JP2792526B2 - 親水性不純物の除去装置および除去方法およびフェノール製造装置 - Google Patents
親水性不純物の除去装置および除去方法およびフェノール製造装置Info
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Description
不純物の除去装置および除去方法およびフェノール製造
装置に関し、フェノール製造装置等のプラントの各種工
程で油液中に含まれるナトリウム等の親水性不純物を除
去する場合などに利用できる。
ラントにおいては、反応条件が温和でプロセスの完全自
動化を行い得るキュメン法が、連続大量生産に適し、か
つ経済性にも優れているため、世界でフェノール製造法
の主流を占めるに至っている。このキュメン法によるフ
ェノールの製造プロセスでは、キュメンの空気酸化後の
中和工程、あるいはキュメンを酸化して得られるキュメ
ンハイドロパーオキサイドを酸開裂後の中和工程などに
おいて、炭酸ナトリウム等のアルカリの注入を行う。
ルカリは、中和工程の下流において種々のトラブル発生
の原因となる。つまり、各中和工程の下流に設けられた
濃縮塔や蒸留塔などにはリボイラーが備え付けられてい
るが、このリボイラーでプロセスを流れる油液を加熱す
ると、中和に使用されたナトリウム等が析出し、リボイ
ラーのチューブがファウリング(目づまり)を起こすと
いう問題があった。また、このようなリボイラーのファ
ウリングは、リボイラーの熱効率の低下やチェスト圧力
の上昇を招来するので、リボイラーの機能を維持するた
めに、例えば、二〜三箇月に一回等、一定期間毎にプラ
ントの各装置を停止してリボイラーのクリーニングシャ
ットダウンを行わなければならなかった。このため、生
産量の低下を招くという問題があり、さらにクリーニン
グシャットダウンの作業自体がキュメン等の取り扱う油
液の危険性により安全面から好ましくないという問題が
あった。
よりナトリウム等のアルカリのプロセスからの除去が行
われてきた。このような流体処理装置には、グラスウー
ル等の濾材をそのままドラム等に充填したいわゆる充填
濾材方式の濾過器がある。また、いわゆるデプス型と呼
ばれるカートリッジ式の流体濾過用エレメントを装着し
た濾過器もある。このカートリッジ式の流体濾過用エレ
メントは、通常、有孔の円筒形の保持筒の外周面にグラ
スウール等の濾材を略均一な厚みで層状に巻き付けるよ
うにして設け、この濾材の両端面にドーナッツ円盤状の
エンドプレートを固着した構造となっている。そして、
エンドプレートと濾材との固着シールは、エポキシ樹脂
等の合成樹脂系の接着剤などで行われていた。
た充填濾材方式の濾過器によるナトリウム等のアルカリ
の除去方法では、濾材のグラスウール等がアルカリに弱
く、濾材が溶けてしまうため、短期間しか濾材としての
性能を維持できないという問題があった。また、充填濾
材方式では、そのままドラム等に濾材を充填するため、
濾材の密度が不均一になり、充分な性能が得られないう
え、充填した濾材とドラム本体との接触部分に隙間が生
じ、この隙間から油液が漏れてしまうので、ナトリウム
等のアルカリを充分に除去できないという問題があっ
た。
過用エレメントを装着した濾過器によるアルカリの除去
方法では、円筒形の保持筒の外周面に濾材が巻き付けら
れるように設けられているため濾材の密度の不均一性は
解消できるが、エンドプレートと濾材との固着に使用さ
れているエポキシ樹脂等の合成樹脂系の接着剤が、プラ
ントで取り扱われる油液中のアセトン、キュメン、キュ
メンハイドロパーオキサイド、およびフェノールにより
溶解してしまうため、エンドプレートと濾材とのシール
ができなくなるという問題があった。
ウム等の親水性不純物を確実に除去でき、かつ一定の除
去性能を長期間安定して維持することができる親水性不
純物の除去装置および除去方法を提供するとともに、稼
働率の高いフェノール製造装置を提供することにある。
する繊維層により油液中に含まれるナトリウム等の親水
性不純物を水とともに確実に分離除去して前記目的を達
成しようとするものである。具体的には、本発明は、親
水性不純物を含む水分を油液から分離除去する親水性不
純物の除去装置であって、前記親水性不純物を含む水分
を凝集させて前記油液から分離する凝集手段と、この凝
集手段に前記親水性不純物を含む水分と前記油液との混
合液を送液供給する送液手段と、凝集分離された前記親
水性不純物を含む水分を集水する集水手段と、前記親水
性不純物を含む水分を分離除去した後の油液を集油する
