JP3013573B2 - 渦流室式ディーゼル機関の燃焼室 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、渦流室式ディーゼル
機関の燃焼室の改良、特にピストン側のキャビティ構造
の改良に関する。

【０００２】

【従来の技術】渦流室式ディーゼル機関においては、ピ
ストン頂面に、噴口下方からピストン中心に向けて延び
た溝状のトレンチ部を設けるとともに、該トレンチ部の
先端に一対の大キャビティ部を連続させてなる所謂クロ
ーバーリーフ型のキャビティを凹設した構成（例えば実
開昭６３−７９４３５号公報）が一般的であるが、この
種のキャビティ構造では、噴口からそのままトレンチ部
に沿って直進しようとする噴流の流れが強すぎるため、
大キャビティ部を乗り越えてシリンダボアに衝突し消炎
する火炎の割合が比較的多く、かつ主燃焼室の広い領域
に火炎が拡散しにくい。

【０００３】そこで、本出願人は、先に、特開平１−２
０００１２号公報等において、ピストン頂面に、噴口か
らの噴流の中心線を挟んで略円形の一対の大キャビティ
部を８の字状に連続して凹設するとともに、上記中心線
上でかつ噴口寄りに分散台を島状に***させ、かつこの
分散台の手前側の両側に、上記大キャビティ部と連通す
る側方キャビティ部を形成してなる燃焼室構造を提案し
ている。

【０００４】このものでは、渦流室から初期に噴出した
噴流が分散台に衝突して側方キャビティ部に拡散すると
ともに、この衝突により直進速度成分を弱められた一部
のガスが分散台を乗り越えて大キャビティ部内に流入
し、ここで旋回流を生起させる。また、ピストンの下降
に伴い、噴流の多くは、分散台を乗り越えて大キャビテ
ィ部内に流入するが、この段階では、その直進速度成分
が弱いため、やはり、大キャビティ部内周に沿って旋回
流を生起させる。従って、主燃焼室内での空気利用率を
良好に得ることができる。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】上記のように噴流の進
路を塞ぐような形で分散台を設けた燃焼室構造において
は、側方キャビティ部に広く噴流が拡散する反面、大キ
ャビティ部内に生じる旋回流が必ずしも十分に強いもの
とならず、大キャビティ部付近の空気利用率を十分に高
めることができない。従って、未燃燃料やスモークの排
出量の抑制等の点で更に改善の余地があった。

【０００６】

【課題を解決するための手段】この発明は、主燃焼室の
周辺部に開口し、かつ渦流室からの噴流が主燃焼室の中
心に向かうように傾斜した噴口と、ピストン頂面に凹設
され、かつ上記噴流の中心線を挟んで左右にそれぞれ略
円形に広がるとともに、中央部で互いに連続した一対の
大キャビティ部と、上記噴口の開口幅よりも狭くかつ上
記大キャビティ部よりも深い溝状をなし、噴口下方から
上記噴流中心線に沿って延設されるとともに、先端側が
徐々に浅く形成され、かつ二股状に分岐した先端部が各
大キャビティ部に周方向から接続された案内溝と、上記
大キャビティ部の噴口側の外殻の一部を形成し、かつ上
記案内溝を両側から挟むように***した一対の分散台
と、上記大キャビティ部と略同一の深さに凹設され、か
つ噴口下方付近から上記分散台の側方を通って大キャビ
ティ部に連続した通路部と、一対の大キャビティ部の接
続部に、その外殻の一部として形成され、かつ噴口に向
かって延びた対向壁部とを備えたことを特徴としてい
る。

【０００７】

【作用】圧縮上死点付近で渦流室から噴口を通して噴出
した燃焼ガスはピストン中心へ向かって直進しようとす
る。この噴流の一部は分散台に衝突し、周囲に広く分散
する。また噴流の一部は、案内溝に沿って直進し、かつ
二股状に分岐した先端部から左右の大キャビティ部内に
周方向から流入する。これによって大キャビティ部内に
強い旋回流が生起され、その付近の空気が有効に利用さ
れる。そして、分散台に衝突して分散した噴流は、通路
部を通して上記の旋回流に合流し、大キャビティ部内で
のガス流動を一層活発化させる。

【０００８】

【実施例】以下、この発明の一実施例を図面に基づいて
詳細に説明する。

【０００９】図１および図２は、この発明の第１実施例
を示すもので、１がシリンダブロック、２がシリンダヘ
ッド、３がピストンを示している。シリンダボア４の上
面を覆うシリンダヘッド２下面は平坦面に形成されてお
り、ピストン３頂面との間に主燃焼室５が形成されてい
る。

【００１０】渦流室６は、シリンダヘッド２の側部に沿
って位置し、かつ該渦流室６から延びた噴口７が主燃焼
室５の周辺部に開口している。この噴口７は幅方向がや
や広くなった偏平な通路断面を有し、かつ渦流室６から
の噴流が主燃焼室５の中心に向かうように傾斜してい
る。図１には、上記の噴流のピストン３平面上における
中心線を符号Ｌにて示してある。

