JP2954358B2 - 半導体レーザ及び劈開方法 - Google Patents

半導体レーザ及び劈開方法

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JP2954358B2 JP9530813A JP53081397A JP2954358B2 JP 2954358 B2 JP2954358 B2 JP 2954358B2 JP 9530813 A JP9530813 A JP 9530813A JP 53081397 A JP53081397 A JP 53081397A JP 2954358 B2 JP2954358 B2 JP 2954358B2
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勲 木戸口
秀人 足立
康仁 熊渕
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Description

【発明の詳細な説明】 技術分野 本発明は、光ディスクシステムの光源などに用いられ
る低雑音の半導体レーザに関する。
背景技術 近年、光通信、レーザプリンタ、光ディスクなどの分
野で半導体レーザの需要が高まり、GaAs系及びInP系を
中心として、活発に研究開発が進められている。このう
ち光情報処理分野においては、特に波長が約780nmのAlG
aAs系半導体レーザ光により情報の記録・再生を行う方
式が実用化され、コンパクトディスク等で広く普及する
に至っている。
ところで、半導体レーザを光源とする光ディスクの再
生時には、ディスク面からの反射光の帰還や温度の変化
により、強度雑音が発生する。このような強度雑音は、
信号の読取エラーを誘発する。従って、光ディスクの光
源用としては、強度雑音の少ない半導体レーザが不可欠
となる。
従来、再生専用光ディスクのための光源として使用さ
れる低出力のAlGaAs系半導体レーザでは、雑音を低減す
るために、リッジストライプの両側に意図的に可飽和吸
収体が形成されるような構造を採用することによって、
低雑音化が図られてきている。このような構成にする
と、縦モードのマルチ化が達成される。半導体レーザが
単一縦モードで発振しているときに、光の帰還や温度変
化などによる外乱が入ると、利得ピークの微少な変化に
よって、近接する縦モードが発振を開始する。このよう
にして発振を開始したモードは、元の発振モードとの間
で競合を起こし、これが雑音の原因となる。これに対し
て、上記のような手法によって縦モードをマルチ化する
と、各モードの強度変化が平均化されるとともに外乱に
よる強度変化が生じなくなるので、安定した低雑音特性
を得ることが可能になる。
また、別の方法として、さらに安定な自励発振特性を
得ようとする試みが、特開昭63−202083号公報に示され
ている。具体的には、出力光を吸収できる層を設けるこ
とで、自励発振型半導体レーザを実現している。
さらに、特開平6−260716号公報では、活性層のバン
ドギャップと吸収層のバンドギャップとをほぼ等しくす
ることによって、半導体レーザの動作特性を改善したと
の報告がなされている。上記公報では、その実施例とし
て特に赤色半導体レーザに言及している。
図16は、上記の特開平6−260716号公報に開示されて
いる自励発振型半導体レーザの構成を模式的に示す断面
図である。
具体的には、n型GaAs基板1301の上に、n型GaInPバ
ッファ層1302を及びn型AlGaInPクラッド層1303が形成
され、クラッド層1303の中に、GaInP歪量子井戸(MQW)
活性層1304が形成されている。クラッド層1303の中に
は、さらに歪量子井戸可飽和吸収層1305が形成されてい
る。クラッド層1303の上部には、クラッド層1306及びp
型GaInPコンタクト層1307がリッジ状に形成されてい
る。クラッド層1306及びコンタクト層1307からなるリッ
ジの両側は、n型GsAs電流ブロック層1308によって埋め
込まれている。さらに、コンタクト層1307及び電流ブロ
ック層1308の上にはp型GsAsキャップ層1309が形成され
ており、キャップ層1309の上にはp電極1310が形成さ
れ、一方、基板1301の裏面にはn電極1311が形成されて
いる。
上記の特開平6−260716号公報は、以上のような構成
によって良好な自励発振特性を得ようとしている。
発明の開示 本発明のある局面によれば、半導体レーザが、活性層
と該活性層を挟むクラッド構造とを備え、該クラッド構
造は可飽和吸収層を含んでおり、該可飽和吸収層がInxG
a1-xAsyP1-y(0<x<1、0≦y≦1)からなる。
好ましくは、前記可飽和吸収層と前記活性層との間の
間隔が約200オングストローム以上である。
ある実施形態では、前記クラッド構造はさらに光ガイ
ド層を含み、前記可飽和吸収層は該光ガイド層に隣接し
ている。或いは、前記クラッド構造はさらに光ガイド層
を含み、前記可飽和吸収層は該光ガイド層の近傍に配置
されている。
ある実施形態では、前記可飽和吸収層は歪量子井戸構
造を有しており、該可飽和吸収層の基底準位間のエネル
ギーギャップは、前記活性層のエネルギーギャップより
も約30meVから約200meVだけ小さい。
好ましくは、前記活性層と前記可飽和吸収層を除く前
記クラッド構造とが(AlxGa1-xyIn1-yPからなる。
本発明の他の局面によれば、半導体レーザが、活性層
と該活性層を挟むクラッド構造とを備え、該クラッド構
造は可飽和吸収層を含んでおり、該可飽和吸収層がInGa
AsPからなっていて、該可飽和吸収層が歪量子井戸構造
を有している。
好ましくは、前記可飽和吸収層と前記活性層との間の
間隔が約200オングストローム以上である。
ある実施形態では、前記クラッド構造はさらに光ガイ
ド層を含み、前記可飽和吸収層は該光ガイド層に隣接し
ている。或いは、前記クラッド構造はさらに光ガイド層
を含み、前記可飽和吸収層は該光ガイド層の近傍に配置
されている。
ある実施形態では、前記可飽和吸収層の基底準位間の
エネルギーギャップは、前記活性層のエネルギーギャッ
よりも約30meVから約200meVだけ小さい。
好ましくは、前記活性層と前記可飽和吸収層を除く前
