JP2959681B2 - 光電変換装置 - Google Patents

光電変換装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は光電変換装置に係り、特
に光生成されたキャリアを衝突電離により増幅するアバ
ランシェ(Avalanche )効果を利用した光電変換装置に
関するものである。
【0002】また、本発明は、とりわけカメラの測光用
センサ、或いはファクシミリ、複写機等の画像読取装置
用イメージセンサ、又は、光通信装置等の受光センサ等
に好適に用いられる低雑音の光電変換装置に関するもの
である。
【0003】
【従来の技術】光を情報信号の媒体とする例えば映像情
報システム、光通信、その他の産業、民生分野等の情報
伝送技術において、光信号を電気信号に変換する半導体
受光素子は、もっとも重要で基本的な構成要素の一つで
あり、すでに数多くのものが実用化されている。一般
に、半導体受光素子には、その光電変換特性に対し、高
い信号対雑音比を持つことが要求される。このうち、ア
バランシェ効果を利用したアバランシェフォトダイオー
ド(以下APDと称する)は、利得が高く、かつ、応答
速度が早いので、こうした要求を満たす半導体受光素子
の有力な候補である。
【0004】このAPDは、現在では、特に光通信シス
テムにおける半導体受光素子として、InGaAs等の化合物
半導体を材料として、すでに多数実用化されており、更
に低雑音、高速応答性、高利得など素子の基本性能向上
の開発が進められており、他の分野、例えば、可視光受
光素子などへの応用も望まれている。
【0005】第41図は従来の光通信用APDの構造を
示す縦断面図である。同図において、101はn+ 型I
nP層、102はn型InGaAs層、103はn型InP
層、104はp+ 型InP層である。ここで、n型InGa
As層102、n型InP層103、p+ 型InP層10
4の層はメサ型に形成されている。p+ 型InP層10
4の上面には、窓105を残してp電極106を形成
し、n+ 型InP層101の裏面にはn電極107を形
成する。108はパッシベーション膜である。ここでp
電極106及びn電極107を逆方向にバイアスしてお
き、窓105から光照射すると、光はn型InGaAs層10
2(光吸収層となる)で吸収され、光−電気変換が行わ
れる。すなわち、n型InGaAs層102で形成された電子
−正孔対は各々n電極107及びp電極106に向かっ
て走行する。n型InP層103(増倍層となる)は強
い電界を有しているため、正孔の走行過程で多数の電子
−正孔対を形成するナダレ現象を生じ、光子1個に対し
て複数個の電子−正孔対を形成する増倍作用が生じる。
この結果、微弱な入射光でも信号検知できる。しかし、
従来の構造においては、実用上の増倍は約2程度と小さ
く、また、増倍過程に内在するゆらぎのため、過剰増倍
雑音が発生し信号対雑音比(S/N比)を低下させてし
まうといった2つの欠点を有していた。
【0006】アバランシェ増倍過程において発生する雑
音は、例えば、IEEE Transactionson Electron Devices
の第13版(1966年1月号)の164〜168ページ
に掲載されている R.J.McIntyre の論文によれば、電子
のイオン化率αと正孔のイオン化率βの比k=β/αに
強く依存することが知られている。
【0007】ここで電子のイオン化率とは、電子が電界
により加速されたとき衝突電離により電子−正孔対が生
成される割合である。正孔のイオン化率とは、正孔によ
る衝突電離の割合である。さらに、この論文によれば、
低雑音のAPDを得るためには、電子増倍を行うときに
はkを小さく、また、正孔増倍を行うときにはkを大き
くすればよいことが明らかにされている。すなわち、キ
ャリア(電子ないしは正孔)のイオン化率が大きく異な
る材料で、イオン化率が大きい方のキャリアのみをアバ
ランシェ増倍することが、APDにおいて高い信号対雑
音比を得るために重要である。また、この論文によれ
ば、一方のキャリアのみをアバランシェ増倍したときに
達せられる低雑音化の極限として、過剰雑音指数Fが2
となることが述べられている。雑音が全く発生しない理
想的な場合にはFは1となるはずであり、F=2という
極限には、まだ、雑音を発生させる何らかの機構が存在
することを暗示している。この機構としては、アバラン
シェ増倍を行う際にアバランシェ増倍の素過程であるイ
オン化(逆オージェ発生)の起こる場所が個々にゆら
ぎ、それが積算されて全体として増倍率のゆらぎを引き
起こすという現象が考えられる。
【0008】以上のことを考え合わせると、雑音を発生
させないアバランシェ増倍を行うためには、その素過
程であるイオン化を起こす場所を素子の中で特定し、か
つ、前記イオン化を起こす場所におけるイオン化の確
率を特定することが必要になる。さらに、高利得のアバ
ランシェ増倍を行うためには、そのイオン化の確率を限
りなく1に近づけることが重要である。
【0009】前述した増倍の程度の小ささ、及び信号対
雑音比(S/N比)の低下という2つの欠点を鑑みて光
通信用APDとして、例えば、F.Capasso らは特開昭58
-157179 号公報や IEEE Electron Device Letters の第
EDL3版(1982年)の71〜73ページに、分子線エピタ
キシー(MBE)法など用いて、主にIII −V族に属す
る化合物半導体を用いて作成される光通信システムに使
用可能な低雑音APDを提案している。
【0010】その素子は、その構成材料の組成比(例え
ば、III −V族に属する化合物半導体がその構成材料な
らば、III 族の半導体とV族の半導体の組成比)を変化
させることにより、バンドギャップを狭い側から広い側
へと連続的に変化させた半導体層を多数重ね、その際に
形成されるエネルギ帯の階段状遷移部(以下ステップバ
ック構造と略す)を利用してイオン化を促進する多層へ
テロ接合構造を特色としている。そこで提案されている
素子の概略的構造を図42〜図44を用いて説明する。
【0011】図42は、この素子の縦断面図であり、増
倍層となる5つの層から成るステップバック構造層20
1,203,205,207及び209が光吸収層とな
るp型半導体層211及びn型半導体層215で挟ま
れ、電極213がp型半導体層211に、また、電極2
14がn型半導体層215にそれぞれオーミック接触し
ている。
【0012】図43は、この素子の無バイアス時のバン
ドギャップ傾斜層のエネルギ帯の構造図であり、3つの
バンドギャップ傾斜層が示されている。各層は、狭いバ
ンドギャップEg2から広いバンドギャップEg3へと
直線的にバンドギャップを変化させる組成を有してい
る。
【0013】伝導帯及び価電子帯のステップバックの大
きさは、それぞれΔEc、ΔEvで示されている。な
お、後で説明するように、主に電子をイオン化しやすく
するために、ΔEcの方をΔEvよりも大きくとってい
る。
【0014】図44は、この素子に逆バイアス電圧を印
加したときのエネルギ帯の構造図である。尚、逆バイア
ス電圧は、前述の図41に示したAPDと比べて強い電
界である必要がない。
【0015】ここで、p型半導体層211より光入射す
ると、p型半導体層及び各ステップバック構造層で吸収
された光は、前述のAPDと同様に光電変換が行われ、
形成された電子−正孔対は、おのおのn型半導体層21
5、p型半導体層211に向かって走行するが、前述の
図41に示したAPDとの相違は各ステップバック構造
のエネルギ段差ΔEc(電子の場合であり、ホールの場
合はΔEv)がイオン化エネルギより大きくなるとき、
電子はイオン化され、電子−正孔対を発生し、増倍作用
を生ずる。むろん、ステップバック構造層各々が、同様
の作用をするために、増倍はその層数nに対して2n
ずる。例えば、理想的にはΔEc≫ΔEv≒0とするこ
とで、正孔のイオン化率が、電子のイオン化率に比べ非
常に小さく抑えられるので、前述のAPDと比べて低雑
音となる。
【0016】即ち、バイアス電圧は、ステップバック構
造層(バンドギャップ傾斜層)201,203,205
および209が少なくとも空乏化し、かつ、バンドギャ
ップ傾斜層内ではキャリアのドリフトは起こるがイオン
化は起こらない程度の電界(ドリフト電界)が生じるよ
うに印加されている。光hνは、p型半導体層211の
次の空乏領域、すなわち、バンドギャップ傾斜層201
で吸収され電子を伝導帯に、正孔を価電子帯にそれぞれ
発生させる。発生した電子は層201内を第1の伝導帯
のステップバックに向かってドリフトする。ステップバ
ックのところには既にΔEcなるエネルギ段差があり、
電子はイオン化を起こすのに必要なエネルギをこのエネ
ルギ段差ΔEc分だけ補うことが出来るので、ステップ
バックのすぐ後ろで電子がイオン化を起こす確率が高く
なる。ここで、このエネルギ段差ΔEcが電子のイオン
化エネルギに等しいかまたはそれよりも大きい場合に
は、また、たとえ電子のイオン化エネルギよりも小さい
場合でも、ドリフト電界から不足分のエネルギを供給で
きる場合には、ステップバックの後ろでイオン化を起こ
す確率を十分に1に近づけることができる。イオン化を
起こすと1つの電子が2つの電子と1つの正孔になる。
2つの電子はバンドギャップ傾斜層201の中を第2の
ステップバックに向かってドリフトしていき、第2のス
テップバックで上記と同様の現象を起こす。一方イオン
化によりバンドギャップ傾斜層201内の前方で発生し
た正孔は電子とは逆に前方にドリフトしてゆき、第1の
ステップバックに達する。もしも、第1のステップバッ
クの価電子帯に正孔がイオン化を起こさない程度のエネ
ルギ段差ΔEvがあらかじめ存在していれば、ドリフト
してきた正孔は理想的にさらにそのまま前方へ進む。図
44のような正孔から見て前方に正のエネルギ段差があ
れば、正孔はステップバックのところで散乱ないしは蓄
積されるがイオン化は起こさない。このようにして、電
子のドリフトとイオン化、正孔のドリフトを各バンドギ
ャップ傾斜層およびステップバックで繰り返し起こし、
キャリアの数は増倍されていくことになる。最終的に
は、イオン化により増倍された電子はN型半導体層に達
し、N型半導体層にオーミック接触された層から電子電
流として、また、正孔はP型半導体層に達し、P型半導
体層にオーミック接触された層から正孔電流とし取り出
される。
【0017】以上のような、その構成材料の組成比を変
化させることにより、バンドギャップを狭い側から広い
側へと連続的に変化させた半導体層を多数重ね、その際
に形成されるステップバックを利用してイオン化を促進
する多層ヘテロ接合構造により、上述したような、イオ
ン化を起こす場所を特定し、イオン化の確率を限りなく
1に近づけ、低雑音のAPDを構成できる。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】以上説明したような素
子構造は低雑音のAPDを実現化するための一つの手段
であるが、こうした構造を持った素子を作成するには実
際にはさまざまな制約をうける。
【0019】まず、上述したような、イオン化を促進で
きるようなステップバック構造層を持った素子を、その
構成材料の組成比だけを変化させることによって得るた
めには、構成材料、作成方法が限定されてしまう。例え
ば、III −V族の化合物半導体の、GaSbの基板上にAlGa
AsSb/GaSb を成長させたもの、InPの基板上にInGaAl
As/InGaAs を成長させたもの、GaSbの基板上にInGaAsSb
/GaSbを成長させたもの、また、格子整合基板上にII−V
I族の化合物半導体のHgCdTeを成長させたものなどがこ
うした構造を持った素子を構成できる材料としてあげら
れる。
【0020】しかしながら、ここで使われる、Ga,As,H
g,Cd などは毒性が強く、また、希少高価な元素である
ので、工業的に取り扱うには問題の多い材料である。
【0021】また、これらはいずれも、分子線エピタキ
シー法(MBE法)で作成されているが、MBE法は、
超高真空を必要とし、また、半導体の成長速度も遅く、
大面積化にも不向きであり、量産化が困難であった。さ
らに、MBE法は半導体の成長温度は典型的には500
℃〜650℃と高く、既に集積回路などが作成されてい
る半導体装置上にこうした受光素子を積層化して作成す
るようなことも、その既存の半導体装置に何らかのダメ
ージを与えてしまう問題点を有している。
【0022】さらにまた、こうした低雑音のAPDを作
成するには、ステップバックのところで必ずイオン化を
起こさせるように、これらの材料の組成比を変化させな
ければならないわけであり、そのためには、ヘテロ接合
界面のトラップ準位を生じさせないような格子整合性、
および、イオン化エネルギ程度以上のステップバックエ
ネルギ段差ΔEを持つような電子親和力を考慮して材料
の組成比を決定する必要が生じる。その結果、実際に作
成できるAPDのバンドギャップに制約をうけてしま
う。
【0023】例えば、まず、最初にあげた材料を使用し
た場合、実験によれば、格子整合構造の場合、バンドギ
ャップの最も狭い材料(GaSb)のバンドギャップは0.73eV
であり、バンドギャップの最も広い材料(Al1.0Ga0.0 As
0.08Sb0.92) のバンドギャップは1.58eVであり、最大バ
ンドギャップ差は伝導帯側で0.72eV、価電子帯側で0.13
eV、電子イオン化エネルギは0.80eV(GaSb)であることが
確かめられている。ステップバックにおける電子のイオ
ン化エネルギに対する不足分の0.08eVは、電子のドリフ
ト電界から供給されることになる。ところで、かかる素
子においては、光を照射していないときに発生する漏れ
電流(暗電流)信号が生じやすく、これが雑音成分を増
やすため、結局低雑音化をはかれないという大きな問題
を有している。暗電流が発生する原因としては、オーミ
ック接触した層(素子外部電極)から注入されるキャリ
ア、素子内部で欠陥準位、ヘテロ界面準位などを介して
熱的に発生するキャリアなどがあげられる。かかる素子
においては、まず、注入キャリアを阻止する効果が結果
的にP型半導体層およびN型半導体層を設置することに
より引き出されているが、この点に関して意識的かつ十
分な配慮がなされておらず、この効果は十分とはいえな
い。また、熱的に発生するキャリアの量は、欠陥準位密
度、界面準位密度などに依存するが、本質的にはバンド
ギャップの大きさに依存し、一般にはバンドギャップが
大きいほど熱的に発生するキャリアの量は少なくなるこ
とが知られている。しかしながら、かかる素子におい
て、熱的発生キャリアを抑制するには最小バンドギャッ
プが狭すぎるという欠点も有している。また、こうした
バンドギャップを持った半導体受光素子は、1.0 μm か
ら1.6 μm の波長領域の受光には適しているが、他の波
長領域の受光素子、例えば可視光受光素子として適して
いるとは言い難く、その応用分野は限られてしまってい
た。
【0024】次に、例えば、2番目にあげた材料の組み
合わせでは、イオン化エネルギが約1eVと大きいにもか
かわらず、ステップバックにおける伝導帯エネルギ段差
はわずか約0.6eV と小さいため、有望ではない。
【0025】上にあげた他の材料についても、最初の材
料と同様の欠点を有している。特に、最後にあげた材料
の組み合わせでは、例えば、Electronics Letters の第
18版12号 (1982年6月) の512〜514ページに
掲載されている T.P. Pearsall の論文によれば、Hgと
Cdの組成比を変化させることにより、最小バンドギャッ
プの0.5eV と最大バンドギャップの1.3eV を持った素子
