JP2902319B2 - 加熱ローラの製造方法 - Google Patents

加熱ローラの製造方法

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JP2902319B2
JP2902319B2 JP6635695A JP6635695A JP2902319B2 JP 2902319 B2 JP2902319 B2 JP 2902319B2 JP 6635695 A JP6635695 A JP 6635695A JP 6635695 A JP6635695 A JP 6635695A JP 2902319 B2 JP2902319 B2 JP 2902319B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、静電複写機等のトナー
定着用等に用いられる加熱ローラの製造方法に関し、特
にその寸法・形状精度を改善する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、トナー画像を紙等に転写した後
に定着する複写機においては、トナーが転写された紙等
に複写機内に備えられた加熱ローラと加圧ローラとの間
を通過させることにより、加熱と同時に加圧をして、ト
ナーを紙等に定着させることが行われている。上記加熱
ローラの一つに、円筒状の外周面を有する電気絶縁性基
体を備え、その外周面を用いて均等に押圧しつつ加熱す
るものがある。例えば、特開昭63−158582号公
報或いは特開平6−110348号公報等に記載されて
いるように、円筒状或いは円柱状基体の外周面に抵抗発
熱体層を備えた加熱ローラ(以下、表面発熱型加熱ロー
ラという)や、これらとは反対に円筒状基体の内周面に
抵抗発熱体層を備えた加熱ローラ(以下、内面発熱型加
熱ローラという)がそれである。特に、表面発熱型加熱
ローラによれば、紙等に接触する表面が直接的に発熱さ
せられるため、従来用いられていたアルミニウム合金等
の金属から成る円筒状のローラの内部に加熱源としてハ
ロゲンランプ等を備えた加熱ローラ(以下、内部発熱型
加熱ローラという)や、上記内面発熱型加熱ローラに比
較して予熱時間が短く、且つ、消費電力が低くなるとい
う利点がある。
【0003】
【発明が解決すべき課題】ところで、上記の表面発熱型
加熱ローラ或いは内面発熱型加熱ローラの電気絶縁性基
体としては、上記公報等に記載されているように、例え
ばセラミックス(硬質ガラス等のガラスやアルミナ、ム
ライト等)から成る円柱或いは円筒状のローラが用いら
れるが、このようなセラミックス製ローラの寸法或いは
形状精度(例えば、外径精度、そり精度、真円度等)
は、従来から内部発熱型加熱ローラに用いられてきた金
属製ローラの精度よりも比較的低い(例えば、金属製ロ
ーラの外径精度が±数十μm 程度であるのに対し、セラ
ミックス製ローラの外径精度は± 200μm 程度となる)
ことから、画像の転写ムラ(すなわち、トナー転写時の
画像の歪み)や、トナーの定着ムラ(すなわち、記録紙
の面内における定着率のばらつき)等が生じ得るという
問題がある。
【0004】すなわち、図1に装置の要部構成を模式的
に示すように、例えば前記表面発熱型加熱ローラが用い
られた従来の複写機10は、回転可能に設けられた感光
体ドラム12と、その感光体ドラム12の外周側に周方
向に所定の間隔で配設されたコロナ帯電器14、露光器
16、現像器18、転写器20、除電器22、およびク
リーナ24と、感光体ドラム12の前段に回転可能に設
けられ、その感光ドラム12と転写器20との間に記録
紙26を供給する一対の送りローラ28,28と、感光
体ドラム12の後段に設けられ、互いに押圧する状態で
回転可能に取り付けられた表面発熱型加熱ローラ(以
下、単に加熱ローラという)30および加圧ローラ32
を有する定着器34と、その定着器34の更に後段に回
転可能に設けられ、複写機10の外部へ記録紙26を排
出する一対の排紙ローラ36,36とを備えている。
【0005】上記定着器34には、加熱ローラ30にト
ナーが付着することを防止するために、その外周面にシ
リコーンオイル等を塗布するオイル含浸ローラ38と、
加熱ローラ30の外周面に設けられた図示しない抵抗発
熱体層に給電するためにバネ40によりその加熱ローラ
30の外周面に押圧されている給電ブラシ42と、加熱
ローラ30の表面温度を測定するためのサーミスタ等の
温度センサ44と、記録紙26が加熱ローラ30に巻き
付くことを防止するために先端部がその加熱ローラ30
に常時押圧されている分離爪46とが備えられている。
加熱ローラ30は、上記温度センサ44により検出され
た温度に基づき、例えば図示しない制御回路により加熱
ローラ30に印加される電圧が制御されることにより、
その表面温度が適正な温度に保たれている。なお、加圧
ローラ32は例えばアルミニウム合金製円柱48の外周
面に例えばシリコーンゴム等の弾性体層50が固着され
たものである。
【0006】上記の複写機10において、一対の送りロ
ーラ28,28によって感光体ドラム12と転写器20
との間に供給された記録紙26は、コロナ帯電器14、
露光器16、現像器18によってその感光ドラム14の
外周面に形成されたトナー像がその転写器20によって
一面に転写された後、送りローラ28,28、感光体ド
ラム12、および転写器20により、加熱ローラ30お
よび加圧ローラ32に向かって送られ、これら加熱ロー
ラ30および加圧ローラ32の間で加熱されつつ加圧さ
れることによってトナーに含まれる樹脂が溶融して、ト
ナー像が定着される。
【0007】このとき、記録紙26は、送りローラ2
8,28と、加熱ローラ30および加圧ローラ32と、
排紙ローラ36,36(更に、感光体ドラム12と転写
器20とが接触した状態で転写が行われる場合には、感
光体ドラム12および転写器20を含む)の何れによっ
ても搬送されることとなるため、その搬送速度は送りロ
ーラ28等の周速度すなわち回転速度により決定され
る。そのため、複写精度を可及的に高くするためには、
送りローラ28等の周速度が全て一致させられることが
望まれる。ところが、前述のようにセラミックス製ロー
ラが用いられた加熱ローラ30の寸法、形状精度は比較
的低くなるため、例えば、外径精度や真円度が低い場合
には、その一回転の間に記録紙26の引っ張りや弛みが
生じることからトナー転写時に画像の歪みを引き起こ
し、また、例えば、そり精度が低い場合には、その一回
転の間に加圧ローラ32との間の押圧力が変化して記録
紙26の面内におけるトナーの定着率がばらつくことと
なるのである。抵抗発熱体層を円筒状基体の内周面に備
えた内面発熱型加熱ローラが用いられている場合にも事
情は同様である。
【0008】ところで、従来の金属製ローラは、外周面
に研削加工が施されてその寸法・形状精度が高められて
おり、同様の加工が送りローラ28等にも施されること
によって、全体の寸法・形状精度が高くされて前記不具
合の発生が抑制されていた。ところが、セラミックス製
ローラに従来の金属製ローラと同様な外周面の研削加工
を施して寸法・形状精度を高めると、その機械的強度が
大きく低下し(例えば、加工前の 1/2〜1/3 程度にな
る)、加熱ローラ30の破損が生じ易いという問題があ
る。
【0009】すなわち、図2に定着器34の要部断面を
示すように、加圧ローラ32は、バネ52,52を備え
た軸受54,54により軸心方向の両端部において支持
されると共に加熱ローラ30に押圧されているが、一
方、加熱ローラ30は、軸心方向の両端部において駆動
ギアを備えた支持部材56,56に支持されており、そ
の支持部材56,56が加圧バネ58,58により定着
器34のハウジング60から離隔する方向に付勢される
ことにより、加圧ローラ32に押圧されている。そのた
め、加熱ローラ30と加圧ローラ32との押圧部分や加
熱ローラ30の支持部分に大きな力が発生する。したが
って、従来のようにアルミニウム合金等の金属製ローラ
が用いられた加熱ローラの場合には、研削加工に伴う機
械的強度の変化が殆どないため、上記のようにして精度
を高めることが可能であるが、脆性材料であるセラミッ
クスから成るローラに研削加工を施して加熱ローラ30
の精度を高めると、その研削加工により生じた外周面の
表面傷に起因して機械的強度が大きく低下し、破損が生
じ易くなるのである。なお、図において62は、加熱ロ
ーラ30と加圧ローラ32との回転を同期させるための
連結ギアである。
【0010】なお、転写器20と定着器34との間に速
度制御も兼ねた搬送機構を設けることによって記録紙2
6の移動速度を安定させ、加熱ローラ30の外径精度や
