JP2879029B2 - 機能性固体微粒子を含有する高分子微粒子の水性分散体及びその製造方法 - Google Patents

機能性固体微粒子を含有する高分子微粒子の水性分散体及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、機能性固体微粒子
を含有する高分子微粒子の水性分散体及びその製造方法
に関するものであり、特に、機能性固体微粒子がサブミ
クロンのオーダーの粒度で含有されている高分子微粒子
の安定な水性分散体及びその製造方法に関する。本発明
による機能性固体微粒子を含有する高分子微粒子の水性
分散体は、化粧品、情報記録に関連する材料、フラット
ディスプレー等の表示に関係する材料などの分野、その
他これまで染料を用いざるを得なかったあらゆる技術分
野における新規材料としての利用が期待される。さら
に、本発明によれば、水中における分散性が極めて良好
な高分子微粒子の分散体が提供でき、また本発明による
機能性固体微粒子を含有する高分子微粒子を用いること
により、耐水性の良好な塗装膜を提供することができ
る。
【0002】
【従来の技術】機能性固体粒子を高分子の被膜でカプセ
ル化することは、既にマイクロカプセルの技術分野で長
い開発の歴史があり、製薬、感圧記録紙などの分野で実
用化されている。このような従来の用途では、単に機能
性の固体粒子が高分子被膜でカプセル化されていれば実
用面において大きな問題はなく、固体粒子を確実にカプ
セル化すること、固体粒子をサブミクロンオーダーにま
で微粒子化したものをカプセル化すること、並びにこの
ような固体微粒子をカプセル化した高分子微粒子を塗膜
にし、且つその塗膜自体にも色々な特性を持たせること
等についてまでの要請はなかった。
【0003】しかし、近年、エレクトロニクス、情報記
録材料、化粧品などの分野では、従来のマイクロカプセ
ルに対し、より一層の高性能化、高機能化の要請が高ま
ってきている。例えば、まず、液晶カラーフィルターに
おいては、感光性レジストの中に顔料を分散させ、フォ
トリソグラフィーの技法を用いてパターン状にカラーフ
ィルター層を形成することが行われている。しかしなが
ら、かかる従来の手法では、顔料がレジスト材料の中に
単に分散された状態になっているため、露光部分中にも
感光性レジストに覆われていない顔料が露出して存在し
ており、この感光性レジストに覆われてない露出顔料が
現像時の未露光部分の洗浄の際に洗い落とされ、液晶の
色再現性などに悪影響を及ぼすという問題があった。そ
こで、前記問題を解決し、且つより高解像の液晶を形成
するために、サブミクロンオーダーにまで分散された顔
料の微粒子を感光性高分子で覆う技術が強く求められて
いる。また、インクジェットプリンターの分野では、印
刷物の耐水性、耐候性などを改良するために、従来の染
料をベースとするタイプから顔料系への転換が大きな課
題となっている。このように、従来の染料系のインクで
は得られない安定性、耐水性及び耐候性などに優れた高
精細度の印字を可能とするインキを供給するために、サ
ブミクロンオーダーの粒径を有する顔料微粒子をフィル
ム形成能を持った薄い高分子層で覆う技術についても必
要となってきた。
【0004】一方、化粧品の分野では、例えばファンデ
ーションの場合には紫外線をできるだけカットし、且つ
透明性をできるだけ向上させるために、紫外線吸収剤及
び酸化チタンなどを超微粒子化し、その外側を成膜材料
でカプセル化する手法が極めて有効であると考えられ
る。また、口紅の場合においては、顔料が高分子により
カプセル化されているのであれば、落ちない、色移りし
ないなどの要望に応えることができる。更に、現在溶剤
系の樹脂に顔料を分散させて製造されるマニュキュアの
場合には、特に黄色系の顔料が溶剤と一緒に爪に浸透し
爪を黄色に着色させるという問題が指摘されており、か
かる問題を解決し、且つより光沢性、耐久性に優れたマ
ニュキュアの製造のために、顔料をサブミクロンオーダ
ーの微粒子に分散させ、その周りを耐水性、耐摩耗性に
優れた高分子樹脂で覆われたものが求められている。更
に、上記の他に、自動車ガラス用の紫外線カットコーテ
ィング剤などの分野においても、紫外線吸収剤が高分子
カプセルに含有され、且つ透明性が高く耐久性の良い塗
膜の要求が強くなっており、また、特殊な防虫剤をカプ
セル化した防虫塗料などの開発にも役に立つと考えられ
る。
【0005】このように、上記した分野における様々な
要請に対応するためには、機能性固体材料をサブミクロ
ンオーダーひいては分子サイズにまで限りなく安定に微
粒子化しその周りを確実に高分子被覆でカプセル化し
た、機能性固体微粒子を含有する高分子微粒子の存在が
不可欠であり、またそれのみならず、それぞれの用途に
応じて機能性固体微粒子を含有する高分子被覆自体にも
種々の特性を持たせる必要性が生じてきた。
【0006】これまで、かかる機能性固体微粒子を含有
する高分子微粒子の製造法について、たとえば固体微粒
子が顔料の場合には、(1)予め調製された固体微粒子
が分散したポリマー溶液を相分離する方法、(2)固体
微粒子表面でモノマーを重合させて、生成ポリマーでカ
プセル化する方法、及び(3)油性有機モノマーに顔料
粒子を懸濁させたものを水中に乳化法で分散させ、その
まま油溶性開始剤を用いて重合させる、いわゆる“懸濁
重合”法、などの方法が提案されている。
【0007】(1)の方法は、無機粒子を含むマイクロ
カプセルの製造に使用されるものであり、例えば、
(a)芯物質(粒子)を分散した水溶性高分子の水溶液
にアルコール、アセトンなどのような、高分子の非溶媒
