JP2963455B1 - 窒化ホウ素膜の成膜方法 - Google Patents

窒化ホウ素膜の成膜方法

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JP2963455B1 JP10243323A JP24332398A JP2963455B1 JP 2963455 B1 JP2963455 B1 JP 2963455B1 JP 10243323 A JP10243323 A JP 10243323A JP 24332398 A JP24332398 A JP 24332398A JP 2963455 B1 JP2963455 B1 JP 2963455B1
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Abstract

【要約】 【課題】 超硬合金や高速度鋼の基板上に密着力にすぐ
れ、かつ耐摩耗性、強度的にすぐれた長寿命の立方晶窒
化ホウ素膜を形成する成膜法を提供する。 【解決手段】 ボンバード処理を施した基板1上にTi
N膜2を形成したのち、Ti膜、B膜、さらに段階的に
組成比率を変えたBN膜からなる3の緩衝膜Iを被覆
し、ついでその上にcBN膜4を形成することにより、
基板1との密着性にすぐれ、長寿命の立方晶窒化ホウ素
膜を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、立方晶窒化ホウ
素膜の成膜方法に関し、詳しくは高硬度、低摩擦係数、
耐熱性等の物性が他の物質よりすぐれている立方晶窒化
ホウ素膜を切削工具や耐摩耗工具などの工具部材表面に
付与して、これら部材の長寿命化を達成することを目的
として、立方晶窒化ホウ素膜を再現性よく成膜する方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】立方晶窒化ホウ素(cBN)は、ダイヤ
モンドに次ぐ硬度を持ち、しかも熱的および化学的安定
性にすぐれており、鉄系材料との反応性がダイヤモンド
に比べて低いなどの特性を有することから、超高圧、高
温下で焼結して得られたcBN焼結体はワイヤ放電加工
機等で適当な大きさに切断し、超硬チップ、エンドミル
等に蝋付けして切削用工具としたり、耐摩耗性用品の材
料として用いられている。
【0003】しかしながら、cBN成形体の製造には上
述のように、超高圧、高温による合成を必要とすること
から、複雑な形状のものが得難く、また量産性が低く、
かつ製造コストが非常に高くつくなどから、この成形体
の使用範囲は著しく限定されている。また、処理工程の
煩雑さと処理温度が高温であるため、量産工具であるハ
イス材小型工具への適応が行えないこともあって大幅な
普及には至っていない。
【0004】そこで、上記したcBNが持っている特性
を活かすべく、基材表面にcBNからなる被覆層を形成
することにより、低コストで基材の耐摩耗性、耐食性を
向上させた成形体を得る試みが広く行われている。この
ようなcBNによる被覆はCVD法やPVD法などによ
り、cBN膜を基材表面に析出させることが試みられ、
cBNの気相合成による被覆が工業的に可能になってき
ている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記の気相合成法によ
って得たcBN皮膜は、その製法の如何に係わらず大き
な内部応力を持っているため成膜後に剥離を起こしやす
く、cBN膜のみでは0.1μm以上になると剥離して
しまう。このようなcBN膜の剥離を防止するために、
例えば特開平8−60339号公報では基材界面に中間
層としてTi膜を形成し、その後に窒素組成を変化させ
ながらホウ素のイオンプレーティングを行って、ホウ素
と窒素の傾斜層を形成させ、この傾斜層を介してcBN
層を形成することで0.5μm程度のcBN膜を得る方
法が提案されている。
【0006】しかし、このような成膜方法によるcBN
膜では、切削テストで剥離が生じることから実用的な密
着強度を得ることは困難である。
