JP2947657B2 - 神経成長因子産生促進剤 - Google Patents

神経成長因子産生促進剤

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JP2947657B2 JP4002487A JP248792A JP2947657B2 JP 2947657 B2 JP2947657 B2 JP 2947657B2 JP 4002487 A JP4002487 A JP 4002487A JP 248792 A JP248792 A JP 248792A JP 2947657 B2 JP2947657 B2 JP 2947657B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、神経成長因子(nerv
e growthfactor 、以下「NGF」と略記する)産生の
促進剤に関するものである。さらに詳しくは、この発明
は、神経系の老化予防や神経障害の進行防止、あるいは
これら疾患の改善等に有効な安全性の高い神経成長因子
産生促進剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】NGFが、末梢神経系においては胎生期
の知覚および交感神経節神経細胞の分化および成長を促
進し、神経細胞突起の伸長を促すペプチドであること、
さらに成熟交感神経細胞にとっては一生を通じて生存お
よび機能維持に不可欠なペプチドであることが知られて
いる。たとえば、幼若動物に抗NGF抗体を連続投与し
てNGFの生理活性を中和した場合には、交感神経節の
顕著な萎縮や神経節神経細胞の死滅が観察されている
(R. Levi-Montalcina 他、Physiological Review, 4
8, 534-569, 1968 : H. Thoenen 他、Physiologic
al Review, 60, 1284-1335, 1980 )。しかもこの現象
は不可逆的であり、NGFの生理的役割の重要性を証明
するものである。また、NGFの作用に関する応用研究
も行なわれており、成熟ラットの座骨神経を切断し、こ
れをシリコンチューブで繋ぎ合わせて、チューブ内にN
GFを注入したNGF投与群と非投与群とについて神経
軸索の再生度を比較した結果、NGFが神経軸索の再生
にも有効であることが明らかにされている(Rich 他、
Experimental Neurology, 105, 162-170, 1989)。
【0003】一方、中枢神経系におけるNGFの重要性
も知られており、たとえば、中隔から海馬へ投射してい
る神経路を切断したラットの脳室内にNGFを投与する
ことによって、中隔のコリン作動性神経細胞の変性、脱
落が抑制されること(F. Hefti, Journal of Neuroscie
nce, 6, 2155-2162, 1986 : L. F.Kromer, Science,
235, 214-216, 1987 : L. R. Williams 他、Pro
ceedings of National Academy of Sciences U. S. A,
83, 9231-9235, 1986)、老齢ラットの学習、記憶能力
がNGFの脳室内投与で改善されること(W. Fisher
他、Nature, 329, 65-68, 1987)、脳虚血後に見られる
海馬の錐体細胞の遅延性細胞死がNGFの前投与により
抑制されること(茂野 他、医学のあゆみ、第145 巻、
579-580,1988)等が報告されている。
【0004】このように、NGFが神経細胞の生存に不
可欠な因子であることから、神経疾患や神経細胞障害の
進行防止ないしは治療を目的として、NGFの産生を促
進する物質の検索が行なわれている。その結果、これま
でにカテコールアミン類(Y.Furukawa 他、Journal of
Biological Chemistry, 261, 6039-6047,1986 )、コ
