JP2900762B2 - 有機複合被覆鋼板 - Google Patents

有機複合被覆鋼板

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JP2900762B2 JP20335793A JP20335793A JP2900762B2 JP 2900762 B2 JP2900762 B2 JP 2900762B2 JP 20335793 A JP20335793 A JP 20335793A JP 20335793 A JP20335793 A JP 20335793A JP 2900762 B2 JP2900762 B2 JP 2900762B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、亜鉛系めっきが施さ
れた鋼板の上にクロメート処理層及び樹脂皮膜を形成し
た有機複合皮膜鋼板に関する。このような有機複合皮膜
鋼板は、主に家電製品又は建材等に用いられる。
【0002】
【従来の技術】亜鉛又は亜鉛系合金めっき鋼板(以下、
亜鉛系めっき鋼板と略記する)は、耐食性に優れている
ことから、各種の産業分野において広く使用されてい
る。特に、家電製品の用途においては、従来塗装して使
用していた部材を無塗装のまま適用するものが増加して
おり、そのため無塗装での耐食性はもちろんのこと、無
塗装での良好な外観が要求される。
【0003】耐食性に関しては、一次防錆としての一般
のクロメート処理に代えて、塩水噴霧試験で白錆発生時
間が100時間程度の耐食クロメート処理を施すことに
より、ある程度要求が満たされている。しかしながら、
これらクロメート処理鋼板が未塗装状態で保管される場
合、特に高温・湿潤環境下に保管される場合、表面が部
分的にあるいは全体に亘って経時的に黒っぽく変色す
る、いわゆる黒変現象が発生することがあり、外観的に
商品価値を著しく損なうといった問題が生じる。
【0004】黒変は、初期の腐蝕現象と考えられてお
り、保管中に水分や酸素がクロメート処理皮膜を通し、
めっき表層において酸化物、水酸化物あるいは水和酸化
物等を生成して、可視光を吸収・散乱しやすい形態にな
ることが黒く見える原因と考えられている。この反応
は、亜鉛めっき層中に微量残存する鉛、アルミニウム等
が亜鉛のアノード化を促進することによって生じたり、
めっき層表層に付着した異物又は不純物(例えば、SO
4 2-やCl- 等のめっき浴成分、クロメート浴中の不純
物イオン、あるいは油分)の不均一な付着によって一層
促進される。
【0005】このような現象を考慮して、亜鉛系めっき
鋼板の耐黒変性を向上させるため、めっき層中の不純物
の濃度管理や、めっき後の表面の洗浄強化等を行ってい
るが、必ずしも十分な効果が得られていない。
【0006】このような背景において、めっき又はクロ
メート処理の観点から黒変を防止するという要求に答え
るべく、特開昭60−63385号公報、特開昭60−
77988号公報、特開平2−8374号公報等のいく
つかの技術が提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】これら先行技術は、め
っき層を安定化させることにより、黒変反応を促進する
反応型クロメート処理層の不均一形成を抑制するもの
や、クロメート処理又はめっき層とクロメート処理とを
改良することによって黒変を抑制しようとするものであ
り、比較的マイルドな保管状態においては効果が認めら
れる。しかし、高温湿潤の厳しい環境においては、黒変
抑制効果は不十分であり、耐黒変性やクロム溶出に伴う
耐退色性と耐食性とを同時に満足することができないも
のであった。さらに、これらの技術における鋼板は、ス
リット加工、搬送等の工程においてハンドリング疵が付
きやすく、その部分での耐食性劣化を回避することがで
きない。
【0008】一方、亜鉛系メッキ鋼板として、クロメー
ト処理層の上に樹脂層を設けたもの例えば、特開平3−
136840号公報、特開平2−48941号公報のよ
うな技術も提案されているが、耐黒変性の改善を目的と
するものはなく、また実際に試験すると耐黒変性が悪い
のが実情である。
【0009】本発明者らは、亜鉛系めっき鋼板における
上記課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、亜鉛系
めっき鋼板のめっき層上に、クロメート処理層を形成