記クラッド構造とが(AlxGa1-xyIn1-yPからなる。
本発明のさらに他の局面によれば、半導体レーザが、
活性層と該活性層を挟むクラッド構造とを備え、該クラ
ッド構造は可飽和吸収層を含んでおり、該可飽和吸収層
がInGaAsからなる。
好ましくは、前記可飽和吸収層と前記活性層との間の
間隔が約200オングストローム以上である。
ある実施形態では、前記クラッド構造はさらに光ガイ
ド層を含み、前記可飽和吸収層は該光ガイド層に隣接し
ている。或いは、前記クラッド構造はさらに光ガイド層
を含み、前記可飽和吸収層は該光ガイド層の近傍に配置
されている。
ある実施形態では、前記可飽和吸収層の基底準位間の
エネルギーギャップは、前記活性層のエネルギーギャッ
プよりも約30meVから約200meVだけ小さい。
好ましくは、前記活性層と前記可飽和吸収層を除く前
記クラッド構造とがAlzGa1-zAsからなる。
本発明のさらに他の局面によれば、半導体レーザが、
活性層と該活性層を挟むクラッド構造とを備え、該クラ
ッド構造は可飽和吸収層を含んでおり、該可飽和吸収層
の厚さが約100オングストローム以下である。
好ましくは、前記可飽和吸収層の厚さが約80オングス
トローム以下である。
ある実施形態では、前記クラッド構造はさらに光ガイ
ド層を含み、前記可飽和吸収層は該光ガイド層に隣接し
ている。或いは、前記クラッド構造はさらに光ガイド層
を含み、前記可飽和吸収層は該光ガイド層の近傍に配置
されている。
ある実施形態では、前記可飽和吸収層は歪量子井戸構
造を有しており、該可飽和吸収層の基底準位間のエネル
ギーギャップは、前記活性層のエネルギーギャップより
も約30meVから約200meVだけ小さい。
本発明のさらに他の局面によれば、半導体レーザが、
活性層と、該活性層を挟むn型クラッド層及び第1のp
型クラッド層と、該第1のp型クラッド層の上に形成さ
れている、開口部を有する電流ブロック層と、該開口部
に形成されている第2のp型クラッド層と、を備え、該
第2の型クラッド層が可飽和吸収層を含んでいる。
ある実施形態では、前記可飽和吸収層はInGaAsP或い
はInGaAsからなる。
ある実施形態では、前記電流ブロック層の中にモード
制御層が形成されている。
好ましくは、前記第1のp型クラッド層が、前記n型
クラッド層のバンドギャップよりも大きいバンドギャッ
プを有する材料からなる。例えば、前記第1のp型クラ
ッド層がAlGaInPN層である。
本発明のさらに他の局面によれば、劈開方法が提供さ
れる。該劈開方法は、ジャスト面の面方位に対して所定
の方向に傾いた面方位を有する基板の劈開方法であっ
て、該基板の面方位の傾きの方向へ応力をかけて該基板
を劈開する。
本発明のさらに他の劈開方法は、面方位が[100]方
向から[0−1−1]方向へ傾斜している結晶の劈開方
法であって、該[0−1−1]方向へ応力をかけて該結
晶を劈開する。
これにより、本発明は、(1)半導体レーザに含まれ
る可飽和吸収層の構成材料として特定の材料を選択する
ことで、安定な自励発振特性を有し且つ信頼性の高い半
導体レーザを提供すること、及び(2)上記のような半
導体レーザの製造プロセスで使用し得る劈開方法を提供
すること、を目的とする。
図面の簡単な説明 図1A及び図1Bは、本発明の第1の実施形態における半
導体レーザの構成を示す断面図及び斜視図である。
図2は、図1A及び図1Bに示す半導体レーザの活性層及
びその近傍でのAl組成の変化を示す図である。
図3は、GaInP及びInGaAsPの利得特性曲線を示す図で
ある。
図4は、図1A及び図1Bに示す半導体レーザにおける光
出力及びキャリア密度の時間変化を示す図である。
図5は、図1A及び図1Bに示す半導体レーザにおける光
出力と電流との関係を示す図である。
図6は、図1A及び図1Bに示す半導体レーザにおける光
出力の時間変化の実測波形の一例を示す図である。
図7は、基板の傾斜方位と好ましい劈開方向との間の
関係を説明するための図である。
図8は、本発明の第2の実施形態における半導体レー
ザの構成を示す断面図である。
図9は、図8に示す半導体レーザの活性層及びその近
傍でのAl組成の変化を示す図である。
図10は、図8に示す半導体レーザにおける光閉じ込め
率(光閉じ込め係数)と光ガイド層の厚さとの関係を示
す図である。
図11は、本発明の第3の実施形態における半導体レー
ザの構成を示す断面図である。
図12は、GsAs及びInGaAsの利得特性曲線を示す図であ
る。
図13は、本発明の第4の実施形態における半導体レー
ザの構成を示す断面図である。
図14は、本発明の第5の実施形態における半導体レー
ザの構成を示す断面図である。
図15は、GsAs及びGaInPの利得特性曲線を示す図であ
る。
図16は、従来技術による自励発振型半導体レーザの構
成の一例を示す断面図である。
発明を実施するための最良の形態 本発明の具体的な実施形態の説明に先立って、以下で
はまず、本発明に至る過程で本願発明者らによって行わ
れた検討結果について説明する。
先に述べたように、従来技術においては、半導体レー
ザにおける自励発振現象の利用に関する様々な報告が行
われている。しかし、本願発明者による検討によれば、
AlGaInP系半導体レーザでは、AlGaAs系に比べて材料の
利得特性曲線が大きく異なるために、自励発振特性を得
ることが困難であることが明らかとなった。この点を、
図15を参照して説明する。
図15は、GsAs及びGaInPの利得特性を示す図である。
これらの材料(GsAs及びGaInP)は、それぞれAlGsAs系
半導体レーザ及びAlGaInP系半導体レーザの活性層の構
成材料として主に用いられる。
本願発明者らによる検討によれば、キャリア密度に対
する利得特性曲線の傾きが大きいほど、自励発振特性が
容易に得られることが明らかになった。その理由は、自
励発振特性を得るためには可飽和吸収層の内部でキャリ
アの強い振動が要求されることに関連しており、キャリ
ア密度に対する利得特性曲線の傾きが大きいほど、少な
い光の吸収でキャリア密度を変化させることが可能とな
り、結果的にキャリアの振動が生じやすくなるためであ
る。
ところが、GaInPの場合、GsAsに比べて利得特性曲線
の傾きが小さいために、相対的に自励発振特性を得るこ