真円度に起因する転写ムラを抑制することも可能である
が、そのような速度制御機構を設けると、複写機が大型
化すると共に製造コストが増大することとなるため好ま
しくない。しかも、このような機構を設けても、加熱ロ
ーラ30のそり精度に起因する定着ムラを抑制すること
はできないのである。
【0011】本発明は、以上の事情を背景として為され
たものであって、その目的とするところは、高い機械的
強度と高い寸法・形状精度を共に有する加熱ローラの製
造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための第1の手段】斯かる目的を達成
するため、第1発明の要旨とするところは、円筒状の外
周面を有する電気絶縁性基体を備え、その外周面を用い
て均等に押圧しつつ加熱する加熱ローラの製造方法であ
って、(a) 第1のセラミックスから成る本体部の外周面
に、その第1のセラミックスよりも低い温度で溶融させ
られる第2のセラミックスを含む未加熱処理膜を形成す
る膜形成工程と、(b) その未加熱処理膜を、前記第2の
セラミックスの溶融温度よりは高く且つ前記第1のセラ
ミックスの熱変形温度よりも低い所定の処理温度で加熱
することにより、前記本体部の外周面に第2のセラミッ
クスから成る表層部を生成してその外周面をその表層部
で覆う加熱工程と、(c) 前記本体部には何等外周面の研
削加工を施すことなく、その表層部または前記未加熱処
理膜の外周面を機械加工により除去することにより、そ
れら表層部または未加熱処理膜の外周面を所定の精度に
加工する機械加工工程とを、含む工程により前記電気絶
縁性基体が製造されることにある。
【0013】
【作用】このようにすれば、加熱ローラの電気絶縁性基
体は、第1のセラミックスから成る本体部の外周面に第
2のセラミックスを含む未加熱処理膜を形成する膜形成
工程と、その未加熱処理膜を第2のセラミックスの溶融
温度よりも高く且つ第1のセラミックスの熱変形温度よ
りも低い所定の処理温度で加熱することにより、本体部
の外周面に第2のセラミックスから成る表層部を生成
てその外周面を表層部で覆う加熱工程と、その表層部ま
たは未加熱処理膜の外周面を機械加工により除去するこ
とにより、それらの外周面を所定の精度に加工する機械
加工工程とを、含む工程により製造される。そのため、
本体部には外周面の研削加工が何等施されず、その外周
面に形成された未加熱処理膜、或いは、その未加熱処理
膜から加熱生成された表層部に機械加工が施されて、外
周面が除去される。
【0014】
【第1発明の効果】上記により、電気絶縁性基体は、機
械加工が施されてその外周面が除去されることにより、
所定の寸法・形状精度を備えさせられるが、本体部には
何等外周面の研削加工が施されていないことから、その
機械的強度は低下させられない。一方、表層部の外周面
には上記の機械加工により研削傷が存在するが、表層部
が生成される際の加熱処理温度は第2のセラミックスの
溶融温度よりも高く且つ第1のセラミックスの熱変形温
度よりも低い温度とされていることから、両者の反応は
殆ど生じず、その間には組織の境界が存在し、外部応力
が作用した際にも、外周面の研削傷を起点とする欠陥の
進行は表層部のみに止まるため、本体部の機械的強度に
は影響しない。したがって、高い機械的強度と高い寸法
・形状精度を共に備えた加熱ローラが得られることとな
る。
【0015】なお、本願において「セラミックス」とは
人工的につくられた無機質固体材料をいい、単結晶や多
結晶および非晶質のガラスをも含むものである。例え
ば、硬質ガラスや低アルカリガラス、石英ガラス等のガ
ラス、アルミナ、ムライト、ステアタイト、窒化アルミ
ニウム、チタン酸バリウム、炭化ケイ素等種々のものが
該当する。また、本願においては特に断らない限り、非
晶質材料においては軟化点が「溶融温度」に、徐冷点
(更に好適には歪点)が「熱変形温度」に相当し、結晶
材料においては融点が何れにも相当する。
【0016】
【課題を解決するための第2の手段】また、前記目的を
達成するための第2発明の要旨とするところは、前記加
熱ローラの製造方法であって、(d) 第1のセラミックス
から成る本体部の外周面を所定の精度に研削加工する研
削加工工程と、(e) その研削加工を施された本体部の外
周面に、前記第1のセラミックスよりも低い温度で溶融
させられる第2のセラミックスを含む未加熱処理膜を形
成する膜形成工程と、(f) その未加熱処理膜を、前記第
2のセラミックスの溶融温度よりも高く且つ前記第1の
セラミックスの熱変形温度よりも低い所定の処理温度で
加熱することにより、前記本体部の外周面に第2のセラ
ミックスから成る表層部を生成してその外周面をその表
層部で覆う加熱工程とを、含む工程により前記電気絶縁
性基体が製造されることにある。
【0017】
【作用】このようにすれば、加熱ローラの電気絶縁性基
体は、第1のセラミックスから成る本体部の外周面を所
定の精度に研削加工する研削加工工程と、その研削加工
を施された本体部の外周面に第1のセラミックスよりも
低い溶融温度を有する第2のセラミックスを含む未加熱
処理膜を形成する膜形成工程と、その未加熱処理膜を第
2のセラミックスの溶融温度よりも高く且つ第1のセラ
ミックスの熱変形温度よりは低い所定の処理温度で加熱
することにより、その未加熱処理膜から第2のセラミッ
クスから成る表層部を生成してしてその外周面をその表
層部で覆う加熱工程とを含む工程により製造される。そ
のため、本体部の外周面は研削加工により所定の寸法・
形状精度にされると共に、表層部により覆われることと
なるが、その表層部を生成する際の加熱処理温度では、
本体部は何等変形させられないため研削加工後の精度を
保ち、表層部の外周面はその本体部の外周面に倣って形
成される。
【0018】
【第2発明の効果】上記により、本体部の加工精度に従
って電気絶縁性基体の外周面の高い寸法・形状精度が得
られると共に、本体部の外周面に生じた研削傷は表層部
により覆われ、且つ、表層部を構成する第2のセラミッ
クスにより埋められることとなり、外部応力が作用した
際にもその研削傷を起点とする欠陥の進行が抑制され
る。したがって、高い機械的強度と高い寸法・形状精度
を共に備えた加熱ローラが得られることとなる。
【0019】ここで、上記第1および第2発明におい
て、好適には、前記第2のセラミックスを含む未加熱処
理膜は、(g) その第2のセラミックスを含むペーストを
前記本体部の外周面に塗布する塗布工程と、(h) そのペ
ーストから成る膜を乾燥する乾燥工程とを含む工程によ
り形成されるものであり、その塗布工程は、(i) 前記本
体部をその軸心回りに回転させる回転工程と、(j) 吐出
細管を備えたペースト吐出装置のその吐出細管の先端部
を、回転させられている前記本体部の外周面に接触させ
て、その外周面に前記第2のセラミックスを含むペース
トを前記吐出細管を通して吐出する吐出工程と、(k) 前
記吐出細管の先端部が前記本体部の外周面に接触し且つ
その吐出細管を通して第2のセラミックスを含むペース
トが吐出されている状態で、前記ペースト吐出装置をそ
の本体部に対してその軸心方向に平行な方向に相対移動
させる移動工程とを、含むものである。
【0020】このようにすれば、本体部の外周面に表層
部を設けるための未加熱処理膜は、第2のセラミックス
を含むペーストを塗布する塗布工程を含む工程により形
成されることとなり、回転工程において本体部がその軸
心回りに回転させられている状態で、吐出工程において
ペースト吐出装置の吐出細管の先端部がその本体部の外
周面に接触させられ、且つ、その吐出細管を通して第2
のセラミックスを含むペーストがその外周面上に吐出さ
れると共に、移動工程においてそのペースト吐出装置が
本体部の軸心方向に平行な方向に相対移動させられる。
すなわち、ペースト吐出装置の吐出細管は、第2のセラ
ミックスを含むペーストを本体部の外周面上に吐出しな
がらその外周面上を螺旋状に移動させられて、そのペー
ストが本体部の外周面上に塗布されることとなる。
【0021】そのため、本体部の外周面上には第2のセ
ラミックスを含むペーストがその周方向に連続的に塗布
される。したがって、本体部の外周面に設けられる未加
熱処理膜の膜厚が周方向に均一となって、前記第1発明
の製造方法による場合には機械加工工程において必要な
加工除去量を比較的小さくすることができると共に、前
記第2発明の製造方法による場合には研削加工工程で得
られた本体部の寸法・形状精度の低下が可及的に小さく
されて、電気絶縁性基体の一層高い寸法・形状精度が得
られることとなる。
【0022】なお、上記の塗布工程において、好適に
は、前記本体部の外周面に第2のセラミックスを含むペ