し、その上に樹脂皮膜層を形成する際に、樹脂皮膜層と
して特定範囲の厚さを有するエチレンとα,β−エチレ
ン性不飽和カルボン酸とを主鎖成分とし、カルボキシル
基の60〜80%を金属イオンで中和したエチレン系ア
イオノマー樹脂にシリカ微粒子が含まれた複合化樹脂を
主体としたものとすることにより、80℃レベルの低い
皮膜乾燥温度でも良好な耐食性を維持しつつ、その分子
構造に起因したバリヤ効果によって耐黒変性が向上し、
かつ耐疵性等も向上することを見出した。
【0010】この発明は、上記知見に基づいてなされた
ものであって、良好な耐食性を維持しつつ、耐黒変性に
優れかつ疵等が発生しにくい有機複合被覆鋼板を提供す
ることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】この発明の有機複合被覆
鋼板は、鋼板と、鋼板上に施された亜鉛又は亜鉛系合金
めっき層と、このめっき層上に形成され、金属クロム換
算で1〜200m g /m2 の付着量を有するクロメート
処理層と、このクロメート処理層上に形成された厚さ
0.1乃至5μmの樹脂被膜とを具備し、この樹脂被膜
が、エチレンとα、β−エチレン性不飽和カルボン酸の
共重合体を主鎖成分とし、かつカルボキシル基の60〜
80%を金属イオンで中和したエチレン系アイオノマー
樹脂に、シリカ微粒子を含み、シリカ微粒子の含有割合
が樹脂とシリカ微粒子との合計に対して1〜50重量%
の範囲である。すなわち、本発明により、亜鉛系めっき
鋼板の表面にクロメート処理層が形成され、その上にカ
ルボキシル基の60〜80%を金属イオンで中和したエ
チレン系アイオノマー樹脂を含む複合化樹脂を主成分と
する皮膜が形成されている耐黒変性に優れた有機複合被
覆鋼板が提供される
【0012】
【作用】上記亜鉛系めっき鋼板としては、黒変発生が特
に懸念される電気純亜鉛めっき鋼板、及び電気めっき法
又は溶融めっき法によってめっき層が形成された他の亜
鉛又は亜鉛系合金めっき鋼板が挙げられる。
【0013】上記クロメート処理層を形成するクロメー
ト処理としては、反応型、塗布型、電解型等公知のクロ
メート処理によればよいが、クロム付着量が金属クロム
換算で鋼板片面当たり1〜200mg/m2 、好ましく
は10〜100mg/m2 のクロメート層を形成する必
要がある。付着量が1mg/m2 未満では耐食性が不十
分であり、また200mg/m2 を超えると、その量に
見合った耐食性向上効果を得ることができないのみなら
ず、鋼板の変形を伴う曲げ加工などが施された場合に、
クロメート処理層の凝集破壊が発生しやすくなる。
【0014】クロメート処理液の具体例を挙げると、反
応型クロメート処理液の組成としては、金属クロム換算
で1〜100g/lの水溶性クロム化合物と、0.2〜
20g/lの硫酸とを主成分とするものが挙げられ、か
つ全クロム中の3価クロムの含有量が50重量%以下、
好ましくは20〜35重量%以下であって、必要に応じ
てこれらに適量の金属イオン、例えばZn2+、Co2+
Fe3+等と他の鉱酸例えばリン酸、フッ酸等を加えたも
のであってもよい。
【0015】塗布型クロメート処理液の具体例として
は、上記反応型クロメート処理液と同様の組成の液中
に、粒径数nmから数十nmのシリカゾル、ヒュームド
シリカ、又は/及び分子中に多量のカルボキシル基を含
有する水溶性でかつ上記反応型クロメート処理液と同様
の組成の液と相溶性のある有機高分子樹脂を添加し、p
Hを2.0〜3.5に調整したものが挙げられる。この
有機高分子樹脂としては、平均分子量1000〜500
000であることが好ましい。その添加量は一般に樹脂
分に換算して0.02〜30g/lの範囲である。
【0016】いずれにしても、第1層としてのクロメー
ト層の付着量は、上述したように、金属クロム換算で1
〜200mg/m2 の範囲であればよい。本発明におい
て、上層として形成される樹脂皮膜の主成分は、エチレ
ンとα,β−エチレン性不飽和カルボン酸、及び必要に
応じて、他の共重合が可能な成分との共重合体を主鎖の
基本構造とし、カルボキシル基の60〜80%を金属イ
オンで中和したエチレン系アイオノマー樹脂である。前
記エチレン系アイオノマー樹脂は、α,β−エチレン性
不飽和カルボン酸の含有量が好ましくは3〜40モル%
のエチレンと、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸及