を加えるか、または無機電解質を加えることによって高
分子の相分離を生起させ、芯物質をカプセル化する(単
純コアセルベーション法)方法、及び(b)高分子の有
機溶媒溶液を用い、この中に芯物質を分散したのち、高
分子をなんらかの方法で濃厚な高分子相として相分離さ
せ、芯物質をカプセル化する方法等の方法が用いられ
る。しかしながら、これら(a)または(b)の方法に
よってポリマーカプセル化顔料を製造する場合には、粒
径の大きな顔料しか得ることができず、サブミクロンな
いし数ミクロンオーダーのポリマーカプセル化顔料の微
粒子を製造することは非常に困難である。またこのポリ
マーカプセル化顔料の製造工程中に得られるエマルジョ
ンは、溶媒を含んでいるため、完全な水性の分散体とは
言えないだけでなく、攪拌速度、pH変化温度などの外
的な因子によって沈降・凝集・融着などを起こし、安定
な水性分散体には程遠いものである。
【0008】(2)の方法はユニークであるが、粒子表
面で選択的に重合を起させるために、あらかじめ粒子表
面にヒドロキシプロピルセルロース誘導体や界面活性剤
モノマーなどの特定の物質を吸着させた後、重合を行な
わせる必要があるため、壁物質の素材の選択の点で大き
な制限があり、また得られたカプセル化顔料の水媒体中
での分散安定性も不十分である等の問題点があった。
【0009】(3)の方法は、重合トナーと称せられて
いる、トナーを重合プロセス中に形成せしめられた如き
ものの分野などの工業的な規模での実績のある方法であ
るが、この方法によって得られる複合粒子の平均粒径は
5〜10μmの範囲にあるものが多く、サブミクロンの
粒径の複合粒子の製造は極めて困難である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】このように、従来の技
術からでは、機能性固体微粒子が高分子中にサブミクロ
ンオーダーの粒径にまで分散されているだけでなく、水
中において十分安定に分散し、且つ耐水性の良好な塗膜
が形成できるような、機能性固体微粒子を含む高分子微
粒子の水性分散体の製造は不可能であった。そこで、本
願発明は、機能性固体微粒子が高分子中にサブミクロン
オーダーの粒径にまで分散され、また、高分子微粒子が
水中において十分安定に分散し、且つ耐水性の良好な塗
膜を形成できるような、機能性固体微粒子を含む高分子
微粒子の水性分散体を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、カ
チオン若しくはアニオンに解離可能な官能基の含有量が
0.5meq/g以下である疎水性高分子(A)と該疎
水性高分子(A)に平均粒子径1μm以下、90%累積
粒子径3μm以下で分散する機能性固体微粒子(C)と
を主成分とするコア部、及びカチオン若しくはアニオン
に解離可能な官能基の含有量が1meq/g以上、5m
eq/g以下である高分子(B)の中和物を含むシェル
部から構成され、高分子微粒子に含まれる疎水性高分子
(A)と高分子(B)との組成比が、 0.1≦Ma/(Ma+Mb)≦0.8 (ここで、Maは疎水性高分子(A)の重量を表し、M
bは高分子(B)の重量を表す)である、機能性固体微
粒子を含有し平均粒子径が2μm以下、90%累積粒子
径が5μm以下である高分子微粒子の水性分散体に関す
る。
【0012】また、本発明は、機能性固体微粒子
(C)及び疎水性高分子(A)を混練し、機能性固体微
粒子が0.001〜1μmに固形状の分散体とし、 次いで、上記固形状の分散体及び高分子(B)を有機
溶剤に添加し、混合溶解した後に、 中和及び転相操作を行い、 その後、有機溶媒を除去する 工程から成ることを特徴とする、前記機能性固体微粒子
含有高分子微粒子の水性分散体の製造方法に関する。
【0013】更に、本発明は、機能性固体微粒子
(C)を疎水性高分子(A)の有機溶剤溶液中に添加し
機能性固体微粒子を0.001〜1μmの大きさに分散
させ、 次いで、上記有機溶剤溶液中に高分子(B)を添加
し、混合溶解した後に、 中和及び転相操作を行い、 その後、有機溶媒を除去する 工程から成ることを特徴とする、前記機能性固体微粒子
含有高分子微粒子の水性分散体の製造方法に関する。
【0014】
【発明の実施の形態】機能性固体微粒子(C) 本発明において使用される機能を有する固体微粒子
(C)としては、通常の無機顔料、有機顔料、機能性色
素(多色性色素、示温色素、感圧(熱)色素)、各種の
紫外線吸収剤、酸化防止剤(還元剤)及びかび防止剤な
どが挙げられるが、特にこれらに限られた訳ではない。
【0015】より具体的に、無機顔料の例としては、カ
ーボンブラック、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、
酸化チタン、雲母、タルクなどが挙げられる。有機顔料
の例としては、モノアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、
アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、キナクリドン
系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料
などが挙げられる。機能性色素、特にカラー液晶表示用
に多く用いられる二色性色素の例としては、アゾベンゼ
ン、ジスアゾベンゼン、トリスアゾベンゼン、4−ジメ
チルアミノ−トリスアゾベンゼン、4−ジメチルアミノ
−4′−ニトロ−トリスアゾベンゼン、1,4−ビスア
ニリノアニメラキノンなどが挙げられる。
【0016】紫外線吸収剤としては、フェニルサリシレ