【0007】基材に対するcBN膜の付着力向上を図る
ための対策として、上記した特開平8−60339号公
報では、傾斜層を介して形成したcBN層にホウ素イオ
ンを注入したのち、800℃前後でアニーリングを施す
方法が開示され、また、特開平9−95774号公報に
おいては、基体上に形成したホウ素過剰の窒化ホウ素膜
を窒素または不活性ガス雰囲気下で200〜1000℃
でアニーリングする方法が、特開平8−165558号
公報では基材表面に窒化チタンと炭化ホウ素の中間層を
形成する方法が提案されている。さらに、特開平10−
18025号公報には、基材上に設けた窒化チタン膜か
らなる中間層上に、イオン注入によってホウ素を蒸着す
ると同時に窒素ガスと不活性ガスを注入して窒化チタン
と窒化ホウ素のミキシング層を形成する方法が開示され
ている。
【0008】これらの上記した方法によって基材上に成
膜したcBN膜のなかには切削テストにおいて異常のな
いものも見られるが、殆どのものが成膜処理において、
イオン源の近傍における温度上昇、基板加熱、アニール
処理など温度条件が500℃を超え、高速度鋼の硬度が
維持できない方法であって、従って上記の方法は何れも
主として超硬材を対象基材とするものである。
【0009】cBN膜は、その膜厚が0.8〜1.0μ
mになると、cBN構造が変化する傾向がある。従っ
て、cBN膜が1.0μm以上の厚膜の場合には、cB
N膜の特性が劣化する恐れがある。また、cBN膜は、
cBN微結晶の集合体であって結晶粒界に粒界不純物を
含んでいる場合があり、この粒界不純物が耐候性に弱い
とされている。このため、上記したような方法による最
表面にcBN膜が析出した被覆体にあっては空気中の湿
度等の影響によって最表面のcBN膜が徐々に変質、体
積膨張して剥離するという問題がある。
【0010】上記に鑑みて、この発明は基板へのcBN
膜の成膜に当たって、cBN膜の基板界面との密着性の
向上および耐候性の改良を図るべく検討した結果、Ti
N膜を介在させ、さらに上述した従来公知の傾斜組成層
やミキシング層に変えて成膜条件を数段階に変えた段階
的BN成膜による積層構造の成膜法とすることで、汎用
工具材料である高速度鋼にも対応することのできる成膜
法を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、
a:基板のボンバード処理を行う工程と、b:ボンバー
ド処理した基板界面にTi膜および/またはTiN膜を
形成する工程と、c:上記Ti膜および/またはTiN
膜上にTi膜、B膜さらに段階的に組成比率を変えたB
N膜からなる緩衝膜Iを形成する工程と、d:上記緩衝
膜I上にcBN膜を形成する工程と、からなることを特
徴とする窒化ホウ素膜の成膜方法である。
【0012】請求項2記載の発明は、a:基板のボンバ
ード処理を行う工程と、b:ボンバード処理した基板界
面にTi膜および/またはTiN膜を形成する工程と、
c:上記Ti膜および/またはTiN膜上にTi膜、B
膜さらに段階的に組成比率を変えたBN膜からなる緩衝
膜Iを形成する工程と、d:上記緩衝膜I上にcBN膜
を形成する工程と、を複数回繰り返してcBNの多層膜
を形成するに際し、この繰り返し工程におけるcBN膜
上へのTiN膜の形成に当たって、B膜、Ti膜からな
る緩衝膜IIの形成工程を介在させることを特徴とする
窒化ホウ素多層膜の成膜方法である。
【0013】請求項3記載の発明は、上記請求項2記載
の成膜方法において、最表面をcBN膜に代えてTiN
膜とすることを特徴とする。また、請求項4記載の発明
は、上記請求項1乃至3記載の成膜方法のいずれかにお
いて、TiN膜が3層以上の奇数の多層構成からなるこ
とを特徴とするものである。
【0014】上記の請求項1の発明は、基板に窒化ホウ
素膜を成膜するに当たって、まずボンバード処理した基
板にTi膜および/またはTiN膜を形成し、次いでT
i膜、B膜、さらに段階的に組成比率を変えたBN膜か
らなる緩衝膜Iを形成してから、その上にcBN膜を形
成するものであり、TiN膜で基板との密着性をはか