び必要に応じて使用されるその他の共重合体成分との共
重合体のカルボキシル基を特定のイオンやイオン化合物
で中和した高分子である。
【0017】ここで、エチレン中のα,β−エチレン性
不飽和カルボン酸の量が40モル%を超えると、親水性
が高くなり、皮膜としての耐黒変性及び耐食性が低下し
やすいため好ましくない。また、その量が3モル%未満
になると、下地である鋼板側との付着力が低下し、望ま
しい皮膜が得られにくい。
【0018】本発明におけるエチレン系アイオノマー樹
脂中のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸には、アク
リル酸、メタクリル酸、フマール酸、イタコン酸、マレ
イン酸等があるが、特に厳しい環境における耐黒変性、
耐食性等の品質に着目すると、メタクリル酸が特に優れ
ている。
【0019】共重合体の分子量としては、通常、重量平
均分子量1万〜20万のものが好ましく、5万〜15万
のものが特に好ましい。また、カルボン酸の中和に用い
られるイオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウ
ムなどのアルカリ金属、及びマグネシウム、カルシウム
などのアルカリ土類金属の金属イオン、遷移金属の水酸
化物等の金属化合物イオンの他に、有機アミンと遷移金
属との錯イオンが挙げられるが、耐黒変性、耐食性ある
いは薬液安定性の点からナトリウムイオンが特に好まし
い。
【0020】中和度としては、低い皮膜乾燥温度例えば
めっき製造ラインでのインライン処理を想定すると80
℃レベルの低い温度においても良好な耐黒変性、耐食性
を得る観点から、60〜80%の範囲とする。60%未
満では耐黒変性が不十分であり、80%を超えると粘度
が高くなって薬液安定性が低下し、さらに吸湿性が高く
なるため耐黒変性、耐食性が低下する。
【0021】本発明においては、樹脂層を構成する樹脂
がイオン架橋構造を有しているため、皮膜特性の劣化の
原因になり得る乳化剤を用いることなく水分散型の塗液
にすることが可能であり、容易に鋼板表面へ薄膜コーテ
ィングすることができる。乾燥された皮膜は、下地と強
く密着し、かつ化学的に安定であるため、このような皮
膜が形成された鋼板は優れた耐黒変性及び耐食性を示
す。また、この鋼板は強固に樹脂皮膜が形成されている
ことから、疵が発生しにくい。
【0022】上記複合化樹脂は、シリカ微粒子あるいは
シラン化合物とシリカ微粒子を複合化することにより耐
食性を飛躍的に向上させることができる。本発明で用い
るシリカ微粒子としては、一次粒子径が50nm以下、
二次粒子径が500nm以下の超微細な無定形のシリカ
粒子を用いるのが好適である。一次粒子径が50nmを
越えると乾燥後皮膜にクラックが入ってしまうため、緻
密な皮膜が形成しがたく、耐食性が劣化しやすい。シリ
カ微粒子は、粒子表面にシラノール基を有しており、市
場への供給形態によって例えば以下の3種類に分類さ
れ、いずれも本発明に適用することができる。
【0023】(1)シリカ微粉末 一般に乾式シリカと称され、一次粒子径が50nm以下
のものであり、四塩化ケイ素の燃焼によって製造され
る。このシリカ微粉末は水分散液又は有機溶剤分散液の
いずれかの形態で使用される。
【0024】(2)有機溶剤分散性シリカ いわゆるオルガノシリカゾルであって、例えば米国特許
第2,285,449号に記載されている製造方法によ
って有機溶剤に分散されたものが挙げられる。すなわ
ち、コロイダルシリカ水分散液における水を有機溶剤で
置換したシリカゾルであって、メタノール、イソプロパ
ノール、ブチルセロソルブなどのアルコール類を分散媒
体にしたものが特に有用である。
【0025】(3)水分散性シリカ いわゆるコロイダルシリカであって、水ガラスの脱ナト
リウム(イオン交換法、酸分解法、解膠法などによる)
によって製造され、一次粒子径が50nm以下である。
この水分散性シリカは通常水性分散液として供給され
る。
【0026】本発明におけるシリカ微粒子とエチレン系
アイオノマー樹脂との配合割合は、耐食性及び皮膜の可
撓性の点から、シリカ微粒子が樹脂とシリカ微粒子との
合計に対して1〜50重量%の範囲で含まれるようにす
る。1重量%未満の場合は耐食性が低下する。50重量
%を超えると耐食性向上効果は認められず、また、樹脂
液が増粘しすぎてしまい、コーティングしにくくなって
しまうため、皮膜形成が不完全となってしまい、耐食