を提案しているが、かかる素子においては最小バンドギ
ャップが大変狭く、したがって、熱的に発生する暗電流
の影響を受けやすくなってしまっている。
【0026】したがって、キャリアのイオン化率比を拡
大する構造を有する低雑音のAPDを有効に実用化する
ためには、材料、製法選択の自由度、暗電流の抑制、広
い受光波長領域を持ったバンド帯構造などが考慮されて
いることが必要である。
【0027】また、前記ステップバック構造層にも光が
入射することにより、前記ステップバック構造層内でも
キャリアが発生することがあり、入射する光の波長によ
って増倍率が変動してしまうことがあった。
【0028】即ち、上述したAPDの解決すべき技術的
課題を要約すると以下に示すとおりの性能上及び作成上
の技術的課題が挙げられる。
【0029】素子の性能上の技術的課題としては、 (1) 入射光がp型半導体層及び増倍層で吸収されるた
め、光の入射波長によって増倍率が変わり、読み取り素
子としては不適当である。 (2) 光吸収層、増倍層の禁制帯幅が小さいため、動作時
の暗電流が高く、雑音が大きい。 (3) 光通信用を目的としているために、材料が制限さ
れ、対応出来る光は約 800〜1600nmであり、可視光など
他の波長光に対応できない。
【0030】素子作成上の技術的課題としては、 (1) 化合物半導体により、ステップバック構造を作るに
は、組成変調が困難で、かつエネルギー段差ΔEc,Δ
Evの大きさに制限があり、低雑音化に限界がある。 (2) III −V、II−VI族等に属する化合物半導体を材料
としているため、材料の毒性、価格など工業材料として
の問題点を有している。 (3) 化合物半導体の形成方法は、超高真空の必要があ
る、高温(約500〜650℃)で成膜を行う必要があ
る、大面積化が困難である等の問題を有し、読み取り素
子としての製造方法として、不適当である。等が挙げら
れる。
【0031】本発明の目的は、前記従来の技術的課題を
解決すると共に高速応答性に優れ、入射光の波長による
増倍率の変動がなく、増倍特性が安定しており、可視部
光に対して特に低雑音高感度で、大面積化が容易で新規
な構成の光電変換装置を提供することにある。
【0032】また、本発明の目的は、暗電流の抑制され
た、広い受光波長領域、特に可視光波長領域で優れた特
性を持った光電変換装置たる半導体受光素子、特に、低
雑音のアバランシェフォトダイオードを提供することに
ある。
【課題を解決するための手段】本発明の光電変換装置
は、入射した光を吸収してキャリアを発生する光吸収層
と該キャリアを増倍する増倍層とを有する光電変換装置
において、前記光吸収層と前記増倍層との間に前記光吸
収層を透過した光が前記増倍層に入射することを防ぐ
光層を設けるとともに、外部から不必要なキャリアが前
記光吸収層及び前記増倍層に注入されるのを防ぐための
電荷注入阻止層を設けたことを特徴とする。
【0033】また、本発明の光電変換装置は、入射した
光を吸収してキャリアを発生する光吸収層と該キャリア
を増倍する増倍層とを有する光電変換装置において、第
1の電極と、前記第1の電極から不必要なキャリアが光
電変換装置内に注入されるのを防ぐための第1の電荷注
入阻止層と、前記増倍層と、前記増倍層中に光が侵入し
増倍率の変動が起こるのを防ぐための遮光層と、前記光
吸収層と、第2の電極から不必要なキャリアが光電変換
装置内に注入されるのを防ぐための第2の電荷注入阻止
層と、光透過性の前記第2の電極とをこの順で有するこ
とを特徴とする。
【0034】また、本発明の光電変換装置は、複数の光
電変換部にて発生した電気信号を出力する光電変換装置
において、入射した光を吸収してキャリアを発生する光
吸収層と、該キャリアを増倍する増倍層との間に遮光層
を有する光電変換部の複数を有し、前記光電変換部の複
数にて発生した電気信号を蓄積するための蓄積手段、前
記光電変換部の複数にて発生した電気信号を走査するた
めの走査手段、前記光電変換部の複数にて発生した電気
信号を読み出すための読み出し手段より選ばれる少なく
とも一つの手段を有する信号出力部とを有し、前記光電
変換部の複数と前記信号出力部とが電気的に接続されて
いることを特徴とする。 [作 用] 以下、図1〜図3を用いて、本発明の光電変換装置の構
造及びエネルギ帯の構造を説明するとともに本発明の作
用について説明する。
【0035】図1は、本発明の光電変換装置の構造を示
す概略的断面構造図であり、増倍層とは独立した光吸収
層405と該光吸収層405を透過した光が増倍層40
3内に入射するのを防ぐための遮光層404と増倍層4
03となる複数のステップバック構造層411,41
2,413とが、電荷注入阻止層となるp型半導体層4
06とn型半導体層402とで挟まれ、p型半導体層4
06と電極407、n型半導体層402と電極401
が、電気的に接続されている。なお、電荷注入阻止層と
なるp型半導体層406は、当然のことながら同様の効
果が期待できる、隣接する半導体層とショットキー接合
を形成する金属でも良い。またステップバック構造層は
三層の場合を示したが、これに限定されず、一層或いは
二層以上であればよい。
【0036】図2は、上記光電変換装置の無バイアス時
の模式的なエネルギ帯図である。図3は、上記光電変換
装置の逆バイアス印加時の模式的なエネルギ帯図であ
る。
【0037】アバランシェ効果と呼ばれる増倍機構の動
作原理は、Capasso らの提案した従来例と同様である
が、本発明の光電変換装置は、特に次のような作用を有
する。 (1) 増倍層403とは独立した光吸収層405とステッ
プバック層411〜413(増倍層403)との間に遮
光層404を設けたため光入射側から見て、前記光吸収
層より奥に設けた増倍層への光侵入がほとんどなく、増
倍層への光侵入による増倍率の変動が極めて少ない。 (2) 増倍層403は、非単結晶性の材料からなるのでΔ
Ecがイオン化閾値エネルギに近いか、それより大きい
ステップバック構造層(電子増倍のとき、ホール増倍の
ときは、ΔEvが大きい)を作りやすくなり、イオン化
が起こる場所が特定でき、且つそのイオン化の確率を1
に近づけることができるので低雑音でかつ、充分な増倍
率がとれる。 (3) 本発明の適用される光電変換装置の光吸収層405
及び増倍層403の構成材料としては、非単結晶材料が
使用できるので低温での形成及び大面積化の点で望まし
い。ここで非単結晶材料とは多結晶材料あるいは非晶質
材料であり、非晶質材料としては、いわゆる微結晶構造
なるものをもその範疇に含むものとする。具体的には水
素及び/又はハロゲン元素により補償された非晶質シリ
コン(以下 a-Si(H,X)と称す)、非晶質シリコンゲルマ
ニウム(以下a-SiGe(H,X) と称す)、非晶質シリコンカ
ーバイド(以下a-SiC(H,X)と称す)又は多結晶シリコン
等であり、又、非晶質シリコンとしては、その薄膜のX
線回折像がハローパターンに加え、Si [111] [220] [31
1]の各ミラー指数で特定されるピークを有するような結
晶性を有する非晶質シリコンをも含む。
【0038】このように、素子の構成材料が非単結晶材
料であるため、プラズマCVD法等で、低温(例えば、
200〜300℃)かつ大面積基板に容易に作成され、
また禁制帯幅の制御も組成変調等が容易にできるため、
ステップバック構造の増倍層も比較的容易にできるだけ
でなく、熱等による原子の拡散等が抑制され、比較的確
かなステップバック構造が容易にできる等、多層に積層
する上での問題が低減される。
【0039】また、特に、電荷注入阻止層では、比較的
広い禁制帯幅の材料、及びドーピング効果の高い結晶性
を有するアモルファスシリコン等の非単結晶材料で構成
できるので、暗電流が低減される。 (4) 光吸収層を形成する材料の選択の自由度が大きいた
め、光吸収係数が大きな材料(例えば水素化アモルファ
スシリコン“a-Si:H”等)を用いることができるため、
光吸収層の膜厚が薄くでき、装置全体を薄くできる。 (5) 光吸収層の禁制帯幅も前記(3) と同様の理由で自由
度が、増加するので、種々の波長の入射光に対して、高
感度の光電変換素子が構成できる。特に光吸収層405
の禁制帯幅Eg1を、可視部光に対応する禁制帯幅にす
る事で、可視部光に高感度を持たせることができる。 (実施態様例) 以下、本発明の実施態様について説明する。 〔光吸収層〕 本発明における光吸収層は、増倍層及び遮光層よりも光
入射側に設けられ、入射した光を吸収してフォトキャリ
アを発生する層である。
【0040】光吸収層の材料としては、例えば a-Si(H,
X)、 a-SiGe(H,X)、a-SiC(H,X)、a-SiGeC(H,X) 等の非晶質
半導体材料やμc-Si(H,X)、μc-SiGe(H,X)、μc-SiC(H,X)
等の微結晶質半導体材料やpoly-Si、poly-SiGe、poly-SiC
等の多結晶半導体材料等の非単結晶半導体材料を用いる
ことができる。
【0041】本発明の光吸収層の禁制帯幅Eg1は可視
光に対して高感度な光電変換装置を提供するためには、
好ましくは 1.1eV以上 1.8eV以下、より好ましくは 1.2
eV 以上 1.8eVeV以下であることが望ましい。また、可
視光に加えて赤外光に対しても高感度を得るためには光
吸収層の禁制帯幅Eg1は好ましくは 0.6eV以上 1.8eV
以下、より好ましくは 0.8eV以上 1.2eV以下とすること
が望ましい。また、可視光に加えて紫外光に対しても高
感度を得るためには光吸収層405の禁制帯幅Eg1は
好ましくは 1.1eV以上 3.2eV以下、より好ましくは 1.2
eV以上 3.0eV以下とすることが望ましい。
【0042】光吸収層に求められる特性及び知見につい
て以下に具体的に述べる。
【0043】光吸収層405は光電変換装置に入射する
光を該光吸収層の全部または一部で、光電変換の対象と
している波長領域の入射光を吸収し光電変換するため
の、バンドギャップと厚さとを持っていることが入射し
た光の強度に忠実な信号を発生するために望ましい。一
般に、ある光波長λ以下の光を吸収するためには、半導
体受光素子は、hをプランク定数、cを光速度とおく
と、Eg≦hc/λ=1240nm・eV/λ[nm]なるバンドギ
ャップEgを持たなければならないことが知られてい
る。また、一般に、受光層表面(深さ0)から受光層の
深さtまでに吸収される光の入射光に対する比、すなわ
ち、光吸収率は、光吸収係数をαとおくと、1−exp
(−αt)で表わされることも知られている。これらか
ら、一般に、例えば、可視光波長領域(光波長約400
〜700nm)を対象とした受光を行おうとした場合、こ
れらの光、特に、素子のより内部まで浸透する長波長の
約700nmの光のほとんど全てがこの受光領域で吸収さ
れ光電変換されるためには、光電変換素子たる半導体受
光素子の受光領域のバンドギャップは約1.77eV以下が必
要であり、また、受光領域の厚さは、今得たい光吸収率
をpとおくと、−1/α・1n(1−p)であることが
望ましい。例えば具体的には、結晶シリコンを半導体受
光素子の光吸収層(受光領域)に用いた場合で、波長7
00nmの入射光の90%をこの受光領域で吸収し光電変
換するためには、実験的に得られている光吸収係数αの
典型的な値である約2×103cm-1 を用いて計算する
と、約1.15μm なる光吸収層の厚さが必要であるという
知見が得られる。また、この光吸収層で光電変換されて
発生したフォトキャリア(電子と正孔)のうちより大き
なイオン化率を持ったキャリアの方が増倍層に輸送され
アバランシェ増倍を開始するような、ドリフト電界ない
しは拡散電界がこの光吸収層に生じていることが望まし
い。
【0044】また、本発明に使用し得る光吸収層は、所
望の波長の光に対して高い感度を持たせると共により広
い範囲の波長に効率よく対応するために前記光吸収層の
禁制帯幅Eg1を層厚方向に不均一に変化させてもよ
い。
【0045】例えば可視光〜赤外光の波長領域に対して
高い感度を持つ光吸収層を形成するには該光吸収層の禁
制帯幅Eg1を可視光に対して高感度を得るに好ましい
Eg1' の領域と赤外光に対して高感度を得るための禁
制帯幅Eg1''(Eg1' >Eg1'')〜前述のEg
1' へと禁制帯幅を変化させた領域とを設ければよい。
また可視光〜紫外光の波長領域に対して高い感度を持つ
光吸収層を形成するには同様に禁制帯幅Eg1' 〜Eg
1''' (Eg1' <Eg1''')へと変化する領域を設け
ればよい。
【0046】ここで、禁制帯幅の変化する領域は前記光
吸収層の端部に配することが望ましく、禁制帯幅が前記
光吸収層内では連続に変化することがキャリアの良好な
走行性の点で好ましい。
【0047】また、入射する光をより効率よく吸収しフ
ォトキャリアを発生するためには、光の透過・吸収に対
する禁制帯幅の関係を考慮し、入射側で禁制帯幅が大き
く、入射側とは反対側で禁制帯幅が小さくなるよう配す
ることが望ましい。
【0048】光吸収層の層厚としては、好ましくは20
0Å以上10μm以下、より好ましくは2000Å以上
2μm以下とするのが入射光により効率よくフォトキャ
リアを発生するに望ましい。 〔遮光層〕 本発明における遮光層404は前記光吸収層405と前
記増倍層403との間に挟まれて設けてあり、前記光吸
収層405を入射光の一部が透過してしまったとしても
前記増倍層に光が入射するのを防ぐ層である。
【0049】前記増倍層403に光が入射するのを防ぐ
ことにより、前記増倍層403中で光キャリアの発生を
防止し得る。特に入射光の波長成分のうち透過深度の深
い赤外光等の長波長光が前記ステップバック層の最小禁
制帯幅部の近傍で吸収され増倍率が変動するのを防ぐこ
とができる。更に前記増倍率変動の発生原因に制限され
ず禁制帯幅の狭い材料も増倍層の材料として適用し得る
ため材料選択の自由度が拡大できる。
【0050】本発明の遮光層404として使用し得る材
料としては前記光吸収層405で発生したフォトキャリ
アの移動を障たげず、増倍層への光の侵入を防ぐもので
あればよい。このような材料としては電気的には導電性
又は半導体性であって光反射特性(高い光反射率)を有
する材料又は光吸収特性(高い光吸収率)を有する材料
が挙げられる。
【0051】遮光層を構成する材料としては、例えばC
r、Mg、Al、Ti、Mn、Fe、Cu、Zn、M
o、Ag、Cd、In、Sn、W及びその合金等の光吸
収層から増倍層への電子の輸送及び増倍層から光吸収層
への正孔の輸送が円滑に行なえる仕事関数を有する金属
材料が好適に使用される。
【0052】尚、遮光層を前述の金属材料で形成する場
合のエネルギー帯は図43及び図44に図示するタイプ
とは異なり、図4(無バイアス)及び図5(逆バイアス
印加)のようになる。
【0053】遮光層に使用し得る他の材料の例として
は、エネルギーギャップ(禁制帯幅)のエネルギーが入
射光エネルギーよりも狭い半導体材料等が挙げられる。
この半導体材料はP型でもN型でもよい。このような材
料の例としては不純物をドープしたSi系半導体(非晶
質又は結晶質のSi、SiN及びSiCやSiGe、S
iSn等)や III−V族、II−VI族の化合物半導体(I
nP、GaAs)等が挙げられる。
【0054】遮光層として用いられる半導体層中にドー
プする不純物としてはB、Al、In、Tl等の第III
族原子やP、As、Sb、Bi等の第IV族原子やLi、
Na、K等の第I族原子やMg、Ca等の第II族原子、
Si、Ge等の第IV族原子等が好適に用いられる。
【0055】遮光層として用いられる半導体に上述した
不純物をドープさせる場合には不純物濃度1.0×10
15原子/cm3 以上1.0×1021原子/cm3 以下、1.