集油手段とを有し、前記凝集手段は毛細管を形成する繊
維層を備え、この繊維層はポリプロピレン製の繊維また
はカーボンファイバーを含んでいることを特徴とする。
ここで、前記繊維層の繊維径は、1〜100μm程度と
することが好ましく、より好ましくは4〜20μmであ
る。
は、前記凝集手段が前記繊維層を保持する有孔の略筒形
の保持筒を有し、この保持筒は装置本体から着脱自在と
され、前記繊維層は前記保持筒の外周面を囲むように設
けられていることを特徴とする。そして、本発明の親水
性不純物の除去装置は、前記凝集手段が前記繊維層の両
端面に固着されるエンドプレートを有し、これらのエン
ドプレートには前記繊維層側に突起する薄肉無端状の突
堤が設けられ、前記繊維層の両端部には繊維密度の高い
高密度部が形成され、前記突堤はこの高密度部に食い込
むように介在していることを特徴とする。
によりキュメンを生成する反応塔と、この反応塔の下流
でキュメンを酸化してキュメンハイドロパーオキサイド
を生成する酸化塔と、この酸化塔の下流でキュメンハイ
ドロパーオキサイドを濃縮する濃縮塔と、この濃縮塔の
下流で濃縮後のキュメンハイドロパーオキサイドを酸開
裂して粗フェノールおよび粗アセトンを生成する分解塔
と、この分解塔の下流で粗フェノールおよび粗アセトン
を分離精製する各種の蒸留塔とを備えたフェノール製造
装置であって、前記酸化塔と前記濃縮塔との間の経路の
途中、前記分解塔と前記蒸留塔との間の経路の途中、あ
るいは前記濃縮塔から余剰のキュメンを前記酸化塔の上
流側に戻すために設けられる経路の途中のうちの少なく
とも一箇所に、前記親水性不純物の除去装置のいずれか
を設けたことを特徴とする。
プラントで取り扱われる油液中に含まれる親水性不純物
を油液から分離除去する親水性不純物の除去方法であっ
て、前記油液中に水を注入し、注入した水に前記油液中
の親水性不純物を移行抽出させ、この親水性不純物を含
む水分を毛細管を形成する繊維層を通過させて凝集分離
することを特徴とする。さらに、本発明の親水性不純物
の除去方法は、前記繊維層を通過して凝集分離された親
水性不純物を含む水分の一部分をブローし、残りの部分
を前記油液中に注入する水として再使用することを特徴
とする。
は、前記油液が、キュメンハイドロパーオキサイドを分
解して得られる粗フェノールおよび粗アセトンを含む混
合液であることを特徴とする。ここで、前記粗フェノー
ルおよび粗アセトンを含む油液に、この油液量の5〜2
0%に相当する容積の水を注入し、この水の注入ととも
に、または注入した後に、これらの水と油液との混合液
を攪拌することが望ましい。さらに、本発明の親水性不
純物の除去方法は、前記油液が、キュメンおよびキュメ
ンを酸化して得られるキュメンハイドロパーオキサイド
を含む混合液であることを特徴とする。
るナトリウム等の親水性不純物を水の中に移行抽出さ
せ、この親水性不純物を含む水と油液との混合液を送液
手段により凝集手段に送り、これらの混合液を凝集手段
の繊維層に形成された毛細管内を通過させて繊維層の中
で親水性不純物を含む水を凝集成長させることにより、
親水性不純物を含む水と油液とを分離する。この際、繊
維層は、ポリプロピレン製の繊維またはカーボンファイ
バーを含んで構成するので、耐アルカリ性および耐溶剤
性を有し、例えば、油液中に含まれる親水性不純物が、
ナトリウム等のアルカリである場合においても、繊維は
溶けてしまうことがないため、凝集手段の凝集分離性能
は長期間安定して維持される。加えて、繊維層がポリプ
ロピレン製の繊維を含んでいる場合、加熱加工等によ
り、繊維層の形状を自由に変形させることができる。従
って、繊維層を固着するエンドプレートに突堤等を設
け、繊維層をこの突堤等と機械的に固着するような形状
とすることができ、エンドプレートと濾材との接着剤に
よる固着を省略することができる。一方、繊維層がカー
ボンファイバーを含んでいる場合、カーボンファイバー
の耐熱性が良好であるので、高温、高圧雰囲気の下でも
繊維層としての機能を十分に発揮することができ、親水
性不純物の除去装置を汎用性の高いものとすることがで
きる。 このような凝集手段による凝集分離の後、油液を
集油手段により集油し、一方、親水性不純物を含む水を
集水手段により集水して除去する。
外周面を囲むように繊維層を配置し、凝集手段をいわゆ
るデプス型のカートリッジ式の構成とすることで、保持
筒への巻き付けにより繊維層を形成できるようになると
ともに、この繊維層の巻き付け形成作業を装置の外部で
行うことができるため、繊維層は略均一な密度および略