性、耐黒変性が低下する。
【0027】本発明で、樹脂中に配合し、前記エチレン
系アイオノマー樹脂と反応せしめられる分子中に1個の
珪素原子と2〜4個のシリルエーテル結合を有するシラ
ン化合物は、分子中のケイ素原子1個に対して2個乃至
4個のアルコキシ基、アリルオキシ基、又はアリールオ
キシ基が結合した化合物である。これらの化合物の縮合
物も前記アイオノマー樹脂との反応に使用することがで
き、上記シラン化合物及びこれらの化合物の縮合物(以
下、反応性シランと略称する。)としては、具体的には
以下の(1)及び(2)の一般式で示される構造を有す
るものが挙げられる。 (1)一般式
【0028】
【化1】 (R1 はアルコキシ基を含有してもよい炭素数1〜8の
アルキル基、アリル基、又はアリール基、mは0〜11
の整数を表す)により示されるテトラアルキル(又はテ
トラアリール、若しくはテトラアリル)オルトシリケー
ト又はこれらのオルトシリケート類の縮合物であるポリ
シリケート類である。具体的には例えばメチルオルトシ
リケート、エチルオルトシリケート、n−プロピルオル
トシリケート、n−ブチルオルトシリケート、n−オク
チルオルトシリケート、フェニルオルトシリケート、ベ
ンジルオルトシリケート、フェネチルオルトシリケー
ト、アリルオルトシリケート、メタアリルオルトシリケ
ートなどがあり、さらにこれらのオルトシリケート類の
脱水縮合によって生成されるポリシリケート類も用いら
れる。
【0029】(2)一般式 (R23-n −Si−(OR1n+1 (R1 は上記した化1のR1 と同様に定義され、R2
炭素数1〜8の置換されていてもよいアルキル基、アリ
ル基、アリール基、ビニル基を表し、nは1又は2を表
す。)で表されるシラン化合物である。
【0030】上記R2 であるアルキル基としては、メチ
ル基、エチル基、γ−クロロプロピル基、γ−アミノプ
ロピル基、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピル
基、γ−グリシドキシプロピル基、β−(3,4−エポ
キシシクロヘキシル)エチル基、γ−メタクリロイルオ
キシプロピル基等が挙げられる。
【0031】具体的には、例えば、ジビニルエトキシシ
ラン、ジビニル−β−メトキシエトキシシラン、ジ(γ
−グリシドキシプロピル)ジメトキシシラン、メチルト
リエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル
トリス−β−メトキシエトキシシラン、γ−グリシドキ
シプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオ
キシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポ
キシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−
メルカプトプロピルトリメトキシシランなどを挙げるこ
とができる。要は、反応性シラン中のアルコキシ基など
珪素原子にエーテル結合された加水分解性基が特定条件
下で加水分解反応によってシラノール基とアルコールと
が生成するものであれば、本発明の反応性シランとして
使用することができる。
【0032】また、反応性シランの使用割合は、シリカ
とエチレン系アイオノマー樹脂との両成分の固形分合計
100重量部に対して好ましくは0.5〜15重量部、
特に好ましくは1〜10重量部であることが反応促進効
果の点及び系の安定性の点からよく、前記好適な範囲か
ら外れると耐食性が劣ってくる。
【0033】本発明における複合化樹脂の合成方法は特
に限定されるものではないが、通常、以下の方法が採用
される。先ず、エチレン系アイオノマー樹脂をアルコー
ル系溶媒などの親水性溶剤又は水を主体とした溶媒に溶
解又は分散させて固形分40重量%以下とし、これを撹
拌しながらシリカ粒子及び反応性シランを添加する。次
いで、必要に応じて塩基性加水分解触媒(金属水酸化
物、アンモニア、アミン類)や水を添加して反応を生じ
させる。
【0034】本発明における複合化樹脂を製造するに際
しては、先ず、反応性シランを加水分解してシラノール
基を生成することが必須条件であり、上記混合液を10
℃以上沸点以下の温度で反応させることによって加水分
解、縮合反応により複合化樹脂とすることができる。強
靭な皮膜を得る観点からは、混合液の温度を50℃以