0×1016原子/cm3 以上1.0×1017原子/cm3
下とするのが光吸収層を透過してしまった光が増倍層中
に侵入するのを防ぐためには望ましい。
【0056】また、遮光層として使用し得る他の好適な
材料としては、高温超電導材料、グラファイト等の入射
光の遮断をし得る導電性のセラミック材料及び導電性の
有機化合物等も挙げられる。
【0057】また、遮光層に使用し得る材料として例示
した前述の材料からなる層上に光吸収層を透過してしま
った光を該光吸収層側に反射するための反射層を更に積
層して遮光層を形成してもよい。該反射層の材料として
はキャリアの移動度が高く、屈折率の高い材料が望まし
く、例えば光吸収層よりも屈折率の大きな材料等が好適
な材料として挙げられる。
【0058】遮光層の層厚は光吸収層を透過してしまっ
た光が増倍層内で吸収され、増倍率の変動を起こす原因
となるキャリアの発生を防ぐに充分な層厚であることが
求められるが該遮光層が厚過ぎるとキャリアの走行性
(移動度)を低下させてしまう。本発明の遮光層の層厚
としては好ましくは50Å以上10μm 以下、より好ま
しくは1μm 以下とするのが望ましい。
【0059】尚、前記反射層を設けた場合には光吸収層
を通る光のみかけの光路長が長くなるため、より薄い光
吸収層が使用し得、光電変換装置の厚さをより減ずるこ
とができる。 〔増倍層〕 本発明における増倍層は光入射側から見て前記光吸収層
と遮光層との奥側に設けられ、前記光吸収層で生じたフ
ォトキャリアが輸送されると、いわゆるアバランシェ効
果により該キャリアを増倍する層である。
【0060】本発明における増倍層は、キャリアをドリ
フトさせる領域とイオン化を起こす領域とを有してお
り、例えば誘電率の高い層と誘電率の低い層とを積層し
た構造であってもよいし、最小禁制帯幅Eg2と最大禁
制帯幅Eg3なる禁制帯幅が連続的に変化したステップ
バック構造であってもよい。
【0061】いずれの場合であっても増倍層中における
イオン化を起こす場所を特定し得るため、イオン化の起
こる場所のゆらぎによる雑音の発生を抑えることができ
る。まず、誘電率の異なる層を積層して形成する増倍層
につき説明する。
【0062】前記誘電率の異なる層を積層して形成した
増倍層の構成は、基本的には、誘電率の大きな材料と誘
電率の小さな材料が交互に配置されていればよく、一つ
の例として、多成分系材料の一つであるアロイ材料で、
その組成比を変化させることによって誘電率の大きい層
と小さい層を形成してもよい。
【0063】例えば非晶質(アモルファス)窒化シリコ
ンSizN1-z(Zは組成比) を用いて、誘電率の大きい層と
してSiXN1-X 層(Xは0.5 より大)、誘電率の小さい層
としてSiyN1-y 層(yは0.5 より小)を交互に配置する
ことによってアバランシェ領域を構成してもよい。
【0064】また、こうしたアバランシェ領域は上記非
晶質窒化シリコン以外にも、例えば非晶質炭化シリコン
SizC1-z 、非晶質シリコンゲルマニウムSizGe1-zなどに
よっても構成することが可能である。
【0065】また、本発明の光電変換装置を作成するた
めの製法としては、一般には、堆積法が容易であり、蒸
着法、化学的気相析出(CVD)法、気相エピタキシ
法、スパッタ法、分子線エピタキシ法などの気相成長に
よる堆積法が利用できる。また、こうした堆積法以外に
も、イオン注入法などを用いても構わない。つまり、誘
電率の小さい層を形成するのに、シリコンへの水素、炭
素、窒素などの打ち込み、ガリウム砒素への水素打ち込
みなどのイオン注入も有用である。
【0066】その組成を変えることにより誘電率および
バンドギャップを変化させた層を容易に形成できる材料
としては、アモルファス材料やIII −V族化合物半導体
材料などが挙げられる。
【0067】特に、アモルファス材料に関しては、グロ
ー放電法で作成されるのがより好ましいが、本発明の構
造を有する素子を作成するにあたり、その作成温度が低
温なこと、すでに集積回路などが形成されている半導体
装置上にも積層して作成できること、格子整合性をあま
り気にすることなく幅広く材料が選択でき、高い自由度
を有すること、組成変化層を原料ガスの流量比を変化さ
せることだけによって容易に形成できること、可視光領
域の光に対して高い感度を有すること、無公害の工業的
にも安価な材料も利用できること、大面積の成膜も容易
に行えることなどの特徴を有しており、したがって、こ
れを利用すれば、従来の問題点を全て解決できる。
【0068】アモルファス材料においては、さらに具体
的な例としては、テトラヒドラル系のシリコン、カルコ
ゲナイト系のセレンなどがベース材料として、また、シ
リコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン酸化窒化物、
シリコン炭化物、…などが誘電率の異なる層やバンドギ
ャップを変化させる層の材料として利用できる。この
際、バンドギャップ内局在準位を低減したバンドギャッ
プ変化層を形成するには、禁制帯幅調整剤として作用す
るバンドギャップ変化原子の量は、通常0.01%以上含有
させ、好ましくは、1原子%以上60原子%以下、より
好ましくは、5原子%以上35原子%以下とするのが好
ましい。
【0069】特に、シリコン原子をベース材料にして、
グロー放電法をその作成方法に利用する場合には、ガス
状原料物質としては、SiH4, SiF4, Si2H6,Si2F6,Si3H8,
SiH3F,Si2F2 などの鎖状シラン化合物、または、Si
5H10,Si6H12,Si4H8 などの環状シラン化合物が有用であ
り、また、誘電率の異なる層やバンドギャップを変化さ
せる層を作成するための原料ガスとしては、CH4,CH2F2,
C2H6,C2H4,C2H2,Si(CH3)4,SiH(CH3)3 などの炭素化合
物、N2,NH3,H2NNH2,HN3NH4N3,F3N,F4Nなどの窒素化合
物、O2,CO2,NO,NO2,N2O,O3,N2O3,N2O4,NO3などの酸素化
合物、GeH4,GeF4 などのゲルマニウム化合物、SnH4など
のスズ化合物などが有用である。
【0070】成膜条件としては、a-Si系の成膜を行う際
によく知られた条件の範囲が使用可能である。例えば、
基板の温度は50〜600℃、好ましくは150〜40
0℃、放電圧力としては0.01〜10Torr、好ましくは
0.1〜1Torr、高周波パワーとしては0.01〜10W/cm
2 、好ましくは0.1 〜1W/cm2 が良い。また放電周波数
としては、DC,AC、特によく使われる13.56 MHz
や、2.45 GHzがよく使われるマイクロ波等が使用でき
る。
【0071】さらにまた、アバランシェ領域(増倍層)
や後述するブロッキング層(電荷注入阻止層)ドーピン
グ材料として使用される原子は、シリコンに対しては、
第III 族および第V族の原子が有用である。具体的に
は、第III 族原子としては、ほう素(B)、アルミニウ
ム(Al)、Ga(ガリウム)、In(インジウム)、Tl(タリ
ウム)などをあげることができるが、特に好ましいもの
は、B、Gaである。また第V族としては、P(燐)、As
(砒素)、Sb(アンチモン)、Bi(ビスマス)などをあ
げることができるが、特に好ましいものは、P、As、Sb
である。こうした原子の含有量は、好ましくは5%以
下、より好ましくは1%以下である。
【0072】以上説明したように、バイアス電圧を印加
した際に図6に示されるようなエネルギ帯を有する増倍
層によって、キャリアのイオン化を起こさないような電
界が生じる低い誘電率の第1の層21,23,25とキ
ャリアのイオン化を助長するような電界が生じる高い誘
電率の第2の層22,24とを交互に積層することによ
って、イオン化を起こす場所を特定することができる。
したがって、イオン化の確率を限りなく1に近づける低
雑音のAPDが実現できる。
【0073】また、図7に示すようなバイアス印加時の
エネルギ帯を有する増倍層も本発明の光電変換装置の増
倍層として含めるものである。即ち、低い誘電率を有す
る第1の層41,43,45と高い誘電率を有する第2
の層とが交互に堆積されており、該第1の層のバンドギ
ャップと該第2の層のバンドギャップとが異なる大きさ
を有する増倍層も本発明に好適に使用し得る。
【0074】ここで誘電率の小さい第1の層の層厚l1
は、好ましくは20Å以上2000Å以下、より好まし
くは50Å以上200Å以下とすることが望ましい。
【0075】また、誘電率の大きな第2の層の層厚l2
は、好ましくは30Å以上3000Å以下、より好まし
くは75Å以上300Å以下とすることが望ましい。第
1の層と第2の層との厚さの比は好ましくは1.5倍以
上、より好ましくは2倍以上であることが望ましい。
【0076】続いて、最小禁制帯幅Eg2と最大禁制帯
幅Eg3なる禁制帯幅が連続的に変化したステップバッ
ク構造の増倍層につき説明する。
【0077】前記増倍層は前述したとおりの禁制帯幅が
連続的に変化したステップバック構造を少なくとも1つ
有するものである。ここで前記ステップバック構造の数
は所望される増倍率に応じて決定すればよい。
【0078】禁制帯幅を連続的に変化させたステップバ
ック構造の層(ステップバック層)を形成するためには
該ステップバック層を形成する主たる原子の組成を変化
させればよい。
【0079】例えば、III −V族化合物半導体中の周期
律表第III族及び第V族原子の含有量を変化させること
により禁制帯幅を変化させることができる。
【0080】また、他の例として、アモルファスシリコ
ン合金系材料の場合、例えばゲルマニウム原子や炭素原
子等の禁制帯幅調整剤として働く原子を含有させ、所望
により、その含有量を変化させてもよい。
【0081】最大禁制帯幅Eg3と最小禁制帯幅Eg2
との差はイオン化が起こるに充分大きく、エネルギバン
ド図で示すステップバックが急峻に変化した構造である
ことがイオン化の起こる場所を特定するためには望まし
い。しかしステップバックがある程度なだらかになって
も本願の増倍層として使用することができる。前記ステ
ップバックがなだらかである場合、そのなだらかに変化
する層領域の幅(層厚)は該層領域の材料における電子
の平均自由行程以内であることが望ましい。具体的には
100Å以下、より好ましくは50Å以下であることが
望ましい。
【0082】前記ステップバック層の層厚はキャリアが
再結合せずに走行できる範囲内の厚さであればよく、好
ましくは50Å以上1μm以下、より好ましくは200
Å以上1000Å以下とするのが望ましい。
【0083】本発明においては、増倍層を形成する材料
の選択の自由度を高くするために、ステップバック構造
を有するステップバック層(傾斜バンドギャップ層)間
に挟持され伝導性を制御する不純物を高濃度に含有する
高濃度不純物層を設け、フェルミ準位をシフトさせても
よい。
【0084】前記高濃度不純物層は単層構成であっても
多層構成であってもよく、あるいは不純物を層厚方向に
不均一に含んでいてもよい。
【0085】前記不純物を該層中に不均一に含ませる場
合には、傾斜バンドギャップ層内の不純物濃度を、高濃
度不純物層側から中央に向かって連続的に変化させるこ
とにより、傾斜バンドギャップ層間の接合で得られるス
テップバック部において、バンドのエネルギ段差が、キ
ャリアのイオン化エネルギに対してたとえ不足する場合
であっても、前記不足する分のエネルギを補い、ステッ
プバック部におけるキャリアのイオン化を確実にし、イ
オン化の起こる場所のゆらぎを抑制して、低雑音化を図
ることが可能となる。
【0086】なお、傾斜バンドギャップ層においてキャ
リアのドリフトに必要なバイアス以上にバイアスを印加
すると、ステップバック部において確実にイオン化が行
われるためバイアス変動、温度変化に対する増倍率の変
動がない。このため、光電変換装置の駆動法として光信
号キャリアを光電変換装置の一端側に蓄積して読み取る
キャリアの蓄積動作が可能である。また増倍率の温度補
償の必要がない。
【0087】また、電子親和力差によって生じるバンド
段差のエネルギだけではキャリアのイオン化に必要なエ
ネルギが得られない材料を用いて低雑音の光電変換装置
の作成が可能となるため、材料の選択の自由度が広が
る。
【0088】本発明に用いられる材料は、組成が自由に
変えられ、傾斜バンドギャップ層を形成することができ
る材料が望ましい。また、高濃度不純物層の材料は傾斜
バンドギャップ層間の接合で得られるバンドのエネルギ
段差のキャリアのイオン化エネルギに対する不足分のエ
ネルギを不純物添加によって変化するバンドプロファイ
ルの効果を利用し行うため、不純物添加が可能な材料で
なければならない。このような条件を満たす材料として
は、非晶質や多結晶質等の非単結晶性の半導体材料が好
ましく、例えば水素化アモルファスシリコン(a-Si:H)系
合金、及びIII −V族やII−VI族の化合物半導体材料が
あげられる。それぞれ、アモルファスシリコン系合金で
は、a-SiGe:H, a-SiC:H,a-SiN:H, a-SiSn:H, a-SiO:H,
及びa-GeC:H などがあり、III −V族では、Al・Ga・As・
Sb,In・As・ Sb,InGaAsSb やIn・Ga・Al・As やIn・AsP・ Sb,
InGaAsSbやAlGaP などがあり、II−VI族では、ZnSSe,Zn
CdS,HgCdTeなどが利用される。また、前記アモルファス
シリコン系合金材料中には水素に加えて、更にF,C
l,Br,I等のハロゲン原子を含有させてもよい。高
濃度不純物層ないし傾斜バンドギャップ層内の不純物と
しては、以下に示すようなものがある。アモルファスシ
リコン系合金に対してはP型制御に対して周期律表の第
III 族原子、N型制御に対しては周期律表の第V族原子
が使用される。 具体的には、第III 族原子としては、
B(硼素)、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)、In
(インジウム)、Tl(タリウム)等が挙げることができ
るが、特に好ましいものは、B、Gaである。また第V族
原子としては、P(燐)、As(砒素)、Sb(アンチモ
ン)、Bi(ビスマス)などを挙げることができるが、特
に好ましいものはP、Sbである。
【0089】高濃度不純物層としては、アモルファスシ
リコン系合金のように電子のイオン化を図る場合にはワ
イドバンドギャップ側をp型、ナロウバンドギャップ側
をn型とし、正孔のイオン化を図る場合にはワイドバン
ドギャップ側をn型、ナロウバンドギャップ側をp型と
する。
【0090】高濃度不純物層の組成は、傾斜バンドギャ
ップ層のワイドギャップ側にある場合には、傾斜バンド
ギャップ層ワイドバンドギャップ端のバンドギャップよ
りバンドギャップが小さくならない様に決めてやる必要
があり、傾斜バンドギャップ層のナロウギャップ側にあ
る場合には傾斜バンドギャップ層ナロウバンドギャップ
端よりバンドギャップが大きくならない様に決めてやら
なければならない。
【0091】高濃度不純物層の組成の分布については、
ワイドバンドギャップ側ではステップバック部分から傾
斜バンドギャップ層のワイドギャップ端に向かってバン
ドギャップが小さくなる場合、エネルギバンドの傾斜が
ゆるやかになり、大きくなる場合には、ステップバック
部分で、伝導帯側では電子親和力差を、価電子帯側では
電子親和力差とバンドギャップ差の和を最大の値で、利
用できない。またナロウバンドギャップ側では、ステッ
プバック部から傾斜バンドギャップ層のナロウバンドギ
ャップ端に向かってバンドギャップが大きくなる場合、
エネルギバンドの傾斜がゆるやかになり、小さくなる場
合にはステップバック部分で、伝導帯側では電子親和力
差を、価電子帯側では電子親和力差とバンドギャップ差
の和を最大の値で利用できない。このため、高濃度不純
物層は、バンドギャップが均一になるよう組成を、均一
にするのが好適である。
【0092】高濃度不純物層における不純物濃度の分布
については、均一な濃度分布を持つ場合に比べ、不均一
な分布をする場合は、同等の効果を得るために必要な最
大不純物濃度が、大きくなり不純物の添加限界を考慮す
ると材料の選択の自由度を狭めることがあるため、実質
的に均一な分布が望ましい。
【0093】高濃度不純物層の層厚は、傾斜バンドギャ
ップ層の両端に高濃度不純物含有層を有する場合は、双
方の高濃度不純物含有層の層厚の和d1 +d2 が、また
一端にのみ高濃度不純物層を有する場合はその層厚d
が、キャリアの平均自由行程以下であるように決める。
【0094】高濃度不純物層の不純物濃度は、後述する
ように高濃度不純物層が完全空乏化した時にかかる電圧
が、ステップバック部でキャリアのイオン化エネルギに
対して不足する分のエネルギより大きくなるように決定
される。すなわち、高濃度不純物層が傾斜バンドギャッ
プ層間に多層設ける場合と単層設ける場合とで、以下の
ように決められる。 高濃度不純物層が傾斜バンドギ
ャップ層間に二層設けてある場合は、
【0095】
【数1】 を満たすようなN1,N2 の組みあわせになる。
【0096】上式において、添字1,2はそれぞれワイ
ドバンドギャップ、ナロウバンドギャップに対応しする
ものであり、また、ε12 は高濃度不純物層の誘電
率、N1,N2 は高濃度不純物層の不純物濃度、χ12
は高濃度不純物層の電子親和力、Eionはキャリアのイオ
ン化エネルギ、d1,d2 は上記で決められた高濃度不純
物層の膜厚である。ただし上式は電子電流の場合であ
り、正孔電流の場合は、
【0097】
【数2】 である。なお、Eg1,Eg2は高濃度不純物層のバン
ドギャップである。高濃度不純物層が傾斜バンドギャ
ップ層間に単層設けてある場合は、
【0098】
【数3】 で決められている。上式において、εは高濃度不純物層
の誘電率、Nは高濃度不純物層の不純物濃度、dは上記
で決められた高濃度不純物層の膜厚である。ただし上式
は電子電流の場合であり正孔電流の場合は、
【0099】
【数4】 である。
【0100】また、ここでは高濃度不純物層内の不純物
濃度分布は均一とする。
【0101】傾斜バンドギャップ層内での不純物濃度の
プロファイルについては、傾斜バンドギャップ層の両端
に異型の高濃度不純物層を持つ場合には両端から中央に
向かって不純物濃度を連続的に減少させ、一端のみに高
濃度不純物層を有する場合には一端から中央に向かって
不純物濃度を連続的に減少させる。不純物濃度の変化の
関数は特に限定はないが、高濃度側でゆるやかに、低濃
度側で急峻に変化する方が望ましい。
【0102】ここでアモルファスシリコン系合金を例と
って具体的な材料、数値についてふれておく。
【0103】材料としては、たとえばSi, Ge, Cの合金
で組成を変える事により、バンドギャップは1.1eV か
ら、2.5eV 程度まで変化させる事が可能であるが、実用
上問題のない領域として、1.2eVから、2.2eV の範囲で
傾斜バンドギャップ層ができるものと考える。これらの
材料はバンドギャップが結晶シリコンの1.1eV 以上あ
り、暗電流低減が図れるバンドギャップが最小の1.2eV
、最大の 2.2eVが得られる組成比としてはそれぞれ、
【0104】
【数5】 であり、作製ガスの流量比としてもほぼ同じ値となる。
【0105】1.2eV のバンドギャップをもつa-SiGe:H
と、2.2eV のバンドギャップをもつa-SiC:H を不純物を
非添加の状態で比べると、伝導帯側のバンドの段差ΔE
c(|χ12|) が0.9eV 、価電子帯側のバンドのエネル
ギ段差ΔEvが0.1eV であり、イオン化係数の大きい電
子が輸送される伝導帯側のバンド段差は、イオン化エネ
ルギである1.2eV に約0.3V不足しているため、このまま
では傾斜バンドギャップ層のくり返し構造を作っても、
ステップバック部で確実にイオン化を起こすには不充分
であり、高電界をかけるとイオン化の場所のゆらぎが生
じることも充分予想される。
【0106】このため、ステップバック部でのイオン化
を確実にするため、傾斜バンドギャップ層の一端に高濃
度不純物含有層を配することが望ましい。また該不純物
含有層中の不純物量は傾斜バンドギャップ層中央に向か
って不純物濃度が減少する分布であることが望ましい。
たとえば高濃度不純物層が傾斜バンドギャップのワイド
ギャップ材料であるa-SiC:H 側ならば、P型不純物のB
をエネルギ帯を高エネルギ側へシフトさせるために添加
する。
【0107】アモルファスシリコン系合金では、不純物
層内で電子の平均自由行程λは、典型的には50Å以上
100Å以下であるため、高濃度不純物層の膜厚は例え
ばλ以下の値である50Åとする。
【0108】イオン化に必要なエネルギの不足分 Eion
− (χ21)は、この例では0.3eV であるから、0.3 V
の電圧がかかる際に広がる空乏層巾が、平均自由行程以
下であればよい。実際には、高濃度不純物層が完全空乏
化したときにかかる電圧が、0.3V以上であればよい。
比誘電率は約6であるが、
【0109】
【数6】 であればよい。8.0 ×1018の不純物濃度を実現するに
は、原料ガスのSiH4とCH4 に対してB2H6を0.3 〜0.4 %
添加してやれば良い。一方、a-SiGe:H側に高濃度不純物
層を配する場合には、N型不純物Pを添加する。
【0110】高濃度不純物層の層厚は50Åとする。比
誘電率は約16である。
【0111】不純物濃度は、 N >2.1 ×1019(cm-3) であればよい。2.1 ×1019の不純物濃度を実現するに
は、SiH4とGeH4に対し、0.8 〜1.0 %のPH3 を添加して
やれば良い。
【0112】次に、a-SiC:H 側に、P型高濃度不純物
層、a-SiGe:H側にn型高濃度不純物層がある場合を考え
る。高濃度不純物層の膜厚はそれぞれ25Åとする。同
じ濃度の不純物を添加するとすると、
【0113】
【数7】
【0114】
【数8】 すなわち、VD=VD1+VD2= 2.6×10-20 ×N >0.3Vとなり
不純物濃度は1.2 ×1019以上あればよい。この不純物濃
度を実現するには、成膜時に導入するガス中に0.5 〜0.