均一な厚みに形成される。このため、前述した従来の充
填濾材方式の濾過器のような濾材の密度の不均一性は解
消されるうえ、従来の充填濾材方式の濾過器のような濾
材とドラム本体との接触部分の隙間から油液が漏れる等
の不都合もなくなり、充分な分離除去性能が得られる。
度部にエンドプレートの突堤を食い込ませることにより
繊維層とエンドプレートとを固着することで、前述した
従来のカートリッジ式の流体濾過用エレメントのような
エンドプレートと濾材との固着用接着剤の溶解という不
都合は解消される。
の濃度に応じて親水性不純物の除去装置の上流側の油液
中に積極的に水を注入すれば、親水性不純物の水への移
行抽出が確実に行われ、親水性不純物は水とともに油液
中から確実に除去されるようになる。この際、油液がキ
ュメンハイドロパーオキサイドを分解して得られる粗フ
ェノールおよび粗アセトンを含む混合液である場合に
は、油液量の5〜20%に相当する容積の水を注入し、
この水の注入とともに、または注入した後に、これらの
水と油液との混合液を攪拌すれば、親水性不純物の水へ
の移行抽出がより確実に行われる。さらに、除去した親
水性不純物を含む水の一部分をブローし、残りの部分を
親水性不純物の除去装置の上流側の油液中に注入する水
として再使用すれば、この水の注入処理において大量の
水を要することはなくなり、コストの低減が図られる。
をフェノール製造装置の各箇所、例えば、酸化塔と濃縮
塔との間の経路の途中、分解塔と蒸留塔との間の経路の
途中、あるいは濃縮塔から余剰のキュメンを酸化塔の上
流側に戻すために設けられる経路の途中などに設けてお
くことで、フェノール製造装置のクリーニングシャット
ダウンによる停止時間が削減され、フェノール製造装置
の稼働率の向上が図られ、これらにより前記目的が達成
される。
明する。図1には、本実施例に係るフェノール製造装置
10の全体概略構成が示されている。フェノール製造装置
10は、その上流側(図中左側)から、原料であるベンゼ
ンとプロピレンとを反応させていわゆるキュメン(イソ
プロピルベンゼン)を生成する反応塔11と、ベンゼン塔
12、キュメン塔13を介し、キュメンを空気酸化してキュ
メンハイドロパーオキサイド(CHP)を生成する空気
酸化塔14と、中和のために混入されたナトリウムを分離
除去するナトリウム除去装置30と、キュメンハイドロパ
ーオキサイドを濃縮する濃縮塔15と、濃縮塔15から空気
酸化塔14の上流側に戻る経路に設けられたナトリウム除
去装置31と、濃縮後のキュメンハイドロパーオキサイド
を酸開裂して粗フェノールおよび粗アセトンを生成する
分解塔16と、ナトリウム除去装置32と、フェノールおよ
びアセトンを分離精製する各種の蒸留塔である粗アセト
ン塔17、精製アセトン塔18、フェノール塔19とを有する
構成となっている。
のベンゼンと共にベンゼン塔12に送られる。そして、未
反応のベンゼンはベンゼン塔12から反応塔11の上流側に
戻され、一方、キュメンは下流のキュメン塔13に送ら
れ、ここで滞留した後、空気酸化塔14に送られるように
なっている。図2には、空気酸化塔14から濃縮塔15に至
るまでの酸化工程およびその後の中和工程の詳細が示さ
れている。空気酸化塔14の下流には、熱交換器40を介し
てセトラー41が設けられ、このセトラー41の下流には、
ポンプ42を介してナトリウム除去装置30が設けられてい
る。そして、このナトリウム除去装置30は、熱交換器43
を介して下流の濃縮塔15に接続されている。濃縮塔15に
は、加熱用のリボイラー44が備付けられている。
よび炭酸ナトリウム(Na2CO3)が加えられ、典型的なラ
ジカル連鎖反応によりキュメンハイドロパーオキサイド
が生成される。この際、キュメンは通常20〜22%の酸化
濃度でキュメンハイドロパーオキサイド(CHP)に酸
化される。そして、酸化生成されたCHPおよびキュメ
ンからなる油液は、中和用の炭酸ナトリウム(Na2CO3)
を注入され、セトラー41で静置される。また、ここでは
油液中に比較的多くの水分が含まれているため必ずしも
必要な処理ではないが、炭酸ナトリウムの注入ととも
に、ナトリウム濃度に応じて水の注入処理を適宜行って
もよく、この時注入する水は後述するナトリウム除去装
置30により分離除去されたナトリウムを含む水を再利用
するものであってもよい。
まれるナトリウムは、油液中の水の中に移行抽出され
る。そして、ナトリウムを含む水によりエマルジョン化
(乳化)した状態のCHPおよびキュメンからなる油液
は、ポンプ42によりナトリウム除去装置30に送られ、こ
