JP2913426B2 - 低温靱性の優れた厚肉高張力鋼板の製造法 - Google Patents

低温靱性の優れた厚肉高張力鋼板の製造法

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JP2913426B2
JP2913426B2 JP7204391A JP7204391A JP2913426B2 JP 2913426 B2 JP2913426 B2 JP 2913426B2 JP 7204391 A JP7204391 A JP 7204391A JP 7204391 A JP7204391 A JP 7204391A JP 2913426 B2 JP2913426 B2 JP 2913426B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、厚鋼板の板厚方向の低
温靱性に優れ、さらに脆性破壊伝播停止性能を有する引
張強さ70〜100kgf/mm2 級高張力鋼の製造方
法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、エネルギー需要が益々増加の傾向
にあり、海底資源開発につながる海洋構造物の建造ある
いは火力発電の夜間余剰電力調整用の揚水発電用高落差
ペンストックの建造などエネルギー関連の鋼構造物の建
設が活発化している。これらに使用される鋼材も大型
化、厚肉化され、安全性の確保が重要課題である。その
ため、これらに使用される材料として、構造上高強度で
かつ低温靱性の優れた鋼の開発が望まれている。このよ
うなより安全で信頼性の高い材料の要求に応えるため、
種々の厚肉高張力鋼の開発および品質改善が行われてき
ている。
【0003】従来から、高強度材の熱処理法としては再
加熱焼入れ焼戻し法が主流となっているが、特に厚肉材
に対して、板厚中心まできちんと焼きを入れ良好な強
度、靱性を得ることは困難であった。したがって、少な
い合金元素で焼入性を向上させるためには、Bによる焼
入性向上効果を活用する方法が多く適用されている。例
えば、特公昭60−20461号公報のように、厚肉材
の板厚中心部までBの焼入性を高めるため、sol.A
l−全B量線図を作製し、有効B範囲を制限し、かつ、
溶接性の点から炭素当量(Ceq)および溶接割れ感受
性指数(Pcm)を制限した引張強さ70〜80kgf
/mm2 級の厚肉高張力鋼の製造法がある。
【0004】一方、最近になって、圧延後冷却すること
なく直ちに焼入れし、焼戻しを行う直接焼入れ焼戻し法
が、経済性を低下させることなく強度も増加できるとい
うことから注目されるようになってきた。例えば、特公
昭63−66368号公報のように、低N鋼に微量のT
iを添加し、さらにNbを含有した鋼に直接焼入れ焼戻
しを施せば、Tiによって加熱オーステナイト結晶粒の
粗大化が防止され、熱間圧延によってオーステナイト結
晶粒が微細化され、さらに特定温度以上で圧延を終了す
ればオーステナイトの再結晶が促進されて加工歪みによ
る焼入性の低下が防止され、焼戻し時のNb(C、N)
の析出で強度がより向上し、強度、靱性バランスの優れ
た高張力鋼が得られる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、再加熱焼入れ
焼戻し法は、板厚中心部の焼入れ性改善により強度、靱
性が向上する反面、板厚表層下については十分な靱性が
得られない問題があった。これは、板厚中心部の焼入性
向上に伴い、板厚表層下は必然的に焼入れ時において冷
却速度が速いため完全マルテンサイト組織になるためで
あり、特に厚肉材についてはその傾向が強く現れる。ま
た、直接焼入れ焼戻し法も、厚肉材においては板厚中心
部の焼入れ性を確保するために再結晶温度域から焼入れ
る必要があり、このため表層下は粗粒のオーステナイト
結晶粒からのマルテンサイト組織になり、再加熱焼入れ
焼戻し法と同様に表層下部については十分な靱性が得ら
れない。
【0006】また、前述の直接焼入れ焼戻し法は板厚が
30mm以下の比較的薄肉材については強度、靱性が向
上するが、厚肉材については、再加熱焼入焼戻し法と同
様に板厚方向全域に渡って十分な強度、靱性が確保され
ているとはいえない。
【0007】更に、使用環境の苛酷な条件における安全
性の確保から、構造物は変形もしくは破壊してはなら
ず、特に鋼材に対しては、低温における脆性破壊伝播停
止性能も考慮せねばならない。前述の製造法により得ら
れた鋼板は、このような配慮が十分なされていない。し
たがって、厚肉材の場合、使用上十分安全であるとは言
えない。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、重量%
で、C:0.03〜0.15%、Si:0.02〜0.