ート、4−t−ブチルフェニルサリシレート、2,4−
ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メ
トキシベンゾフェノン、2−(2′−ヒドロキシ−5′
−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−
ヒドロキシ−5′−t−ブチルフェニル)ベンゾトリア
ゾール、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアク
リレートなどが挙げられる。酸化防止剤の例としては、
L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸ステアリン酸
エステル、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,5
−ジ−t−ブチルハイドロキノン、t−ブチルカテコー
ル、2−t−ブチル−5−メチルフェノール、ブチルヒ
ドロキシアニソール、2,2′−メチレンビス(4−エ
チル−6−t−ブチルフェノール)n−オクタデジル−
3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシ
フェニル)プロピオネート4,4′,6,6,−テトラ
−t−ブチル−2,2′−エチリデンジフェノール、ジ
ラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプ
ロピオネートなどが挙げられる。かび防止剤の例として
は、10,10´−オキシビスフェノキシアルシン(略
称OBPA)、N−(フルオロジクロロメチルチオ)フ
タルイミド、N−ジメチル−N´−フェニル−N´−
(フルオロジクロロメチルチオ)−スルファミド、チア
ベンダゾールなどが挙げられる。
【0017】これらの機能を有する固体微粒子の粒径は
固体微粒子を疎水性高分子(A)に分散した時点におい
て、固体微粒子の平均粒子径が1μm以下、90%累積
粒子径(全粒子中、90%の粒子が包含される粒子径)
が3μm以下であることが必要である。好ましくは、平
均粒径が0.5μm以下、90%累積粒子径が1μm以
下であることが良い。該粒子径の下限は限りなく小さい
ことが好ましいのは云うまでもないが、分子を構成する
原子の原子間距離が1〜2オングストローム即ち10-8
cmのオーダーであり、ミクロン単位に直すと0.1〜
0.2mμmすなわち0.0001〜0.0002μm
であることからすると、その限度は分子に着目した場合
0.0001〜0.001μm以下にはなり得ない。従
って分子状態まで分散せしめること即ち0.001μm
が下限となる。
【0018】疎水性高分子(A) 本発明で使用される疎水性高分子(A)としては、酸ま
たは塩基による中和によってイオン性基に解離可能な官
能基の含有量が0.5meq/g、25℃での水に対す
る溶解度が1g/100ml以下、且つ有機溶媒中に可
溶であれば特に制限はない。この疎水性高分子の例とし
ては、ポリスチレンなどのビニル系単量体の重合体、ポ
リメタクリル酸メチルなどのアクリル酸系エステルの重
合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢
酸ビニル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エス
テル共重合体などのビニル系共重合体、セルロースアセ
テートブチレート、ニトロセルロースなどのセルロース
系重合体、ポリウレタン樹脂、及び共重合ポリエステル
樹脂などが挙げられるが、特にこれらに限られた訳では
ない。この疎水性高分子(A)の分子量は、ポリスチレ
ン換算のMwが5,000以上、好ましくは10,00
0以上であり、ガラス転移温度が5℃以上である素材が
好ましく使用される。
【0019】本発明で使用される疎水性高分子(A)
は、ある一定限度内で、酸またはアルカリによる中和に
よってイオン性基に転換可能な官能基、たとえば、−C
OOH基、−SO3 H基、−NH2 基、−NR2 基(R
はアルキル基)、
【外1】 などを含有していても良いが、この官能基の含有率は疎
水性高分子(A)の乾燥重量当り0.5meq/g以下
であることが必要である。この値が0.5meq/gを
超えると、疎水性高分子(A)の粘度が高くなるため作
業性が悪化し、また本発明の固体微粒子を含有する高分
子微粒子の水性分散体から得られる塗膜の耐水性が不良
となり好ましくない。疎水性高分子(A)は、上に述べ
たようにイオン性基に転換可能な官能基をある一定限度
内に含有するものであるが、この官能基の他に非イオン
性親水性基を少量含んでもよい。親水性基の種類として
は、−(CH2 CH2 O)n −基、RO−(CH2 CH
2 O)n −基、−OH基、−CONH2 基、−CONR
2 基(Rはアルキル基)、−SONH2 基などが例とし
て挙げられる。これらの親水性基の許容される含有率は
疎水性高分子Aの総重量に対して、10重量%以下であ
る。
【0020】本発明の機能性固体微粒子(C)を疎水性
高分子(A)に平均粒子径1μm以下、90%累積粒子
径が3μm以下に分散させる方法としては、例えば、 (1)固体微粒子(C)と疎水性高分子(A)のペレッ
ト状固形物又は粉末、或いは該高分子が溶解している有
機溶剤溶液若しくは水溶液を混合し、強いせん断力を加
えて固体微粒子(C)を0.001〜1μmまで分散す
る方法。 (2)固体微粒子(C)を疎水性高分子(A)の有機溶
剤溶液若しくは水或いは含水有機溶剤の溶液中に加え、
サンドグラインダーにて分散し、必要に応じて、超高速
