JP2703040B2 - 水栓用弁装置 - Google Patents

水栓用弁装置

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JP2703040B2
JP2703040B2 JP6815089A JP6815089A JP2703040B2 JP 2703040 B2 JP2703040 B2 JP 2703040B2 JP 6815089 A JP6815089 A JP 6815089A JP 6815089 A JP6815089 A JP 6815089A JP 2703040 B2 JP2703040 B2 JP 2703040B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は、水道水用水栓、温水・冷水混合水栓、便
器用温水洗浄器の流路切換栓等の水栓用弁装置におい
て、摺動自在に重ね合わせた弁体により止水または流量
調整を行なうようにした弁装置に関する。
〔従来の技術〕 切欠または開口を有する弁体を摺動自在に重ね合わせ
て配置し、この弁体の回転もしくはスライドによって止
水または流量調整を行なうようにした水栓は既によく知
られている。
第1図ないし第4図は、従来の液体混合弁の具体例と
して家庭用水道に用いられている温水・冷水混合栓の構
造を示したものである。
これらの図において、ハウジング1の側面に流出路2
とパッキンガイドに流入路3と流入路4とが設けられ、
これら両流入路のいずれか一方が水道管、他方が湯沸器
に接続されることになる。
そして、上記のハウジング1の内部に設けた弁収納凹
部5に、弁体6と弁体7および案内板8とが下から順に
重なった状態で収納され、ハウジング1上に固定された
上蓋9に弁を操作するレバー10が取付けられている。
ここで、弁体6は、ハウジング1の内径面およびベー
ス12に設けた突起11との嵌り合いによってベース12に固
定され、中央に流出路2とその周囲に一対の流入路13、
14がハウジング1の流出路2および流入路3、4を連通
するように形成されている。また、弁体7は案内板8と
弁体6ではさまれ、弁収納凹部5の内径よりも小径の円
板であり、弁体6および案内板8に対して摺動が自在に
なっているとともに、弁体6に対する摺動面に流出路2
と連通する流通路15が設けられている。
さらに、上記の弁体6とベース12との間にゴム製のO
リング16が組込まれ、このOリング16の弾性によって、
ベース12と弁体6、弁体6と弁体7、弁体7と案内板8
の間がそれぞれシールされている。また、前記の弁体7
とレバー10とはリンク棒17を介して連動され、このリン
ク棒17が上蓋9にピン18で支持され、レバー10を上下お
よび回動させることによって弁体7を駆動し、流通路15
の変位により、温水・冷水および混合水の取出しと閉栓
とが行なえるようになっている。
なお、第1図および第2図は弁体7が同図右側に最も
変位し、流通路15が両流入路13、14の何れにも連通しな
い閉栓状態を、第3図は流通路15が一方の流入路13と連
通する弁体7の位置を示し、温水または冷水が単独で取
出される状態を、また、第4図は流通路15が両流入路13
および14と連通する弁体7の位置を示し、混合水の取り
出し状態を示している。
以上述べたような弁装置は、弁体6および7による摺
動面間のすり合わせ状態に応じて、流量調整または流路
変更等を行なうものであって、温水・冷水の混合栓に限
らず、便器などに設置される温水洗浄器の流路切替等に
も使用することが出来る。
このような従来の混合栓には通常銅合金またはステン
レス鋼製の弁体7が用いられている。しかし、金属製の
弁体7では弁体6との摺動面間に配管工事等による切削
粉、さび、砂、小石等の異物が侵入すると摺接面に喰い
込み傷が付き、シール性の劣化による水漏れまたは吐水
