JP2792379B2 - 耐摩耗性に優れたTi合金部材とその製造方法 - Google Patents

耐摩耗性に優れたTi合金部材とその製造方法

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、摺動摩耗や高速液滴
エロージョンに対する高い抵抗性が要求される耐摩耗性
部品、例えば自動車動弁部品 (エンジンバルブ、リテー
ナー、リフター) や蒸気タービン翼部品、軸受として用
いるのに好適であって、耐摩耗性をさらに改善した軽量
高耐摩耗チタン合金部材とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】チタン合金は比強度が高く、耐食性や耐
熱性にも優れることから種々の機械部品への適用が進め
られてきたが、耐摩耗性が十分ではなく、そのままでは
機械部品の摺動部には使用できないという問題点があっ
た。そのため耐摩耗性が要求される部材(例えばエンジ
ンバルブのような自動車動弁部品)にチタン合金を適用
することは難しかった。
【0003】耐摩耗性を改善したチタン合金の製造方法
として、従来は、ガス窒化処理、メッキ処理(Ni、Crメ
ッキ等)、PVD 、CVD 法(蒸着法)あるいは浸炭処理に
よってその部材表面に耐摩耗性被覆膜を形成させる方法
が採用されていたが、被膜が薄く密着性が悪いことか
ら、長期間の安定した耐摩耗性は見られなかった。
【0004】それゆえ、本発明者らは、チタン合金自身
に耐摩耗性を保有させるという考えから、特開平2−12
9330号公報において「高耐摩耗チタン合金材」を提案し
た。この材料はβ相チタン素地に炭化チタンが晶出およ
び/または析出・分散してなることを特徴とする複合素
材であり、鉄鋼材料の耐摩耗性を改善するために溶射材
ととしてしばしば用いられるCo基の“ステライト(商品
名)”と同等以上の優れた耐摩耗性を示すものである。
【0005】この高耐摩耗チタン合金材は、主にVAR 溶
解法でインゴットを作成し、熱間鍛伸・圧延により、各
種形状となし、切削加工により最終形状として各種耐摩
耗用途 (例えばエンジンバルブ、リフター、インペラ
ー、ナット、水車等) に使用される。またインゴットか
らそのまま溶解・鍛造する方法で最終製品とする使用例
も考えられる。
【0006】一方、耐摩耗性に優れたチタンおよびチタ
ン合金部材の製造方法として、チタン合金の大気酸化処
理を行い表面に酸化物層および酸素富化層を形成する方
法は従来より行われている。例えば、雑誌「チタニウ
ム、ジルコニウム」 Vol.16, No.3 (1968), p.17、特開
平3−10060 号公報、特開昭64−83652 号公報、特開平
3−36257 号公報参照。
【0007】しかし、今日、Ti合金の用途拡大を図るべ
く一層すぐれた耐摩耗性が求められ、更なる改良が成さ
れた炭化物分散耐摩耗性Ti合金部材およびその製造方法
は知られていなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】かかる炭化物分散耐摩
耗性Ti合金に関するその後の詳細な研究の結果、VAR 溶
解またはプラズマアーク溶解等で、Ti合金とβ相安定化
元素を含む炭化物 (Cr3C2, W2C等) とを混合溶解して製
造した耐摩耗Ti合金は、構造材としての用途に使用する
ことを目的としているため、延性、靱性を劣化させる酸
素量を低減、 (≦0.20wt%) している。そのため、β相
マトリックスの硬度が低く、耐摩耗性が肉盛法を用いて
β相チタン素地に炭化チタンを晶出したものと比べて少
し劣ることが判明した。
【0009】つまり、同一組織的特徴を有していても、
硬度が低いと、TiCがマトリックスに押込まれ、TiCに
よる相手材との密着防止効果が減じ、凝着摩耗が大きく
なり、かつ、アブレシブ摩耗も大となるのである。
【0010】よって、この発明の目的は、従来の耐摩耗
Ti合金が有する程度の疲労強度、常温延性を維持しなが
ら、さらなる耐摩耗性向上を図ることのできる耐摩耗Ti
合金部材とその製造方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】ここに、本発明者らの知
見によれば、Ti合金の製造に際して、TiCの晶出し
たマトリックスにTiAlC析出物を分散させるとと
もに、酸素富化層を表面部に形成し、表面部硬度を高く