遠心分離器により粗大粒子を除去する方法が使用され
る。
【0021】(1)の方法をもっと具体的に説明する
と、上記(1)記載の混合物に必要に応じて分散剤、ワ
ックス、酸化防止剤、溶剤又は水などを添加し、オープ
ン若しくは加圧ニーダー或いはヘンシェルミキサーなど
の混合混練機で、常温または疎水性高分子(A)の軟化
点以上まで昇温して均一に混合、混練した後、得られた
ブロック状或いは粉末状或いはスラリー状の混練物を二
本ロールでシート状に伸ばし、得られたシートを折り畳
み再度ロールに供給し、再びシードにする作業を繰り返
し行い、固体微粒子(C)の平均粒子径が1μm以下、
90%累積粒子径が3μm以下になるまで続ける。この
方法によって固形微粒子の含有量が50wt%前後の分
散体を得ることができる。固形微粒子が顔料の場合、乾
燥顔料の変わりに顔料の水懸濁液を濃縮したプレスケー
キを使用してもよい。このプレスケーキに直接疎水性樹
脂又はその有機溶剤溶液を入れて混練し、顔料の周りの
水を疎水性樹脂又はその有機溶剤溶液と置き換えること
によって、含水量の少ない固形の顔料分散体が得られ
る。(2)の方法をもっと具体的に説明すると、まず固
体微粒子(C)を疎水性高分子(A)の有機溶剤の溶液
中に添加し、また必要に応じて、分散剤、ワックス、酸
化防止剤を添加して予備混合を行う。この混合物を同体
積のジルコニウムビーズと一緒に高速サンドグラインダ
ーに入れて2時間程度分散する。次にジルコニウムビー
ズを濾過し、得られる分散液の粘度を1ポイズ前後に調
整した後、超高速遠心分離器に入れて、回転速度1万p
rm以上の条件にて粗大粒子を遠心分離する。以上の方
法によって、固体微粒子(C)の平均粒子径が1μm以
下、90%累積粒子径が3μm以下の分散液が得られ
る。
【0022】高分子(B) 本発明で使用される高分子(B)としては、酸または塩
基による中和によってカチオンもしくはアニオンのイオ
ン性基に解離可能な官能基を、その乾燥重量当り1me
q/g以上、5meq/g以下含有することが必須条件
である。また、疎水性高分子(A)と高分子(B)がお
互いに如何なる比率で混合しても相溶することが望まし
い。イオン性基に解離可能な官能基としては、−COO
H,−SO3 H,−OSO3 H,−OPO(OH)2
どの酸性の官能基、第1級アミノ基、第2級アミノ基、
第3級アミノ基などの塩基性官能基が挙げられる。塗膜
の耐水性、塗布設備の錆防止の観点からカルボキシル基
がより好適に使用される。イオン性基に解離可能な官能
基が1meq/g未満の場合には、本発明の方法で得ら
れる固体微粒子を含有する高分子微粒子の水性分散体の
粒径が粗大化し、経時的に沈降や凝集が起きるために問
題である。イオン性基に解離可能な官能基が5meq/
gを超える場合、本発明の方法で得られる固体微粒子を
含有する高分子微粒子の水性分散体から得られる塗膜の
耐水性が不良となり、問題である。上記に挙げられたイ
オン性基の他に、−OH,−(CH2 CH2 O)n
H,−CONH2 などの非イオン性親水性基も、本発明
の水性分散体の耐水性などの物性を影響しない範囲で含
まれてもよい。
【0023】高分子(B)の具体的な例としては、スチ
レン−アクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸
共重合体の加水分解物、スチレン−無水マレイン酸共重
合体と一価アルコールの反応生成物、メタクリル酸エス
テル、アクリル酸エステルとアクリル酸及びメタクリル
酸の共重合体、カルボン酸基を含有するポリウレタン、
スルホイソフタル酸ナトリウム塩を共重合成分とする共
重合ポリエステル、カルボン酸基を含有するポリウレタ
ン−アクリルグラフト共重合体などのような例が挙げら
れるが、特にこれらに限られたものではない。高分子
(B)の分子量については、ポリスチレン換算でMw=
3,000〜500,000の範囲が好ましく、より好
ましくはMw=5,000〜100,000の範囲にあ
るが良い。高分子(B)のガラス転移温度については、
本発明の固体微粒子を含有する高分子微粒子の最終的な
用途での要求特性に応じて最適の値が選択されるもので
あり、特に制限されるものではない。また、高分子
(B)は単一の高分子成分から成る必要は必ずしもな
く、複数の高分子成分の混合物であってもよい。なお、
混合物の場合には、一方の高分子成分のイオン性基に転
換可能な官能基の含有率が5meq/gを超えていても
よく、混合物全体として、上記官能基含有量が1meq
/g以上、5meq/g以下の範囲にあればよい。
【0024】高分子(A)と高分子(B)の組成比 本発明の水性分散体に含まれる高分子(A)と高分子
(B)の組成比は 0.1≦Ma/(Ma+Mb)≦0.8 (ここで、Maは疎水性高分子(A)の重量を表し、M
bは高分子(B)の重量を表す)の範囲にあることが必
要である。Ma/(Ma+Mb)が0.1未満の場合に
は、本発明の固体微粒子を含有する高分子微粒子の水性
分散体における粒子径は小さく、分散安定性も問題ない
が、この水性分散体から得られる塗膜の耐水性が不良と
なり問題である。Ma/(Ma+Mb)が0.8を超え
る場合には、固体微粒子を含有する高分子微粒子の粒子
径が粗大化する傾向があり、経時的に沈降や凝集が起り
問題となる。固体微粒子(C)の含有量 本発明の水性分散体中に含まれる機能性固体微粒子
(C)の量は、固体微粒子の種類及び水性分散体の用途
に応じて決めるものであるが、一般的に本発明の水性分
散体の乾燥総重量に対し、固体微粒子(C)の量が65
wt%以下であることが好ましい。より好ましくは50
