JP3000504B2 - 液晶素子 - Google Patents

液晶素子

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JP3000504B2
JP3000504B2 JP26043293A JP26043293A JP3000504B2 JP 3000504 B2 JP3000504 B2 JP 3000504B2 JP 26043293 A JP26043293 A JP 26043293A JP 26043293 A JP26043293 A JP 26043293A JP 3000504 B2 JP3000504 B2 JP 3000504B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、液晶表示素子や液晶光
シャッタ等で用いる液晶素子に関し、更に詳しくは、自
発分極を有する強誘電性液晶を用いた素子に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、液晶は電気光学素子として種
々の分野で応用されている。現在実用化されている液晶
素子はほとんどが、例えばエム シャット(M.Sch
adt)とダブリュ ヘルフリッヒ(W.Helfri
ch)著“アプライド フィジックス レターズ”
(“Applied Physics Letter
s”)Vo.18,No.4(1971.2.15)
P.127〜128の“Voltage Depend
ent Optical Activity of a
Twisted Nematic Liquid Cr
ystal”に示されたTN(Twisted Nem
atic)型の液晶を用いたものである。
【0003】これらは、液晶の誘電的配列効果に基づい
ており、液晶分子の誘電異方性のために平均分子軸方向
が、加えられた電場により特定の方向に向く効果を利用
している。これらの素子の光学的な応答速度の限界はミ
リ秒であるといわれ、多くの応用のためには遅すぎる。
一方、大型平面ディスプレーへの応用では、価格,生産
性などを考え合わせると、単純マトリクス方式による駆
動が最も有力である。単純マトリクス方式においては、
走査電極群と信号電極群をマトリクス状に構成した電極
構成が採用され、その駆動のためには、走査電極群に順
次周期的にアドレス信号を選択印加し、信号電極群には
所定の情報信号をアドレス信号と同期させて並列的に選
択印加する時分割駆動方式が採用されている。
【0004】しかし、この様な駆動方式の素子に前述し
たTN型の液晶を採用すると、走査電極が選択され、信
号電極が選択されない領域、或いは走査電極が選択され
ず、信号電極が選択される領域(所謂“半選択点”)に
も有限に電界がかかってしまう。
【0005】選択点にかかる電圧と、半選択点にかかる
電圧の差が充分に大きく、液晶分子を電界に垂直に配列
させるのに要する電圧閾値がこの中間の電圧値に設定さ
れるならば、表示素子は正常に動作するわけであるが、
走査線数(N)を増加して行なった場合、画面全体(1
フレーム)を走査する間に一つの選択点に有効な電界が
かかっている時間(duty比)が1/Nの割合で減少
してしまう。
【0006】このために、繰り返し走査を行なった場合
の選択点と非選択点にかかる実効値としての電圧差は、
走査線数が増えれば増える程小さくなり、結果的には画
像コントラストの低下やクロストークが避け難い欠点と
なっている。
【0007】この様な現象は、双安定性を有さない液晶
(電極面に対し、液晶分子が水平に配向しているのが安
定状態であり、電界が有効に印加されている間のみ垂直
に配向する)を時間的蓄積効果を利用して駆動する(即
ち、繰り返し走査する)ときに生ずる本質的には避け難
い問題点である。
【0008】この点を改良するために、電圧平均化法、
2周波駆動法や、多重マトリクス法等が既に提案されて
いるが、いずれの方法でも不充分であり、表示素子の大
画面化や高密度化は走査線数が充分に増やせないことに
よって頭打ちになっているのが現状である。
【0009】このような従来型の液晶素子の欠点を改善
するものとして、双安定性を有する液晶素子の使用がク
ラーク(Clark)及びラガーウォル(Lagerw
all)により提案されている(特開昭56−1072
16号公報、米国特許第4,367,924号明細書
等)。
【0010】双安定性液晶としては、一般にカイラルス
メクティックC相(SmC* )又はH相(SmH* )を
有する強誘電性液晶が用いられる。
【0011】この強誘電性液晶は電界に対して第1の光
学的安定状態と第2の光学的安定状態からなる双安定状
態を有し、従って前述のTN型の液晶で用いられた光学
変調素子とは異なり、例えば一方の電界ベクトルに対し
て第1の光学的安定状態に液晶が配向し、他方の電界ベ
クトルに対しては第2の光学的安定状態に液晶が配向さ
れている。また、この型の液晶は、加えられる電界に応
答して、上記2つの安定状態のいずれかを採り、且つ電
界の印加のないときはその状態を維持する性質(双安定
性)を有する。
【0012】以上の様な双安定性を有する特徴に加え
て、強誘電性液晶は高速応答性であるという優れた特徴
を持つ。それは強誘電性液晶の持つ自発分極と印加電場
が直接作用して配向状態の転移を誘起するためであり、
誘電率異方性と電場の作用による応答速度より3〜4オ
ーダー速い。
【0013】このように強誘電性液晶は極めて優れた特
性を潜在的に有しており、このような性質を利用するこ
とにより、上述した従来のTN型素子の問題点の多くに
対して、かなり本質的な改善が得られる。特に、高速光
学光シャッターや、高密度、大画面ディスプレーへの応
用が期待される。
【0014】この強誘電性液晶層を一対の基板間に挟持
した素子で前述した様な単純マトリクス表示装置とした
場合では、例えば特開昭59−193426号公報、特
開昭59−193427号公報、特開昭60−1560
46号公報、特開昭60−156047号公報などに開