すると、これらの複合効果で疲労強度、常温延性を確保
しながら、耐摩耗性が一層向上することを知り、この発
明を完成したのである。すなわち、耐摩耗性Ti合金の
常温延性、靭性を維持しながら耐摩耗性をさらに向上さ
せる方法について詳細に検討した結果、以下のことが判
明した。
【0012】(1) 耐摩耗性Ti合金中の酸素を0.20wt%超
とすれば、マトリックスの硬度は上昇し、耐摩耗性は向
上するが、延性、靱性が著しく低下する。換言すれば、
酸素を0.20%以下に制限することでマトリックスの延
性、靱性劣化が阻止される。
【0013】(2)表面層のみ、処理コストの安い大気
の加熱により、酸素富化させ硬度を高くすれば、内部
の延性、靭性を保持しながら耐摩耗性は維持できる。一
般には、表面のスケールは剥離しやすく、潤滑性はある
が長期間の耐摩耗性にはあまり寄与しない。しかし、一
定条件での加熱により形成される表面の酸素富化層の密
着性は十分であり、長期間の耐摩耗性の改善に効果がみ
られる。
【0014】(3)大気加熱条件として、700〜90
0℃×20〜90分間という加熱条件で行えば、新たに
炭化物(TiAlC)が多量析出するとともに、表面
からの酸素侵入により酸素富化層(10μm深さ部)の
硬度はHv550程度となり、両者の相乗的作用効果で
耐摩耗性が一層向上する。このTiAlCが析出分散
したマトリックスは硬度を上げ、また表面の酸素富化
において析出したTiAlCは耐摩耗性の改善効果を
有する。
【0015】(4)この加熱後に表面にショット処理を
行えば、圧縮残留応力が付加され、耐摩耗性と共に疲労
強度の向上が図れる。
【0016】ここに、この発明の要旨とするところは、 β相チタン素地にTiCが晶出し、TiAlCを析
出分散するとともに表面に酸素富化層を設けた耐摩耗性
にすぐれたTi合金部材である。
【0017】また重量%で、Al:2.0〜8.0
%、V:2.0〜8.0%、Cr:6.0〜15.0
%、C:0.5〜2.0%、 酸素≦0.20%、残部
Tiおよび不可避的不純物から成る合金組成を有するT
i合金に、加熱温度700〜900℃、加熱時間20〜
90分間の加熱条件下で大気中で加熱を行って、該合金
表面に酸素富化層を形成することを特徴とする耐摩耗
性に優れたTi合金部材の製造方法である。この発明の
好適態様によれば、上述の加熱後に、合金表面をショッ
トブラスト処理してもよい。
【0018】
【作用】この発明によれば、耐摩耗Ti合金を適正条件
で加熱することにより、その表面にβTi相素地にTi
AlCが析出分散された高硬度の酸素富化層を備える
こと、およびマトリックス中に多量TiAlCを析出
させることにより、硬度、靭性を維持しながら耐摩耗T
i合金の耐摩耗性がさらに改善されるのである。この発
明における合金組成を上述のように限定した理由を以下
に述べる。本明細書ではとくにことわりがない限り、
「%」は重量%である。
【0019】Al:2.0 %未満では合金の固溶硬化が小さ
く、しかも時効硬化も小さく、耐摩耗性が劣る。またω
相が出現しやすい。一方、8.0 %超ではTi3Al(α2 相)
が生成し、靱性が劣化するため望ましくない。それゆえ
2.0 〜8.0 %とした。
【0020】V:Vはβ相安定化元素で、熱間加工性を
向上させる効果があり、かつβ相安定化に寄与するので
適量添加する。この発明の合金はTi−6Al−4V合金をベ
ースとしてクロム炭化物を添加溶解することで、βTi相
中にTiCを晶出させ製造しているため、通常Ti−6Al−
4V合金に使用するV量に近い成分範囲として2.0 〜8.0
%に限定する。
【0021】Cr:この発明の合金で最も重要な元素であ
る。Crは少量でTi合金をβ相単相とし、かつ固溶硬化も
大きく、耐摩耗性向上効果が大きい。添加形態はクロム
炭化物 (例えばCr3C2)として行うのが望ましい。Cr3C2
は融点が1890℃とTiの融点とあまり差がなく、VAR 溶解
等で簡単に溶解し、Cr3C2 中のCはTiと化合し、TiCと
して晶出する。さらにCrはTi中に固溶し、βTi相単相と
する。Cr量は6.0 %未満ではβ相単相とならず、15.0%
超では加熱・冷却時に多量のTiCr2 を生成しやすくな
り、靱性が劣化するので好ましくない。好ましくは、8
〜12%である。
【0022】C:CはTiCを晶出することで耐摩耗性を
向上させ、かつ、この発明の熱処理によりTi3AlCを析出