上、及び溶媒又は水の沸点以下にして連続的に加熱する
ことが望ましく、具体的には50〜90℃で加熱するこ
とによって両成分を充分に結合させることができる。
【0035】本発明においては、上記シリカの代わり
に、無水クロム酸(CrO3 )、クロム酸ストロンチウ
ム(SrCrO4 )、クロム酸バリウム(BaCrO
4 )、クロム酸鉛(PbCrO4 )、塩基性クロム酸亜
鉛(ZnCrO4 ・4Zn(OH)2 )等の6価クロム
化合物あるいはクロム酸クロム化合物を皮膜中に50重
量%以下の範囲で添加してもよい。また、シリカとクロ
ム化合物とを合計で50重量%以下の範囲で添加するこ
ともできる。
【0036】さらに、上記複合化樹脂には、ワックスな
どの潤滑性物質を混合して、潤滑性を付与することがで
きる。また、上記複合化樹脂に導電性物質を混合して導
電性を付与することもでき、それによって電気溶接性、
電気泳動塗装性、さらには皮膜のアース性等を改善する
ことができる。このような導電性物質としては、例え
ば、亜鉛、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、マ
ンガン、クロム、モリブデン、タングステン、銅、鉛、
錫などの金属粉末及びそれらの合金粉末、アルミニウム
ドープ酸化亜鉛粉末、酸化錫−酸化チタン、酸化錫−硫
酸バリウム、酸化ニッケル−アルミナなどの半導体酸化
物などが挙げられる。
【0037】また、上記複合化樹脂に対し、特公昭55
−41711号公報に記載されたようなチタン、ジルコ
ニウム、アルミニウムなどのキレート化合物を、又は特
公昭57−30867号公報及び特公昭55−6297
1号公報に記載のような酸素酸塩類、金属塩類等を併用
することによって、硬化性を向上させることができる。
【0038】さらに、通常塗料分野で用いられる顔料あ
るいは染料などを分散させて、着色皮膜を形成する組成
物とすることもできる。本発明における複合化樹脂皮膜
の厚さは、0.1μm〜5μmの範囲、好ましくは0.
3μm〜3μmの範囲である。0.1μm未満では耐食
性および耐黒変性に対するバリヤー効果を期待できない
ばかりか、ハンドリング等による擦傷の発生を防止する
ことができない。また、5μmを超えると厳しい加工を
受けた際に皮膜剥離を招き易くなる。
【0039】複合化樹脂皮膜の形成は、例えば以下の方
法によって行うことができる。すなわち、先ず、上記複
合樹脂を主成分とする組成物の塗液を、ロールコータ
ー、カーテンフローコーター、又はスプレーなどの公知
の塗装方法によって塗布し、又はこれらの塗液中に亜鉛
めっき鋼板を浸漬して、ロールや空気吹付けによって付
着量をコントロールし、次いでこれを乾燥させるといっ
た方法である。乾燥は常温でも構わないが、通常、熱風
炉や誘導加熱装置などにより鋼板の温度が60〜250
℃、好ましくは80℃〜200℃になるように加熱する
ことによってなされる。乾燥温度が60℃より低いと皮
膜の乾燥が不十分となり、十分な耐食性、耐黒変性が得
られにくい。また、250℃を超えると樹脂皮膜の熱劣
化やボイド発生等を招き、好ましくない。
【0040】
【実施例】以下、この発明の実施例について比較例を対
比しつつ説明する。なお、以下の説明中「部」及び
「%」は特に明記してある場合(モル%、中和度)を除
き、いずれも重量基準による。 (複合化樹脂の合成例)まず、ベース樹脂の合成法から
述べる。メタクリル酸含有量が20モル%のエチレン−
メタクリル酸共重合体を水酸化ナトリウムで中和度70
%に中和した樹脂を、170℃に維持された実効容積1
8リットルのホモミキサーに、上記樹脂の溶解物を4k
g/hrの流量で、また水を18リットル/hrの流量
でそれぞれ供給し、強力攪拌して水分散型樹脂液を製造
する一方、液面を一定に保つようにこの水分散型樹脂液
を連続的に抜出した。その結果、乳化剤を含まない固形
分20.4%の水分散型樹脂液Aを得た。また、共重合
体の種類、中和金属イオン、中和度の異なる樹脂液につ
いても基本的に同様な条件で合成した。なお、比較例に
使用する樹脂として乳化剤を含む他の樹脂も合成した。
なお、樹脂については、後述する表1,2に明示した。
【0041】そして、この樹脂にシラン化合物、シリカ
等の各種添加剤を加えて、複合化樹脂組成物を得た。以
下、一例を示すと、樹脂A100部をフラスコ中に装入
し、常温で十分に攪拌しながら、ヒュームドシリカ(日
