JP2651434B2 - クッション作用・安定化装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、外力の剌激で反応す
る、中底内に収容した流体充満装置（以下、反作用エネ
ルギ流体充満トロイド装置と呼ぶ）を持つ靴底に関す
る。特に、本発明は中底に収容された同心の流体充満ト
ロイドを包含し、靴底にクッション作用を与えかつそれ
を安定化するトロイド装置を有する靴底を提供する。

【０００２】

【従来の技術】多くの靴の靴底、特に運動靴では、ラン
ニングその他の活動時に受ける衝撃を吸収し、靴着用者
の足に或る程度の保護を与えるのに或る量のクッション
作用が必要である。これは、多くの運動靴のかかとにお
いて最も顕著であり、靴底のかかと部分は、普通は、ラ
ンニング時に地面と最初に衝突する部分である。いくぶ
ん程度は落ちるが、クッション作用は靴底の土踏まず領
域およびつまさき領域にも必要である。しかしながら、
単に靴底のかかとにクッション作用を付加するだけで
は、いくつかの点で足を守るには不充分であることがわ
かっている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】ランニング時に、足の
運び毎の靴底の初期衝撃は、普通は、ランナのかかとの
外側縁に沿っている。靴底かかとのクッション作用が歩
行衝撃力の下で与えられるとき、衝撃力はランナのかか
との側縁に集中し、全かかと表面にわたって分布するこ
とはない。ランナのかかとの外縁にかかる初期衝撃は、
足の脚に対する回転、すなわち、足の中間縁の下降（普
通、回内と呼ばれる）も生じさせる傾向がある。過度の
回内運動は足の多くの異なった傷害に関係すると思われ
ている。

【０００４】歩行、ランニングその他の活動時には、靴
底の側方境界部にかかる初期衝撃に続いて足の回外すな
わち足の中間縁の上昇が生じる可能性もある。靴のクッ
ション作用が衝撃の下に与えられると、衝撃力はかかと
の側縁に集中し、かかと表面にわたってを分配すること
はない。足の過度の回外運動は、普通、足および足首の
異なった傷害に関係すると思われている。

【０００５】従来技術の運動靴の上記欠点を克服するの
に必要とされるものは、靴底にクッション作用を与え、
足の運び毎に加えられる衝撃からの力を、足のちょうど
側縁または中間縁よりももっと大きい足領域に分布させ
る装置である。また上記の欠点を克服するのに必要とさ
れるものは、靴内で足を安定させ、ランナの足首の、足
の運びによる衝撃による回内または回外で曲がる傾向を
減らす装置を有する靴底である。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明は、反作用エネル
ギ・クッション作用・安定化装置を包含する靴底を提供
することによって、従来の靴底に伴う上記の欠点を克服
する。本発明の好ましい実施例は、中底を持つ靴底から
なり、本発明の流体充満トロイド装置が中底のかかと領
域に成形あるいは設置してある。

【０００７】流体充満トロイド装置は、２つの同心の流
体充満トロイドからなる。２個のトロイドのうち小さい
方のトロイドは装置の中心に位置しており、２番目の大
きい方のトロイドは小さいトロイドを完全に取り囲む。
トロイドは、それぞれ、可撓性のあるプラスチック材料
で作ってあり、そして、２個のトロイドの内部には複合
流体が満たしてある。複合流体は、異なった粘性を有す
る２種類の流体を含むか、あるいは、特に限定するつも
りはないが、スポンジ状発泡体または小さい中空球体ま
たは流体内に浮遊する粒子を含むものでもよい。

【０００８】小さいトロイドは、２個のトロイドの間に
延びる複数の流体導管によって大きいトロイドに流体連
通状態において接続されている。流体導管は、２個のト
ロイドの間の導管を通ってトロイド内流体の中空球体ま
たは粒子を含む複合流体が流れるのを可能にするような
形態となっている。

【０００９】本発明の靴底は、中底のかかと領域に流体
充満トロイド装置を備えていることを除いて普通のラン
ニング用靴の靴底に類似している。本発明の別の実施例
においては、トロイド装置は、中底の土踏まず領域また
はつまさき領域あるいはこれら両方にも設けられる。こ
のトロイド装置は、中底が成形されるときに同時に中底
に収容してもよいし、あるいは、トロイド装置のために
特に中底に成形した空所内に挿入してもよい。

【００１０】中底に収容された流体充満トロイド装置
は、歩行時衝撃毎にかかとに加えられるショックを緩衝
するのに役に立つ。トロイド流体が２個のトロイド間を
流体導管を通って流れることができるということは、ま
た、ランナのかかとのより大きな面積にわたって歩行時
衝撃を分布させ、ショックを減らしかつ過度の回内運動
あるいは回外運動の蓋然性を低下させるのにも役立つ。
小さいトロイドを中央に、大きいトロイドを外側に配置
したトロイド装置の形態は、靴底のかかとを揺り動かす
ことによって安定性および支持性を向上させ、また、靴
底上で足のかかとに注文仕上げのフィット感を与える。

