JP2990073B2 - (r)−1−エチル−4−メチルヘキサヒドロ−1h−1,4−ジアゼピン誘導体及びそれを含有する医薬 - Google Patents

(r)−1−エチル−4−メチルヘキサヒドロ−1h−1,4−ジアゼピン誘導体及びそれを含有する医薬

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、セロトニンS3
(以下、5-HT3 と記すこともある)及びドーパミンD2
の両受容体に強力に拮抗作用を示す新規な(R)−5−
ブロモ−N−(1−エチル−4−メチルヘキサヒドロ−
1H−1,4−ジアゼピン−6−イル)−2−メトキシ
−6−メチルアミノ−3−ピリジンカルボキサミド及び
該化合物を含有する医薬に関する。
【0002】
【従来の技術】特開平5−92959号公報には、下記
化3
【0003】
【化3】
【0004】〔式中、R1 及びR2 は同一又は異なっ
て、各々水素原子、低級アルキル基、置換基を有する低
級アルキル基等を意味し、R3 は同一又は異なって、各
々水素原子、低級アルキル等を意味し、R5 は同一又は
異なって、各々水素原子、ハロゲン原子、低級アルコキ
シ基、アミノ基、モノ置換もしくはジ置換アミノ基等を
意味し、Hetは単環性ヘテロアリール基又は1H−イ
ンダゾリル基以外の二環性ヘテロアリールを意味し、q
は0、1又は2を意味し、sは1、2又は3を意味し、
Bは−CXNR6 (CH2 )r−等を意味し、ここにお
いてR6 は水素原子、低級アルキル基等を意味し、Xは
酸素原子又は硫黄原子を意味し、rは0、1、2又は3
を意味し、mは1、2、3又は4を意味し、nは1、2
又は3を意味する。〕
【0005】で表される化合物が、広く開示されてお
り、そしてHetはピリジルを表しうることが記載され
ているが、Hetが3−ピリジル基である化合物として
具体的に記載されているのは、下記化4
【0006】
【化4】
【0007】で表される実施例37の化合物のみであ
る。この実施例37の化合物は3−ピリジル基が未置換
であり、且つヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン
の1位がメチル基である点で、後記式(I)で表される
本発明の化合物とは構造上明らかに相違する。
【0008】また、上記公報には、上記化3の化合物
が、セロトニンS3 (5-HT3 )受容体に拮抗し、急性・
慢性胃炎、胃・十二指腸潰瘍等の疾患における食欲不
振、悪心、嘔吐、腹部膨満感等、或いは抗癌剤投与時、
放射線照射時、動揺病等の悪心又は嘔吐の治療及び予防
に用いることができると記載されているが、ドーパミン
2 受容体拮抗作用については何ら記載されていない。
【0009】また、特表平7−500590号公報(=
WO93/08186)には、下記化5
【0010】
【化5】
【0011】(式中、R1 はC1-6 アルコキシ、C3-8
シクロアルコキシまたはC3-8 シクロアルキルC1-4
ルコキシ;R2 は水素、ハロ、C1-6 アルキル、C1-6
アルコキシまたは所望により1または2個のC1-6 アル
キルで置換されていてもよいアミノ;R3 は水素、ハロ
またはC1-6 アルキル;LはO又はNH;およびZはジ
−アザ環式またはアザ二環式側鎖を示す。)
【0012】で表される化合物が開示されており、そし
て上記化合物は5-HT3 拮抗剤として、疼痛、嘔吐、中枢
神経系障害及び胃腸障害の治療又は予防に使用すること
ができると記載されているが、ドーパミンD2 受容体拮
抗作用については何ら記載されていない。
【0013】上記特表平7−500590号公報では、
ジ−アザ環式側鎖Zの適当な例の一つとして前記特開平
5−92959号公報のパテントファミリーであるEP
−A−358903が引用されているが、特表平7−5
00590号公報には前記化3に示されるジ−アザ環式
側鎖をもつ化合物は具体的には何ら開示されておらず、
特表平7−500590号公報は本発明の化合物を何ら
示唆するものではない。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】ドーパミンD2 受容体
拮抗剤であるドンペリドン〔化学名:5−クロロ−1−
[1−〔3−(2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−
ベンズイミダゾール−1−イル)プロピル〕−4−ピペ
リジニル]−1,3−ジヒドロ−2H−ベンズイミダゾ
ール−2−オン;例えば、Merck Index,第11版,3412
(1989) 参照〕は、各種消化器症状に伴う嘔吐や小児の
上気道感染症に伴う嘔吐に対して効果があるが、シスプ
ラチン等の抗癌剤投与時に起こる嘔吐に対しては十分な
効果があるとはいえない。
【0015】最近、抗癌剤投与時に起こる嘔吐を選択的
かつ強力に抑える薬剤として、セロトニンS3 受容体拮
抗剤が開発され、現在、塩酸グラニセトロン〔化学名:
エンド−1−メチル−N−(9−メチル−9−アザビシ
クロ[3.3.1]ノン−3−イル)−1H−インダゾ
ール−3−カルボキサミド塩酸塩;例えば、Merck Inde
x,第11版,4443 (1989) 参照〕、塩酸オンダンセトロン
〔化学名:1,2,3,9−テトラヒドロ−9−メチル
−3−[(2−メチル−1H−イミダゾール−1−イ
ル)メチル]−4H−カルバゾール−4−オン塩酸塩;
例えば、Merck Index,第11版,6802 (1989) 参照〕、及
び塩酸アザセトロン〔化学名:(±)−N−1−アザビ
シクロ[2.2.2]オクト−3−イル−6−クロロ−
3,4−ジヒドロ−4−メチル−3−オキソ−2H−
1,4−ベンズオキサジン−8−カルボキサミド塩酸
塩;例えば、Drugs of the Future, 18 (3), 206-211
