JP2692435B2 - 簡易マルチスポット溶接装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、パネル材をワークとし
てこれを溶接するスポット溶接装置に関し、特に、ワー
クに形成されたトンネル部を溶接するマルチスポット溶
接装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】自動車の車体は多数のパネル材から構成
されており、これらの組み立てには、一般的にほとんど
スポット溶接が用いられている。スポット溶接は、電極
によってワークを挟んで加圧し両電極間に短時間大電流
を流すことにより、加圧されたワークの接触した部分を
溶解し接合する方法であり、品質の安定性や生産性とい
った点が優れている。

【０００３】また車体を組み立てるために、組み立てラ
イン上に所定の間隔毎に配置された各溶接ステージに順
次車体を搬送しており、この搬送に使用されるトランス
ファバーには、従来１本のトランスファバーからなるタ
イプと、２本のトランスファバーからなるタイプのもの
がある。トランスファバーが１本のものと２本のものと
を比較すると、１本のものの方が少ない設備投資で済
み、作業スペースも比較的広いという利点を有してい
る。トランスファバーは搬送時にワークを支持するフィ
ンガが等間隔で取りつけられたバーである。そしてリフ
トアンドキャリア式のトランスファバーは、フィンガが
トランスファバーの上昇動作の途中でワークに接し、ワ
ークを下から支えつつ持ち上げて次の溶接ステージのワ
ーク治具台にワークを搬送し下降動作により載置した
後、元の位置に戻るという動作を行うものである。往復
動のみを行うタイプのトランスファバーは、ワーク治具
台が上下動することによりワークがトランスファバーか
ら治具台に受け渡される。

【０００４】以前は、工業用ロボットを用いてスポット
溶接を行っていたが、ロボットは１点ずつ溶接していく
ため、単位時間当たりの打点数がマルチ溶接装置に比較
して遥かに少ない。また打点数が少なければ多くのステ
ップを記憶できるロボットの能力は十分に活用されず、
効率の悪い設備投資になってしまう。

【０００５】現在は、さらに作業能率を向上させるため
にマルチスポット溶接の導入が進んでいる。マルチスポ
ット溶接は、一動作で複数箇所にスポット溶接できる方
法なので、接合部全体に渡って車体を両側から電極で挟
みつつ加圧する必要がある。そのため人手やロボットに
よる作業に比べて大きなスペースを必要となる。このよ
うなことからマルチスポット溶接装置を組み立てライン
内に導入しようとすると、組み立てラインを構成する車
体の搬送設備等の付帯設備により、マルチスポット溶接
装置の設置スペースは制約される。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】フロアメイン工程内に
あるフロアメインパネルのトンネル部たて壁のスポット
溶接作業に関しては、トンネル部たて壁がパネルの中央
部にあるため、２本のトランスファバーを有する組み立
てラインにおいてはマルチスポット溶接装置を配置する
ことは可能であるが、１本のものではトランスファバー
がフロアパネルの中央直下に存在するため、これまでマ
ルチスポット溶接装置をライン内に組込むことは不可能
であった。そのため、従来は、トンネル部たて壁打点用
の専用ガン（バラクーダ）をもったロボットを使用して
スポット溶接を行っていた。

【０００７】そこで本発明は、上記従来技術の問題点に
鑑み、ワーク（フロアパネル）の中央部を支持して搬送
するトランスファバーを有するフロアメイン工程のライ
ンに組込まれ、ワークの中央部に形成されたトンネル部
へ溶接し得るマルチスポット溶接装置を提供することを
目的とする。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
の本発明は、中央部に長手方向に沿うトンネル部を有す
るワークの前記トンネル部を溶接する溶接装置におい
て、前記ワークの中央部を支持して搬送するトランスフ
ァバー、当該トランスファバーの下降移動により受け渡
される前記ワークを保持するワーク治具台と、当該ワー
ク治具台に、前記ワークが保持された状態のときに、前
記ワークの搬送方向に対して直角の方向かつ水平に、溶
接位置まで前進する、往復動自在に設置された回転ブロ
ックとが設けられた溶接ステージ、前記回転ブロックの
溶接位置における回転動作により、前記トンネル部内に
入り込む、前記回転ブロックに取付けられた電極ユニッ
ト、および溶接位置と退避位置とに往復動自在であり、
前記電極ユニットに設けられた電極を、前記ワークを介
して、加圧する電極が設けられたスタッドガン、を有す
ることを特徴とする簡易マルチスポット溶接装置であ
る。