のナトリウム除去装置30を通過することにより、ナトリ
ウムを含む水が分離されて略油液のみの状態となり、下
流の濃縮塔15に送られる。ここで、これらの酸化工程お
よび中和工程におけるプラントの運転条件の一例を上げ
ると、流体はキュメンおよびCHP(酸化濃度20〜22%
程度)からなる油液であり、その比重は0.9 程度、粘度
は2CP 程度で、流量は約130Ton/H、運転圧力は約2kg/cm
2 、運転温度は約40℃などである。また、ナトリウム除
去装置30の前後において、油液中に含まれるナトリウム
の含有量は、例えば10ppm であった濃度が、1ppm以下の
濃度になる。
ナトリウム除去装置30の詳細構造が示されている。ナト
リウム除去装置30は、その外側をケーシング51に覆わ
れ、このケーシング51の内部の中央付近には、ナトリウ
ムを含む水分を凝集させて油液から分離する凝集手段で
ある凝集器70が設けられている。なお、図3では、凝集
器70は中央付近に一個設置されているが、複数個設置し
てもよく、例えば、外径が3m程度の大型のケーシング
51の場合には、数十個設けられている。ケーシング51内
の底部には、凝集器70に送液供給するためのナトリウム
を含む水分と油液との混合液を溜める混合液室53が設け
られ、混合液室53の側面には、上流側より混合液を導入
する入口ノズル54が設けられ、混合液室53の上面には、
凝集器70に連通する連通路55が設けられている。これら
の導入路54と混合液室53と連通路55とにより送液手段61
が構成されている。
て凝集器70の周囲の部分は、凝集器70を通過して分離さ
れたナトリウムを含む水分と油液とを溜める分離液室60
となっている。プラントの運転時においては、この分離
液室60には上下に二層が形成され、上側の層はナトリウ
ムを含む水分を分離除去した後の油液層56、下側の層は
ナトリウムを含む水が沈降した沈降層57となっている。
ケーシング51の上部には、油液層56の油液を下流側に送
り出す出口ノズル(集油手段)58が設けられ、分離液室
60の底面には、沈降層57のナトリウムを含む水分をケー
シング51の外部に排水除去する排水路(集水手段)59が
混合液室53を貫通するように下方に向かって設けられて
いる。ケーシング51には、沈降層57と油液層56との界面
の位置を検知する図示されない液面計等の界面検出手段
が設けられており、これによりケーシング51内の分離液
室60に溜まったナトリウムを含む水を、マニュアルまた
はコントロールバルブを用いて排水路59から適宜排水で
きるようになっている。
が示されている。図4は、縦断面図であり、図5は、水
平断面図である。凝集器70は、その中央に金属製のパン
チプレートあるいは合成樹脂等により形成された有孔の
円筒形の保持筒71を有している。保持筒71の外周面に
は、略均一な密度および略均一な厚みを持った繊維層で
ある濾材72が設けられている。濾材72の材質は、耐アル
カリ性、耐酸性、および耐溶剤性を有するカーボンファ
イバーである。この濾材72の内部には、各繊維の隙間に
より毛細管が形成されている。濾材72の層厚みは、通常
10〜50mm程度であるが、この範囲に限定されるものでは
ない。また、繊維径(繊維の太さ)は、 1〜100μm程
度とすることが好ましく、より好ましくは 4〜20μmで
ある。濾材72の外周面には、さらに金属製のパンチプレ
ート等により形成された有孔の円筒形の外筒73が設けら
れている。これらの保持筒71、濾材72、外筒73の図4中
上下両端には、円盤状のエンドプレート74が固着されて
いる。
金属製のバンド75が巻かれており、濾材72の上下両端部
は、このバンド75により締め付けられて圧縮され、ここ
には流体の浸透を阻止する高密度部76が形成されてい
る。エンドプレート74には、濾材72側に突起する薄肉無
端状の突堤77が設けられており、この突堤77が高密度部
76に食い込んだ状態で上下両端のエンドプレート74を互
いに適宜な本数のボルト78等で締め付けることにより、
濾材72の上下両端面とエンドプレート74とが固着される
ようになっている。また、凝集器70は、ナトリウム除去
装置30の本体部分から容易に着脱可能なカートリッジ式
の構成となっており、適宜交換することで、長期間の使
用による濾材72の目詰まりを防止できるようになってい
る。通常は、濾材72のみを交換すればよい。
は、以下のようにして油液中からナトリウムを含む水分
を除去する。先ず、ナトリウムを含む水分と油液との混
合液を入口ノズル54から混合液室53に導き、ここから連
