JP2747446B2 - パッキンリング - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明はパッキンリングに関
し、より詳しくは、２つの相対回転する円筒面の間の半
径方向間隙を密封するためのパッキンリングに関する。

【０００２】

【従来の技術】従来公知のパッキンリングとして、ドイ
ツ特許第3244209C2号公報により公知のものがある。こ
の公報の図１をここで図７として転用して説明すると、
このパッキンリング20は、同軸に配置され相対運動可能
な第１の機械部材21の円筒面22と第２の機械部材23の円
筒面24との間の半径方向間隙に挿入するためのパッキン
リングであって、第１の機械部材21に対する静的固定及
び密封のための第１の手段25と、第２の機械部材23の動
的密封のための第２の手段26とを具備する。そして第１
の手段25は、第１の機械部材23と接触し少なくとも１つ
の放出溝27が配設されたエラストマー材料製の保持リン
グ28と、被密封媒質の圧力を受け所定の最小圧を超える
と弾性変形して第１の機械部材23から離脱するよう放出
溝27の端部に配置された環状の密封リップ29とを有す
る。

【０００３】上記のパッキンリング20は摩擦密封部材と
して形成されており、第２の手段２６は、軸方向に間隔
をおいて相前後する２個の摩擦リップ３０、31を備えた
密封体として形成されている。また上記の密封リップ29
は、半径方向に密封体から外側へ張り出す密封部材とさ
れている。この密封リップ29は、軸方向に隣接する第１
の機械部材21の対向面に、初期圧のもとで密接する。

【０００４】こうした従来のパッキンリングは二次シー
ルとして形成され、例えば液圧シリンダにおいて、被密
封媒質を封止する一次シールに続いて配設される。所定
の用途のために使用する時に、一次シールからの漏出に
よって一次シールと二次シールの間の環状空間が被密封
媒質、例えば油によって次第に満たされ、その結果、こ
の空間に圧力の発生を招くことがある。この公知のパッ
キンリングの根底にある課題は、こうした場合に液圧シ
リンダに圧力の放出孔を設けずに、しかも過圧により二
次シールが押し出されることが防止されるように改良を
行うことである。即ち一次シールと二次シールの間の環
状空間に漏出される油は、圧力が上昇すると放出溝を経
て密封リップを変形させて通過して周辺に排出され、一
次シールに欠陥があり交換しなけれぱならないというこ
とを示す。このように過圧に基づき油が放出溝を経て周
辺に流出されることによって、被密封空間への汚染物の
侵入は防止される。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】本発明の根底にある課
題は、脱気されないユニット、例えば軸や変速機に取り
付けるように構成することができ、脱気されない装置を
長期間保管してもグリースの油分離や漏れが確実に回避
されるように、上述した種類のパッキンリングを改良す
ることである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】この課題は本発明によれ
ば、請求項１の特徴部分によって解決される。他の請求
項は、有利な構成に関するものである。

【０００７】上記課題の解決のために、請求項１の特徴
によれば、パッキンリングを所定の用途のために使用す
る時に、密封リップは半径方向初期圧のもとで第１の機
械部材の円筒面に半径方向に密接し、最小圧を超えたと
きだけ反対の半径方向に弾性変形するように構成されて
いる。一般に、パッキンリングによって密封される空間
は、通気させ、又は脱気することが可能である。しかし
ながら変速機や軸を組み立てる時に、これらの装置が通
気／脱気されないために、しばしば被密封空間の内部に
圧力の発生が起こる。ところが本発明によれば、その際
に発生した圧力が限界値、即ち所定の最小圧を超える
と、第１の円筒面から密封リップが自動的に遊離するこ
とによって差圧が補償される。それ故、被密封空間にあ
る潤滑剤は差圧の作用を受けない。このため、長い保管
期間中も、グリースの油分離や漏れが確実に排除される
ことになる。

【０００８】こうしたパッキンリングは、パッキン装置
の１つの構成部分をなす。その場合に、パッキンリング
は半径方向圧力下に被密封軸を取り囲んで密封し、かつ
半径方向圧力下にケーシングにより取り囲まれて密封さ
れる。パッキンリングは軸方向フランジと半径方向フラ
ンジを備えたほぼＬ形断面の強靭な補剛リングを有する
ことができ、この補剛リングの軸方向フランジは静的密
封用の第１の手段、即ち第１のシールのエラストマー材
料中にほぼ完全に埋設され、また半径方向フランジは密
封リップとして形成された動的密封用のエラストマー材
料からなる第２の手段、即ち第２のシールと結合され
る。第１のシールは第２のシールと半径方向反対側に、
少なくとも１個の放出溝を有する。この放出溝は、パッ
キンリングのほぼ全軸方向長さにわたって延在し、パッ
キンリングの軸方向両側の相互に密封される空間を必要
に応じて連絡して流れを通す。またこの放出溝は、被密
封空間からの脱気のために被密封空間と反対側の端部に
おいて、或いは被密封空間への通気のために被密封空間
に面した側の端部において、差圧により操作される密封
リップにより自動的に閉鎖されている。密封リップは静
的密封のために、半径方向に隣接する機械部材と接触さ
せられている。