【００１１】本発明の別の実施例においては、光学窓が
靴の中底の外側に、そして、靴の表底を貫いて設けてあ
る。この窓は中底に収容されている流体充満トロイド装
置を靴底の外側から見えるようにしている。さらに別の
実施例では、足の母指球および土踏まずの領域において
中底内に付加的な流体充満トロイド挿入体が設けてあ
る。

【００１２】本発明のさらなる目的および特徴は、本発
明の好ましい実施例についての以下の詳細な説明および
図面で明らかとなろう。

【００１３】

【実施例】本発明の反作用エネルギ流体充満トロイド装
置１０が図４、５に示してある。このトロイド装置は、
可撓性のあるバリヤ材料、好ましくは、接着することの
できるプラスチック類のフィルムで作られる。ポリウレ
タンが好ましいけれども、他の種類の可撓性あるバリヤ
材料を用いても、特許請求の範囲に記載する意図した範
囲から逸脱することなく流体充満トロイド装置を作るこ
とはできる。

【００１４】図４、５でわかるように、本発明のトロイ
ド装置１０は、全体的に、内側の、小さいトロイド１２
と外側の、大きいトロイド１４とからなる。

【００１５】小さいトロイド１２は流体１８を満たした
中空環状の内部室１６を包含する。トロイド１２の外形
は、トロイドの内周壁面２０および外周壁面２２によっ
て定められる。小さいトロイドl ２の中央穴はトロイド
装置を構成するのみ用いられる可撓性材料のウェブ２４
によって隠われる。

【００１６】大きいトロイド１４は小さいトロイド１２
を完全に取り囲み、小さいトロイドl ２と同心である。
大きいトロイド１４もまた、中空環状の内部室２６を包
含する。大きいトロイドの内部室２６にも、小さいトロ
イド１２の内部室１６を満たすと同じ流体１８が満たさ
れている。トロイド１４の外形は、トロイドの内周壁面
２８および外周壁面３O によって定められる。

【００１７】ウェブ部分３２が、大きいトロイド１４の
外周壁面２２と小さいトロイド１２の内周壁面２８の間
に形成されている。ウェブ部分３２は、図に示すそれら
の相対位置において２個のトロイド１２、１４を相互に
固着する。ウェブ部分３２は、トロイド装置を構成する
のに用いられるものと同じ可撓性材料から作られる。

【００１８】３本の流体導通用導管３３が、小さいトロ
イド１２の外周壁面２２と大きいトロイドの内周壁面２
８との間に延びている。流体導管３３は、２個のトロイ
ド１２、１４の内部室１６、２６に通じており、導管を
通ってトロイド内部室間を流体１８が流れることができ
るようにしている。図４でわかるように、流体導管３３
は、２個のトロイドの間にスポーク状に配置してあり、
円弧状のウェブ部分３２を分離している。

【００１９】中央のウェブ部分２４、小さいトロイド１
２、流体導管３３、円弧状のウェブ部分３２および大き
いトロイド１４は、すべて、図５に示すように、ほぼ同
一平面にある。

【００２０】トロイド装置１０は、可撓性のある流体不
透過性材料の一対の重なり合ったシートから作られる。
図５に示すように、上方シート３４は同心のトロイド形
態に成形されている。上方シート３４は下方シート３５
を覆って位置し、下方シートに接着されている。これら
のシートは、小さいトロイド１２と大きいトロイド１４
の間の円弧状ウェブ部分３２のところと、小さいトロイ
ドの中央ウェブ２４のところで、大きいトロイド１４の
外側まわりを延びる周囲シーム３６に沿って相互に接着
されている。頂部と底部が円弧状部分３２に沿って相互
に溶接してあるので、隣合った部分の間の間隙がふさが
ることなく、小さいトロイドの内部室１６を大きいトロ
イドの内部室２６と連通させる流体導管３３を形成す
る。トロイド装置を上述した方法で作られた後、２個の
トロイドの内部室には複合流体１８が満たされる。複合
流体は、異なった粘性を持つ２種類の流体を含むもので
あってもよいし、あるいは、限定するつもりはないが、
スポンジ状の発泡体、小さい中空球体あるいは流体に浮
遊する粒子を含む固体を含むものであってもよい。本発
明のトロイド装置１０を構成する上記の方法は、ほんの
例示であり、発明をこれに限定するつもりはない。