リン作動性アゴニスト(特開昭63-83020号公報)、桂皮
酸アミド化合物(特開平2-104568号公報)、ベンゾキノ
ン誘導体(R. Takeuchi 他、FEBS Letter,261, 63-6
6, 1990)、およびプロペントフィリン(I. Shinoda
他、BiochemicalPharmacology, 39, 1813-1816, 1990
)にNGF産生促進作用のあることが報告されてい
る。また、線維芽細胞成長因子(fibroblast growth fa
ctor)、血小板由来成長因子(platelet-derived growt
h factor)、トランスフォーミング成長因子アルファお
よびベータ(transforming growth factor α and
β)、上皮細胞成長因子(epidermal growth factor
)、およびインシュリン様成長因子(insullin-like g
rowth factor )等のいわゆる細胞増殖因子にもNGF
の産生を促進する活性が認められている(篠田 他、生
化学、第62巻、835 頁、1990年)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】加齢にともなって、自
覚症状がないまま生理機能が徐々に低下し、身体に変調
をきたしたときに薬剤を投与してもその症状を改善する
ことが困難な、いわゆる生理的老化の予防が現在の医療
の最重要課題の一つになっている。生理的老化を防ぐに
は、日常の食生活に十分な注意を払うことも重要であ
り、食品を通して老化を抑制する物質を摂取することが
望まれるが、さらに一歩進んで、NGF産生促進作用を
有する物質の摂取が、とくに神経系の老化予防に有効で
あると期待される。
【0006】また、神経細胞の損傷を原因とする各種神
経障害に対しても、このようなNGF産生促進物質の摂
取がその障害の進行を防止ないし改善するための有効な
手段になりうると考えられている。このような観点か
ら、上述の各NGF産生促進物質を医薬品または食品と
して利用しようとする試みがなされている。
【0007】この発明は、以上の通りの事情に鑑みてな
されたものであり、NGFの産生を高めることにより神
経細胞の生存と機能維持を促して神経系の老化を予防な
いし改善し、また障害を受けた神経細胞に対してはその
細胞自身の変性脱落を予防し、神経障害の進行を防止な
いし改善する、安全性の高い新しいNGF産生促進剤を
提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】この発明は、上記の課題
を解決するものとして、塩基性蛋白質または塩基性ペプ
チドを有効成分として含有してなることを特徴とする神
経成長因子産生促進剤を提供する。またこの発明は、上
記塩基性蛋白質または塩基性ペプチドが、ラクトフェリ
ン類、リゾチーム、リボヌクレアーゼA、アンジオゲニ
ン、シトクロムc、ラクトフェリンN端側塩基性ペプチ
ド、およびこれらの混合物からなる群より選択される物
質であることを好ましい態様としてもいる。
【0009】さらにこの発明は、上記塩基性ペプチド
が、N末端およびC末端が塩基性アミノ酸残基からなる
2〜6個のペプチドまたはその誘導体を分子内に有する
塩基性ペプチドを他の好ましい態様としてもいる。
【0010】なお、この発明において上記ラクトフェリ
ン類は、乳から常法により分離されるラクトフェリン、
このラクトフェリンから鉄を除去したアポラクトフェリ
ン、アポラクトフェリンに鉄、銅、亜鉛、マンガン等の
金属を完全にまたは一部キレートさせた金属飽和ないし
は金属部分飽和ラクトフェリンを意味する。以下、この
発明のNGF産生促進剤についてさらに詳しく説明す
る。
【0011】この発明のラクトフェリン、リゾチーム、
リボヌクレアーゼA、アンジオゲニン、およびシトクロ
ムcは、いずれも牛乳、卵白等の食品に含有されている
塩基性蛋白質であり、各々について以下の生理的作用が