(1993)参照〕が臨床的に使用されている。しかしなが
ら、これらのセロトニンS3 受容体拮抗剤は、その臨床
応用が主に抗癌剤等の投与時に起こる嘔吐に限られてお
り、また、遅延性の嘔吐(late emesis)に対しては効果
が十分ではないといわれている。
【0016】このように、特定の嘔吐に対して有効であ
る薬剤は存在するものの、種々の原因に由来する嘔吐を
強力に抑えるような適用範囲の広い制吐剤は未だ開発さ
れておらず、従って、幅広いスペクトルを有する制吐剤
の開発が望まれている。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、強力で選
択的なセロトニンS3 受容体拮抗物質についての一連の
研究過程において、セロトニンS3 受容体拮抗作用に加
えてドーパミンD2 受容体拮抗作用をもつ物質が種々の
嘔吐に対して有効であるとの考えに至り、セロトニンS
3 受容体に拮抗作用を有するヘキサヒドロ−1H−1,
4−ジアゼピン誘導体にドーパミンD2 受容体拮抗作用
をもたせるべく各種のヘキサヒドロ−1H−1,4−ジ
アゼピン誘導体を合成し、スクリーニングを行った結
果、今回下記式(I)
【0018】
【化6】
【0019】で表される(R)−5−ブロモ−N−(1
−エチル−4−メチルヘキサヒドロ−1H−1,4−ジ
アゼピン−6−イル)−2−メトキシ−6−メチルアミ
ノ−3−ピリジンカルボキサミドが上記目的に合致し、
幅広いスペクトルの制吐作用があることが見出された。
【0020】かくして、本発明は、上記式(I)で示さ
れる(R)−5−ブロモ−N−(1−エチル−4−メチ
ルヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン−6−イ
ル)−2−メトキシ−6−メチルアミノ−3−ピリジン
カルボキサミド及びその生理的に許容されうる酸付加塩
を提供する。
【0021】式(I)で表される化合物の生理的に許容
されうる酸付加塩としては、例えば塩酸塩,臭化水素酸
塩,ヨウ化水素酸塩,硫酸塩,リン酸塩等の無機酸塩、
及びシュウ酸塩,マレイン酸塩,フマル酸塩,マロン酸
塩,乳酸塩,リンゴ酸塩,クエン酸塩,酒石酸塩,安息
香酸塩,メタンスルホン酸塩等の有機酸塩が挙げられ
る。
【0022】式(I)の化合物及びその生理的に許容さ
れうる酸付加塩は水和物及び/又は溶媒和物として存在
することもあり、これらの水和物及び/又は溶媒和物も
本発明の化合物に包含される。
【0023】本発明の化合物は、例えば、下記式(II)
【0024】
【化7】
【0025】で表される化合物又はその反応性誘導体を
下記式(III)
【0026】
【化8】
【0027】で表される化合物と反応させることにより
製造することができる。
【0028】式(II)の化合物の反応性誘導体として
は、例えば、低級アルキルエステル(特にメチルエステ
ル),活性エステル,酸無水物,酸ハライド(特に酸ク
ロリド)等を挙げることができる。活性エステルの具体
例としては、p−ニトロフェニルエステル,2,4,5
−トリクロロフェニルエステル,N−ヒドロキシコハク
酸イミドエステル等が挙げられる。酸無水物としては対
称酸無水物又は混合酸無水物のいずれで用いることがで
き、混合酸無水物の具体例としては、クロル炭酸エチ
ル,クロル炭酸イソブチルのようなクロル炭酸アルキル
エステルとの混合酸無水物、クロル炭酸ベンジルのよう
なクロル炭酸アラルキルエステルとの混合酸無水物、ク
ロル炭酸フェニルのようなクロル炭酸アリールエステル
との混合酸無水物、イソ吉草酸,ピバル酸のようなアル
カン酸との混合酸無水物等が挙げられる。
【0029】出発物質として式(II)の化合物それ自体
を用いる場合には、例えば、N,N′−ジシクロヘキシ
ルカルボジイミド,1−エチル−3−(3−ジメチルア
ミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩,N,N′−カル
ボニルジイミダゾール,N,N′−カルボニルジコハク
酸イミド,1−エトキシカルボニル−2−エトキシ−
1,2−ジヒドロキノリン,ジフェニルホスホリルアジ
ド,プロパンホスホン酸無水物,ベンゾトリアゾール−
1−イルオキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウ
ム・ヘキサフルオロホスフェート等の縮合剤の存在下に
上記の反応を行うことができる。
【0030】式(II)の化合物又はその反応性誘導体と
式(III)の化合物との反応は、溶媒中又は無溶媒下に行
われる。使用しうる溶媒としては、例えば、ベンゼン,
トルエン,キシレンのような芳香族炭化水素類、ジエチ
ルエーテル,テトラヒドロフラン,ジオキサンのような
エーテル類、塩化メチレン,クロロホルムのようなハロ
ゲン化炭化水素類、エタノール,イソプロパノールのよ
うなアルコール類、酢酸エチル、アセトン、アセトニト
リル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、
エチレングリコール、水等が挙げられ、これらの溶媒は
それぞれ単独で或いは2種以上混合して用いることがで
きる。本反応は必要に応じて塩基の存在下に行うことが
でき、その際に使用しうる塩基の具体例としては、水酸
化ナトリウム,水酸化カリウムのような水酸化アルカ
リ、炭酸ナトリウム,炭酸カリウムのような炭酸アルカ
リ、炭酸水素ナトリウム,炭酸水素カリウムのような炭
酸水素アルカリ、トリエチルアミン,トリブチルアミ
ン,ジイソプロピルエチルアミン,N−メチルモルホリ
ンのような有機塩基等が挙げられる。反応温度は、通
常、約−30℃〜約200 ℃、好ましくは約−10℃〜約150
℃の範囲内とすることができる。また、式(III)の化合
物は、式(II)の化合物又はその反応性誘導体1モルに
対し、一般に、1モル〜3モル、好ましくは1モル〜1.