5%、Mn:0.4〜2.0%、Ni:0.05〜3.
0%、Cr:0.2〜1.0%、Mo:0.1〜1.0
%、V:0.01〜0.1%、Al:0.03〜0.1
0%、B:0.0005〜0.0020%、N:0.0
060%以下を含有し、あるいは更にCu:0.1〜
1.5%、Nb:0.005〜0.05%、Ti:0.
005〜0.02%からなる強度改善元素群、または介
在物形態制御作用のあるCa:0.0005〜0.00
5%の一種または二種以上を含有し、残部がFeおよび
不可避的不純物からなる鋼片を950〜1150℃に加
熱して鋼片まゝあるいは粗圧延後900℃以上の温度か
ら水冷し、鋼片両表面から厚みの1/10以上2/10
以下の厚み比率までの表層部をAr3点以下に冷却し、
引き続き、鋼片表層部がAc1点以上Ac3点以下の温度
まで復熱させた後仕上げ圧延を開始し、仕上がり厚に対
し累積圧下率40%以上で圧延し、かつ、圧延中または
圧延終了後表層部をAc3点−50℃以上Ac3点+30
℃以下の温度まで復熱させた後、Ar3点以上の温度か
ら水冷する焼入れ処理を行い、続いてAc1点以下の温
度で焼戻し処理することを特徴とする低温靱性の優れた
厚肉高張力鋼の製造法である。
【0009】
【作用】本発明者らは、厚肉材の再加熱焼入れ焼戻し型
および直接焼入れ焼戻し型に見られる板厚表層下の靱性
低下に着目し、その靱性改善を図り、板厚方向全位置に
高強度で均質な低温靱性および脆性破壊伝播停止性能を
有する高張力鋼を開発することを目的に、種々の製造法
について実験した結果、B添加した低合金鋼片の厚板圧
延−直接焼入れ処理工程において、粗圧延後鋼片の表裏
面を水冷し、続いて表層部を復熱させつつ仕上げ圧延し
た後直接焼入れを行うことにより、焼入れ組織は、表層
が細粒のオーステナイト結晶粒からなるマルテンサイ
ト+下部ベイナイト組織、板厚中心部が比較的粗粒のオ
ーステナイト結晶粒からなるマルテンサイト+下部ベイ
ナイト組織となり、それを焼戻しすることで表層部の靱
性が著しく改善され、板厚方向全位置において均質な低
温靱性が得られ、かつ、脆性破壊伝播停止性能を有する
目的の鋼が製造できることを知見した。
【0010】以下、本発明の作用を詳細に説明する。
【0011】まず、本発明に適用する鋼を上記のような
鋼成分に限定した理由について述べる。
【0012】C:Cは焼入性を向上させ強度を容易に上
昇させるのに有効な元素である。しかし、0.03%未
満では強度的に不十分であり、0.15%を超えると低
温靱性および溶接性が低下する。したがって、C含有量
の範囲を0.03〜0.15%とした。
【0013】Si:Siは製鋼上不可避な元素であり、
0.02%は鋼中に含まれることになるが、0.5%を
超えると低温靱性が低下する。したがって、ある程度の
強度を確保し、低温靱性を低下させないために0.02
〜0.5%とした。
【0014】Mn:Mnは焼入性を向上させ、強度、靱
性確保に有効であるが、0.4%未満では強度および靱
性が低下し、また、2.0%を超えると焼戻し脆性が大
きくなり、低温靱性を低下させる。したがって、Mnの
含有量を0.4〜2.0%とした。
【0015】Ni:Niは強度と靱性を向上させるため
に最も有効な元素である。0.05%未満ではその効果
がなく、また、3.0%を超えると強度の割には靱性改
善の効果が小さく、経済性で不利となる。したがって、
Niの含有量を0.05〜3.0%とした。
【0016】Cr:Crは焼入性を向上させ強度確保に
有効であるが、0.2%未満ではその効果がなく、ま
た、1.0%を超えると靱性および溶接性が低下する。
したがって、Crの含有量を0.2〜1.0%とした。
【0017】Mo:Moは焼入性向上による強度確保、
および焼戻し脆性の防止のために有効な元素である。し
かし、0.1%未満ではその効果がなく、また、1.0
%を超えると低温靱性および溶接性が低下する。したが
って、Moの含有量を0.1〜1.0%とした。
【0018】V:Vは焼戻し処理において炭窒化物を形