とが困難であることが判明した。
本願発明者らの実験結果によると、赤色半導体レーザ
の場合、従来技術で行われているように単に可飽和吸収
層を付加しただけでは、安定した自励発振特性を得るこ
とが困難であることが明らかになった。特に、高温で安
定した自励発振特性を得ることが、困難である。また、
従来技術のような構成では、可飽和吸収層における光の
消費量が大きく、その結果として閾値電流が増大する傾
向がある。そのため、高温、例えば約80℃での信頼性に
支障を来す恐れがある。
ここで、半導体レーザで自励発振を生じさせる際の他
のパラメータとして、可飽和吸収層の内部でのキャリア
密度がある。具体的には、可飽和吸収層の体積を十分に
小さくして、相対的にその内部でのキャリア密度を増加
させる方法が考えられる。この点を考慮すると、可飽和
吸収層の堆積(すなわちその長さ)にも最適値があっ
て、単に可飽和吸収層を付加しただけでは、安定な自励
発振特性を得にくいことになる。
さらに、安定した自励発振現象を生じさせるために
は、可飽和吸収層への適切な光の閉じ込めを確保するこ
とが必要である。そのためには、単純には、活性層に可
飽和吸収層を近付ければよいと考え易いが、両者の距離
が接近し過ぎると、少数キャリアの活性層からのオーバ
ーフローによる動作特性への悪影響が発生する。従っ
て、活性層と可飽和吸収層との間の距離は、約200オン
グストローム以上、望ましくは約500オングストローム
以上を確保しなければならない。従って、活性層と可飽
和吸収層との間に十分な距離を確保した状態で光の閉じ
込めを確保することが必要であって、これらの条件を同
時に満足しなければ、結果として所望の自励発振特性を
有する半導体レーザを得ることが困難となる。
以上に述べた検討結果は、主にAlGaInP系材料を用い
て構成される赤色半導体レーザに関するものであるが、
発振波長が赤外領域にあるAlGsAs系材料においても、閾
値電流が低い状態で安定な自励発振を確保することは、
従来技術では十分に実現できない。特に、高出力化が望
まれる状態では、この問題点が顕著になる。
以下では、上記のような検討結果に基づいて達成され
た本発明の様々な実施形態のいくつかを、添付の図面を
参照しながら説明する。
(第1の実施形態) 図1A及び図1Bは、本発明の第1の実施形態における自
励発振特性を有する半導体レーザ100の構造を示す断面
図及び斜視図である。
半導体レーザ100において、n型GsAs基板101の上に、
半導体材料の積層構造が形成されている。具体的には、
この基板101は、(100)面から(0−1−1)方向へ、
約8度傾斜している。なお、本願明細書において、面方
位の表記に含まれる「−1」という記載は、数字の
「1」の上にバー を付けた「」と同じ内容を意味するものとする。例え
ば、上記の「(0−1−1)方向」という記載は、
「(0)方向」を意味する。
基板101の上には、n型GsAsバッファァ層102、n型Al
GaInPクラッド層103、GaInP活性層104、AlGaInPからな
る第1のp型クラッド層105a、及びInGaAsP可飽和吸収
層106が、順次形成されている。可飽和吸収層106の上に
は、AlGaInPからなる第2のp型クラッド層105b、及び
p型GaInPコンタクト層110が形成されている。第2のp
型クラッド層105b及びp型コンタクト層110は、リッジ
状に形成されており、リッジの両側は、n型GsAs電流ブ
ロック層111が形成されている。さらに、p型コンタク
ト層110及びn型電流ブロック層111の上には、p型GsAs
キャップ層112が形成されている。そして、キャップ層1
12の上にはp電極113が形成され、一方、基板101の裏面
にはn電極114が形成されている。
上述した各層の典型的な厚さは、それぞれ以下の通り
である。
表 1 名 称 参照番号 厚さ キャップ層 112 3μm コンタクト層 110 500Å 第2のp型クラッド層 105b 0.9μm 可飽和吸収層 106 60Å 第1のp型クラッド層 105a 0.2μm 活性層 104 500Å n型クラッド層 103 1.0μm バッファ層 102 0.3μm 図2に、半導体レーザ100の活性層104及びその近傍に
おける(AlxGa1-x0.5In0.5PのAl組成xの変化を示
す。図示されているように、半導体レーザ100では、n
型クラッド層103、第1及び第2のp型クラッド層105a
及び105bにおけるAl組成xを0.7としている。
また、先の表に示したように、半導体レーザ100で
は、可飽和吸収層106の厚さを約60オングストロームに
設定している。可飽和吸収層106が厚いと、その体積が
大きくなりすぎるために、キャリア密度が大きくなり難
くなる。そのため、可飽和吸収層106の内部におけるキ
ャリア密度の変化、すなわちキャリアの強い振動が生じ
難くなって、結果として自励発振特性が得られ難くな
る。このため、可飽和吸収層は薄い方が望ましい。
InGaAsP可飽和吸収層106の組成は、例えば、In0.5Ga
0.5As0.10.9とする。この組成を有するInGaAsPの格子
定数は、基板101を構成するGsAsの格子定数よりも大き
く、結果として、可飽和吸収層106に圧縮応力が印加さ
れている。これより、半導体レーザ100における可飽和
吸収層106は、歪量子井戸構造を有していることにな
る。
図3に、GaInP及びInGaAsPの利得特性(キャリア密度
と利得との関係)を示す。これにより、InGaAsPの方が
利得特性曲線の傾きが大きいことがわかる。
本願発明者らによる検討では、可飽和吸収層を有する
半導体レーザにおいては、可飽和吸収層に用いる材料の
利得特性の傾き(キャリア密度の変化に対する利得の変
化の割合)が大きいほど、自励発振特性が容易に得られ
やすいことが明らかになった。言い換えれば、利得特性
曲線の傾きが大きいほど、自励発振には有利である。こ
れは、以下のように説明される。自励発振特性を得るた
めには、可飽和吸収層の内部におけるキャリアの強い振
動が要求される。ここで、利得特性曲線の傾きが大きい
ほど、より少ない光の吸収でキャリア密度を変化させる
ことが可能となる。その結果、利得特性曲線の傾きが大
きいほど、キャリアの振動が生じやすくなり、自励発振