示された駆動法を適用することができる。
【0015】図5は、駆動法の波形図の一例である。ま
た、図6は、マトリクス電極を配置した強誘電性液晶パ
ネルの一例の平面図である。図6の液晶パネル51に
は、走査電極群52の走査線と情報電極群53のデータ
線とが互いに交差して配線され、その交差部の走査線と
データ線との間には強誘電性液晶が配置されている。
【0016】図5(A)中のSS は選択された走査線に
印加する選択走査波形を、SN は選択されていない非選
択走査波形を、IS は選択されたデータ線に印加する選
択情報波形(黒)を、IN は選択されていないデータ線
に印加する非選択情報信号(白)を表わしている。ま
た、図中(IS −SS )と(IN −SS )は選択された
走査線上の画素に印加する電圧波形で、電圧(IS −S
S )が印加された画素は黒の表示状態をとり、電圧(I
N −SS )が印加された画素は白の表示状態をとる。
【0017】図5(B)は図5(A)に示す駆動波形
で、図7に示す表示を行ったときの時系列波形である。
【0018】図5に示す駆動例では、選択された走査線
上の画素に印加される単一極性電圧の最小印加時間Δt
が書込み位相t2 の時間に相当し、1ラインクリヤt1
位相の時間が2Δtに設定されている。
【0019】さて、図5に示した駆動波形の各パラメー
タVS ,V1 ,Δtの値は使用する液晶材料のスイッチ
ング特性によって決定される。
【0020】図8は後述するバイアス比を一定に保った
まま駆動電圧(VS +V1 )を変化させた時の透過率T
の変化、即ちV−T特性を示したものである。ここでは
Δt=50μsec、バイアス比VI /(VI +VS
=1/3に固定されている。図8の正側は図5で示した
(IN −SS )、負側は(IS −SS )で示した波形が
印加される。
【0021】ここで、V1 ,V3 をそれぞれ実駆動閾値
電圧及びクロストーク電圧と呼ぶ。また、V2 <V1
3 の時ΔV=V3 −V1 を電圧マージンと呼び、マト
リクス駆動可能な電圧幅となる。V3 はFLC表示素子
駆動上、一般的に存在すると言ってよい。具体的には、
図5(A)(IN −SS )の波形におけるVB によるス
イッチングを起こす電圧値である。勿論、バイアス比を
大きくすることによりV3 の値を大きくすることは可能
であるが、バイアス比を増すことは情報信号の振幅を大
きくすることを意味し、画質的にはちらつきの増大、コ
ントラストの低下を招き好ましくない。
【0022】我々の検討ではバイアス比1/3〜1/4
程度が実用的であった。ところで、バイアス比を固定す
れば、電圧マージンΔVは液晶材料のスイッチング特性
に強く依存し、ΔVの大きい液晶材料がマトリクス駆動
上非常に有利であることは言うまでもない。
【0023】この様なある一定温度において、情報信号
の2通りの向きによって選択画素に「黒」及び「白」の
2状態を書き込むことが可能であり、非選択画素はその
「黒」又は「白」の状態を保持することが可能である印
加電圧の上下限の値及びその幅(駆動電圧マージンΔ
V)は、液晶材料間で差があり、特有なものである。ま
た、環境温度の変化によっても駆動マージンはズレてい
くため、実際の表示装置の場合、液晶材料や環境温度に
対して最適駆動電圧にしておく必要がある。
【0024】しかしながら、実用上この様なマトリクス
表示装置の表示面積を拡大していく場合、各画素におけ
る液晶の存在環境の差(具体的には温度や電極間のセル
ギャップの差)は当然大きくなり、駆動電圧マージンが
小さな液晶では表示エリア全体に良好な画像を得ること
が出来なくなる。
【0025】一般に、液晶の複屈折を利用した液晶素子
の場合、直交ニコル下における透過率は、下記(1)式
で表される。
【0026】 I/I0 =sin2 4θa sin2 (Δnd/λ)π (1) (1)式中、I0 は入射光強度、Iは透過光強度、θa
は以下で定義される見かけのチルト角、Δnは屈折率異
方性、dは液晶層の膜厚、そして、λは入射光の波長で
ある。前述の非らせん構造における見かけのチルト角θ
a は、第1と第2の配向状態でのねじれ配列した液晶分
子の平均分子軸方向の角度として現われることになる。
(1)式によれば、見かけのチルト角θa が22.5°
の角度の時最大の透過率となり、双安定性を実現する非
らせん構造での見かけのチルト角θa は22.5°にで
きる限り近いことが必要である。
【0027】しかしながら、これまで用いられてきた配
向方法、特にラビング処理したポリイミド膜による配向
方法を、前述のクラークとラガーウォルによって発表さ
れた双安定性を示す非らせん構造の強誘電性液晶に対し
て適用した場合には、下述の如き問題点を有していた。
【0028】即ち、従来のラビング処理したポリイミド
膜によって配向させて得られた非らせん構造の強誘電性
液晶での見かけのチルト角θa (2つの安定状態の分子
軸のなす角度の1/2)が強誘電性液晶でのチルト角
(図6に示す三角錐の頂角の1/2の角度Θ)と較べて
小さくなっていることが判明した。特に、従来のラビン
グ処理したポリイミド膜によって配向させて得た非らせ
ん構造の強誘電性液晶での見かけのチルト角θa は一般
に3°〜8°程度で、その時の透過率はせいぜい3〜5
%程度であった。
【0029】ところがその後、カイラルスメクティック
液晶の非らせん構造で大きな見かけのチルト角θa を生
じ、高コントラストな画像が表示されるディスプレーを
実現するために、以下のことが発見された。
【0030】即ち、カイラルスメクティック液晶と、こ
の液晶を間に保持して対向すると共に、その対向面には
それぞれカイラルスメクティック液晶に電圧を印加する
ための電極が形成され、且つ液晶を配向するための一軸
性配向軸が互いに所定の角度で交差した配向処理が施さ
れた一対の基板とを備えた液晶素子において、上記スメ
クティック液晶素子のプレチルト角をα、チルト角を
Θ、液晶層の傾斜角(液晶層と基板法線とのなす角)を
δとすれば、スメクティック液晶は、下記(2)式で表