り、またTi膜、B膜、さらに段階的に組成比率を変え
たBN膜からなる緩衝膜Iの形成は、TiN膜に直接c
BN膜を形成した場合に、大気中で両者の界面で剥離が
発生しやすいという現象を防止するものであり、さら
に、この緩衝膜IとしてTi膜、B膜についで段階的に
組成比率を変えたBN膜を形成することによって、cB
N膜が形成される界面のBN膜のB/N比を1に近い組
成とし、cBN膜とのより高い実用的な密着力を得るこ
とができるのである。
【0015】請求項2の発明は、請求項1の成膜方法を
繰り返してcBNの多層膜を形成するに際して、cBN
膜とTiN膜との間にB膜、Ti膜からなる緩衝膜II
を介在させることによってcBN膜とTiN膜との密着
性を改善し、cBN膜の多層構造を可能としたものであ
る。
【0016】これは、cBN膜は0.8〜1.0μm程
度の膜厚になると、cBN構造とは異なる構造の薄膜と
なる傾向がみられる。このため、cBN構造を維持して
実用的に応用可能なcBN膜を得ようとすると、その膜
厚は0.8μm程度までとすることが望まれる。従って
この発明では膜厚0.5〜2.0μmを持つTiN/B
Nを基本単位とした多層積層構造とすることで0.5〜
20μmの多層膜を得ることができる。
【0017】請求項3の発明は、請求項2の発明におい
て得られる窒化ホウ素膜がその最表面層がcBN膜とな
っていて、上述したように耐候性劣化によって剥離する
おそれがあるため、cBN膜をTiN膜で覆ってcBN
膜が直接大気に曝されることを防止することで耐候性を
改善するものである。
【0018】請求項4の発明は、請求項1〜3の発明に
おいて形成するTiN膜を3層またはそれ以上の奇数の
結晶構造の異なる多層膜構成とすることで、結晶粒によ
る表面荒れがなくなり、膜中のピンホールを埋める効果
を果たすことができる。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、この発明の成膜方法につい
て説明する。この発明の方法はアーク放電型イオンプレ
ーティング法、反応性イオンプレーティング法、磁界励
起型イオンプレーティング法などの各種のイオンプレー
ティング法によることが可能であるが、なかでも基板ボ
ンバードから最終の皮膜形成工程までを一つの装置で実
施することのできる磁界励起型イオンプレーティング法
が特に好ましい。
【0020】そのような磁界励起型イオンプレーティン
グ方法に用いる装置の一例は図5に示すようなものであ
り、真空槽21内の基板ホルダー32に基板1が取り付
けられ、この基板ホルダー32のやや下方にエッチング
防止板33が設けられている。真空槽21内の下方の蒸
発源22には、蒸発材料23を入れた坩堝24と蒸発材
料23を加熱して蒸発させる電子銃25を備えている。
【0021】上記の基板1の下方寄りには熱電子放出用
カソード41と、これと対向するアノード43が設けら
れ、その同一水平面内の位置に平行磁界発生用マグネッ
トケース46a、46bに収容した一対の磁石45a、
45bが配置されており、上記マグネットケース46
a、46bの背面には基板1付近で磁束密度均一分布を
大とするための逆L字型のヨーク47a、47bが設置
されている。また、48は鉄系材料よりなるメッシュ板
である。
【0022】そして、真空槽21を真空排気後、ガスノ
ズル38からArガス等を導入し、カソード41とアノ
ードに電圧を印加して磁石45a、45b間にプラズマ
を発生させると同時に蒸発源の電子ビーム26を作動し
て蒸発材料を蒸発させ、基板1に印加した高周波電力3
4によって蒸発材料23を基板1上に反応生成膜として
形成させるのである。
【0023】上記の方法において、基板に窒化ホウ素膜
を成膜するに当たって、基板のクリーニングのためにボ
ンバードを行うが、この発明ではクリーニングの効果を
顕著なものとするために、以下に示す順で3種類のボン
バードを行う。
【0024】(a)グロー放電ボンバード:基板をセッ
トし真空排気した真空槽内にArガス、H2 ガスまたは
Ar+H2 の混合ガスを導入し、基板に印加した高周波