本アエロジル株式会社製、商品名アエロジル300、一
次粒径7nm)4.1部を約10分の間に徐々に加え
た。添加後、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシ
シラン(信越化学工業株式会社製、商品名KBM50
3)1.0部を攪拌下で滴下混合し、次いで85℃に加
熱してその温度で2時間保持して反応させ、複合化樹脂
組成物を得た。
【0042】(実施例1〜23)板厚0.8mm、めっ
き量20g/m2 の電気亜鉛めっき鋼板のめっき層上
に、反応クロメート処理又は塗布型クロメート処理を施
した後乾燥して、付着量10〜200mg/m2 のクロ
メート処理層を形成した。次いで、クロメート処理層上
に、前記合成例で合成した複合化樹脂組成物、又はこの
複合化樹脂組成物にシラン化合物及びシリカを添加した
水分散液をロールコータによって塗布した。その後熱風
乾燥炉によって鋼板の温度が80℃に到達するまで加熱
して塗液を乾燥させ、樹脂皮膜層を形成した。各実施例
における条件を表1に示す。
【0043】(比較例1〜13)実施例と同一条件の電
気亜鉛めっき鋼板を用い、めっき層上に反応クロメート
処理により、付着量40mg/m2 のクロメート処理層
を形成した。クロメート処理層上に、各種樹脂皮膜層を
表2に示す条件で被覆形成した。
【0044】なお、表1,2中のクロメート付着量は、
金属クロム換算量を表示し、また、樹脂皮膜層中のシリ
カ含有量は、樹脂とシリカの合計を100重量%とした
場合の重量%で、またシラン化合物の含有量は樹脂とシ
リカの合計を100重量部とした場合の重量部で表示し
た。また、樹脂の種類の欄の記号は、 A:合成例の樹脂A B:エチレン−アクリル酸共重合体、Na中和アイオノ
マー C:エチレン−アクリル酸共重合体、Zn中和アイオノ
マー D:エチレン−フマル酸共重合体、Na中和アイオノマ
ー E:エチレン−マレイン酸共重合体、Na中和アイオノ
マー F:エチレン−イタコン酸共重合体、Na中和アイオノ
マー G:エチレン−アクリル酸共重合体(乳化剤あり) H:アクリル樹脂エマルジョン(乳化剤あり) I:エポキシ樹脂エマルジョン(乳化剤あり) J:水溶性ウレタン樹脂(乳化剤あり) K:酢酸ビニル−アクリル酸共重合体(乳化剤あり) L:エチレン−酢酸ビニル共重合体(乳化剤あり) なお、G〜Lは、いずれも乳化剤を用いて水性塗布液と
したものである。
【0045】このようにして得られた実施例及び比較例
の有機複合亜鉛系めっき鋼板に就いて、耐黒変性及び耐
食性を以下に示す試験方法によって評価した。その結果
を表1,2に示す。
【0046】(1) 耐黒変性 50℃、95%RHの高温湿潤環境に60日間放置し、
試験前後の鋼板のL値(JIS Z8730 6.3.2(1980) 、ハ
ンターの色差式における明度指数)の差から耐黒変性を
評価した。
【0047】(2) 耐食性 JIS Z2371 に基づく塩水噴霧試験を実施し、240時間
後の白錆発生面積率を測定し、耐食性を評価した。
【0048】表1から明らかなように、実施例1〜23
では、いずれも良好な耐黒変性及び耐食性を示した。特
に、エチレン系アイオノマー樹脂としてエチレン−メタ
クリル酸共重合体を用いた実施例1〜13が特に良好な
耐黒変性を示し、さらにシリカまたはシラン化合物を含
有した実施例の中で1〜6,8,9,12〜18が特に
良好な耐食性を示すことが確認された。
【0049】これに対し、表2から明らかなように、比
較例1〜13では耐黒変性及び耐食性の両方を満足する
ことはなかった。すなわち、比較例1,2は中和度が、
比較例3は樹脂皮膜の膜厚が、比較例4,12はシリカ
含有量が、比較例5〜11は樹脂皮膜の樹脂の種類が、
比較例13は樹脂皮膜の膜厚が本発明から外れるもので
ある。比較例1,6,13は耐食性が良好でも耐黒変性
が悪く、比較例4は耐黒変性が良好でも耐食性が悪く、
他の比較例は耐食性、耐黒変性とも満足できるものでは
なかった。
【0050】図1は、実施例1〜3及び比較例1,2に
ついて横軸に中和度をとり、縦軸に耐黒変性の程度をと
って、ベース樹脂の中和度と耐黒変性との関係を示す。
この図から、中和度60〜80%において特に優れた耐
黒変性を示すことが確認された。
【0051】また、樹脂皮膜の膜厚が耐黒変性に及ぼす
影響については、実施例1,7,8と比較例3,13と
から、膜厚が0.3μm〜3.0μmで特に優れた耐黒