【０００９】

【作用】このように特定された発明にあっては、ワーク
の中央部を支持して搬送するトランスファバーの下降移
動により、ワークがトランスファバーからワーク治具台
に受け渡される。ワークとトランスファバーとが離れた
後に、回転ブロックが、ワークの搬送方向に対して直角
の方向かつ水平に、溶接位置まで前進する。次いで、こ
の回転ブロックが回転することにより、この回転ブロッ
クに設けられた電極ユニットが、ワークのトンネル部内
に入込み、電極ユニットに設けられた電極にワークを介
してスタッドガンの電極が加圧される。この状態で、ト
ンネル部の複数箇所に同時に、スポット溶接がなされ
る。つまり、中央直下に存在するトランスファバーの干
渉を受けることなく、ワークのトンネル部へマルチスポ
ット溶接ができる。

【００１０】

【実施例】以下、図示する本発明の実施例について説明
する。図１は、自動車車体のフロアメインを組み立てる
ラインを構成する一つの溶接ステージを示しており、こ
のラインでは、１本のトランスファバー１によりワーク
であるパネルＰが搬送される。このトランスファバー１
は、リフトアンドキャリア式であり、トランスファバー
１に取付けられたフィンガ２により前工程のステージで
支持されたパネルＰは、図１に示されるように、トラン
スファバー１の前進移動と下降移動とによりこの溶接ス
テージに設けられたワーク治具台３に受け渡されること
になる。図１においては、トランスファバー１が下降限
の位置となった状態が示されており、この状態からトラ
ンスファバー１は手前のステージまでのストロークだけ
後退移動する。

【００１１】トランスファバー１と干渉しない位置に
は、パネルを搬送する方向に対してほぼ直角の方向にガ
イド４が敷設されており、このガイド４に沿って摺動台
５が往復動自在となっている。図１はこの摺動台５に
は、パネルＰの搬送方向に対して直角の方向に水平に延
びる回転シャフト６が受台７を介して回転自在に取りつ
けられており、この回転シャフト６を回転駆動するため
にカップリング８を介して回転シャフト６に連結された
ロータリアクチュエータ９が摺動台５に取りつけられて
いる。

【００１２】回転シャフト６の先端には回転ブロック１
０が固着され、この回転ブロック１０の先端面には回転
シャフト６と同心となった受けシャフト１１が固着され
ている。摺動台５に対してトランスファバー１を介して
反対側に設置されたガイドブラケット１２には、受台７
に対向させて軸受１３が取りつけられており、この軸受
１３は受けシャフト１１が嵌合する嵌合孔を有してい
る。

【００１３】回転ブロック１０には、絶縁体１４を介し
て電極ユニット１５が取りつけられており、回転ブロッ
ク１０を図１に示される溶接位置において回転させる
と、電極ユニット１５はトンネル部Ｔ内に入り込むこと
になり、この状態から図３において仮想線で示すよう
に、９０度回転させると、トンネル部Ｔ内から退出する
ことになる。この電極ユニット１５にはパネルＰのトン
ネル部Ｔのたて壁の溶接位置に対応させて、複数のイン
サート電極１６が設けられている。したがって、図２に
示されるように、電極ユニット１５を退出させた状態で
摺動台５が後退位置となった状態から、摺動台５を前進
させると、受けシャフト１１は軸受１３内に嵌合する。
そして、回転ブロック１０を９０度回転させると、図１
に示されるように、電極ユニット１５がトンネル部Ｔ内
に入り込むことになる。このように入り込んだ状態のと
きに、電極ユニット１５をロックするために、回転シャ
フト１０に形成されたロック孔１７には、図示しないロ
ックピンが嵌合するようになっている。ただし、このロ
ック孔１７の部分にロックピンを固着し、そのロックピ
ンと嵌合するロック孔が形成されたブロックを摺動自在
に摺動台５に取りつけるようにしてもよい。

【００１４】図示する溶接ステージには、トンネル部Ｔ
の左右のたて壁に対応して、図１に示される溶接位置
と、パネルの両側に対比した退避位置との間を揺動自在
となったスイング機構部２１、２２が設けられている。
それぞれのスイング機構部２１、２２には、電極ユニッ
ト１５に設けられたインサート電極１６に対応して、こ
れらに対してパネルＰを介して加圧される電極２３を有
するスタッドガン２４が装着されている。