【００１１】主燃焼室５を画成するピストン３の頂面に
は、ピストン３中央部付近に、略円形をなす一対の大キ
ャビティ部８が一定の深さで凹設されている。この大キ
ャビティ部８は、上記中心線Ｌを挟んで左右に広がって
おり、全体として８の字状をなすとともに、中心線Ｌに
沿った中央部分が互いに連続して一体となっている。そ
して、両者の接続部となる中心線Ｌ上の噴口７と反対側
の外殻は、噴口７に向かってピストン３中心付近まで舌
片状に延びており、両大キャビティ部８を仕切る対向壁
部９を形成している。尚、上記大キャビティ部８は、吸
排気弁のバルブリセスを兼ねている。

【００１２】上記大キャビティ部８の噴口７寄りの位置
には、ピストン３頂面と同一の高さまで島状に***した
一対の分散台１０が設けられている。この分散台１０
は、上記噴流中心線Ｌを中心として対称に配置されてい
るもので、大キャビティ部８側の円弧形の壁面１０ａが
大キャビティ部８の外殻の一部を形成しているととも
に、噴口７側の壁面１０ｂが噴口７の開口前縁に略沿っ
て直線状をなしている。更に、左右両側の壁面１０ｃ
は、各大キャビティ部８の中心側へ向かうように傾斜し
ている。

【００１３】そして、上記の一対の分散台１０の周囲を
囲むように、大キャビティ部８と同一深さで通路部１１
が凹設されている。この通路部１１は、噴口７下方部分
がピストン３外周に沿うように緩い円弧形をなし、かつ
その両端部から各大キャビティ部８の中心側へ向かって
溝状に形成されている。つまり、分散台１０の側方を通
って大キャビティ部８に略半径方向から連続している。
尚、大キャビティ部８や通路部１１を形成する外殻の壁
面は、シリンダ３頂面に対し垂直面をなしている。

【００１４】また上記ピストン３頂面には、更に案内溝
１２が大キャビティ部８より深く形成されている。この
案内溝１２の基端１２ａは通路部１１の噴口７下方に位
置し、かつここから一対の分散台１０に挟まれるように
噴流中心線Ｌに沿って延びている。そして、ピストン３
の中心に近い先端部１２ｂが二股状に分岐していて、そ
れぞれ各大キャビティ部８に周方向から接続されてい
る。この案内溝１２は、噴口７の開口幅の略１／３程度
の幅を有し、かつ図２に示すように先端側部分が徐々に
浅くなって大キャビティ部８底面に滑らかに連続してい
る。

【００１５】次に上記実施例の構成における作用につい
て説明する。

【００１６】圧縮上死点前に渦流室６に噴射された燃料
は渦流室６内で着火，燃焼し、圧縮上死点付近で未燃燃
料を含む火炎となって噴口７から主燃焼室５側へ噴出す
る。この燃焼ガスの噴流は、基本的に噴流中心線Ｌに沿
って直進しようとするので、その一部は分散台１０に衝
突し、周囲に拡散する。これによって主燃焼室５側での
初期燃焼が速やかに開始する。

【００１７】また噴流の一部は、一対の分散台１０の間
を通る案内溝１２に沿って直進し、かつ二股状の先端部
１２ｂに沿って大キャビティ部８に周方向から流入す
る。また仮に案内溝１２を通ってそのまま直進しようと
した成分も、対向壁部９によって滑らかに左右に分流さ
れる。従って、図１に矢印ａで示すように、各大キャビ
ティ部８内に非常に強い旋回流が生起される。これによ
り、大キャビティ部８周囲の空気が広く取り込まれ、速
やかに燃焼が拡散していく。尚、一部の噴流は分散台１
０を乗り越えて直進するが、これも対向壁部９により各
大キャビティ部８に滑らかに案内される。

【００１８】ここで、上記のように噴流中心線Ｌに沿っ
て直進する噴流は、分散台１０によって制限されたもの
となるので、対向壁部９を乗り越えてシリンダボア４に
衝突し、消炎する火炎は少ない。つまり、大キャビティ
部８内での旋回流を強化しつつシリンダボア４への衝突
による消炎を抑制できる。

【００１９】また分散台１０に衝突して通路部１１に拡
散した一部の噴流は、該通路部１１を通して大キャビテ
ィ部８の旋回流に矢印ｂのように略半径方向から合流す
る。そのため、大キャビティ部８内の旋回流に乱れが生
じ、ガス流動が活発化して空気と燃料との混合が一層促
進される。

【００２０】従って、主燃焼室５内での空気利用率を一
層高めることができ、低負荷時における未燃燃料の排出
の抑制ならびに高負荷時におけるスモークの低減を達成
できる。