6 %以上のB2H6とPH3 をそれぞれSiH4とCH4,SiH4とGeH4
に添加してやれば良い。
【0115】以上本発明に好適に使用し得る高濃度不純
物層としてアモルファスシリコン系合金を例として説明
したが、本発明に使用し得る高濃度不純物層は前述の例
のみに限定されるものではない。
【0116】以下、バンドギャップ傾斜層間に高濃度不
純物層を設けた場合の作用及び効果について図面を用い
てより具体的に説明する。
【0117】図8及び図9は電子の増倍を前提として導
電帯側のエネルギバンドの変化をみるためにヘテロ接合
に、ワイドバンドギャップ側に負のバイアスを印加し、
全層を空乏化させた時の様子を示す説明図である。
【0118】エネルギ帯はヘテロ接合部でフェルミ準位
が合致するようにして接合されるため、導電型によりエ
ネルギ帯の変化は異なる。
【0119】キャリア(電子)が接合部近傍で得るエネ
ルギは、接合部におけるエネルギバンド(伝導帯:ΔE
c)に加えて、接合部近傍の電界(図中、電界の強度は
エネルギバンドの曲がり量の大きさで表わされる)でキ
ャリアが加速されて得られるエネルギ、すなわち接合部
からキャリアの平均自由行程の距離内におけるエネルギ
バンドの曲がり量の和となる。
【0120】図8及び図9の破線円部で示すように、接
合部近傍に不純物添加がなされると、不純物濃度に応じ
てエネルギバンドの曲がりが強められ、接合部近傍でキ
ャリアの得るエネルギが大きくなり、イオン化の確率が
高まる。
【0121】同型半導体の接合の場合には、図8のよう
に、ワイドギャップ側に強い電界が発生するが、接合か
ら離れる程電界が強まってしまうため、接合部以外での
イオン化の確率が高まってしまう。
【0122】一方、異型半導体の接合では、図9のよう
に接合部での電界が最も強まり、接合部でのイオン化を
促進し、イオン化の場所のゆらぎを抑えることができ
る。即ち、バンドギャップ傾斜層の接合でできるヘテロ
接合部ではワイドギャップ/ナロウギャップでp/n接
合、或いはp/i接合またはi/n接合にすることで、
ステップバック部において、キャリアのイオン化に対す
る不足分のエネルギを補うことができ、キャリアのイオ
ン化を確実にできる。ホールの増倍の場合はその逆でn
/p接合或いはi/p接合、n/i接合が好適である。
【0123】図10A,図10Bは傾斜バンドギャップ
層内での不純物濃度の分布が異なる場合のヘテロ接合部
における電界強度の変化を示す説明図である。それぞれ
図10Aは電荷の段階的な変化、図10Bは電荷の連続
的な(一次関数的)変化の場合の電界強度を示すが、接
合部で同じ電界を発生させる時には、ポアソン方程式か
ら明らかなように、不純物濃度が接合部からゆるやかに
変化する方が接合部近傍での電界強度がより高くなる。
即ち図11に図示する傾斜バンドギャップ層63の高濃
度不純物層側64a及び64bで不純物濃度をゆるゆか
に変えることで、接合部においてイオン化の発生確率を
高め接合部から離れた点での電界強度が小さいためイオ
ン化の確率を下げ、イオン化の場所のゆらぎを抑えるこ
とができる。
【0124】図12,図13,図14にヘテロ接合部に
バンドギャップの傾斜を考慮した概念図を示す。図12
の実線は図13に示す均一な不純物濃度をもつワイドギ
ャップ層が空乏化した状態、破線は図14に示す均一な
不純物濃度をもつ傾斜バンドギャップ層のワイドギャッ
プ側が空乏化した状態である。
【0125】図中に破線で示すように傾斜バンドの方が
バンドギャップの減少のためにバンドの曲がりがゆるや
かになり、イオン化においてはエネルギの低下とゆらぎ
の増加をもたらす場合がある。このため図15に示すよ
うに、傾斜バンドギャップ層51,53,55端部に、
高濃度不純物層52,54,56としてバンドギャップ
Egdの実質的に均一な層52,54,56を配する事
でイオン化の場所のゆらぎを抑える事ができる。
【0126】尚、図15に示す増倍層に逆バイアスを印
加した際のエネルギ帯は図16に示すとおりであり、バ
ンドギャップの実質的に均一な層52′,54′,5
6′の電界強度はバンドギャップの不均一な層51′,
53′,55′の電界強度より大きい。
【0127】以上説明したように、本発明によりキャリ
アのイオン化の確率をステップバック部で1に近づけ、
イオン化の起こる場所のゆらぎを抑えることができ、低
雑音化が実現できる。その結果として、例えば材料、製
法の自由度のある、低雑音のAPDを提供することが可
能であり、また暗電流の抑制されたAPDを提供するこ
とが可能である。 〔電極〕 本発明の光電変換装置に使用し得る電極としては、まず
光入射側に配される電極材料は、光電変換する波長の光
に対して充分透過率が高いことが望ましく、例えばIn2O
3,SnO2,ITO(In2O3+SnO2), Si-Pd-O,Pd等の透光性導電材
料が望ましい。また、前記透光性導電材料上に、くし歯
状、網状、格子状等の集電電極を更に設けることにより
電気抵抗をより低くすることもできる。
【0128】また入射光側とは反対側に設けられる電極
は通常の導電性材料を用いることができる。 〔電荷注入阻止層〕 上述した電極には、光吸収層又は増倍層から取り出す信
号となるキャリアの走行方向には障壁とはならず、電極
とはオーミック接合するが、前記信号となるキャリアの
走行方向とは逆方向への暗電流のキャリアの走行に対し
ては障壁となるp型、又はn型の伝導性を有する電荷注
入阻止層(ブロッキング層)を設けてもよい。
【0129】前記電荷注入阻止層を設けることにより電
極からの不必要なキャリアの注入を阻止し得るため暗電
流による雑音をさらに減らすことができる。
【0130】前記電荷注入阻止層は光吸収層又は増倍層
と同様の材料に伝導性を制御し得る不純物を含ませた材
料で形成することができる。
【0131】電荷注入阻止層の厚さは好ましくは50Å
以上2000Å以下、より好ましくは100Å以上30
0Å以下とするのが望ましい。
【0132】電荷注入阻止層に含まれる不純物の量は良
好なオーミック接合と電荷注入の阻止能を該層が有する
ために用いられ、該層の導電率として、好ましくは10
-4S/cm以上、より好ましくは10-3S/cm以上とされ
るのが望ましい。 〔バイアス電圧〕 本発明の光電変換装置を作動させる際に印加するバイア
ス電圧は、少なくとも増倍層を空乏化し得かつ、バンド
ギャップ傾斜層(ステップバック層)内又は低電界層内
ではキャリアのドリフトは起こるがイオン化は起こらな
い電界が生じる程度であってバイアス印加時に増倍層内
のエネルギ準位の急変する箇所であるステップバック領
域においてイオン化を選択的に起こすよう印加する。
【0133】
【実施例】以下、本発明の実施例について図面を用いて
詳細に説明する。 (実施例1) 以下、図1、図4及び図5を用いて本発明の第1実施例
について説明する。
【0134】図1は、本発明の光電変換装置の第1実施
例を示す概略的縦断面構造図である。図1に図示される
光電変換装置は、Cr電極401、該電極401より正孔
注入を阻止するための厚さ約500Åのn型a-Si1-xG
ex:Hからなる電荷注入阻止層402、キャリア増倍を行
うためのa-Si1-xGex:H〜a-Si1-yCy:H の組成を変化させ
た層を積層した増倍領域403、光が増倍領域まで侵入
するのを阻止するための厚さ約200ÅのCrからなる遮
光層404、光を吸収しキャリアを発生させるための厚
さ約1μm のa-Si:Hからなる光吸収層405、光入射側
の電極より電子注入を阻止するための厚さ約100Åの
p型a-Si:Hからなる電荷注入阻止層406、酸化インジ
ウムを主体とした透明電極407を有している。
【0135】Cr 電極401、遮光層404及び透明電
極407はEB蒸着で作成し、電荷注入阻止層402、
増倍領域403、光吸収層405および電荷注入阻止層
406の非晶質層はプラズマCVD法で作成した。非晶
質層作成の際の原料ガスは、電荷注入阻止層402には
SiH4,GeH4,PH3,H2、増倍領域403には SiH4,GeH4,C
H4,H2 、光吸収層405には SiH4,H2、電荷注入阻止層
406にはSiH4,B2H6,H2を用いた。
【0136】増倍領域403は原料ガスのうちCH4 とGe
H4のガス流量を連続的に変化させた厚さ200Åの組成
変化層411,412,413の3つの層で形成した。
【0137】図1に示した第1実施例の光電変換装置の
エネルギバンド構造は、理想的には図4及び図5に示す
ようなものである。
【0138】図4は第1実施例の光電変換装置が無バイ
アス状態にあるときエネルギ帯図、図5はキャリア増倍
動作を行うためにバイアスを印加した状態にあるときの
エネルギ帯図である。
【0139】図4及び図5は、n型 a-Si1-xGex:H 層4
02の禁制帯幅がEg4、a-Si1-xGex:H〜a-Si1-yCy:H
組成変化層411,412,413の3つの層からなる
増倍領域403の最小禁制帯幅がEg2、増倍領域40
3の最大禁制帯幅がEg3、a-Si:H層405の禁制帯幅
がEg1、p型a-Si:H層406の禁制帯幅がEg0であ
ることを示している。404は Cr 電極に対応する。
【0140】また、図4において、伝導帯端、価電子帯
端ともにエネルギの不連続点があるが、バイアス電圧が
印加された状態では、図5を見てもわかるようにキャリ
アの走行する方向にエネルギ不連続による障壁がほとん
どなく、キャリアの走行性を阻害していない。
【0141】ここで作成した組成変化層411,41
2,413のうちの最大禁制帯幅Eg3を与える層はC
組成比yが約0.4 のa-Si1-yCy:H であり、Eg3も約2.
3eV であった。
【0142】また、a-Si1-xGex:H層402のGe組成比x
は約0.6 であり、禁制帯幅Eg4は約1.3eV であった。
組成変化層411,412,413のうちの最小禁制帯
幅Eg2を与える層もa-Si1-xGex:H層であり、Eg2も
約1.3eV であった。405,406のa-Si:H層の禁制帯
幅Eg1,Eg0はともに約1.8 eVであった。
【0143】さらに光吸収層405の光吸収係数は波長
400nmの光に対して約1×105cm- 1 、波長 700nmの光
に対して約5×103cm-1 以上であり、可視部光の吸収
が十分に行えていた。
【0144】本装置の増倍率は10Vのバイアス印加時
に約10倍以上であった。また、波長700nm以下の可
視部光に対して、波長を変化させても増倍率の変化はな
かった。さらに暗時のリーク電流は10Vのバイアス印
加時に約1nA/cm2以下と低かった。さらにまた光応答速
度は増倍層502のないpin型光電変換装置と同等で
あり、高速であった。 (実施例2) 以下、図17及び図18を用いて本発明の第2実施例に
ついて説明する。
【0145】図17及び図18は本発明の第2実施例の
理想的に想定されるエネルギバンド構造図である。
【0146】図17図は第2実施例の光電変換装置が無
バイアス状態にあるときのエネルギ帯図、図18はキャ
リア増倍動作を行うためにバイアスを印加した状態にあ
るときのエネルギ帯図である。
【0147】図17に図示する光電変換装置は、禁制帯
幅Eg4′のn型a-Si1-yCy:H 層601であることと、
禁制帯幅Eg0′のp型a-Si1-yCy:H 層605であるこ
と以外は、図4と同じである。本実施例においては、a-
Si1-xGex:H〜a-Si1-yCy:H 組成変化層611,612,
613の3層からなる増倍領域602の最小禁制帯幅が
Eg2、最大禁制帯幅がEg3、a-Si:H層604の禁制
帯幅がEg1であることを示している。
【0148】本装置の増倍率は10Vのバイアス印加時
に約10倍以上あった。また、波長700nm以下の光に
対して波長を変化させても増倍率の変化はなかった。さ
らに暗時のリーク電流は10Vのバイアス印加時に約0.