既に知られている。すなわち、ラクトフェリンが大腸
菌、カンジダ菌、クロストリジウム菌、ブドウ球菌、腸
球菌等の有害微生物に対して抗菌作用を示すこと(Jour
nalof Pediatrics, 94,1, 1979 : Journal of Dairy
Science, 67, 606, 1984)、リゾチームが枯草菌群細
菌などの土壌菌を溶菌する作用を有すること、リボヌク
レアーゼAがRNAに作用してヌクレオチド間のリン酸
エステル結合を切り、分子の重合を解くこと(岩波生物
学辞典、1050頁、岩波書店、1970年)、アンジオゲニン
が血管新生を起こさせる強力な刺激物質であること(米
国特許第4808402 号)、シトクロムcが細胞内の酸化環
元に重要な役割を演じていること(岩波生物学辞典、66
3 頁、岩波書店、1970年)等である。しかしながら、こ
れらの物質を含め、細胞増殖因子(前述の線維芽細胞成
長因子、血小板由来成長因子、およびトランスフォーミ
ング成長因子ベータ。これらは細胞表皮受容体を介し
て、特異的に反応する。)以外の塩基性蛋白質が、NG
F産生を促進させるという報告はこれまでなされていな
かった。
【0012】この発明の発明者らは、とくに安全性の面
からNGF産生促進作用を有する物質の検索を天然物に
ついて行い、その結果、これらの塩基性蛋白質さらには
塩基性ペプチドがNGF産生促進作用を有することを見
い出した。すなわち、乳清を蛋白質濃度1mg/mlに希釈
し、NGF産生細胞に作用させたところ、NGF産生細
胞の産生するNGF量が対照の約3倍程度にまで増大す
ることを認めた。このことから乳清中にNGF産生促進
活性を有する物質の存在することが明らかになったが、
さらにその活性本体を確認するために乳清のカルボキシ
メチルセルロース樹脂吸着画分について検索した結果、
塩基性蛋白質であるラクトフェリン、リゾチーム、リボ
ヌクレアーゼA、アンジオゲニンにNGF産生促進活性
が確認された。そこで同じく天然物由来の塩基性蛋白質
である卵白起源のリゾチーム、ウシすい臓起源のリボヌ
クレアーゼA、血奨起源のアンジオゲニン、ウシ心臓起
源のシトクロムcについて、さらにはラクトフェリンを
分解して得られる塩基性ペプチドであるラクトフェリン
N端側塩基性ペプチドについて検討した結果、これらも
NGF産生促進活性を有することを確認した。
【0013】この発明の発明者等は、牛ラクトフェリン
を蛋白分解酵素で加水分解して得られたN端側の25アミ
ノ酸残基からなる塩基性ペプチド(Phe-Lys-Cys-Arg-Ar
g-Trp-Gln-Trp-Arg-Met-Lys-Lys-Leu-Gly-Ala-Pro-Ser-
Ile-Thr-Cys-Val-Arg-Arg-Ala-Phe 。以下このペプチド
をラクトフェリシンと記載する。ラクトフェリシンはこ
の発明の出願人が所有する商標である)、およびこのペ
プチドを構成する短い塩基性ペプチドにもNFG産生促
進活性が存在することを見出した。すなわちN末端およ
びC末端が、それぞれアルギニン残基またはリジン残
基、およびアルギニン残基、リジン残基またはそれらの
カルボキシル基をアミド基で置換した誘導体であって、
それらの間に0〜4個の任意のアミノ酸残基を有する2
〜6個の塩基性ペプチド(ただし、ペプチド中の塩基性
アミノ酸配列の連続が2以下である)が、NFG産生促
進活性を有するのである。
【0014】なお、下記の試験例にみるように、ラクト
フェリンと類似した構造を有する鉄飽和トランスフェリ
ンあるいは鉄非飽和トランスフェリン(ちなみに、これ
らはラクトフェリンと同様に鉄輸送蛋白質であり、両者
間の相同性は50%である。ただし各々の構成アミノ酸
の含有率が異なり、ラクトフェリンは塩基性アミノ酸で
あるリジン、アルギニンを多く含有するため、等電点に
大きな違いがあって、トランスフェリンは塩基性蛋白質
ではない。)についてNGF産生促進活性を試験した。
その結果、トランスフェリンにはNGF産生促進活性が
認められなかったことから、蛋白質自身が塩基性である