現象が生じ易くなる。
なお、図3のデータは、基板に格子整合したInGaAsP
に関して得られたものである。InGaAsPに圧縮応力が加
わっている場合(例えば、GsAs基板の上に形成されたIn
0.5Ga0.5As0.10.9の場合)には、利得特性曲線の傾き
は図3に示す場合よりもさらに大きくなり、自励発振の
実現にさらに有効である。
図4は、光出力が約5mWの場合における、光出力波形
の時間変化のシミュレーション結果である。あわせて、
活性層及び可飽和吸収層の中におけるキャリア密度の変
化も図示している。これより、光出力の振動現象が継続
することが明らかである。
図5は、本実施形態の自励発振型半導体レーザ100に
おける電流−光出力特性の測定例であり、この場合には
閾値電流が約60mAであることがわかる。図5にも現れて
いるように、自励発振型半導体レーザの電流−光出力特
性が通常の半導体レーザの特性と異なっている点は、閾
値電流の近傍で特性曲線の急激な立ち上がりが認められ
る点である。これは、自励発振型半導体レーザには可飽
和吸収層が存在するために、ある程度のキャリアの注入
量に達するまでは、光出力が外部へ放出されないことに
よる。キャリア注入量がある値を越えるとレーザ発振が
生じて、注入電流量に比例して光出力が増加する。
図6は、本実施形態の自励発振型半導体レーザ100に
おける光出力波形の測定例である。図4に示したシミュ
レーション結果と同様に、時間の経過につれて光出力が
大きく振動しており、自励発振が生じていることが確認
できる。この半導体レーザにおいては、約20℃から約80
℃までの広い温度範囲で、約−135dB/Hz以下という安定
した相対強度雑音(RIN)特定が得られている。
先にも述べたように、本願発明者らが行った実験によ
れば、赤色半導体レーザの場合には、従来技術で一般に
行われているように可飽和吸収層を単に付加するだけで
は、安定した自励発振特性を得ることは困難である。例
えば、通常のドーピングレベルを有するGa0.5In0.5P層
を可飽和吸収層として用いても、安定した自励発振特性
を得ることは困難である。特に、高温での自励発振特性
を得ることが困難である。
さらに、従来技術の構成では、可飽和吸収層での光の
消費が大きく、結果として閾値電流が増大する傾向があ
る。その結果、高温(例えば、80℃)での信頼性に支障
を来す恐れがある。
これに対して、本発明の様に利得特性曲線の傾きが大
きい材料(例えばInGaAsP)を用いて可飽和吸収層を形
成すれば、約80℃という高温においても安定した動作特
性を奏する、閾値電流の小さな半導体レーザを得ること
が可能となる。
InGaAsP層からなる可飽和吸収層106を使用すれば、半
導体レーザの作製上でのメリットも大きい。すなわち、
InGaAsP層は、図1の様な半導体レーザ100の構造では、
可飽和吸収層106としての機能の他に、リッジを形成す
るためのエッチングプロセスにおけるエッチング停止層
としての機能も有している。具体的には、AlGaInPから
なる第2のp型クラッド層105bを硫酸などのエッチング
液を用いてエッチングしてリッジ形状に加工する際に、
InGaAsP層でエッチングを停止させることが可能にな
る。
これに対して、エッチング停止層として通常構造のGa
InPを用いると、エッチング条件に依存するものの、第
2のp型クラッド層105bとGaInP層との間のエッチング
選択比として、約10という小さい値しか得られない。こ
のため、GaInP層でエッチングを確実に停止することが
できずにオーバーエッチングが生じて、レーザの動作特
性にばらつきが発生することがある。また、活性層近傍
までエッチングが進行してしまうと、信頼性が低下する
可能性がある。これに対して、エッチング停止層として
の機能と可飽和吸収層としての機能とを兼ね備えるInGa
AsP層を用いれば、第2のp型クラッド層とInGaAsPとの
間のエッチング選択比として、約20という大きな値を得
ることができる。これによって、半導体レーザの作製プ
ロセスが容易に行えるようになる。
以上に述べた様に、可飽和吸収層としてInGaAsP層を
用いることは、半導体レーザの動作特性及び作製プロセ
スの双方の点で、大きな効果がもさらされる。
ところで、半導体レーザの作成では、基板上に積層構
造を成長してレーザ構造を形成した後に、劈開により共
振器端面を形成する。このとき、本実施形態では、基板
として傾斜基板を用いているので、劈開工程での応力の
印加方向に注意する必要がある。この点を以下に説明す
る。
図7は、半導体レーザの共振器端面、すなわちGsAs基
板の(0−1−1)面をみた結晶構造を模式的に表す図
である。図中で、「A−B」として示している点線で箇
所が基板の表面であり、この表面上に結晶が成長され
る。原始的にみると基板表面は階段状になっていて、こ
れは原子ステップに相当する。
ここで、先にも述べたように、基板は、(100)面の
面方位から[0−1−1]方向に約8度傾斜している。
この点を考慮して、個々の半導体レーザ100のチップを
得るために結晶(基板)を劈開する際には、図7でBか
らAに向けて応力を印加する。これは、上記と逆方向に
(すなわち、AからBに向けて)応力をかけると、Aか
らBに向かって生じていくべき結晶の割れが、劈開工程
の途中から(100)面に沿った方向に進み、確実な劈開
が実現されない結果になるからである。そのような状況
は劈開による不良となり、製造歩留まりを低下させる。
従って、劈開は、図中でBからAに向って行う。
このような劈開の方向性に関する特徴は、GsAs基板に
限られることではなく、傾斜基板であれば、その他の材
料から構成されている基板にもあてはまる。より一般的
に述べれば、ジャスト面(図7の例では(100)面)と
傾斜基板面とのなす角度としてより小さい角度が得られ
る方向(図7の例ではB)から、傾斜している方向に向
かって応力をかけることによって、基板を劈開する。
基板の劈開によって端面を形成した後に、得られた端
面(共振器端面)にコーティング処理を施す。具体的に
は、例えば、端面に近い側から、SiO2膜及びSiN膜の対
を所定の対数だけECRスパッタリング法によって積層す
る。ここで、SiO2膜及びSiN膜の厚さは、それぞれλ/4