わされる配向状態を有する液晶素子であって、且つ、該
配向状態における液晶が少なくとも2つの安定状態を示
し、それらの光学軸のなす角度の1/2である見かけの
チルト角θa と該カイラルスメクティック液晶のチルト
角Θとが下記(3)式の関係を有する液晶素子であれ
ば、高コントラストな画像が表示されるディスプレーが
実現できることが明らかとなった。
【0031】 Θ<α+δ 及び δ<α (2) Θ>θa >Θ/2 (3) 以下、このことについて概略を説明する。スメクティッ
ク液晶は一般に層構造を有するが、SmA相からSmC
相又はSmC* 相に転移すると、層間隔が縮むので、図
5に示すように、層31が上下基板の中央で折れ曲がっ
た構造(シェブロン構造)をとる。
【0032】折れ曲がる方向は、図2に示すように、高
温相からSmC* 相に転移した直後に現われる配向状態
(C1配向状態)の部分32における場合と、さらに温
度を下げた時にC1配向状態に混在して現われる配向状
態(C2配向状態)の部分33における場合の2つ有り
得る。さらに、特定の配向膜と液晶の組合せを用いる
と、上記のC1配向状態からC2配向状態への転移が起
こりにくく、液晶材料によっては全くC2配向状態が生
じない。特に高プレチルト配向膜を用い、Θ<α+δの
関係を満たしている時、C1配向のコントラストが非常
に高く、C2配向のコントラストが低い。このことによ
り、表示素子として高プレチルト配向膜を用い、画面全
体をC1配向状態に統一し、高コントラストの2状態を
白黒表示の2状態として用いれば、従来より品位の高い
ディスプレーができる。尚、プレチルトについては以下
で説明する。
【0033】上記のようにC2配向状態を生ぜずにC1
配向状態を実現するためには以下のような条件を満たす
ことが必要であると結論される。即ち、図3に示すよう
に、C1配向及びC2配向での基板近くのディレクタ
は、それぞれ図3(a)及び(b)に示すコーン41上
にある。よく知られているように、ラビングによって基
板界面の液晶分子は、基板に対してプレチルトと呼ばれ
る角度をなし、その方向はラビング方向(図3でいえば
矢印A方向)に向かって液晶分子が頭をもたげる(先端
が浮いた格好になる)向きである。以上のことにより、
液晶のチルト角Θ、プレチルト角α及び層傾斜角δの間
には、下記(4)式の関係が成り立っていなければなら
ない。
【0034】C1配向の時 Θ+δ>α C2配向の時 Θ−δ>α (4) 従って、上述のようにC2配向を生ぜず、C1配向を生
じさせるための条件は、下記(5)式で表わされる。
【0035】 Θ−δ<α つまり Θ<α+δ (5) さらに界面の分子が一方の位置から他方の位置へ電界に
よって移るスイッチングの際に受けるトルクの簡単な考
察により、界面分子のスイッチングが起こりやすい条件
として、下記(6)式が得られる。
【0036】 α>δ (6) よって、C1配向状態をより安定に形成させるには
(5)式に加えて(6)式の関係を満たすことが効果的
である。
【0037】(5)式及び(6)式の条件下でさらに実
験を進めた結果、液晶の見かけのチルト角θa も、
(5)式及び(6)式の条件を満たさない従来の場合の
3°〜8°程度から(5)式及び(6)式の条件を満た
す場合の8°〜16°程度にまで増大し、液晶のチルト
角Θとの間に下記(7)式の関係式が成り立つことが経
験的に得られた。
【0038】 Θ>θa >Θ/2 (7) 以上のように、(5),(6)及び(7)式の条件を満
足すれば、高コントラストな画像が表示されるディスプ
レーが実現できることが明らかとなった。
【0039】この点について更に説明を加える。(5)
式で表わされる配向状態にすると、C1配向状態におい
て4つの状態が存在する。
【0040】図4はC1配向の各状態における基板間の
各位置でのダイレクターの配置を示す模式図である。図
中の45〜48は各状態においてダイレクターをコーン
の底面に投影し、これを底面方向からみた図を示してお
り、45および46がスプレイ状態、47および48が
ユニフォーム状態(双安定状態)と考えられるダイレク
ターの配置である。同図から分かるとおり、ユニフォー
ムの2状態47と48においては、上下いずれかの液晶
分子の位置がスプレイ状態の位置と入れ替わっており、
ダイレクターが上下基板間でねじれていない。
【0041】ユニフォーム配向状態では(7)式の関係
式が成り立ち、液晶の見かけのチルト角θa が大きく、
高コントラストを実現できるものである。
【0042】また、C1ユニフォーム配向状態を安定に
形成し、良好な配向性を得るために上下基板のラビング
方向を1°〜25°(交差角)の範囲でずらしたクロス
ラビングも極めて効果がある。
【0043】
【発明が解決しようとする課題】実用上、ディスプレイ
としての使用温度範囲を5〜35℃程度とした場合、素
子周辺からの熱蓄積により、液晶素子自身の環境温度は
10〜50℃程度になる。通常の強誘電性液晶を用いた
ディスプレイでは、このすべての温度範囲で良好な画質
を保つことは実現されていないのが現状である。特に高
温度領域における駆動マージンの確保は大きな課題とな
っている。
【0044】室温付近の温度では、C1ユニフォーム配
向状態の高コントラストの良好な画像を実現できても、
高温域ではスプレイ配向状態の配向になることが多い。
このため、高温域では、駆動マージンの減少が大きく、
使用環境温度範囲内で良好な画像や駆動マージンを実現
できているとは言い難かった。
【0045】
【課題を解決するための手段及び作用】本発明者らは、
上記問題点を解決すべく鋭意検討した結果、高温におけ
る駆動マージンの減少について、液晶組成物のチルト角
(Θ)と層の傾斜角(δ)との関係について着目し、さ
らにチルト角(Θ)と層の傾斜角(δ)、自発分極(P
s)の関係について着目し、本発明に基づく素子構成に
おいてある条件を満たせば、高温において駆動マージン
の広い素子とすることができることを発見した。
【0046】即ち、本発明はカイラルスメクティック液