5 モルの割合で反応に供することができるが、場合によ
っては大過剰量で用いて塩基としての役割を兼ねさせる
こともできる。
【0031】出発物質として用いられる式(II)の化合
物は、例えば、下記化9に示す工程により製造すること
ができる。各工程の具体的な条件は後記参考例1に示
す。
【0032】
【化9】
【0033】(式中、R1 は直鎖状又は分枝状のC1
6 アルキル基を意味する。)
【0034】また、出発物質として用いられる式(III)
の化合物は、従来の文献に未記載の新規な化合物であ
り、例えば、下記化10に示す工程により製造すること
ができる。各工程の具体的な条件は後記実施例2に示
す。
【0035】
【化10】
【0036】(式中、Etはエチル基を意味し、Z1
tert−ブトキシカルボニル基,トリフェニルメチル基,
アセチル基のようなアミノ基の保護基を意味し、Z2
場合により塩素原子,臭素原子,メトキシもしくはニト
ロで置換されていてもよいベンジルオキシカルボニル基
を意味し、R2 は水素原子、ハロゲン原子、C1 〜C3
アルキル基又はC1 〜C3 アルコキシ基を意味し、R1
は前記の意味を有する。)
【0037】上記式(III)の化合物は製造方法によって
は酸付加塩として得られることもある。その酸付加塩と
しては、例えば、前記生理的に許容されうる酸付加塩が
挙げられ、具体的には、塩酸塩,臭化水素酸塩,ヨウ化
水素酸塩,硫酸塩,リン酸塩等の無機酸塩、及びシュウ
酸塩,マレイン酸塩,フマル酸塩,マロン酸塩,乳酸
塩,リンゴ酸塩,クエン酸塩,酒石酸塩,安息香酸塩,
メタンスルホン酸塩等の有機酸塩が挙げられる。
【0038】式(I)の化合物の上記製法によれば、出
発物質である式(III)の化合物の立体配置が、生成物で
ある式(I)の化合物においてそのまま保持される。
【0039】上記製法により生成する式(I)の化合物
は、クロマトグラフィー,再結晶,再沈澱等の常法によ
り単離,精製することができる。
【0040】式(I)の化合物及び式(III)の化合物
は、反応・処理条件等により、遊離塩基又は酸付加塩の
形で得られる。酸付加塩は、常法、例えば、炭酸アルカ
リ,水酸化アルカリのような塩基で処理することにより
遊離塩基に変えることができ、一方、遊離塩基は、常法
に従って各種の酸で処理することにより酸付加塩に導く
ことができる。
【0041】以下、本発明の化合物及び下記の対照化合
物についての薬理試験結果を示し、本発明の化合物の薬
理作用の特徴を説明する。
【0042】(1)ドンペリドン:制吐剤又は消化管機
能改善剤として臨床的に使用されている選択的ドーパミ
ンD2 受容体拮抗剤 (2)塩酸オンダンセトロン:制吐剤として抗癌剤投与
時に臨床的に使用されている選択的セロトニンS3 受容
体拮抗剤 (3)塩酸グラニセトロン:制吐剤として抗癌剤投与時
に臨床的に使用されている選択的セロトニンS3 受容体
拮抗剤 (4)塩酸メトクロプラミド:制吐剤又は消化管機能改
善剤として世界的に広く使用されている薬剤〔化学名:
4−アミノ−5−クロロ−N−〔2−(ジエチルアミ
ノ)エチル〕−2−メトキシベンズアミド・ジ塩酸塩1
水和物;例えば、Merck Index,第11版, 6063 (1989) 参
照〕
【0043】A.ドーパミンD2 受容体及びセロトニン
3 受容体に対する作用について 試験例 1 :ドーパミンD2 受容体結合作用及びセロト
ニンS3 受容体結合作用(in vitro レセプターバイン
ディングアッセイ) Creese, I.ら[Eur. J. Pharmacol., 46, 337 (1977)参
照]及びPeroutka, S.J.及びHamik, A. [Eur. J. Pharm
acol.,148, 297 (1988)参照]の方法に準拠し、それぞ
れドーパミンD2 及びセロトニンS3 受容体結合試験を
行った。受容体標本としてラット脳より調製した粗シナ
プトゾーム膜分画を、 また標識リガンドとして[3H]ス
ピペロン(D2 )及び[3H]キーパジン(S3 )を用い
た。受容体標本とそれぞれの標識リガンドを含む緩衝液
(最終容量1ml) を種々の濃度の試験化合物の存在下で
一定時間インキュベーションした後、受容体に結合した
放射性リガンドをセルハーベスター(ブランデル社製)
を用いてフィルター上に分離した。フィルター上の放射
活性を液体シンチレーションカウンターにより測定して
全結合量を求めた。また、同時に測定した非標識リガン
ド[スピペロン(D2 )及び[3H]キーパジン(S
3 )]の過剰存在下での結合量を非特異的結合量とし、
これを全結合量から差し引くことにより特異的結合量を
求めた。試験化合物が標識リガンドの特異的結合を50%
抑制する濃度(IC50値)をプロビット法により算出し
た。結果を下記表1に示す。
【0044】試験例 2:von Bezold-Jarisch反射抑制
作用(抗セロトニンS3 作用) 本試験は、Fozardらの方法[Arch. Pharmacology, 326,
36-44 (1984)参照]に準じて行った。ウイスター系雄
性ラット(体重250-350 g )をウレタン(1.5g/kg,腹
腔内)で麻酔し、背位に固定した。心電図(第二誘導)