通路55を通して凝集器70に送液供給する。次に、混合液
を凝集器70でナトリウムを含む水分と油液とに分離す
る。凝集器70では、混合液を保持筒71の内側から保持筒
71の孔を通して濾材72内に進入させ、さらに濾材72内を
内側から外側に向けて通過させた後、外筒73の孔を通し
て外側の分離液室60に送り出す。この際、図6に示すよ
うに、油液中に混在するナトリウムを含む水分を、濾材
72を通過させる間に凝集させる。
μm〜10μm程度に分散した状態のエマルジョン(図中
左側)を、濾材72の繊維の活性を利用して破壊し、その
後、濾材72の繊維の隙間に形成された毛細管内でナトリ
ウムを含む水分を凝集させる。この際、ナトリウムを含
む水分は油液と水との液−液間の表面張力により流れに
よって破壊されることなく、図中右側に移動するに従っ
て成長し、濾材72の外側表面に至るまでに、直径 2mm〜
6mm程度のナトリウムを含む水滴となる。このようにミ
クロン単位の大きさからミリ単位の大きさに成長したナ
トリウムを含む水滴は、外筒73の孔を通った後、油液と
の比重差により沈降して油液と分離され、凝集器70の周
囲の分離液室60の下部には沈降層57が形成される。一
方、この沈降層57の上側には、ナトリウムを含む水分を
分離除去した後の油液層56が形成される。そして、沈降
層57のナトリウムを含む水を排水路59からナトリウム除
去装置30の外部に排水し、一方、油液層56の略純粋な油
液を出口ノズル58から下流側に送り出す。以上のように
してナトリウム除去装置30により油液中に含まれるナト
リウムを水と共に除去し、油液中のナトリウムの濃度を
1/10以下に低減する。
流側に余剰のキュメンを戻す経路(リサイクル工程)の
詳細が示されている(図1参照)。図中左側の濃縮塔15
の下流には、熱交換器80、ポンプ81、プレフィルター82
を順次介してナトリウム除去装置31が設けられている。
このナトリウム除去装置31の構成およびその作用は、前
述したナトリウム除去装置30の構成およびその作用と同
様である。そして、ナトリウム除去装置31の下流には、
タンク83が設けられ、このタンク83の下流側は、図1に
示した空気酸化塔14の上流側に接続されている。
なる油液が濃縮されてCHP濃度が増す。この際、濃縮
塔15の塔頂にはキュメンが留出する。この余剰のキュメ
ンには、フェノール分が若干含まれているので、フェノ
ール分を除去するために20〜25%の濃度のカセイソーダ
(NaOH)の水溶液を注入する。その後、カセイソーダの
水溶液を注入されたキュメンをポンプ81によりプレフィ
ルター82に送り、ここで濾過して塵等を取り除き、さら
にナトリウム除去装置31に送る。ナトリウム除去装置31
では、キュメンに含まれるナトリウムを水とともに分離
することにより、キュメン中からナトリウムを除去す
る。ナトリウム除去装置31によりナトリウムを分離除去
されたキュメンは、タンク83で静置されて略完全なキュ
メンの状態とされた後、図1に示した空気酸化塔14の上
流側に送られて再利用される。
リウム除去装置30によりナトリウムを除去された後のC
HPおよびキュメンからなる油液は、濃縮塔15で濃縮さ
れた後、分解塔16に送られる。図8には、分解塔16から
蒸留系を構成する粗アセトン塔17に至るまでの詳細構成
が示されている。図中左側の分解塔(クリベイジ)16の
下流には、セトラー90が設けられ、このセトラー90の下
流には、スタティックミキサー91を介してナトリウム除
去装置32が設けられている。このナトリウム除去装置32
の構成およびその作用は、前述したナトリウム除去装置
30の構成およびその作用と同様である。ナトリウム除去
装置32は、熱交換器92を介して粗アセトン塔17に接続さ
れている。また、粗アセトン塔17には、加熱用のリボイ
ラー93が備付けられている。
触媒として酸開裂される。この時、CHPは略 100%分
解され、粗アセトンと粗フェノールとが生成される。こ
れらの粗アセトンおよび粗フェノールを含む酸開裂反応
生成物は、中和用の炭酸ナトリウム(Na2CO3)を注入さ
れた後、セトラー90で静置される。その後、セトラー90
の下流において、炭酸ナトリウムを注入後の油液(粗ア
セトンと粗フェノールとが主成分)に水を注入し、この
油液と水との混合液をスタティックミキサー91で攪拌し
てナトリウム除去装置32に送る。この際、油液中のナト
リウムは、注入した水に移行抽出され、油液はこのナト
リウムを含む水によりエマルジョン状態となっている。
ここで、注入する水の量は、油液量の 5〜20%に相当す