ーストが塗布された後に、その本体部をその軸心回りに
回転させたままそのペーストのレベリングを行うレベリ
ング工程が設けられる。これにより、塗布時および重力
による未加熱処理膜の膜厚のばらつきが抑制される。
【0023】また、本発明は電気絶縁性基体の外周面に
抵抗発熱体層を備えた表面発熱型および電気絶縁性基体
の内周面に抵抗発熱体層を備えた内面発熱型の何れの加
熱ローラにも適用し得るが、その外周面或いは内周面に
備えられる抵抗発熱体層、およびその抵抗発熱体層に電
圧を印加するために同様に外周面或いは内周面に備えら
れる電極層等が加熱処理により形成される場合には、前
記加熱工程における処理温度が、その抵抗発熱体層およ
び電極層の形成温度よりも十分に高くなるように、第2
のセラミックスの組成が選ばれる。
【0024】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図面を参照して説
明する。なお、以下の実施例において、各部の寸法比等
は必ずしも正確に描かれていない。
【0025】図3は、本発明の一実施例の製造方法によ
り作製された表面発熱型加熱ローラの一例であって、前
記図1に示す複写機10等に従来の表面発熱型加熱ロー
ラ30に代えて用いられるトナー定着用加熱ローラ(以
下、加熱ローラという)63を示す図である。この加熱
ローラ63は、ガラスから成る円筒状基体64と、その
円筒状基体64の外周面の両端部において環状に設けら
れた一対の電極66,66と、それら一対の電極66,
66の間に設けられて電極66,66の間に流された電
流により発熱する抵抗発熱体層68と、その抵抗発熱体
層68を保護すると共にトナーの付着を防止するために
その抵抗発熱体層68を覆う保護膜70とを備えてい
る。本実施例においては、上記円筒状基体64が電気絶
縁性基体に相当する。
【0026】上記円筒状基体64は、円筒状外周面を有
して加熱ローラ63の基体として機能するものであり、
ガラス円筒72とその外周面の全面を覆って固着された
ガラス皮膜74とから構成されて、例えば、全長 330mm
程度、外径12mm程度、肉厚 1.0mm程度の寸法を有してい
る。本実施例においては、上記ガラス円筒72が本体部
に、ガラス皮膜74が表層部にそれぞれ相当する。
【0027】上記ガラス円筒72は、例えば引き抜き加
工により製造された硬質ガラス(例えば、 SiO2 72wt
%、 B2O3 10wt%、 Al2O3 7wt% および少量のアルカ
リ金属、アルカリ土類金属から成り、その特性が熱伝導
率 0.0026cal/sec・cm・℃、比熱 0.17cal/g・℃、熱膨
張係数 5.2×10-6/ ℃、軟化点 790℃、徐冷点 595℃、
歪点 560℃、ビッカース硬度 650kg/mm2、ヤング率 70G
Pa程度のガラス等)から成るものであり、例えば、外径
が 11.95mm程度の円筒状に形成されている。また、上記
ガラス皮膜74は、例えば低アルカリガラス(例えば、
PbO 70wt%程度、SiO2 20wt%程度、B2O3 10wt %程度
および少量のアルカリ金属から成り、その特性が熱伝
導率 0.0018cal/sec・cm・℃、比熱 0.14cal/g・℃、熱
膨張係数 4.9×10-6/ ℃、軟化点 540℃程度のガラス
等)から成るものであり、例えば25μm 程度の厚さに形
成されている。なお、本実施例においては、上記硬質ガ
ラスが第1のセラミックスに、低アルカリガラスが第2
のセラミックスにそれぞれ相当し、その硬質ガラスの歪
点が第1のセラミックスの熱変形温度に、低アルカリガ
ラスの軟化点が第2のセラミックスの溶融温度に対応す
る。
【0028】上記ガラス皮膜74は、例えば、上記低ア
ルカリガラスから成るガラスフリットおよびエチルセル
ロース等の樹脂をブチルカルビトールアセタート等の溶
剤に、それぞれ80wt%、 3wt%、17wt%の重量比となる
ように溶解・混合して調製したガラスペーストを、ガラ
ス円筒72の外周面に均一に塗布・乾燥した後、所定の
温度(上記低アルカリガラスの軟化点よりも十分に高
く、且つ上記硬質ガラスの歪点よりも十分に低い温度。
例えば 550℃程度)で加熱処理することにより生成され
たものである。このガラス皮膜74は、外周面が機械加
工によって除去されることにより所定の寸法・形状精度
とされており、これにより、円筒状基体64延いては加
熱ローラ63の形状精度が、例えば半径方向の円周振れ
が50μm 程度、真円度が 5μm 程度(何れもJIS B0621
に規定)と高くされている。なお、ガラス円筒72自体
は、外周面の機械加工を何等施されていない。
【0029】また、前記一対の電極66,66は、Ag
(銀)またはAg−Pd,Ag−Ptから成り、例えば 8μm 程
度の厚さで、両端からそれぞれ例えば25mm程度の位置ま
で設けられている。前記抵抗発熱体層68は、例えば両
端部からそれぞれ21mm程度までの部分を除く中間部に設
けられており、上記電極66,66は、抵抗発熱体層6
8にそれぞれ 4mm程度重ねられている。また、前記保護
膜70は、電極66,66の一部および抵抗発熱体層6
8の全面を覆うように、例えば両端部から15mm程度まで
の部分を除く中間部に設けられており、例えばディスパ
ージョン塗布法により厚さ25μm 程度に塗布形成された
フッ素樹脂(例えばポリテトラフルオロエチレン)皮膜
である。上記説明から明らかなように、保護膜70と電
極66,66とは、円筒状基体64の両端部においてそ
れぞれ10mm程度の幅(軸心方向の長さ)で重ねられてい
る。なお、ディスパージョン塗布法は、樹脂粉末(本実
施例においては、フッ素樹脂粉末)を水或いは有機溶剤
中に分散させ、これを素材表面(本実施例においては、
電極66および抵抗発熱体層68表面)に、例えばスプ
レー等により塗布し、乾燥・加熱処理するものである。
【0030】また、抵抗発熱体層68は、レジネートと
称される金属有機化合物(Metal Orgnic Compound :M
OC)を含む液状またはペースト状物から成るレジネー
ト膜を円筒状基体64の外周面に形成して加熱処理する
ことにより、例えば厚さ 0.7μm 程度の薄膜金属とされ
たものであり、加熱ローラ63の軸心方向両端部間の抵
抗値は例えば36Ω程度とされている。上記のレジネート
ペーストは、所定の金属成分をそれぞれ溶解して有機化
合物と反応させることにより生成されるレジネートをレ
ジンと混合・混練することにより得られるものであり、
例えば下記表1の金系レジネートペーストが用いられ
る。なお、下記金属成分のうち、Bi,Rh等は酸化物パウ
ダの形で混合されても良い。また、上記MOCとして
は、例えば金属アルコキシド、金属アセチルアセトネー
ト、金属カルボキシレート等が用いられる。
【0031】
【表1】
【0032】上記加熱ローラ63は、例えば、図4に示
す工程に従って作製されたものである。先ず、工程1に
おいて、例えば引き抜き加工した硬質ガラス円筒を所定
の長さで切断することにより前記の寸法・形状のガラス
円筒72を作製する。次いで、工程2,3において、そ
のガラス円筒72の外周面に前記低軟化点ガラスを含む
ガラスペーストを例えば 0.3mm程度の厚さで塗布して、
例えば 120℃程度の温度で数分乃至数十分程度乾燥する
ことにより、その外周面に低軟化点ガラスを含む未加熱
処理膜を形成する。そして、工程4において、例えばセ
ンタレスベルト研削機を用いてその未加熱処理膜の外周
面を機械加工により除去して、その外径を 12.05mm(す
なわち膜厚を0.05mm)程度とし、更に、工程5において
例えば 550℃で数分乃至数十分程度加熱処理することに
より、ガラス円筒72の外周面にガラス皮膜74が固着
された円筒状基体64が形成される。なお、工程4にお
いては、砥粒の粗さを#1500 →#3000 →#6000 と順次細
かくして加工を行った。また、本実施例においては、工
程2が塗布工程に、工程2および3が膜形成工程に、工
程4が機械加工工程に、工程5が加熱工程にそれぞれ対
応する。
【0033】続いて、工程6〜8において、前記表1に
示される組成で調合したレジネートペーストを、例えば
上記円筒状基体64の外周面のうち軸心方向の両端部か
らそれぞれ21mm程度の領域を除く中間部の全体に塗布
し、所定の条件で乾燥(例えば、数分程度熱風乾燥し、
更に70℃程度で仕上げ乾燥)を施してレジネート膜を形
成した後、例えば 525℃で加熱処理することにより、そ
のレジネート膜が薄膜化して前記抵抗発熱体層68が形
成される。その後、工程9〜11において、導電体厚膜
ペースト(例えばAg厚膜ペースト)を、例えば円筒状基
体64の軸心方向両端部からそれぞれ25mm程度の領域に