を導出し、心拍タコメーターを介して心拍数をインク書
きオシロスコープ上に記録した。2−メチルセロトニン
(セロトニンS3 アゴニスト)を10-30 μg/kg静脈内投
与すると、一過性の心拍数の減少、すなわちvon Bezold
-Jarisch反射が起こる。2−メチルセロトニンの一定量
を15分間隔で繰り返し投与し、安定した反応が得られた
後、試験化合物を2−メチルセロトニン投与3分前に静
脈内投与した。試験化合物投与前の反応に対する投与後
の反応の抑制率を算出し、プロビット法により50%抑制
する有効量(ED50値)を求めた。結果を下記表1に示
す。
【0045】
【表1】
【0046】上記表1に示す結果から明らかなように、
実施例1の化合物は、選択的なドーパミンD2 受容体拮
抗剤として公知のドンペリドンと同等以上に優れたドー
パミンD2 受容体結合作用と、選択的なセロトニンS3
受容体拮抗剤として公知の塩酸オンダンセトロン及び塩
酸グラニセトロンを凌駕する強力なセロトニンS3 受容
体結合作用を有しており、von Bezold-Jarisch反射抑制
作用においても、塩酸オンダンセトロンに匹敵する優れ
た作用を有している。なお、セロトニンS3 及びドーパ
ミンD2 受容体の両方に結合作用を示す制吐剤として塩
酸メトクロプラミドが知られているが、その両受容体へ
の結合作用は実施例1の化合物に比べてはるかに弱いも
のである。
【0047】このように、本発明の化合物は、セロトニ
ンS3 及びドーパミンD2 の両受容体に対する強い拮抗
作用を有しており、種々の原因に由来する嘔吐を抑える
幅広いスペクトルをもつ制吐剤としての使用が期待され
る。
【0048】B.制吐作用について 試験例 3 :アポモルヒネ誘発嘔吐に対する抑制作用 1群3〜4匹のビーグル犬(体重8〜15 kg)を用い、ア
ポモルヒネにより誘発される嘔吐に対する試験化合物の
抑制作用を検討した。この試験はドーパミン遮断剤の検
出法として一般的に用いられている。0.5 %トラガント
溶液に溶解又は懸濁した所定用量の試験化合物を経口投
与し、2時間後に塩酸アポモルヒネ(0.3 mg/kg)を背部
皮下に注射し、その後1時間にわたって嘔吐回数を数え
た。試験化合物投与群の嘔吐回数を対照群のそれと比較
した抑制率を算出し、プロビット法により50%抑制する
有効量(ED50値)を求めた。結果を下記表2に示す。
【0049】試験例 4:フェレットのシスプラチン誘
発嘔吐に対する作用 体重1kg前後の雄性フェレット(米国マーシャル社)を
用いた。静脈内投与のために、実験の3〜4日前にペン
トバルビタール麻酔下で頸静脈内にカニューレを装着し
た。試験群には0.5 %トラガント溶液に溶解又は懸濁し
た所定用量の試験化合物を経口投与し、30分後にシスプ
ラチン(シグマ社製)10 mg/kg(生理食塩液 3 ml/kg)
をカニューレを介して静脈内に投与した。シスプラチン
投与後から3時間の間に誘発される嘔吐の回数を記録し
て試験化合物の抑制率を算出し、プロビット法により50
%抑制する有効量(ED50値)を求めた。結果を下記表
2に示す。
【0050】試験例 5:イヌのシスプラチン誘発嘔吐
に対する作用 一群4〜5匹のビーグル犬(体重10〜12 kg)を用い、シ
スプラチンにより誘発される嘔吐に対する試験化合物の
抑制作用を検討した。試験群には0.5 %トラガント溶液
に溶解又は懸濁した所定用量の試験化合物を経口投与
し、30分後にシスプラチン(シグマ社製)3 mg/kg (生
理食塩液 3 ml/kg)を静脈内に投与した。シスプラチン
投与後から5時間の間に誘発される嘔吐の回数を記録し
て試験化合物の抑制率を算出し、プロビット法により50
%抑制する有効量(ED50値)を求めた。結果を下記表
2に示す。
【0051】
【表2】
【0052】上記表2に示す結果から明らかなように、
実施例1の化合物は、ドーパミンD2 受容体拮抗作用に
基づくアポモルヒネ誘発嘔吐において、選択的なドーパ
ミンD2 受容体拮抗剤であるドンペリドンには及ばない
が、優れた抑制作用を確実に示し、しかも特筆すべきこ
とに、セロトニンS3 受容体拮抗作用に基づくシスプラ
チン誘発嘔吐において、選択的なセロトニンS3 受容体
拮抗剤である塩酸オンダンセトロンとほぼ同等の強力な
抑制作用を示した。即ち、実施例1の化合物は、セロト
ニンS3 及びドーパミンD2 両受容体拮抗作用をバラン
スよく強力に併せもつ優れた特性により、幅広いスペク
トルの制吐作用を有していることが示唆された。
【0053】なお、実施例1の化合物は、セロトニンS
3 及びドーパミンD2 の両受容体に弱い結合作用を示す
塩酸メトクロプラミドよりも強い制吐作用を示し、殊に
シスプラチン誘発嘔吐に対してはるかに強い抑制作用を
示し、明らかにその効果に差がみられた。
【0054】C.中枢作用について 試験例 6 :探索行動抑制作用 各群5匹の Std-ddY系雄性マウス(体重20〜25 g)を使
用した。0.5 %トラガント溶液に溶解又は懸濁した試験
化合物を経口投与し、2時間後にマウスを1匹ずつAnim
ex運動量測定装置(Farad 社製)上測定ケージ(23×35