(但し、λは発振波長)に相当するように設定する。
(第2の実施形態) 図8は、本発明の第2の実施形態における自励発振特
性を有する半導体レーザ200の構造を示す断面図であ
る。
半導体レーザ200においては、n型GsAs基板701の上
に、バッファ層702、n型AlGaInPクラッド層703、GaInP
井戸層を含む多重量子井戸活性層704、AlGaInPからなる
第1のp型クラッド層705a、p型光ガイド層707、AlGaI
nPからなる第2のp型クラッド層705b、及びInGaAsP量
子井戸可飽和吸収層706が、順次形成されている。可飽
和吸収層706の上には、AlGaInPからなる第3のp型クラ
ッド層705c及びp型GaInPコンタクト層710が形成されて
いる。第3のp型クラッド層705c及びp型コンタクト層
710はリッジ状に形成されていて、そのリッジの両側
は、n型GsAs電流ブロック層711で埋め込まれている。
さらに、p型コンタクト層710及びn型電流ブロック層7
11の上には、p型GsAsキャップ層712が形成されてい
る。そして、キャップ層712の上にはp電極713が形成さ
れ、一方、基板701の裏面にはn電極714が形成されてい
る。
図9に、半導体レーザ200の活性層704及びその近傍に
おける(AlxGa1-x0.5In0.5PのAl組成xの変化を示
す。図示されているように、半導体レーザ200では、n
型クラッド層703、第1、第2及び第3のp型クラッド
層105a、105b及び105cにおけるAl組成xを、0.7として
いる。
本実施形態の半導体レーザ200では、活性層704として
多重量子井戸活性層704を使用していることに加えて、
可飽和吸収層706としても量子井戸層を使用している。
なお、可飽和吸収層706の構成材料は、InGaAsPである。
さらに、本実施形態の半導体レーザ200では、可飽和
吸収層706の近傍に光ガイド層707が設けられている。こ
こで、光ガイド層707が設けられる理由は、以下の通り
である。
可飽和吸収層706が量子井戸層である場合には、全体
的な層の厚さが減少するために、可飽和吸収層706への
光の閉じ込め率(光閉じ込め係数)が極端に減少する。
その結果、可飽和吸収層706で光が十分に吸収されず、
利得の飽和が十分に生じなくなる。このため、そのまま
では、自励発振が生じない。これに対して、上記のよう
な光ガイド層707を設ければ、可飽和吸収層706への光の
閉じ込め率(光閉じ込め係数)を増加させることができ
る。具体的には、光ガイド層707を設けることで、可飽
和吸収層706への光の閉じ込め率(光閉じ込め係数)を
少なくとも約1.2%程度以上の値に設定すれば、自励発
振を生じさせることが可能となる。
可飽和吸収層706が量子井戸層であると、その厚さが
薄くなる。そのため、可飽和吸収層706への光の閉じ込
め率(光閉じ込め係数)を、光ガイド層707を設けずに
可飽和吸収層706のみによって、自励発振に必要な大き
さに設定することができない。一方、光閉じ込め率(光
閉じ込め係数)を増加させる目的で可飽和吸収層706を
構成する量子井戸層の数を増加させると、可飽和吸収層
706の全体体積が実質的に増加して、キャリア密度が小
さくなり、自励発振が生じなくなる。
本願発明者らが明らかにしたところでは、可飽和吸収
層706の層数を増やして可飽和吸収層706への光の閉じ込
め率(光閉じ込め係数)を増加させても、自励発振は得
られなかった。これに対して、本発明によれば、(1)
可飽和吸収層706の体積を増加させない、及び(2)光
ガイド層707を設ける、という2つの条件の組み合わせ
によって、自励発振を初めて実現することができた。
本実施形態の半導体レーザ200において、多重量子井
戸活性層704は、全体の厚さが約50オングストロームの
量子井戸構造を有しており、含まれる井戸層の数は3で
ある。また、量子井戸構造に含まれるバリア層として
は、Al組成x=0.5であるAlGaInPを用いている。
一方、量子井戸可飽和吸収層706に関連する光ガイド
層707には、Al組成x=0.5であるAlGaInPを用いてお
り、その厚さは約1000オングストロームである。光ガイ
ド層707としての所期の目的を達成するためには、その
厚さは約200Å以上であればよい。
ここで、図10には、光ガイド層707の厚さと活性層704
及び可飽和吸収層706における光閉じ込め率(光閉じ込
め係数)との関係を示す。これより、光ガイド層707の
厚さが約300オングストローム以上であれば、可飽和吸
収層706への光の閉じ込め率(光閉じ込め係数)を約1.2
%以上とすることができる。これによって、先に説明し
たように、自励発振を確実に生じさせることが可能にな
る。一方、光ガイド層707が厚すぎると、活性層704への
光の閉じ込め率(光閉じ込め係数)が小さくなり、閾値
電流の増加を招く恐れがある。活性層704への光の閉じ
込め率(光閉じ込め係数)は、約5%以上であることが
望ましい。この点を考慮すれば、図10より、光ガイド層
707の厚さは約1200Å以下であることが望ましい。
従って、光ガイド層707の厚さは、約300オングストロ
ーム以上且つ約1200オングストローム以下であることが
望ましい。
実際に製作した半導体レーザ200のサンプルでは、約1
0℃から約80℃までの広い温度範囲で自励発振が生じ
る。また、上記の温度範囲において、約−135dB/Hz以下
という安定した相対強度雑音(RIN)特性が得られてい
る。
以上のように本実施形態では、半導体レーザ200の活
性層704に量子井戸構造を導入することによって、最高
光出力が約2割程度増加している。さらに、閾値電流値
の低減や高出力化が実現されるとともに、高温での動作
が可能となる。これらは、以上に説明したように、可飽
和吸収層706の構成材料としてInGaAsPを用いるととも
に、光ガイド層707の設置という新規な構造を採用する
ことで、初めて実現されるものである。
さらに、動作特性をより向上させる目的で活性層704
や可飽和吸収層706に歪量子井戸構造を用いる場合であ
っても、本発明に従えば自励発振特性を有する半導体レ
ーザを得ることができることは言うまでもない。
(第3の実施形態) 図11は、本発明の第3の実施形態における自励発振特
