JP2658164B2 - 弾塑性ダンパー - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） この発明は、地震時などに構造物が受ける地震エネル
ギーを簡単に吸収して構造物の破壊を未然に防止する弾
塑性ダンパーに関するものである。

（従来の技術） 従来、ダンパーの構造物への利用例として、免震構造
への利用が上げられ、これまで、種々のタイプのダンパ
ーが考えられている。

これらの多くは粘性体を利用した粘性ダンパー、シリ
ンダー型のオイルダンパー、あるいは軟鋼からなる弾塑
性ダンパーなどであでる。

（発明が解決しようとする課題） しかし、粘性体ダンパーやオイルダンパーは定期的な
メンテナンスを必要とし、また温度により特性が変わる
などのために設計が難しく、エネルギー吸収能力のあま
り大きなものは製作できないなどの課題があった。

また、オイルダンパーは一方向の地震力にしか有効に
働かないという欠点を有し、軟鋼棒からなる弾塑性ダン
パーは破壊限界があるために、大型化を免れないなどの
課題があった。さらに、これらのダンパーは何れも製作
コストが相当嵩むなどの課題もあった。

この発明は、以上の課題を解決するためになされたも
ので、きわめて簡単な造でありながら、地震エネルギー
吸収能力が大きく、しかも取扱いおよび設計が容易な弾
塑性ダンパーを提供することを目的とする。

（問題点を解決するための手段） この発明に係る弾塑性ダンパーは、接合される構造部
材と構造部材との接合部に、これらの構造部材間に跨が
り、かつ前記双方の構造部材の側部にそれぞれボルト止
めして取り付けられ、前記構造部材間の層間変位により
変形することによって、前記構造部材に作用する地震エ
ネルギーを吸収する弾塑性ダンパーにおいて、前記地震
エネルギーの大きさに応じた剛性、降伏耐力および塑性
変形能力を有するように所定の厚さと複数個の孔又はス
リットとを有して形成され、かつ前記構造部材との当接
面が平坦に形成されてなることを特徴とする。

（実施例） 以下、この発明に係る弾塑性ダンパーを図示する一実
施例に基いて説明すると、第１図および第２図におい
て、弾塑性ダンパー１は軟鋼などから所定の板厚を有し
て矩形の板状に形成され、かつその略中央部に複数個の
孔２が横方向に一定間隔置きに形成されている。

弾塑性ダンパー１の厚さと孔２の数および大きさは、
弾塑性ダンパーが取り付けられる柱などの構造部材が受
ける地震エネルギーを吸収するのに最も最適な剛性、降
伏耐力および塑性変形能力を有するように形成され、か
つ厚さ、孔２の数および大きさを地震エネルギーの大き
さに応じて適宜変えることにより、剛性、降伏耐力およ
び塑性変形能力が調整されている。このような考えに基
いて、弾塑性ダンパー１は、例えば上下両端部が厚く形
成され、かつ上下両端部から中央部に移るに従って徐々
に薄く形成され、また中央部に略矩形状の縦長の孔２が
横方向に一定間隔置きに形成されている。

弾塑性ダンパー１がこのように形成されていることに
より、弾塑性ダンパー１は地震エネルギーを受けて内部
応力が一定値を越えると、板厚が薄く、かつ複数個の孔
２が形成された中央部分が塑性変形して地震エネルギー
を吸収することにより、構造部材の破壊が未然に防止さ
れる。

また、弾塑性ダンパー１の上下両端部に柱などの構造
部材の側部にそれぞれ添え付け、かつボルト止めして固
定するためのボルト孔３が弾塑性ダンパー１の横方向に
一定間隔置きに複数個形成され、さらに構造部材の側部
に当接する側が平坦に形成されている。

第３図〜第５図は、弾塑性ダンパー１の取付例を示
し、第３図は弾塑性ダンパー１を柱どうしの接合部に取
り付けた状態を示し、弾塑性ダンパー１は上下柱4,4の
接合部に取り付けられている。

この場合、弾塑性ダンパー１は上下柱4,4のウェブ5,5
間に、双方に跨がり、かつ上下両端部を双方のウェブ5,
5の側部にそれぞれ添え付けて取り付けられている。ま
た、弾塑性ダンパー1,1は取付孔3,3とこれに対応して形
成されたウェブ5,5の取付孔（図省略）とを貫通する複
数本の高力ボルト６によって上下柱4,4の端部に固定さ
れている。

また、第４図は、弾塑性ダンパー１を梁どうしの接合
部に取り付けた状態を示し、弾塑性ダンパー１は左右梁
7,7の接合部に取り付けられている。

この場合、弾塑性ダンパー１は左右梁7,7のウェブ5,5
間に、双方に跨がり、かつ左右両端部を双方のウェブ5,
5の側部にそれぞれ添え付けて取り付けられている。ま
た、弾塑性ダンパー1,1は取付孔3,3とこれに対応して形
成されたウェブ5,5の取付孔（図省略）とを貫通する複
数本の高力ボルト６によって左右梁7,7の端部に固定さ
れている。