wt%である。機能性固体微粒子(C)の含有量が65
wt%を越える場合、得られる固体微粒子を含有する高
分子微粒子の水性分散体の安定性が悪くなり、実用上問
題となる。
【0025】本発明の機能性固体微粒子を含有する高分
子微粒子の平均粒子径は、2μm以下、90%累積粒子
径が5μm以下であることが必要である。より好ましく
は平均粒子径が1μm以下、90%累積粒子径が3μm
以下である。平均粒子径が2μm以上、或いは90%累
積粒子径が5μm以上になる場合、本発明の水性分散体
から得られる塗膜の特徴である透明性、高光沢が損なわ
れるだけでなく、粒子がお互いに融着して均一な塗膜を
作るため、粒子が大きくなり、この融着が不十分になる
と、塗膜の耐水性、耐摩耗性なども悪くなる可能性があ
る。
【0026】
【実施例】以下に実施例、比較例および試験例を挙げて
本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれによって
限定されるものではない。
【0027】合成例1 (高分子(B)の合成) 還流冷却器、滴下ロート、温度計、攪拌装置を備えた2
リットル四ッ口フラスコに下記の原料を仕込み、内温を
90℃に制御しながら、窒素雰囲気で3時間反応させ
た。 メチルエチルケトン 120g イソホロンジイソシアネート 180g ポリカプロラクトンジオール(数平均分子量2000) 360g ジメチロールプロピオン酸 38g 続いて、12gのメタクリル酸−2−ヒドロキシエチル
を添加し、90℃で2時間反応を続けた。その後、20
gのエタノールと0.1gのジブチルすずジラウレート
を添加し、更に2時間反応させ、次に冷却後270gの
メチルエチルケトンで希釈した。このようにして、不揮
発分60%の二重結合含有ウレタン樹脂を得た。次に、
上記と同じ反応装置をもう一基設置し、得られた二重結
合含有ウレタン樹脂150gと100gのメチルエチル
ケトンを仕込み、沸点まで昇温した。沸点を保持したま
ま下記組成のビニル単量体混合物とラジカル重合開始剤
を別々に2時間かけて滴下した。 1.ビニル単量体混合物 スチレン 60g アクリル酸ブチル 90g アクリル酸 60g 2.開始剤溶液 アゾビスイソブチロニトリル 12g ノフマMSD(重合調整剤、日本油脂(株)製) 5g メチルエチルケトン 150g このようにして、アクリル−ウレタングラフト共重合体
のMEK溶液を得た。この樹脂溶液であるワニスの固形
分、粒度、酸価(ワニスベース)はそれぞれ49.8
%、1.3ポイズ、50.2mg−KOH/gであっ
た。
【0028】実施例1 ニトロセルロース樹脂(NC.RS 1/4(FQ
綿))45重量部と有機顔料(大日精化工業製8040
レッド)45重量部をオープン型ニーダーで5分間、均
一に混合した後、可塑剤(フタル酸ジブチル)10重量
部を加えて混練を15分間続け、ブロック状のコンパウ
ンドを得た。このコンパウンドを二本ロール(井上製作
所製)に供給し、13.6重量部の酢酸ブチルを添加し
てコンパウンドに流動性を付与してシート状に成形した
後、得られたシートを折りたたみ再度シート状に成形す
る作業を50回繰り返した。得られたシートをペレタイ
ザーで約3mm角のキュービック状のチップにカッティ
ングを行ない、顔料含有率45wt%のマスターチップ
を得た。500mlのビーカーに80gのこのマスター
チップと150gの合成例1において得られた樹脂溶液
及び50gのメチルエチルケトンを添加した後、ディス
パーで3時間攪拌し、均一な顔料分散体を得た。この分
散液中の顔料粒子の平均粒子径は以下の方法より測定し
た。まず、分散液をアプリケーターにてポリエチレンシ
ート上に塗布し、常温乾燥後、厚さ50μmのフィルム
を得た。このフィルムをダイヤモンドカッターによって
超薄切片を切り出し、透過型電子顕微鏡(TEM)
(株)日立製作所製H−500)により電子顕微鏡写真
を撮影した。写真中、約100個の粒子の粒径を測定
し、数平均を求めた結果、平均粒子径は0.035μm
であった。
【0029】2リットルのフラスコにこの分散体を仕込
み、室温で攪拌しながら、28%アンモニア水15.2
gを徐々に滴下し、中和操作を行なった。続いて300
gのイオン交換水を徐々に滴下し、転相を起させた。攪
拌をつづけながら、減圧にて有機溶剤を回収し、顔料微
粒子を含有する高分子微粒子の水性分散体を得た。この
水性分散体の不揮発分は33.3wt%、粘度は0.3
ポイズであった。また、不揮発成分中に、顔料の含有率
は23.2wt%(計算値)であった。顔料微粒子を含
有する高分子微粒子の粒子径はレーザー光散乱法より測
定した。使用計器は、日機装(株)製のMicrotr
acで、測定条件及び手順は以下の通りである。まず、
高分子微粒子の水性分散体をイオン交換水にて、不揮発
分が5%になるように希釈する。希釈サンプル5mlを
サンプルセルに投入し、サンプルの濃度を示す“Sig
nal Level”が0.8になるように更にイオン
交換水で希釈する。なお、測定時間は600秒とし、計
測回数を3回とする。平均粒子径としては、体積平均粒
子径、面積平均粒子径、個数平均粒子径などがあるが、
ここでは体積平均粒子径を採用した。以下の方法より測
定した実施例1の高分子微粒子の平均粒子径は0.38
μmであった。
【0030】実施例2 セルロースアセテートブチレート樹脂(Eastman
Chemical社製、グレード名:CAB381−
05)260gを512gのメチルエチルケトンに溶解
した。次に、フタロシアニンブルー顔料(大日精化工業
社製、商品名:シアニンブルー5187)225g、分