成し、析出強化により強度確保に有効である。特に、直
接焼入れ焼戻し法は焼入れ処理前に炭窒化物が十分に固
溶化されるため、効果的な析出強化を図ることができ
る。しかし、0.01%未満では目標とする強度が得ら
れず、また、0.1%を超えると低温靱性が低下する。
したがって、Vの含有量を0.01〜0.1%とした。
【0019】Al:Alは鋼片加熱時、鋼中のNと結び
ついて、その後の焼入れ処理において焼入性に有効なB
を確保するため0.03%以上の添加が必要である。ま
た、AlNの微細析出物によりオーステナイト粒の細粒
化にも有効である。しかし、0.10%を超えるとAl
2 3 等の介在物が増大し、低温靱性を阻害する。した
がって、Alの含有量を0.03〜0.10%とした。
【0020】B:Bは焼入性を向上させるのに有効な元
素であり、C、Mn、Cr、Mo、Niの焼入性元素と
の兼ね合いにおいて、これら元素のより少量の添加で焼
入性が発揮できる。更に、本発明においては鋼片まゝま
たは粗圧延後水冷により鋼片表裏面を冷却し、その後復
熱しながら圧延するため、表層部はオーステナイト結晶
粒が微細化され、かつ、加工歪みが形成されるため焼入
性が低下する。しかし、B添加によりオーステナイト粒
界からのフェライトの生成が抑制でき、表層部において
も下部ベイナイトあるいは下部ベイナイト+マルテンサ
イトの混合組織を生成させることができる。また、板厚
中心部は、本発明の場合、十分に高い再結晶温度から焼
入れるためBによる焼入性向上効果が十分に発揮でき
る。0.0005%未満ではその効果がなく、また、
0.0020%を超えるとその効果が飽和してかえって
靱性を低下させる。したがって、Bの含有量を0.00
05〜0.0020%とした。
【0021】N:Nは0.0060%以下にすることに
よりBによる焼入性向上効果が安定化し、0.0060
%を超えると溶接性が低下する。したがって、Nの含有
量を0.0060%以下とした。
【0022】本発明では、上記基本成分の他に、Cu、
Nb、TiおよびCaの一種または二種以上を添加す
る。
【0023】Cu、Nb、Ti成分は、鋼の強度を向上
させるという均等的作用をもち、所望の効果を確保する
ためにはそれぞれ下限含有量をCu:0.1%、Nb:
0.005%、Ti:0.005%とする必要がある。
しかし、それぞれCu:1.5%、Nb:0.05%、
Ti:0.02%を超えて含有させると、低温靱性およ
び溶接性が低下するため、上記の通り限定する。
【0024】Ca:Caは非金属介在物の球状化に有効
であり、靱性の異方性を小さくする効果がある。また、
溶接後の残留応力除去焼鈍による割れ防止に効果を発揮
する。そのためには0.0005%以上必要である。し
かし、0.0050%を超えると介在物増加により靱性
を低下させる。したがって、Caの含有量を0.000
5〜0.0050%とした。
【0025】上記の成分の他に、不可避的不純物として
P、S等は低温靱性を低下させる有害な元素であるか
ら、その量は少ない方がよい。好ましくは、P≦0.0
10%、S≦0.005%である。
【0026】次に、本発明のもう一つの骨子である製造
法について述べる。すなわち、上記のような鋼成分組成
であっても、厚肉材の板厚方向各位置の靱性を高靱化さ
せ、かつ、脆性破壊伝播停止性能を向上させるために
は、製造方法が適切でなければならない。ここで鋼片の
加熱、粗圧延冷却、復熱・圧延、冷却および焼戻し条件
の限定理由について説明する。
【0027】まず、上記成分組成の鋼片を950〜11
50℃に加熱し熱間圧延を行う。この加熱はNをAlで
固定し、AlNの微細析出を図り、焼入れ処理前の固溶
Bを増加させ、焼入性を高める処理であり、また、加熱
オーステナイト粒を細粒化し、更に焼戻し処理時にM
o、V等の微細炭窒化物を十分に固溶化させる処理であ
る。したがって、950℃未満の低い温度では、Mo、
V等の固溶化作用が不十分となる。一方、1150℃を
超える温度では、Mo、V等の炭窒化物は十分固溶する