×30 cm)に入れ、3分間の探索行動量を測定した。試験
化合物投与群の探索行動量(カウント/3分)の平均値
を求め、対照群のそれと比較して抑制率を算出し、プロ
ビット法により50%抑制する有効量(ED50値)を求め
た。
【0055】実施例1の化合物及び塩酸メトクロプラミ
ドのED50値は、それぞれ48.5 mg/kg及び22.4 mg/kgで
あり、実施例1の化合物は、塩酸メトクロプラミドに比
べて中枢抑制作用が弱いことが示された。
【0056】上記試験結果から明らかなように、式
(I)の化合物及びその生理的に許容される酸付加塩
は、強いセロトニンS3 及びドーパミンD2 受容体拮抗
作用に基づく優れた制吐作用を示し、適用範囲の広い制
吐剤として、各種の疾患、薬物投与等に伴う種々の消化
器症状の処置又は予防に用いることができる。具体的に
は、急性・慢性胃炎、逆流性食道炎、胃・十二指腸潰
瘍、胃神経症、胃下垂、胃切除後症候群、強皮症、糖尿
病、食道・胆道系疾患、小児の周期性嘔吐症、上気道感
染症などの疾患における悪心、嘔吐、食欲不振、腹部膨
満感、上腹部不快感、腹痛、胸やけ、曖気等の処置又は
予防、また過敏性腸症候群、便秘、乳幼児下痢症の処置
又は予防に用いることができる。更に、各種抗癌剤もし
くはレボドーパ製剤投与時又は麻薬性鎮痛剤であるモル
ヒネ投与時、或いは放射線照射時の悪心又は嘔吐の治療
及び予防に用いることができる。更にまた、抗精神病剤
又は抗不安剤として、耽溺性のある薬物(モルヒネ,ニ
コチン,アンフェタミン等)の中毒に対する処置又は予
防にも使用できる。
【0057】式(I)の化合物及びその生理的に許容し
うる酸付加塩の投与経路としては、経口投与,非経口投
与又は直腸内投与のいずれでもよく、その投与量は、化
合物の種類,投与方法,患者の症状・年齢等により異な
るが、例えば制吐剤として用いる場合には、通常、0.01
〜10 mg/kg/ 日、好ましくは0.1〜3mg/kg/日の範囲内
が適当であり、抗精神病剤として用いる場合には、通常
3〜50 mg/kg/ 日、好ましくは5〜30 mg/kg/ 日の範囲
内が適当である。
【0058】式(I)化合物又は生理的に許容される酸
付加塩は、上記の如き医薬用途に使用する場合、通常、
製剤用担体と混合して調製された製剤の形で投与され
る。製剤用担体としては、製剤分野において常用されか
つ本発明の化合物と反応しない無毒性の物質が用いられ
る。具体的には、例えばクエン酸,グルタミン酸,グリ
シン,乳糖,イノシトール,ブドウ糖,マンニトール,
デキストラン,ソルビトール,シクロデキストリン,デ
ンプン,部分アルファー化デンプン,白糖,パラオキシ
安息香酸メチル,パラオキシ安息香酸プロピル,メタケ
イ酸アルミン酸マグネシウム,合成ケイ酸アルミニウ
ム,結晶セルロース,カルボキシメチルセルロースナト
リウム,ヒドロキシプロピルデンプン,カルボキシメチ
ルセルロースカルシウム,イオン交換樹脂,メチルセル
ロース,ゼラチン,アラビアゴム,プルラン,ヒドロキ
シプロピルセルロース,低置換度ヒドロキシプロピルセ
ルロース,ヒドロキシプロピルメチルセルロース,ポリ
ビニルピロリドン,ポリビニルアルコール,アルギン
酸,アルギン酸ナトリウム,軽質無水ケイ酸,ステアリ
ン酸マグネシウム,タルク,トラガント,ベントナイ
ト,ビーガム,カルボキシビニルポリマー,酸化チタ
ン,ソルビタン脂肪酸エステル,ラウリル硫酸ナトリウ
ム,グリセリン,脂肪酸グリセリンエステル,精製ラノ
リン,グリセロゼラチン,ポリソルベート,マクロゴー
ル,植物油,ロウ,プロピレングリコール,エタノー
ル,ベンジルアルコール,塩化ナトリウム,水酸化ナト
リウム,塩酸,水等が挙げられる。
【0059】剤型としては、錠剤,カプセル剤,顆粒
剤,散剤,シロップ剤,懸濁剤,注射剤,坐剤等が挙げ
られる。これらの製剤は常法に従って調製することがで
きる。なお、液体製剤にあっては、用時、水又は他の適
当な媒体に溶解又は懸濁する形であってもよい。また、
錠剤及び顆粒剤は周知の方法でコーティングしてもよ
い。
【0060】これらの製剤は、式(I)の化合物又はそ
の生理的に許容される酸付加塩を0.01%以上、好ましく
は0.1 〜70%の割合で含有することができる。これらの
製剤はまた、治療上価値ある他の成分を含有していても
よい。
【0061】
【実施例】以下に参考例及び実施例を挙げて本発明をさ
らに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限
定されるものではない。化合物の同定は元素分析値,マ
ス・スペクトル,IRスペクトル,NMRスペクトル等
により行った。
【0062】また、以下の参考例及び実施例において、
記載の簡略化のために次の略号を使用することもある。
【0063】 J :結合定数、 s :一重線、 d :二重線、 t :三重線、 m :多重線、 br-s :幅広い一重線、 ee :鏡像体過剰率。
【0064】参考例 1 5−ブロモ−2−メトキシ−6−メチルアミノ−3−ピ
リジンカルボン酸の製造:
【0065】(1) 2,6−ジフルオロピリジン 50
g をテトラヒドロフラン 200 ml に溶解し、−70℃で1.