させ、さらに耐摩耗性を向上させるが、Cが0.5 %未満
ではTiC量が少なく、耐摩耗性向上効果が小さく、2.0
%超ではTiC量が多くなって、靱性が劣化するので好ま
しくない。
【0023】酸素:酸素は少量でβTi素地を固溶硬化す
るが、同時に延性、靱性の大幅な低下を招く。それゆ
え、0.20%以下に制限することで、得られる合金の延
性、靱性の低下を防止する。その他不可避的不純物とし
て、N、H等があるが、例えば合計量として、0.2wt%
以下程度は許容される。
【0024】しかしながら、かかる合金組成を有する合
金それ自体では、酸素が低く、かつ晶出TiCが粗大な
ことによる低硬度のため同一の組成の肉盛材に比べ、耐
摩耗性は少し低下する傾向になる。したがって、この発
明にあってはさらに表面に酸素富化処理を行うのであ
る。特に、本発明における酸素富化処理によれば、マト
リックスおよび表面の酸素富化層にTiAlCが析出
分散する作用がみられる。
【0025】次に、この表面の酸素富化処理における大
気加熱条件の限定理由について述べる。
【0026】この発明において用いる上述の好適組成合
金の熱処理挙動について、本発明者らは詳細に検討し、
図1に示すTTT 曲線を作成した。
【0027】この発明によれば、700 〜850 ℃で20分以
上保持した後、好ましくは水冷または空冷することによ
り、Ti3AlC炭化物が微細にマトリックス中に析出するの
である。850 〜900 ℃の温度範囲の加熱においても、大
気炉での加熱時間が90分以内の短時間では加熱時にTi3A
lCの析出が見られるノーズ部を通るので、一旦Ti3AlCが
マトリックス中に析出する。しかし、加熱時間が90分よ
り長くなると、平衡状態となりTi3AlCは再固溶して消失
する。
【0028】以上のことから、加熱条件が(700〜900
℃) × (20〜90分) である場合、マトリックス中にはTi
3AlC炭化物が析出し、硬度が高くなり、特にこのような
Ti3AlCとTiCとの表面層における存在が、さらに相手材
との密着性を低下させるので、耐摩耗性の更なる向上が
実現されるのである。
【0029】かかる作用効果は、700℃未満、900
℃超の加熱ではTiAlCが析出しないことから見ら
れない。次に、大気加熱による表面層の酸素富化の効果
について以下に示す。
【0030】本発明者らの詳細な検討の結果、断面硬度
がHv 400以上の酸素富化層が表面からの深さ0.1 mm(100
μm)程度形成されていれば、耐摩耗Ti合金の耐摩耗性は
母材ままよりも大幅に向上することが判明した。
【0031】このとき最表面の硬度はHv450〜65
0の範囲にある。0.1mmより大幅に浅ければ、耐摩
耗性は十分でなく、0.1mmより大幅に深くなると耐
摩耗Ti合金部品の延性、疲労強度の著しい低下を招
く。表面の酸素富化層の厚さは、好ましくは0.05〜
0.15mmである。
【0032】なお、Ti3AlCの析出の観点から、この発明
の好適組成合金の母材硬度は、Ti3AlCを析出させない場
合、Hv 340〜350 程度であり、(700〜900 ℃) × (20〜
90分) の加熱でTi3AlCを析出させるとHv 370程度とな
る。酸素富化層の観点から、Hv400以上の硬度となる酸
素富化層の厚さが0.1 mm程度になる大気酸化条件は(700
〜900 ℃) × (10〜120 分) 、好ましくは20〜90分であ
ることが判った。このときの加熱温度が700 ℃より低け
れば、酸素がマトリックスに侵入しにくく、120分超と
いうように長時間加熱しても、コストアップになるばか
りでなく、もろい酸素富化層が厚く形成されてしまう。
900 ℃より高ければ短時間加熱で0.1 mm以上の酸素富化
層が形成されるが、もろい酸素富化層が厚く形成され母
材の延性、疲労強度が低下するし、同時にTi3AlC析出の
効果もない。
【0033】以上のことから、本発明の好適成分合金に
おいて(700〜900℃)×(20〜90分)の大気
加熱条件をとることで、表面層が酸素富化により高硬度
化し、かつTiC晶出炭化物とTiAlC析出酸化物
が分散したマトリックスが形成され、一般的なTi合金
大気酸化処理によって得られる耐摩耗性向上効果より
も、予想以上に大きな耐摩耗性向上が図れることが判明
した。
【0034】
【0035】図2はこの発明の耐摩耗Ti合金部材の大