1nA/cm2 以下と低かった。さらにまた光応答速度は増倍
層602のないpin型光電変換装置と同等であり、高
速であった。 (実施例3) 本実施例は、実施例1に示した光電変換装置を、本発明
者らが既に特開昭63-278269 号公報に出願した走査回
路、読出し回路上に積層した実施例である。
【0149】図19は本発明の実施例の受光部付近の概
略的断面図、図20は一画素の等価回路図、図21は本
装置全体の等価回路およびブロック回路図である。
【0150】図19に図示する装置は、n型シリコン基
板701上にエピタキシャル成長によりコレクタ領域と
なるn- 層702が形成され、その中にpベース領域7
03、さらにn+ エミッタ領域704が形成されバイポ
ーラトランジスタを構成している。
【0151】pベース領域703は隣接画素と分離され
ており、また、水平方向に隣接するpベース領域との間
には酸化膜705を挟んでゲート電極706が形成され
ている。したがって隣接するpベース領域703を各々
ソース・ドレイン領域としてpチャンネルMOSトラン
ジスタが構成されている。ゲート電極706はpベース
領域703の電位を制御するためのキャパシタとしても
働いている。
【0152】さらに、絶縁層707を形成した後、エミ
ッタ電極708、およびベース電極708′を形成し
た。
【0153】その後、絶縁層709を形成し、続いて電
極711を形成し、画素ごとに分離した。電極711は
電極708′と電気的に接続している。さらにn型 a-S
i1-xGex:H 層712を形成して、画素ごとに分離した。
【0154】続いて、a-Si1-xGex:H〜a-Si1-yCy:H の組
成変化層721,722,723を実施例1と同様にし
て形成して増倍領域713を構成した。次にCr電極(遮
光層)714を形成して画素ごとに分離した。次に光吸
収層a-Si:H層715を形成し、p型a-Si:H層716を形
成し、センサにバイアス電圧を印加するための透明電極
717を形成した。また、コレクタ電極718が基板7
01の裏面にオーミック接続されている。
【0155】したがって、一画素の等価回路は図20の
ように、結晶シリコンで構成されるバイポーラトランジ
スタ731のベースに、pチャンネルMOSトランジス
タ732とキャパシタ733及び実施例1と同様の光電
変換装置734が接続され、ベースに電位を与えるため
の端子735と、pチャンネルMOSトランジスタ73
2およびキャパシタ733を駆動するための端子736
と、センサ電極737と、エミッタ電極738、コレク
タ電極739とで表わされる。
【0156】図21は図19及び図20で示した一画素
セル740を3×3の2次元マトリックス配置した回路
構成図である。
【0157】図21において、一画素セル740のコレ
クタ電極741は全画素にそれぞれ設けられ、センサ電
極742も全画素にそれぞれ設けられている。また、PM
OSトランジスタのゲート電極およびキャパシタ電極は行
ごとに駆動配線743,743′,743″と接続さ
れ、垂直シフトトランジスタ(V.S.R) 744と接続され
ている。またエミッタ電極は列ごとに信号読出しのため
の垂直配線746,746′, 746″と接続されてい
る。垂直配線746,746′,746″はそれぞれ垂
直配線の電荷をリセットするためのスイッチ747, 7
47′, 747″と読出しスイッチ750, 750′,
750″に接続されている。リセットスイッチ747,
747′, 747″のゲート電極は垂直配線リセットパ
ルスを印加するための端子748に共通接続され、ま
た、ソース電極は垂直ラインリセット電圧を印加するた
めの端子749に共通接続されている。読出しスイッチ
750, 750′, 750″のゲート電極はそれぞれ配
線751, 751′, 751″を介して水平シフトレジ
スタ(H.S.R) 752に接続されており、またドレイン電
極は水平読出し配線753を介して出力アンプ757に
接続されている。水平読出し配線753は水平読出し配
線の電荷をリセットするためのスイッチ754に接続さ
れている。
【0158】リセットスイッチ754は水平配線リセッ
トバルスを印加するための端子755と水平配線リセッ
ト電圧を印加するための端子756に接続される。
【0159】最後にアンプ757の出力は端子758か
らとり出される。
【0160】以下、図19,図20及び図21を用いて
動作を簡単に説明する。
【0161】図19の光吸収層715で入射された光が
吸収され、発生したキャリアが増倍領域713で増倍さ
れて、ベース領域703内に蓄積される。
【0162】図21の垂直シフトレジスタから出力され
る駆動パルスが駆動配線743に現われると、キャパシ
タを介してベース電位が上昇し、1行目の画素から光量
に応じた信号電荷が垂直配線746, 746′, 74
6″にそれぞれとり出される。次に、水平シフトレジス
タ752から走査パルスが751, 751′, 751″
に順次出力されると、スイッチ750,750′, 75
0″が順にON,OFF制御され、信号がアンプ757
を通して出力端子758にとり出される。この際リセッ
トスイッチ754は、スイッチ750, 750′, 75
0″が順番にON動作する間にON状態となり、水平配
線753の残留電荷を除去している。
【0163】次に垂直ラインリセットスイッチ747,
747′, 747″がON状態となり、垂直配線74
6,746′,746″の残留電荷が除去される。そし
て垂直シフトレジスタ744から駆動配線743に負方
向のパルスが印加されると一行目の各画素のPMOSトラン
ジスタがON状態となり、各画素のベース残留電荷が除
去され、初期化される。
【0164】次に垂直シフトレジスタ744から出力さ
れる駆動パルスが駆動配線743′に現われ、2行目の
画素の信号電荷が、同様にとり出される。
【0165】次に3行目の画素の信号電荷のとり出しも
同様に行われる。
【0166】以上の動作を繰り返すことにより本装置は
動作をする。
【0167】なお、以上説明した実施例では、本発明者
等の発明による回路例を示したが、一般的光電変換装置
でも構わない。
【0168】以下、一般的な構成の光電変換装置に、本
発明の光電変換装置を用いた場合について説明する。
【0169】図22は一般的な構成の光電変換装置に本
発明を用いた場合の構成を示すブロック図である。
【0170】同図において、801は複数の本発明に係
る光電変換部であり、例えば実施例1,実施例2に示し
た本発明の光電変換装置が用いられる。光電変換部80
1は信号出力部805に接続される。信号出力部805
において、802は光電変換部801より発生した信号
電荷の蓄積手段、803は前述の信号電荷を走査する走
査手段、804は走査手段803により転送された信号
電荷を増幅・ノイズ補償回路等からなる読出し手段であ
る。なお、蓄積手段802は蓄積動作を行う場合には必
要となるが、なくてもよい。
【0171】以上説明したように、本実施例の光電変換
装置によれば、Eg1なる禁制帯幅を有し光を吸収する
光吸収層と、金属遮光層と、光を吸収して生じたキャリ
アを増倍する最小禁制帯幅Eg2、最大禁制帯幅Eg3
なる禁制帯幅が連続的に変化したステップバック構造を
有する層を一層或いは複数層積層してなる増倍層とを順
次積層した層を、電荷注入阻止層間に狭持するように積
層したことで、バンド不整合により生ずる種々の問題が
解消され、増倍層を持たないフォトダイオードと同様の
高速応答性が得られると同時に、光吸収層側から入射し
た光が、例え光吸収層を透過したとしても、金属遮光層
が遮光するので増倍層には入射せず、光入射による増倍
率の変動をなくすことができた。
【0172】また、光吸収層の禁制帯幅Eg1を種々の
大きさとすることで、可視部光のみならず、種々の波長
の光に高感度をもたせることができた。
【0173】また、ステップバック構造の層数を選択す
ることで、増幅率が2以上得られ、且つ低雑音とするこ
とができた。
【0174】また本発明の光電変換装置の光吸収層、増
倍層、電荷注入阻止層を少なくともSi原子を含む多結晶
材料又は非晶質材料等の非単結晶性材料から構成するこ
とで、禁制帯幅の容易な制御性及び低温積層が可能とな
り、積層により生ずる種々の問題を解消することができ
た。 (実施例4) 以下、図1、図2及び図3を用いて本発明の第4実施例
について説明する。
【0175】図1は、本発明の光電変換装置の第4実施
例を示す概略的縦断面構造図である。図1に図示する光
電変換装置はCr電極401、正孔注入を阻止するための
厚さ約500Åのn型a-Si1-xGex:Hからなる電荷注入阻
止層402、キャリア増倍を行うためのa-Si1-XGeX:H〜
a-Si1-yCy:H の組成を変化させた増倍領域403、増倍
領域に光が侵入するのを防ぎ且つ光吸収層の内部電界を
強めキャリアの走行をよくするためのn型a-Si1-xGex:H
層404、光を吸収しキャリアを発生させるための厚さ
約2μm のa-Si:Hからなる光吸収層405、電子注入を
阻止するための厚さ約100Åのp型a-Si:Hからなる電
荷注入阻止層406、酸化インジウムを主体とした透明
電極407を有している。
【0176】Cr電極401及び透明電極407はEB蒸
着で作成し、電荷注入阻止層402,増倍領域403,
n型a-Si1-xGex:H層404,光吸収層405および電荷
注入阻止層406の非晶質層はプラズマCVD法で作成
した。非晶質層作成の際の原料ガスは、電荷注入阻止層
402及びn型a-Si1-xGex:H層404がSiH4,GeH4,PH3,
H2、増倍領域403がSiH4,GeH4,CH4,H2、光吸収層40
5がSiH4,H2、電荷注入阻止層406がSiH4,B2H6,H2
用いた。
【0177】増倍領域403は原料ガスのうちCH4 とGe
H4のガス流量を連続的に変化させた厚さ200Åの組成
変化層411,412,413の3つの層から成ってい
る。n型a-Si1-xGex:H層404のPH3 のガス流量は電荷
注入阻止層402よりもやや少なくしている。
【0178】図1に示した第4実施例の光電変換装置の
エネルギバンド構造は、理想的には図2及び図3に示す
ようなものである。
【0179】図2は第4実施例の光電変換装置が無バイ
アス状態にあるときのエネルギ帯図、図3はキャリア増
倍動作を行うためにバイアスを印加した状態にあるとき
のエネルギ帯図である。
【0180】図2及び図3は、n型a-Si1-xGex:H層40
2の禁制帯幅がEg4、a-Si1-XGeX:H〜a-Si1-yCy:H 組
成変化層411,412,413の3つの層からなる増
倍領域403の最小禁制帯幅がEg2、増倍領域403
の最大禁制帯幅がEg3、n型a-Si1-xGex:H層404の
禁制帯幅がEg5、a-Si:H層405の禁制帯幅がEg
1、p型a-Si:H層406の禁制帯幅がEg0であること
を示している。
【0181】また、図2において、伝導帯端、価電子帯
端ともにエネルギの不連続点があるが、バイアス電圧が
印加された状態では、図3を見てもわかるようにキャリ
アの走行する方向にエネルギ不連続による障壁がほとん
どなく、キャリアの走行性を阻害していない。
【0182】ここで作成した組成変化層411,41
2,413のうちの最大禁制帯幅Eg3を与える層はC
組成比yが約0.4 のa-Si1-yCy:H であり、Eg3は約2.
3eV であった。
【0183】また、a-Si1-xGex:H層402及びn型a-Si
1-xGex:H層404のGe組成比xは約0.6 であり、禁制帯
幅Eg4は約1.3eV であった。組成変化層411,41
2,413のうちの最小禁制帯幅Eg2を与える層もa-
Si1-xGex:H層であり、Eg2も約1.3eV であった。40
5,406のa-Si:H層の禁制帯幅Eg1,Eg0はとも
に約1.8 eVであった。
【0184】さらに光吸収層(遮光層)404の光吸収
係数は波長400nmの光に対して約1×105cm-1 以上、
波長700nm の光に対して約5×103cm-1 以上であり、
可視部光の吸収が十分に行えている。
【0185】本装置の増倍率は10Vのバイアス印加時
に約10倍以上あった。また、波長700nm 以下の光に対
して、波長を変化させても増倍率の変化はなかった。さ
らに暗時のリーク電流は10Vのバイアス印加時に約1
nA/cm2以下と低かった。さらにまた光応答速度は増倍層
403のないpin型光電変換装置と同等であり、高速
であった。 (実施例5) 以下、図23及び図24を用いて本発明の第5実施例に
ついて説明する。図23及び図24は本発明の第5実施
例の理想的に想定されるエネルギバンド構造図である。
【0186】図23は第5実施例の光電変換装置が無バ
イアス状態にあるときのエネルギ帯図である。図24は
キャリア増倍動作を行うためにバイアスを印加した状態
にあるときのエネルギ帯図である。
【0187】図23では、601が禁制帯幅Eg4′の
n型a-Si1-yCy:H 層であることと、605が禁制帯幅E
g0′のp型a-Si1-yCy:H 層であることと、603が禁
制帯幅Eg5′のn型a-Si:H層であること以外は、図2
と同じであり、a-Si1-XGeX:H〜a-Si1-yCy:H 組成変化層
611,612,613の3層からなる増倍領域602
の最小禁制帯幅がEg2、最大禁制帯幅がEg3、a-S
i:H層604の禁制帯幅がEg1であることを示してい
る。
【0188】本装置の増倍率は10Vのバイアス印加時
に約10倍以上あった。また、波長700nm 以下の光に対
して波長を変化させても増倍率の変化はなかった。さら
に暗時のリーク電流は10Vのバイアス印加時に約0.1
nA/cm2以下と低かった。さらにまた光応答速度は増倍層
602のないpin型光電変換装置と同等であり、高速
であった。 (実施例6) 本実施例は、実施例3に示した光電変換装置を、金属遮
光層に変えてn型半導体層を遮光層として使用した以外
は同様にして作成したものである。
【0189】図19は本発明の実施例の受光部付近の概
略的断面図、図20は一画素の等価回路図、図21は本
装置全体の等価回路およびブロック回路図である。
【0190】まず、実施例3と同様にして、トランジス
タを有する下地回路基体を形成した。
【0191】続いて、a-Si1-XGeX:H〜a-Si1-yCy:H の組
成変化層721,722,723を形成して増倍領域7
13を構成する。次に実施例3の金属遮光層に変えて、
n型a-Si1-XGeX:H層714を形成して画素ごとに分離
し、光吸収層a-Si:H層715を形成し、p型a-Si:H層7
16を形成し、センサにバイアス電圧を印加するための
透明電極717を形成した。
【0192】また、コレクタ電極718が基板701の
裏面にオーミック接続されている。したがって、一画素
の等価回路は図20のように、結晶シリコンで構成され
るバイポーラトランジスタ731のベースに、pチャン
ネルMOSトランジスタ732とキャパシタ733及び
実施例4と同様の光電変換装置734が接続され、ベー
スに電位を与えるための端子735と、pチャンネルM
OSトランジスタ732およびキャパシタ733を駆動
するための端子736と、センサ電極737と、エミッ
タ電極738、コレクタ電極739とで表わされる。
【0193】図21は図19及び図20で示した一画素
セル740を3×3の2次元マトリックス配置した回路
構成図である。
【0194】なお、動作は実施例3と同様なので動作説
明は省略する。
【0195】本実施例の光電変換装置によれば、Eg1
なる禁制帯幅を有し光を吸収する光吸収層と、Eg5な
る禁制帯幅のn導電型層と、光を吸収して生じたキャリ
アを増倍する最小禁制帯幅Eg2、最大禁制帯幅Eg3
なる禁制帯幅が連続的に変化したステップバック構造を
有する層を複数層積層してなる増倍層とを順次積層して
なる層を電荷注入阻止層間に狭持するようにしたこと
で、光吸収層と増倍層間におかれたn導電型層が、逆バ
イアス層としての働きを有するため、光吸収層で生じた
キャリアは円滑に輸送され、増倍層を持たないホトダイ
オードと同様の高速応答性が得られる。また、光吸収層
と増倍層との間に設けたn導電型層の禁制帯幅を小さく
することで、増倍層への光入射が低減されるので増倍率
の変動を抑えることができた。
【0196】なお、本実施例において、光吸収層の禁制
帯幅Eg1を特に可視部光に対応する禁制帯幅にするこ
とで、可視部光に高感度をもたせることができた。
【0197】また、本実施例の光電変換装置の光吸収
層、n導電型層、増倍層、電荷注入阻止層等の構成要素
を少なくともSi原子を含む非単結晶性材料から構成する
ことで、禁制帯幅の容易な制御性及び低温積層が可能と
なり、積層により生ずる種々の問題を解消することがで
きた。 (実施例7) 以下、図1、図25及び図26を用いて本発明の第7実
施例について説明する。図1は、本発明の光電変換装置
の第7実施例を示す概略的縦断面構造図である。
【0198】図1に図示する光電変換装置はCr電極40
1、正孔注入を阻止するための厚さ約500Åのn型a-
Si1-xGex:Hからなる電荷注入阻止層402、キャリア増
倍を行うためのa-Si1-XGeX:H〜a-Si1-yCy:H の組成を変
化させた増倍領域403、増倍領域に光が侵入するのを
防ぎ且つ光吸収層の内部電界を強めキャリアの走行をよ
くするためのa-Si1-XGeX:H層(遮光層)404、光を吸
収しキャリアを発生させるための厚さ約1μm のa-Si
1-XGeX:Hからなる光吸収層405、電子注入を阻止する
ための厚さ約100Åのp型a-Si1-XGeX:Hからなる電荷
注入阻止層406、酸化インジウムを主体とした透明電
極407を有している。
【0199】Cr電極401及び透明電極407はEB蒸
着で作成し、電荷注入阻止層402,増倍領域403,
a-Si1-XGeX:H層404,光吸収層405および電荷注入
阻止層406の非晶質層はプラズマCVD法で作成し
た。非晶質層作成の際の原料ガスは、電荷注入阻止層4
02及びa-Si1-XGeX:H層404がSiH4,GeH4,PH3,H2、増
倍領域403がSiH4,GeH4,CH4,H2、光吸収層405がSi
H4,GeH4,H2、電荷注入阻止層406がSiH4,GeH2,B2H6,H
2 を用いた。
【0200】増倍領域403は原料ガスのうちCH4 とGe
H4のガス流量を連続的に変化させた厚さ約200Åの組
成変化層411,412,413の3つの層から成って
いる。a-Si1-XGeX:H層(遮光層)404のPH3 のガス流
量は電荷注入阻止層402よりもやや少なくしている。
【0201】図1に示した第7実施例の光電変換装置の
エネルギバンド構造は、理想的には図25及び図26に
示すようなものであることが想定される。
【0202】図25は第7実施例の光電変換装置が無バ
イアス状態にあるときのエネルギ帯図、図26はキャリ
ア増倍動作を行うためにバイアスを印加した状態にある
ときのエネルギ帯図である。
【0203】図25及び図26は、n型a-Si1-xGex:H層
501の禁制帯幅がEg4、a-Si1- XGeX:H〜a-Si1-yCy:
H 組成変化層511,512,513の3つの層からな
る増倍領域502の最小禁制帯幅がEg2、増倍領域5