塗布し、所定の温度(例えば 120℃程度)で乾燥した
後、更に例えば 525℃で加熱処理することにより、前記
電極66が形成される。そして、工程12において、例
えば円筒状基体64の軸心方向の両端部からそれぞれ15
mm程度の領域を除く全面にフッ素樹脂を塗布して例えば
100℃で乾燥し、例えば 360℃で加熱処理することによ
り、前記保護膜70が形成され、前記加熱ローラ63が
得られる。
【0034】なお、上記説明から明らかなように、本実
施例においては、ガラスペーストからガラス皮膜74を
生成する際の加熱処理温度が、円筒状基体64の外周面
に備えられる抵抗発熱体層68、およびその抵抗発熱体
層68に電圧を印加するために同様にその外周面に備え
られる電極66等を形成する際の処理温度よりも十分に
高くなるように、そのガラス皮膜74を構成する低アル
カリガラスの組成が選ばれている。
【0035】上記の図4に示される工程のうち、ガラス
円筒72或いは円筒状基体64(以下、特に区別を要し
ないときはガラス円筒72等という)の外周面にガラス
ペースト、レジネートペーストおよび導電体厚膜ペース
トをそれぞれ塗布する工程2,6,9は、例えば、図5
(a) ,(b) に模式的に示される膜形成装置76を用いて
行われたものである。この膜形成装置76は、前記ガラ
ス円筒72等を保持してその軸心回りに回転させる回転
装置78と、その回転装置78によって回転させられて
いるガラス円筒72等の外周面に上記の各ペーストを塗
布するペースト塗布装置80とから構成されている。
【0036】上記図5(a) において、回転装置78は、
ガラス円筒72等を一端で支持すると共に回転させるた
めのモータ82と、ガラス円筒72等を他端で支持する
と共に図示しないバネ等の付勢力に従ってガラス円筒7
2等をそのモータ82に向かって押圧することによって
回転可能に保持する軸受84とを備えている。これらモ
ータ82或いは軸受84には、図示しない取付部に、ガ
ラス円筒72等の軸心方向(すなわち図の左右方向)の
任意の位置へ移動させ且つ固定するための移動機構が備
えられており、種々の長さのガラス円筒72等を保持し
得るように構成されている。
【0037】一方、ペースト塗布装置80は、回転装置
78に固定されたガラス円筒72等に向かって所定のペ
ーストを吐出するためのペースト吐出部86と、ペース
トを蓄え且つそのペーストをペースト吐出部86に供給
するシリンダ88とを有するペースト吐出装置90と、
外周面に雄ねじを有してそのペースト吐出装置90をガ
ラス円筒72等の軸心方向に移動可能に支持するボール
ネジ92と、そのボールネジ92を一端部において回転
可能に支持する支持部材94と、ボールネジ92を他端
部において支持すると共に回転させるためのモータ96
とを備えている。ペースト吐出装置90は、ガラス円筒
72等の外周面にペーストを供給するために、モータ9
6の回転に従ってボールネジ92の長手方向に沿って何
れかの方向に移動させられると共に、図示しない駆動機
構によってガラス円筒72等の軸心方向とは垂直な二方
向(すなわち、図の上下方向および紙面に垂直な方向)
に移動可能とされており、種々の直径のガラス円筒72
等に対して適切な位置に位置させられる。
【0038】なお、上記ペースト吐出部86は、可撓性
を有する接続管98によってシリンダ88に接続されて
おり、その先端部には、例えば外径0.36mm、内径0.18mm
程度で曲げ弾性を有する例えばステンレス製の吐出細管
100を備えている。ガラス円筒72等に所定のペース
トを塗布するに際しては、図5(b) に示すように、上記
吐出細管74がその先端がガラス円筒72等の回転方向
に向かうように撓ませられた状態でその外周面に接触さ
せられる一方、図5(a) に示される圧力供給装置(空気
圧を供給するコンプレッサやシリンダ88内に設けられ
た図示しないピストンを駆動する油圧回路やモータ等)
102から、シリンダ88内のペーストに圧力が供給さ
れることにより吐出細管100からそのペーストが吐出
される。
【0039】また、前記モータ82,72、および圧力
供給装置102は、何れもCPU,RAM,ROM等か
ら構成された制御装置104に接続されている。制御装
置104には、ガラス円筒72等の処理に先立って、そ
のガラス円筒72等の寸法等や各ペーストの塗布厚み等
に応じた設定が為されてRAMに記憶される。そして、
そのRAMに記憶された設定データに基づき、予めRO
Mに記憶されたプログラムに従って、例えば、ガラス円
筒72等の軸心方向におけるそのガラス円筒72等とペ
ースト吐出装置90の相対位置に関連して、例えば圧力
供給装置102の設定圧力すなわちペースト吐出部86
の吐出細管100から所定のペーストを吐出する際の吐
出圧や、上記モータ82,96の回転数すなわちペース
ト吐出装置90の軸心方向移動速度・移動範囲およびガ
ラス円筒72等の回転速度等が、適宜変更制御される。
【0040】以下、上記膜形成装置76を用いてガラス
皮膜74等を形成する方法を説明する。先ず、前記ガラ
スペーストをシリンダ88内に投入すると共に、前記ガ
ラス円筒72を図5に示されるように回転装置78に固
定する。続いて、ペースト吐出装置90がガラス円筒7
2の軸心方向の一端側(すなわち、図5(a) における右
端或いは左端の位置)に位置させられた状態で、図5
(b) に示されるようにペースト吐出部86を水平面に対
して所定の傾き角度(例えば30°程度)とし、且つ吐出
細管100の先端がガラス円筒72の外周面に押圧され
るようにそのペースト吐出装置90を図の上下方向に移
動させる。これにより、その吐出細管100の先端部は
その先端がガラス円筒72の回転方向に向かうように、
その曲げ弾性力に抗して曲げられる。次いで、制御装置
104を起動してガラス円筒72の寸法やガラスペース
トの塗布厚み等を設定し、図示しない開始スイッチを操
作すると、制御装置104のROMに予め記憶されたプ
ログラムに従って、ガラス円筒72の外周面へガラスペ
ーストが塗布される。
【0041】すなわち、回転工程において、モータ82
が回転させられてガラス円筒72が図5(b) の矢印方向
に所定の回転速度(例えば120rpm程度)で回転させら
れ、吐出工程において、圧力供給装置102から所定の
圧力(例えば 1.8kg/cm2 程度)が供給されることによ
り、シリンダ88内に充填されたガラスペーストが吐出
細管100の先端から吐出させられる。同時に、移動工
程において、モータ96が回転させられることにより、
ペースト吐出装置90がガラス円筒72の軸心方向に沿
って水平方向に所定の速度(例えば15mm/min 程度)で
移動させられる。これらの回転速度,圧力,移動速度等
は、前記ガラス皮膜74の膜厚が得られるように設定さ
れたものである。これにより、吐出細管100は、ガラ
ス円筒72の外周面を螺旋状に移動させられ、その外周
面にはガラスペーストがガラス円筒72の軸心方向に所
定の幅で重ねられながら螺旋状に塗布される。なお、ガ
ラスペーストは比較的高い流動性を有するように調整さ
れているため、上記のように一部重なるように塗布され
ているにも拘らず、その表面は塗布直後から比較的滑ら
かとなり、比較的均一な厚みが得られる。
【0042】このようにして、ペースト吐出部86の吐
出細管100がガラス円筒72の他端側まで移動させら
れ、ガラス円筒72の軸心方向全長に亘ってガラスペー
ストが塗布されると、例えば、ペースト吐出装置90が
上方に移動させられることにより、吐出細管100がガ
ラス円筒72から離隔させられる。そして、所定時間
(例えば数分乃至十数分程度)ガラス円筒72の回転が
継続されることにより、外周面に塗布されたガラスペー
ストのレベリングが行われて、塗布時および重力による
膜厚のばらつきが抑制される。この後、前述のように乾
燥、加熱処理が行われることにより、ガラス円筒72の
外周面にガラス皮膜74が形成される。
【0043】上記のように円筒状基体64が作製された
後、レジネートペーストおよび導電体厚膜ペーストがそ
の外周面へ上記ガラスペーストの場合と同様にして塗布
され、抵抗発熱体層68および一対の電極66,66が
形成され、前記図4に示す工程7および工程10以下の
乾燥工程等が行われることにより、前記加熱ローラ63
が得られるのである。なお、これらのペーストが塗布さ
れる際にも、制御装置104には、塗布されるペースト
の種類や例えば加熱ローラ63の抵抗値分布に従って決
定される塗布パターン等に応じて種々の設定が為され、
その設定に応じたプログラムが制御装置104のROM
に予め記憶された複数のプログラムから選択されること
により、そのプログラムに従って、円筒状基体64等の