変性を示すが、膜厚が0.05μmと本発明の範囲から
外れると耐食性及び耐黒変性が、7.0μmと本発明の
範囲から外れると耐黒変性が劣ることが確認された。
【0052】さらに、ベース樹脂については、上述した
ようにエチレン系アイオノマー樹脂以外のベース樹脂を
使用した場合には比較例5〜11のように耐黒変性が劣
るが、エチレン系アイオノマー樹脂をベース樹脂にする
ことにより、実施例1〜23のように良好な耐黒変性が
得られる。しかも、同じエチレン系アイオノマー樹脂で
あっても、メタクリル酸以外のα,β−エチレン性不飽
和カルボン酸を共重合体成分とした実施例14〜18に
比較して、メタクリル酸を用いた実施例2が特に優れた
耐黒変性を示すことが分かる。
【0053】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、この発明の
有機複合被服鋼板によれば、特定の樹脂皮膜を用いるこ
とにより、良好な耐食性を維持しつつ、耐黒変性に優れ
ている。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
【表4】
【図面の簡単な説明】
【図1】耐黒変性に及ぼす中和度の影響を示す図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B32B 51/08 B05D 7/14 C09D 5/08 C09D 123/26 C09D 133/00

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼板と、鋼板上に施された亜鉛又は亜鉛
    系合金めっき層と、このめっき層上に形成され、金属ク
    ロム換算で1〜200mg/m2 の付着量を有するクロメ
    ート処理層と、このクロメート処理層上に形成された厚
    さ0.1及性不飽和カルボン酸の共重合体を主鎖成分と
    し、かつカルボキシル基の60〜8至5μmの樹脂皮膜
    とを具備し、この樹脂皮膜が、エチレンとα、β−エチ
    レン0%を金属イオンで中和したエチレン系アイオノマ
    ー樹脂に、シリカ微粒子を含み、シリカ微粒子の含有割
    合が樹脂とシリカ微粒子との合計に対して1〜50重量
    %の範囲であることを特徴とする耐黒変性に優れた有機
    複合被覆鋼板。
  2. 【請求項2】 前記樹脂皮膜におけるエチレン系アイオ
    ノマー樹脂中のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸の
    含有量が3〜40モル%であることを特徴とする請求項
    1に記載の有機複合被覆鋼板。
  3. 【請求項3】 前記樹脂皮膜におけるエチレン系アイオ
    ノマー樹脂中のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸
    が、メタクリル酸であることを特徴とする請求項1又は
    2に記載の有機複合被覆鋼板。
  4. 【請求項4】 前記樹脂皮膜におけるエチレン系アイオ
    ノマー樹脂中の金属イオンが、ナトリウムイオンである
    ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の
    有機複合被覆鋼板。
  5. 【請求項5】 前記樹脂皮膜におけるエチレン系アイオ
    ノマー樹脂が、分子中に1個の硅素原子と2〜4個のシ
    リルエーテル結合を有するシラン化合物及び/又はその
    縮合物を、シリカと樹脂との両成分の固形分合計100
    重量部に対して0.5〜15重量部の範囲で含むものよ
    りなる組成物であることを特徴とする請求項1乃至4の
    いずれか1に記載の有機複合被覆鋼板。
  6. 【請求項6】 前記樹脂皮膜におけるシリカ微粒子が、
    一次粒径50nm以下のヒュームドシリカ又はコロイダ
    ルシリカであることを特徴とする請求項1乃至5のいず
    れか1に記載の有機複合被覆鋼板。
  7. 【請求項7】 前記樹脂皮膜が、前記複合化樹脂を主成
    分とする、乳化剤を含まない水分散型樹脂を塗布し、板
    温60〜250℃で乾燥したものであることを特徴とす
    る請求項1乃至6のいずれか1に記載の有機複合被覆鋼
    板。
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