ことがNGF産生促進活性に関係するという事実が確認
された。一方、鉄飽和ラクトフェリンと鉄非飽和ラクト
フェリンとの間にはNGF産生促進活性に差がないこと
から、これらのNGF産生促進活性には鉄の関与はない
と考えられた。また、ラクトフェリンのN端側塩基性ペ
プチドにもNGF産生促進活性が認められたことから、
このような塩基性ペプチドもNGF産生促進活性を有す
ることを見い出した。
【0015】この発明は、以上の通りの極めて重要な知
見に基づいてなされたものである。この発明のNGF産
生促進剤は、医薬品あるいは食品に使用することができ
る。医薬品として用いる場合には、賦形剤、増量剤、希
釈剤、溶解補助剤等と適宜に混合し、錠剤、丸剤、カプ
セル剤、散剤、液剤、坐剤などの形態で使用することが
できる。投与量あるいは摂取量は、有効成分である塩基
性蛋白質または塩基性ペプチドの種類、対象者の年齢、
体重、症状等により変り得るが、成人1日当り0.1 μg/
kg〜500mg/kg程度が好ましく、アミノ酸残基数が2〜6
の塩基性ペプチドの場合は、0.02〜20mg/kg 程度が好ま
しい。
【0016】また、食品に使用する場合には、たとえ
ば、加熱ずみの菓子材料に加える、ドレッシングに添加
する、菓子あるいは料理のトッピングに使用する、ふり
かけに混合する等が例示できる。とくに、保存あるいは
加工や調理のために加熱処理を施した食品の場合には、
それが本来含有するラクトフェリン等の塩基性蛋白質が
加熱処理によって変性失活することがある。このため、
加熱処理ずみの食品材料にこの発明のNGF産生促進剤
を添加してNGF産生促進効果を補填あるいは強化する
ことは栄養学的に極めて有意義なことである。もちろ
ん、ラクトフェリン等の塩基性蛋白質を本来含有しない
食品にこの発明のNGF産生促進剤を添加することも栄
養学的に極めて意義がある。
【0017】この発明の乳等の天然物から分離した塩基
性蛋白質または塩基性ペプチドを有効成分とするNGF
産生促進剤は、適量を使用する限りにおいて安全性につ
いては問題がないことは明らかである。次に、天然物か
ら分離した塩基性蛋白質または塩基性ペプチドの神経成
長因子産生促進活性を確認するために行った試験例を以
下に示す。 試験例1 (1)試料の調製 以下に示した9種類の試料を各々の方法により調製また
は用意した。
【0018】a) 鉄飽和ラクトフェリン:鈴木ら(栄
養と食糧、第31巻、395-403 頁、1978年)の方法によ
り調製。 b) 鉄非飽和ラクトフェリン:鈴木ら(栄養と食糧、
第31巻、395-403 頁、1978年)の方法により調製。 c)ラクトフェリンN端側塩基性ペプチド:次のように
して調製した。
【0019】市販の牛のLF(シグマ社製)50mgを精製
水0.9 mlに溶解し、0.1M塩酸でpHを2.5 に調整し、のち
市販の豚ペプシン(シグマ社製)1mgを添加し、37℃で
6時間加水分解した。次いで0.1N水酸化ナトリウムでpH
を7.0 に調整し、80℃で10分間加熱して酵素を失活さ
せ、室温に冷却し、15,000rpm で30分間遠心分離し、透
明な上清を得た。この上清100 μl をTSK ゲルODS-120T
(東ソー社製)を用いた高速液体クロマトグラフィーに
かけ、0.8 ml/ 分の流速で試料注入後10分間0.05% TFA
を含む20% アセトニトリルで溶出し、のち30分間0.05%
TFA を含む20〜60% のアセトニトリルのグラジエントで
溶出し、24〜25分の間に溶出する画分を集め、真空乾燥
した。この乾燥物を2%(W/V) の濃度で精製水に溶解し、
再度TSK ゲルODS-120T(東ソー社製)を用いた高速液体
クロマトグラフィーにかけ、0.8 ml/ 分の流速で試料注
入後10分間0.05% TFA を含む24% アセトニトリルで溶出
し、のち30分間0.05% TFAを含む24〜32% のアセトニト
リルのグラジエントで溶出し、33.5〜35.5分の間に溶出