性を有する半導体レーザ300の構造を示す断面図であ
る。
半導体レーザ300においては、n型GsAs基板1001の上
に、n型AlGsAsクラッド層1002、GsAs井戸層を含む多重
量子井戸活性層1003、AlGaInPからなる第1のp型クラ
ッド層1004、及びInGaAs量子井戸可飽和吸収層1005が、
順次形成されている。可飽和吸収層1005の上には、スト
ライプ状の開口部を有するn型AlGsAs電流ブロック層10
06が形成されている。さらに、可飽和吸収層1005及び電
流ブロック層1006の上には、AlGsAsからなる第2のp型
クラッド層1007が形成され、さらにその上にはp型GsAs
キャップ層1008が形成されている。そして、キャップ層
1008の上にはp電極1009が形成され、一方、基板1001の
裏面にはn電極1010が形成されている。
上述した各層の典型的な厚さは、それぞれ以下の通り
である。
表 2 名 称 参照番号 厚さ キャップ層 1008 3μm 第2のp型クラッド層 1007 0.9μm 電流ブロック層 1006 0.6μm 可飽和吸収層 1005 50Å 第1のp型クラッド層 1004 0.15μm 多重量子井戸活性層 1003 300Å n型クラッド層 1002 1.0μm 上記において、多重量子井戸活性層1003については、
全体の厚さを示している。
表2に示すように、半導体レーザ300では、可飽和吸
収層1005の厚さを約50Åに設定している。可飽和吸収層
1005が厚いと、その体積が大きくなりすぎるためにキャ
リア密度が大きくなり難くなる。そのため、可飽和吸収
層1005の内部におけるキャリア密度の変化、すなわちキ
ャリアの強い振動が生じ難くなって、結果として自励発
振特性が得られ難くなる。このため、可飽和吸収層1005
は薄い方が望ましい。
InGaAs可飽和吸収層1005の組成は、例えば、In0.2Ga
0.8Asとする。この組成を有するInGaAsの格子定数は、
基板1001を構成するGsAsの格子定数よりも大きく、結果
として、可飽和吸収層1005に圧縮応力が印加されてい
る。これより、半導体レーザ300における可飽和吸収層1
005は、歪量子井戸構造を有していることになる。
図12に、GsAs及びInGaAsの利得特性(キャリア密度と
利得との関係)を示す。これより、InGaAsの方が利得特
性曲線の傾きが大きいことがわかる。
先にも述べたように、本願発明者らによる検討では、
可飽和吸収層を有する半導体レーザにおいては、可飽和
吸収層に用いる材料の利得特性の傾き(キャリア密度の
変化に対する利得の変化の割合)が大きいほど、自励発
振特性が容易に得られやすいことが明らかになった。言
い換えれば、利得特性曲線の傾きが大きいほど、自励発
振には有利である。これは、以下のように説明される。
自励発振特性を得るためには、可飽和吸収層の内部にお
けるキャリアの強い振動が要求される。ここで、利得特
性曲線の傾きが大きいほど、より少ない光の吸収でキャ
リア密度を変化させることが可能となる。その結果、利
得特性曲線の傾きが大きいほど、キャリアの振動が生じ
やすくなり、自励発振現象が生じ易くなる。
実際に製作した半導体レーザ300のサンプルでは、約1
0℃から約100℃までの広い温度範囲で自励発振が生じ
る。また、上記の温度範囲において、約−135dB/Hz以下
という安定した相対強度雑音(RIN)特性が得られてい
る。
以上のように本実際形態では、可飽和吸収層1005の構
成材料としてInGaAsという新規な材料を用いることによ
って、例えばGsAsなどの他の材料によって可飽和吸収層
を構成する場合に比べて、閾値電流が低減されるととも
に高温での動作が可能になる。なお、以上ではInGaAsか
らなる可飽和吸収層を例として説明しているが、InGaAs
Pを用いて可飽和吸収層を構成しても、上記と同様の効
果を得ることができる。
(第4の実施形態) 図13は、本発明の第4の実施形態における自励発振特
性を有する半導体レーザ400の構造を示す断面図であ
る。
半導体レーザ400の構造は、図11を参照して説明した
半導体レーザ300の構造に類似している。対応する構成
要素には同じ参照番号を付しており、それらに関する説
明はここでは省略する。
半導体レーザ400の構成が半導体レーザ300の構成から
異なっているのは、可飽和吸収層1000が第2のp型クラ
ッド層1007の中に設けられている点、電流ブロック層10
06の中にモード制御層1012が設けられている点、及び、
電流ブロック層1006に開口部を形成するためのエッチン
グを制御する目的のエッチング停止層1011が設けられて
いる点である。
エッチング停止層1011は薄い層であり、この層1011に
よる光の吸収はほとんどない。従って、活性層1003で生
じた光は、エッチング停止層1011ではほとんど吸収され
ずに第2のp型クラッド層1007の中にも広がり、第2の
p型クラッド層1007の中に形成された可飽和吸収層1000
によって吸収される。この可飽和吸収層1000による光吸
収は飽和し、その後に利得をもつ。その結果、キャリア
の振動が生じて、自励発振特性をもつことになる。
上記のような半導体レーザ400の構造では、例えば、
電流ブロック層1006を構成するAlGsAsのAl組成を0.6と
し、第1のクラッド層1004及び第2クラッド層1007を構
成するAlGsAsのAl組成を0.4とすることによって、活性
層1003のうちで電流ブロック層1006の開口部直下の領域
における実効屈折率が、その両側の領域(すなわち、活
性層1003のうちで電流ブロック層1006によって覆われて
いる領域)における実効屈折率よりも高くなる。これよ
り、実屈折率導波型レーザ構造を得ることができて、高
出力且つ低閾値電流特性を有する半導体レーザを実現す
ることができる。
さらに、本実施形態の半導体レーザ400では、電流ブ
ロック層1006の中にモード制御層1012を設けている。こ
のモード制御層1012は、可飽和吸収層1000による光の吸
収が大きい場合に、光の電界が電流ブロック層1006の下
のみに存在して開口部の下に存在しなくなることを防ぐ
目的で、設けられている。モード制御層1012が設けられ
ていると、光はこの層1012でも吸収される。これによっ