散剤(楠本化成製、商品名:ディスパロン4401−M
Z)3g、ガラスビーズ(1mmφ)1200gを秤り
取り、上記のセルロースアセテートブチレート樹脂のメ
チルエチルケトン溶液に混合後、バッチ式サンドグライ
ンダー(SG)にて回転数1600rpmの条件下で2
時間分散した。次に500mlのビーカーを用意し、上
記樹脂分散液216gと合成例1で得られた樹脂溶液1
84gを添加した後、ディスパーにて1時間攪拌し、均
一な顔料分散体を得た。実施例1と同じ方法にて測定さ
れたこの分散体中の分散粒子の平均粒子径は0.06μ
mであった。2リットルのフラスコにこの分散体を仕込
み、室温で攪拌しながら、28%アンモニア水18.7
gを徐々に滴下し、中和操作を行なった。続いて352
gのイオン交換水を徐々に滴下し、転相を起させた。攪
拌をつづけながら、減圧にて有機溶剤を回収し、顔料微
粒子を含有する高分子微粒子の水性分散体を得た。この
水性分散体の不揮発分は35.1wt%、粘度は0.3
ポイズであった。また、不揮発成分中に、顔料の含有率
は24.3wt%(計算値)であった。レーザー光散乱
法による高分子微粒子の平均粒子径は0.45μmであ
った。
【0031】実施例3 実施例1の有機顔料を紫外線吸収剤の2−ヒドロキシ−
4−メトキシベンゾフェノン(住友化学製、グレード
名:スミソーブ110)に変更する以外は、実施例1と
同じ配合及び操作で紫外線吸収剤含有量45wt%のマ
スターチップを得た。500mlのビーカーに100g
のこのマスターチップと120gの合成例1において得
られた樹脂溶液及び50gのメチルエチルケトンを添加
した後、ディスパーで3時間攪拌し、均一な紫外線吸収
剤分散体を得た。実施例1と同じ方法にて測定されたこ
の分散体中の分散粒子の平均粒子径は0.040μmで
あった。2リットルのフラスコにこの分散体を仕込み、
室温で攪拌しながら、28%アンモニア水12.2gを
徐々に滴下し、中和操作を行った。続いて250gのイ
オン交換水を徐々に滴下し、転相を起させた。攪拌をつ
づけながら、減圧にて有機溶剤を回収し、紫外線吸収剤
微粒子を含有する高分子微粒子の水性分散体を得た。こ
の水性分散体の不揮発分は37.9wt%、粘度0.5
ポイズであった。また、不揮発成分中に、顔料の含有率
は28.1wt%(計算値)であった。レーザー光散乱
法による高分子微粒子の平均粒子径は0.5μmであっ
た。
【0032】実施例4 実施例1の有機顔料を酸化防止剤ジステアリルチオジプ
ロピオネート(第一工業製薬製 グレード名:ラスミッ
トSS)に変更する以外は、実施例3と同じ配合及び操
作で、酸化防止剤を含有する高分子微粒子の水性分散体
を得た。この水性分散体の性状値を表1に示す。
【0033】実施例5 実施例1の顔料をカラー液晶表示用二色性顔料(三井東
圧化学社製、グレード名:SI−426(レッド))に
変更する以外は、実施例1と同じ配合及び操作で、二色
性顔料を含有する高分子微粒子の水性分散体を得た。こ
の水性分散体の性状値を表1に示す。
【0034】実施例6 実施例1の顔料をかび防止剤チアベンダゾール(米メル
ク社製、グレード名:メタゾールTK−100、日本エ
ム・エス・ティ(株)輸入)に変更する以外は、実施例
1と同じ配合及び操作で、かび防止剤を含有する高分子
微粒子の水性分散体を得た。この水性分散体の性状値を
表1に示す。
【0035】実施例7 スチレン−アクリル酸エステル共重合樹脂(日立化成ポ
リマー(株)製、グレード名:テスロイド4203−5
0、不揮発分50%)100重量部とカーボンブラック
(三菱化学社製、グレード名:MA100R)50重量
部をオープン型ニーダで15分混合、混練し、ブロック
状のコンパウンドを得た。このコンパウンドを二本ロー
ル(井上製作所製)に供給して、シート状に成形した
後、得られたシートを折りたたみ、再度シート状に成形
する作業を50回繰り返した。得られたシートをペレタ
イザーで約3mm角のキュービック状のチップにカッテ
ィングを行ない、顔料含有率50wt%のマスターチッ
プを得た。500mlのビーカーに100gのこのマス
ターチップ、60gのスチレン−アクリル酸共重合体
(ジョンソンポリマー製、グレード名:ジョンクリル6
83、酸価150mg KOH/g、重量平均分子量M
w=8000)と120gの酢酸エチルを添加後、ディ
スパーで3時間攪拌し、均一な顔料分散体を得た。実施
例1と同じ方法で測定されたこの分散体中の顔料粒子の
平均粒子径は0.051μmであった。2リットルのフ
ラスコにこの顔料分散体を全量仕込み、室温で攪拌しな
がら、28%NH3 のアンモニア水10gを徐々に滴下
し、中和操作を行った。続いて250gイオン交換水を
徐々に滴下し、転相を起させた。攪拌をつづけながら、
減圧にて有機溶剤を回収し、顔料微粒子を含有する高分
子微粒子の水性分散体を得た。この水性分散体の性状値
を表1に示す。
【0036】実施例8 塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂(UCC(株)製、
グレード名:ビニライトVMCC)50重量部、有機顔
料8040レッド45重量部、フタル酸ジオクチル5重
量部と酢酸ブチル10重量部をオープン型ニーダに仕込
み、15分混合混練してブロック状のコンパウントを得
た。このコンパウントを実施例7と同様の方法で加工し
て、顔料含有率45wt%のマスターチップを得た。次
いで実施例7と同じ配合及び操作方法で顔料微粒子を含
有する高分子微粒子の水性分散体を得た。この水性分散
体の性状値を表1に示す。なお、水に転相する前に透過
型電子顕微鏡より測定した分散顔料の平均粒子径は0.
