JP2721655B2 - 複合光ディスク構造体 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、光学式ビデオディスク
などの２枚の片面ディスクを貼り合わせて作られる複合
光ディスクに関する。

【０００２】

【従来の技術】レーザー光などを用いて記録情報を読み
取る光学式ディスクには、２枚のディスク基盤を表裏貼
り合わせて作られたものがある。その例として、レーザ
ーディスクやＤＶＤを挙げることができる。これらを代
表して、従来のレーザーディスクについて、以下に説明
する。

【０００３】先ず、従来のレーザーディスクの製造方法
では、予め記録情報となるピットが形成された金型（ス
タンパーと称される）を射出成形機などの樹脂成形機に
取り付け、このスタンパーによってポリカーボネートや
アクリルなどの透明なプラスチック樹脂を射出成形ある
いは加圧成形することにより、ピットが転写された透明
なプラスチック円盤である透光性ディスク基盤（片面デ
ィスク）を作成する（基盤成形工程）。この基盤成形工
程で作製された実際のプラスチック円盤（片面ディス
ク）には、スタンパーを樹脂成形機に固定するためのス
タンパークランプの当たる部分が凹状の加工溝（以下、
スタンパークランプ溝と呼ぶ）となってリング状に残っ
ている。

【０００４】次に、この円盤のピット面にスパッタ法や
真空蒸着法などによりアルミニウムなどの金属を付着さ
せ、反射膜を形成する（反射膜形成工程）。次いで、こ
の反射膜の表面にホットメルト型の保護膜をロールコー
タなどにより塗布し、これに紫外線を照射することによ
り傷や腐食防止のための保護膜（５〜１０μｍ）を形成
する（保護膜塗布工程）。

【０００５】上記のようにして、貼り合わせるべきＡ
面、Ｂ面の一対の片面ディスクをそれぞれ別々に作成し
た後、それぞれの片面ディスクの貼り合わせ面にホット
メルトと称される熱可塑性接着剤をロールコーターなど
により塗布（塗布厚１５〜３０μｍ／両面）する（接着
剤塗布工程）。

【０００６】そして、この接着剤が塗布された一対の片
面ディスクを、図７に示すような方法で貼り合わせる
（貼り合わせ工程）。すなわち、前記接着剤が塗布され
た一対の片面ディスク１０ａ，１０ｂの接着面同士を突
き合わせ、フラットなプレス面からなる下側圧着テーブ
ル５１上に載置した後、加圧シリンダ５３によって上側
圧着テーブル５２を下降し、そのフラットなプレス面で
一対の片面ディスク１０ａ，１０ｂを圧着プレスするこ
とにより、１枚のレーザーディスクに貼り合わせる。

【０００７】最近、ＤＶＤと称される小型（直径１２ｃ
ｍ、片面のディスク基盤厚さ０．６ｍｍ）で高密度記録
可能な両面記録方式のディジタル・ビデオ・ディスクが
開発されつつある。このＤＶＤは、保護膜塗布工程にお
いて、反射膜の表面に紫外線硬化型樹脂をスピナーなど
により塗布することを除いて上述と同様の方法で作られ
る。

【０００８】このような複合光ディスクは、高密度記録
ディスクのため反りや変形を小さくしてできるだけフラ
ットに作ることが要求されている。即ち、貼り合わせる
前のディスク基盤自体をフラットに作ることはもとより
貼り合わせ工程でも精度の高い貼り合わせ技術が要求さ
れる。

【０００９】複合光ディスクを構成する片面ディスク
は、例えば、図４（ａ）の片面ディスクの平面図および
図４（ｂ）の接着剤塗布工程終了後の片面ディスク断面
図に示すように、中心穴１ａ周囲のスタンパークランプ
溝２と、中心穴１ａとスタンパークランプ溝２との間の
ディスククランプエリア２ｃと、このスタンパークラン
プ溝２の周囲の情報記録領域であるデータ記録エリア３
を覆う反射膜４と、データ記録エリア３周囲の無信号領
域５とを備えている。