る容積であることが好ましい。また、水を注入後の混合
液の攪拌手段は、スタティックミキサー91に限定される
ものではなく、ポンプ等の他の機器であってもよい。
の酸化工程の場合と同様に、エマルジョンの破壊後にナ
トリウムを含む水がナトリウム除去装置32の内部に設け
られた凝集器70により凝集して油液と分離する。これに
より、油液からナトリウムが除去される。ナトリウム除
去装置32によりナトリウムを含む水を分離除去された油
液は、粗アセトン塔17に送られ、ここで粗アセトンと粗
フェノールとに分離される。一方、ナトリウム除去装置
32の排水路59から排水されたナトリウムを含む水は、そ
の一部がブローして捨てられ、残りがナトリウム除去装
置32の上流側において注入されるナトリウム移行抽出用
の水として再利用されることが望ましい(図8中一点鎖
線)。この際、ナトリウム除去装置32の上流側には、こ
の再利用されるナトリウムを含む水とともに、ブローし
た量に相当する純水を加えて注入する。ブロー量は、排
水路59から排水されたナトリウムを含む水の全体量に対
し、例えば10%等である。これにより、大量の水を要さ
ず、また水中に流出するアセトン量を極力抑えることが
できるとともに、ナトリウム除去装置32の入口ノズル54
から導入されるナトリウム濃度を一定に保つことができ
る。
出された粗アセトンは、精製アセトン塔18に送られ、こ
こで精製されて製品となるアセトンとされる。一方、粗
アセトン塔17で粗アセトンと分離された粗フェノール
は、フェノール塔19で精製されて製品となるフェノール
とされる。
効果がある。すなわち、凝集器70の濾材72の材質は、耐
アルカリ性、耐酸性、および耐溶剤性を有するカーボン
ファイバーであるので、油液中に含まれるナトリウムに
より繊維が溶けてしまうことはなく、凝集器70の凝集分
離性能を長期間維持することができる。
は、いわゆるデプス型のカートリッジ式の凝集器70を備
えているため、前述した従来の充填濾材方式の濾過器の
場合に比べ、濾材72が略均一な密度および略均一な厚み
を有しているので、高性能の凝集分離機能を発揮するこ
とができるうえ、従来の充填濾材方式の濾過器のような
濾材とドラム本体との接触部分の隙間から油液が漏れる
という不都合を解消することができる。
材72の上下両端面との固着は、突堤77の高密度部76への
食い込みにより行われているので、前述した従来のカー
トリッジ式の濾過器のようなエポキシ樹脂等の合成樹脂
系の接着剤がアセトン、キュメン、キュメンハイドロパ
ーオキサイド、およびフェノールにより溶解してしまう
という不都合を解消することができる。
は、回転部を有さず、簡易な構造であるため、既設配管
中に容易に設置することができるうえ、設置後の運転調
整の必要もなく容易に取扱うことができる。
和工程では、ナトリウム除去装置32の上流側において炭
酸ナトリウムを注入後の油液(粗アセトンと粗フェノー
ルとが主成分)に水を注入し、この油液と水との混合液
をスタティックミキサー91で攪拌しているので、ナトリ
ウムの水への移行抽出を確実に行うことができ、ナトリ
ウム除去装置32の除去性能を向上させることができる。
そして、この時の水の注入量を油液量の 5〜20%に相当
する容積とすることで、この効果を一層確実なものとす
ることができる。
除去したナトリウムを含む水の一部分をブローし、残り
の部分をナトリウム除去装置32の上流側の油液中に注入
する水として再使用することで、この水の注入処理にお
いて大量の水を要することはなくなり、コストを低減す
ることができる。
塔14と濃縮塔15との間の経路の途中にナトリウム除去装
置30、分解塔16と粗アセトン塔17との間の経路の途中に
ナトリウム除去装置32、濃縮塔15から余剰のキュメンを
空気酸化塔14の上流側に戻す経路の途中にナトリウム除
去装置31を有しているので、これらの各箇所で確実なナ
トリウムの除去を行うことができる。このため、濃縮塔
15や粗アセトン塔17に備え付けられた各リボイラー44,
93におけるナトリウムの析出を減少させることができ、
各リボイラー44, 93のチューブのファウリング(目づま
り)を防止することができる。そして、ナトリウムの確
実な除去によりフェノール製造装置10を構成する各装置
材料の腐食も軽減することができる。
トン塔17の各リボイラー44, 93のファウリングを防止す
ることができるため、各リボイラー44, 93のクリーニン
グシャットダウンの実施回数を削減することができる。
このため、フェノール製造装置10の停止時間を短縮して
