に伴って前記開放状態
   にあることを報知する第２の報知の実行と、 を行うことを特徴とするキャッピング解除状態報知方
   法。
5. 【請求項５】 前記記録手段が、インク吐出用の熱エ
   ネルギーを発生するための電気熱変換体を備えているイ
   ンクジェット記録手段であることを特徴とする請求項４
   のインクジェット記録装置のキャッピング解除状態報知
   方法。
6. 【請求項６】 前記記録手段が、前記電気熱変換体に
   よって印加される熱エネルギーによりインクに生じる膜
   沸騰を利用して、吐出口よりインクを吐出させることを
   特徴とする請求項５のインクジェット記録装置のキャッ
   ピング解除状態報知方法。