または負の電圧により、基板−真空壁間でグロー放電を
起こさせて、基板表面を10〜20分間クリーニングす
る。 (b)高真空ボンバード:真空槽内に導入した4〜8×
10-2PaのArガスを平行磁界の重畳されたアノード
と熱電子放出フィラメントであるカソード間で放電さ
せ、この放電で生成されたArイオンで基材に印加した
高周波または負の電圧により、基板表面を10〜20分
間クリーニングする。 (c)Tiボンバード:1×10-3Pa程度の高真空と
した真空槽内で、坩堝内のTiを蒸発源によって蒸発さ
せ、1〜3×10-2PaのArガスを導入し、このAr
ガスまたはTiを平行磁界の重畳されたアノードと熱電
子放出フィラメントであるカソード間で放電させ、この
放電で生成された、主にTiイオンで基材に印加した高
周波または負の電圧により、基板表面を3〜10分間ク
リーニングする。
【0025】この発明の方法によって基板に窒化ホウ素
膜を成膜するに際し、まず最初に基板界面にTi膜およ
び/またはTiN膜を形成させるが、これは種々の基板
に密着性よく付着するTi膜および/またはTiN膜の
特性を応用するものであり、この形成によってcBN膜
が基板の種類により変化する付着特性を回避できるので
ある。この他、TiN膜を形成させることにより、基板
界面での付着力を向上させる手法として既に確立されて
いる技術を使用できるという利点がある。また、この発
明の方法によるcBN膜作成条件では、イオン源と基板
との距離が近いため、生成イオンによる基板のエッチン
グ力が大きく、基板界面に形成される薄膜の耐エッチン
グ性が重視されるが、この点に関してもTiN膜はすぐ
れているのである。
【0026】また、TiN膜は、この発明の成膜法にお
いて、耐候性の点から最表面層としても用いるが、この
TiN膜層は膜中のピンホール、平滑度を維持すること
が必要である。このためには、結晶構造の異なるTiN
層を交互に積層させる構成とすれば、結晶粒による表面
荒れが少なくなり、ピンホールを埋める効果が期待でき
るのである。このため、TiN膜は膜厚0.2〜1.0
μm、3層〜9層の奇数の多層構造とし、Ti:Nの組
成比を奇数層は1:1の層とし、偶数層はNの量を1よ
り少とする層を配置する。
【0027】このようにしてTiN膜を形成した基板上
には密着性の問題から直接cBN膜ができず、この発明
ではTi膜、B膜、段階的に組成比率を変えたBN膜か
らなる緩衝膜Iを介在させたのちにcBN膜を形成す
る。このBN膜は、Ti膜を形成した後に、B膜の形成
からBとNの組成比を0から1まで傾斜する緩衝膜を作
成する方法では剥離を起こしやすいhBN層が形成され
る恐れがあるので、この剥離しやすいhBN層を回避す
ることを目的として、B膜形成後にArガスとN 2 ガス
の流量比、基板バイアス(高周波電力)量、成膜時間を
4段階に制御することで上層になるにしたがってB/N
=1に近い組成のBN膜を形成する。かくして形成した
緩衝膜Iの上に0.3〜0.8μmのcBN膜を成膜す
ることでこの発明の窒化ホウ素膜が得られる。
【0028】上記のcBN膜は0.8〜1.0μm程度
の膜厚になると、cBN構造とは異なる構造の膜となる
傾向がみられる。cBN構造を維持して実用的に応用可
能なcBN膜を得ようとすると、その膜厚は0.8μm
程度までとすることが望まれる。従ってこの発明では膜
厚0.5〜2.0μmを持つTiN/BNを基本単位と
した多層構造とすることで0.5〜20μmの多層膜を
得ることができるのである。この場合、cBN膜上に直
接TiN膜を成膜すると、上述したようにTiN膜の剥
離が起きるが、cBN膜上にB膜、Ti膜からなる緩衝
膜IIを形成することにより、上記の多層膜の成膜を可
能とするものである。
【0029】
【実施例】次に、この発明を実施例により詳細に説明す
る。 実施例1 基板として3.4mmφの高速度鋼製ストレートドリル
を用い、これを例えば図5に示す成膜装置(磁界励起型
イオンプレーティング装置)を使用して、以下の順序で
窒化ホウ素膜の成膜を行った。なお、使用材料は99.