【００１５】次にこの装置を用いたマルチスポット溶接
の動作手順を説明する。

【００１６】図２は、トランスファバー１のフィンガ２
に支持された状態でトランスファバー１の前進移動によ
り、図示する溶接ステージまで搬送された後に、このト
ランスファバー１が下降移動してパネルＰが、このステ
ージに設けられたワーク治具台３に載置された状態を示
す。このときには、図１に示されるように、トランスフ
ァバー１と電極ユニット１５との緩衝を避けるために、
摺動台５によって電極ユニット１５は退避位置まで後退
している、トランスファバー１はさらに図１に示す最下
限の位置まで下降移動した後に後退移動する。

【００１７】この状態のもとで、トランスファバー１と
干渉しない位置から、摺動台５が図２において左方（パ
ネルＰの搬送方向に対して直角の方向かつ水平）に移動
し、受けシャフト１１の部分が軸受１３の嵌合孔に挿入
され、回転ブロック１０は、溶接位置に移動する。次い
で、ロータリアクチュエータ９の起動により、回転シャ
フト６と回転ブロック１０が回転することにより、電極
ユニット１５が、図３において仮想線で示す状態から実
線で示す状態に移動して電極ユニット１５がトンネル部
Ｔ内に入込む。一方、スタッドガン２４が退避位置から
図１に示される溶接位置まで移動して、スタッドガン２
４の電極２３がパネルＰを挟みつつインサート電極１６
に加圧され、パネルＰのトンネル部Ｐに対して複数箇所
に同時に溶接がなされる。溶接作業が終了した後には、
電極ユニット１５をトンネル部Ｔ内から退出させると共
に、回転ブロック１０を回転させた後に、摺動台５が図
２の後退位置に戻る。この状態で、トランスファバー１
によりパネルＰは次の工程に搬送される。図示する実施
例は、トランスファバー１がリフトアンドキャリ式の物
を示すが、トランスファバーが往復動のみをするように
したタイプの搬送装置を有する場合にも本発明を適用す
ることができる。

【００１８】

【発明の効果】以上のように本発明によれば、中央直下
に存在するトランスファバーの干渉を受けることなく、
ワークのトンネル部へマルチスポット溶接ができる。つ
まり、ワーク（フロアパネル）の中央部を支持して搬送
するトランスファバーを有するフロアメイン工程のライ
ンに組込まれ、ワークの中央部に形成されたトンネル部
へ溶接し得るマルチスポット溶接装置を提供することを
ができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】はパネルのトンネル部にマルチスポット溶接を
行っている状態を示す本発明の一実施例に係わる簡易マ
ルチスポット溶接装置を示す断面図、

【図２】は電極ブロックが退避位置となった状態におけ
る図１に示された溶接装置の断面図、

【図３】は図１における電極の中央を通る断面図であ
る。

【符号の説明】

１…トランスファバー ２…フィンガ ３…
ワーク治具台 ４…ガイド ５…摺動台 ６…
回転シャフト ９…ロータリアクチュエータ １０…
回転ブロック １４…絶縁体 １２…ガイド １５
…電極ユニット １６…インサート電極 ２１、２２
…スイング機構部 ２３…電極 ２４…スタッドガン Ｐ…パネル Ｔ…トンネル部

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 中央部に長手方向に沿うトンネル部を有
   するワークの前記トンネル部を溶接する溶接装置におい
   て、 前記ワークの中央部を支持して搬送するトランスファバ
   ー、 当該トランスファバーの下降移動により受け渡される前
   記ワークを保持するワーク治具台と、当該ワーク治具台
   に、前記ワークが保持された状態のときに、前記ワーク
   の搬送方向に対して直角の方向かつ水平に、溶接位置ま
   で前進する、往復動自在に設置された回転ブロックとが
   設けられた溶接ステージ、 前記回転ブロックの溶接位置における回転動作により、
   前記トンネル部内に入り込む、前記回転ブロックに取付
   けられた電極ユニット、および 溶接位置と退避位置とに往復動自在であり、前記電極ユ
   ニットに設けられた電極を、前記ワークを介して、加圧
   する電極が設けられたスタッドガン、 を有することを特徴とする簡易マルチスポット溶接装
   置。