晶と、該液晶を挟持して対向すると共にその対向面にそ
れぞれ上記液晶に電圧を印加するための電極が形成さ
れ、且つ液晶を配向するための一軸性配向軸が互いに所
定の角度で交差又は平行の配向処理が施された一対の基
板とを備えた液晶素子において、液晶素子のプレチルト
角をα(度)、10℃から55℃の温度範囲での上記液
晶のチルト角をΘ(度)、液晶層の傾斜角をδ(度)と
すると、上記液晶は下記(I)式で表わされる配向状態
を有し、且つこの配向状態において少なくとも2つの安
定状態を示し、それらの光学軸のなす角度の1/2であ
る見かけのチルト角θa (度)とチルト角Θとが下記
(II)式の関係を満足し、 Θ<α+δ 及び δ<α (I) Θ>θa >Θ/2 (II) さらに、液晶組成物の自発分極の大きさをPs(nC/
cm2 )としたとき、55℃におけるPs,Θ,δが下
記(III)式及び(IV)式
【0047】
【数3】 の関係を満足することを特徴とする液晶素子を提供する
ものである。
【0048】上記本発明において、前記55℃における
Ps,Θ,δが下記(V)式及び(VI)式
【0049】
【数4】 の関係を満足することが好ましく、また、前記液晶は、
スメクティックA相からカイラルスメクティックC相へ
の相転移温度が60℃以上であることが好ましい。
【0050】前述した様に、高温域における駆動マージ
ンを減少させる大きな要因として、C1ユニフォーム配
向状態が不安定となり、スプレイ配向状態が現われやす
いことが挙げられる。
【0051】本発明者らは、シェブロン構造の明瞭性を
示す液晶層の傾斜角δと、電界による液晶分子のスイッ
チングの2つの安定状態位置の角度であるチルト角の大
きさΘ、および基板界面からの液晶分子に対する電気的
相互作用を表わす最も大きなパラメータである液晶組成
物の自発分極の大きさPsの3つの液晶物性パラメータ
の関係が、ある最適な範囲からはずれたとき、C1ユニ
フォーム配向状態が不安定になり、また高温域の駆動マ
ージンが大巾に減少する事実を見い出した。
【0052】即ち、本発明者らは、数多くの液晶組成
物、素子構成を組み合せた様々な液晶素子について高温
駆動マージンの測定等の実験をくり返した結果、前記
(I)式及び(II)式を満足すると共に、前記(II
I)式、より好ましくは(V)式の関係を満足し、更に
は前記(IV)式、より好ましくは(VI)式を満足す
ることにより、C1ユニフォーム配向状態を高温域にお
いても安定化でき、高温域における駆動マージンを十分
に確保することができることを見い出したのである。
【0053】本発明において、55℃における各パラメ
ータの関係を示した理由は、高温(35℃)使用環境下
では液晶素子自身の環境温度がほぼ50℃付近となるた
め、50℃付近で良好な画質と駆動マージンを保障する
ためには、この上限環境温度以上において良好な画質と
駆動マージンをもつことが必要になるためである。
【0054】このとき、55℃において駆動電圧マージ
ンが最低でも存在すること、さらに55℃で駆動電圧マ
ージンが3.4V以上あれば、50℃において良好な画
像を表示するのに十分な広い駆動マージンを確保できる
ことが判っている。
【0055】本発明においては、配向状態を有するため
の条件式のうちの一つとして、 δ<α 式(I) とあるようにプレチルト角αに対して一定の下限値を与
えている。
【0056】上記のような下限値より大きなαとするこ
とにより、前述したようにC1ユニフォーム配向の状態
が安定化されているわけであるが、高温状態における駆
動マージンの減少問題の一方で、マトリクス駆動時には
本来のC1ユニフォーム配向の中に微小な領域ではある
がスプレイ配向が現れてくることがある。
【0057】これを防止するための条件としては、画像
表示を行う全温度範囲において、下記(VII)式 Θ<α (VII) の条件を満たすことがあげられる。この条件からはずれ
るとき、すなわちΘがα以上の場合には、マトリクス駆
動時にC1スプレイ配向が混在してくる傾向にある。
【0058】また、これとは別の低温時(10℃程度)
の条件下においても、やはりマトリクス駆動時に良好な
画像を得ることのできるC1ユニフォーム配向以外の好
ましくない配向状態としてC2配向状態を呈する領域が
微かではあるが出現する場合がある。この現象により駆
動電圧や周波数などの駆動条件に対して、大きな影響が
みられるが、液晶材料のδがΘに比べてかなり小さいと
きにのみ現れるものであり、これを防止するための条件
として、低温(10℃程度)条件下においては、下記
(VIII)式 δ>Θ/3 (VIII) より好ましくは、(IX)式 δ>Θ/2 (IX) の条件をみたすことがあげられる。
【0059】図1は、本発明の液晶素子の一例を模式的
に示す断面図である。この液晶素子は、同図に示すよう
に、カイラルスメクティック液晶15と、この液晶15
を挟持して対向すると共にその対向面にはそれぞれカイ
ラルスメクティック液晶に電圧を印加するための電極1
2a,12bが形成され、且つ液晶を配向するための一
軸性配向軸が互いに所定の角度で交差した配向処理が施
された一対の基板11a,11bとを備える。
【0060】基板11aと11bはガラス板で構成さ
れ、それぞれIn23 やITO(Indium Ti
n Oxide)等の透明電極12aと12bで被覆さ
れている。そして、その上に200〜3000Å厚のS
iO2 膜、TiO2 膜、Ta25 膜等の絶縁膜13a
と13b、及びポリイミドで形成した50〜1000Å
厚の配向制御膜14aと14bとがそれぞれ積層されて
いる。ここでは、透明電極12aと12bが設けられた
ガラス基板11a,11b上に、酸化タンタルの薄膜を
スパッタ法で形成し、その上に下記構造式1で示される
日立化成(株)製のポリアミド酸LQ1802の1%N
MP溶液をスピンナで塗布し、270℃で1時間焼成す
ることにより構成している。
【0061】
【化1】
【0062】配向制御膜14aと14bは、配向方向が
下側の配向制御膜14bを基準として上側の配向制御膜