外周面へレジネートペースト或いは導電体ペーストが塗
布される。
【0044】以上のようにして製造される前記加熱ロー
ラ63を、従来の加熱ローラ30と同様に複写器10に
用いた場合の評価結果を以下に説明する。先ず、昇温速
度および温度分布を測定したが、 250W程度の印加で10
秒後にその表面が 195℃に達し、このとき軸心方向の温
度分布は±3 ℃以下であった。一般に加熱ローラ63,
30は、 180℃程度の温度で用いられ、その際における
軸心方向温度分布は±3 ℃程度以下であることが望まれ
るが、本実施例の加熱ローラ63は、この条件を十分に
満足するものであることが確認された。
【0045】次いで、加熱ローラ63の定着特性を、従
来の加熱ローラ30(すなわち、ガラス皮膜74が設け
られず何等機械加工が施されていないガラス円筒72を
電気絶縁性基体として用いたもの)を比較例として評価
した。但し、加熱ローラ63,30の外径を等しくする
ため、比較例には外径が 12.00mmのガラス円筒72を用
いた。
【0046】なお、評価に際しては、加圧ローラ32の
弾性体層50のゴム硬度を40°(JIS K 6301に規定され
るJIS A 形)、バネ52および加圧バネ58により加熱
ローラ63(30)および加圧ローラ32間に加えられ
る荷重を両端部においてそれぞれ 3kg、記録紙26の移
動速度を線速(送り方向の速度)47mm/sec とし、加熱
ローラ63,30に印加する電圧を 100Vとしてその表
面温度が 180℃となるように制御した。また、記録紙2
6は、JIS P 8111に準拠したものを用い、試験環境は温
度20℃、湿度65%とした。定着特性は、図6に示される
ように、φ20mmの円形ドット106を縦(すなわち記録
紙26の移動方向)横それぞれ等間隔(例えば円形ドッ
ト106の中心間距離が、縦方向で50mm程度、横方向で
60mm程度)に格子状に配置したテストパターンを用いる
ことにより、それぞれの箇所の定着性及び画像のゆがみ
を測定して行った。
【0047】上記の定着性の測定は、「電子写真技術の
基礎と応用(コロナ社;昭和63年発行)」第 702頁第20
行乃至第 703頁第 1行に記載されているテープ剥離法に
よって行った。テープ剥離法は、上記円形ドット106
の上に一定の接着力を有するテープを貼りつけ、テープ
の上を 1kgの円筒状の錘をゆっくり2往復させた後、そ
のテープを記録紙26の記録面に対して 180度の角度で
剥離し、剥離前後の円形ドット106の個々の濃度を反
射濃度計等で測定することにより下記 (1)式に従って濃
度変化率を算出するものである。表2に濃度変化率の測
定結果を比較例と共に示す。表から明らかなように、何
れの円形ドット106においても10%以下の低い濃度変
化率であった。なお、画像のゆがみの測定は肉眼観察に
より行ったが、特に問題となるゆがみは見出せなかっ
た。 濃度変化率=(剥離前濃度−剥離後濃度)×100 /剥離前濃度 ・・・ (1)
【0048】
【表2】
【0049】また、上記定着特性の評価においては、加
熱ローラ63の破損は何等生じず、十分に高い機械的強
度を有することが確かめられた。なお、加熱ローラ63
そのものの機械的強度は測定していないが、その測定に
代えてその機械的強度を支配すると考えられる円筒状基
体64の機械的強度を、抵抗発熱体層68等を何等設け
ていない状態で比較例と共に測定した結果を図7に示
す。測定はJIS R 1601(1981)に準拠した3点曲げによ
り、支持長(スパン)を80mmおよび 160mmとして行っ
た。図から明らかなように、本実施例の加熱ローラ63
に用いられる円筒状基体64は、外周面の機械加工が施
されているにも拘らず、何等加工を施していない比較例
と同等の機械的強度を有している。なお、強度測定は本
実施例、比較例共同じ支持長で行っているが、図は本実
施例のデータを右側にずらして表示している。
【0050】上述のように、本実施例によれば、加熱ロ
ーラ63の円筒状基体64は、第1のセラミックスであ
る硬質ガラスから成るガラス円筒72の外周面に第2の
セラミックスである低アルカリガラスを含む未加熱処理
膜を形成する工程2および3(膜形成工程)と、その未
加熱処理膜の外周面を機械加工により除去することによ
り、その外周面を所定の精度に加工する工程4(機械加
工工程)と、その未加熱処理膜を低アルカリガラスの軟
化点よりも高く且つ硬質ガラスの歪点よりも低い所定の
処理温度( 550℃)で加熱することにより、ガラス円筒
72の外周面に低アルカリガラスから成るガラス皮膜7
4を生成する工程5(加熱工程)とを、含む工程により
製造される。そのため、ガラス円筒72には外周面の研
削加工が何等施されず、その外周面に形成された未加熱
処理膜に機械加工が施されて、外周面が除去される。
【0051】上記により、円筒状基体64は、機械加工
が施されてその外周面が除去されることにより、所定の
寸法・形状精度を備えさせられるが、ガラス円筒72に
は何等外周面の研削加工が施されていないことから、そ
の機械的強度は低下させられない。一方、ガラス皮膜7
4の外周面には上記の機械加工により研削傷が存在する
が、ガラス皮膜74が生成される際の加熱処理温度は低
アルカリガラスの軟化点よりも高く且つ硬質ガラスの歪
点よりも低い温度とされていることから、両者の反応は
殆ど生じず、その間には組織の境界が存在し、外部応力
が作用した際にも、外周面の研削傷を起点とする欠陥の
進行はガラス皮膜74のみに止まるため、ガラス円筒7
2の機械的強度には影響しない。したがって、前述のよ
うに高い機械的強度と高い寸法・形状精度を共に備え、
複写機10に用いられた際にもトナーの転写ムラや定着
ムラが生じ難い加熱ローラ63が得られるのである。
【0052】すなわち、従来の加熱ローラ30において
は、電気絶縁性基体としてセラミックスや引き抜き加工
により形成されたガラスから成る円筒状基体が用いられ
ていたが、そのような円筒状基体は寸法・形状精度が一
般に低く、下記表3に示すように、せいぜい± 1〜2 %
程度の外径公差しか期待できず、円周振れや真円度も十
分な値でなかった。そのため、従来の内部発熱型加熱ロ
ーラに用いられていた金属製(例えばアルミニウム合
金)円筒の外径公差に比較して極めて公差が大きく、転
写ムラや定着ムラが生じ易いという問題があった。上記
従来の金属製円筒は、一般に外周面の機械加工が施され
ることによりその精度が高められているが、セラミック
スやガラス等から成る円筒状基体の場合には外周面に加
工傷が生じると大きく強度が低下するため、同様な機械
加工を施すことができなかったのである。
【0053】
【表3】
【0054】これに対して、本実施例の加熱ローラ63
に用いられる円筒状基体64は、上記表3に示すように
極めて高い寸法・形状精度を有するため、高い寸法・形
状精度の加熱ローラ63が得られ、複写機10等に用い
られた際にも上述のようにトナーの転写ムラや定着ムラ
が生じ難いのである。なお、上記表3において、「円周
振れ」は、円筒状基体64の両端部をVブロックにより
支持して回転させ、軸心方向中央部の高さの変位をダイ
ヤルゲージで測定して求めたものであり、「外径」およ
び「真円度」は、軸心方向中央部の外径をその回転方向
に対して4箇所測定し、平均値を外径として、最大値と
最小値との差を真円度としてそれぞれ求めたものであ
る。また、測定サンプル数は何れもn=20である。ま
た、上記表から明らかなように、本実施例の円筒状基体
64は、比較例すなわち何等加工を施さないガラス円筒
と同様な表面粗さを有している。
【0055】また、本実施例においては、工程4の未加
熱処理膜の外周面の除去加工後に、工程5の加熱処理工
程が行われ、その加熱処理工程の後においては、円筒状
基体64に何等機械加工が施されていないため、未加熱
処理膜の外周面に生じる加工傷は、加熱処理工程におい
て滑らかにされる。したがって、加熱ローラ63に外力
が作用した場合にも、その表面の加工傷の進行が抑制さ
れ、一層高い機械的強度を有する加熱ローラ63が得ら
れる。
【0056】また、本実施例においては、ガラス円筒7
2を構成する硬質ガラスとガラス皮膜74を構成する低
アルカリガラスとの熱膨張係数が概ね等しいため、抵抗
発熱体層68に通電されることにより加熱ローラ63が
発熱させられた際にも、それらの熱膨張の差に起因して
発生する熱応力が比較的小さくなり、使用中の破損が一
層抑制される。
【0057】また、本実施例においては、ガラス円筒7
2の外周面に低アルカリガラスから成るガラス皮膜74
を設けるための未加熱処理膜は、ガラスペーストを塗布
する工程2(塗布工程)を含む工程により形成される