ものの、AlNの微細析出物も再分解し、この固溶Nは
圧延時Bと結びつきBNとして再析出するため、焼入れ
時の固溶Bが減少し焼入性が低下する。また、加熱オー
ステナイト粒が粗大化し、その後の圧延において、特に
表層下部のオーステナイト粒が細粒化しにくく、表層下
部の靱性低下の原因となる。したがって、これらの問題
を考慮して、鋼片の加熱温度を950〜1150℃とし
た。
【0028】次に、このように加熱された鋼片を、鋼片
まゝあるいは粗圧延を行った後900℃以上の温度から
水冷し、鋼片両表面から厚みの1/10以上2/10以
下の厚み比率までの表層部をAr3点以下まで冷却する
(図1の(a)に本発明の鋼片水冷直後の厚み方向の温
度曲線を示す)。ここで、鋼片まゝあるいは粗圧延後の
鋼片の水冷開始温度を900℃以上と限定した理由は、
仕上げ圧延後の板厚中心部の焼入性の確保のためであ
る。図2は表1、2に示す鋼Mについて、1050℃加
熱し、鋼片水冷開始表面温度を800〜1100℃に変
化させ、その後本発明の製造条件で圧延、水冷、焼戻し
を行った後の板厚50mm材の中心部の靱性を示したも
のである。水冷開始温度が900℃では明らかに高靱性
が得られる。しかし、900℃未満の温度では板厚中心
部の焼入れ温度も低くくなり、焼入性が低下し、上部ベ
イナイト組織が生成され靱性が低下する。また、鋼片両
表面から厚みの1/10以上2/10以下の厚み比率
での表層部をAr3点以下に冷却する理由は、表層部
γ→α→復熱圧延→γ変態を通すことによりオーステナ
イト粒の細粒化が効率良く達成できるためである。しか
し、表層部がAr3点以下とする厚み比率が1/10未
満では、表層細粒化層が薄くなり、低温靱性および脆
性破壊伝播停止性能が低下する。また、厚み比率が2/
10超では、仕上げ圧延において表面部をAc3点−5
0℃以上の温度に復熱させることができず、細粒化が不
十分となる。また、板厚中心部の温度も同時に低くな
り、焼入性が低下し靱性も低下する。
【0029】次に、このように鋼片表層部がAr3 点以
下に冷却された鋼片を、表層部がAc1 点以上Ac3
以下に復熱させた後仕上げ圧延を開始する。この理由
は、表層部をα+γ二相域温度から圧延すると、圧延中
または圧延終了後復熱によるα→γ逆変態により最もオ
ーステナイト粒が細粒化されるからである。しかし、A
1 点未満から圧延を開始した場合は、復熱後の微細オ
ーステナイト粒の生成が少なく、伸長粗大フェライト粒
との混合粒となり、強度、靱性が低下する。また、Ac
3 点超に復熱してから圧延を開始した場合は、オーステ
ナイト粒の微細化が不十分となり靱性および脆性破壊伝
播停止性能が低下する。
【0030】このような温度域に表層部が復熱された鋼
片を仕上がり厚に対し累積圧下率40%以上で圧延し、
かつ、圧延中または圧延終了後表面部をAc3点−50
℃以上Ac3点+30℃以下の温度まで復熱させる必要
がある。累積圧下率が40%以上必要である理由は、
層部に二相域温度で加工歪みを導入し、それにより微細
オーステナイト粒生成のための核サイトを増加させるた
めである。しかし、累積圧下率40%未満では加工歪み
の導入が小さく、オーステナイト粒の細粒化が不十分と
なる。更に、板厚中心部においても、再結晶温度域で圧
延再結晶を起こさせ、ある程度細粒化させるためにも累
積圧下率40%以上必要である。また、圧延中または圧
延終了後表面部をAc3点−50℃以上Ac3点+30℃
以下の温度まで復熱させる必要がある(図1の(b)に
本発明の圧延中または圧延終了後の復熱温度曲線を示
す)。この理由は、表層部にα→γ逆変態により微細オ
ーステナイト粒を生成させるためである。しかし、Ac
3点−50℃未満の温度では、微細オーステナイト粒の
生成が小さく、また、Ac3点+30℃超の温度では、
生成された微細オーステナイト粒の成長が起こり、靱性
の低下が生じる。図3は表1、2に示す鋼Mについて仕
上げ圧延前までは本発明範囲で製造した鋼片を圧延中ま
たは圧延終了後の表部を復熱変化させたときの靱性の