9%純度のホウ素、99%純度のチタン、99.99%
純度のAr、および99.99%純度のN2 である。
【0030】(A).基板クリーニング 上記ドリルを基板1として真空槽21内の基板ホルダー
22に取付け、槽内を2×10-4Paまで真空排気し、
基板温度を250℃に保持したのち、まず基板クリーニ
ングとして次の3種類のボンバードを続けて実施した。 (1)グロー放電ボンバード:2.5〜40PaのAr
ガスを導入し、基板に印加した100〜200Wの高周
波電力により基板−真空壁間でグロー放電を起こさせて
20分間基板表面のクリーニングを行った。 (2)高真空ボンバード:次いで、6.7×10-2Pa
のArガスを槽内に導入し、平行磁界中に65V印加さ
れたアノード電圧と、300Wのカソード間でアノード
電流15Aとなる放電をさせ、この放電によって生成し
たArイオンにより基板に印加した200W〜300W
の高周波電力で基板表面をクリーニングした。 (3)Tiボンバード:Tiを5.5kWの電子銃にて
加熱蒸発させ、2.0×10-2PaのArガスを導入
し、平行磁界中に65V印加されたアノード電圧と、3
00Wのカソード間でアノード電流15Aとなる放電に
よってイオン化したTiイオンにより、基板1に360
Wの高周波バイアスを印加して2分間のクリーニングを
行った(図1(a))。
【0031】(B).TiN膜の成膜 次いで、上記でクリーニングした基板1表面に以下のよ
うにしてTiN膜2を成膜した。即ち、Tiを5.5k
Wの電子銃25にて加熱蒸発させ、2.0×10-2Pa
のArガスをガスノズル38から導入し、平行磁界中に
50V印加されたアノード43と、300Wのカソード
41間でアノード電流20Aとなる放電をさせてTiを
イオン化させながら、基板1に200Wの高周波バイア
ス(RF)34を印加し、N2 ガスを3分間導入して図
1(b)のような0.3〜0.7μmのTiN膜2を成
膜した。なお、このTiN膜は、上記N2 ガスの3分間
の導入量を、最初の1分間150mL/min、次の1
分間75mL/min、そして最後の1分間は150m
L/minと変えることによって、図2(a)に示すよ
うに中間の層2bがその上下の層2a、2cに比べてN
2 量の少ない3層構成のTiN膜2となるようにした。
【0032】(C).cBN膜の成膜 (C)−1 緩衝膜Iの成膜 上記でTiN膜2を形成した基板1上に、0.1μm以
上のcBN膜を成膜する場合にはTiN膜とcBN膜と
の密着性を維持するために、TiN膜2上にTi膜、B
膜、段階的に組成比率を変えたBN膜からなる0.1〜
0.3μmの緩衝膜I(図2(b))を上記TiN膜の
成膜と同じ方法で、但し次のような条件にて成膜3した
(図1(c))。 Ti膜成膜の条件:Tiの電子銃出力 5.5kW アノード電圧 50V アノード電流 10A カソード電流 300W 導入Arガス圧力 2.0×10-2Pa RF出力 200W 成膜時間 15秒 B膜成膜の条件: Bの電子銃出力 6.0kW アノード電圧 40V アノード電流 10A カソード電流 300W 導入Arガス圧力 6.7×10-2Pa 導入Arガス量 12mL/min RF出力 150W 成膜時間 15秒 組成比率を段階的に変えたBN膜の成膜条件は、上記B
膜を15秒間で成膜したのち、Arガス圧力と同圧力で
2 ガスを同時に導入し、この両者の流量比、RF出
力、成膜時間を、 N2 :Ar=1:1、 RF=220W、 15秒 N2 :Ar=1.5:1、 RF=220W、 15秒 N2 :Ar=1.5:1、 RF=250W、 45秒 N2 :Ar=1.5:1、 RF=300W、 120秒 とすることにより、B膜層上に形成させるBN層をその
下層から上層にいくに従って、N2 量を多くしてホウ素