02の最大禁制帯幅がEg3、n型a-Si1-XGeX:H層50
3の禁制帯幅がEg5、a-Si1-XGeX:H層504の禁制帯
幅がEg1、p型a-Si1-XGeX:H層505の禁制帯幅がE
g0であることを示している。特に本実施例ではEg1
とEg5とがほぼ同じ値となるようにした。
【0204】また、図25において、伝導帯端、価電子
帯端ともにエネルギの不連続点があるが、バイアス電圧
が印加された状態では、図26を見てもわかるようにキ
ャリアの走行する方向にエネルギ不連続による障壁がほ
とんどなく、キャリアの走行性を阻害していない。
【0205】ここで作成した組成変化層511,51
2,513のうちの最大禁制帯幅がEg3を与える層は
C組成比yが約0.4 のa-Si1-yCy:H であり、Eg3は約
2.3eV であった。
【0206】また、a-Si1-xGex:H層501,503,5
04,505のGe組成比xは約0.6 であり、禁制帯幅E
g4,Eg1,Eg0は共に約1.3eV であった。組成変
化層511,512,513のうちの最小禁制帯幅Eg
2を与える層もa-Si1-xGex:H層であり、Eg2も約1.3e
V であった。
【0207】さらに光吸収層503の光吸収係数は波長
800 nmの光に対して約1×105cm- 1 以上、波長1000nm
の光に対して約2×104cm-1 以上であり、赤外部光の
吸収が十分に行えている。
【0208】本装置の増倍率は10Vのバイアス印加時
に約10倍以上あった。また、波長1000nm以下の光に対
して、波長を変化させても増倍率の変化はなかった。さ
らに暗時のリーク電流は10Vのバイアス印加時に約1
0nA/cm2以下と低かった。さらにまた光応答速度は増倍
層502のないpin型光電変換装置と同等であり、高
速であった。(実施例8)以下、図27及び図28を用
いて本発明の第8実施例について説明する。図27及び
図28は本発明の第8実施例の理想的に想定されるエネ
ルギバンド構造図である。
【0209】図27は、第8実施例の光電変換装置が無
バイアス状態にあるときのエネルギ帯図、図28はキャ
リア増倍動作を行うためにバイアスを印加した状態にあ
るときのエネルギ帯図である。
【0210】図27では、電荷注入阻止層がワイドギャ
ップである禁制帯幅Eg4′のn型a-Si1-yCy:H 層60
1であること以外は、図25と同じあり、a-Si1-XGeX:H
〜a-Si1-yCy:H 組成変化層611,612,613の3
層からなる増倍領域602の最小禁制帯幅がEg2、最
大禁制帯幅がEg3、n型a-Si1-XGeX:H層603の禁制
帯幅がEg5、a-Si1-XGeX:H層604の禁制帯幅がEg
1、p型a-Si1-XGeX:H層605の禁制帯幅がEg0であ
ることを示している。
【0211】本装置の増倍率は10Vのバイアス印加時
に約10倍以上あった。また、波長1000nm以下の赤外部
光に対して波長を変化させても増倍層中への光の侵入に
よる増倍率の変化はなかった。さらに暗時のリーク電流
は10Vのバイアス印加時に約10nA/cm2以下と低かっ
た。さらにまた光応答速度は増倍層602のないpin
型光電変換装置と同等であり、高速であった。 (実施例9) 本実施例は、実施例6に示した光電変換装置の光吸収層
を実施例7の光吸収層に換えた以外は実施例6と同様に
光電変換装置を形成したものである。
【0212】図19は本発明の実施例の受光部付近の概
略的断面図、図20は一画素の等価回路図、図21は本
装置全体の等価回路およびブロック回路図である。
【0213】まず、実施例3と同様にしてトランジスタ
を有する下地回路基体を形成した。続いて、a-Si1-XG
eX:H〜a-Si1-yCy:H の組成変化層721,722,72
3を形成して増倍領域713を構成した。次にn型a-Si
1-XGeX:H層(遮光層)714を形成して画素ごとに分離
し、光吸収層a-Si1-XGeX:H層715を形成し、実施例6
の光吸収層に換えてナローギャップのp型a-Si1-XGeX:H
層716を形成し、センサにバイアス電圧を印加するた
めの透明電極717を形成した。
【0214】また、コレクタ電極718が基板701の
裏面にオーミック接続されている。したがって、一画素
の等価回路は図20のように、結晶シリコンで構成され
るバイポーラトランジスタ731のベースに、pチャン
ネルMOSトランジスタ732とキャパシタ733及び
実施例7と同様の光電変換装置734が接続され、ベー
スに電位を与えるための端子735と、pチャンネルM
OSトランジスタ732およびキャパシタ733を駆動
するための端子736と、センサ電極737と、エミッ
タ電極738、コレクタ電極739とで表わされる。
【0215】図21は図19及び図20で示した一画素
セル740を3×3の2次元マトリックス配置した回路
構成図である。
【0216】なお、動作は実施例3と同様なので動作説
明は省略する。
【0217】以上説明したように、本実施例の光電変換
装置によれば、Eg1なるナローギャップの禁制帯幅を
有し光を吸収する光吸収層と、Eg5なる禁制帯幅のn
導電型層と、光を吸収して生じたキャリアを増倍する最
小禁制帯幅Eg2、最大禁制帯幅Eg3なる禁制帯幅が
連続的に変化したステップバック構造を有する層を一層
或いは複数層積層してなる増倍層とを、順次積層してな
る層を、電荷注入阻止層間に狭持するように構成するこ
とで、光吸収層と増倍層間におかれたn導電型層が、逆
バイアス層としての働きを有するため、光吸収層で生じ
たキャリアは円滑に輸送され、更に前記光吸収層の禁制
帯幅Eg1と前記n導電型層の禁制帯幅Eg5とを略等
しくなるようにすることで、光吸収層、増倍層のバンド
不整合及びそれにより生ずる種々の問題が解消され、界
面準位の生成等による光吸収層にてキャリアの走行性に
対する障害等から生じる高速応答性の低下を防止するこ
とができ、増倍層を持たないホトダイオードと同様の高
速応答性が得られると同時に、光吸収層の禁制帯幅Eg
1を特に赤外部光に対応する禁制帯幅にしたことで、赤
外部光に高感度をもたせることができた。また、増倍層
への光入射が低減され増倍層への光入射による増倍率の
変動が低減された。
【0218】また本発明の光電変換装置の光吸収層、n
導電型層、増倍層、電荷注入阻止層等の構成要素を少な
くともSi原子を含む非単結晶性材料から構成すること
で、禁制帯幅の容易な制御性及び低温積層が可能とな
り、積層により生ずる種々の問題を解消することができ
た。 (実施例10) 以下、図1及び図29及び図30を用いて本発明の第1
0実施例について説明する。図1は、本発明の光電変換
装置の第10実施例を示す概略的縦断面構造図である。
【0219】図1に示す光電変換装置は、Cr電極40
1、正孔注入を阻止するための厚さ約500Åのn型a-
Si1-xGex:Hからなる電荷注入阻止層402、キャリア増
倍を行うためのa-Si1-XGeX:H〜a-Si1-yCy:H の組成を変
化させた増倍領域403、増倍領域に光が侵入するのを
防ぎ且つ光吸収層の内部電界を強めキャリアの走行をよ
くするためのn型a-Si1-xGex:H層(遮光層)404、前
記遮光層404よりも禁制帯幅が広く、光を吸収しキャ
リアを発生させるための厚さ約1μmのa-Si1-yCy:H か
らなる光吸収層405、電子注入を阻止するための厚さ
約100Åのp型a-Si1-yCy:H からなる電荷注入阻止層
406、酸化インジウムを主体とした透明電極407を
有している。
【0220】Cr電極401及び透明電極407はEB蒸
着で作成し、電荷注入阻止層402,増倍領域403,
n型a-Si1-xGex:H層404,光吸収層405および電荷
注入阻止層406の非晶質層はプラズマCVD法で作成
した。非晶質層作成の際の原料ガスは、電荷注入阻止層
402及びn型a-Si1-xGex:H層404がSiH4,GeH4,PH3,
H2、増倍領域403がSiH4,GeH4,CH4,H2、光吸収層40
5がSiH4,CH4,H2 、電荷注入阻止層406がSiH4,CH4,B
2H6,H2を用いた。
【0221】増倍領域403は原料ガスのうちCH4 とGe
H4のガス流量を連続的に変化させ禁制帯幅を約1.3eV か
ら約2.3eV に連続的に変化させた厚さ200Åの組成変
化層411,412,413の3つの層から成ってい
る。n型a-Si1-xGex:H層404形成時のPH4 のガス流量
は電荷注入阻止層402よりもやや少なくしている。
【0222】図1に示した第10実施例の光電変換装置
のエネルギバンド構造は、理想的には図29及び図30
に示すようなものであることが想定される。
【0223】図29は第10実施例の光電変換装置が無
バイアス状態にあるときのエネルギ帯図、図30はキャ
リア増倍動作を行うためにバイアスを印加した状態にあ
るときのエネルギ帯図である。
【0224】図29及び図34は、n型a-Si1-xGex:H層
501の禁制帯幅がEg4、禁制帯幅約1.3eV のa-Si
1-XGeX:H〜禁制帯幅約2.4eV のa-Si1-yCy :H組成変化層
511,512,513の3つの層からなる増倍領域5
02の最小禁制帯幅がEg2、増倍領域502の最大禁
制帯幅がEg3、n型a-Si1-xGex:H層503の禁制帯幅
がEg5、a-Si1-yCy :H層504の禁制帯幅がEg1、
p型a-Si1-yCy :H層505の禁制帯幅がEg0であるこ
とを示している。
【0225】また、図29において、伝導帯端、価電子
帯端ともにエネルギの不連続点があるが、バイアス電圧
が印加された状態では、図30を見てもわかるようにキ
ャリアの走行する方向にエネルギ不連続による障壁がほ
とんどなく、キャリアの走行性を阻害していない。
【0226】ここで作成したa-Si1-yCy :H層504,5
03のC組成比yは約0.4 であり、禁制帯幅Eg1,E
g0はともに約2.3eV であった。組成変化層511,5
12,513のうちの最大禁制帯幅がEg3を与える層
もa-Si1-yCy:H であり、Eg3は約2.3eV であった。
【0227】また、a-Si1-xGex:H層501及び503の
Ge組成比xは約0.6 であり、禁制帯幅Eg4は約1.3eV
であった。組成変化層511,512,513のうちの
最小禁制帯幅Eg2を与える層もa-Si1-xGex:H層であ
り、Eg2も約1.3eV であった。
【0228】さらに光吸収層503の光吸収係数は波長
540nm の光に対して約4×103cm- 1 、波長350nm の光
に対して約3×104cm-1 以上であり、紫外部光の吸収
が十分に行えている。
【0229】本装置の増倍率は10Vのバイアス印加時
に約10倍以上あった。また、波長400nm以下の紫外
部光に対して、波長を変化させても増倍率の変化はなか
った。さらに暗時のリーク電流は10Vのバイアス印加
時に約1nA/cm2以下と低かった。さらにまた光応答速度
は増倍層502のないpin型光電変換装置と同等であ
り、高速であった。 (実施例11) 以下、図31及び図32を用いて本発明の第11実施例
について説明する。図31及び図32は本発明の第11
実施例の理想的に想定されるエネルギバンド構造図であ
る。
【0230】図31は、第11実施例の光電変換装置が
無バイアス状態にあるときのエネルギ帯図、図32はキ
ャリア増倍動作を行うためにバイアスを印加した状態に
あるときのエネルギ帯図である。
【0231】図31に図示する光電変換装置は、禁制帯
幅Eg4′のワイドギャップのn型a-Si1-yCy:H 層60
1を有することと、禁制帯幅Eg5′のワイドギャップ
のn型a-Si1-yCy:H 層603を有すること以外は、図2
9と同じであり、a-Si1-XGeX:H〜a-Si1-yCy:H 組成変化
層611,612,613の3層からなる増倍領域60
2の最小禁制帯幅がEg2、最大禁制帯幅がEg3、a-
Si1-yCy:H 層604の禁制帯幅がEg1、p型a-Si1-yC
y:H 層605の禁制帯幅がEg0であることを示してい
る。
【0232】本装置の増倍率は10Vのバイアス印加時
に約10倍以上あった。また、波長400nm以下の紫外
部光に対して波長を変化させても増倍率の変化はなかっ
た。さらに暗時のリーク電流は10Vのバイアス印加時
に約0.1nA/cm2以下と低かった。さらにまた光応答速度
は増倍層602のないpin型光電変換装置と同等であ
り、高速であった。 (実施例12) 本実施例は、実施例6に示した光電変換装置の光吸収層
を遮光層よりも禁制帯幅を大きくした以外は実施例6と
同様に走査回路,読出し回路上に積層した実施例であ
る。
【0233】図19は本発明の実施例の受光部付近の概
略的断面図、図20は一画素の等価回路図、図21は本
装置全体の等価回路およびブロック回路図である。
【0234】実施例3と同様にしてトランジスタを有す
る下地回路基体を形成した。
【0235】続いて、a-Si1-XGeX:H〜a-Si1-yCy:H の組
成変化層721,722,723を形成して増倍領域7
13を構成する。次にn型a-Si1-XGeX:H層714を形成
して画素ごとに分離し、光吸収層a-Si1-yCy:H 層715
を形成し、p型a-Si1-yCy:H 層716を形成し、センサ
にバイアス電圧を印加するための透明電極717を形成
した。
【0236】また、コレクタ電極718が基板701の
裏面にオーミック接続されている。したがって、一画素
の等価回路は図20のように、結晶シリコンで構成され
るバイポーラトランジスタ731のベースに、pチャン
ネルMOSトランジスタ732とキャパシタ733及び
実施例10と同様の光電変換装置734が接続され、ベ
ースに電位を与えるための端子735と、pチャンネル
MOSトランジスタ732およびキャパシタ733を駆
動するための端子736と、センサ電極737と、エミ
ッタ電極738、コレクタ電極739とで表わされる。
【0237】図21は図19及び図20で示した一画素
セル740を3×3の2次元マトリックス配置した回路
構成である。
【0238】なお、動作は実施例3と同様なので動作説
明は省略する。
【0239】本実施例の光電変換装置によれば、Eg1
なる禁制帯幅を有し光を吸収する光吸収層と、Eg5な
る禁制帯幅のn導電型層(遮光層)と、光を吸収して生
じたキャリアを増倍する最小禁制帯幅Eg2、最大禁制
帯幅Eg3なる禁制帯幅が連続的に変化したステップバ
ック構造を有する層を一層或いは複数層積層してなる増
倍層とを順次積層してなる層を、電荷注入阻止層間に狭
持するようにすることで、光吸収層と増倍層間におかれ
たn導電型層が、逆バイアス層としての働きを有するた
め、光吸収層で生じたキャリアは円滑に輸送され、更に
前記光吸収層の禁制帯幅Eg1が前記n導電型層の禁制
帯幅Eg5を超えるようにすることにより、光吸収層、
増倍層のバンド不整合及びそれにより生ずる種々の問題
が解消され、界面準位の生成等による光吸収層にてキャ
リアの走行性に対する障害等から生ずる高速応答性の低
下を防止することができ、増倍層を持たないホトダイオ
ードと同様の高速応答性が得られると同時に、光吸収層
の禁制帯幅Eg1を特に紫外部光に対応する禁制帯幅に
することで、紫外部光に高感度をもたせることができ
る。
【0240】またn導電型層の禁制帯幅Eg5が狭い禁
制帯幅のときは、増倍層への光の入射が低減されるので
増倍率の変動を低減することができる。
【0241】また、ステップバック構造の層数を選択す
ることで、増倍率が2以上得られ、且つ低雑音とするこ
とができた。
【0242】また、本発明の光電変換装置の光吸収層、
n導電型層、増倍層、電荷注入阻止層等の構成要素を少
なくともSi原子を含む非単結晶性材料から構成すること
で、禁制帯幅の容易な制御性及び低温積層が可能とな
り、積層により生ずる種々の問題を解消することができ
た。 (実施例13) 以下、図1及び図33及び図34を用いて本発明の第1
3実施例について説明する。
【0243】図1は、本発明の光電変換装置の第13実
施例を示す概略的縦断面構造図である。図1に図示する
光電変換装置は、Cr電極401、正孔注入を阻止するた
めの厚さ約500Åのn型a-Si1-xGex:Hからなる電荷注
入阻止層402、キャリア増倍を行うためのa-Si1-xG
ex:H〜a-Si1-yCy:H の組成を変化させた増倍領域40
3、増倍領域に光が侵入するのを防ぎ且つ光吸収層の内
部電界を強めキャリアの走行をよくするためのn型a-Si
1-xGex:H層(遮光層)404、光を吸収しキャリアを発
生させるための厚さ約2μm のa-Si:H〜a-Si1-yCy:H の
組成を変化させた光吸収層405、電子注入を阻止する
ための厚さ約100Åのp 型a-Si:Hからなる電荷注入阻
止層406、酸化インジウムを主体とした透明電極40
7とを有している。
【0244】Cr電極401及び透明電極407はEB蒸
着で作成し、電荷注入阻止層402,増倍領域403,
n型a-Si1-xGex:H層404,光吸収層405および電荷
注入阻止層406の非晶質層はプラズマCVD法で作成
した。非晶質層作成の際の原料ガスは、電荷注入阻止層
402及びn型a-Si1-xGex:H層404がSiH4,GeH4,PH3,
H2、増倍領域403がSiH4,GeH4,CH4,H2、光吸収層40
5がSiH4, CH4,H2、電荷注入阻止層406がSiH4,B2H6,
H2を用いた。
【0245】増倍領域403は原料ガスのうちCH4 とGe
H4のガス流量を連続的に変化させた厚さ200Åの組成
変化層411,412,413の3つの層から成ってい
る。n型a-Si1-xGex:H層404のPH3 のガス流量は電荷
注入阻止層402よりもやや少なくしている。光吸収層
405は原料ガスのうちCH4 のガス流量を連続的に変化
させて形成している。
【0246】図1に示した第13実施例の光電変換装置
のエネルギバンド構造は、理想的には図33及び図34
に示すようなものであることが想定される。
【0247】図33は第13実施例の光電変換装置が無
バイアス状態にあるときのエネルギ帯図、図34はキャ
リア増倍動作を行うためにバイアスを印加した状態にあ
るときのエネルギ帯図である。
【0248】図33及び図34は、n型a-Si1-xGex:H層
501の禁制帯幅がEg4、a-Si1- xGex:H〜a-Si1-yCy:
H 組成変化層511,512,513の3つの層からな
る増倍領域502の最小禁制帯幅がEg2、増倍領域5
02の最大禁制帯幅がEg3、n型a-Si1-xGex:H層50
3の禁制帯幅がEg5、a-Si:H〜a-Si1-yCy:H 組成変化
層504の最小禁制帯幅がEg1、p型a-Si:H層505
の禁制帯幅がEg0であることを示している。
【0249】また、図33において、伝導帯端、価電子
帯端ともにエネルギの不連続点があるが、バイアス電圧
が印加された状態では、図34を見てもわかるようにキ
ャリアの走行する方向にエネルギ不連続による障壁がほ
とんどなく、キャリアの走行性を阻害していない。
【0250】ここで作成した組成変化層511,51
2,513のうちの最大禁制帯幅Eg3を与える層はC
組成比yが約0.4 のa-Si1-yCy:H であり、Eg3は約2.