中で加熱した場合の表面近傍断面を模式的に示す説明
図である。厚さ約100μmの表面酸素富化層1は高硬
度高酸素マトリックスと晶出TiC相3と析出Ti
lC相5からなり、その内部は低酸素βTiマトリック
ス2と晶出TiC相3と析出TiAlC相5からな
る。本発明によれば、TiC、TiAlCが内部と表
面の酸素富化層10との両方に分散していることから、
靭性を確保しながら耐摩耗性が大幅に改善されるのであ
る。
【0036】大気中で加熱後の耐摩耗Ti合金表面をシ
ョットブラスト処理するとスケールが除去されると同時
に表面に圧縮残留応力が付与され、耐摩耗Ti合金の疲
労強度向上に有利である。
【0037】この際スケール (TiO2) は相手材との潤滑
性向上 (耐凝着性) に効果があるがアブレシブ摩耗性は
向上させないし、疲労強度低下の原因ともなり除去する
方が望ましい。
【0038】ショット粒は鉄製(カットワイヤー、鋼
球)、アルミナ粒子等いずれでもよく、スケールは除去
するが、表面酸素富化層は大量には除去しない程度の
ショット条件で処理すればよい。
【0039】なお、一般的なTi合金(例えばTi−6
Al−4V)をこの発明の条件内で大気中にて加熱し、
酸素富化しても、その耐摩耗性向上効果は2〜3倍向上
するだけであるが、この発明で特定する耐摩耗Ti合金
さらにTi AlCが析出するため5〜10倍向上
し、耐摩耗性向上効果は予想以上に大きいことが判明し
ている。
【0040】
【実施例】
(実施例1)Ti−6.0 Al−4.0V−11.0Cr−1.5 C成分の耐
摩耗Ti合金を炭素源としてCr3C2粉末を用いVAR 溶解に
より、直径300 mmのインゴットに溶製した。続いて1100
℃にて熱間鍛伸し、直径25mmの鍛伸材 (酸素≦0.20%)
とした。この鍛伸材より直径10×長さ40mmの摺動摩耗試
験片および幅10×高さ10×長さ15(mm)エロージョン試験
片、小野式疲労試験片 (直径8×平行部40mm) を切出し
た。
【0041】続いて、この試験片を表1にまとめて示す
ように、600 、700 、800 、900 ℃×5〜300 分の大気
加熱処理を行った後、空冷し、摩耗試験とエロージョン
試験および疲労試験に供した。なお、試験前に#600エメ
リー紙でスケールを除去した。比較材として、同一寸法
の切削ままおよび800 ℃、1000℃×60分の真空処理材を
用いた。
【0042】「摩耗試験」はピンオンディスク方式によ
って実施したが、試験条件は 試験片の押圧荷重 : 2 kg 試験片と相手材 (ディスク) との摺動速度 : 62.8 m/mi
n 摺動距離 : 2.5×104 m 相手材 (ディスク) : 60キロ級高張力鋼 摩擦面の潤滑 : なし であり、このときの重量減少量で耐摩耗性を評価した。
【0043】「エロージョン試験」には水ジェット方式
を採用し、予めバフ研磨にて鏡面研磨した試験片表面に 水噴射ノズル径 : 1.2 mm (直径) 噴射水流速 : 370 m/sec ノズル−試験片間距離 : 6.5 mm 噴射角度 : 90° 噴射時間 : 600 sec なる条件で高速水を噴射した後、高速水噴射にて生じた
痕跡の深さを測定し耐エロージョン性を評価した。これ
らの結果を併せて表1に示した。
【0044】
【表1】
【0045】表1で示される結果から、この発明によれ
ば、従来例に比べ、疲労強度が維持されつつ、摺動摩耗
性とエロージョン性が改善されたTi合金が製造できるこ
とが判った。
【0046】試験No.8、9ではいずれも酸素富化層の形
成が過大となっていた。また、試験No.11 では加熱処理
による析出Ti3AlCの効果で切出まま材 (同No.10)より耐
摩耗性が向上しているが、Ti3AlCが析出しない試験No.1
2 では析出まま材と同レベルであり、Ti3AlC析出の効果
が大きいことが判る。この発明の範囲外では、耐摩耗性
の改善が乏しかったり、耐摩耗試験中に試験片が割れた
り、大幅な疲労強度の低下がみられた。
【0047】以上のごとく、特定組成の耐摩耗Ti合金
にこの発明にかかる加熱を行うことで、高酸素富化層と
析出TiAlCとの共存効果で従来の耐摩耗Ti合金
より飛躍的に耐摩耗性が向上することが判明した。な
お、図3に本発明例No.3の供試材の断面硬度分布を
実線で示した。点線で示す同No.10との差違がTi
AlCの析出効果と考えられる。