14aが上側の配向制御膜14aの方からみて左回りに
6°の交差角を有するように一軸性配向処理を行ない、
且つ同一向きになるようにラビング処理(矢印A方向)
してある。以下、ここではこのように交差角を定義す
る。基板11aと11bとの間の距離は、カイラルスメ
クティック液晶15のらせん配列構造の形成を抑制する
のに十分に小さい距離、例えば0.1〜3μmに設定さ
れる。ここでは、1.2〜1.3μmとしている。この
距離は、基板11aと11bとの間に配置したビーズス
ペーサ16(シリカビーズ、アルミナビーズ等)によっ
て保持されている。
【0063】カイラルスメクティック液晶15は、双安
定性配向状態を生じている。17a,17bは偏光板で
ある。
【0064】この液晶素子においては、前記(I)及び
(II)式が満足されている。
【0065】本発明に係る液晶のチルト角Θ(度)、層
の傾斜角δ(度)、プレチルト角α(度)、見かけのチ
ルト角θa (度)及びPs(nC/cm2 )は以下のよ
うにして測定した。
【0066】液晶のチルト角Θの測定 ±30V〜±50V、100HzのAC電圧をFLC素
子の上下基板間に印加しながら直交クロスニコル下、そ
の間に配置されたFLC素子を偏光板と平行に回転さ
せ、フォトマル(浜松フォトニクス(株)製)で光学応
答を検知しながら第1の消光位(透過率が最も低くなる
位置)と第2の消光位を捜す。この時の第1の消光位か
ら第2の消光位までの角度の1/2を液晶のチルト角Θ
とした。
【0067】見かけのチルト角θa の測定 液晶の閾値の単発パルスを印加した後、無電界下、且つ
直交クロスニコル下、その間に配置されたFLC素子を
偏光板と水平に回転させ第1の消光位を捜し、次に上記
の単発パルスと逆極性のパルスを印加した後、無電界
下、第2の消光位を捜す。この時の第1の消光位から第
2の消光位までの角度の1/2を見かけのチルト角θa
とした。
【0068】層の傾斜角δの測定 基本的にはクラークやラガーウォルによって発表された
方法(Japan Display‘86,Sep.3
0〜Oct.2,1986,pp.456〜458)或
いは大内らの方法(J.J.A.P.,27(5)(1
988)pp.725〜728)と同様の方法を用い
た。
【0069】測定装置は回転対陰極方式のMACサイエ
ンス社製X線回折装置を用い、銅のKα線を分析線とし
た。液晶セルには基板ガラスとしてX線の吸収を極力低
減するために80μm厚ガラス(コーニング社製商品名
マイクロシート)を用い、その他は通常のセル化工程を
そのまま使用した。液晶の層間隔の測定は、バルク液晶
を試料ガラス上に塗り、通常の粉末X線回折と同様に2
θ/θscanを行って求めた。
【0070】傾斜角δの測定は、前記と同じ80μm厚
ガラスをスペーサとして80μmギャップのセルを形成
し、電磁石中で基板と平行な方向に磁場をかけながら等
方相から徐冷し、水平配向処理を施したセルを用意し
た。これに前記層間隔を得た回折角2θにX線検出器を
合わせ、セルをθスキャンし、前記文献に示された方法
でδを算出した。尚、この測定法によるδの値は、セル
厚依存性をほぼ排除した液晶組成物固有のものである。
【0071】自発分極Psの測定 三角波法を用い測定した。
【0072】プレチルト角αの測定 J.J.A.P.19(1980)No.10,Sho
rt Notes 2013に記載されている方法(ク
リスタルローテーション法)に従って求めた。
【0073】つまり、ラビングした基板を平行かつ反対
方向に貼り合わせて、セルギャップ20μmのセルを作
成し、チッソ社製強誘電性液晶CS−1014に以下の
構造式で示される化合物を重量比で20%混合したもの
を標準液晶として封入し測定を行なった。
【0074】
【化2】
【0075】なお、この混合した液晶組成物は、10〜
55℃でSmA相を示す。
【0076】測定方法は、液晶セルを上下基板に垂直か
つ配向処理軸を含む面で回転させながら、回転軸と45
°の角度をなす偏光面をもつヘリウム・ネオンレーザ光
を回転軸に垂直な方向から照射して、その反対側で入射
偏光面と平行な透過軸をもつ偏向板を通してフォトダイ
オードで透過光強度を測定した。
【0077】干渉によってできた透過光強度の双曲線群
の中心となる角と液晶セルに垂直な線とのなす角度をφ
X とし下式に代入してプレチルト角αを求めた。
【0078】
【数5】 o :常光屈折率 ne :異常光屈折率
【0079】
【実施例】以下、本発明の実施例を説明する。
【0080】実施例1 下記構造をもつ液晶性化合物
【0081】
【化3】 を主な構成成分とした液晶組成物1−A〜1−Rを作成
した(但し1−CはMerck社製ZLI−3774で
ある)。この液晶組成物の相転移温度ならびに30℃,
55℃の自発分極(Ps),チルト角(Θ),層の傾斜
角(δ)を下記に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】次に、これらの液晶組成物の光学的な応答
を以下の手順で作成したセルを用いて、観察した。
【0085】透明電極の付いたガラス基板上に酸化タン
タルの薄膜をスパッタ法で形成し、その上に前述の構造
式1で示される日立化成(株)製のポリアミド酸LQ1
802の1%NMP溶液をスピンナで塗布し、270℃
で1時間焼成した。
【0086】次にこの基板をラビングし、同じ処理をし
たもう1枚の基板と8°の交差角(前述)を持ち、且つ
同方向になるように1.2〜1.3μm前後のギャップ
を保って貼り合せ、セルを作成した。該セルのプレチル
ト角αはクリスタルローテーション法により18°であ
った。
【0087】このセルに液晶組成物1−A〜1−Rを等
方性液体状態で注入し、等方相から20℃/hで25℃
まで徐冷することにより、強誘電性液晶素子を作成し
た。
【0088】この強誘電性液晶素子を用いて、30℃及
び55℃における配向性を観察すると共に、図9に示す
駆動波形(1/3バイアス比)で駆動マージンΔV(V
3 −V1 )を測定し駆動性を観察した(但し、ΔTはV