不能などの現象が発生する。一方、弁体7と弁体6との
高硬質セラミックスを用いて摺接面の表面粗度を非常に
小さくすることにより、異物の摺接面への喰い込みを防
止しようとする方法を行なわれてはいるが、このような
構造では弁体7の摺動抵抗が大きくなるから、レバー回
転時の駆動力を低減させるための新たな潤滑手段を必要
とすること、衝撃強度が小さいため運搬、組み込み、使
用などの際の温度差によって割れまたはクラックが発生
すること、しかも、セラミックスは摺接面の平坦度、面
粗度を極度に高めるための長時間の表面研磨を必要と
し、加工費が高くつくばかりでなく、潤滑剤を塗布して
動きを軽くしても、潤滑剤は使用中に流出して、短期間
のうちに駆動力が大きくなるなどの問題がある。
したがって、このような問題を解決するためには高硬
質セラミックス自体に潤滑性をもたせばよいことになる
が、潤滑剤が成形温度に耐えられず熱分解してしまうた
め、この方法も現実的には不可能である。また、セラミ
ックスの弱点である、非潤滑性、機械的または熱的な衝
撃によるクラック発生等を一掃するために、弁体をフッ
素樹脂、超高分子量ポリエチレン等の自己潤滑性を有す
る樹脂または二硫化モリブデン、カーボン等の自己潤滑
性を有するフィラーを充填した樹脂で構成するという試
み(たとえば特開昭63−36765号公報)もあるが、自己
潤滑性樹脂を用いたものは確かに潤滑性には優れるが、
耐クリープ性に劣り、たとえ繊維類で補強しても、樹脂
と補強剤とのヌレ性の悪さから充分な補強効果が得られ
ず、結果として低い水圧にしか耐えられないか、また
は、この樹脂弁体の肉厚を実用レベルとはかけ離れた大
きなものとする必要があった。また、補強効果の大きい
樹脂に、自己潤滑性を有するフィラーを充填した系にお
いても、充分な潤滑性を得るためには相当量の潤滑性フ
ィラーを使用する必要があり、その結果、衝撃強度また
は耐クリープ性は著しく低下し、クラック発生または止
水不良等の問題が起こり、逆に潤滑性フィラーの量が少
な過ぎると、弁体摺接面の潤滑性が悪くなり、そのため
に弁装置を操作するレバー等のハンドルトルクが大きく
なって問題が生じる。さらに、水栓用弁装置の弁体の摺
接面で確実に止水出来るようにするためには、弁体摺接
面の面粗さ(中心線平均粗さRaで)および平面度をとも
に1.0μm以下、好ましくは0.5μm以下にすることが必
要であって、樹脂成形品において成形面の面粗さをこの
範囲に入れることは金型の面粗さをおさえれば容易であ
るが、平面度を満足させることは樹脂の溶融固化に伴う
収縮率が大きいことから難しく、量産化に対して非常に
有利な方法である射出成形法においては、射出流れ方向
による収縮率の異方性の大きさまたは肉厚による固化速
度の差から収縮率の大きさに差が生じやすく、特に難し
い成形上の問題もあった。
また、充填剤により充分に補強した樹脂の摺動面の摩
擦抵抗を小さくするために、その樹脂成形体の表面に、
フッ素樹脂フィルムを貼り合わせる方法(以下貼着法と
略記する)、オリフィン系樹脂を熱融着させる方法(以
下融着法と略記する)、ポリイミド樹脂、ポリアミドイ
ミド樹脂、エポキシ樹脂のような密着性の良い造膜性重
合体を溶解した有機溶媒中にフッ素樹脂(たとえば四フ
ッ化エチレン樹脂、四フッ化エチレン六フッ化プロピレ
ン樹脂、パーフルオロアルコキシ樹脂など)等の固体潤
滑剤を分散させた液を塗布して焼き付ける方法(以下塗
布法と略記する)を試みたが、これらの方法にはそれぞ
れつぎのような欠点がある。すなわち、貼着法または融
着法においては、フッ素樹脂フィルムもしくはオレフィ
ン樹脂フィルムの基材に対する接着性が非常に悪く、特
にフッ素樹脂フィルムの場合は予め表面処理(アルカリ
金属もしくはイオンスパッタリング等による処理)をす
る必要があり、たとえ表面処理が施されているフッ素樹
脂フィルムであっても、またオレフィン系樹脂の場合で