【0048】(比較例)α型の純Ti (Gr2)、 (α+β) 型
のTi-6Al-4V 合金、およびβ型のTi-3Al-8V-6Cr-4Mo-4Z
r(βC)の直径25mmの熱間鍛伸材を用い、実施例1と同一
寸法の摺動摩耗試験片、エロージョン試験片を作成し、
それらの試験片を800 ℃×60分ACの大気加熱処理を行っ
た後、同一条件の摩耗試験とエロージョン試験に供し
た。
【0049】なお、試験前に#600エメリーペーパー
でスケールを除去した。これらの結果を表2に示した。
表2より明らかなように、一般的なTiおよびTi合金
に表1No.3と同一条件の大気加熱処理を施しても、
耐摩耗Ti合金の耐摩耗性向上性(5〜10倍向上)に
比べてあまり大きくなく、耐摩耗Ti合金への本発明方
法の適用の有効性が明らかである。
【0050】
【表2】
【0051】(実施例2) 表3に示す成分の炭化物分散チタン合金をボタン溶解で
溶製し20mm厚×50mm幅×100mm長のインゴ
ット (酸素≦0.20%)とし、1100℃にて10
mm厚×50mm幅×200mm長に熱間圧延したの
ち、直径6×標点間距離30(mm)のに引張試験片お
よび直径10×長さ40(mm)の試験片を切り出し、
それらの試験片に引張試験および800℃×60分の大
加熱処理後に摺動摩耗試験を行った。結果を表3に示
す。これよりこの発明の前述の好適合金組成範囲材を用
いて酸化処理することが望ましいことがわかる。
【0052】
【表3】
【0053】(実施例3) 実施例1の直径25mmの鍛伸材から切り出した小野式
疲労試験片(直径8mm×平行部40mm)を800℃
×60分ACの大気中での加熱処理をした後に、直径
0.4〜0.7mmの鋼球を用い、アークハイト0.3
2mm)カバレージ100%以上、投射量1.8kg/
cmのショットブラスト条件を行った後に疲労強度を
測定したところ、加熱処理の後に、#600エメリー紙
での脱スケールした材料の疲労強度が28kgf/mm
であったのに対し、ショットブラスト処理した本発明
材料の疲労強度は36kgf/mmを示し、大幅な疲
労強度改善効果が認められた。
【0054】また、同一条件で作成した直径10×長さ40
(mm)の摺動摩耗試験片の摩耗量も対応するショットなし
材に比べ、10%程度摩耗量が少なかった。つまり、ショ
ットにより、耐摩耗性を維持しながら疲労強度の改善が
図られることが判った。
【0055】
【発明の効果】この発明によれば、耐摩耗Ti合金部材の
耐摩耗性をさらに高めることができ、自動車動弁部品
(エンジバルブ、レテーナー、リフター) や軸受け、蒸
気タービン翼部品として好適な軽量耐摩耗チタン合金製
部材が製造可能となり、産業上極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明が対象とするTi合金のTTT 曲線であ
る。
【図2】この発明により製造された耐摩耗Ti合金部材
の大気加熱処理品の表面近傍断面を模式的に示す説明図
である。
【図3】この発明の実施例で得られたTi合金部材の表面
硬度分布を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C22C 14/00,32/00 C23C 8/10,8/12,8/16

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 TiCが晶出したβ相チタン素地にTi
    AlCを析出分散させるとともに、表面に酸素富化
    を設けた耐摩耗性にすぐれたTi合金部材。
  2. 【請求項2】 重量%で、 Al:2.0〜8.0%、V:2.0〜8.0%、C
    r:6.0〜15.0%、C:0.5〜2.0%、 酸
    素≦0.20%、残部Tiおよび不可避的不純物から成
    る合金組成を有するTi合金に、加熱温度700〜90
    0℃、加熱時間20〜90分間の加熱条件下で大気中で
    熱を行って、該合金表面に酸素富化層を形成するこ
    とを特徴とする耐摩耗性に優れたTi合金部材の製造方
    法。
  3. 【請求項3】 前記加熱後の前記合金の表面をショット
    ブラスト処理することを特徴とする請求項1記載の耐摩
    耗性に優れたTi合金部材の製造方法。
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