1=15Vになるように設定した)。
【0089】尚、図9のSN 、SN+1 、SN+2 は走査線
に印加した電圧波形を表しており、Iは代表的な情報線
に印加した電圧波形を表している。(SN −I)と(S
N+1−I)は、走査線SN ,SN+1 と情報線Iとの交差
部に印加された合成波形である。
【0090】以下に本実施例における測定結果を示す
が、ここにおける配向性とは、未駆動時のC1ユニフォ
ーム配向の配向を示し、駆動性とは、駆動(スイッチン
グ)時のC1ユニフォーム配向を維持した駆動性を示
す。
【0091】また、駆動電圧マージンのパラメータは、
(V3 −V1 )/(V3 +V1 )で定義し、この値が大
きい方が駆動電圧の余裕度が大きい事を示している。
【0092】配向性、および駆動性のランクは次のよう
にした。
【0093】配向性 ○ C1ユニフォーム配向 × C1ユニフォーム配向以外(スプレイ配向) 駆動性 ○ C1ユニフォーム配向のスイッチング × C1ユニフォーム配向以外(スプレイ配向)のスイ
ッチング
【0094】
【表3】
【0095】
【表4】
【0096】本実施例から明らかな様に、本発明中の条
件式 Θ×δ>70, Θ×δ/Ps>20 を満足する液晶組成物(1−A,1−B,1−D,1−
E,1−G,1−H,1−I,1−J,1−K,1−
L,1−O,1−P,1−Q)を含有する液晶素子は、
55℃において駆動電圧マージンが確保されている。
【0097】 さらに、Θ×δ>90, Θ×δ/Ps>25 を満足する液晶組成物(1−A,1−B,1−D,1−
G,1−H,1−I,1−J,1−K,1−L,1−
O)を含有する液晶素子は、55℃において駆動電圧マ
ージンが3.4V以上あり、十分に高温域での駆動マー
ジンが広い液晶素子とすることができる。
【0098】但し、液晶組成物1−Bを含有する液晶素
子は、55℃における駆動電圧マージンの広い液晶素子
であるが、30℃においてδ<αおよびΘ/2<θa
Θの条件を満たさなかったため、30℃でユニフォーム
配向にならなかった。また、液晶組成物1−Cを含有す
る液晶素子も、30℃においてδ<αおよびΘ/2<θ
a <Θの条件を満たさなかったため、30℃でユニフォ
ーム配向にならなかった。
【0099】実施例2 下記構造をもつ液晶性化合物
【0100】
【化4】 を主な構成成分とした液晶組成物2−Aを作成した。
【0101】この液晶組成物2−Aに下記液晶性化合物
【0102】
【化5】 を99:1,98:2,97:3,95:5,92:
8,90:10の比率で混合した液晶組成物2−B,2
−C,2−D,2−E,2−F,2−Gをそれぞれ作成
した。
【0103】この液晶組成物の相転移温度ならびに30
℃,55℃の自発分極(Ps),チルト角(Θ),層の
傾斜角(δ)を下記に示す。
【0104】
【表5】
【0105】次に、実施例1で使用した液晶組成物を用
いるかわりに、液晶組成物2−A,2−B,2−C,2
−D,2−E,2−F,2−Gをセル内に注入する以外
は全く実施例1と同様の方法で強誘電性液晶素子を作成
した。
【0106】次に、実施例1と同様にして30℃及び5
5℃における配向性及び駆動性を観察し、同様の評価を
行った。以下に本実施例における測定結果を示す。
【0107】
【表6】
【0108】本実施例から明らかな様に、Θ,δがほぼ
同じであっても、Psの値をだんだんと大きくしていく
場合、高温時(55℃)の駆動電圧マージンが減少して
いく。また、本発明中の条件式 Θ×δ>70, Θ×δ/Ps>20 を満足する液晶組成物(2−A,2−B,2−C,2−
D,2−E)を含有する液晶素子は、55℃において駆
動電圧マージンが確保されている。
【0109】 さらに、Θ×δ>90, Θ×δ/Ps>25 を満足する液晶組成物(2−A,2−B,2−C,2−
D)を含有する液晶素子は、55℃において駆動電圧マ
ージンが3.4V以上あり、十分に高温域での駆動マー
ジンの広い液晶素子とすることができる。
【0110】実施例3 下記構造をもつ液晶性化合物
【0111】
【化6】 を主な構成成分とした液晶組成物2−Aを作成した。
【0112】この液晶組成物2−Aに下記液晶性化合物
【0113】
【化7】 を98:2,97:3,94:6,91:9の比率で混
合した液晶組成物3−A,3−B,3−C,3−Dをそ
れぞれ作成した。
【0114】この液晶組成物の相転移温度ならびに30
℃,55℃の自発分極(Ps),チルト角(Θ),層の
傾斜角(δ)を下記に示す。
【0115】
【表7】
【0116】次に、実施例1で使用した液晶組成物を用
いるかわりに、液晶組成物2−A,3−A,3−B,3
−C,3−Dをセル内に注入する以外は全く実施例1と
同様の方法で強誘電性液晶素子を作成した。
【0117】次に、実施例1と同様にして30℃及び5
5℃における配向性及び駆動性を観察し、同様の評価を
行った。以下に本実施例の測定結果を示す。
【0118】
【表8】
【0119】本実施例から明らかな様に、Θ×δ/Ps
がほぼ同じであっても、Θ,δの値をだんだんと小さく
していく場合、高温時(55℃)の駆動電圧マージンが
減少していく。また、本発明中の条件式 Θ×δ>70, Θ×δ/Ps>20 を満足する液晶組成物(2−A,3−A,3−B,3−
C)を含有する液晶素子は、55℃において駆動電圧マ
ージンが確保されている。
【0120】 さらに、Θ×δ>90, Θ×δ/Ps>25 を満足する液晶組成物(2−A,3−A,3−B)を含
有する液晶素子は、55℃において駆動電圧マージンが
3.4V以上あり、十分に高温域での駆動マージンの広
い液晶素子とすることができる。
【0121】実施例4 実施例1で使用した液晶組成物1−A,1−B,1−
D,1−I,1−P,1−Q,1−Rを用いて、実施例
1と同様の方法にて、交差角(前述)が6°を持つよう
にセルを作成した。該セルのプレチルト角αはクリスタ
ルローテーション法により16°であった。
【0122】このセルに液晶組成物1−A,1−B,1