あっても、接着性は不充分であって、使用中にフィルム
はよく剥離するし、またフィルムの膜厚が大きいために
水圧が少し大きくなると水漏れが生じた。そして、塗布
法においては、接着力の点では前記の貼着法、融着法よ
りは勝っているが、前述したごとく密着性の良い造膜性
樹脂中に潤滑性樹脂を分散させてあるため、摺動面側に
は潤滑性に富む樹脂等の層を、また弁体基材に接する側
には密着性に富む樹脂層を形成することが望ましいこと
は言うまでもないことであって、そのためには潤滑材の
粒径以上の膜厚にしなければならないことはもとより、
凝集エネルギー密度等の差を利用するなどして形成しな
ければならなくなる。その結果形成される被膜は必然的
に厚くなり、平坦度等の寸法精度が悪く、止水性に劣
る。このような場合に、摺接面に施された被膜を研磨ま
たはラッピング等の後加工によって仕上げることも不可
能とはいえないが、被膜を厚くする必要があり、さらに
後加工すると基材に接する側の反対側の被膜の相当量を
取り除く結果、潤滑成分に富んだ部分がなくなり、ハン
ドルトルクが重くなるという問題があった。
〔発明が解決しようとする課題〕
以上述べたように、従来の技術においては、駆動操作
が長期にわたって軽快であり、機械的または熱的な衝撃
に強く、水漏れ、吐水不能などの事故を未然に防止でき
るような水栓用弁装置は得られていないという問題があ
り、さらにこれを構成する弁体を安価に量産するという
方法が確立されていないという問題もあり、これらを解
決することが課題となっていた。
〔課題を解決するための手段〕
上記の課題を解決するために、この発明は、水栓用弁
装置の弁体の少なくとも一つがガラス転移点が250℃以
上の樹脂成形品からなり、その摺接面の分子量10000以
下の四フッ化エチレン重合体からなる薄膜を形成した水
栓用弁装置とする手段を採用するものである。以下その
詳細を述べる。
まず、この発明において少なくとも一つの弁体を構成
する樹脂は、示差走査熱量計(以下DSCと記す)で測定
した吸熱開始点であるガラス転移点が250℃以上のもの
である。これは後述する薄膜形成時の熱処理に際して25
0℃またはそれに近い温度を加えても、摺接面の平坦度
等の寸法精度に悪影響を及ぼさないようにするためであ
る。具体的には、日本ポリイミド社製:ケルイミド1050
などの熱硬化性ポリイミド樹脂、三菱瓦斯化学社製:BT
レジンなどのビスマレイミド・トリアジン樹脂、三井石
油化学社製:Tレジンなどの耐熱性エポキシ樹脂等の熱硬
化性樹脂、三井東圧化学社製:NEW−TPI等の熱可塑性ポ
リイミド樹脂、米国アモコ社製:トーロン(TORLON)な
どのポリアミドイミド樹脂、英国アイ・シー・アイ社製
ビクトレックス(VICTREX)HTA等の耐熱性ポリエーテル
サルホン樹脂および米国ゼネラル・エレクトリック社
製:ウルテム(ULTEM)II等の耐熱性ポリエーテルイミ
ド樹脂等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。ここで
いう耐熱性とは、前述したように、樹脂のガラス転移点
が250℃以上であることであるが、これら樹脂の中で、
機械的な衝撃に強いことから熱可塑性のものが好まし
い。
しかし、熱可塑性樹脂単独では、かなり低圧の水もし
くは湯の止水または流量調整の場合は別として、止水の
ための充分な弾性率、耐クリープ性を有していないの
で、通常の場合、補強剤または増量剤等として用いられ
る充填剤類を添加する。繊維状充填剤としては、炭素繊
維、ガラス繊維、ウォラストナイト、チタン酸カリウム
ホイスカー、シリコンカーバイドホイスカーなどの無機
繊維類および芳香族ポリアミド繊維などの耐熱性有機繊
維類等を、また粉末充填剤としては、マイカ、タルク、
カオリン、炭酸カルシウム、カーボン、グラファイト、
炭酸マグネシウム、三酸化アンチモン、ガラスビーズ、
