JP2754889B2 - ピストンと連接棒の連結構造 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本発明は摺動面の機械加工が容易な、ピストンと連接
棒の連結構造の改良に関するものである。

［従来の技術］ 第2,3図に示すように、本出願人は先に特願平２−856
63号（特開平３−288065号公報）により、ピストン冠部
2aの下側中央部４に形成した断面円弧状の凸面５を、連
接棒13の先端部（小端部）に形成した受板12の上側の断
面円弧状の凹面12aに係合し、受板12の下側の断面円弧
状の凸面12bを、環状の押え部材８の上側の断面円弧状
の凹面8aに係合し、環状の押え部材８をピストン２のス
カート部７に螺合した保持筒９に支持してなる、ピスト
ンと連接棒の連結構造を出願した。

上述のピストンと連接棒の連結構造によれば、従来の
ピストンピンによる連結構造に比べて、次のような利点
がある。すなわち、連接棒13の揺動中心Ｏがピストン頂
面へ偏倚され、その偏倚分だけクランク軸16の腕の長さ
ｒと連接棒13の長さｌを長くすると、連接棒13の最大傾
角（揺動角）を増加させないで、ピストン２のストロー
クすなわち排気量が増大され、ピストン２の上死点での
無駄容積が小さくなり、排ガス対策がし易くなる。ピス
トン２のストロークが増大しても、連接棒13の最大傾角
が大きくならないので、ピストンスラツプ、それに伴う
摩擦損失、ピストンリングの摩耗、スラツプ騒音などの
問題がない。爆発荷重に対する連接棒13の受板12の面圧
が低いので、機関の高過給に対して有利である。

上述したピストンと連接棒の連結構造では、ピストン
冠部2aの下側中央部４と受板12の下側とに断面円弧状の
凸面5,12bを、受板12の上側と押え部材８の上側とに断
面円弧状の凹面12a,8aをそれぞれ備える必要があり、機
械加工に手数がかかる。

［発明が解決しようとする問題点］ 本発明の目的は上述の問題に鑑み、機械加工が簡単
で、上述の利点を活かせるピストンと連接棒の連結構造
を提供することにある。

［問題を解決するための手段］ 上記目的を達成するために、本発明の構成はピストン
冠部の平坦な下面に摺動板を横方向摺動可能に当接し、
前記摺動板の縁部下側に形成した断面円弧状の凸面を、
連接棒の先端部に設けた受板の上側に形成した断面Ｖ字
状の凹面に係合し、前記受板の下側に形成した断面円弧
状の凸面を、環状の押え部材のの上側に形成した断面Ｖ
字状の凹面に支持し、前記押え部材をスカート部に嵌装
支持した保持筒の上端面に支持したことを特徴とする。

［作用］ 摺動板の縁部下側の断面円弧状の凸面を支持する受板
の上側の凹面と、受板の下側の断面円弧状の凸面を支持
する押え部材の上側の凹面とを、断面Ｖ字状に形成する
ことにより、機械加工が簡単になり、コストが低減され
る。

ピストンの往復動に伴つて連接棒が揺動すると、受板
の上側の断面Ｖ字状の凹面が、摺動板の縁部下側の断面
円弧状の凸面に対し摺動し、同時に、受板の下側の断面
円弧状の凸面が、押え部材の上側の断面Ｖ字状の凹面に
対し摺動する。

［発明の実施例］ 第１図は本発明によるピストンと連接棒の連結構造の
正面断面図である。デイーゼル機関用のピストン２は、
冠部2aの上側に燃焼室としての公知のくぼみ３を形成さ
れ、周壁にピストンリングを装着する複数の環状溝を形
成され、下半部に円筒形のスカート部７を形成される。
冠部2aの下側中央部４と周壁との間に環状空部６が形成
される。

本発明によれば、冠部2aの平坦な下面20に、耐摩耗性
と熱伝導性の優れた材料からなる断面逆台形の摺動板21
の上面22が、横方向摺動可能に当接される。摺動板21の
縁部下側に形成した（摺動板21の側面と下面との交差部
に丸みをつけた）断面円弧状の凸面（球面）５が、連接
棒13の先端部の受板12の上側に形成した断面Ｖ字状の凹
面（円錐面）12aに摺動可能に支持される。

摺動板21の中心に通路24が設けられ、通路24の上端は
上面22のくぼみ23に連通される。潤滑油が連接棒13の内
部通路26から摺動板21と凹面12aとの間の空部25へ供給
される。潤滑油は上面22と下面20との摺動部を潤滑し、
また凹面12aと凸面５との摺動部を潤滑する。

受板12の下側の断面円弧状の凸面（球面）12bは、環
状の押え部材８の上側の断面Ｖ字状の凹面（円錐面）8a
に摺動可能に支持される。押え部材８は組立の都合上例
えば２分割体を組み合せてなり、かつ保持筒９の上端面
に僅かな範囲で摺動可能に支持される。保持筒９はスカ
ート部７に螺合され、かつロツクナツト10により弛まな
いよう締結される。