する画分を集めた。上記の操作を25回反復し、真空乾燥
し、塩基性ペプチド約1.5 mgを得た。
【0020】d) リゾチーム:市販の卵白リゾチーム
(シグマ社製)を使用。 e) リボヌクレアーゼA:市販品(牛膵臓起源。シグ
マ社製)を使用。 f) アンジオゲニン:特願平2-410237号明細書に記載
の方法により調製。 g) シトクロムc:市販品(牛心臓起源。シグマ社
製)を使用。
【0021】h) 鉄飽和トランスフェリン:市販品
(ヤガイ中央研究所製)を使用。 i) 鉄非飽和トランスフェリン:市販品(ヤガイ中央
研究所製)を使用。 (2) 試験方法 古川ら(Journal of Biological Chemistry,261, 6039-
6047, 1986)によりNGF産生能を有することが明らか
にされているマウス結合組織由来線維芽細胞株、L−M
細胞(ATCC,CCL−1,2)を用い、各試料のN
GF産生促進活性を試験した。L−M細胞の培養には、
0.5 %バクトペプトンを含む199 アール培養液を用い
た。96穴カルチャープレートに1穴当り細胞を5000個
ずつまき、24時間培養した。次いで、培養液を表1に
記載した各濃度の試料(a)〜(i)と0.5 %牛血清ア
ルブミンを含む199 アール培養液に交換し、さらに24
時間培養した。対照群のL−M細胞は、試料を添加せず
0.5 %牛血清アルブミンのみを含有する199 アール培養
液で培養した。これら試験群と対照群の培養液を回収
し、培養液中に分泌されたNGF量を定量、比較した。
なお、NGFの定量には、抗マウスβNGFポリクロナ
ル抗体を用いた酵素免疫測定法を使用した。 (3) 試験結果 結果は表1に示した通りである。この表1に示した数値
は、対照群の定量値を1.00としたときの各試料群の定量
値を示したものである。この表1からも明らかなよう
に、この発明の塩基性蛋白質または塩基性ペプチド(試
料番号a〜g)は各々の添加濃度に応じて有意にNGF
量を増大させた。これに対して、非塩基性蛋白質試料
(試料番号h,i)には、NGF産生促進活性は認めら
れなかった。
【0022】
【表1】
【0023】試験例2 (1) 試料の調製 前記ラクトフェリシン(商標)の5位〜7位のトリペプ
チド(Arg-Trp-Gln 。以下試料1と記載する) 、5位〜
9位のペンタペプチド(Arg-Trp-Gln-Trp-Arg。以下試
料2と記載する) 、このペンタペプチドのGln 残基をAr
g 残基で置換したペプチド(Arg-Trp-Arg-Trp-Arg 。以
下試料5と記載する) 、4位〜9位のヘキサペプチド
(Arg-Arg-Trp-Gln-Trp-Arg 。以下試料3と記載する)
、このヘキサペプチドのC末端のカルボキシル基をア
ミド基で置換した誘導体(Arg-Arg-Trp-Gln-Trp-Arg-NH
2 。以下試料4と記載する) 、および前記ペンタペプ
チドの2つのArg 残基をLys 残基で置換したペプチド
(Lys-Trp-Gln-Trp-Lys 。以下試料6と記載する) を、
ペプチド自動合成装置(ファルマシアLKBバイオテク
ノロジー社製)を用いてシェパード等[ジャーナル・オ
ブ・ケミカルソサイエティー・パーキンI(Journal of
Chemical Society Perkin I) 、第538 ページ、1981
年]による固相ペプチド合成法に基づいて合成した。
尚、無添加の試験群を対照とし、試験例1のc)の試料
(以下試料7と記載する)も比較のために用いた。 (2) 試験方法 前記試験例1と同一の方法によった。 (3) 試験結果 この試験の結果は図1に示すとおりである。図1は対照
および試料1〜試料6の添加濃度とNGF産生の関係を
示し、図中縦軸および横軸は、それぞれ無添加の試験群
を1とした場合の培地中のNGF産生比率、および培地
への各試料の添加濃度を示し、カッコ内の数字は試料番
号を示す(ただし、試料7については図示していな
い)。図1から明らかなように、両端に塩基性アミノ酸