ガラスバルーン等の無機粉末およびオキシベンゾイルポ
リエステル樹脂粉末、フッ素樹脂粉末などの耐熱性有機
粉末等を挙げることができる。そして、これら充填剤類
の配合量は特に限定するものではないが、充分に止水ま
たは流量調整が出来る弾性率を最低限確保出来る量を下
限とし、また成形性、衝撃強度に悪影響を及ぼさない
量、実質的には、75重量%を上限とすることが望まし
い。
上記の充填剤類と熱可塑性樹脂とを混合する方法は、
特に限定されるものでなく、たとえば、諸原材料をそれ
ぞれ別個に、また二種以上を同時にヘンシェルミキサ
ー、ボールミル、タンブラーミキサー等の混合機を用い
て乾式混合した後に、熱ロール、ニーダ、バンバリーミ
キサー、溶融押出機等で溶融混合したものを所定の形状
に溶融成形すればよい。
また、この発明の弁装置の弁体を溶融成形する方法
は、特に限定するものではなく、いずれの方法でもよい
が、量産性、低コスト化を考えれば射出成形法が好まし
い。しかし射出成形だけで最終形状を得ることは非常に
難しいので、射出成形直後に同金型内で圧縮成形をも併
用するいわゆる射出圧縮成形を利用することは有効であ
る。
通常、成形後には摺動面の平面度を出すために後加工
を行なうが、それは具体的には平面研削盤または両頭研
削盤等で成形品の平行度および平面度をそろえた後、ラ
ップ機で10〜50μm程表面を磨き取って表面粗さも小さ
くするなどの操作であり、射出成形時に平面度が50μm
以下であれば研削工程を省くこともできる。そして、ラ
ップ機に用いる砥粒は、特に限定するものでなく、アル
ミナ、炭化ケイ素などを主成分とした通常のものを用い
ることができる。また、砥粒の粒度は非常に細かいもの
ほどよく、#2000以下、好ましくは#4000以下が適当で
ある。ここで金属よりも軟質の樹脂を硬質の砥粒でラッ
プした際に、樹脂に砥粒がめり込んでしまうのではない
かと危惧されたが、上記のような微細な粒度のものを用
いるならば、砥粒が樹脂にめり込むことはほとんどな
く、小さくて良好な平面度および表面粗さが得られたこ
とはおどろきであった。この理由は定かではないが、一
つには硬質の方がかえって被ラップ材料の発熱が少な
く、表面硬度または降状点応力の低下が少なくなって、
砥粒の埋没が小さいからかもしれない。また、この時平
面度も同時に仕上げるが、このような研削機およびラッ
プ機は、多数個取りが容易であり、また樹脂であること
からセラミックまたは金属に比べて非常に短時間で加工
することが出来るため低コストで製品化することができ
る。
この発明で使用する四フッ化エチレン重合体は、四フ
ッ化エチレン鎖、すなわち CF2−CF2 を主骨格とし、分子量が10000以下、好ましくは5000以
下のものであり、ハロゲン化炭化水素類の溶剤に分散可
能なものである。そして分子量が小さく融点が約250℃
程度であるため、被膜は溶着されたものとなるが、この
際の膜厚は粒子の径、分子量、分散された塗液の濃度ま
たは焼成(溶融)温度の差による溶融状態等によって決
定されるが、分子量10000以下の四フッ化エチレン重合
体ならば3μm以下、さらには1μm以下の薄膜にする
ことが可能である。そして、このような低分子量の四フ
ッ化エチレン重合体を塗布する方法は、通常の塗装に用
いられる方法でよく特に限定されるものではないが、ス
プレー法、浸漬法などは簡便で実用的であり、塗装液の
歩留りの点からは浸漬法が最も好ましいといえる。これ
らの塗装に際しては、低分子量の四フッ化エチレン重合
体をハロゲン化炭化水素類または水等の適当な溶剤に分
散させて適度の固形分量の濃度に調整した塗液が用いら
れるが、その固形分濃度は通常0.5〜15重量%特に薄膜
塗装を行なうときは0.5〜10重量%が好ましい。なぜな
らば、分散液の濃度が15重量%を越えると塗膜が厚くな
り、弁体表面の寸法精度を悪くするからであり、また0.