連接棒13の揺動に伴つてピストン２に揺動中心Ｏを中
心とする傾動（首振り運動）が生じると、摺動板21とピ
ストン冠部2aの下面20との間に横方向摺動（平行移動）
が生じ、ピストン２が上端から下端に至る外周面でシリ
ンダの内周面に接する。ピストン２に作用する横荷重は
シリンダの内周面で支持される。

連接棒13の下端部の構成については従来のものと同様
であるが、図示の実施例では、油ポンプからクランク軸
の一端部へ加圧供給される潤滑油が、クランク軸、クラ
ンク腕、クランクピンの各内部通路を経て連接棒13の内
部通路26へ供給される。

油ポンプからシリンダの下端部に配設した油ジエツト
52へ加圧供給される潤滑油を、ピストン冠部2aの環状空
部６へ導くために、押え部材８に入口通路43と出口通路
44が周方向に間隔を存して配設される。

環状空部６に断面逆Ｕ字形をなす環状の仕切板42が配
設される。仕切板42の縁部42aは環状空部６の内周壁6a
へ弾性的に係合される。仕切板42の縁部42bは環状空部
６の外周壁6bへ弾性的に係合される。仕切板42の入口通
路43と対向する部分に入口孔が、出口通路44と対向する
部分に出口孔がそれぞれ設けられる。

シリンダの下端部に配設した油ジエツト52から噴出さ
れた油は、押え部材８の入口通路43、仕切板42の入口孔
を経て、仕切板42の上側の環状空部６へ入り、左右に分
れて環状空部６を半周する内に、燃焼室としてのくぼみ
３の周壁を冷却し、出口孔から仕切板42の下側の環状空
部６へ流れ、さらに押え部材８の出口通路44を経てクラ
ンク室へ流下する。

ピストン２の油掻きリングによりシリンダの内周面か
ら掻き落された油を、スカート部７の内側へ導くため
に、スカート部７の油掻きリング溝よりも下側の部分に
小径部51が形成される。スカート部７の小径部51に、多
数の傾斜通路45が周方向に間隔を存して設けられる。傾
斜通路45は保持筒９の外周壁に形成した環状溝46へ連通
され、さらに保持筒９を貫通する多数の通路47へ連通さ
れる。

なお、上述の実施例では、凸面5,12bは球面、凹面12
a,8aは円錐面であるが、凸面5,12bは断面円弧状の突
条、凹面12a,8aはＶ溝（図の紙面と垂直な方向に一様な
断面を有するもの）であつてもよい。

［発明の効果］ 本発明は上述のように、ピストン冠部の平坦な下面に
摺動板を横方向摺動可能に当接し、前記摺動板の縁部下
側に形成した断面円弧状の凸面を、連接棒の先端部に設
けた受板の上側に形成した断面Ｖ字状の凹面に係合し、
前記受板の下側に形成した断面円弧状の凸面を、環状の
押え部材の上側に形成した断面Ｖ字状の凹面に支持し、
前記押え部材をスカート部に嵌装支持した保持筒の上端
面に支持したものであり、連接棒の受板の上側の凹面が
断面Ｖ字状であるので、機械加工が容易になる。

摺動板の縁部下側の断面円弧状の凸面と受板の上側の
断面Ｖ字状の凹面との間と、受板の下側の断面円弧状の
凸面と押え部材の上側の断面Ｖ字状の凹面との間へ、そ
れぞれ油が流れやすくなり、潤滑性が向上される。

断面Ｖ字状の凹面と断面円弧状の凸面との接触面積は
狭くなるが、両者が相対摺動する時、スクイズ効果によ
り油膜が両者の間へよく食い込み、油膜の負荷容量が向
上される。

ピストン冠部と摺動板との横方向相対摺動により、ピ
ストンの上端から下端に至る領域でピストン外周面がシ
リンダの内周面に接触するので、ピストンの傾動（首振
り運動）が抑えられ、シリンダに対するピストンの摺動
抵抗が減じられ、燃費が向上される。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明に係るピストンと連接棒の連結構造を示
す正面断面図、第２図は従来のピストンと連接棒の連結
構造を示す正面断面図、第３図は同側面断面図である。 2:ピストン、2a:冠部、5,12b:凸面、6:環状空部、7:ス
カート部、8:押え部材、8a,12a:凹面、12:受板、13:連
接棒、21:摺動板

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】ピストン冠部の平坦な下面に摺動板を横方
   向摺動可能に当接し、前記摺動板の縁部下側に形成した
   断面円弧状の凸面を、連接棒の先端部に設けた受板の上
   側に形成した断面Ｖ字状の凹面に係合し、前記受板の下
   側に形成した断面円弧状の凸面を、環状の押え部材の上
   側に形成した断面Ｖ字状の凹面に支持し、前記押え部材
   をスカート部に嵌装支持した保持筒の上端面に支持した
   ことを特徴とする、ピストンと連接棒の連結構造。