て、光は電流ブロック層1006の開口部の下にも存在し得
て、結果的に横モード発振が実現されることになる。
以上のように、本実施形態では、実屈折率導波型レー
ザ構造をすることで、半導体レーザの閾値電流が低減さ
れる。さらに、低出力状態では自励発振特性を得なが
ら、高出力化も達成することができる。さらに、電流ブ
ロック層1006の中にモード制御層1012を設けることで、
電流ブロック層1006の開口部の直下で光のモードが分離
することを防止することができる。
(第5の実施形態) 図14は、本発明の第5の実施形態として、AlGaInP系
赤色半導体レーザ500の構造を示す断面図である。
半導体レーザ500の構造及び機能は、図13を参照して
説明した第4の実施形態の半導体レーザ400とほぼ同様
である。相違点は、本実施形態の半導体レーザ500で
は、構成材料としてAlGaInPを使用している点である。
半導体レーザ500(図14)の構成において、半導体レー
ザ400(図13)の構成に含まれる各構成要素(基板及び
層)に対応する構成要素には、半導体レーザ400(図1
3)の参照番号に「400」を加えた値を、参照番号として
付している。例えば、図14に示す半導体レーザ500に含
まれる基板1401は、図13に示す半導体レーザ400に含ま
れる基板1001に対応する。これより、半導体レーザ500
の構成に関する詳細な説明は省略する。
半導体レーザ500の活性層1403の多重量子井戸構造に
おいて、井戸層の組成はGa0.5In0.5Pであり、障壁層の
組成は(Al0.7Ga0.30.5In0.5Pである。また、n型ク
ラッド層1402、第1のp型クラッド層1404、及び第2の
p型クラッド層1407の組成は、それぞれ(Al0.7Ga0.3
0.5In0.5Pである。さらに、電流ブロック層1406、可飽
和吸収層1400、及びモード制御層1412の組成は、(Al
0.5Ga0.50.5In0.5Pである。但し、可飽和吸収層1400
及びモード制御層1412は、In0.2Ga0.8Asであってもよ
い。
上記のような構成を有する本実施形態の半導体レーザ
500は、第4の実施形態における半導体レーザ400と同様
の効果を有する。なお、その発振波長は、約660nmの赤
色領域である。
以上の説明では、第1のp型クラッド層1404の組成を
(Al0.7Ga0.30.5In0.5Pとしているが、高温動作にお
ける電子のオーバーフローの防止という観点からは、上
記(Al0.7Ga0.30.5In0.5P層よりも大きいバンドギャ
ップを有する(AlGa)InPN層を用いてもよい。この(Al
Ga)InPN層は、約900℃程度の温度でNH3ガスを流すこと
で、成長させることができる。また、(AlGa)InPN層の
成長にあたっては、原子半径の小さいN(窒素)元素が
入る分だけ原子半径の大きいIn(インジウム)元素の量
を大きくすることで、GsAs基板の格子定数に一致した格
子定数を有する層として、成長させることができる。具
体的な組成は、例えば、(Al0.7Ga0.30.4In0.60.9
0.1とする。このように、(AlGa)InNP層を第1のp
型クラッド層1404とすれば、高温動作時であっても電子
のオーバーフローを防止することができて、半導体レー
ザの温度特性を向上することができる。
さらに、(AlGa)InNP層を使用すると、AlGaInP層と
(AlGa)InNP層との間で選択エッチングを実現すること
が可能であるので、エッチング停止層を別に設ける必要
がなく、製造工程が簡略化される。
産業上の利用の可能性 以上に説明したように、本発明の半導体レーザでは、
InGaAsP(但し、その組成はInxGa1-xAsyP1-y(0<x<
1、0≦y≦1)と表すことができる)からなる可飽和
吸収層を設けることによって、GaInPからなる可飽和吸
収層が用いられる場合に比べて、利得特性曲線の傾き
(キャリア密度に対する利得の変化の割合)を大きくす
ることができる。これにより、少ない光の吸収でキャリ
ア密度を変化させることが可能となって、キャリアの振
動が生じやすくなる。さらに同時に、可飽和吸収層のエ
ネルギーギャップを活性層のエネルギーギャップよりも
約30meVから約200meVだけ小さくすることが可能にな
る。この結果、安定した自励発振特性を容易に得ること
が可能となるとともに、相対雑音を低減することができ
る。
また、本発明の半導体レーザでは、可飽和吸収層の厚
さを約100オングストローム以下とすることで、光の吸
収によるキャリア密度の増加を容易に生じさせることが
可能となる。これより、キャリアの振動が生じやすくな
って、安定な自励発振特性を容易に得ることが可能にな
る。
また、本発明の半導体レーザにおいて、実屈折率導波
型のレーザ構造とした上で、電流ブロック層の開口部の
上に位置するクラッド層の中に可飽和吸収層を設けるこ
とで、低出力領域では自励発振特性を有しながら、同時
に高出力化も可能であるような半導体レーザを提供する
ことができる。さらに、電流ブロック層の中にモード制
御層を設けることで、電流ブロック層の開口部でのレー
ザ光のモード分離を防止することができる。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平9−83064(JP,A) 特開 平9−214058(JP,A) 特開 平9−205253(JP,A) 特開 平8−18160(JP,A) IEEE Photon.Tech. Lett.7[12](1995)P.1406− 1408 Appl.Phys.Lett.67 [10](1995)P.1343−1345 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H01S 3/18

Claims (22)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】活性層と、該活性層を挟むクラッド構造
    と、を備えた半導体レーザであって、 該クラッド構造は可飽和吸収層を含んでおり、該可飽和
    吸収層がInxGa1-xAsyP1-y(0<x<1、0<y≦1)
    からなる、半導体レーザ。