032μmであった。
【0037】実施例9 実施例8の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂をセルロ
ースアセテートブチレート樹脂CAB381−05に変
更する以外は、実施例8と同じ配合及び操作で、顔料微
粒子を含有する高分子微粒子の水性分散体を得た。この
水性分散体の性状値を表1に示す。なお、水に転相する
前に透過型電子顕微鏡より測定した分散顔料の平均粒子
径は0.030μmであった。
【0038】比較例1 セルロースアセテートブチレート樹脂(Eastman
Chemical社製、グレード名:CAB381−
05)380gを497gのメチルエチルケトンに溶解
した。次にシアニンブルー5187を225g、分散剤
ディスパロン4401−MZを3g、ガラスビーズ
(1.5mmφ)を1000gそれぞれ秤り取り、これ
をセルロースアセテートブチレート樹脂のメチルエチル
ケトン溶液と一緒にバッチ式サンドグラインダー(S
G)に仕込み、回転数1600rpmの条件下で2時間
分散した。次に1リットルのビーカーを用意し、上記樹
脂分散液350gと合成例1で得られた樹脂溶液60g
を添加した後、ディスパーにて1時間攪拌し、均一な顔
料分散体を得た。実施例1と同じ方法にて測定されたこ
の分散体中の分散粒子の平均粒子径は0.071μmで
あった。2リットルのフラスコにこの分散体を仕込み、
室温で攪拌しながら、28%アンモニア水6.1gを徐
々に滴下し、中和操作を行なった。続いて300gのイ
オン交換水を徐々に滴下し、転相を起させた。攪拌を続
けながら、減圧にて有機溶剤を回収し、顔料微粒子を含
有する高分子微粒子の水性分散体を得た。この水性分散
体の不揮発分は39.4wt%、粘度は0.1ポイズで
あった。また、不揮発成分中に、顔料の含有率は21.
0wt%(計算値)であった。レーザー光散乱法による
高分子微粒子の平均粒子径は1.3μmであった。
【0039】比較例2 1リットルのビーカーに、実施例1で得られたマスター
チップ40gと合成例1で得られた樹脂溶液330gを
仕込み、ディスパーで3時間攪拌し、均一な顔料分散体
を得た。透過型電子顕微鏡によって測定されたこの分散
体中の分散粒子の平均粒子径は0.05μmであった。
2リットルのフラスコにこの分散体を仕込み、室温で攪
拌しながら、28%アンモニア水33.4gを徐々に滴
下し、中和操作を行なった。続いて420gのイオン交
換水を徐々に滴下し、転相を起させた。攪拌を続けなが
ら、減圧にて有機溶剤を回収し、顔料微粒子を含有する
高分子微粒子の水性分散体を得た。この水性分散体の不
揮発分は31.5wt%、粘度は1.1ポイズであっ
た。また、不揮発成分中に、顔料の含有率は88wt%
(計算値)であった。レーザー光散乱法による高分子微
粒子の平均粒子径は0.15μmであった。
【0040】比較例3 実施例1のニトロセルロース樹脂の替わりに、スチレン
/アクリル酸共重合体ジョンクリル683(ジョンソン
ポリマー製、酸価150mg KOH/g、重量平均分
子量Mw=8000)を使用し、それ以外は実施例1と
同じ配合及び分散方法で顔料含有率45wt%のマスタ
ーチップを得た。500mlのビーカーに100gのこ
のマスターチップと80gの固形のスチレン/アクリル
酸共重合体ジョンクリル683を仕込み、更に50gの
酢酸エチルと70gのイソプロピルアルコールを添加し
た後、ディスパーで3時間攪拌し、均一な顔料分散体を
得た。実施例1と同じ方法にて測定されたこの分散体中
の分散粒子の平均粒子径は0.050μmであった。2
リットルのフラスコにこの分散体を仕込み、室温で攪拌
しながら、28%アンモニア水20.3gを徐々に滴下
し、中和操作を行なった。続いて315gのイオン交換
水を徐々に滴下し、転相を起させた。攪拌を続けなが
ら、減圧にて有機溶剤を回収し、顔料含有高分子微粒子
の水性分散体を得た。この水性分散体の不揮発分は3
5.1wt%、粘度は1.2ポイズであった。また、不
揮発成分中に、顔料の含有率は25.0wt%(計算
値)であった。レーザー光散乱法による高分子微粒子の
平均粒子径は0.31μmであった。
【0041】比較例4 500mlのビーカーに100gのセルロースアセテー
トブチレート樹脂(Eastman Chemical
社製、グレード名:CAB381−05)と80gのメ
チルエチルケトンを添加し、均一に溶解した。次に実施
例2のサンドグラインダー分散より得られた分散液21
6gをこのビーカーに添加した後、ディスパーにて1時
間攪拌し、均一な顔料分散体を得た。1リットルのビー
カーに、イオン交換水310g、乳化剤としてポリオキ
シエチレンノニルフェニルエーテル(花王(株)製、エ
マルゲン906)10gを添加し、ホモミキサー(回転
数10000rpm)で攪拌しながら、上記顔料分散体
を10分かけて徐々に添加し、水に乳化分散した。2リ
ットルのフラスコにこの乳化分散液を仕込み、昇温、減
圧にて有機溶剤を回収し、顔料微粒子を含有する高分子
微粒子の水性分散体を得た。この水性分散体の不揮発明
は40.0wt%、粘度は0.2ポイズであった。ま
た、不揮発成分中に、顔料の含有率は23.3wt%
(計算値)であった。レーザー光散乱法による高分子微
粒子の平均粒子径は3.4μmであった。
【0042】表1に実施例1〜9及び比較例1〜4の構
成ないし特性値をまとめて示した。
【0043】
【表1】
【0044】実施例及び比較例より得られた機能性固体
微粒子を含有する高分子微粒子の水性分散体について、