が、その工程2(塗布工程)では、回転工程においてガ
ラス円筒72がその軸心回りに回転させられている状態
で、吐出工程においてペースト吐出装置90の吐出細管
100の先端部がそのガラス円筒72の外周面に接触さ
せられ、且つ、その吐出細管100を通してガラスペー
ストがその外周面上に吐出されると共に、移動工程にお
いてそのペースト吐出装置90がガラス円筒72の軸心
方向に平行な方向に相対移動させられる。すなわち、ペ
ースト吐出装置90の吐出細管100は、ガラスペース
トをガラス円筒72の外周面上に吐出しながらその外周
面上を螺旋状に移動させられて、そのガラスペーストが
ガラス円筒72の外周面上に塗布されることとなる。
【0058】そのため、ガラス円筒72の外周面上には
ガラスペーストがその周方向に連続的に塗布される。し
たがって、ガラス円筒72の外周面に設けられる未加熱
処理膜の膜厚が周方向に均一となって、工程4の外周面
除去加工における必要な加工除去量を比較的小さくする
ことができる。
【0059】なお、上記の工程4(塗布工程)において
は、ガラス円筒72の外周面にガラスペーストが塗布さ
れた後に、そのガラス円筒72をその軸心回りに回転さ
せたままそのガラスペーストのレベリングを行うレベリ
ング工程が設けられているため、塗布時および重力によ
る未加熱処理膜の膜厚のばらつきが抑制される。
【0060】また、本実施例においては、抵抗発熱体層
68がレジネートペーストを塗布・乾燥・加熱処理する
ことにより形成されているため、良好な表面粗さを有す
ると共に使用時に熱応力による断線が生じ難い。すなわ
ち、レジネートは、液状またはペースト状であって、金
属が有機物と化学的に結合できる程度に極めて微細にな
っているため、加熱処理後に良好な表面粗さと薄い緻密
な金属組織が得られる。また、レジネート膜から得られ
た抵抗発熱体層68は、金属が原子レベルで結合してい
るため、使用時の熱応力による断線が生じ難く、前記の
ように薄い膜厚で使用することが可能である。なお、従
来のように厚膜ペーストを用いて形成した場合は抵抗発
熱体層の金属はガラス成分によって結合されることによ
り粒子レベルで互いに接触しているだけであるため、熱
応力に対する抵抗力が低く、数μm 以下の膜厚にするこ
とが困難である。
【0061】次に、本発明の他の実施例を説明する。な
お、以下の説明において前述の実施例と共通する部分
は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0062】図8は他の実施例に係る加熱ローラ63の
他の製造方法を示す工程流れ図である。本実施例の製造
方法は工程2〜4を除けば前記図4に示される工程流れ
図と同様であるため、異なる部分のみ示している。工程
1においては、前述の実施例と同様に、例えば引き抜き
加工した硬質ガラス円筒を所定の長さに切断することに
よりガラス円筒72を作製する。但し、以下の研削加工
工程における研削代を考慮してガラス円筒72の外径は
12.5mmとした。続く工程2に代わる工程2′において
は、例えばセンタレスベルト研削機を用いてガラス円筒
72の外周面を研削することにより、その外径を 11.95
mm程度とした。本実施例においては、この工程2′が研
削加工工程に対応する。なお、工程2′においては、砥
粒の粗さを#200→#400→#800→#1500 →#3000 →#6000
と順次変更して加工を行っており、ガラス円筒72の寸
法・形状精度は、円周振れが50μm 程度、外径公差が 1
1.95±0.010mm 程度、真円度が 5μm 程度とされてい
る。
【0063】次いで、工程3,4に代わる工程3′,
4′において、そのガラス円筒72の外周面に前記低軟
化点ガラスを含むガラスペーストを例えば50μm 程度の
厚さで塗布して、例えば 120℃程度の温度で数分乃至数
十分程度乾燥することにより、その外周面に低軟化点ガ
ラスを含む未加熱処理膜を形成する。この後、工程5の
加熱処理工程において、例えば 550℃程度の温度で加熱
処理することにより、例えば25μm 程度の厚さのガラス
皮膜74が生成され、ガラス円筒72の外周面にガラス
皮膜74が固着された円筒状基体64が形成される。な
お、本実施例においては、工程3′が塗布工程に、工程
3′および4′が膜形成工程に、工程5が加熱工程にそ
れぞれ対応する。以下、前述の実施例の工程6以下と同
様な工程で抵抗発熱体層68等が形成されることによ
り、前記図3に示されるものと同様な加熱ローラ63が
得られる。
【0064】なお、上記の製造工程においては、前述の
ガラスペーストに代えて、ガラス皮膜74を形成するた
めのガラスペーストとして、例えば低アルカリガラス
(例えば、 PbO 76.25wt%程度、 ZnO 11.25wt%程度、
B2O3 12.50wt%程度 および少量のアルカリ金属から成
り、その特性が熱伝導率 0.0023cal/sec・cm・℃、比熱
0.16cal/g・℃、熱膨張係数 4.4×10-6/ ℃、軟化点 54
7℃程度のガラス等)から成るガラスフリットと、エチ
ルセルロース等の樹脂とをターピネオール等の溶剤に、
それぞれ80wt%、 2wt%、18wt%の重量比となるように
溶解・混合して調製したものを用いた。但し、前述のガ
ラスペーストと同じものを用いても差し支えない。
【0065】上記の加熱ローラ63についても、前述の
実施例と同様に図6に示すテストパターンを用いて、従
来の円筒状基体が用いられた加熱ローラと比較して複写
機10等に用いられた場合の定着特性等を評価した。そ
の結果、本実施例においても、肉眼で確認できる画像の
ゆがみ(すなわち転写ムラ)はなく、また、円形ドット
106の濃度変化率は何れの位置においても10%以下と
低く、良好な定着性が確認できた。また、上記定着特性
の評価においては、加熱ローラ63の破損は何等生じ
ず、本実施例の製造方法による場合にも十分に高い機械
的強度を有することが確かめられた。
【0066】ここで、本実施例においては、加熱ローラ
63の円筒状基体64は、硬質ガラスから成るガラス円
筒72の外周面を所定の精度に研削加工する工程2′
(研削加工工程)と、その研削加工を施されたガラス円
筒72の外周面に硬質ガラスよりも低い軟化点を有する
低アルカリガラスを含む未加熱処理膜を形成する工程
3′,4′(膜形成工程)と、その未加熱処理膜を低ア
ルカリガラスの軟化点よりも高く且つ硬質ガラスの歪点
よりは低い所定の処理温度( 550℃)で加熱することに
より、その未加熱処理膜からガラス皮膜74を生成する
工程5(加熱工程)とを含む工程により製造される。そ
のため、ガラス円筒72の外周面は研削加工により前述
のように高い寸法・形状精度にされると共に、ガラス皮
膜74により覆われることとなるが、そのガラス皮膜7
4を生成する際の加熱処理温度では、ガラス円筒72は
何等変形させられないため研削加工後の精度を保ち、ガ
ラス皮膜74の外周面はそのガラス円筒72の外周面に
倣って形成される。
【0067】上記により、ガラス円筒72の加工精度に
従って円筒状基体64の外周面の高い寸法・形状精度が
得られると共に、ガラス円筒72の外周面に生じた研削
傷はガラス皮膜74により覆われ、且つ、ガラス皮膜7
4を構成する低アルカリガラスにより埋められることと
なり、外部応力が作用した際にもその研削傷を起点とす
る欠陥の進行が抑制される。したがって、高い機械的強
度と高い寸法・形状精度を共に備え、複写機10に用い
られた際にもトナーの転写ムラや定着ムラが生じ難い加
熱ローラ63が得られることとなる。
【0068】すなわち、下記表4に示すように、本実施
例の円筒状基体64も、前述の実施例の場合と同様、高
い寸法・形状精度を有するため、複写機10等に用いら
れた場合に転写ムラや定着ムラが低減されるのである。
なお、下記表4において、比較1は、外周面の研削加工
が全く施されていない従来の円筒状基体であり、比較2
は、外周面の研削加工のみを施し、ガラス皮膜74を設
けていない(すなわち、図8の工程流れ図において工程
3′乃至5が施されていない)円筒状基体である。ま
た、測定サンプル数は何れもn=20である。
【0069】
【表4】
【0070】なお、上記表4において、研削加工のみを
施した比較2の円筒状基体は、円周振れ、外径公差、真
円度共良好な値を示しており、この比較2の円筒状基体
を用いた加熱ローラについて図6に示すテストパターン
で定着特性の評価を行ったところ、画像のゆがみもな
く、下記表5に示すように定着性も良好であった。しか
しながら、この加熱ローラでは、定着特性の評価後に両
端部にクラックが発生しており、機械的強度が不十分で
あった。
【0071】
【表5】