【００２１】次に、図３および図４はこの発明の第２実
施例を示している。この実施例は、ピストン３頂面の噴
口７側に、噴口７下方からピストン３周縁に沿って左右
に広がった側方キャビティ部１３を付加したものであ
る。この側方キャビティ部１３は、前述した第１実施例
の通路部１１を兼ねており、大キャビティ部８と同一の
深さを有し、かつ一対の分散台１０の左右両側で大キャ
ビティ部８と一体に連続している。そして、側方キャビ
ティ部１３の噴口７後方側の外殻１３ａはピストン３周
縁に沿った円弧形をなしている。また左右両側の外殻１
３ｂは、滑らかに湾曲してピストン３中心側へ向かうよ
うに斜めに延びており、側方キャビティ部１３から出る
噴流を大キャビティ部８で生起される旋回流の略接線方
向へ導くようになっている。尚、大キャビティ部８や案
内溝１２の構成は前述した第１実施例と基本的に同様で
ある。

【００２２】この第２実施例においては、分散台１０に
衝突した燃焼ガスが、図３に矢印ａで示すように側方キ
ャビティ部１３内に広く拡散するため、側方キャビティ
部１３付近の空気を一層有効に利用することができる。
そして、案内溝１２によって強化された大キャビティ部
８内の矢印ｂで示す旋回流に、側方キャビティ部１３へ
向かった噴流が矢印ｃで示すように略接線方向から合流
する。従って、大キャビティ部８内での乱れは比較的少
なくなるものの、大キャビティ部８内の旋回流を一層強
めることができる。

【００２３】次に、図５および図６はこの発明の第３実
施例を示している。この実施例は、大キャビティ部８の
底面に渦巻状の凹部１４をそれぞれ形成したものであっ
て、各凹部１４は、中心部が最も深く、かつそれぞれの
大キャビティ部８で生起される旋回流の順方向に沿って
徐々に深くなるように形成されている。つまり、徐々に
旋回半径が小さくなるように渦巻状の側壁面１４ａを有
している。

【００２４】従って、この実施例の構成では、燃焼の進
行に伴い噴口７から噴出する噴流の速度が徐々に遅くな
ったとしても、大キャビティ部８内で噴流が中心部に近
付くと上記側壁面１４ａによって旋回半径が小さく規制
されるため、十分な流速の旋回流を長期間確保すること
ができる。しかも、凹部１４内に存在した空気が旋回流
によって押し出され、拡散されるため、燃料と空気との
混合が一層促進される。

【００２５】

【発明の効果】以上の説明で明らかなように、この発明
に係る渦流室式ディーゼル機関の燃焼室によれば、分散
台に一部の噴流が衝突して広く拡散すると同時に、分散
台中央を通る案内溝に沿って噴流の一部が強い流れのま
ま大キャビティ部に周方向から導かれるので、大キャビ
ティ部内に強い旋回流を生起させることができる。つま
り、燃焼ガスの初期の広い拡散と大キャビティ部内での
強い旋回流とを両立させることができ、主燃焼室側での
空気利用率を一層高めることができる。従って、低負荷
時の未燃燃料の排出の抑制ならびに高負荷時のスモーク
の低減を達成できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明に係る燃焼室の第１実施例を示すピス
トン頂面の平面図。

【図２】図１のＡ−Ａ線に沿った燃焼室要部の断面図。

【図３】この発明に係る燃焼室の第２実施例を示すピス
トン頂面の平面図。

【図４】図３のＢ−Ｂ線に沿った燃焼室要部の断面図。

【図５】この発明に係る燃焼室の第３実施例を示すピス
トン頂面の平面図。

【図６】図５のＣ−Ｃ線に沿ったピストン頂部の断面
図。

【符号の説明】

３…ピストン ５…主燃焼室 ６…渦流室 ７…噴口 ８…大キャビティ部 ９…対向壁部 １０…分散台 １１…通路部 １２…案内溝 １３…側方キャビティ部（通路部） １４…凹部

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平３−43619（ＪＰ，Ａ) 特開 平１−200012（ＪＰ，Ａ) 実開 平１−118122（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭63−104634（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭63−100633（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭63−79435（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭58−8715（ＪＰ，Ｕ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) F02B 19/08 - 19/18 F02F 3/26 - 3/28

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 主燃焼室の周辺部に開口し、かつ渦流室
   からの噴流が主燃焼室の中心に向かうように傾斜した噴
   口と、ピストン頂面に凹設され、かつ上記噴流の中心線
   を挟んで左右にそれぞれ略円形に広がるとともに、中央
   部で互いに連続した一対の大キャビティ部と、上記噴口
   の開口幅よりも狭くかつ上記大キャビティ部よりも深い
   溝状をなし、噴口下方から上記噴流中心線に沿って延設
   されるとともに、先端側が徐々に浅く形成され、かつ二
   股状に分岐した先端部が各大キャビティ部に周方向から
   接続された案内溝と、上記大キャビティ部の噴口側の外
   殻の一部を形成し、かつ上記案内溝を両側から挟むよう
   に***した一対の分散台と、上記大キャビティ部と略同
   一の深さに凹設され、かつ噴口下方付近から上記分散台
   の側方を通って大キャビティ部に連続した通路部と、一
   対の大キャビティ部の接続部に、その外殻の一部として
   形成され、かつ噴口に向かって延びた対向壁部とを備え
   たことを特徴とする渦流室式ディーゼル機関の燃焼室。