稼働率を向上させることができるうえ、クリーニングシ
ャットダウンにかかる直接工事費用を節約することがで
き、取扱い液の損失も削減できる。例えば、年間四〜六
回実施していたクリーニングシャットダウンの回数を、
年間一、二回程度に削減することができる。そして、一
回のクリーニングシャットダウンには、二日程度の作業
時間を要することが多く、一回のクリーニングシャット
ダウンの削減で一億円を越えるコストダウンを行うこと
ができる。また、クリーニングシャットダウンの実施回
数の削減により、不安定で爆発の危険があり、かつ人体
に悪影響を及ぼすキュメンを取り扱う回数が削減される
ので、安全面の向上を図ることができる。
のではなく、本発明の目的を達成できる他の構成も含
み、例えば以下に示すような変形等も本発明に含まれる
ものである。すなわち、前記実施例では、各ナトリウム
除去装置30, 31, 32は、縦型の装置となっているが、横
型の装置であってもよく、要するに、その内部に凝集手
段である凝集器70を有し、かつ凝集器70の外側に分離後
の油液とナトリウムを含む水とを溜める分離液室60を形
成できるような構造であればよい。
集器70は細長い円筒形状を有しているが、偏平な円筒形
状であってもよく、保持筒71は前記実施例のような円筒
形に限らず、その断面形状が楕円や多角形等となる筒形
であってもよく、要するに略筒形に構成されていればよ
い。
去装置30, 31, 32は、フェノール製造装置10の空気酸化
塔14と濃縮塔15との間の経路の途中、分解塔16と粗アセ
トン塔17との間の経路の途中、濃縮塔15から余剰のキュ
メンを空気酸化塔14の上流側に戻す経路の途中の各箇所
に一装置ずつ設置されているが、各箇所に二以上の複数
装置設置するようにしてもよい。そして、このように複
数設置する場合には、連続して設置してもよく、あるい
はセトラー等の他の機器を挟むようにして設置してもよ
い。
72の材質は、カーボンファイバーとなっているが、こ
れに限定されるものではなく、例えば、カーボンファイ
バーとポリプロピレン等の他の繊維とを合成した繊維で
あってもよい。このように、ポリプロピレン等の繊維と
合成して繊維層を形成すれば、加熱成形等により、繊維
層の形状を自由に設定することができるので、保持筒お
よびエンドプレートの形状に応じて繊維層を製作するこ
とにより、エンドプレートと濾材との接着剤による固着
を省略することができる。さらに、繊維層の形成方法は
任意であり、例えば、シート状の濾材を多重に巻き付け
て所定の厚みの繊維層を形成してもよく、あるいは材質
の異なる濾材による多層形成としてもよい。
去装置は、フェノールプラントにおける中和工程で油液
中に注入される炭酸ナトリウムやカセイソーダのナトリ
ウムを除去するナトリウム除去装置30, 31, 32となって
いるが、本発明の親水性不純物の除去装置で除去される
親水性不純物は、ナトリウムに限定されるものではな
く、カリウム等の他のアルカリ金属やカルシウム等のア
ルカリ土類金属などであってもよく、要するに水の中に
移行抽出することができる親水性を有する不純物であれ
ばよい。さらに、本発明の親水性不純物の除去装置は、
前記実施例のようなフェノール製造装置10に使用できる
だけではなく、他の類似のプラント、例えばクレゾール
製造プラントなどにおいても使用することができる。
水性不純物の除去装置の毛細管を形成する繊維層がポリ
プロピレン製の繊維またはカーボンファイバーを含んで
いるので、繊維層は耐アルカリ性および耐溶剤性を有
し、油液中に含まれるナトリウム等の親水性不純物を確
実に除去できるうえ、装置の除去性能を長期間一定に維
持することができるとともに、凝集手段をいわゆるカー
トリッジ式の構成とすることで、繊維層の密度の均一化
を図ることができるため、さらに親水性不純物の除去性
能を向上することができるという効果がある。また、こ
の親水性不純物の除去装置をフェノール製造装置等のプ
ラントに設置使用することによりプラントの稼働率を向
上させることができるという効果がある。
示す全体構成図。
置の構成図。
図。
去装置 53 送液手段を構成する混合液室 54 送液手段を構成する入口ノズル 55 送液手段を構成する連通路 58 集油手段である出口ノズル 59 集水手段である排水路 61 送液手段 70 凝集手段である凝集器 71 保持筒 72 繊維層である濾材 74 エンドプレート 76 高密度部 77 突堤 91 攪拌手段であるスタティックミキサー
Claims (10)
- 【請求項1】親水性不純物を含む水分を油液から分離除