【００２１】本発明の好ましい実施例において、流体充
満トロイド装置１０は、図１〜３、６に示すように、靴
の中底３７内に収容される。図３において、トロイド装
置１０は、中底内に完全に収容された状態で示してあ
る。トロイド装置は、図３に示す位置において、装置の
まわりに中底を成形することによって中底３７内に収容
される。

【００２２】別の実施例においては、中底の頂面または
底面からその中に延びるように空所を形成し、トロイド
装置１０をこの空所内に置く。トロイド装置が空所に挿
入される後に、中底の頂面または底面にある空所の開口
部をシールするが、これは、空所の開口部にプラグを挿
入、接着することによって行われる。プラグは、中底と
同じ材料によって作られる。

【００２３】靴の中底３７内でかかとの下方に設置した
トロイド装置１０の機能をこれから説明するが、この装
置は、図１および図２に示すように靴の土踏まず領域お
よびつまさき領域に、または、靴底の他の領域において
も用いることができる。このトロイド装置は、中底のか
かとにおいて述べられたと同一の方法で中底の土踏まず
領域およびつまさき領域に組み込まれ、中底のかかと領
域におけると同じ要領で土踏まず、つまさき領域で作用
する。

【００２４】本発明の反作用エネルギ流体充満トロイド
装置１０は、靴の中底に組み込まれたとき、歩行、ラン
ニングその他の活動時に靴着用者の足にクッション作用
を与え、靴内で足を安定させる。トロイド装置１０の上
記の説明から明らかなように、装置は使用時に流体充満
クッションとして作用する。しかしながら、装置の同心
のトロイド形態は、歩行、ランニングその他の活動時の
足の動きからの衝撃に応答して足の底に安定化反射用力
を与える能力も向上させる。トロイド装置が靴中底のか
かと内に設けてある図３の実施例において、衝撃力が靴
底の中間側部、すなわち、トロイド装置の右側に加えら
れたとき、トロイド装置の右側部が圧縮され、装置内の
流体１８に力を加えてそれを同心のトロイド１２、１４
の左側へ移動させる。これは、流体圧力をトロイドの左
側で高め、トロイド１２、１４の左側部をやや膨張さ
せ、足底の左側部に反作用力を加え、足かかとのより大
きな面積にわたって衝撃力を再分布させることになる。
足の動きによる衝撃が足の外部すなわち側面に生じた場
合には、図３で見て、靴底の左側部に加えられた力はト
ロイド１２、１４の左側部を圧縮することになる。順次
に、これは、トロイド１２の左側に入っている流体をト
ロイドの右側に流動させ、トロイドの右側部で流体圧力
を上昇させ、トロイド右側を膨張させることになる。２
個のトロイド１２、１４の右側部でのこの膨張は、足底
の右側に抗する方向に反作用力を加え、足のかかとのよ
り大きな面積にわたって衝撃力を再分布させることにな
る。足のかかとの大きな面積にわたって靴底の縁に生じ
た衝撃力を再分布させることによって、本発明のトロイ
ド装置は、オフセンタ歩行衝撃に対するその反作用で足
を安定化し、支持し、傷害の可能性を低下させるのに役
立つ。

【００２５】図３でわかるように、小さいトロイド１２
および大きいトロイド１４の相対的な寸法は、装置の中
心にくぼみ状の領域を作る。装置におけるこのくぼみ状
領域は、靴着用者のかかとを揺り動かすことによって安
定性および支えを与える。加えて、大きいトロイド１４
が中底３６の対向した側壁に隣接して小さいトロイド１
２上方に延びることは、中底の側方安定性を高めるのに
役立つ。大きいトロイド１４は、中底３６の外縁に隣接
しているので、対向した中間側部、側方部での中底の圧
縮に若干の抵抗を与える。これは中底の側方安定性を増
大させるのに役に立ち、オフセンタ歩行衝撃からの過度
の回内運動あるいは回外運動の可能性を減らす。

【００２６】本発明のトロイド装置の、靴の中底のかか
と部分における作用を説明してきたが、このトロイド装
置のクッション作用、安定化および支持機能は、本トロ
イド装置を中底の土踏まずあるいはつまさき領域に用い
たときと同じである。

【００２７】本発明の反作用エネルギ流体充満トロイド
装置を備えた靴底の別の実施例においては、中底は、中
底の外側から中底内の流体充満トロイド装置１０を見る
ことをできるようにする孔をいくつか備える。中底３７
はその側部から中底内に延びる複数の孔４２を備える。
孔４２は、流体充満トロイド装置１０を収容する中底領
域で中底内に延びるように設けられる。プラスチック製
のホルダ４０を孔４２内に挿入し、接合して、トロイド
装置１０を中底の外部から見ることができるようにす
る。