影響について調査したものである。本発明範囲内の温度
で復熱圧延終了した鋼板は、表層部および中心部共高靱
性が得られる。しかし、本発明範囲を逸脱した復熱圧延
終了材は、表層部または中心部の靱性が低下することが
分かる。
【0031】熱間圧延−復熱された鋼は、その後Ar3
点以上の温度から水冷する焼入れ処理を行う必要があ
る。この理由は、上記のごとく圧延された鋼板を、焼入
処理によって、表層部は加工歪みのある微細オーステナ
イト粒からのマルテンサイト+下部ベイナイト組織、板
厚中心部は表層部に比べ加工歪みの無い比較的粗粒オー
ステナイト粒からの下部ベイナイト+マルテンサイト組
織とするためである。しかし、Ar3点未満の温度では
フェライトが生成し表層部の焼入れ性が著しく低下し、
板厚中心部においても焼入れ性が低下する傾向にあり、
上部ベイナイト組織が生成し強度、靱性が得られない。
【0032】熱間圧延後水冷された鋼は、更にその後A
1 点以下の温度で焼戻し処理を行う必要がある。この
焼戻し処理は、Mo、V等の炭窒化物を十分に析出強化
させ、強度および靱性を得るためである。しかし、Ac
1点を超えた温度では強度が著しく低下する。
【0033】このような製造工程で得られた鋼は、板厚
方向全位置において高強度および高靱性が得られ、更に
脆性破壊伝播停止性能が著しく改善される。
【0034】
【実施例】表1、2に示す組成を有する鋼を溶製して得
た鋼片から、表3、4に示す本発明法と比較法の各々の
製造条件に基づいて板厚30〜150mmの鋼板を製造
した。これらについての母材の機械的性質と、温度勾配
型ESSO試験による脆性破壊伝播停止性能について調
査した。
【0035】これらの表1、2の化学組成を有する鋼と
表3、4で示す製造条件とによって得られた板厚方向各
部の機械的性質、および脆性破壊伝播停止性能のKca
試験結果を表5〜7に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【0040】
【表5】
【0041】
【表6】
【0042】
【表7】
【0043】表5〜7に見られるように、本発明例1−
A〜13−Mにおいては、母材の強度、靱性は板厚方向
差も小さく、かつ十分に高い値である。また、ESSO
試験のKca値も十分高い値である。
【0044】これに対し、鋼組成が要件を満たしても製
造条件が要件を満たさない場合において、比較例14−
Mでは、鋼片加熱温度が高くAlNが溶解し、固溶Bが
減少し、焼入性が低下したため中心部の強度、靱性が低
下し、また、圧延後の復熱ピーク温度も高くなり、表層
部が粗粒化し靱性が低下している。比較例15−Mで
は、鋼片の水冷開始温度が低いため、その後の仕上げ圧
延中の復熱ピーク温度も低くなり、中心部の焼入性が低
下し強度、靱性共低下している。比較例16−Mおよび
21−Bでは、鋼片両表面から厚み比率3/10までの
表層部をAr3 点以下に冷却したため、中心部が未再結
晶圧延となり焼入性が低下し、強度および靱性が低下
し、また、圧延中の表層部の復熱温度も低くなり、フェ
ライトが生成し強度、靱性が低下している。比較例17
−Mでは、鋼片水冷がなく、仕上げ圧延開始温度も高い
ため中心部の焼入性は向上するが、表層部は焼入組織が
粗粒のマルテンサイト組織となり靱性が低下し、このた
め脆性破壊伝播停止性能も低下している。比較例18−
Iおよび20−Bでは、鋼片冷却後鋼片表層部の温度が
Ac3 点より更に高い温度に復熱されてから仕上げ圧延
を開始したため、表層部が細粒化されず靱性が低下して
いる。比較例19−Iでは、仕上げ圧延後の鋼板の焼入
れ温度がAr3 点より低くなったためフェライトの生成
が起こり、板厚方向全域に渡って焼入性が低下し、強
度、靱性共低下している。比較例22−Eでは、制御圧
延を実施せず普通圧延により鋼板を製造し、再加熱焼入
処理を行ったので、表層部が粗粒となり靱性が低下して
いる。
【0045】
【発明の効果】本発明により、板厚表層部から中心部ま