5重量%よりも低濃度では塗膜が薄くなり過ぎてピンホ
ールその他の欠陥が出やすくなるからである。したがっ
て、弁体の摺接面を被覆する膜厚は3μm以下、好まし
くは1μm以下である。なお、塗装が終われば溶剤の除
去(乾燥)を経るかまたは直接焼成し、基材へ溶着させ
るが、この際の焼成温度は、塗液に含まれる低分子量重
合体の融点よりも高く基材である弁体を構成する樹脂の
ガラス転移点よりも低い温度であり、実質上少なくとも
250℃以上の温度ということになる。
以上のように熱可塑性樹脂からなる弁体成形品(摺動
面を後加工するものも含む)の摺接面に四フッ化エチレ
ン重合体からなる薄膜を形成すれば、弁体としての寸法
精度を損うことなく優れた摺動特性が付加され、その被
膜は弁体間で剥離されることなく摺動特性を長期にわた
って保持できるようになる。その結果、弁装置のハンド
ルトルクはいつまでも軽快に作動するとともに、確実な
止水・流量調整が可能となる。
〔作用〕
この発明の水栓用弁装置は、各弁体の一部または全部
が樹脂で構成されているため、機械的または熱的な衝撃
に強く、耐腐食性に優れるばかりでなく、含フッ素重合
体からなる薄膜を弁体の摺接面に施すことによって、確
実な止水に必要な高弾性、耐クリープ性および摺接面の
寸法精度等弁体基材自体の性質を全く劣化させることな
く、長期にわたって良好な潤滑特性を発現させることが
可能となる。
〔実施例〕
以下、実施例および比較例を示すが、原材料の配合割
合はすべて重量%である。樹脂製弁体は、二軸押出機で
溶融ブレンドを行ない造粒し、得られたペレットを金型
に射出成形し、第1図から第4図に示した弁体7を得
た。また、膜厚、実用的機能試験の測定法はつぎのとお
りである。
(1)膜厚: 塗膜を形成した各実施例および比較例の弁体成形品に
対して、弁体基材の成形時、後加工時および塗膜成形時
のいずれの場合においても弁体の摺接面の約半分の面に
塗膜を形成させ残る約半分の面に塗膜を形成させないよ
うにして、塗膜を形成した部分と形成しない部分との膜
厚の段差を表面粗さ計(日本真空技術社製:Dektak II A
型)で測定する。なお、油膜状の被膜については測定し
ない。
(2)実用的機能試験: 北村バルブ社製のシングルレバー式混合水栓KM300Nを
用い、第1図の弁体7にあたるディスクをこの実施例の
樹脂製とし、摺接する弁体6をアルミナ製または樹脂製
として取付け、耐久試験前の初期のトルク試験と止水試
験とを行なった。トルク試験においては、レバーの上下
(止水、流れ、流量調節)、左右(温水、冷水の温度調
節)のトルクを、シンポ工業社製のデジタルフォースゲ
ージDFG−2Kを用いて測定し、止水試験においては、レ
バーを中央下部(止水状態)とし、ポンプによって水圧
を最大17.5kgf/cm2までかけ、1分間全く水漏れしない
最大水圧を測定した。
これらの初期試験において、止水試験で水圧17.5kgf/
cm2において完全に止水したものについて、シングルレ
バー式混合水栓耐久試験機(図示省略)に初期試験した
ものと同じシングルレバー式混合水栓のレバー10を連結
し、第5図に示すように、レバー10を右端上部Ruから右
端下部Rd(冷水)→左端下部Ld(熱湯90℃)→左端上部
Lu(止水)→左端下部Ld(熱湯90℃)→中央下部Cd(温
水)→中央上部Cu(止水)→中央下部Cd(温水)右端下
部Rd(冷水)→右端上部Ru(止水)を1サイクル(所用
時間約25秒)として、20万サイクルの耐久試験を行な
い、10万サイクルおよび20万サイクルの試験後のトルク
と止水性とを初期と同様の方法で確認した。(なお、止
水性の低下したものについては、それ以上の耐久試験は
行わなかった。) さらに、各実施例および比較例に使用した主要原材料
はつぎのとおりである。なお、これら原材料をそれぞれ
に付記した番号および〔 〕内に示す略号によって表わ
し簡略化することとする。