過剰なアモルファスBNを形成していき、最終的には最
表面がB/N=1に近いBN膜とすることで、この層上
へ形成するcBN膜との密着性を充分に維持することが
できるのである。
【0033】(C)−2.cBN膜の成膜 次いで、上記で形成した3の緩衝膜Iの上に、 Bの電子銃出力 6.0kW アノード電圧 40V アノード電流 10A カソード電流 300W 導入ガス圧力 6.7×10-2Pa 導入Arガス量 12mL/min 導入N2 ガス量 18mL/min RF出力 360W 成膜時間 4分 の条件で0.3〜0.8μmのcBN膜4の成膜を行な
って、図1(d)に示すようなこの発明の窒化ホウ素膜
を得た。
【0034】実施例2 上記実施例1における(C)−2のcBN膜を成膜した
のち、引き続いて真空槽21内にて実施例1と同じ方法
にて、B膜、Ti膜からなる5の0.1〜0.3μm
(但し、膜厚比はB/Ti=1である)の緩衝膜II
(図2(c))を次の(D)の条件にて形成し、さらに
実施例1の(B)のTiN成膜工程、(C)のcBN成
膜工程を1サイクル繰り返して(合計2サイクル)図3
に示すような構成の窒化ホウ素の多層膜を得た。また、
同じ方法で3サイクルの成膜工程を施し、最表面層をT
iN膜とした窒化ホウ素の多層薄膜構成を図4に示し
た。そして、この場合の最表面層TiN膜の成膜は下記
(E)の条件で行った。 (D).緩衝膜IIの成膜 (D)−1 B膜の成膜 Bの電子銃出力 6.0kW アノード電圧 40V アノード電流 10A カソード電流 300W 導入ガス圧力 6.7×10-2Pa 導入Arガス量 12mL/min RF出力 150W 成膜時間 15秒 (D)−2 Ti膜の成膜 Tiの電子銃出力 5.5kW アノード電圧 50V アノード電流 10A カソード電流 300W 導入ガス圧力 2.0×10-2Pa 導入Arガス量 12mL/min RF出力 200W 成膜時間 15秒 (E).TiN膜の成膜 Tiの電子銃出力 5.5kW アノード電圧 50V アノード電流 20A カソード電流 300W 導入ガス圧力 2.0×10-2Pa 導入Arガス量 12mL/min N2 ガス量 最初の1分間150mL/min 次の1分間75mL/min 次の1分間150mL/min RF出力 200W 成膜時間 3分
【0035】かくして得られた被膜が立方晶窒化ホウ素
相を含有しているか否かを同定するため、被膜を形成し
たドリルの刃先近傍部をフーリエ変換赤外吸収分光法
(FT−IR)にて測定したところ、図6に示されるよ
うにcBN相を多く含んでいる被膜であることが認めら
れた。
【0036】次に、上記実施例2にて3サイクルの成膜
を行ってcBNの多層膜を3.5μm形成したφ3.4
mmの高速度鋼製ストレートドリルを用い、比較テスト
として、未処理のφ3.4mmの高速度鋼製ストレート
ドリル(比較品1)および高真空アーク放電型イオンプ
レーティング方式にてTiN膜を3.0μm成膜したφ
3.4mmの高速度鋼製ストレートドリル(市販品、比
較品2)を用いて、ドリル回転数:500rpm、被削
材:SUS304、切削速度:5.3m/min、送り
量:0.1〜0.35mm/rev(一回転)、切削
材:無給油、穴深さ:10mmの切削条件にて切削テス
トを行ったところ、この発明の成膜を行ったドリルは穴
あけ回数47回を記録したのに対し、比較品1は5回、
比較品2は16回の結果を得、この発明の成膜によって
未処理のものの9倍以上、市販品に比べても約3倍の寿
命を示した。
【0037】以上のテスト結果から、この発明の成膜方
法によれば、切削工具上に切削に耐え得る密着性にすぐ
れたcBN積層被膜が形成されていることが認められ、