去する親水性不純物の除去装置であって、前記親水性不
純物を含む水分を凝集させて前記油液から分離する凝集
手段と、この凝集手段に前記親水性不純物を含む水分と
前記油液との混合液を送液供給する送液手段と、凝集分
離された前記親水性不純物を含む水分を集水する集水手
段と、前記親水性不純物を含む水分を分離除去した後の
油液を集油する集油手段とを有し、 前記凝集手段は毛細管を形成する繊維層を備え、この繊
維層はポリプロピレン製の繊維を含んでいることを特徴
とする親水性不純物の除去装置。 - 【請求項2】親水性不純物を含む水分を油液から分離除
去する親水性不純物の除去装置であって、前記親水性不
純物を含む水分を凝集させて前記油液から分離する凝集
手段と、この凝集手段に前記親水性不純物を含む水分と
前記油液との混合液を送液供給する送液手段と、凝集分
離された前記親水性不純物を含む水分を集水する集水手
段と、前記親水性不純物を含む水分を分離除去した後の
油液を集油する集油手段とを有し、 前記凝集手段は毛細管を形成する繊維層を備え、この 繊
維層はカーボンファイバーを含んでいることを特徴とす
る親水性不純物の除去装置。 - 【請求項3】 請求項1または請求項2に記載した親水
性不純物の除去装置において、前記凝集手段は前記繊維
層を保持する有孔の略筒形の保持筒を有し、この保持筒
は装置本体から着脱自在とされ、前記繊維層は前記保持
筒の外周面を囲むように設けられていることを特徴とす
る親水性不純物の除去装置。 - 【請求項4】 請求項3に記載した親水性不純物の除去
装置において、前記凝集手段は前記繊維層の両端面に固
着されるエンドプレートを有し、これらのエンドプレー
トには前記繊維層側に突起する薄肉無端状の突堤が設け
られ、前記繊維層の両端部には繊維密度の高い高密度部
が形成され、前記突堤はこの高密度部に食い込むように
介在していることを特徴とする親水性不純物の除去装
置。 - 【請求項5】 ベンゼンとプロピレンとによりキュメン
を生成する反応塔と、この反応塔の下流でキュメンを酸
化してキュメンハイドロパーオキサイドを生成する酸化
塔と、この酸化塔の下流でキュメンハイドロパーオキサ
イドを濃縮する濃縮塔と、この濃縮塔の下流で濃縮後の
キュメンハイドロパーオキサイドを酸開裂して粗フェノ
ールおよび粗アセトンを生成する分解塔と、この分解塔
の下流で粗フェノールおよび粗アセトンを分離精製する
各種の蒸留塔とを備えたフェノール製造装置であって、 前記酸化塔と前記濃縮塔との間の経路の途中、前記分解
塔と前記蒸留塔との間の経路の途中、あるいは前記濃縮
塔から余剰のキュメンを前記酸化塔の上流側に戻すため
に設けられる経路の途中のうちの少なくとも一箇所に、
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載した親水性不
純物の除去装置を設けたことを特徴とするフェノール製
造装置。 - 【請求項6】 フェノール製造装置等のプラントで取り
扱われる油液中に含まれる親水性不純物を油液から分離
除去する親水性不純物の除去方法であって、前記油液中
に水を注入し、注入した水に前記油液中の親水性不純物
を移行抽出させ、この親水性不純物を含む水分を毛細管
を形成する繊維層を通過させて凝集分離することを特徴
とする親水性不純物の除去方法。 - 【請求項7】 請求項6に記載した親水性不純物の除去
方法において、前記繊維層を通過して凝集分離された親
水性不純物を含む水分の一部分をブローし、残りの部分
を前記油液中に注入する水として再使用することを特徴
とする親水性不純物の除去方法。 - 【請求項8】 請求項6または請求項7に記載した親水
性不純物の除去方法において、前記油液は、キュメンハ
イドロパーオキサイドを分解して得られる粗フェノール
および粗アセトンを含む混合液であることを特徴とする
親水性不純物の除去方法。 - 【請求項9】 請求項8に記載した親水性不純物の除去
方法において、前記水は前記油液量の5〜20%に相当
する容積で注入され、この水の注入とともに、または注
入した後に、これらの水と油液との混合液を攪拌するこ
とを特徴とする親水性不純物の除去方法。 - 【請求項10】 請求項6または請求項7に記載した親
水性不純物の除去方法において、前記油液は、キュメン
およびキュメンを酸化して得られるキュメンハイドロパ
ーオキサイドを含む混合液であることを特徴とする親水
性不純物の除去方法。
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