さらに、第５図は、弾塑性ダンパー１を梁７と耐震壁
８との接合部に取り付けた状態を示し、弾塑性ダンパー
１は梁７と耐震壁８との接合部に、ブラケット９を介
し、梁７の材軸方向に所定間隔に、複数取り付けられて
いる。

この場合、弾塑性ダンパー１は耐震壁８の上端部と、
梁７の下端部に突設されたブラケット９間に双方に跨が
り、かつ上下両端部を耐震壁８およびブラケット９双方
の側部にそれぞれ添え付けて取り付けられている。

また、弾塑性ダンパー1,1は、取付孔3,3とこれに対応
して形成された耐震壁８およびブラケット９の取付孔
（図省略）とをそれぞれ貫通する複数本の高力ボルト６
によって耐震壁８の上端部とブラケット９にそれぞれ固
定されている。

このような構成において、上下柱4,4間、左右梁7,7
間、又は梁７と耐震壁８間のそれぞれの接合部に水平剪
断力Ｑが作用した場合、弾塑性ダンパー１の中央部が塑
性変形することにより水平剪断力Ｑが吸収される。よっ
て大きな地震エネルギーによる建物の脆性破壊を未然に
防止できる。

第６図および第10図は、弾塑性ダンパー１の他の実施
例を示し、弾塑性ダンパー１の中央部に孔２を形成する
代わりに複数個のスリット10を形成したもので、その他
の構成は第１図および第２図に示す弾塑性ダンパー１と
略同じである。

（発明の効果） この発明に係る弾塑性ダンパーは、以上説明した構成
からなるので、以下の効果を有する。

きわめて簡単な形状で有りながら地震エネルギーの
吸収能力が大きく、ダンパーとしての性能がきわめて高
い。

弾塑性ダンパーの厚さ、孔の数および大きさを、こ
の弾塑性ダンパーが取り付けられている構造部材が受け
る地震エネルギーの大きさに応じて適宜変えることによ
り、最も適した剛性、降伏耐力、塑性変形能力を有する
弾塑性ダンパーを提供できるので、無駄のないきわめて
理想的な構造設計ができる。

きわめて単純な形状をしているため、量産化および
量産化による製作コストの低減化が図れる。

【図面の簡単な説明】

第１図および第２図は、この発明に係る弾塑性ダンパー
を示し、第２図はその正面図、第１図は第２図における
弾塑性ダンパーの縦断面図、第３図〜第５図は、弾塑性
ダンパーの取付状態を示し、第３図は弾塑性ダンパーを
柱どうしの接合部に取り付けた状態を示す正面図、第４
図は弾塑性ダンパーを梁どうしの接合部に取り付けた状
態を示す正面図、第５図は耐震壁どうしの接合部に取り
付けた状態を示す正面図、第６図および第７図は他の弾
塑性ダンパーを示し、第６図はその正面図、第７図は第
６図における弾塑性ダンパーの縦断面図、第８図〜第10
図は弾塑性ダンパーの取付状態を示し、第８図は弾塑性
ダンパーを柱の接合部に取り付けた状態を示す正面図、
第９図は弾塑性ダンパーを梁どうしの接合部に取り付け
た状態を示す正面図、第10図は弾塑性ダンパーを耐震壁
どうしの接合部に取り付けた状態を示す正面図である。 １……弾塑性ダンパー、２……孔、３……取付孔、４…
…柱、５……ウェブ、６……高力ボルト、７……梁、８
……耐震壁、９……ブラケット、10……スリット。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 前田 祥三 東京都港区元赤坂１丁目２番７号 鹿島 建設株式会社内 (72)発明者 高橋 新一 東京都港区元赤坂１丁目２番７号 鹿島 建設株式会社内 (56)参考文献 特開 昭63−68272（ＪＰ，Ａ)

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】接合される構造部材と構造部材との接合部
   に、これらの構造部材間に跨がり、かつ前記双方の構造
   部材の側部にそれぞれボルト止めして取り付けられ、前
   記構造部材間の層間変位により変形することによって、
   前記構造部材に作用する地震エネルギーを吸収する弾塑
   性ダンパーにおいて、前記地震エネルギーの大きさに応
   じた剛性、降伏耐力および塑性変形能力を有するように
   所定の厚さと複数個の孔又はスリットとを有して形成さ
   れ、かつ前記構造部材との当接面が平坦に形成されてな
   ることを特徴とする弾塑性ダンパー。