で高強度、高靱性の厚肉高張力鋼板の製造が可能とな
る。特に厚肉材では、従来の製造法では板厚表層部から
中心部まで高靱性を得ようとすると、表層部については
未再結晶域圧延を行ってγ粒を細粒化していたが、反
面、中心部の焼入性が低下し、また、中心部については
再結晶域圧延により高い温度から焼入れする必要があ
り、反面、表層部が粗粒となる心配があったのを解消す
る。その結果、脆性破壊伝播停止性能が著しく向上し、
十分な安全性が確保される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の鋼片水冷直後の厚み方向の温度曲線
(a)および圧延中または圧延終了後の鋼板の厚み方向
の復熱温度曲線(b)を示す図である。
【図2】鋼Mについて板厚中心部の靱性と鋼片水冷開始
温度の関係を示す図である。
【図3】鋼Mについて板厚方向各位置の靱性と圧延中ま
たは圧延終了後の鋼板表面温度との関係を示す図であ
る。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C21D 8/02

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、 C :0.03〜0.15%、 Si:0.02〜0.5%、 Mn:0.4〜2.0%、 Ni:0.05〜3.0%、 Cr:0.2〜1.0%、 Mo:0.1〜1.0%、 V :0.01〜0.1%、 Al:0.03〜0.10%、 B :0.0005〜0.0020%、 N :0.0060%以下 を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼
    片を950〜1150℃に加熱して鋼片まゝあるいは粗
    圧延後900℃以上の温度から水冷し、鋼片両表面から
    厚みの1/10以上2/10以下の厚み比率までの表層
    部をAr3点以下に冷却し、引き続き、鋼片表層部がA
    1点以上Ac3点以下の温度まで復熱させた後仕上げ圧
    延を開始し、仕上がり厚に対し累積圧下率40%以上で
    圧延し、かつ、圧延中または圧延終了後表層部をAc3
    点−50℃以上Ac3点+30℃以下の温度まで復熱さ
    せた後、Ar3点以上の温度から水冷する焼入れ処理を
    行い、続いてAc1点以下の温度で焼戻し処理すること
    を特徴とする低温靱性の優れた厚肉高張力鋼の製造法。
  2. 【請求項2】 重量%で、 C :0.03〜0.15%、 Si:0.02〜0.5%、 Mn:0.4〜2.0%、 Ni:0.05〜3.0%、 Cr:0.2〜1.0%、 Mo:0.1〜1.0%、 V :0.01〜0.1%、 Al:0.03〜0.10%、 B :0.0005〜0.0020%、 N :0.0060%以下 を含有し、更に Cu:0.1〜1.5%、 Nb:0.005〜0.05%、 Ti:0.005〜0.02% からなる強度改善元素群、または介在物形態制御作用の
    ある Ca:0.0005〜0.005% の一種または二種以上を含有し、残部がFeおよび不可
    避的不純物からなる鋼片を950〜1150℃に加熱し
    て鋼片まゝあるいは粗圧延後900℃以上の温度から水
    冷し、鋼片両表面から厚みの1/10以上2/10以下
    の厚み比率までの表層部をAr3点以下に冷却し、引き
    続き、鋼片表層部がAc1点以上Ac3点以下の温度まで
    復熱させた後仕上げ圧延を開始し、仕上がり厚に対し累
    積圧下率40%以上で圧延し、かつ、圧延中または圧延
    終了後表層部をAc3点−50℃以上Ac3点+30℃以
    下の温度まで復熱させた後、Ar3点以上の温度から水
    冷する焼入れ処理を行い、続いてAc1点以下の温度で
    焼戻し処理することを特徴とする低温靱性の優れた厚肉
    高張力鋼の製造法。
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