−D,1−I,1−P,1−Q,1−Rをセル内に注入
し、強誘電性液晶素子を作成した。
【0123】次に、実施例1と同様にして30℃及び5
5℃における配向性及び駆動性を観察し、同様の評価を
行った。以下に本実施例における測定結果を示す。
【0124】
【表9】
【0125】本実施例から明らかな様に、本発明に基づ
く素子構成を変えた場合においても、本発明中の条件式 Θ×δ>70, Θ×δ/Ps>20 を満足する液晶組成物(1−A,1−B,1−D,1−
I,1−P,1−Q)を含有する液晶素子は、55℃に
おいて駆動電圧マージンが確保されている。
【0126】 さらに、Θ×δ>90, Θ×δ/Ps>25 を満足する液晶組成物(1−A,1−B,1−D,1−
I)を含有する液晶素子は、55℃において駆動電圧マ
ージンが3.4V以上あり、十分に高温域での駆動マー
ジンの広い液晶素子とすることができる。
【0127】但し、液晶組成物1−Bを含有する液晶素
子は、55℃における駆動電圧マージンの広い液晶素子
であるが、30℃においてδ<αおよびΘ/2<θa
Θの条件を満たしていないため、30℃でユニフォーム
配向にならなかった。
【0128】実施例5 実施例1で使用した液晶組成物1−A〜1−Rを注入し
た強誘電性液晶素子を用い、30℃及び55℃における
配向性を観察すると共に、実施例1とは異なる図8に示
した駆動波形(1/3バイアス比)で駆動マージンΔV
(V3 −V1 )を測定した(但し、ΔTはVI =15V
になるように設定した。)。
【0129】尚、配向性及び駆動性の評価方法は実施例
1と同様である。
【0130】以下に本実施例における測定結果を示す。
【0131】
【表10】
【0132】
【表11】
【0133】本実施例から明らかな様に、駆動法の波形
を変えた場合においても、本発明中の条件式 Θ×δ>70, Θ×δ/Ps>20 を満足する液晶組成物(1−A,1−B,1−D,1−
E,1−G,1−H,1−I,1−J,1−K,1−
L,1−O,1−P,1−Q)を含有する液晶素子は、
55℃において駆動電圧マージンが確保されている。
【0134】 さらに、Θ×δ>90, Θ×δ/Ps>25 を満足する液晶組成物(1−A,1−B,1−D,1−
G,1−H,1−I,1−J,1−K,1−L,1−
O)を含有する液晶素子は、55℃において駆動電圧マ
ージンが3.4V以上あり、十分に高温域での駆動マー
ジンが広い液晶素子とすることができる。
【0135】但し、液晶組成物1−Bを含有する液晶素
子は、55℃における駆動電圧マージンの広い液晶素子
であるが、30℃においてδ<αおよびΘ/2<θa
Θの条件を満たさなかったため、30℃でユニフォーム
配向にならなかった。また、液晶組成物1−Cを含有す
る液晶素子も、30℃においてδ<αおよびΘ/2<θ
a <Θの条件を満たさなかったため、30℃でユニフォ
ーム配向にならなかった。
【0136】実施例6 実施例1,2及び3で用いた、液晶組成物1−D,1−
J,1−K,1−Q,2−A及び3−Dの10℃におけ
るチルト角Θ、層の傾斜角δ及び自発分極Psの値を下
記に示す。
【0137】
【表12】
【0138】これらの液晶組成物の注入された、実施例
1,2及び3で用いたものと全く同じセルを実施例1と
同様に図9に示す駆動波形を用いて順次マトリックス駆
動を行った。ただしバイアス比は1/3,駆動電圧V1
は15Vおよび20Vに固定し、ΔTを変えることでス
ピードの調節をし評価を行った。
【0139】結果を以下に示す。
【0140】
【表13】
【0141】上の表において、○,△,×の各記号は以
下の内容を表す。
【0142】C1ユニフォーム配向の2つの安定状態間
の良好なスイッチングが確保できるΔTの可変範囲の最
小値をΔTminとするとき、 ○:ΔTmin×1.5以下のΔTにおいてもC2配向
が出現しない △:ΔTminではC2配向が出現しないがΔTmin
×1.5のΔTで駆動するとC2配向が現れる ×:ΔTminでもC2配向が現れる
【0143】この表から明らかな様にδがΘ/3より大
きい液晶組成物は、10℃においてV1=15V駆動の
とき、C2配向が現れず良好なスイッチング特性が得ら
れるセルとなっている。
【0144】またδがΘ/2より大きい液晶組成物は、
1=20V駆動においてもC2配向が出現していな
い。
【0145】これに対して、δがΘ/3よりも小さな液
晶組成物(3−C)では、15V駆動においても、C2
配向が出現し、良好なスイッチングを防げている。
【0146】比較例1 実施例1で用いた液晶組成物1−B及び1−Cの45℃
におけるチルト角Θ、層の傾斜角δ及び自発分極PS
値を下記に示す。
【0147】
【表14】
【0148】実施例1と全く同じこれらの液晶の注入さ
れたセルを45℃において、その駆動性を観察したとこ
ろ、スプレイ配向領域がかなり現れてしまい、大きな駆
動マージンを得ることができなかった。これはΘがα
(18°)よりも大きくなっているためである。
【0149】
【発明の効果】以上説明した様に、本発明によれば、チ
ルト角(θ),液晶層の傾斜角(δ)、更には自発分極
(Ps)との関係を規定することにより、高温環境下で
の駆動マージンの減少を防止でき、使用環境温度範囲内
でC1ユニフォーム配向状態の高コントラストの良好な
画像を実現できると共に、広い駆動マージンを実現でき
ることにより、大画面表示装置とした場合にも表示エリ
ア全体に良好な画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の液晶表示の一例の断面概略図である。
【図2】C1及びC2の説明図である。
【図3】C1及びC2配向でのチルト角、プレチルト角
及び層の傾斜角間の関係を示す説明図である。
【図4】C1配向の各状態における基板間の各位置での
ダイレクターの配置を示す模式図である。
【図5】従来の技術の説明及び実施例5で用いた駆動法
の波形図である。
【図6】マトリクス電極を配置した液晶パネルの平面図
である。
【図7】図5(B)に示す時系列駆動波形で実際の駆動