しかも高速度鋼ドリルを用いて市販品より顕著な長寿命
を確認できたことによって、この成膜方法が500℃程
度の比較的低温で成膜可能であることを如実に示すもの
である。
【0038】
【発明の効果】以上説明したように、この発明の成膜方
法は、最初にTiN膜を施すことで多種類の、特に密着
性の点で直接cBN被膜を形成することのできなかった
基板にもcBN膜を適用可能とし、また多層膜構造とす
ることによって、これを高速度鋼、超硬合金等の切削工
具に適用して、切削時に摩耗による薄膜の消耗があって
も、次々にcBN膜面が表れるために長寿命化が期待で
きる。また、切削時にcBN膜面にたとえ亀裂が入って
もTiN膜面でストップすることができること、さらに
cBN膜面をTiN膜で覆うことで耐候性を改良できる
ので、これまでcBN膜を最表面膜としていて大気中の
湿度等の影響でcBN膜が変質し、cBN膜中の粒界部
で剥離が発生するといった問題も充分防止することがで
きるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の成膜方法の一実施例の手順と構成を
示す模式断面図である。
【図2】この発明の成膜方法で実施するTiN膜、緩衝
膜I、IIの膜構成を示す模式面図である。
【図3】この発明の成膜方法の他の実施例の構成を示す
模式断面図である。
【図4】この発明の成膜方法のさらに他の実施例の構成
を示す模式断面図である。
【図5】この発明の方法を実施するに用いる成膜装置の
一例を示す概略図である。
【図6】この発明の成膜方法で得られたcBN膜のIR
スペクトル図である。
【符号の説明】
1 基板 2 TiN膜 3 緩衝膜I 4 cBN膜 5 緩衝膜II 21 真空槽 23 蒸発材料 25 電子銃 33 エッチング防止板 41 熱電子放出用カソード 43 アノード 45a、45b 磁石

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 a:基板のボンバード処理を行う工程
    と、 b:ボンバード処理した基板界面にTi膜および/また
    はTiN膜を形成する工程と、 c:上記Ti膜および/またはTiN膜上にTi膜、B
    膜さらに段階的に組成比率を変えたBN膜からなる緩衝
    膜Iを形成する工程と、 d:上記緩衝膜I上にcBN膜を形成する工程と、から
    なることを特徴とする窒化ホウ素膜の成膜方法。
  2. 【請求項2】 a:基板のボンバード処理を行う工程
    と、 b:ボンバード処理した基板界面にTi膜および/また
    はTiN膜を形成する工程と、 c:上記Ti膜および/またはTiN膜上にTi膜、B
    膜さらに段階的に組成比率を変えたBN膜からなる緩衝
    膜Iを形成する工程と、 d:上記緩衝膜I上にcBN膜を形成する工程と、を複
    数回繰り返してcBNの多層膜を形成するに際し、この
    繰り返し工程におけるcBN膜上へのTiN膜の形成に
    当たって、B膜、Ti膜からなる緩衝膜IIの形成工程
    を介在させることを特徴とする窒化ホウ素多層膜の成膜
    方法。
  3. 【請求項3】 上記窒化ホウ素膜の成膜方法において、
    最表面をcBN膜に代えてTiN膜とすることを特徴と
    する請求項2に記載の窒化ホウ素膜の成膜方法。
  4. 【請求項4】 上記窒化ホウ素膜の成膜方法において、
    TiN膜が3層以上の奇数の多層構成からなることを特
    徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の窒化ホウ素
    膜の成膜方法。
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