【０００９】簡単かつ低コストで製造することができる
ように、密封リップと保持リングが互いに融合して一体
をなすように形成することができる。

【００１０】さらに、密封リップ及び保持リングが第２
のシールと同じ材料で構成され、これらが互いに融合し
て一体をなすように形成することによって、一層簡素化
を図ることができる。

【００１１】保持リングは、第１の機械部材を静的に密
封する該第１の機械部材に面した半径方向側に、軸方向
に伸張する波形表面凹凸を有することが好ましい。この
場合、第１及び／又は第２の機械部材の製造上の誤差
と、その結果生じる両者の間の半径方向間隙の寸法偏差
が補償される利点がある。これらの許容誤差が簡単に補
償されるので、パッキン装置全体を安価に製造すること
ができる。

【００１２】放出溝は通路状に形成し、周方向に均一に
間隔を置いて配置することが好ましい。好ましくは３個
の放出溝が使用される。この場合、密封リップの半径方
向弾性変形は密封リップに比較的均一な曲げ荷重を生じ
るから、密封リップの望ましくない部分的な弛緩現象や
傾倒が回避される利点がある。

【００１３】長い使用期間にわたって密封リップがなる
べく定常的な作用挙動を果たすことができるように、密
封リップがそのポリマー材料中に埋設された補強を有す
るように構成することができる。補強のための強靭な材
料は、例えばポリマー材料で形成することもできるが、
金属材料によることが好ましい。

【００１４】密封リップは、パッキンリングの一方の軸
方向端面と同一の半径方向平面に配設することが好まし
い。こうした場合には、例えばパッキンリングを第１及
び第２の機械部材の間の半径方向間隙に押し込んで配置
するような場合に、損傷に対して比較的弱い密封リップ
を保護することができる。また密封リップがパッキンリ
ングの一方の軸方向端面から軸方向に突出しないことか
ら、パッキンリングのこの軸方向端面に対して、パッキ
ンリング取り付け用の押し込み工具を適用することも可
能になる。

【００１５】放出溝はほぼ浴槽（バスタブ）状の半径方
向断面と、0.02〜1.0mmの半径方向深さを有することが
できる。長い使用期間にわたって良好な使用特性を得る
ことに関連して、各放出溝の軸方向長さと半径方向深さ
の比が50〜500の範囲内にあるならば有利であることが
判明した。この場合、放出溝は比較的小さな半径方向深
さしか有していないので、例えば被密封媒質中の浮遊粒
子が放出溝から確実に遠ざけられるという利点がある。
従って、これによる密封リップの損傷や、密封リップの
区域に沈着物が堆積されて使用特性が損なわれるといっ
た不具合は生じない。

【００１６】本発明に基づくパッキンリングは、特に被
密封空間への通気、又はそこからの脱気のために使用さ
れるものである。

【００１７】

【発明の実施の形態】図１ないし図６に基づき、本発明
のパッキンリングを以下で詳述する。図１ないし図４に
は、パッキンリング１を具備するパッキン装置が示され
ている。図１において、パッキンリング１は、第１の機
械部材５の円筒面３と、これと同軸に配置された第２の
機械部材６の円筒面４の間の半径方向間隙に挿入されて
いる。これらの円筒面３、４は相互に相対回転可能なも
のである。パッキンリング１は半径方向初期圧のもとで
第１の機械部材５により取り囲まれるようにして密封を
行い、かつやはり半径方向初期圧のもとで第２の機械部
材６を取り囲んで密封を行っている。パッキンリング１
は、強靭な材料、本実施例では金属からなるほぼＬ形断
面の補剛リング14を有する。補剛リング14は軸方向フラ
ンジ15と半径方向フランジ16を有し、軸方向フランジ15
は静的密封用の第１のシール７によってほぼ完全に取り
囲まれている。半径方向フランジ16は密封リップ11とし
て形成された動的密封用のエラストマー材料製の第２の
シール８と結合されている。第１のシール７は第２のシ
ール８と半径方向反対側に、周方向に均一に分布して配
置された、本実施例では３個の、軸方向に走る溝状の通
路を有する。これらの通路を放出溝９と呼ぶ。放出溝９
はパッキンリング１のほぼ全軸方向長さにわたって延在
し、密封される空間12と大気を連絡する。放出溝９は一
方の軸方向端部が、密封リップ11で閉鎖されている。こ
の密封リップ11は、放出溝９が被密封空間12からの脱気
のためのものである場合には被密封空間12と反対側の軸
方向端部に、また放出溝９が被密封空間12への通気のた
めのものである場合には被密封空間12に面した側の軸方
向端部に配置され、差圧によって操作される。密封リッ
プ11は使用に際して自動的に半径方向初期圧のもとで閉
鎖されている。密封リップ11は静止用シールとして形成
され、半径方向に隣接する機械部材５に接触させられて
いる。