3eV であった。a-Si:H〜a-Si1-yCy:H 組成変化層504
の最大禁制帯幅を与える層もa-Si1-yCy:H であった。
【0251】また、a-Si1-xGex:H層501及び503の
Ge組成比xは約0.6 であり、禁制帯幅Eg4は約1.3eV
であった。組成変化層511,512,513のうちの
最小禁制帯幅Eg2を与える層もa-Si1-xGex:H層であ
り、Eg2も約1.3eV であった。a-Si:H〜a-Si1-yCy:H
組成変化層504の最小禁制帯幅Eg1を与える層はa-
Si:Hであり、Eg1は約1.8eV であった。p型a-Si:H層
505の禁制帯幅Eg0も約1.8eV であった。
【0252】さらに光吸収層504の光吸収係数は波長
700 nmの光に対して約6×103cm- 1 、波長350 nmの光
に対して約3×104cm-1 以上であり、可視部光から紫
外部光の吸収が十分に行えている。
【0253】本装置の増倍率は10Vのバイアス印加時
に約10倍以上あった。また、波長700nm以下の可視
部から紫外部の光に対して、波長を変化させても増倍率
の変化はなかった。さらに暗時のリーク電流は10Vの
バイアス印加時に約1nA/cm2以下と低かった。さらにま
た光応答速度は増倍層502のないpin型光電変換装
置と同等であり、高速であった。 (実施例14) 以下、図35及び図36を用いて本発明の第14実施例
について説明する。
【0254】図35及び図36は本発明の第14実施例
の理想的に想定されるエネルギバンド構造図である。
【0255】図35は第14実施例の光電変換装置が無
バイアス状態にあるときのエネルギ帯図、図36はキャ
リア増倍動作を行うためにバイアスを印加した状態にあ
るときのエネルギ帯図である。
【0256】図35に図示するエネルギ帯図の光電変換
装置は、禁制帯幅Eg4′のn型a-Si1-yCy:H 層601
であることと、光吸収層604のa-Si:H組成の領域が図
33よりも広いことと、禁制帯幅Eg5′のn型a-Si
1-yCy:H 層(遮光層)603であること以外は、実施例
13の光電変換装置と同じであり、a-Si1-xGex:H〜a-Si
1-yCy:H 組成変化層611,612,613の3層から
なる増倍領域602の最小禁制帯幅がEg2、最大禁制
帯幅がEg3、a-Si:H〜a-Si1-yCy:H 層604の最小禁
制帯幅がEg1、p型a-Si:H層605の禁制帯幅がEg
0であることを示している。
【0257】本装置の増倍率は10Vのバイアス印加時
に約10倍以上あった。また、波長700nm以下の光
に対して波長を変化させても増倍率の変化はなかった。
さらに暗時のリーク電流は10Vのバイアス印加時に約
1nA/cm2以下と低かった。さらにまた光応答速度は増倍
層602のないpin型光電変換装置と同等であり、高
速であった。 (実施例15) 本実施例は、実施例13に示した光電変換装置を、実施
例3に示した走査回路,読出し回路上に積層した実施例
である。
【0258】図19は本発明の実施例の受光部付近の概
略的断面図、図20は一画素の等価回路図、図21は本
装置全体の等価回路およびブロック回路図である。
【0259】実施例3と同様にしてトランジスタを有す
る下地回路基体を形成した。
【0260】続いて、a-Si1-xGex:H〜a-Si1-yCy:H の組
成変化層721,722,723を形成して増倍領域7
13を構成した。次にn型a-Si1-xGex:H層714を形成
して画素ごとに分離し、光吸収層a-Si:H〜a-Si1-yCy:H
組成変化層715を形成し、p型a-Si:H層716を形成
し、センサにバイアス電圧を印加するための透明電極7
17を形成した。
【0261】また、コレクタ電極718が基板701の
裏面にオーミック接続されている。したがって、一画素
の等価回路は図20のように、結晶シリコンで構成され
るバイポーラトランジスタ731のベースに、pチャン
ネルMOSトランジスタ732とキャパシタ733及び
実施例13と同様の光電変換装置734が接続され、ベ
ースに電位を与えるための端子735と、pチャンネル
MOSトランジスタ732およびキャパシタ733を駆
動するための端子736と、センサ電極737と、エミ
ッタ電極738、コレクタ電極739とで表わされる。
【0262】図21は図19及び図20で示した一画素
セル740を3×3の2次元マトリックス配置した回路
構成図である。
【0263】なお、動作は実施例3と同様なので動作説
明は省略する。
【0264】本実施例の光電変換装置によれば、Eg1
なる禁制帯幅を有し光を吸収する光吸収層と、Eg5な
る禁制帯幅のn導電型層と、光を吸収して生じたキャリ
アを増倍する最小禁制帯幅Eg2、最大禁制帯幅Eg3
なる禁制帯幅が連続的に変化したステップバック構造を
有する層を一層或いは複数層積層してなる増倍層とを順
次積層してなる層を、電荷注入阻止層間に狭持するよう
にすることで、光吸収層と増倍層間におかれたn導電型
層が、逆バイアス層としての働きを有するため、光吸収
層で生じたキャリアは円滑に輸送され、更に前記光吸収
層の禁制帯幅Eg1が、光吸収層上の積層された一方の
電荷注入阻止層側より連続的に大きくなるように変化
し、前記n導電型層と近接した光吸収層の禁制帯幅Eg
1がn導電型層の禁制帯幅Eg5以上であるようにする
ことにより、光吸収層、増倍層のバンド不整合及びそれ
により生ずる種々の問題が解消され、界面準位の生成等
による光吸収層にてキャリアの走行性に対する障害等か
ら生ずる高速応答性の低下を防止することができ、増倍
層を持たないホトダイオードと同様の高速応答性が得ら
れると同時に、光吸収層の禁制帯幅Eg1を特に可視部
光から紫外部光に対応する禁制帯幅にすることで、可視
部光から紫外部光に高感度をもたせることができる。
【0265】またn導電型層の禁制帯幅Eg5が狭い禁
制帯幅のときは、増倍層への光の入射が低減されるので
増倍層への光入射による増倍率の変動を低減することが
できる。
【0266】また、ステップバック構造の層数を選択す
ることで、増倍率が2以上得られ、且つ低雑音とするこ
とができた。
【0267】また、本発明の光電変換装置の光吸収層、
n導電型層、増倍層、電荷注入阻止層等の構成要素を少
なくともSi原子を含む非単結晶性材料から構成すること
で、禁制帯幅の容易な制御性及び低温積層が可能とな
り、積層により生ずる種々の問題を解消することができ
た。 (実施例16) 以下、図1及び図37及び図38を用いて本発明の第1
6実施例について説明する。
【0268】図1は、本発明の光電変換装置の第16実
施例を示す概略的縦断面構造図である。図1に図示する
光電変換装置は、Cr電極401、正孔注入を阻止するた
めの厚さ約500Åのn型a-Si1-xGex:Hからなる電荷注
入阻止層402、キャリア増倍を行うためのa-Si1-xG
ex:H〜a-Si1-yCy:H の組成を変化させた増倍領域40
3、増倍領域に光が侵入するのを防ぎ且つ光吸収層の内
部電界を強めキャリアの走行をよくするためのn型a-Si
1-xGex:H層(遮光層)404、光を吸収しキャリアを発
生させるための厚さ約1μm のa-Si:H〜a-Si1-xGex:Hの
組成を変化させた光吸収層405、電子注入を阻止する
ための厚さ約100Åのp 型a-Si:Hからなる電荷注入阻
止層406、酸化インジウムを主体とした透明電極40
7とを有している。
【0269】Cr電極401及び透明電極407はEB蒸
着で作成し、電荷注入阻止層402,増倍領域403,
n型a-Si1-xGex:H層404,光吸収層405および電荷
注入阻止層406の非晶質層はプラズマCVD法で作成
した。非晶質層作成の際の原料ガスは、電荷注入阻止層
402及びn型a-Si1-xGex:H層404にはSiH4,GeH4,PH
3,H2、増倍領域403にはSiH4,GeH4,CH4,H2、光吸収層
405にはSiH4, GeH4,H2 、電荷注入阻止層406には
SiH4,B2H6,H2を用いた。
【0270】増倍領域403は原料ガスのうちCH4 とGe
H4のガス流量を連続的に変化させた厚さ200Åの組成
変化層411,412,413の3つの層から成ってい
る。n型a-Si1-xGex:H層404のPH3 のガス流量は電荷
注入阻止層402よりもやや少なくしている。光吸収層
405は原料ガスのうちGeH4のガス流量を連続的に変化
させて形成している。
【0271】図1に示した第16実施例の光電変換装置
のエネルギバンド構造は、理想的には図37及び図38
に示すようなものであることが想定される。
【0272】図37は第16実施例の光電変換装置が無
バイアス状態にあるときのエネルギ帯図、図38はキャ
リア増倍動作を行うためにバイアスを印加した状態にあ
るときのエネルギ帯図である。
【0273】図37及び図38は、n型a-Si1-xGex:H層
501の禁制帯幅がEg4、a-Si1- xGex:H〜a-Si1-yCy:
H 組成変化層511,512,513の3つの層からな
る増倍領域502の最小禁制帯幅がEg2、増倍領域5
02の最大禁制帯幅がEg3、n型a-Si1-xGex:H層50
3の禁制帯幅がEg5、a-Si:H〜a-Si1-xGex:H層504
の最大禁制帯幅がEg1、p型a-Si:H層505の禁制帯
幅がEg0であることを示している。
【0274】また、図37において、伝導帯端、価電子
帯端ともにエネルギの不連続点があるが、バイアス電圧
が印加された状態では、図38を見てもわかるようにキ
ャリアの走行する方向にエネルギ不連続による障壁がほ
とんどなく、キャリアの走行性を阻害していない。
【0275】ここで作成した組成変化層511,51
2,513のうちの最大禁制帯幅Eg3を与える層はC
組成比yが約0.4 のa-Si1-yCy:H であり、Eg3は約2.