【００１０】そして、反射膜４上には、反射膜４の信頼
性（寿命）を保つために保護膜６が付着されている。即
ち、反射膜４の表面に酸化物の薄膜を生じて光沢がなく
なるのを防止するために保護膜６が付着されている。こ
の保護膜６を付着するには、紫外線硬化型樹脂等をスピ
ンコート法でコーティングする方法が用いられる。

【００１１】しかし、プラスチック円盤１の記録面全面
に保護膜６を塗布するために、表面にスタンパークラン
プ溝２という大きな凹部があるディスク中心穴１ａ周辺
にこの保護膜６を塗布しようとすると、図５の（ａ）に
示すように凹み部分の保護膜６内に空気６ａが溜まった
り、図５の（ｂ）に示すように必要以上に樹脂が滞留６
ｂしたりして塗布ムラを生じる。

【００１２】そこで、図５の（ｃ）に示すように、スタ
ンパークランプ溝２による塗布ムラを避けるために、大
きな凹凸の無いデータ記録エリア３が始まる数ミリ手前
から、即ち、データ記録エリア３とスタンパークランプ
溝２との間からディスク外周に向けて保護膜６を塗布し
ていた。

【００１３】このような塗布方法では、保護膜６の無い
部分、即ちデータ記録エリア３とスタンパークランプ溝
２との間から内側部分と、外側部分の保護膜６のある部
分とが中心穴１ａ周辺に存在し、その保護膜６の厚みｔ
による高さの差が数ミクロンメートル〜数十ミクロンメ
ートルの段差として生じる。

【００１４】この状態でディスクに接着剤７をロールコ
ーターなどの手段で塗布した場合に、接着剤７の塗膜の
厚さはディスク全面にわたって均一に塗布されるため、
一様の厚さの接着剤７がその段差ｄの上に乗ることにな
り保護膜６による段差ｄが残った状態で貼り合わせるこ
とになる。

【００１５】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来の複合光ディスクでは、保護膜６による段差ｄが残っ
たまま貼り合わせた部分には、図６（ａ）に示すよう
に、空隙Ｓが生じて貼り合わせ精度が低下したり、図６
（ｂ）に示すように、一方のディスク基盤が他方のディ
スク基盤に倣うような形で変形Ｈしたりして、反りや変
形の少ない高精度な貼り合わせディスクを安定して作る
ことが難しいという問題があった。

【００１６】一般に、直径の小さな小型の貼り合わせデ
ィスクの場合、ディスクの中心穴１ａから情報記録開始
領域までの平坦なディスク部分の多くをプレーヤのクラ
ンプゾーンとして使用している。この平坦部分は、ディ
スクがプレーヤのターンテーブルに載置されてクランパ
ーで保持されたとき、光学系に対する基準面として機能
することになる。

【００１７】特に、ＤＶＤのような小型で高密度記録方
式のディスクでは、開口数（ＮＡ）の大きな光学系を用
いるため、焦点深度が小さく、このため、僅かな反りや
変形が生じても再生信号を大幅に劣化させることにな
る。この劣化をピックアップサーボで防止しようとする
ピックアップサーボの負担が大きくなりすぎるという問
題がある。したがって、特にクランプゾーン内のディス
クの反りや変形は光学系に対する基準面に直接影響する
ので、高精度に平坦化することが望まれている。

【００１８】そこで、本発明は、反りや変形が少なく高
密度記録に適した複合光ディスク構造体を提供すること
をその目的とする。

【００１９】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に本発明の複合光ディスク構造体では、中心穴を有する
光ディスク基盤の一方の面に形成された情報記録領域に
反射膜が設けられ、この反射膜上に保護膜が設けられた
一対の片面光ディスクを、これらの保護膜を互いに対向
させて接着一体化した複合光ディスクにおいて、前記片
面光ディスクの貼り合わせ面は、前記保護膜表面と、こ
の保護膜と中心穴との間の透光性ディスク基盤表面とか
ら構成され、この保護膜と中心穴との間の透光性ディス
ク基盤表面と保護膜表面とを面一にする深さの段部が、
前記片面光ディスクにそれぞれ設けられていることを特
徴としている。