  2. 【請求項2】前記可飽和吸収層と前記活性層との間の間
    隔が約200オングストローム以上である、請求項1に記
    載の半導体レーザ。
  3. 【請求項3】前記クラッド構造はさらに光ガイド層を含
    み、前記可飽和吸収層は該光ガイド層に隣接している、
    請求項1に記載の半導体レーザ。
  4. 【請求項4】前記クラッド構造はさらに光ガイド層を含
    み、前記可飽和吸収層は該光ガイド層の近傍に配置され
    ている、請求項1に記載の半導体レーザ。
  5. 【請求項5】活性層と、該活性層を挟むクラッド構造と
    を備えた半導体レーザであって、該クラッド構造は可飽
    和吸収層を含んでおり、該可飽和吸収層がInxGa1-xAsyP
    1-y(0<x<1、0<y≦1)からなる半導体レーザ
    であって、前記可飽和吸収層は歪量子井戸構造を有して
    おり、該可飽和吸収層の基底順位間のエネルギーギャッ
    プは、前記活性層のエネルギーギャップよりも約30meV
    から約200meVだけ小さい半導体レーザ。
  6. 【請求項6】前記活性層と前記可飽和吸収層を除く前記
    クラッド構造とが(AlxGa1-xyIn1-yPからなる、請求
    項1に記載の半導体レーザ。
  7. 【請求項7】活性層と、該活性層を挟むクラッド構造
    と、を備えた半導体レーザであって、 該クラッド構造は可飽和吸収層を含んでおり、該可飽和
    吸収層がInxGa1-xAsyP1-y(0<x<1、0<y≦1)
    からなっていて、該可飽和吸収層が歪量子井戸構造を有
    している、半導体レーザ。
  8. 【請求項8】前記可飽和吸収層と前記活性層との間の間
    隔が約200オングストローム以上である、請求項7に記
    載の半導体レーザ。
  9. 【請求項9】前記クラッド構造はさらに光ガイド層を含
    み、前記可飽和吸収層は該光ガイド層に隣接している、
    請求項7に記載の半導体レーザ。
  10. 【請求項10】前記クラッド構造はさらに光ガイド層を
    含み、前記可飽和吸収層は該光ガイド層の近傍に配置さ
    れている、請求項7に記載の半導体レーザ。
  11. 【請求項11】前記可飽和吸収層の基底順位間のエネル
    ギーギャップは、前記活性層のエネルギーギャップより
    も約30meVから約200meVだけ小さい、請求項7に記載の
    半導体レーザ。
  12. 【請求項12】前記活性層と前記可飽和吸収層を除く前
    記クラッド構造とが(AlxGa1-xyIn1-yPからなる、請
    求項7に記載の半導体レーザ。
  13. 【請求項13】前記活性層と前記可飽和吸収層を除く前
    記クラッド構造とがAlzGa1-zAsからなる、請求項1に記
    載の半導体レーザ。
  14. 【請求項14】前記可飽和吸収層の厚さが約100オング
    ストローム以下である、請求項1に記載の半導体レー
    ザ。
  15. 【請求項15】前記可飽和吸収層の厚さが約80オングス
    トローム以下である、請求項14に記載の半導体レーザ。
  16. 【請求項16】前記クラッド構造はさらに光ガイド層を
    含み、前記可飽和吸収層が該光ガイド層に隣接してい
    る、請求項14に記載の半導体レーザ。
  17. 【請求項17】前記クラッド構造はさらに光ガイド層を
    含み、前記可飽和吸収層は該光ガイド層の近傍に配置さ
    れている、請求項14に記載の半導体レーザ。
  18. 【請求項18】前記可飽和吸収層は歪量子井戸構造を有
    しており、該可飽和吸収層の基底順位間のエネルギーギ
    ャップは、前記活性層のエネルギーギャップよりも約30
    meVから約200meVだけ小さい、請求項14に記載の半導体
    レーザ。
  19. 【請求項19】活性層と、 該活性層を挟むn型クラッド層及び第1のp型クラッド
    層と、 該第1のp型クラッド層の上に形成されている、開口部
    を有する電流ブロック層と、 該開口部に形成されている第2のp型クラッド層と、 を備え、 該第2のp型クラッド層が可飽和吸収層を含んでいる、
    半導体レーザであって、該可飽和吸収層がInxGa1-xAsyP
    1-y(0<x<1、0<y≦1)からなる、半導体レー
    ザ。
  20. 【請求項20】活性層と、 該活性層を挟むn型クラッド層及び第1のp型クラッド
    層と、 該第1のp型クラッド層の上に形成されている、開口部
    を有する電流ブロック層と、 該開口部に形成されている第2のp型クラッド層と、 を備え、 該第2のp型クラッド層が可飽和吸収層を含んでいる、
    半導体レーザであって、前記電流ブロック層の中にモー
    ド制御層が形成されている半導体レーザ。
  21. 【請求項21】活性層と、 該活性層を挟むn型クラッド層及び第1のp型クラッド
    層と、 該第1のp型クラッド層の上に形成されている、開口部
    を有する電流ブロック層と、 該開口部に形成されている第2のp型クラッド層と、 を備え、 該第2のp型クラッド層が可飽和吸収層を含んでいる、
    半導体レーザであって、前記第1のp型クラッド層が、
    前記n型クラッド層のバンドギャップよりも大きいバン
    ドギャップを有する材料からなる半導体レーザ。
  22. 【請求項22】前記第1のP型クラッド層がAlGaInPN層
    である、請求項21に記載の半導体レーザ。
JP9530813A 1996-03-01 1997-02-28 半導体レーザ及び劈開方法 Expired - Fee Related JP2954358B2 (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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Appl.Phys.Lett.67[10](1995)P.1343−1345
IEEE Photon.Tech.Lett.7[12](1995)P.1406−1408

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