であるArg残基を有する試料2および試料3にNGF産
生活性が認められ、Arg-Arg のアミノ酸配列を有する試
料3が試料2よりも高いNGF産生活性が認められた。
さらに試料3のC末端のカルボキシル基をアミド基で置
換した誘導体である試料4は、試料3よりもNGF産生
活性発現濃度が低下した。
【0024】試料2の中央のGln 残基をArg 残基で置換
した試料5のNGF産生活性は、試料2のそれよりも高
められた。さらに試料2の両端のArg 残基をLys 残基で
置換した試料6のNGF産生活性は、試料2のそれより
もやや低下したが、NGF産生活性が認められたので、
Lys 残基もNGF産生活性発現に有効であることが判明
した。尚、上記の各試料以外のアミノ酸配列のペプチド
についても試験したが、ほぼ同様の結果が得られた。 試験例3 この試験は、この発明の効果をより生体に近い実験系で
立証するために行った。 (1) 試料の調製 a)ラクトフェリン:牛ラクトフェリン(雪印乳業社製)
を使用。 b)ラクトフェリンN端側塩基性ペプチド:試験例1と同
一の方法で調製した。 (2) 試験方法 池上等の方法[バイオメディカル・リサーチ(Biomedic
al Research)、第11巻、第61ページ、1990年]により次
のように実施した。
【0025】5週齢の雌SDラットの座骨神経を摘出し、
長さ2mm の小片に細切し、10% 牛胎児血清を含むダルベ
コ変法イーグル培地(以下FBS-DMEMと略記する)を用
い、各小片を96穴カルチャー・プレートで培養した。4
日間FBS-DMEMで培養し、のち前記各試料を100 μg/mlの
割合で含むFBS-DMEMおよび前記試料を含まないFBS-DMEM
(対照)で培養し、培地を毎日交換して回収した。回収
した培養液中のNGFを、抗マウスβNGFポリクロナ
ール抗体を用いた酵素免疫法により定量した。 (3) 試験結果 この試験の結果は図2に示すとおりである。図中−●
−、−▲−、及び−△−は、それぞれ対照、前記試料
a、および前記試料bを示し、矢印は各試料を添加した
日を示す。図2から明らかなように対照と比較して牛ラ
クトフェリンおよびラクトフェリンN端側塩基性ペプチ
ドを添加した場合、ラット座骨神経片のNGF産生が有
意に促進されることが認められた。 試験例4 この試験は、連続して2つの塩基性アミノ酸が分子内に
存在する塩基性ペプチドのNGF産生効果を確認するた
めに行った。 (1) 試料の調製 試料1:Boc-Gln-Gly-Arg-MCA 試料2:Boc-Gln-Arg-Arg-MCA 試料3:Boc-Gly-Arg-Arg-MCA 試料4:Boc-Gly-Lys-Arg-MCA ここでBoc およびMCA は、それぞれ第3ブチルオキシカ
ルボニル、および4−メチル−クマリル−7−アミドを
示す。前記の試料は、いずれも市販品(株式会社ペプチ
ド研究所製)である。尚、試料を添加しない対照も同様
に試験した。 (2) 試験方法 試験例1と同一の方法によった。 (3) 試験結果 この試験の結果は表2に示すとおりである。表2から明
らかなように塩基性アミノ酸残基が分子中に1個存在す
る試料1では、NGF産生効果が認められなかったが、
塩基性アミノ酸残基が分子中に2個存在する試料2〜試
料4では、添加濃度の増加により有意にNGF産生量が
増加することが判明した。
【0026】
【表2】
【0027】次に実施例を示してこの発明をさらに具体
的に説明するが、この発明は以下の実施例に限定される
ものではない。
【0028】
【実施例】
実施例1(製剤処方例) 以下の組成からなる錠剤を作製した。 鉄飽和ラクトフェリン 50mg 結晶セルロース 170mg コーンスターチ 66mg タルク 11mg ステアリン酸マグネシウム 3mg 上記各材料を均一に混合し、造粒して乾燥し、打錠し、
錠剤を得た。なお、鉄飽和ラクトフェリンは、試験例1
と同様の方法により調製した。 実施例2(製剤処方例) 以下の組成からなるカプセル剤を作製した。