【００２０】

【作用】上記構成からなる本発明の複合光ディスク構造
体では、複合光ディスクの貼り合わせ面に、前記保護膜
の表面を保護膜のない貼り合わせ面と面一にする深さの
段部が設けられているので、反射膜上に保護膜を塗布し
たのち、保護膜の表面と保護膜を塗布しない貼り合わせ
面とが同一高さである面一となり、この保護膜側を対向
させて貼り合わせる際に、片面ディスクのほぼ全面に渡
って均等に圧縮力が作用し、貼り合わせ面間に隙間が生
じたり、変形を生じたりすることがない。

【００２１】

【実施例】以下、添付図面を参照して、本発明に係る光
ディスク構造体の一実施例について説明する。図１
（ａ）は、一実施例に係わる複合光ディスクの一部とな
るプラスチック円盤の断面図、（ｂ）は（ａ）のプラス
チック円盤上に保護膜を形成した断面図、（ｃ）は
（ｂ）のプラスチック円盤上に接着剤を形成した断面図
である。図２はプラスチック円盤を成形する際に用いる
金型の断面図である。

【００２２】この金型２０は、プラスチック円盤１のデ
ータ記録エリア３にピットを転写するためのデータ記録
エリア転写部２３を有するスタンパー２１と、このスタ
ンパー２１を取り付けて主としてデータ記録エリア３を
成形する第１金型部品２２と、この第１金型部品２２と
共働して金型２０を構成し主として接着剤塗布面を成形
する第２金型部品２５とを備えている。そして、この第
２金型部品２５には、スタンパー２１を第１金型部品２
２との間で挟着して保持するスタンパークランプ２６が
突出し、このスタンパークランプ２６によりプラスチッ
ク円盤１にはスタンパークランプ溝２が形成される。

【００２３】また、第１金型部品２２の成形面２４とな
るスタンパー２１の表面と、第２金型部品２５の成形面
２７との間には保護膜６の厚さｔに相当する深さの段差
Ｔが形成されている。従って、成形されたプラスチック
円盤１は、図１（ａ）に示すように、スタンパークラン
プ溝２の外方の上面１ｂと内方の上面１ｃとで保護膜６
の厚さに相当する深さの段差ｄが形成される。また、ス
タンパークランプ溝２の外方の上面１ｂに転写されたピ
ット部上には反射膜形成工程により反射膜４が形成され
る。この反射膜４としては、例えばアルミニウム、ニッ
ケル、金等の金属膜または窒化ケイ素、酸化ケイ素等の
誘電体膜等を用いることができる。

【００２４】この反射膜４上には図１の（ｂ）に示すよ
うに保護膜６が形成される。この保護膜６は、紫外線硬
化型樹脂等がスピンコート法でコーティングされてな
る。ここで、上述したように、保護膜６が形成される面
１ｂは保護膜６が形成されない面１ｃより予め段差ｄ分
低く形成された段部Ｄを有しているので、この保護膜６
上面の接着剤塗布面６ａと、プラスチック円盤１のスタ
ンパークランプ溝２内方の接着剤塗布面１ｃとが同一高
さとなり、面一となる。そして、保護膜表面６ａと、こ
の保護膜６と中心穴１ａとの間のプラスチック円盤表面
１ｃとから貼り合わせ面が構成される。

【００２５】このようにして作製された片面ディスク
は、図１の（ｃ）に示すように、接着剤７がロールコー
ターで塗布される。この接着剤７は、保護膜６上面と、
保護膜６のないプラスチック円盤１上面とに均一な厚さ
で塗布される。

【００２６】図３はディスクの貼り合わせの前後を示す
断面図である。図３の上図に示すように、上述した片面
ディスクを保護膜６側を対向させて配置する。この状態
で圧力を加えると、貼り合わせ面である保護膜６の表面
とプラスチック円盤１の保護膜６のない貼り合わせ面と
が同一高さの面一であるので、加えられた圧力は片面デ
ィスクのほぼ全面に均一に伝達され、貼り合わせ後の反
りや変形を防止することができる。