【0072】すなわち、脆性材料である硬質ガラスから
成るガラス円筒72に研削加工(工程2′)を施すと、
その表面には研削傷が生じ、例え前述のように砥粒を順
次 #6000程度まで細かくしながら加工を行っても、例え
ば直径 5〜10μm 程度、深さ2〜 5μm 程度の凹状の研
削傷がガラス円筒72の外周面に無数に存在することと
なる。そのため、図9に▲および破線で示すようにガラ
ス円筒72の機械的強度は大きく低下し、使用中の破損
が生じ得るのである。
【0073】これに対して、本実施例の円筒状基体64
の場合には、前述のようにガラス円筒72の外周面に無
数に存在する凹状の研削傷がガラス皮膜74により埋め
られることとなるため、研削加工が施されているにも拘
らず、図に示されるように外周面に何等研削加工を施し
ていないガラス円筒72から成る円筒状基体と同様な機
械的強度を有するのである。なお、機械的強度の測定
は、前述の実施例の場合と同様にJIS R 1601に準拠した
3点曲げにより支持長を80mm,160mm として行った。
【0074】また、本実施例においても、ガラス皮膜7
4を生成するためのガラスペーストは前記膜形成装置7
6により形成することが可能である。そのようにする場
合には、ガラス円筒72の外周面上には低アルカリガラ
スを含むペーストがその周方向に連続的に塗布される。
したがって、ガラス円筒72の外周面に設けられる未加
熱処理膜の膜厚が周方向に均一となって、研削加工工程
で得られたガラス円筒72の寸法・形状精度の低下が可
及的に小さくされて、円筒状基体64の一層高い寸法・
形状精度が得られることとなる。
【0075】また、本実施例においても、ガラス円筒7
2を構成する硬質ガラスとガラス皮膜74を構成する低
アルカリガラスとの熱膨張係数の差が比較的小さいた
め、抵抗発熱体層68に通電されることにより加熱ロー
ラ63が発熱させられた際にも、それらの熱膨張の差に
起因して発生する熱応力が比較的小さくなり、使用中の
破損が一層抑制される。
【0076】図10は、前述の図4或いは図8に示され
る工程に従って製造された他の円筒状基体108を軸心
方向に沿った断面で示す図である。円筒状基体108
は、前記の円筒状基体64と同様に、長さ 330mm程度、
外径12mm程度の前記のガラス円筒72の外周面にガラス
皮膜74が設けられて構成されているが、そのガラス皮
膜74の厚みは軸心方向の中央部で最も薄く(例えば0.
02mm程度に)、両端部で最も厚く(例えば0.17mm程度
に)されている。そのため、円筒状基体108全体とし
ては軸心方向の中央部の外径dcが例えば 12.00mm程度、
両端部の外径deが例えば 12.30mmとされて、その形状が
逆クラウン量が 150μm 程度の鼓状(逆クラウン形状)
とされている。また、円筒状基体108は、例えば、中
央部の円周振れが25μm 程度、表面粗さが 0.4Rz程度と
されている。なお、上述のように逆クラウン量は極めて
小さいものであるが、図10においては便宜上誇張して
描かれている。
【0077】上記円筒状基体108は、例えば以下のよ
うにして製造される。すなわち、前記図4に示される工
程に従う場合には、工程2,3において、ガラス円筒7
2の外周面に前述の円筒状基体64の場合と同様に略均
一な厚みの低アルカリガラスから成る未加熱処理膜を形
成し、次の工程4(機械加工工程)において、後の工程
5の加熱処理時に上記外径寸法が得られるように、その
外周面を機械加工で鼓状に除去する。このとき、前述の
実施例と同様に砥粒の粒度を次第に細かくして加工を行
うが、加工装置としては例えば円板状の砥石を備えた円
筒研削盤等が用いられ、砥石軸をガラス円筒72の軸心
方向に沿って移動させつつ、その軸心方向位置に対応し
て切込量を変化させることにより、図10に示される鼓
形状が得られる。
【0078】また、前記図8に示される工程に従う場合
には、工程2′において、ガラス円筒72の外周面を研
削加工により除去することにより、その外径を例えば 1
1.96mm程度とした後、工程3′において、前記の膜形成
装置76を用いて、前記のガラスペーストをその外周面
に塗布する。このとき、例えば、圧力供給装置102か
らシリンダ88に供給される圧力を一定に維持した状態
で、ペースト吐出装置90のボールネジ92の軸心方向
位置に対応して、その移動速度がガラス円筒72の軸心
方向両端部においては遅く、中央部に向かうに従って早
く、中央部から離隔するに従って遅くなるようにモータ
96の回転数が変化させられる。これにより、ガラス円
筒72の両端部から中央部に向かうに従って塗布量が少
なくなるようにガラスペーストが塗布され、図10に示
される鼓形状が得られる。なお、図4に示される工程に
従う場合にも、上記のように塗布量を変化させることに
より、工程4(機械加工工程)における外周面の除去量
を可及的に少なくすることが可能である。
【0079】上記の円筒状基体108も、抵抗発熱体層
68や電極66,66等がその外周面の鼓形状に沿って
設けられることにより、前述の加熱ローラ63の電気絶
縁性基体として用いられ得るものであり、このような加
熱ローラ63も図1に示される複写機10のトナー定着
用加熱ローラとして用いられ得る。但し、この円筒状基
体108が用いられる場合には、加圧ローラ32の形状
を加熱ローラ63に対応した形状、すなわち軸心方向の
中央部で最も外径が大きく、両端部で最も外径が小さい
クラウン量 150μm の太鼓状とする必要がある。
【0080】複写機10に上記加熱ローラ63が用いら
れた場合の定着特性を、前記円筒状基体64が用いられ
た加熱ローラ63の場合と同様に、図6のテストパター
ンを用いて評価した。その結果、肉眼で確認できる転写
ムラすなわち画像のゆがみはなく、下記表6に示すよう
に、定着性は記録紙26上の何れの位置においても濃度
変化率が10%以下と良好であった。また、定着特性の評
価後にも、加熱ローラ63に何等クラック等は生じず、
十分に高い機械的強度を備えていることが確認できた。
【0081】
【表6】
【0082】しかも、本実施例においては、加熱ローラ
63が逆クラウン形状に、加圧ローラ32がクラウン形
状にされているため、軸心方向の中央部と端部とで速度
差が生じて、その間を通過させられる記録紙26には、
加熱ローラ63の軸心方向すなわち記録紙26の紙面上
において移動方向に垂直な方向に引っ張り力が作用す
る。そのため、両ローラ30,32間の加圧条件を複雑
に制御したり、定着器34の前段に速度制御も兼ねた搬
送機構を設けることなく、記録紙26のしわの発生を好
適に抑制することが可能である。
【0083】因みに、加熱ローラ63および加圧ローラ
32が何れもストレート形状とされている場合には、例
えその形状精度が高められていても、記録紙26自身の
吸脱湿による寸法変化のため、例えば、記録紙26の移
動方向の後端側で移動方向に垂直な幅方向の中央部(す
なわち図6におけるB列の3乃至5行近傍)にしわが生
じ易いという問題があった。そのため、前述のストレー
ト形状の円筒状基体64から製造された加熱ローラ63
が用いられる場合にしわの発生を抑制するためには、加
熱ローラ63,加圧ローラ32間の加圧条件を複雑に制
御したり、定着器34内の温湿度を正確に制御する等が
必要であった。
【0084】また、本実施例において、図8の工程に従
う場合には、ガラスペーストの塗布と逆クラウン形状の
形成が同時に行われるため、ストレート形状の円筒状基
体64を製造する場合に比較して工程数が増加せず、比
較的低コストで逆クラウン形状の加熱ローラ63を得る
ことが可能である。
【0085】以上、本発明の一実施例を図面を参照して
詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施され
る。
【0086】例えば、前述の図4に工程を示される実施
例においては、工程4において外周面の除去加工を施し
た後に工程5の加熱処理を行ってガラス皮膜74を生成
したが、この順序は反対とすることもできる。すなわ
ち、ガラスペーストを塗布・乾燥した後、直ちに加熱処
理してガラス皮膜74を生成した後、機械加工(研削加
工)を施しても良い。このようにすれば、機械加工工程
(工程4)の後にガラスペーストが加熱処理により収縮
させられないため、一層高い寸法・形状精度を得ること
ができる。但し、機械的強度を可及的に高くするために
は、実施例の順序が好ましく、何れを先にするかは両者
の兼ね合いから決定する必要がある。
【0087】また、実施例においては、ガラス円筒72
の外周面に未加熱処理膜を形成するに際して、そのガラ
ス円筒72を軸心回りに回転させつつ、ペースト吐出装
置90をその軸心方向に沿って移動させることによりガ