【0029】 アンジオゲニン 2.0mg 乳 糖 24.0mg 結晶セルロース 8.5mg カルボキシメチルセルロース 2.0mg タルク 3.0mg ステアリン酸マグネシウム 0.5mg 上記組成を十分に混合後、カプセル充填機を用いてカプ
セル剤とした。なお、アンジオゲニンは、試験例と同様
の方法により調整した。 実施例3(食品利用例) 以下の材量を用いて和菓子を製造した。
【0030】 鉄飽和ラクトフェリン 50g 砂 糖 800g 上南粉 320g 寒梅粉 480g 白並餡(含糖60%) 100g まず、容器にふるいを通して砂糖を入れ、裏漉ふるいを
通して白並餡を入れ、手でよく揉み合わせ、次いで上南
粉、寒梅粉とともに試験例と同様に調整した鉄飽和ラク
トフェリンを加えて強く揉み混ぜた。この混合物を木枠
に入れて押し板で強く押し、木枠から取り出して風乾
し、鉄飽和ラクトフェリン入り和菓子を製造した。 実施例4(製剤処方例) 以下の各材料を均一に混合し、造粒して乾燥し、打錠
し、錠剤を得た。
【0031】 Arg-Arg-Trp-Gln-Trp-Arg 50mg 結晶セルロース 170mg コーンスターチ 66mg タルク 11mg ステアリン酸マグネシウム 3mg 実施例5 以下の各材料を均一に混合し、カプセル充填機を用いて
充填し、カプセル剤を得た。
【0032】 Arg-Arg-Trp-Gln-Trp-Arg-NH2 5.0mg 乳糖 21.0mg 結晶セルロース 8.5mg カルボキシメチルセルロース 2.0mg タルク 3.0mg ステアリン酸マグネシウム 0.5mg
【0033】
【発明の効果】以上詳しく説明した通り、この発明によ
って、以下の効果が奏せられる。 (1) 神経細胞の生存と機能維持を促し、神経系の老
化を予防ないし改善するNGF産生促進剤を得ることが
できる。 (2) 障害を受けた神経細胞に対して、その細胞自身
の変性脱落を予防し、神経障害の進行を防止ないし改善
するNGF産生促進剤を得ることができる。 (3) 乳等の天然物から分離した塩基性蛋白質または
塩基性ペプチドを有効成分とするNGF産生促進剤は、
高い安全性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】各種試料の添加濃度とNGF産生の関係を示
す。
【図2】培養日数と培養液中のNGF量との関係を示
す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI A61K 38/44 A61K 37/54 38/46 37/43 (72)発明者 萩原 朋之 神奈川県横浜市旭区南希望ヶ丘118 森 永希望ヶ丘寮 (72)発明者 甲斐野 章 神奈川県横浜市旭区南希望ヶ丘118 森 永希望ヶ丘寮 (56)参考文献 特開 平4−5240(JP,A) 国際公開91/2067(WO,A1) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) A61K 38/00 - 38/58 CA(STN)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ラクトフェリン類、リゾチーム、リボヌ
    クレアーゼA、アンジオゲニン、シトクロムc、および
    これらの混合物からなる群より選択される塩基性蛋白
    質、もしくは次の一般式で表されるアミノ酸配列を含む
    塩基性ペプチドを有効成分として含有してなることを特
    徴とする神経成長因子産生促進剤。 X1−X2−X3 (ここでX1はアルギニン残基またはリジン残基、X2
    は0〜4個の任意のアミノ酸残基、X3はアルギニン残
    基、リジン残基またはそれらのカルボキシル基をアミド
    基で置換した誘導体を示す。ただし、ペプチド中の塩基
    性アミノ酸配列の連続が2以下である)
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