潤滑性被膜形成用材料: 低分子量四フッ化エチレン重合体分散液〔PTEF分散
液〕 (デュポン社製:バイダックスAR、固形分20%、分子
量3700)、 不官能性オルガノポリシロキサン〔不官能性シリコ
ーン〕 (信越化学工業社製:シリコーンオイルKF96、粘度30
00cp)、 水酸基含有オルガノポリシロキサン〔シリコーンジ
オール〕 (同上社製:シリコーンジオールX−22−160C)、 含PTFEエナメルコーティング材〔PTFEエナメル〕 (洋ベア・ルーロン工業社製:R600、バインダー樹脂
ポリアミドイミド樹脂、分散溶剤N−メチルピロリド
ン)、 樹脂弁体成形用材料: 熱硬化性ポリイミド樹脂〔PI〕 (日本ポリイミド社製:キネル4525、ガラス繊維20%
およびガラスビーズ20%入り、ガラス転移点275℃) ポリアミドイミド樹脂〔PAI〕 (米国アモコ社製:トーロン7130、炭素繊維30%入
り、ガラス転移点260℃)、 耐熱性ポリエーテルサルホン樹脂〔HTA〕 (英国アイ・シー・アイ社製:ビクトレックスHTA760
0GL30、ガラス繊維30%入り、ガラス転移点260℃)、 ポリエーテルケトン樹脂〔PEEK〕 (英国アイ・シー・アイ社製:ビクトレックスPEEK45
0 GL30、ガラス繊維30%入り、ガラス転移点140℃)、 ポリエーテルサルホン樹脂〔PES〕 (英国アイ・シー・アイ社製:ビクトレックスPES 41
01GL30、ガラス繊維30%入り、ガラス転移点220℃)。
実施例1〜4: 第1図から第4図に示すような構造の北村バルブ社
製:シングルレバー混合栓KM300Nの弁体(第1図の弁体
7)を、第1表に示す成形用材料〜を用いて射出成
形し、成形後その摺接面を平面研削盤によって平面度を
出し、さらにラップ機で表面粗さを出した。ついで、
〔PTEF分散液〕をフロンR113によって5重量%(ただ
し実施例4は10重量%)にまで希釈した液に上記弁体7
を浸漬し、取り出した後、これを200℃で1時間、さら
に250℃で3時間加熱し、被膜の形成を完成させ、膜厚
の測定および弁体6の材料をアルミナとしたときの実用
的機能試験を行なった。得られた結果を第1表に併記し
た。
実施例5および6: 弁体7はいずれの場合も実施例3と全く同様にし、ま
た弁体6を、第1表に示すように実施例5においては
〔PAI〕とし、実施例6においては〔HTA〕としたこ
と以外は実施例1〜4と全く同様の操作を行ない、得ら
れた弁体7の被膜の膜厚測定と、実用的機能試験を行な
った。得られた結果を第1表に併記した。
比較的1〜9: 実施例1〜6における同じ弁体7を第2表に 示す原材料〜を用いて射出成形し、成形後その摺接
面を平面研削盤にて平面度を出し、さらにラップ機で表
面粗さを出した。比較例4〜9においては、さらに弁体
7に第2表に示すような潤滑性被膜形成材料を用いて被
膜を形成させたが、比較例4、5および9においては実
施例1〜6と同様に弁体7を〔PTEF分散液〕のフレオ
ン113溶液(ただし比較例4および5においては5重量
%濃度にまで、また比較例9においては18重量%濃度に
希釈した液)に浸漬し、取り出した後同じ熱処理を行な
った。これに対して比較例6および7においては、第2
表に示すよう潤滑性被膜形成材料として〔不官能性シリ
コーン〕および〔シリコーンジオール〕を1.0重量
%濃度になるように溶解したフレオン113溶液に浸漬し
た後、取り出して50℃で乾燥しさらに250℃で3時間熱
処理をし、また、比較例8においては第2表に示すよう
に〔PTFEエナメル〕をスプレーコートし、250℃で3
時間焼き付けた。これら被膜の膜厚測定および弁体6を
アルミナとしたときの実用的機能 試験を行ない、その結果を第2表に併記した。
比較例10および11: 弁体7を比較例10においては比較例7と同じく、また
比較例11においては比較例8と全く同様にした。なお、