以下の方法よりその安定性と耐水性を評価した。評価結
果を表2に示す。
【0045】[I] 水性分散体としての安定性 (1)機械安定性:水性分散体と同体積のガラスビーズ
(1.5mmφ)をビーカーに添加し、ホモミキサーに
て回転速度5000rpmで2時間攪拌した。ガラスビ
ーズをろ過し、24時間静置した。目視にてこの静置液
に沈降の有無を確認した。機械安定性は以下の2段評価
とした。 ○………沈降なし ×………沈降あり
【0046】(2)保存安定性:水性分散体を60℃に
て3ヶ月静置した後、目視にて沈降の有無を確認した。
また、レーザー光散乱法より静置前後の平均粒子径を測
定した。保存安定性は以下の3段評価とした。 ○………沈降なし、平均粒子径の増大が50%以内 △………沈降なし、平均粒子径の増大が次の範囲にある 50%≦平均粒子径の増大≦100% ×………沈降あり、或は沈降なしでも平均粒子径の増大
が100%以上
【0047】[II] 水性分散体を塗膜とした場合の安
定性 (3)耐水性:水性分散体をガラス板に乾燥膜厚が約1
0μmになるようにバーコーターを使用して塗布し、6
0℃×3時間強制乾燥した後、更に常温にて1時間放置
した。(造膜しない水性分散体にはブチルセロソルブを
造膜助剤として使用した。)上記のテスト板を45℃の
温水に30分浸漬し、塗膜の状態を目視にて観察した。 ○………変化なし △………わずかなブリスターが発生 ×………全面ブリスター発生或は塗膜の一部が溶けた。
【0048】
【表2】
【0049】
【発明の効果】本発明により、機能性固体微粒子がサブ
ミクロンオーダーに分散され、水中に安定的に存在し、
且つ耐水性の良好な塗膜が形成できるような機能性固体
微粒子を含有する高分子微粒子の水性分散体の製造が可
能となった。そして、用途に応じて機能性固体微粒子
(C)を選択し、また本発明の疎水性高分子(A)及び
高分子(B)を適宜組み合わせることによって、本発明
の水性分散体に様々な機能を持たせることができるだけ
でなく、本発明の水性分散体からなる塗膜にも耐水性に
加え種々の機械的特性を持たせることが可能となる。更
に、上記の本発明の特徴を行かして、色々な分野での利
用が期待される。例えば、インクジェットプリンターの
分野では、従来の染料をベースにするインキから本発明
の水性分散体からなる顔料ベースのインキに置き換える
ことができ、その結果、印刷物の安定性、耐水性及び耐
候性が飛躍的に改良され、従来のインキでは得られなか
った高精細度の印字が可能となる。また、化粧品の分野
においては、本発明の水性分散体を用いると、紫外線を
カットでき且つ透明性が改善されたファンデーションを
製造することができ、また口紅に応用すれば、落ちな
い、色移りしないという特徴を有する口紅を得ることが
できる。そしてまた、マニュキュアに用いた場合には、
高光沢、耐久性に優れたマニュキュアが得られるだけで
なく、有機溶剤による爪の着色の問題も解決できる。更
に、カラーフィルター、フラットディスプレーの製造に
おいては、本発明の水性分散体を利用することで、高解
像で且つ色再現性の良い液晶、ディスプレーが製造でき
る。

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 カチオン若しくはアニオンに解離可能な
    官能基の含有量が0.5meq/g以下である疎水性高
    分子(A)と該疎水性高分子(A)に平均粒子径1μm
    以下、90%累積粒子径3μm以下で分散する機能性固
    体微粒子(C)とを主成分とするコア部、及びカチオン
    若しくはアニオンに解離可能な官能基の含有量が1me
    q/g以上、5meq/g以下である高分子(B)の中
    和物を含むシェル部から構成され、高分子微粒子に含ま
    れる疎水性高分子(A)と高分子(B)との組成比が、 0.1≦Ma/(Ma+Mb)≦0.8 (ここで、Maは疎水性高分子(A)の重量を表し、M
    bは高分子(B)の重量を表す)である、機能性固体微
    粒子を含有し平均粒子径が2μm以下、90%累積粒子
    径が5μm以下である高分子微粒子の水性分散体。
  2. 【請求項2】 機能性固形微粒子(C)が顔料である請
    求項1記載の高分子微粒子の水性分散体。
  3. 【請求項3】 機能性固体微粒子(C)及び疎水性高
    分子(A)を混練し、機能性固体微粒子が0.001〜
    1μmに分散された固形状の分散体とし、 次いで、上記固形状の分散体及び高分子(B)を有機
    溶媒に添加し、混合溶解した後に、 中和及び転相操作を行い、 その後、有機溶媒を除去する工程から成ることを特徴
    とする、請求項1に記載の機能性固体微粒子含有高分子
    微粒子の水性分散体の製造方法。
  4. 【請求項4】 機能性固体微粒子(C)を疎水性高分
    子(A)の有機溶剤溶液中に添加し機能性固体微粒子を
    0.001〜1μmの大きさに分散させ、 次いで、上記有機溶剤溶液中に高分子(B)を添加
    し、混合溶解した後に、 中和及び転相操作を行い、 その後、有機溶媒を除去する 工程から成ることを特徴とする、請求項1に記載の機能
    性固体微粒子含有高分子微粒子の水性分散体の製造方
    法。
  5. 【請求項5】 固形状の分散体が固形状のチップである
    請求項3に記載の水性分散体の製造方法。
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