6 M n−ブチルリチウムテトラヒドロフラン溶液 326
ml を滴下した。同温度で1時間攪拌後、反応液にドラ
イアイス 29 g の固まりを少しづつ加えた。次いで、同
温度で30分間攪拌したのち、約5℃に昇温し、氷水 500
ml を加えた。反応液を酢酸エチルで2回洗浄し、水層
を濃塩酸でpH3としたのち、クロロホルムで抽出し
た。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウ
ムで乾燥後、溶媒を減圧で留去した。析出した結晶を濾
取し、これをジエチルエーテル−n−ヘキサンから再結
晶して2,6−ジフルオロ−3−ピリジンカルボン酸 6
3 g を得た。 融点 170〜171℃
【0066】(2) 上記生成物 63 g 、メタノール 7
00 ml 及び濃硫酸 5 ml の混合物を20時間加熱還流し
た。溶媒を減圧で留去し、残渣を氷水で希釈したのち、
クロロホルムで抽出した。抽出液を水で洗浄し、無水硫
酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧で濃縮した。残渣
をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、クロロ
ホルムで溶出・精製して2,6−ジフルオロ−3−ピリ
ジンカルボン酸メチル 64g を油状物として得た。
【0067】(3) 上記生成物 38 g のエタノール 5
00 ml 溶液に20%メチルアミンのエタノール溶液 72 g
を−20℃〜−25℃で滴下した。同温度で5時間攪拌した
のち、室温まで昇温し、反応液を減圧で濃縮した。濃縮
液に氷水を加え、析出した固体を濾取し、これを水洗
し、乾燥後、ジエチルエーテル−n−ヘキサン(2:
3)の混液から再結晶して2−フルオロ−6−メチルア
ミノ−3−ピリジンカルボン酸メチル 15.7 g を得た。
融点 156〜159℃
【0068】(4) 上記生成物 15.7 g のメタノール
400 ml 溶液にカリウムtert−ブトキシシド 19.1 g を
加え、3時間加熱還流した。冷後、反応液を減圧で濃縮
したのち、残渣に炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、析
出した固体を濾取し、これを水洗したのち乾燥して2−
メトキシ−6−メチルアミノ−3−ピリジンカルボン酸
メチル 16.3 g を得た。 融点 120〜122℃(n
−ヘキサン−ジエチルエーテルから再結晶)
【0069】(5) 上記生成物 7.3 gのジメチルホル
ムアミド 70 ml溶液にN−ブロムスクシンイミド 7.0 g
を加え、80℃で4時間加熱した。反応液に氷水を加え、
析出した固体を濾取し、これを水洗したのち乾燥して5
−ブロモ−2−メトキシ−6−メチルアミノ−3−ピリ
ジンカルボン酸メチル 9.8 gを得た。 融点 136〜
138℃(n−ヘキサン−ジエチルエーテルから再結
晶)
【0070】(6) 上記生成物 20 g のメタノール溶
液 100 ml に水酸化ナトリウム 3.1 gを含む水溶液 200
ml を加え、1.5 時間加熱還流した。冷後、減圧でメタ
ノールを留去したのち、濃塩酸で酸性とした。析出した
固体を濾取し、これを水洗したのち乾燥して目的物 18.
9 g を得た。 融点 224〜225℃
【0071】1H−NMRスペクトル(DMSO-d6,δppm):
2.92 (3H, d, J=5Hz), 3.88 (3H, s),7.08 (1H, d, J=5
Hz), 7.98 (1H, s), 12.08 (1H, s)
【0072】実施例 1 (R)−5−ブロモ−N−(1−エチル−4−メチルヘ
キサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン−6−イル)−
2−メトキシ−6−メチルアミノ−3−ピリジンカルボ
キサミド・2フマル酸塩の製造:
【0073】(1) 5−ブロモ−2−メトキシ−6−
メチルアミノ−3−ピリジンカルボン酸 18.0 g 、N,
N′−カルボニルジイミダゾール 11.7 g 及びジメチル
ホルムアミド 50 mlの混液を室温で8時間攪拌した。こ
の混液に、(R)−6−アミノ−1−エチル−4−メチ
ルヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン 13.0 g を
加え、室温で15時間攪拌した。反応液を減圧で濃縮
し、これに2N水酸化ナトリウム水溶液を加えたのち、
クロロホルムで抽出した。抽出液を水で洗浄し、無水硫
酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧で濃縮した。残渣
をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、クロロ
ホルム−メタノール(15:1) の混液で溶出・精製し、ジ
エチルエーテルから再結晶して(R)−5−ブロモ−N
−(1−エチル−4−メチルヘキサヒドロ−1H−1,
4−ジアゼピン−6−イル)−2−メトキシ−6−メチ
ルアミノ−3−ピリジンカルボキサミド・1/4水和物
19.6g を得た。 融点 52〜55℃
【0074】該化合物は、下記条件の高速液体クロマト
グラフィー(HPLC)で保持時間23.6分を示し、光学
純度は99%ee以上であった。
【0075】〔HPLC条件〕 HPLCカラム: CHIRALPAK AS (ダイセル化学工業株
式会社製); 内径4.6mm× 250 mm 、 移動相:n−ヘキサン−エタノール−ジエチルアミン
(940:30:2)、 流速:0.8 ml/分、 温度:25℃、 検出:UV 254 nm 。
【0076】(2) 上記生成物 19 g をフマル酸で処
理して2フマル酸塩とし、エタノールから再結晶して目
的物 23 g を得た。 融点 152〜155℃
【0077】1H−NMRスペクトル(DMSO-d6,δppm):
1.02 (3H, t, J=7Hz), 2.43 (3H, s),2.5-3.0 (10H,
m), 2.93 (3H, d, J=5Hz), 3.98 (3H, s), 4.14 (1H,
m), 6.60(4H, s), 6.99 (1H, d, J=5Hz), 8.09 (1H,
s), 8.48 (1H, d, J=8Hz), 12.80(2H, br-s)
【0078】参考例 2 (S)−5−ブロモ−N−(1−エチル−4−メチルヘ
キサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン−6−イル)−
2−メトキシ−6−メチルアミノ−3−ピリジンカルボ
キサミド・2フマル酸塩の製造:
【0079】(1) 実施例1(1)における(R)−
6−アミノ−1−エチル−4−メチルヘキサヒドロ−1