3eV であった。
【0276】また、a-Si1-xGex:H層501及び503の
Ge組成比xは約0.6 であり、禁制帯幅Eg4は約1.3eV
であった。組成変化層511,512,513のうちの
最小禁制帯幅Eg2を与える層もa-Si1-xGex:H層であ
り、Eg2も約1.3eV であった。a-Si:H〜a-Si1-xGex:H
層504の最大禁制帯幅Eg1を与える層はa-Si:Hであ
り、Eg1は約1.8eV であった。p型a-Si:H層505の
禁制帯幅Eg0も約1.8eV であった。
【0277】さらに光吸収層504の光吸収係数は波長
400 nmの光に対して約1×105cm- 1 以上、波長1000nm
の光に対して約2×104cm-1 以上であり、赤外部光,
可視部光,紫外部光にわたって光の吸収が十分に行えて
いた。
【0278】本装置の増倍率は10Vのバイアス印加時
に約10倍以上あった。また、波長1000nm以下の光に対
して、波長を変化させても増倍率の変化はなかった。さ
らに暗時のリーク電流は10Vのバイアス印加時に約1
nA/cm2以下と低かった。さらにまた光応答速度は増倍層
502のないpin型光電変換装置と同等であり、高速
であった。 (実施例17) 以下、図39及び図40を用いて本発明の第17実施例
について説明する。
【0279】図39及び図40は本発明の第17実施例
の理想的に想定されるエネルギバンド構造図である。
【0280】図39は第17実施例の光電変換装置が無
バイアス状態にあるときのエネルギ帯図、図40はキャ
リア増倍動作を行うためにバイアスを印加した状態にあ
るときのエネルギ帯図である。
【0281】図39に示す光電変換装置は、禁制帯幅E
g4′のワイドギャップn型a-Si1- yCy:H 層601であ
ることと、光吸収層604のa-Si:H組成の領域が図37
の光電変換装置よりも広いこと以外は、図37と同じで
ある。各層の禁制帯幅は、a-Si1-xGex:H〜a-Si1-yCy:H
組成変化層611,612,613の3層からなる増倍
領域602の最小禁制帯幅がEg2、最大禁制帯幅がE
g3、n型a-Si1-xGex:H層603の禁制帯幅がEg5、
a-Si:H〜a-Si1-xGex:H層604の最大禁制帯幅がEg
1、p型a-Si:H層605の禁制帯幅がEg0であること
を示している。
【0282】本装置の増倍率は10Vのバイアス印加時
に約10倍以上あった。また、波長1000nm以下の光に
対して波長を変化させても増倍率の変化はなかった。さ
らに暗時のリーク電流は10Vのバイアス印加時に約1
nA/cm2以下と低かった。さらにまた光応答速度は増倍層
602のないpin型光電変換装置と同等であり、高速
であった。 (実施例18) 本実施例は、実施例16に示した光電変換装置を実施例
3に示した走査回路,読出し回路上に積層した実施例で
ある。
【0283】図19は本発明の実施例の受光部付近の概
略的断面図、図20は一画素の等価回路図、図21は本
装置全体の等価回路およびブロック回路図である。
【0284】まず、実施例3と同様にしてトランジスタ
を有する下地回路基体を形成した。続いて、a-Si1-XG
eX:H〜a-Si1-yCy:H の組成変化層721,722,72
3を形成して増倍領域713を構成した。次にn型a-Si
1-XGeX:H層714を形成して画素ごとに分離し、光吸収
層a-Si:H〜a-Si1-XGeX:H組成変化層715を形成し、p
型a-Si:H層716を形成し、センサにバイアス電圧を印
加するための透明電極717を形成した。
【0285】また、コレクタ電極718が基板701の
裏面にオーミック接続されている。したがって、一画素
の等価回路は図20のように、結晶シリコンで構成され
るバイポーラトランジスタ731のベースに、pチャン
ネルMOSトランジスタ732とキャパシタ733及び
実施例1と同様の光電変換装置734が接続され、ベー
スに電位を与えるための端子735と、pチャンネルM
OSトランジスタ732およびキャパシタ733を駆動
するための端子736と、センサ電極737と、エミッ
タ電極738、コレクタ電極739とで表わされる。
【0286】図21は図19及び図20で示した一画素
セル740を3×3の2次元マトリックス配置した回路
構成である。
【0287】なお、動作は実施例3と同様なので動作説
明は省略する。
【0288】本実施例の光電変換装置によれば、Eg1
なる禁制帯幅を有し光を吸収する光吸収層と、Eg5な
る禁制帯幅のn導電型層と、光を吸収して生じたキャリ
アを増倍する最小禁制帯幅Eg2、最大禁制帯幅Eg3
なる禁制帯幅が連続的に変化したステップバック構造を
有する層を一層或いは複数層積層してなる増倍層とを順
次積層してなる層を、電荷注入阻止層間に狭持するよう
にすることで、光吸収層と増倍層間におかれたn導電型
層(遮光層)が、逆バイアス層としての働きを有し又キ
ャリアの輸送方向に光吸収層の禁制帯幅が変化している
ため、光吸収層で生じたキャリアは円滑に増倍層へ輸送
され、更に前記光吸収層の禁制帯幅Eg1が光吸収層上
に積層された一方の電荷注入阻止層側から連続的に小さ
くなるように変化し、前記n導電型層(遮光層)と近接
した光吸収層の禁制帯幅Eg1が、n導電型層の禁制帯
幅Eg5と略等しくなるように構成されていることよ
り、光吸収層、増倍層のバンド不整合及びそれにより生
ずる種々の問題が解消され、界面準位の生成等による光
吸収層にてキャリアの走行性に対する障害等から生ずる
高速応答性の低下を防止することができ、増倍層を持た
ないホトダイオードと同様の高速応答性が得られると同
時に、光吸収層の禁制帯幅Eg1を特に赤外部光から紫
外部光に対応する禁制帯幅にすることで、赤外部光から
紫外部光に高感度をもたせることができた。
【0289】またn導電型層(遮光層)を光吸収層と増
倍層との間に設けたため、増倍層への光の入射が低減さ
れるので増倍率の変動を低減することができた。
【0290】また、本発明の光電変換装置の光吸収層、
n導電型層、増倍層、電荷注入阻止層等の構成要素を少
なくともSi原子を含む非単結晶性材料から構成すること
により、禁制帯幅の容易な制御性及び低温積層が可能と
なり、積層により生ずる種々の問題を解消することがで
きた。 (実施例19) 遮光層をグラファイトで形成した光電変換装置を形成し
た。
【0291】本実施例における光電変換装置は図1の概
略的縦断面構造図に示すように、Cr−Ag合金電極4
01、該電極から正孔注入を阻止するための厚さ約50
0Åのn型a−Si0.55Ge0.45:Hからなる電荷注入
阻止層402、キャリア増倍を行なうためのa−Si
1-x Gex :H〜a−Si1-y y :Hの組成を変化さ
せた増倍領域403、該増倍領域に光が侵入するのを防
ぐグラファイトからなる遮光層404、光を吸収し、キ
ャリアを発生させるためのa−Si:H光吸収層40
5、厚さ約100ÅのP型a−Si:Hからなる電荷注
入阻止層406、酸化インジウム及び酸化スズからなる
透明電極407を有している。
【0292】石英ガラスの下地材料上に通常のEB蒸着
法により、Cr−Ag合金電極401を厚さ約1.1μ
m 形成し、その上に通常のプラズマCVD法により原料
ガスとしてSiH4 、GeH4 、PH3、H2 を用いて
厚さ約500Åの電荷注入阻止層402を形成した。
【0293】続いて、増倍領域403をプラズマCVD
法を用いて原料ガス(SiH4 、CH4 、GeH4 、H
2 )のうちCH4 とGeH4 とのガス流量を連続的に変
化させ最大禁制帯幅2.8eVのa−Si1-y y :H
と最小禁制帯幅1.4eVのa−Si1-x Gex :Hか
らなる組成変化層411、412、413のおのおのの
層厚が190Åの3つの層で形成した。
【0294】こうして形成した増倍領域403上にスパ
ッタ法を用いて層厚約3500Åの多結晶グラファイト
からなる遮光層404を形成した。続いて該遮光層上に
プラズマCVD法を用いて、原料ガスとしてSiH4
びH2 を用いて層厚約1μm の光吸収層405及び原料
ガスとしてSiH4 、B2 6 及びH2 を用いて層厚約
100Åの電荷注入阻止層406をそれぞれ形成した。
該電荷注入阻止層406上にEB蒸着法にてIn2 3
及びSnO2 を含む透明電極407を形成した。
【0295】こうして形成した本実施例の光電変換装置
は12Vのバイアス印加時に約11倍の増倍率を有し、
可視光全域にわたって増倍率の変化もなく高感度であっ
た。また、暗時のリーク電流は12Vのバイアス印加時
に約1.1nA/cm2 以下と低かった。
【0296】さらにまた、光応答速度は増倍層のないp
in型の光電変換装置と同等であり、高速動作してい
た。
【0297】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明の光
電変換装置によれば、増倍層とは独立した光吸収層を遮
光層を介して前記増倍層上に設けているため、従来の光
電変換装置の特性不安定化の原因であった増倍層中への
入射光の侵入による増倍率の変動を少なくすることがで
きる。
【0298】また、本発明の光電変換装置によれば、増
倍層は、その最大禁制帯幅Eg3と最小禁制帯幅Eg2
との差の伝導帯エネルギ段差であるΔEcが大きいステ
ップバック構造層で電子増倍され、低雑音でかつ、充分
な増倍率をとることができる。
【0299】また、本発明の光電変換装置によれば、比
較的低温で成膜可能な成膜方法、例えばプラズマCVD
法等で、低温(例えば、200〜300℃)かつ大面積
基板に容易に作成され、また禁制帯幅の制御も組成変調
等が容易にできるため、ステップバック構造の増倍層も
比較的容易にできるだけでなく、熱等による原子の熱拡
散等が抑制され、比較的確かなステップバック構造が、
できる等、多層に積層する上での問題を低減することが
できる。
【0300】また、本発明の光電変換装置によれば、光
を吸収しフォトキャリアを発生する光吸収層と、前記キ
ャリアを増倍する増倍層とを独立して有するため、各層
を形成する材料の選択の自由度を増加することができ
る。
【0301】また、本発明の光電変換装置によれば、所
望の波長の入射光に対する感度を高くし、低雑音とし、
大面積化を容易なものとし、薄型化を達成することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光電変換装置の概略的縦断面図であ
る。
【図2】本発明の光電変換装置の無バイアス時のエネル
ギ帯の構造図である。
【図3】本発明の光電変換装置のバイアス印加時のエネ
ルギ帯の構造図である。
【図4】本発明の光電変換装置の無バイアス時のエネル
ギ帯の構造図である。
【図5】本発明の光電変換装置のバイアス印加時のエネ
ルギ帯の構造図である。
【図6】増倍層のエネルギ状態を説明するための図であ
る。
【図7】増倍層のエネルギ状態を説明するための図であ
る。
【図8】増倍層のエネルギ状態を説明するための図であ
る。
【図9】異型半導体の接合した増倍層のエネルギ状態を
説明するための図である。
【図10】増倍層の接合部及びその近傍に不純物を含有
した場合の電界強度分布を説明するための図である。
【図11】不純物を含有する増倍層の無バイアス時のエ
ネルギ帯の構造図である。
【図12】増倍層のエネルギ状態を説明するための図で
ある。
【図13】増倍層のエネルギ状態を説明するための図で
ある。
【図14】増倍層のエネルギ状態を説明するための図で
ある。
【図15】増倍層の一実施態様例における無バイアス時
のエネルギ帯の構造図である。
【図16】増倍層の一実施態様例におけるバイアス印加
時のエネルギ帯の構造図である。
【図17】本発明の光電変換装置の無バイアス時のエネ
ルギ帯の構造図である。
【図18】本発明の光電変換装置のバイアス印加時のエ
ネルギ帯の構造図である。
【図19】下地回路基体上に増倍層、遮光層、光吸収層
とを有する光電変換装置の概略的縦断面図である。
【図20】図19に示した光電変換装置の等価回路図で
ある。
【図21】図20に示した光電変換装置を一画素として
マトリクス状に配した光電変換装置を説明するための図
である。
【図22】光電変換装置の構成を示すブロック図であ
る。
【図23】本発明の光電変換装置の無バイアス時のエネ
ルギ帯の構造図である。
【図24】本発明の光電変換装置のバイアス印加時のエ
ネルギ帯の構造図である。
【図25】本発明の光電変換装置の無バイアス時のエネ
ルギ帯の構造図である。
【図26】本発明の光電変換装置のバイアス印加時のエ
ネルギ帯の構造図である。
【図27】本発明の光電変換装置の無バイアス時のエネ
ルギ帯の構造図である。
【図28】本発明の光電変換装置のバイアス印加時のエ
ネルギ帯の構造図である。
【図29】本発明の光電変換装置の無バイアス時のエネ
ルギ帯の構造図である。
【図30】本発明の光電変換装置のバイアス印加時のエ
ネルギ帯の構造図である。
【図31】本発明の光電変換装置の無バイアス時のエネ
ルギ帯の構造図である。
【図32】本発明の光電変換装置のバイアス印加時のエ
ネルギ帯の構造図である。
【図33】本発明の光電変換装置の無バイアス時のエネ
ルギ帯の構造図である。
【図34】本発明の光電変換装置のバイアス印加時のエ
ネルギ帯の構造図である。
【図35】本発明の光電変換装置の無バイアス時のエネ
ルギ帯の構造図である。
【図36】本発明の光電変換装置のバイアス印加時のエ
ネルギ帯の構造図である。
【図37】本発明の光電変換装置の無バイアス時のエネ
ルギ帯の構造図である。
【図38】本発明の光電変換装置のバイアス印加時のエ
ネルギ帯の構造図である。
【図39】本発明の光電変換装置の無バイアス時のエネ
ルギ帯の構造図である。
【図40】本発明の光電変換装置のバイアス印加時のエ
ネルギ帯の構造図である。
【図41】従来の光通信用アバランシェフォトダイオー
ド(APD)の構造を示す模式的断面図である。
【図42】ステップバック構造を有する従来のAPDの
構造を示す模式的断面図である。
【図43】従来のAPDの無バイアス時のバンドギャッ
プ傾斜層のエネルギ帯の構造図である。
【図44】従来のAPDの逆バイアス印加時のバンドギ
ャップ傾斜層のエネルギ帯の構造図である。
【符号の説明】
401 電極、 402 n型半導体層、 403 増
倍層、404 遮光層、405 光吸収層、406 p
型半導体層、 407 電極、 411 ステップバッ
ク構造層、 412 ステップバック構造層、 413
ステップバック構造層。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (31)優先権主張番号 特願平2−49599 (32)優先日 平2(1990)3月2日 (33)優先権主張国 日本(JP) (31)優先権主張番号 特願平2−49600 (32)優先日 平2(1990)3月2日 (33)優先権主張国 日本(JP) (31)優先権主張番号 特願平2−49601 (32)優先日 平2(1990)3月2日 (33)優先権主張国 日本(JP) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H01L 31/10 - 31/107

Claims (31)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 入射した光を吸収してキャリアを発生す
    る光吸収層と該キャリアを増倍する増倍層とを有する光
    電変換装置において、 前記光吸収層と前記増倍層との間に前記光吸収層を透過
    した光が前記増倍層に入射することを防ぐ遮光層を設け
    るとともに、外部から不必要なキャリアが前記光吸収層
    及び前記増倍層に注入されるのを防ぐための電荷注入阻
    止層を設けたことを特徴とする光電変換装置。
  2. 【請求項2】 前記増倍層は、最小禁制帯幅Eg2、最
    大禁制帯幅Eg3なる禁制帯幅が連続的に変化したステ
    ップバック構造を有する層を一層又は複数層積層したも
    のである請求項1記載の光電変換装置。
  3. 【請求項3】 前記増倍層は、誘電率の高い層と誘電率
    の低い層とを交互に積層したものである請求項1記載の
    光電変換装置。
  4. 【請求項4】 前記光吸収層は、非単結晶性材料で構成
    されている請求項1〜3のいずれかの請求項に記載の光
    電変換装置。
  5. 【請求項5】 前記増倍層は、非単結晶性材料で構成さ
    れている請求項1〜4のいずれかの請求項に記載の光電
    変換装置。
  6. 【請求項6】 前記電荷注入阻止層は、厚さが50Å以
    上、2000Å以下であり、導電率が10 -4 S/cm以
    上のp又はn型の層である請求項1〜5のいずれかの請
    求項に記載の光電変換装置。
  7. 【請求項7】 前記遮光層が金属材料である請求項1〜
    6のいずれかの請求項に記載の光電変換装置。
  8. 【請求項8】 前記遮光層が高濃度に不純物を含有した
    半導体材料である請求項1〜6のいずれかの請求項に記
    載の光電変換装置。
  9. 【請求項9】 前記遮光層が導電性のセラミック材料で
    ある請求項1〜6のいずれかの請求項に記載の光電変換
    装置。
  10. 【請求項10】 前記光吸収層の禁制帯幅Eg1が層厚
    方向に実質的に均一である請求項1〜9のいずれかの請
    求項に記載の光電変換装置。
  11. 【請求項11】 前記光吸収層の禁制帯幅Eg1が層厚
    方向に不均一である請求項1〜9のいずれかの請求項に
    記載の光電変換装置。
  12. 【請求項12】 入射した光を吸収してキャリアを発生
    する光吸収層と該キャリアを増倍する増倍層とを有する
    光電変換装置において、 第1の電極と、 前記第1の電極から不必要なキャリアが光電変換装置内
    に注入されるのを防ぐための第1の電荷注入阻止層と、 前記増倍層と、 前記増倍層中に光が侵入し増倍率の変動が起こるのを防
    ぐための遮光層と、前記光吸収層と、 第2の電極から不必要なキャリアが光電変換装置内に注
    入されるのを防ぐための第2の電荷注入阻止層と、 光透過性の前記第2の電極とをこの順で有することを特
    徴とする光電変換装置。
  13. 【請求項13】 前記増倍層は、最小禁制帯幅Eg2、
    最大禁制帯幅Eg3なる禁制帯幅が連続的に変化したス
    テップバック構造を有する層を一層又は複数層積層した
    ものである請求項12記載の光電変換装置。
  14. 【請求項14】 前記増倍層は、誘電率の高い層と誘電
    率の低い層とを交互に積層したものである請求項12記
    載の光電変換装置。
  15. 【請求項15】 前記光吸収層は非単結晶性材料で構成
    されている請求項12〜14のいずれかの請求項に記載
    の光電変換装置。
  16. 【請求項16】 前記増倍層は、非単結晶性材料で構成
    されている請求項12〜15のいずれかの請求項に記載
    の光電変換装置。
  17. 【請求項17】 前記遮光層が金属材料である請求項1
    2〜16のいずれかの請求項に記載の光電変換装置。
  18. 【請求項18】 前記遮光層が高濃度に不純物を含有し
    た半導体材料である請求項12〜16のいずれかの請求
    項に記載の光電変換装置。
  19. 【請求項19】 前記遮光層が導電性のセラミック材料
    である請求項12〜16のいずれかの請求項に記載の光
    電変換装置。
  20. 【請求項20】 前記光吸収層の禁制帯幅Eg1が層厚
    方向に実質的に均一である請求項12〜19のいずれか
    の請求項に記載の光電変換装置。
  21. 【請求項21】 前記光吸収層の禁制帯幅Eg1が層厚
    方向に不均一である請求項12〜19のいずれかの請求
    項に記載の光電変換装置。
  22. 【請求項22】 複数の光電変換部にて発生した電気信
    号を出力する光電変換装置において、 入射した光を吸収してキャリアを発生する光吸収層と、
    該キャリアを増倍する増倍層との間に遮光層を有する光
    電変換部の複数を有し、 前記光電変換部の複数にて発生した電気信号を蓄積する
    ための蓄積手段、前記光電変換部の複数にて発生した電
    気信号を走査するための走査手段、前記光電変換部の複
    数にて発生した電気信号を読み出すための読み出し手段
    より選ばれる少なくとも一つの手段を有する信号出力部
    とを有し、 前記光電変換部の複数と前記信号出力部とが電気的に接
    続されていることを特徴とする光電変換装置。
  23. 【請求項23】 前記増倍層は、最小禁制帯幅Eg2、
    最大禁制帯幅Eg3なる禁制帯幅が連続的に変化したス
    テップバック構造を有する層を一層又は複数層積層した
    ものである請求項22記載の光電変換装置。
  24. 【請求項24】 前記増倍層は、誘電率の高い層と誘電
    率の低い層とを交互に積層したものである請求項22記
    載の光電変換装置。
  25. 【請求項25】 前記光吸収層は、非単結晶性材料で構
    成されている請求項22〜24のいずれかの請求項に記
    載の光電変換装置。
  26. 【請求項26】 前記増倍層は、非単結晶性材料で構成
    されている請求項22〜25のいずれかの請求項に記載
    の光電変換装置。
  27. 【請求項27】 前記光電変換装置内に外部から不必要
    なキャリアが注入するのを防ぐための電荷注入阻止層を
    有する請求項22〜25のいずれかの請求項に記載の光
    電変換装置。
  28. 【請求項28】 前記遮光層が金属材料である請求項2
    2〜27のいずれかの請求項に記載の光電変換装置。
  29. 【請求項29】 前記遮光層が高濃度に不純物を含有し
    た半導体材料である請求項22〜27のいずれかの請求
    項に記載の光電変換装置。
  30. 【請求項30】 前記光吸収層の禁制帯幅Eg1が層厚
    方向に実質的に均一である請求項22〜29のいずれか
    の請求項に記載の光電変換装置。
  31. 【請求項31】 前記光吸収層の禁制帯幅Eg1が層厚
    方向に不均一である請求項22〜29のいずれかの請求
    項に記載の光電変換装置。
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