【００２８】また別の実施例において、不透明なまたは
透明なホルダ４２が表底４６上方に挿入され、第２の透
明あるいは不透明なホルダ４４が表底４８に設けた空所
内に挿入し、靴底の底に窓を与え、中底内の流体充満ト
ロイド装置を見ることができるようにしてある。

【００２９】本発明の、孔を設けた中底の各実施例にお
いて、トロイド装置１０は、透明な窓を通して装置内の
複合流体を靴底の外部から見ることができるように透明
材料で作ってある。

【００３０】本発明を或る特定の実施例について説明し
てきたが、以下の特許請求の範囲において定義される発
明の範囲から逸脱することなく修正および変更が可能で
あることは了解されたい。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の反作用エネルギ流体充満トロイド装置
を包含する中底からなる靴の部分立面図である。

【図２】靴の中底での本発明の流体充満トロイド装置の
配置を示す靴底の平面図である。

【図３】靴中底のかかと領域での本発明の流体充満トロ
イド装置の配置を示す部分断面立面図である。

【図４】流体充満トロイド装置の平面図である。

【図５】流体充満トロイド装置の、図４の５−５線に沿
った断面図である。

【図６】本発明の流体充満トロイド装置を包含する中底
の別の実施例の部分断面立面図である。

【符号の説明】

１０ 反作用エネルギ流体充満トロイド装置 １２ 小さいトロイド １４ 大きいトロイド １６ 中空環状内部室 １８ 流体 ２０ 内周壁面 ２２ 外周壁面 ２４ ウェブ ２６ 中空環状内部室 ２８ 内周壁面 ３０ 外周壁面 ３２ ウェブ部分 ３３ 流体導管 ３４ 上方シート ３５ 下方シート ３６ 中底 ４０ ホルダ ４２ 孔 ４４ ホルダ ４６ 表底 ４８ 表底

フロントページの続き (72)発明者 ルイ パラッチョ アメリカ合衆国 マサチューセッツ 01960 ピーボディ アンソニー ロー ド 14 (72)発明者 エリック スワーツ アメリカ合衆国 マサチューセッツ 02148 マルデン ファースト フロー ウェブスター ストリート 218 (72)発明者 クリストファー ジェイ エディントン アメリカ合衆国 ニューハンプシャー 03038 デリー アパートメント 3121 フェアウェイ ドライブ 21 (72)発明者 ダグラス イー クラーク アメリカ合衆国 マサチューセッツ 01913 アメスベリー ホワイトホール ロード グレン デヴィン 42 (56)参考文献 特開 平２−224608（ＪＰ，Ａ) 実開 昭61−167810（ＪＰ，Ｕ) 実開 平３−82007（ＪＰ，Ｕ)

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 クッション作用・安定化装置であって、 靴底と、 前記靴底内に流体を収容する第１流体収容手段と、 前記第１流体収容手段と同心に該第１流体収容手段を取
   り囲んでトロイド状をなし前記靴底内に流体を収容する
   第２流体収容手段と、 前記第１流体収容手段と第２流体収容手段との間に流体
   連通状態に接続されている流体導通装置と、 前記第１、第２の流体収容手段および前記流体導通装置
   に収容され且つこれらの間を貫流することができ、前記
   第１、第２の流体収容手段および前記流体導通装置のす
   べてが流体不透過性であり、それによってクッション作
   用・安定化装置内に収容され且つ漏出を防止されている
   流体と、 を包含することを特徴とするクッション作用・安定化装
   置。
2. 【請求項２】 前記流体導通装置が複数本の流体導通用
   導管を有し、これらの各流体導通用導管が前記第１流体
   収容手段と第２流体収容手段との間に流体連通状態に接
   続されていることを特徴とする請求項１に記載のクッシ
   ョン作用・安定化装置。
3. 【請求項３】 靴底の流体不透過性クッション作用・安
   定化装置であって、 流体を充満している第１中空内部室を有する第１流体不
   透過性収容部と、 前記第１流体不透過性収容部と同心に該第１流体不透過
   性収容部を完全に取り囲んでトロイド状をなし且つ流体
   を充満している第２中空環状内部室を有する第２流体不
   透過性収容部と、 前記第１、第２の流体不透過性収容部の間に延在し、前
   記第１、第２の中空内部室の間に流体を流通させ得るよ
   うに形成された少なくとも１本の流体導管であって、前
   記第１、第２の流体不透過性収容部と共に流体不透過性
   クッション作用・安定化装置からの流体の漏出を防止し
   ながら、前記流体を前記第１、第２の内部室間に流通さ
   せ得るようにしている少なくとも１本の流体導管と、 を包含することを特徴とする靴底の流体不透過性クッシ
   ョン作用・安定化装置 。