H−1,4−ジアゼピンの代わりに(S)−6−アミノ
−1−エチル−4−メチルヘキサヒドロ−1H−1,4
−ジアゼピンを用い、実施例1(1)と同様に反応・処
理して(S)−5−ブロモ−N−(1−エチル−4−メ
チルヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン−6−イ
ル)−2−メトキシ−6−メチルアミノ−3−ピリジン
カルボキサミド・1水和物を得た。融点 67〜68℃
(ジエチルエーテル−石油エーテルから再結晶)
【0080】該化合物は、実施例1と同条件下のHPL
Cで保持時間27.5分を示し、光学純度は99%ee以上であ
った。
【0081】(2) 上記生成物をフマル酸で処理して
2フマル酸塩とし、エタノールから再結晶して目的物を
得た。 融点 152〜155℃
【0082】実施例 2 (R)−6−アミノ−1−エチル−4−メチルヘキサヒ
ドロ−1H−1,4−ジアゼピンの製造:
【0083】(1) N′−メチル−N−(3−メチル
ベンジル)エチレンジアミン 1602 gのクロロホルム 12
00 ml溶液に氷冷下、ジ−tert−ブチル ジカルボナー
ト 2180 g のクロロホルム 3500 ml溶液を滴下した。室
温で18時間攪拌したのち、反応液を減圧で留去し、残渣
にトルエン及び氷水を加え、氷冷下、10%クエン酸水溶
液を内温4℃以下で滴下して水層を酸性とした。分取し
たトルエン層を水で抽出し、得られた水層と酸性水溶液
とを合し、トルエンで洗浄した。水層を48%水酸化ナト
リウム水溶液でアルカリ性にしたのち、トルエンで再抽
出した。抽出液を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナ
トリウムで乾燥後、溶媒を減圧で留去してN′−tert−
ブトキシカルボニル−N′−メチル−N−(3−メチル
ベンジル)エチレンジアミン 1860 g を油状物として得
た。
【0084】(2) 上記生成物 50 g と(S)−2−
メトキシカルボニル−1−ベンジルオキシカルボニルア
ジリジン 53 g を混合し、80℃で20時間攪拌して粗製の
(R)−2−(ベンジルオキシカルボニル)アミノ−3
−[N−〔2−〔N′−(tert−ブトキシカルボニル)
−N′−メチルアミノ〕エチル〕−N−(3−メチルベ
ンジル)]アミノプロピオン酸メチルを得た。
【0085】(3) 上記粗製の生成物に10%塩化水素
エタノール溶液 750 ml を加え、30〜40℃で2時間攪拌
した。不溶物を濾去し、溶媒を減圧で留去し、残渣を水
500 ml に溶かし、水層をジエチルエーテルで洗浄し
た。水層を炭酸水素ナトリウムで中和したのち、クロロ
ホルムで抽出した。抽出液を無水硫酸マグネシウムで乾
燥後、溶媒を減圧で留去して粗製の(R)−2−(ベン
ジルオキシカルボニル)アミノ−3−〔N−(2−メチ
ルアミノエチル)−N−(3−メチルベンジル)〕アミ
ノプロピオン酸メチル 79 g を得た。生成物の一部をシ
ュウ酸塩とし、エタノール−ジエチルエーテルから再結
晶して上記メチルエステルのシュウ酸塩を得た。 融点
185〜190℃
【0086】(4) 上記粗製のメチルエステル体 39
g をエタノール 70 mlに溶かし、これに2N水酸化ナト
リウム水溶液 70 mlを0℃〜10℃で滴下したのち、室温
で16時間攪拌した。エタノールを減圧で留去し、水溶液
を濃塩酸でpH8とし、クロロホルムで抽出した。抽出
液を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧で留去
して粗製の(R)−2−(ベンジルオキシカルボニル)
アミノ−3−〔N−(2−メチルアミノエチル)−N−
(3−メチルベンジル)〕アミノプロピオン酸 36.4 g
を得た。生成物の一部を精製して結晶を得た。融点 1
70〜175℃
【0087】(5) 上記粗製の生成物 36.4 g を塩化
メチレン 180 ml に溶かし、1−エチル−3−(3−ジ
メチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩 18.2 g
を加え、室温で20時間攪拌した。反応液を水洗し、無水
硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧で留去し、残渣
をジエチルエーテル−n−ヘキサンから再結晶して
(S)−3−(ベンジルオキシカルボニル)アミノ−1
−メチル−4−(3−メチルベンジル)ヘキサヒドロ−
2−オキソ−1,4−ジアゼピン 22 g を得た。融点
70〜71℃
【0088】(6) 上記生成物 40.8 g の塩化メチレ
ン 400 ml 溶液にクロル炭酸1−クロロエチル 18.0 g
を滴下し、室温で3時間攪拌した。溶媒を減圧で留去
し、残渣にメタノール 400 ml を加え、1時間加熱還流
した。メタノールを減圧で留去後、残渣に水を加え、ジ
エチルエーテルで洗浄し、水層を水酸化ナトリウム水溶
液でアルカリ性をしたのち、クロロホルムで抽出した。
抽出液を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧で
留去して粗製の(S)−3−(ベンジルオキシカルボニ
ル)アミノ−1−メチルヘキサヒドロ−2−オキソ−
1,4−ジアゼピンを得た。
【0089】(7) 上記粗製の生成物にメタノール 6
00 ml 及びトリエチルアミン 21.2 gを加え、さらに氷
冷下で80%アセトアルデヒド水溶液 11.6 g を加え、2
時間攪拌した。次いで、同温度でホウ素化水素ナトリウ
ム 3.97 g を少しずつ加え、氷冷下で1時間、さらに室
温で16時間攪拌した。溶媒を減圧で留去し、クロロホル
ムで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸
マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧で留去した。残渣を
シリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、クロロホ
ルム−メタノール(15:1) で溶出・精製して(S)−3
−(ベンジルオキシカルボニル)アミノ−5−エチル−
1−メチルヘキサヒドロ−2−オキソ−1,4−ジアゼ
ピン 28 g を油状物として得た。
【0090】(8) 上記生成物 28 g に48%臭化水素
酸水溶液 140 ml を加え、60℃で2時間加熱攪拌した。
冷後、反応液をジエチルエーテルで2回洗浄し、水層を
炭酸カリウムでアルカリ性としたのち、クロロホルムで
抽出した。抽出液を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶
媒を減圧で留去して(S)−3−アミノ−5−エチル−
1−メチルヘキサヒドロ−2−オキソ−1,4−ジアゼ