【００１８】図１では、必要に応じて被密封空間12から
脱気することができる。ここに示す例では２つの機械部
材５，６は相互に密封されている。パッキンリング１の
設計の基礎をなすしきい値、即ち最小圧を超える過圧が
被密封空間12の内部に発生すると、密封リップ11は半径
方向内方へと弾性変形し、第１の機械部材５として形成
されたケーシングの第１の円筒面３から離脱する。圧力
の均衡化が行われ、被密封空間12の内部の圧力がしきい
値より低くなると、密封リップ11は再び自動的に第１の
機械部材の第１の円筒面３に当接される。

【００１９】この例においては、密封リップ11と保持リ
ング10、さらには第２のシール８が同じ材料で一体に構
成されている。また保持リング10は半径方向外側に、軸
方向に伸張する波形の表面凹凸17を有する。図１では３
つの波が軸方向に続けて形成されている。

【００２０】図２に第２の実施例を示す。この実施例の
パッキンリングもまた、必要に応じて被密封空間12から
脱気するのに適している。しかしこの場合には図１で説
明した実施例とは異なり、第１の機械部材５は軸として
形成され、ケーシングとして形成された第２の機械部材
６が第１の機械部材５の周囲で運動する。第１のシール
７は軸の第１の機械部材５の円筒面３の上に支えられ、
動荷重を受ける第２のシール８は、第２の機械部材６の
円筒面４に運動用シールとして接触する。また、図２の
実施例では密封リップ11が、そのポリマー材料中に埋設
された補強13を有する。この例では、これは金属材料か
らなる。被密封空間12からの脱気は、図１の実施例で述
べたように行われる。

【００２１】図３に、本発明に基づくパッキンリング１
の第３の実施例を示す。この場合、図１及び図２の実施
例とは異なり、パッキン装置は被密封空間12に必要に応
じて通気することができるように形成されている。被密
封空間12への通気のために、被密封空間12に面した側に
おいて放出溝９の端部に密封リップ11が配設され、半径
方向初期圧のもとで第１の機械部材５の第１の円筒面３
に支承され、放出溝９を閉鎖している。

【００２２】被密封空間12の内部に、差圧、或いはしき
い値として定められた最小圧よりも大きな、環境に対す
る相対的な過圧が発生すると、密封リップ11はこの差圧
により半径方向内側へと弾性変形され、圧力の均衡化が
起こる。次に差圧がしきい値より低くなると、密封リッ
プ11は自動的に再び第１の機械部材５の円筒面３に当接
される。

【００２３】図４には、本発明に基づくパッキンリング
１の第４の実施例を示す。この場合、パッキンリング１
は図１のパッキンリングにおおむね相当する。しかしな
がら図１の場合と異なり、パッキンリング１の一方の軸
方向境界面をなす軸方向端面18と密封リップ11は同一の
半径方向平面に配設されている。かくして密封リップ11
は軸方向端面18から軸方向に突出することがなく、損傷
から保護される。

【００２４】図５は図１のＡ−Ａ半径方向断面図を示し
ている。この図では放出溝９は１つしか示されていない
が、好ましくは前述したように、同様の放出溝が周方向
に均等な間隔を置いてあと２つ設けられる。しかしこう
した数は勿論用途に応じて変更可能である。図５におい
て、放出溝９はほぼ浴槽状の断面形状を有する。好まし
い半径方向深さは0.02〜1.0mmの範囲内にあり、また放
出溝の軸方向長さと半径方向深さの比は好ましくは50〜
500の範囲内にあるが、図では明確化のために正確な寸
法取りは行われておらず、単に概略的な例示が行われて
いるだけである。また図６は、放出溝９の浴槽状の半径
方向断面の別の例を示している。