ラスペーストを塗布する膜形成装置76を用いたが、こ
れに代えて、例えば、曲面印刷機による直接印刷や、転
写法等により未加熱処理膜を形成しても良い。
【0088】また、実施例においては、ガラス皮膜74
を生成するためのガラスペーストとして、PbO-SiO2-B2O
3 系ガラスフリットやPbO-ZnO-B2O3系ガラスフリットを
用いたが、熱膨張係数がガラス円筒72を構成する硬質
ガラスと同様であり、その軟化点がその硬質ガラスの徐
冷点よりも低いものであれば、種々のガラスフリットが
用いられ得る。但し、円筒状基体64等の外周面或いは
内周面に抵抗発熱体層68等を加熱生成する場合には、
軟化点がそれらの加熱生成温度よりも高いことが必要で
ある。なお、ガラス皮膜74の加熱生成時のガラス円筒
72の変形すなわち寸法・形状精度の低下を一層確実に
抑制するためには、ガラス皮膜74を形成するためのガ
ラスフリットの軟化点が、ガラス円筒72を構成する硬
質ガラスの歪点よりも低いことが望ましい。
【0089】また、ガラスペーストを調製する際に添加
する樹脂としては、実施例で示したエチルセルロースの
他に、種々のセルロース系樹脂や、ロジン系或いはフェ
ノール系樹脂等が用いられ得る。添加する樹脂は、ガラ
スペーストの加熱処理温度や、必要とされる未加熱処理
膜の乾燥強度等により適宜決定される。
【0090】また、前述の実施例において、PbO-ZnO-B2
O3系ガラスフリットを用いる場合に溶剤としてターピネ
オールを用いたが、乾燥後の膜強度が適度に強いためブ
チルカルビトールアセタートの方が好ましく、PbO-SiO2
-B2O3 系ガラスフリットを用いる場合と同様にブチルカ
ルビトールアセタートが用いられても良い。
【0091】また、前述の実施例においては、電気絶縁
性基体としての円筒状基体64は、本体部として硬質ガ
ラスから成るガラス円筒72を、表層部として低アルカ
リガラスから成るガラス皮膜74を備えていたが、本体
部としては、低アルカリガラスや石英ガラス、アルミナ
等の他のセラミックスから成る円筒が用いられても良
く、表層部の組成は、その本体部の組成に応じて前述の
温度条件を満足する範囲で適宜変更される。例えば、石
英ガラスやアルミナから成る円筒の外周面に低アルカリ
ガラスから成るガラス皮膜74が設けられても良く、或
いは、アルミナから成る円筒の外周面にそれよりも融点
の低いアルミナから成る皮膜が設けられても良い。
【0092】また、実施例においては、抵抗発熱体層6
8をレジネートペーストから生成される薄膜金属によっ
て形成したが、シリンダ88内に厚膜抵抗ペーストを充
填して同様に塗布することにより、抵抗発熱体層68を
厚膜抵抗体から構成しても良い。また、レジネートペー
ストを用いる場合には、添加金属成分の一部を金属酸化
物パウダ或いは金属パウダの形態で混合しても良い。
【0093】また、電極66は、前述の実施例の膜形成
装置76によって形成しても良いが、曲面印刷機や転写
法等によって形成してもよい。電極66は、部分的に厚
くされていても特に問題とならないため、必ずしも膜形
成装置76によって形成しなくても良いのである。
【0094】また、実施例においては、円筒状基体64
の外周面に抵抗発熱体層68等が設けられた表面発熱型
の加熱ローラ63に本発明が適用された場合について説
明したが、本発明は、円筒状の外周面を有する電気絶縁
性基体を備えた加熱ローラであれば種々のものに適用さ
れる。例えば、本体部として、ガラス円筒72のような
円筒状体に代えて円柱状体が用いられた加熱ローラにも
適用され得、また、本体部としてガラス円筒72のよう
な円筒状体が用いられる場合には、その内周面に抵抗発
熱体層68等が形成される内面発熱型の加熱ローラにも
適用され得る。
【0095】また、実施例においては、本発明がトナー
定着用加熱ローラ63の製造に適用された場合を説明し
たが、本発明は、円筒状の外周面を有する電気絶縁性基
体を備え、その外周面を用いて均等に押圧しつつ加熱す
るものであれば、種々の用途の加熱ローラに適用され得
る。
【0096】また、実施例においては、抵抗発熱体層6
8と電極66との反応を避けるために、抵抗発熱体層6
8の加熱処理と電極66の加熱処理を別々に行ったが、
加熱処理時の反応が問題とならない材料を抵抗発熱体層
68および電極66に用いた場合には、例えば、抵抗発
熱体層68のレジネートペーストを塗布・乾燥後に、電
極66のペーストを印刷或いは塗布し、同時に加熱処理
しても良い。
【0097】その他、一々例示はしないが、本発明はそ
の主旨を逸脱しない範囲で種々変更が加えられるもので
ある。
【図面の簡単な説明】
【図1】複写機の構成を模式的に示す図である。
【図2】図1の複写機において、加熱ローラおよび加圧
ローラの支持構造を説明する図である。
【図3】本発明の一実施例の製造方法により製造される
加熱ローラを示す図である。
【図4】本発明の一実施例の製造方法の工程流れ図であ
る。
【図5】(a) は図4の製造方法に適用される膜形成装置
の構成を模式的に示す図であり、(b) はその膜形成装置
のペースト吐出部とガラス円筒との位置関係を示す図で
ある。
【図6】図1の複写機の定着特性の評価に用いられるテ
ストパターンを示す図である。
【図7】図4の製造方法によって製造された円筒状基体
の機械的強度を従来の円筒状基体と比較して示す図であ
る。
【図8】本発明の他の実施例の製造方法の工程流れ図の
要部であり、図4の工程流れ図の工程1〜5に対応する
図である。
【図9】図8の製造方法によって製造された円筒状基体
の機械的強度を従来の円筒状基体と比較して示す図であ
る。
【図10】本発明の一実施例により製造される他の加熱
ローラに用いられる円筒状基体の軸心方向に沿った断面
を示す図である。
【符号の説明】
63:トナー定着用加熱ローラ(加熱ローラ) 64:円筒状基体(電気絶縁性基体) 68:抵抗発熱体層 72:ガラス円筒(本体部) 74:ガラス皮膜(表層部)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小林 一雄 愛知県名古屋市西区則武新町三丁目1番 36号 株式会社ノリタケカンパニーリミ テド内 (72)発明者 武岡 健 愛知県名古屋市西区則武新町三丁目1番 36号 株式会社ノリタケカンパニーリミ テド内 (56)参考文献 特開 平6−110348(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G03G 13/20 G03G 15/20 F16C 13/00

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 円筒状の外周面を有する電気絶縁性基体
    を備え、該外周面を用いて均等に押圧しつつ加熱する加
    熱ローラの製造方法であって、 第1のセラミックスから成る本体部の外周面に、該第1
    のセラミックスよりも低い温度で溶融させられる第2の
    セラミックスを含む未加熱処理膜を形成する膜形成工程
    と、 該未加熱処理膜を、前記第2のセラミックスの溶融温度
    よりも高く且つ前記第1のセラミックスの熱変形温度よ
    りも低い所定の処理温度で加熱することにより、前記本
    体部の外周面に第2のセラミックスから成る表層部を生
    成する加熱工程と、 該表層部または前記未加熱処理膜の外周面を機械加工に
    より除去することにより、該表層部または該未加熱処理
    膜の外周面を所定の精度に加工する機械加工工程とを、
    含む工程により前記電気絶縁性基体が製造されることを
    特徴とする加熱ローラの製造方法。
  2. 【請求項2】 円筒状の外周面を有する電気絶縁性基体
    を備え、該外周面を用いて均等に押圧しつつ加熱する加
    熱ローラの製造方法であって、 第1のセラミックスから成る本体部の外周面を所定の精
    度に研削加工する研削加工工程と、 該研削加工を施された本体部の外周面に、前記第1のセ
    ラミックスよりも低い温度で溶融させられる第2のセラ
    ミックスを含む未加熱処理膜を形成する膜形成工程と、 該未加熱処理膜を、前記第2のセラミックスの溶融温度
    よりも高く且つ前記第1のセラミックスの熱変形温度よ
    りも低い所定の処理温度で加熱することにより、前記本
    体部の外周面に第2のセラミックスから成る表層部を生
    成する加熱工程とを、含む工程により前記電気絶縁性基
    体が製造されることを特徴とする加熱ローラの製造方
    法。
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