ピン 19 g を油状物として得た。
【0091】(9) 上記生成物 23 g のテトラヒドロ
フラン 300 ml 溶液に、氷冷下、1Mボラン−テトラヒ
ドロフラン溶液 1000 mlを滴下後、室温で16時間攪拌し
た。氷冷下、1N塩酸 500 ml を加えたのち、1時間加
熱還流した。冷後、溶媒を減圧で留去し、残渣をジエチ
ルエーテルで2回洗浄し、水層を炭酸カリウムでアルカ
リ性にしたのち、クロロホルムで抽出した。抽出液を無
水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧で留去して目
的物 19 g を油状物として得た。
【0092】参考例 3 (S)−6−アミノ−1−エチル−4−メチルヘキサヒ
ドロ−1H−1,4−ジアゼピンの製造:
【0093】実施例2(2)の(S)−2−メトキシカ
ルボニル−1−ベンジルオキシカルボニルアジリジンの
代わりに(R)−2−メトキシカルボニル−1−ベンジ
ルオキシカルボニルアジリジンを用い、実施例2(2)
〜(9)と同様に反応・処理して目的物を得た。
【0094】製剤例 1錠剤の製造 (5 mg錠) (R)−5−ブロモ−N−(1−エチル−4−メチルヘ
キサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン−6−イル)−
2−メトキシ−6−メチルアミノ−3−ピリジンカルボ
キサミド・2フマル酸塩(5 g)、乳糖(80 g)、トウ
モロコシデンプン(30 g)、結晶セルロース(25 g)、
ヒドロキシプロピルセルロース( 3 g)、軽質無水ケイ
酸( 0.7 g)、及びステアリン酸マグネシウム( 1.3
g)。
【0095】上記成分を常法により混合、造粒し、1錠
あたり145 mgで打錠、1000錠を製する。
【0096】製剤例 2散剤の製造 (1%散) (R)−5−ブロモ−N−(1−エチル−4−メチルヘ
キサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン−6−イル)−
2−メトキシ−6−メチルアミノ−3−ピリジンカルボ
キサミド・2フマル酸塩(10 g)、乳糖(960 g )、ヒ
ドロキシプロピルセルロース(25 g)、及び軽質無水ケ
イ酸( 5 g)。
【0097】常法により、上記成分を混合したのち、散
剤に製する。
【0098】製剤例 3注射剤の製造 (0.5 %注)
【0099】
【表3】 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ・(R)−5−ブロモ−N−(1−エチル−4−メチルヘキサヒドロ−1H− 1,4−ジアゼピン−6−イル)−2−メトキシ−6−メチルアミノ− 3−ピリジンカルボキサミド・2フマル酸塩(10 g) ・ソルビトール( 100 g) ・注射用水(適量) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 全量 2000 ml ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【0100】(R)−5−ブロモ−N−(1−エチル−
4−メチルヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン−
6−イル)−2−メトキシ−6−メチルアミノ−3−ピ
リジンカルボキサミド・2フマル酸塩及びソルビトール
を注射用水の一部に溶解した後、残りの注射用水を加え
て全量調製する。この溶液をメンブランフィルター(0.
22μm )で濾過し、濾液を2 mlアンプル中に充填し、次
いでこれを121 ℃で20分間滅菌する。
【0101】
【発明の効果】以上説明したように、式(I)で表され
る本発明の化合物及びその生理的に許容される酸付加塩
は、強いセロトニンS3 及びドーパミンD2 受容体拮抗
作用に基づく優れた制吐作用を示し、かつ毒性も低く、
制吐剤として各種の疾患、薬物投与等に伴う種々の消化
器症状の処置又は予防に用いることができる。具体的に
は、急性・慢性胃炎、逆流性食道炎、胃・十二指腸潰
瘍、胃神経症、胃下垂、胃切除後症候群、強皮症、糖尿
病、食道・胆道系疾患、小児の周期性嘔吐症、上気道感
染症などの疾患における悪心、嘔吐、食欲不振、腹部膨
満感、上腹部不快感、腹痛、胸やけ、曖気等の処置又は
予防、また、過敏性腸症候群、便秘、乳幼児下痢症の処
置又は予防に用いることができる。更に、各種抗癌剤も
しくはレボドーパ製剤投与時又は麻薬性鎮痛剤であるモ
ルヒネ投与時、或いは放射線照射時の悪心又は嘔吐の処
置又は予防に用いることができる。また、本発明の化合
物は抗精神病剤又は抗不安剤として用いることができ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C07D 243/08 502 C07D 243/08 502 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C07D 401/12 C07D 243/08 CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記化1 【化1】 で表される(R)−5−ブロモ−N−(1−エチル−4
    −メチルヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン−6
    −イル)−2−メトキシ−6−メチルアミノ−3−ピリ
    ジンカルボキサミド又はその生理的に許容されうる酸付
    加塩。
  2. 【請求項2】 (R)−5−ブロモ−N−(1−エチル
    −4−メチルヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン
    −6−イル)−2−メトキシ−6−メチルアミノ−3−
    ピリジンカルボキサミド・2フマル酸塩。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2に記載の化合物を含有す
    る医薬。
  4. 【請求項4】 制吐剤である請求項3記載の医薬。
  5. 【請求項5】 下記化2 【化2】 で表される(R)−6−アミノ−1−エチル−4−メチ
    ルヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン又はその酸
    付加塩。
JP21507196A 1995-07-28 1996-07-26 (r)−1−エチル−4−メチルヘキサヒドロ−1h−1,4−ジアゼピン誘導体及びそれを含有する医薬 Expired - Fee Related JP2990073B2 (ja)

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