【００２７】そして、ディスク側に保護膜の厚さに等し
い深さの段差を設けるのみでこの反りや変形の防止を達
成することができるので、金型の形状を変更するだけで
良く、他の製造設備は従来のものを使用することができ
る。

【００２８】なお、以上の実施例では、スタンパークラ
ンプ溝の内外で段差を形成し、スタンパークランプ溝の
外縁から保護膜を付着させるようにしたが、例えばスタ
ンパークランプ溝の外縁とデータ記録エリアの内縁との
間の上面１ｂに段差ｄを設け保護膜の付着開始位置をこ
の段差部分としてもよい。

【００２９】

【発明の効果】以上の説明から明らかな如く本発明の複
合光ディスク構造体によれば、中心穴を有する光ディス
ク基盤の一方の面に形成された情報記録領域に反射膜が
設けられ、この反射膜上に保護膜が設けられた一対の片
面光ディスクを、これらの保護膜を互いに対向させて接
着一体化した複合光ディスクにおいて、前記片面光ディ
スクの貼り合わせ面は、前記保護膜表面と、この保護膜
と中心穴との間の透光性ディスク基盤表面とから構成さ
れ、この保護膜と中心穴との間の透光性ディスク基盤表
面と保護膜表面とを面一にする深さの段部が、前記片面
光ディスクにそれぞれ設けられているので、製造時に一
対の光ディスクを貼り合わせる際に貼り合わせ面間に隙
間が生じたり、変形を生じたりすることがなく、高密度
記録に好適な複合光ディスクを提供できるという効果を
有する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例に係わる複合光ディスクの片
面ディスクを製造工程順に示す要部拡大断面図であり、
（ａ）は、一実施例に係わる複合光ディスクの一部とな
るプラスチック円盤の断面図、（ｂ）は（ａ）のプラス
チック円盤上に保護膜を形成した断面図、（ｃ）は
（ｂ）のプラスチック円盤上に接着剤を形成した断面図
である。

【図２】一実施例の複合光ディスクのプラスチック円盤
を成形する際に用いる金型の要部拡大断面図である。

【図３】一実施例の複合光ディスクの貼り合わせの前後
を示す要部拡大断面図である。

【図４】（ａ）は片面ディスクの平面図、（ｂ）は接着
剤塗布工程終了後の片面ディスク断面図である。

【図５】従来の保護膜の塗布状態を説明するための要部
拡大断面図であり、（ａ）は保護膜内の空気溜まりを示
す図であり、（ｂ）は保護膜の塗布ムラを示す図であ
り、（ｃ）は保護膜の段差を示す図である。

【図６】従来の複合光ディスクの貼り合わせ状態を示す
要部拡大断面図であり、（ａ）は貼り合わせたディスク
間に隙間が形成された状態を示す図、（ｂ）は、貼り合
わせたディスクが変形した状態を示す図である。

【図７】貼り合わせ工程を説明するための図である。

【符号の説明】

１ プラスチック円盤（透光性ディスク基盤） １ａ 中心穴 １ｃ 貼り合わせ面 ３ 情報記録領域（データ記録エリア） ４ 反射膜 ６ 保護膜 ６ａ 貼り合わせ面 ７ 接着剤 Ｄ 段部 ｄ 段差

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 中心穴を有する光ディスク基盤の一方の
   面に形成された情報記録領域に反射膜が設けられ、この
   反射膜上に保護膜が設けられた一対の片面光ディスク
   を、これらの保護膜を互いに対向させて接着一体化した
   複合光ディスクにおいて、 前記片面光ディスクの貼り合わせ面は、前記保護膜表面
   と、この保護膜と中心穴との間の透光性ディスク基盤表
   面とから構成され、この保護膜と中心穴との間の透光性
   ディスク基盤表面と保護膜表面とを面一にする深さの段
   部が、前記片面光ディスクにそれぞれ設けられているこ
   とを特徴とする複合光ディスク構造体。