を行ったときの表示パターンの模式図である。
【図8】駆動電圧を変化させた時の透過率の変化を表わ
す(V−T特性図)グラフである。
【図9】実施例中で使用した駆動法の波形図である。
【符号の説明】
11a,11b 基板 12a,12b 電極 13a,13b 絶縁膜 14a,14b 配向制御膜 15 カイラルスメクティック液晶 16 ビーズスペーサ 17a,17b 偏光板 31 シェブロン構造 32 C1配向 33 C2配向 41 コーン 45,46 スプレイ配向状態 47,48 ユニフォーム配向状態 51 液晶パネル 52 走査電極群 53 情報電極群
フロントページの続き (72)発明者 山田 修嗣 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キ ヤノン株式会社内 (72)発明者 水野 祐 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キ ヤノン株式会社内 (72)発明者 片桐 一春 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キ ヤノン株式会社内 (56)参考文献 特開 平4−317026(JP,A) 特開 平3−136020(JP,A) 特開 平1−225691(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G02F 1/1337

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 カイラルスメクティック液晶と、該液晶
    を挟持して対向すると共にその対向面にそれぞれ上記液
    晶に電圧を印加するための電極が形成され、且つ液晶を
    配向するための一軸性配向軸が互いに所定の角度で交差
    又は平行の配向処理が施された一対の基板とを備えた液
    晶素子において、液晶素子のプレチルト角をα(度)、
    10℃から55℃の温度範囲での上記液晶のチルト角を
    Θ(度)、液晶層の傾斜角をδ(度)とすると、上記液
    晶は下記(I)式で表わされる配向状態を有し、且つこ
    の配向状態において少なくとも2つの安定状態を示し、
    それらの光学軸のなす角度の1/2である見かけのチル
    ト角θa (度)とチルト角Θとが下記(II)式の関係
    を満足し、 Θ<α+δ 及び δ<α (I) Θ>θa >Θ/2 (II) さらに、液晶組成物の自発分極の大きさをPs(nC/
    cm2 )としたとき、55℃におけるPs,Θ,δが下
    記(III)式及び(IV)式 【数1】 の関係を満足することを特徴とする液晶素子。
  2. 【請求項2】 前記55℃におけるPs,Θ,δが、下
    記(V)式及び(VI)式 【数2】 の関係を満足することを特徴とする請求項1記載の液晶
    素子。
  3. 【請求項3】 前記液晶は、スメクティックA相からカ
    イラルスメクティックC相への相転移温度が60℃以上
    であることを特徴とする請求項1又は2記載の液晶素
    子。
  4. 【請求項4】 前記10℃から55℃の温度範囲でのチ
    ルト角Θが下記(VII)式 Θ<α (VII) の関係を満足することを特徴とする請求項1〜3いずれ
    かに記載の液晶素子。
  5. 【請求項5】 カイラルスメクティック液晶と、該液晶
    を挟持して対向すると共にその対向面にそれぞれ上記液
    晶に電圧を印加するための電極が形成され、且つ液晶を
    配向するための一軸性配向軸が互いに所定の角度で交差
    又は平行の配向処理が施された一対の基板とを備えた液
    晶素子において、液晶素子のプレチルト角をα(度)、
    10℃から55℃の温度範囲での上記液晶のチルト角を
    Θ(度)、液晶層の傾斜角をδ(度)とすると、上記液
    晶は下記(I)式で表わされる配向状態を有し、且つこ
    の配向状態において少なくとも2つの安定状態を示し、
    それらの光学軸のなす角度の1/2である見かけのチル
    ト角θa(度)とチルト角Θとが下記(II)式の関係
    を満足し、 Θ<α+δ 及び δ<α (I) Θ>θa>Θ/2 (II) さらに10℃におけるδ,Θが、下記(VIII)式 δ>Θ/3 (VIII) の関係を満足することを特徴とする液晶素子。
  6. 【請求項6】 カイラルスメクティック液晶と、該液晶
    を挟持して対向すると共にその対向面にそれぞれ上記液
    晶に電圧を印加するための電極が形成され、且つ液晶を
    配向するための一軸性配向軸が互いに所定の角度で交差
    又は平行の配向処理が施された一対の基板とを備えた液
    晶素子において、液晶素子のプレチルト角をα(度)、
    10℃から55℃の温度範囲での上記液晶のチルト角を
    Θ(度)、液晶層の傾斜角をδ(度)とすると、上記液
    晶は下記(I)式で表わされる配向状態を有し、且つこ
    の配向状態において少なくとも2つの安定状態を示し、
    それらの光学軸のなす角度の1/2である見かけのチル
    ト角θa(度)とチルト角Θとが下記(II)式の関係
    を満足し、 Θ<α+δ 及び δ<α (I) Θ>θa>Θ/2 (II) さらに10℃におけるδ,Θが、下記(IX)式 δ>Θ/2 (IX) の関係を満足することを特徴とする液晶素子。
  7. 【請求項7】 前記10℃におけるδ,Θが、下記(V
    III)式 δ>Θ/3 (VIII) の関係を満足することを特徴とする請求項1〜4いずれ
    かに記載の液晶素子。
  8. 【請求項8】 前記10℃におけるδ,Θが、下記(I
    X)式 δ>Θ/2 (IX) の関係を満足することを特徴とする請求項1〜4いずれ
    かに記載の液晶素子。
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