【００２５】

【発明の効果】以上図１ないし図４に基づいて説明した
ように、本発明のパッキン装置は被密封空間への通気、
又はそこからの脱気のために使用することができる。特
に変速機と軸を組み立てる時に、ユニットを脱気してな
いためしばしば被密封空間内に圧力が発生するような場
合、本発明に基づくパッキン装置を使用することによっ
て差圧がしきい値以下の値に低減されるから、ユニット
の保管期間が長くても差圧に基づくグリースの油分離や
漏れが起こらないという優れた効果がある。また従属形
式で提示した他の請求項による発明も、それぞれ前述し
たような効果を奏するものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】被密封空間からの脱気のために設けた、本発明
のパッキンリングの第１の実施例の断面図である。

【図２】被密封空間からの脱気のための、本発明のパッ
キンリングの第２の実施例の図１と同様の断面図であ
る。

【図３】被密封空間への通気により真空の発生を防止す
るための、本発明のパッキンリングの第３の実施例の断
面図である。

【図４】図１の実施例にほぼ対応するが、密封リップと
パッキンリングの一方の軸方向端面が同一の半径方向平
面に配設されている例を示す、本発明のパッキンリング
の第４の実施例を示す断面図である。

【図５】図１のＡ−Ａ線に沿って取った半径方向断面図
である。

【図６】図５と同様であるが、放出溝の別の形態の半径
方向断面を示す半径方向断面図である。

【図７】従来のパッキンリングを示す断面図である。

【符号の説明】

１ パッキンリング ３、４ 円筒面 ５ 第１の機械部材 ６ 第２の機械部材 ７ 第１のシール ８ 第２のシール ９ 放出溝 １０ 保持リング １１ 密封リップ １２ 被密封空間 １３ 補強 １４ 補剛リング １５ 軸方向フランジ １６ 半径方向フランジ １７ 表面凹凸 １８ 軸方向端面

Claims (8)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 同軸に配置され相対運動可能な第１の機
   械部材の円筒面と第２の機械部材の円筒面との間の半径
   方向間隙に挿入するためのパッキンリングであって、 前記第１の機械部材に対する静的固定及び密封のための
   第１の手段と、 前記第２の機械部材の動的密封のための第２の手段とを
   具備し、 前記第１の手段が、前記第１の機械部材と接触し少なく
   とも１つの放出溝が配設されたエラストマー材料製の保
   持リングと、被密封媒質の圧力を受け所定の最小圧を越
   えると弾性変形して前記第１の機械部材から離脱するよ
   う前記放出溝の端部に配置された環状の密封リップを有
   するパッキンリングにおいて、前記保持リング(10)が、前記第１の機械部材(5) を静的
   に密封する該第１の機械部材(5) に面した半径方向側
   に、軸方向に伸張する波形表面凹凸(17)を有すること
   と、 前記パッキンリング(1) の使用時に、前記密封リップ(1
   1)が半径方向初期圧のもとで前記第１の機械部材の円筒
   面(3) に密接し、前記最小圧を越えたときだけ半径方向
   に弾性変形すること、 を特徴とするパッキンリング。
2. 【請求項２】 前記密封リップ(11)が前記保持リング(1
   0)と相互に融合して一体をなすように形成されているこ
   とを特徴とする、請求項１に記載のパッキンリング。
3. 【請求項３】 前記密封リップ(11)、前記保持リング(1
   0)、及び前記第２の手段(8) が同一の材料からなり、相
   互に融合して一体をなすように形成されていることを特
   徴とする、請求項１又は２に記載のパッキンリング。
4. 【請求項４】 前記放出溝(9) が通路状に形成され、週
   報項に均一に間隔を置いて配置されていることを特徴と
   する、請求項１から３のいずれか一項に記載のパッキン
   リング。
5. 【請求項５】 前記密封リップ(11)が、ポリマー材料中
   に埋設された補強(13)を有することを特徴とする、請求
   項１から４のいずれか一項に記載のパッキンリング。
6. 【請求項６】 前記密封リップ(11)と前記パッキンリン
   グの一方の軸方向端面(18)が、同一の半径方向平面に配
   設されていることを特徴とする、請求項１から５のいず
   れか一項に記載のパッキンリング。
7. 【請求項７】 前記放出溝(9) が、ほぼ浴槽状の半径方
   向断面と、0.02ないし1.0mm の半径方向深さを有するこ
   とを特徴とする、請求項１から６のいずれか一項に記載
   のパッキンリング。
8. 【請求項８】 前記放出溝(9) の軸方向長さと半径方向
   深さの比が、50〜500 であることを特徴とする、請求項
   １から７のいずれか一項に記載のパッキンリング。