弁体6は、比較例10において〔PAI〕を、また比較例1
1においては〔HTA〕を材料として射出成形した後、摺
接面を平面研削盤にて平面度を出し、さらにラップ機で
表面粗さを出したものであり、前記の実施例、比較例と
同様に膜厚と実用的機能試験を行なった。得られた結果
を第2表に併記した。
第1表および第2表からつぎのことが明らかである。
すなわち、実施例1〜6は実用的機能試験における20万
サイクル後の耐久試験結果も耐久試験開始前と同様に、
最大17.5kg/cm2の水圧で全く漏れがなく、ハンドルトル
クも非常に小さく優れている。中でも実施例3と4の比
較からわかるように膜厚が1.0μm以下の方が耐久試験
によるハンドルトルクの変化率が小さく特に優れてい
る。
これに対して、弁体の摺接面に潤滑性被膜を施さなか
った比較例1〜3の中で、比較例2は止水性に問題がな
かったもののハンドルトルクが初期から非常に大きく、
比較例1および3については、さらに止水性も10万サイ
クル後に17.5kgf/cm2の水圧を止水することが出来なか
った。この発明において特定した潤滑性薄膜が用いられ
ても、弁体を構成する樹脂のガラス転移点が250℃未満
の比較例4および5さらに被膜が厚過ぎる比較例9とこ
の発明外のバインダー樹脂にフッ素樹脂が分散させてあ
る厚膜の被膜を用いた比較例8は、いづれもすでに耐久
試験前から止水性が著しく劣っていた。さらにこの発明
に特定した以外の薄膜材料を使用した比較例6、7およ
び10は、止水性においては耐久試験前はよかったが、い
づれも20万サイクル以前に17.5kgf/cm2の水圧を止水す
ることが出来なくなり、ハンドルトルクも耐久試験前は
小さかったが、耐久試験後に大きい値となり、比較例に
おいては実施例のいずれよりも遥かに劣った結果しか得
られなかった。
〔効果〕
以上述べたように、この発明の摺接面に潤滑性薄膜を
有する樹脂弁体は、潤滑性および耐摩耗性に優れ、機械
的および熱的な衝撃に強く、薄膜であることから、摺接
面の表面粗さ、平面度においてもきわめて精度の高いも
のに仕上がった弁体の表面精度になんら悪影響を及ぼす
ことがない。その結果、この弁体を使用した水栓用弁装
置は、冷水から熱水までの幅広い温度領域において、レ
バー等による駆動操作が長期にわたって軽快であり、落
したり乱暴な取り扱いをしても亀裂が入ることはなく、
冷水と熱水のくり返し(サーマルショック)にもきわめ
て強いので、水漏れ、吐水不能などを確実に防止できて
信頼性は高く、射出成形で安価に量産でき、後加工する
場合にも多数個を短時間で処理することが出来るもので
ある。したがって、この発明の意義はきわめて大きいと
いうことが出来る。
【図面の簡単な説明】
第1図は家庭用水道に用いられる温水・冷水混合栓の構
造を例示する縦断面図、第2〜4図はその弁体の作動機
構を示すための弁体横断面図、第5図は第1図の外観を
示すための斜視図である。 1……ハウジング、2……流出路、 3、4……流入路、5……弁収納凹部、 6、7……弁体、8……案内板、 9……上蓋、10……レバー、 11……突起、12……ベース、 13、14……流入路、15……流通路、 16……Oリング、17……リンク棒、 18……ピン。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】摺動自在に重ね合わされた切欠または開口
    を有する少なくとも二つ以上の弁体の組み合わせによっ
    て止水または流量調整を行なう水栓用弁装置において、
    この弁体の少なくとも一つが、ガラス転移点が250℃以
    上の樹脂成形品からなり、その摺接面に分子量10000以
    下の四フッ化エチレン重合体からなる薄膜を形成したこ
    とを特徴とする水栓用弁装置。
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